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特許7073549安全用レーザスキャナ及び前面パネルの監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】安全用レーザスキャナ及び前面パネルの監視方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
G01S7/481 A
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021015571
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2021124509
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】20156075.2
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム クレーマー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ハメス
(72)【発明者】
【氏名】イノ ガイスマイアー
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許第02482094(EP,B1)
【文献】欧州特許出願公開第02642314(EP,A1)
【文献】特開2010-175486(JP,A)
【文献】特開2007-108028(JP,A)
【文献】特表2001-511252(JP,A)
【文献】特開平09-211108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
G01B 11/00 - 11/30
G01C 3/00 - 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視領域(20)内の物体を検出するための安全用レーザスキャナ(10)であって、走査光線(16)を送出するための発光器(12)と、前記走査光線(16)で前記監視領域(20)を周期的に走査するための可動の偏向ユニット(18)と、前記物体により拡散反射された走査光線(22)から受光信号を生成するための受光器(26)と、前面パネル(38)と、前記受光信号から前記監視領域(20)内の前記物体に関する情報を取得し、且つ、前面パネルの監視において、前記前面パネル(38)の表面での反射により前記走査光線(16)から生成される前面パネル反射光線(54)を評価することにより前記前面パネル(38)の透光性の減損を認識するように構成された制御及び評価ユニット(32)とを備える安全用レーザスキャナ(10)において、
前記前面パネル反射光線(54)の光路内に少なくとも1つの光方向転換素子(56、58)を備え、該光方向転換素子(56、58)が前記前面パネル反射光線(54)を検査対象領域(60)において前記前面パネル(8)まで再び導き、その結果、該検査対象領域(60)の表面で前記光線(54)が反射され、2重反射された前面パネル反射光線(62)が生じることを特徴とする安全用レーザスキャナ。
【請求項2】
前記制御及び評価ユニット(32)が、前記前面パネルの監視のために、前記2重反射された前面パネル反射光線(62)により前記受光器(26)内で生じる受光信号を評価するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項3】
少なくとも1つの外部の追加受光器(66)を備え、前記前面パネル反射光線(54)のうち前記検査対象領域(60)を透過する部分(64)が該外部の追加受光器(66)に入射し、前記制御及び評価ユニット(32)が前記前面パネルの監視のために該外部の追加受光器(66)の受光信号を評価するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項4】
前記発光器(12)と前記受光器(26)が二軸構造で互いに平行な光軸を持つように並んで配置されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項5】
追加的な前記前面パネルの監視のために、前記前面パネル(38)の部分領域の透光性を透過測定で検査するように一方向型光遮断機又は反射型光遮断機の態様で配置された少なくとも一対の検査用発光器(44)と検査用受光器(46)を備えていることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項6】
前記光方向転換素子(56、58)が安全用レーザスキャナ(10)の視野の少なくとも1つの部分領域にのみ設けられており、その結果、前記前面パネル反射光線(54)に基づく前記前面パネルの監視が該部分領域だけに関係することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項7】
前記部分領域が視野と該視野の向こうにある不感域との間の縁領域であることを特徴とする請求項6に記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項8】
制御及び評価ユニット(32)が、前記受光器(26)における前記2重反射された前面パネル反射光線(62)の検出の感度及び/又はそれにより生成される受光信号の評価を前記縁領域において適合させるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項9】
前記前面パネル(38)が回転体の形状を呈し、その断面において湾曲した輪郭を呈することを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項10】
前記前面パネル反射光線(54)の光路内に第1の光方向転換素子(56)と第2の光方向転換素子(58)を備えることを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項11】
前記光方向転換素子(56、58)が光線を弱めるように構成されていること、及び/又は、前記前面パネル反射光線(54)の光路内に、参照用受光器が配置されていることを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項12】
受光信号の比較により差分的な前面パネルの監視ができるようにするため、前記偏向ユニット(18)の運動の回転方向の一部に光方向転換素子(56、58)、一部に光トラップが配置されていることを特徴とする請求項1~11のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項13】
仰角方向に分離した複数の走査光線を用いる多位置型スキャナとして構成され、前記走査光線の少なくとも1つが前記前面パネルの監視に用いられることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項14】
安全な出力(34)を備え、前記制御及び評価ユニット(32)が、検出された物体の位置を防護区域と比較し、許可なき侵入を認識した場合に前記安全な出力(34)を保安信号で制御するように構成されていることを特徴とする請求項1~13のいずれかに記載の安全用レーザスキャナ(10)。
【請求項15】
安全用レーザスキャナ(10)の前面パネル(38)を監視するための方法であって、走査光線(16)を送出し、該走査光線(16)で監視領域(20)を周期的に走査し、該監視領域(20)内の物体により拡散反射された走査光線(22)から受光信号を生成し、該受光信号を評価することで前記物体に関する情報を取得するとともに、前面パネルの監視のために、前記前面パネル(38)の表面での反射により前記走査光線から生じる前面パネル反射光線を評価することにより前記前面パネル(38)の透光性の減損を認識する方法において、
前記前面パネル反射光線(54)の光路内にある少なくとも1つの光方向転換素子(56、58)により前記前面パネル反射光線(54)を別の検査対象領域(60)において前記前面パネル(38)まで再び導き、その結果、該検査対象領域(60)の表面で前記光線(54)が反射され、2重反射された前面パネル反射光線(62)が生じることを特徴とする前面パネルの監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1又は15のプレアンブルに記載の安全用レーザスキャナ及び前面パネルの監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的な監視にはレーザスキャナがよく用いられる。レーザスキャナでは、レーザにより生成された光線が偏向ユニットを用いて監視領域を周期的に塗りつぶすように掃引される。その光は監視領域内の物体の表面で拡散反射され、スキャナ内で評価される。偏向ユニットの角度位置から物体の角度位置が推定され、更に光伝播時間から光の速度を用いてレーザスキャナと物体の間の距離が推定される。その場合、光伝播時間を測定する二つの基本的な原理が知られている。位相ベースの方法では発射光が変調され、その発射された光に対する受信光の位相差が評価される。パルスベースの方法では、安全技術において好んで用いられるように、レーザスキャナは送出された光パルスを再び受光するまでの経過時間を測定する。
【0003】
安全用レーザスキャナ、つまり安全技術用に構成されたレーザスキャナには、危険の発生源を防護し、何より人との事故を回避するという課題がある。この場合、レーザスキャナは、機械の稼働中に操作者の進入を許してはならない防護区域を監視する。レーザスキャナは角度と距離の情報を取得するから、監視領域内ひいては防護区域内における各物体の2次元的な位置を算出することができる。操作者の脚等の防護区域への許可なき侵入を認識すると、レーザスキャナは機械の緊急停止を発動する。
【0004】
安全技術に用いられるセンサは特に高い信頼性で作動しなければならないため、例えば機械の安全に関する規格EN13849や非接触型防護装置(beruehrungslos wirkende Schutzeinrichtungen:BWS)に関する機器規格EN61496といった高い安全要求を満たさなければならない。これらの安全規格を満たすために、例えば、冗長性のある多様な電子機器により確実な電子的評価を行う、機能の監視を行う、及び/又は、定義された反射率を持つ個別の検査用標的が各々対応する走査角度で必ず認識されるようにする等、幾つもの措置が講じられる。
【0005】
また、安全上の要求には、レーザスキャナの前面パネルの透過性の減損を認識し、検出能力が制限されるようであればそれに対して安全確保のために電源を遮断する対応を取らなければならない、というものもある。その際、ほこり等による均一な汚染のほか、規定の最小サイズ以上の小さな妨害物による点状の減損も見つけ出す必要がある。同様に、前面パネル領域を小さな遮蔽物で覆うことによる意図的な操作も排除する必要がある。
【0006】
このような妨害の影響を見つけ出すため、レーザスキャナでは通例、光を通すことにより前面パネル領域の様々な位置を検査する光学的な検査チャネルが用いられる。例えば特許文献1から知られている解決策では、前面パネルの全角度領域にわたって多数の独立した光学的な検査チャネルが分配され、それらがそれぞれ前面パネルの異なる領域に対して試験的に光を通すことにより透過性の減損を認識する。検査チャネルは、単なる点状の検出であるにも関わらず、規格で要求される小さな汚染物又は操作物を全体にわたって確実に検出するために、十分な密度で分配しなければならない。検査チャネルの数が多ければ製造コストと所要の設置スペースが当然増大する。その上、検査チャネルは回転する偏向ユニットを避けるためにレーザスキャナの外面形状にかなり近接している。従って検査チャネルは外部光や偶然又は操作のために近くに置かれた反射器による妨害に弱い。
【0007】
二軸構造、つまり発射光線と受信光線が隣り合って進行する構造のレーザスキャナの場合、局所的な汚染又は操作は同軸構造の場合よりも問題がある。受信光路の一部がこのように隠されると受光信号が低下し、検出損失につながる恐れがある。規格を満たすために、これが様々なスポット状の検査部位を通じて模擬実験され、テストされる。同軸の構造の場合、その問題は同じ程度にはまず起きない。なぜなら、受信光路のわずかな部分が隠されるに過ぎないなら欠損は起きないし、そうでなければ発射光線さえも遮断されて問題が認識されるからである。このような理由から、二軸型の構造のレーザスキャナは特に多くの検査チャネルを必要とする。
【0008】
特許文献2は、光源と検出器を備える完全な測定ユニットが回転するレーザスキャナを開示している。更に適宜のロータ上に検査用光源と検査用検出器が収められている一方、ケーシングの外側に反射要素が配置されている。そして、検査用光源と検査用検出器が回転運動の進行中に反射要素を利用して前面パネルを走査する。検査用検出器は必然的に外方を向いているため、外部光により比較的容易に妨害されてしまう。
【0009】
特許文献3では、検査チャネルが、回転鏡と一緒に運動する反射器を介して前面パネルを通り抜けるように導かれる。特許文献4は結びにおいて透過性検査のための様々な構想を検討している。そこでは1つの方法として本来の走査光線の一部を分岐させることが挙げられている。しかしこのアプローチは本来の測定チャネルへの混信が懸念されるため不利だと思われる。
【0010】
特許文献4に記載のレーザスキャナでは、透過式ではなく反射式で測定を行う検査チャネルに基づいて汚染が測定される。しかしこれでは個々の検査チャネルにかかるコストは減らず、また必要な検査チャネルの数も減らない。
【0011】
特許文献5から、前面パネルの内面での反射を評価するレーザスキャナが知られている。ただしこれは、測定系の機能性を検査するために、前面パネルのうち後方の不感域において特別に鏡面状にした部分で行われる。鏡面状であるため前面パネルの透過性は全く評価されず、しかも保証する必要があるのは不感域内ではなく視野内における透光性である。
【0012】
特許文献6では、検査用光路が、外側で前面パネルの周りに配置された検査用発光器により張られており、その発光器の光が前面パネルと他の反射器の表面で何度も方向転換した後、主たる測定系の受光器に捕らえられる。これにより検査用受光器が削減されるが、それは依然として前面パネルの周りに検査チャネルを分配するという基本原理である。
【0013】
特許文献7から、検査用発光器を用いて測定装置の機能性を検査することが知られている。一実施形態ではその検査用光路が前面パネルの表面で反射して延在する。それを前面パネルの汚染の検査にも兼用できることが述べられている。もっともその検査用発光器は単一の走査角に点状に設けられるに過ぎないため、前面パネルを有意義には検査できないであろうし、いずれにせよ前面パネルの検査対象部分毎に検査用発光器を追加する必要があるから、検査チャネルのハードウェア的なコストは一層高くなるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】DE 43 45 446 C2
【文献】EP 2 237 065 A1
【文献】DE 10 2015 105 264 A1
【文献】DE 20 2013 102 440 U1
【文献】EP 2 482 094 B1
【文献】EP 2 642 314 A1
【文献】EP 2 927 711 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
故に本発明の課題は安全用レーザスキャナの前面パネルの監視を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は請求項1又は15に記載の安全用レーザスキャナ及び前面パネルの監視方法により解決される。本レーザスキャナは安全用スキャナであり、従って人を保護して事故を避けるために使用可能であり、特に工業的な環境にある機械や、自立走行車両に搭載できる。そのために、安全用レーザスキャナを故障から防護したり誤動作を見つけ出したりする対策を実施して、危険が認識されたとき又は安全用レーザスキャナがその機能を保証できないときには安全確保に向けた対応を適時に実行できるようにする。これらの対策は、冒頭でいくつか挙げたような機械の安全又は非接触型防護装置に対する適宜の安全規格に規定された安全水準に合わせて確定される。前面パネルの監視はそのような対策の1つである。
【0017】
発光器が走査光線を送出し、該光線が可動の偏向ユニットの助けを借りて監視領域を周期的に走査し、受光器が、物体の表面で拡散反射又は直反射されて戻ってくる走査光線から受光信号を生成する。これらの構成要素はレーザスキャナの主たる測定系の中核である。偏向ユニットとしては、好ましくは回転鏡が設けられるか、主たる走査システム全体が回転式の測定ヘッドに収められる。
【0018】
制御及び評価ユニットが、検知された物体に関する情報を得るため、特に該物体の距離を光伝播時間法で測定するために受光器の受光信号を評価する。更に、走査光線が前面パネルの内側表面で反射されることにより生じる前面パネル反射光線を評価する。従って、この前面パネルの監視は、その透光性が十分かどうかを主たる測定系の発光器に基づいて調べる。
【0019】
本発明の出発点となる基本思想は、走査光線の出射点で必然的に発生する前面パネル反射光線を前面パネルの別の検査対象領域へ導くということにある。その領域で前面パネル反射光線が再び反射され、2重反射された前面パネル反射光線が生じる。このように光線を導くために少なくとも1つの光方向転換素子(鏡、プリズム等)が前面パネル反射光線の光路内に配置される。前面パネルの透光性を評価するため、前面パネルのうち前記別の検査対象領域において反射及び/又は透過した部分の前面パネル反射光線が考慮される。
【0020】
本発明には、冒頭に挙げた欠点が回避され、前面パネルの監視にかかるコストが削減されるという利点がある。実施形態によっては検査チャネルが不要となり、いずれにせよ検査チャネルの必要数が少なくなる。製造コスト、複雑さ及び構造サイズが低減される。従来、安全用レーザスキャナで前面パネルの監視を反射方式で行うことはなかった。それは、これまで黒っぽいほこりを十分確実に検出することができなかったからであるが、そのほこりが検出損失を生じさせることは十分にあり得る。本発明によれば、安全規格で要求された検査部位又は操作部位(これらは中程度の拡散反射性のほこりの堆積及び例えば操作用の付着物を表す)が簡単に且つ少数の部品で認識される。そして必要な範囲内で少数の補完的な検査チャネルを設けるだけで黒っぽいほこりが認識される。
【0021】
制御及び評価ユニットは、前面パネルの監視のために、2重反射された前面パネル反射光線により受光器内で生じる受光信号を評価するように構成されていることが好ましい。これによれば、2重反射された前面パネル反射光線が主たる測定系において評価される。言い換えれば、前面パネルの監視が主たる測定系に統合される。受動的な光方向転換素子の他には追加のハードウェアは必要ない。前面パネルの監視を達成するための追加コストは、制御及び評価ユニットの対応する評価機能の分だけである。
【0022】
安全用レーザスキャナが少なくとも1つの外部の追加受光器を備え、前面パネル反射光線のうち検査対象領域を透過する部分が該外部の追加受光器に入射し、制御及び評価ユニットが前面パネルの監視のために該外部の追加受光器の受光信号を評価するように構成されていることが好ましい。ここでは、前記2重反射された前面パネル反射光線を補うように、前面パネル反射光線のうち前記別の検査対象領域を透過する部分が評価される。両者は互いに排除し合うものではない。即ち、前記別の検査対象領域に入射する前面パネル反射光線のうち反射される部分と透過する部分の両方を評価することもできる。
【0023】
発光器と受光器は二軸構造で互いに平行な光軸を持つように並んで配置されていることが好ましい。従来はそうではなく同軸構造がよく選ばれる。その場合、より小さい断面を持つ発射光線が受信光線の中心に位置する。しかし、まさに非常に小さい構造の場合は二軸配置の方が簡単である。本発明に係る前面パネルの監視は、従来なら特に多数の検査チャネルが必要になるような二軸構造にも適している。
【0024】
安全用レーザスキャナは、追加的な前面パネルの監視のために、前面パネルの部分領域の透光性を透過測定で検査するように一方向型光遮断機又は反射型光遮断機の態様で配置された少なくとも一対の検査用発光器と検査用受光器を備えていることが好ましい。これは一方向型又は反射型光遮断機の原理による従来の検査チャネルに相当する。後者には、内側には接続のない小型の反射器があれば十分であり、それに対応する検査用発光器と検査用受光器の対は外側に配置できるという利点がある。前面パネル反射光線に基づく前面パネルの監視と従来技術の検査チャネルの組み合わせにより、検出すべき前面パネルの透光性の減損を全体として確実に捕らえることができ、しかも従来技術と比べれば少ない数の検査チャネルしか必要ではない。これは、少なくとも、従来なら特に密な検査チャネルが必要になる場面の一部が前面パネル反射光線の評価により引き受けられるからである。
【0025】
光方向転換素子が安全用レーザスキャナの視野の少なくとも1つの部分領域にのみ設けられており、その結果、前面パネル反射光線に基づく前面パネルの監視が該部分領域だけに関係することが好ましい。レーザスキャナの場合、視野(FOV:Field of View)は走査の角度範囲で示され、例えば180度、270度又は最大360度までの範囲を含む。前面パネル反射光線の評価に基づく前面パネルの監視は特に重要な部分領域に留めておくことができ、そのような部分領域又は角度区間が複数あってもよい。残りの視野は例えば従来の検査チャネルによりカバーされる。検査チャネルの任務は例えば黒っぽいほこりによる均一な汚染の検出とすることができる。均一な分布という仮定があるから、この検査チャネルには監視の隙間があってもよい。言い換えれば前面パネルを抜き取り検査のように調べればよい。例えば、安全規格はダンピングフォイルを45度の部分毎に認識することが要求しているから、270度なら6つの検査チャネルがあればカバーできる。一方、局所的な汚染又は操作を表す検査部位の検出には隙間があってはならない。それには例えば10、16又はそれ以上の検査チャネルが必要であろう。しかしこれらの検査部位は安全規格によれば黒っぽくはなく、20%の拡散反射率を有している。これは前面パネル反射光線の評価により十分に検出されるから、追加の検査チャネルはなくてもよい。それ故、前面パネルの監視の2つの構成要素が効果的に補完し合い、必要な検査チャネルの総数を大幅に削減できる。なお、前面パネル全体を監視する必要はなく、実際に走査光線が入射又は出射する部分だけでよい。
【0026】
前記部分領域は視野と該視野の向こうにある不感域との間の縁領域であることが好ましい。従来の安全用レーザスキャナは、原理的には考えられるとしても、360度全周の視野は持たず、例えば270度という限られた視野の角度範囲を持っているため、いわば後方は見えない。その角度範囲(今の数値例では270~360度)は不感帯と呼ばれる。それは、そこでは物体が検出されないからである。縁領域は、視野の角度範囲から不感帯への移行部と不感帯から視野の角度範囲への移行部、例えば270度付近と360度付近という2箇所にある。これらの縁領域では従来、とりわけ二軸構造を持つ安全用レーザスキャナの場合に、特に多くの検査チャネルが必要となる。
【0027】
光方向転換素子は前記不感域に設けられていることが好ましい。安全規格の具体的な要求の1つに、検査部位を特定の最小面積で捕らえるというものがある。この有限の面積があることから、不感帯内の走査角、例えば275度付近で前面パネル反射光線を評価し、そこから言わば遡って縁領域を270度まで検査すること、そして同様に355度付近で0度からの縁領域を検査することが考えられる。
【0028】
制御及び評価ユニットは、受光器における2重反射された前面パネル反射光線の検出の感度及び/又はそれにより生成される受光信号の評価を縁領域において適合させるように構成されていることが好ましい。前面パネルの監視が、縁領域における前面パネル反射光線に基づき、特に主たる測定系が必要とされない不感帯においてもう実行される場合、前面パネルの監視の要求だけに合わせた適合化が可能である。視野内の走査角においては、物体認識の要求と前面パネルの監視の要求がしばしば反対になるため、物体認識のために感度等の設計を決定する。前面パネルの監視の感度は、汚染が確実に、ただし過敏ではない感度で検出されるように調節することが好ましい。感度は、例えば発光器の出力パワー、受光器のゲイン、又は受光信号の評価における閾値を通じて制御することができる。
【0029】
前面パネルが回転体の形状を呈し、その断面において湾曲した輪郭を呈することが好ましい。この前面パネルの形状の例には、円錐台や球扇形、又は好ましくは、曲がり具合が下から上へ向けて小さくなる脚付きグラスのように湾曲した輪郭を有する脚付きグラス形がある。湾曲させることにより、前面パネルの反射光が受光器へ直接戻ってきて該受光器をまぶしく照らすことがなくなる。別の検査対象領域における2回目の反射により、前面パネル反射光線は再び非常に大きく弱められる。回転体は完全に360度をカバーする必要はなく、例えば270度の視野をカバーするだけでよいが、視野が360度未満の場合でも設計上の理由から完全な回転体にすることが考えられる。もっとも、例えば不感帯の領域においては平坦な構造形状にする等、他の形状も考えられる。
【0030】
安全用レーザスキャナが前面パネル反射光線の光路内に第1の光方向転換素子と第2の光方向転換素子を備え、特に第1の光方向転換素子は中心に配置されたモータホルダ上に配置され、第2の光方向転換素子は安全用レーザスキャナの蓋体上に配置されていることが好ましい。つまり、前面パネル反射光線は、前面パネルの別の検査対象領域に入射するまでに2回方向転換される。これらの光方向転換素子は、特にモータホルダやカバー状蓋体の反射性の表面として構成することができる。光方向転換素子の数はその都度の特定の走査角についての数、即ち同じ前面パネル反射光線の光路内にある光方向転換素子の数である。光方向転換素子を全部で2つだけにすることもできる。その場合、それらは円環状に、走査方向に一周するように構成される。あるいは異なる走査角にわたって複数の光方向転換素子を分けて配置することもできる。
【0031】
光方向転換素子は光線を弱めるように構成されていることが好ましい。そのために例えば黒塗り加工を行う。前面パネル反射光線は既に前面パネルの表面での反射により走査光線と比べて大幅に弱められている。それでも更に弱めることは、前面パネルの監視の感度を適切に調節して安全用レーザスキャナ内の不要な迷光を避ける上で有利である。既に述べたように主たる測定系の感度は該測定系の要求に合わせて調整される(ただし不感帯がある場合はそれを除く)から、それは前面パネルの監視のために制御可能な量ではない。複数の光方向転換素子により前面パネル反射光線を複数回方向転換すれば、光線を弱める走査をそれら光方向転換素子の1つ又は2つ以上において行うことができる。
【0032】
前面パネル反射光線の光路内、特に光方向転換素子上に、参照用受光器が配置されていることが好ましい。これにより、受光器又は外部の追加的な受光器を用いた前面パネル反射光線の測定を支援すること又は少なくともいくつかの走査角において置き換えることができる。参照用受光器を、例えば発光器の発光出力の監視等、主たる測定系の機能性の検査に利用したり、該参照用受光器までの光伝播時間を測定したりすることもできる。
【0033】
受光信号の比較により差分的な前面パネルの監視ができるようにするため、偏向ユニットの運動の回転方向の一部に光方向転換素子、一部に光トラップが配置されていることが好ましい。この配置は特に交互にする。このようにすれば差分測定が可能となり、監視領域内の近接した物体を確実に区別し、前面パネルの汚染を検出することができる。従って近接領域における測定結果が改善される。
【0034】
安全用レーザスキャナが仰角方向に分離した複数の走査光線を用いる多位置型スキャナとして構成され、走査光線の少なくとも1つが前面パネルの監視に用いられることが好ましい。多位置型スキャナは1つだけではなく複数の走査光線を使用し、それにより多数の監視平面を監視する。走査光線の数又は密度が十分であれば、それら走査光線の1つ又はいくつかに基づいて前面パネルの監視を行うだけで足りる。仰角方向の監視の隙間が受け入れ可能であれば、1つの走査光線を専ら前面パネルの監視のためだけに考慮することすらできる。
【0035】
安全用レーザスキャナが安全な出力を備え、制御及び評価ユニットが、検出された物体の位置を防護区域と比較し、許可なき侵入を認識した場合に前記安全な出力を保安信号で制御するように構成されていることが好ましい。防護区域の監視は危険な機械において事故を避けるための実証済みの措置である。防護区域への許可なき侵入が認識されたら、安全な出力(Output Signal Switching Device;OSSD)を通じて、安全用レーザスキャナで監視している機械に安全確保に向けた対応を始めさせる。ここで、場合によっては、保安信号を必要に応じて更に評価して抑制する安全制御装置を更に介在させる。
【0036】
本発明に係る方法は、前記と同様のやり方で仕上げていくことが可能であり、それにより同様の効果を奏する。そのような効果をもたらす特徴は、例えば本願の独立請求項に続く従属請求項に模範的に記載されているが、それらに限られるものではない。
【0037】
以下、本発明について、更なる特徴及び利点をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】安全用レーザスキャナの断面図。
図2】2重反射された前面パネル反射光線を評価することによる安全用レーザスキャナの前面パネルの監視を示す断面図。
図3図2のように光線が進行する前面パネルの概略的な3次元図。
図4図2の状況と相補的に、前面パネル反射光線のうち透過した部分を評価するような前面パネルの監視を示す断面図。
図5】検査チャネルと前面パネル反射光線の評価とを用いた前面パネルの監視のための光方向転換素子の上面図。
図6】検査チャネルを用いた前面パネルの監視により汚染が認識されるゾーン及び認識されないゾーンを含む様々なゾーンを有する前面パネルを広げた状態で示す図。
図7図6のうち不感帯に至る縁領域内の、より狭い角度範囲にわたる部分の拡大図。
図8図7に相当する図であって、前面パネル反射光線に基づく前面パネルの監視を追加した場合の図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は特に安全用レーザスキャナとして構成されたレーザスキャナ10の概略断面図である。規格に準拠した構成の安全用レーザスキャナと簡素なレーザスキャナとの違いは冒頭で説明した通りである。
【0040】
発光器12(例えば端面放射型発光器又はVCSELの形をしたレーザ)が、周期的に振幅変調された光信号、又は好ましくは少なくとも1つの短い光パルスを有する光信号を送出する。発射光は発光光学系14により平行化されて送出光線16となり、これが可動の偏向ユニット18を介して監視領域20へと方向転換され、そこに物体があればそれにより拡散反射又は直反射される。この光の一部が、入射する反射光線22としてレーザスキャナ10に戻り、偏向ユニット18により受光光学系24へ方向転換され、そこから受光器26(例えばフォトダイオード又はアバランシェフォトダイオード)へ収束される。図1に示したレーザスキャナ10は送出光線16の進路と入射する反射光線22の進路とが並んでいる二軸配置になっている。これは本発明の好ましい実施形態であるが、まずは単なる模範例と理解すべきである。
【0041】
偏向ユニット18は揺動鏡として構成することができるが、モータ28に駆動されて連続的に回転する回転鏡が普通である。あるいは、回転鏡を設けず、偏向ユニット18を発光器12及び受光器26と一緒に回転式測定ヘッドとして構成する。偏向ユニット18のその都度の角度位置はエンコーダ30を用いて取得される。こうして、発光器12により生成される光線16が、その運動により形成される監視領域20を塗りつぶすように掃引される。監視領域20からの反射光線22が受光器26により捕らえられると、エンコーダ30を用いて得られる偏向ユニット18の角度位置から監視領域20における物体の角度位置を推定することができる。
【0042】
追加的に、光線16の送出から、監視領域20内にある物体の表面での反射の後、反射光線22が受光されるまでの光伝播時間が算出される。そのためにあらゆる光伝播時間法が考えられる。光伝播時間から物体とレーザスキャナ10の間の距離が光の速度を用いて推定される。この評価は評価ユニット32において行われる。そのために該ユニットは発光器12、受光器26、モータ28及びエンコーダ30と接続されている。
【0043】
そうすると前記角度と距離から監視領域20内の全ての物体の2次元極座標が利用可能になる。従って監視領域20内には、操作者又はその身体の一部のような許可なき物体が侵入してはならない2次元的な防護区域を定めることができる。評価ユニット32が防護区域への許可なき侵入を認識したら、例えば監視対象の危険な機械を停止したり安全な位置へ移動させたりするために、安全な出力34(Output Signal Switching Device;OSSD)を通じて安全確保に向けた遮断信号が出力される。また、特にレーザスキャナ10が安全用レーザスキャナではなく、従って防護区域を監視していない場合には、代わりに出力34を通じて測定データが出力される。
【0044】
上に挙げた機能上の構成要素は全てケーシング36内に配置されている。ケーシング36は光が出射及び入射する領域において全周を取り囲む前面パネル38を備えている。前面パネル38は回転体として構成されていることが多いが必須ではなく、いずれの場合でも必ずしも360度にわたって延在する必要はないため、その場合は一定の角度範囲が不感帯として残る。前面パネル38はその断面において一定の輪郭を呈し、図1の例ではそれが脚付きグラス状に湾曲している。もっとも他の湾曲の仕方や、直線的な輪郭さえも考えられ、その場合は全体として円錐台の形になる。前面パネル38はその下部領域が台座部40により、上部領域がカバー状蓋体42により閉鎖されている。
【0045】
前面パネル38の透光性を監視するため、円周に沿って複数の検査チャネルが分配されている。断面図ではそのうち1つの検査チャネルだけが確認できる。検査用発光器44と検査用受光器46が前面パネル38に対して外側に配置されているが、台座部40内ではレーザスキャナ10の内部に収納されていてもよい。検査用発光器44の検査光48はまず台座部40を通って外側空間に出た後、前面パネル38を通り抜けてレーザスキャナ10の内側へ入る。そこで検査光はカバー状蓋体42に取り付けられた検査光反射器50の表面で反射され、下方に向かって再び前面パネル38と台座部40を通り抜けて検査用受光器46まで戻る。代案の実施形態では、検査チャネルが図のような反射型光遮断機の原理によってではなく一方向型光遮断機のように構成される。その場合、検査用受光器46が内部で検査光反射器50の位置に取り付けられ、検査光反射器50はなくなる。
【0046】
検査用受光器46の検査信号に基づいて評価ユニット32は、例えば規定レベルとの比較により、前面パネル38の透光性が検査光48の貫通点において減損しているかどうか検査することができる。レーザスキャナ10の安全な機能をもはや保証できないような減損が認められた場合、安全確保に向けた対応が開始される。
【0047】
図1に描かれた検査チャネルは主に均一な汚染の認識に用いられる。局所的な汚染や操作(実際にはこれらは例えば20%という特定の拡散反射率を持つ検査部位で表される)を認識するため、本発明では送出光線16に基づく前面パネルの監視が行われる。それを以下に説明する。必要な検査チャネルの数を減らすために2つを組み合わせることが有利である。事情によっては検査チャネルを完全になくすことができる。
【0048】
図2は光線方向転換による前面パネル38の検査及び操作の検出の機能原理を説明するためにレーザスキャナ10の断面図の一部を示している。この前面パネルの監視は、前面パネル38のうち送出光線16がレーザスキャナ10から出る場所である第1の領域52における送出光線16の前面パネル反射に基づいている。送出光線16のうちそこで反射された部分を前面パネル反射光線54と呼び、これがレーザスキャナ10の内部で第1の光方向転換素子56及び第2の光方向転換素子58の表面で方向転換させられることで、別の領域60において前面パネル38に再び当たる。2つの光方向転換素子56、58はここでは鏡として構成されており、モータ28のモータホルダ又はカバー状蓋体42にそれぞれ取り付けられている。代案として、プリズムを用いる等他の形態の光方向転換、他の箇所への取り付け、光方向転換の数の変更も考えられる。専用の光方向転換素子56、58の代わりに適切な鏡面性又は光沢を持つ表面を用いることもできる。例えば、第1の光方向転換素子56はモータホルダの黒い光沢のある表面でもよい。
【0049】
別の領域60は反射光線22の光路内にある。なぜならそこでは前面パネル38の汚染又は他の減損がレーザスキャナ10の機能性に関わるからである。前面パネル反射光線54はこの別の領域60でもう一度反射され、それにより生じる2重反射された前面パネル反射光線62が受光器26に入射する。従って、この前面パネルの監視は監視領域20にある物体の距離を測定するための本来の測定系に統合されている。そのために追加の能動的な部品は必要ない。
【0050】
この前面パネルの監視は透過ではなく反射に基づいており、故に例えば黒っぽいほこりはあまり検出できないため、達成すべき安全性の分類に応じてそれを図1の検査チャネルと組み合わせることが好ましい。その場合、2重反射された前面パネル反射光線62を用いた測定が局所的な減損の認識に寄与する一方、検査チャネルは黒っぽいほこりによる均一な汚染を特に担当する。ここでは安全規格IEC/EN61496-3を代表として挙げ、検査部位はこの規格に従った局所的な汚染又は操作を模擬するものとする。この検査部位については20%という拡散反射率が要求されるが、これは図2に従った光線方向転換を用いて確実な検出を行う上で十分である。一方、均一な汚染の認識は例えば45度という比較的大きな角度部分における抜き取り検査的な検出により行われるため、検査チャネルの数は、これらの検査チャネルのみに基づく従来の前面パネルの監視に比べて大幅に少なくなる。図3はこの光線方向転換を前面パネル38の概略的な3次元図で補足的に示している。
【0051】
前面パネルの監視の検出感度は、前述の検査部位が予め設定された拡散反射率で確実に検出される一方、減損に対して敏感に反応し過ぎないように調整する必要がある。後者は安全上の問題ではないが、そうしなければレーザスキャナ10が実際にはまだ何ら脅威ではない機能的損失をあまりに頻繁に管理下に置こうとするため、可用性が不必要に低下してしまう。故に、例えば光方向転換素子56、58の少なくとも1つを黒塗りにする若しくはマスクする、又は適宜の緩衝性材料を選ぶといった方法で、前面パネル反射光線54を光方向転換の際に弱めることが有意義となり得る。いくつかの実施形態では、光方向転換素子56、58の少なくとも1つをモータホルダ若しくはモータ28又はカバー状蓋体42の黒い光沢を持つ表面から成るものとすれば足りる。
【0052】
図4は、2重反射された前面パネル反射光線62ではなく、それと相補的な、前記別の領域60を透過する前面パネル反射光線64を図2と同様の図で示している。この光線は測定を妨害しないようにケーシング36の台座部で単に吸収させてもよい。図4ではその代わりに台座部上に追加の受光器66が設けられている。これにより、前記別の領域60において前面パネル38に減損がないか、前面パネル反射光線54で透過方式により追加的に又は代わりに検査することができる。従って、前面パネル反射光線54に基づいてでも黒っぽい汚染が認識され、従来の検査チャネルが更に削減されるか、完全に置き換えられる。その上、追加の受光器66を利用して、発光器12の出力パワーを監視すること、あるいは光伝播時間を測定し、以て参照標的の機能を実現することさえできる。
【0053】
図5はカバー状蓋体42の底面図である。この実施形態ではレーザスキャナ10が送出光線16の面内の全周360度のうち例えば270度の走査範囲又は視野(FOV:Field of View)だけを監視する。残りの角度範囲(ここでは270度と360度の間)では監視領域20内の物体が検出されないため、そこは不感帯と呼ばれる。他の実施形態では視野(FOV:Field of View)をより狭くしたり、最大360度まで広げたりできる。
【0054】
視野に沿って検査光反射器50が配置されている。これらは前面パネルの監視の従来部分のための検査チャネルに属する。縁領域と呼ばれる、視野と不感帯の間の各移行領域には、前面パネル反射光線54を方向転換させるための第2の光方向転換素子58がそれぞれ設けられている。
【0055】
即ち、前面パネル反射光線54に基づく前面パネルの監視は本実施形態では視野の部分領域(ここでは縁領域)に限定されている。そうしなければ、以下に図6図8を参照して更に説明するように、この領域では非常に多くの従来型検査チャネルを配置しなければならない。前面パネル反射光線54を用いて追加的に前面パネルを監視すれば、検査チャネルの網が比較的粗くても均一な黒っぽい汚染を認識するには十分である。
【0056】
一見すると第2の光方向転換素子58は、縁領域内ではあるがそれでも視野の内側に配置する必要があるかのように思われる。しかし実際には検査部位又は想定される局所的な減損にはある程度角度の広がりがある。そのため、光方向転換素子58を、図5に示したように部分的に、又はそれどころか完全に、少なくとも2~3度不感帯内へずらすことができる。そうすると、視野内にある前面パネル38の縁領域を言わば遡及的に又は先行して検査することになる。例えば視野が0度~270度の場合、前面パネルの監視は272.5度又は275度付近でようやく、あるいは355度又は357.5度付近で早めに行われる。不感帯には普通、構造上の理由があるため、前面パネルの監視のための光路はそれにも関わらず前記の角度付近ではまだ少なくとも大部分が妨害されない状態にあるのが当然とみなしてよい。
【0057】
不感帯から前面パネルの監視を行う利点は主たる測定からの切り離しである。それはまた主たる測定系の感度を前面パネルの監視の要求に合わせて切り替えることも可能にする。例えば不感帯の内側では、検出閾値、ひいては汚染された前面パネル38に対する光線方向転換の感度をソフトウェアにより別個に調節する。視野の内側では、光伝播時間測定と確実な物体検出のためにパラメータ設定が予め決まっているから、検出閾値を自由に変更できない。
【0058】
図6図8はそれぞれ、広げた状態で描かれた前面パネル38の様々な領域をグレー符号化で示している。X方向は回転角又は走査角、Y方向は高さを表している。図6は検査チャネル44、46、50だけを用いて前面パネルを監視した場合の前面パネル38を完全に示している。なお、完全な視野はこの例では280度であるが、対称性があるためY軸での鏡像化により補うことができる。図7は視野から不感帯への移行が生じる140度を含む角度範囲の部分拡大図である。図8は、図7の状況において、検査チャネル44、46、50がこの140度付近の移行領域において前面パネル反射光線54に基づく前面パネルの監視の分だけ補足的に補われた状態を示している。
【0059】
中程度の灰色の領域68では検査部位が送出光線16で直接検出される。黒色の領域70では検査部位は検出されないが、そこは反射光線22の通過領域ではないため問題とならない。濃い灰色の領域72は検査チャネル44、46、50によりカバーされている。それでも、検査部位が気付かれないままになる明るい領域74が残っている。この隙間は検査チャネル44、46、60を追加すれば塞ぐことができるが、それには検査チャネル44、46、60の網を密にするための相当なコストが必要となる。理解のために補足すれば、中程度の灰色の領域68は様々な走査角にわたっているが、レーザスキャナ10が二軸構造であるため言わば高さ方向に振れている。そのため、偏向ユニット18が1回転する間に送出光線16と反射光線22が互いの周りを1回回転する。これは図1図2において方向転換が180度ずれていることを見れば容易に分かる。二軸型レーザスキャナ10のこの挙動が前面パネルの監視を難しくする。
【0060】
図8を見れば分かるように、前面パネル反射光線54を用いた補完的な前面パネルの監視により検査部位が捕らえられる白色の領域76が、それまで検査部位が気付かれないままであった明るい領域74をほぼ完全に押しのけている。残りの部分は反射光線22のわずかな部分しか隠さず、レーザスキャナ10の検出損失を生じさせないため、重要ではない。
【0061】
前面パネル反射光線54を用いた前面パネルの監視を縁領域に限定するのは単なる例に過ぎない。代案として、領域の数を増やしたり、領域を大きくしたり、全視野を含めたりすることができる。そうすると図8の白色の領域76もそれに応じて拡大する。こうして更に別の検査チャネル44、46、50や、全ての検査チャネルさえ置き換えることができる。
【0062】
レーザスキャナ10の図示せぬ有利な一実施形態では、光方向転換素子56、58が、方向転換させる領域と吸収する領域(つまり光トラップ)とが交互に表れる一種の柵状構造体として構成される。これにより、一種の差分測定を行って、前面パネルの監視と監視領域20のうち近い領域にある物体との重畳を考慮することができる。このような差分処理を行わなければ、非常に近い物体と減損のある前面パネル38を十分に区別できない。吸収を受けた前面パネル反射光線54と反射された同光線54をそれぞれ用いて得た受光信号の比較によりそれが改善され、それにより、防護区域が非常に近く、その防護区域の近くに物体がある場合の可用性が高まる。
【0063】
ここまでは1本の送出光線16、従って1つの監視平面を持つレーザスキャナ10について説明してきた。本発明に係る前面パネルの監視は多位置型スキャナにも応用できる。これは、仰角方向に重なった複数の走査光線を有し、以て複数の平面によって、より正確には入れ子になった砂時計のような構造で空間領域を監視するレーザスキャナである。複数の走査光線は複数の発光器により又は光線分割により生じ、それに対応して複数の受光器、又は複数の受光領域若しくは画素を持つ1つの受光器において受光される。
【0064】
多位置型スキャナは複数の平面で物体を捕らえるため、統計的には局所的又は均一な汚染が原因で検出損失に至る可能性はより低い。故に、より多くの従来型検査チャネルをなくすこと、又は前面パネルの監視を方向転換された前面パネル反射光だけに基づいて行うことができる。また、前面パネルは複数の走査光線の一部だけを用いて検査すれば十分である。更にこのような前面パネルの監視には既存の多位置型スキャナに比較的低コストで付加できるという利点もある。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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