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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】同軸熱電対を備えたカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021060067
(22)【出願日】2021-03-31
(62)【分割の表示】P 2016098608の分割
【原出願日】2016-05-17
(65)【公開番号】P2021100662
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】14/714,904
(32)【優先日】2015-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-285534(JP,A)
【文献】特開2002-119519(JP,A)
【文献】特表平09-502259(JP,A)
【文献】特表2002-513622(JP,A)
【文献】特開平05-299703(JP,A)
【文献】特開2010-060445(JP,A)
【文献】特開平01-105411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/08-18/16
G01K 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度検出伸張性部材を備える医療装置であって、
前記温度検出伸張性部材は、
(a)遠位端と近位端を備える遠位端電極であって、前記遠位端が治療処置のために組織に接触しかつ切除するように構成され、前記近位端が第1および第2の止まり穴を有し、前記第2の止まり穴は既知の深さを有する、遠位先端電極と、
(b)前記遠位端電極にアブレーションエネルギーを供給するように構成された導線であって、前記導線の遠位端が前記第1の止まり穴に固定されている、導線と、
(c)前記遠位端電極の温度を感知するように構成された細長い本体であって、前記細長い本体が近位端と遠位端を備える、細長い本体と、を備え、
前記細長い本体は、
(i)第1の金属材料のコアであって、長手方向軸線を画定するコアと、
(ii)前記コアを円周方向に囲む、セラミック材料の第1の同軸層と、
(iii)前記第1の同軸層を円周方向に取り囲む、第2の金属材料の第2の同軸層であって、前記第2の金属材料は、前記第1の金属材料とは異なり、前記第1の同軸層は、前記本体の長さに沿って前記コアと前記第2の同軸層とを互いに電気的に絶縁する、第2の金属材料の第2の同軸層と、
(iv)前記細長い本体の遠位端上のハンダキャップであって、前記ハンダキャップは前記細長い本体の遠位端で前記コアと前記第2の同軸層とを電気的に接続し、前記コアと前記第2の同軸層とが熱電対の温接点を形成し、前記細長い本体の前記遠位端は前記ハンダキャップが前記第2の止まり穴の底部に接触するように、前記第2の止まり穴内に折り曲げられずに直線的に収容され、前記細長い本体により温度が測定されるとき、前記遠位端電極に対する前記ハンダキャップの正確な位置が既知であるように構成される、ハンダキャップと、を備える、
医療装置。
【請求項2】
前記コアがコンスタンタンを含み、前記第2の同軸層が銅を含む、請求項1に記載の温度検出伸張性部材を備える医療装置。
【請求項3】
前記コアが銅を含み、前記第2の同軸層がコンスタンタンを含む、請求項1に記載の温度検出伸張性部材を備える医療装置。
【請求項4】
前記セラミック材料が粉末状である、請求項1に記載の温度検出伸張性部材を備える医療装置。
【請求項5】
外側保護シースをさらに含む、請求項1に記載の温度検出伸張性部材を備える医療装置。
【請求項6】
前記外側保護シースが電気的に非導電性である、請求項5に記載の温度検出伸張性部材を備える医療装置。
【請求項7】
前記セラミック材料の前記第1の同軸層は、前記細長い本体が最初に組み立てられたときは固体状であり、前記温度検出伸張性部材が最初に組み立てられたときは粉末状である、請求項1に記載の温度検出伸張性部材を備える医療装置。
【請求項8】
医療装置であって、
(a)細長いカテーテル本体と、
(b)前記細長いカテーテル本体に取り付けられた、遠位端と近位端を備える遠位端電極であって、前記近位端が既知の深さを有する止まり穴を備える、遠位端電極と、
(c)伸張性の本体を備える熱電対であって、前記カテーテル本体に沿って延在し、前記遠位端電極の前記止まり穴に受け入れられる遠位端を少なくとも有する、熱電対と、を備え、
前記熱電対は、
(i)長手方向軸を画定する第1の金属材料のコアと、
(ii)長さ方向に沿って円周方向に前記コアを囲む同軸絶縁材料であって、前記同軸絶縁材料は、成形プロセスにおいて前記伸張性の本体がダイを通して引き出される前は、中実環状部材である、同軸絶縁材料と、
(iii)前記同軸絶縁材料を長さ方向に沿って円周方向に取り囲む第2の金属材料の同軸層と、
(iv)前記伸張性の本体の前記遠位端上のハンダキャップであって、前記コアと前記第2の金属材料の同軸層とを電気的に接続し、前記コアと前記第2の金属材料の同軸層との間の接続が温接合を形成し、前記熱電対の前記遠位端は前記ハンダキャップが前記止まり穴の底部に接触するように、前記止まり穴に折り曲げられずに直線的に収容され、前記伸張性の本体により温度が測定されるとき、前記遠位端電極に対する前記ハンダキャップの正確な位置が既知であるように構成される、ハンダキャップと、を備える、
医療装置。
【請求項9】
前記コアはコンスタンタンを含み、前記第2の金属材料の同軸層は銅を含む、請求項8に記載の医療装置。
【請求項10】
前記コアが銅を含み、前記第2の金属材料の同軸層がコンスタンタンを含む、請求項8に記載の医療装置。
【請求項11】
前記同軸絶縁材料は、セラミック微粒子を含む、請求項8に記載の医療装置。
【請求項12】
外側保護シースをさらに含む、請求項8に記載の医療装置
【請求項13】
前記外側保護シースが、非導電性である、請求項12に記載の医療装置
【請求項14】
(a)細長いカテーテル本体と、
(b)前記細長いカテーテル本体に取り付けられた、遠位端と近位端を備える遠位端電極であって、前記近位端が既知の深さを有する止まり穴を備える、遠位端電極と、
(c)伸張性の本体を備える熱電対であって、前記カテーテル本体に沿って延在し、前記遠位端電極の前記止まり穴に受け入れられる遠位端を少なくとも有する、熱電対と、を備え、
前記熱電対は、
(i)長手方向軸を画定する第1の金属材料のコアと、
(ii)長さ方向に沿って円周方向に前記コアを囲む同軸絶縁材料であって、前記同軸絶縁材料は、成形プロセスにおいて前記伸張性の本体がダイを通して引き出される前は、中実環状部材である、同軸絶縁材料と、
(iii)前記同軸絶縁材料を長さ方向に沿って円周方向に取り囲む第2の金属材料の同軸層と、
(iv)前記伸張性の本体の前記遠位端上のハンダキャップであって、前記コアと前記第2の金属材料の同軸層とを電気的に接続し、前記コアと前記第2の金属材料の同軸層との間の接続が温度を計測するように構成された温接合を形成し、前記熱電対の前記遠位端は前記ハンダキャップが前記止まり穴に収容され、前記温度が測定されるとき、前記遠位端電極に対する前記ハンダキャップの正確な位置が既知であるように構成される、ハンダキャップと、
(v)外側保護シースであって、前記外側保護シースは非導電性の材料で形成される、外側保護シースと、
を備え
前記細長いカテーテル本体の前記遠位端は、折り目を生じることなく前記止まり穴に直線的に収容され、
前記ハンダキャップが、前記止まり穴の底部と接触してい医療装置。
【請求項15】
前記コアはコンスタンタンを含み、前記第2の金属材料の同軸層は銅を含む、請求項14に記載の医療装置。
【請求項16】
前記コアが銅を含み、前記第2の金属材料の同軸層がコンスタンタンを含む、請求項14に記載の医療装置。
【請求項17】
前記同軸絶縁材料は、セラミック微粒子を含む、請求項14に記載の医療装置
【請求項18】
温度検出伸張性部材をさらに備え、
前記同軸絶縁材料は、前記細長いカテーテル本体が最初に組み立てられたときは固体状であり、前記温度検出伸張性部材が最初に組み立てられたときは粉末状である、請求項14に記載の医療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル及び電気生理学的カテーテルに関し、具体的には、心組織アブレーション及び診断のためのカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓及び他の組織の高周波(RF)アブレーションは、電極の先端において熱傷損傷部を生成する周知の方法である。高周波電流は、皮膚(アース)パッチと電極との間、又は2つの電極の間で送達される。電極と組織の境界面における電気抵抗は、小さい面積の直接抵抗加熱をもたらし、そのサイズは、電極のサイズ、電極と組織の接触面積、及び電流(密度)に応じて決まる。更なる組織加熱は、組織内の熱をより大きい範囲へと伝導することによってもたらされる。約50~55℃の閾値を超えて加熱された組織は、不可逆的に損傷を受ける(アブレーションされる)。
【0003】
抵抗加熱は、電気抵抗によるエネルギー吸収によって起こる。エネルギー吸収は、電流密度の二乗に相関し、組織の導電性と逆相関する。電流密度は、接触部位の導電性及び電圧と共に変動し、アブレーション用電極からの距離の二乗に反比例して変動する。したがって、エネルギー吸収は、導電性、印加電圧の二乗と共に変動し、また、電極からの距離の四乗に反比例して変動する。したがって、抵抗加熱は、距離による影響を最も強く受け、アブレーション電極からの非常に短い距離に浸透する。残りの損傷部は、抵抗加熱の範囲からの熱伝導によって作り出される。これにより、表面電極から送達することができるアブレーション損傷部のサイズに対して制限が与えられる。
【0004】
損傷部のサイズを増加させる理論上の方法は、電極のサイズを増加させることと、組織と接触する電極の面積を増加させることと、組織の導電性を増加させ、組織に浸透してより深い深さを達成し、接触面積を増加させることと、最大損傷部サイズが達成されるまで(完全成熟の場合、60~90秒)RFを送達することとを含む。
【0005】
電極は、対象の組織に直接的(浅層/皮膚組織の場合)、外科的、内視鏡的、腹腔鏡的、又は経皮経管的(カテーテルを用いた)アクセスを使用して、導入することができる。カテーテルアブレーションは、十分に説明され一般に行われている方法であり、それによって多くの心臓不整脈が治療されている。
【0006】
カテーテルアブレーションは、不十分な損傷部サイズによって制限される場合がある。内視鏡的アプローチによる組織のアブレーションによって、組織が加熱されるだけでなく、電極も加熱される。電極が臨界温度に達すると、血液タンパク質の変性によって凝塊が形成される。その結果、インピーダンスが上昇し、電流の送達が制限される可能性がある。組織内において、過熱が蒸気泡の形成を引き起こす(蒸気が「発泡する(pops)」)と共に、制御されない組織の破壊又は身体構造の望ましくない穿孔のリスクを伴う可能性がある。心臓アブレーションでは、臨床的成功は、先端の能動的な冷却を伴うカテーテルを使用した場合であっても、不十分な損傷部の深さ及び横断直径によって妨げられる場合がある。理論上の解決策には、電極サイズを増加させる(接触面を増加させ、血流による対流冷却を増加させる)こと、電極・組織間の接触を改善すること、流体注入によって電極を能動的に冷却すること、電極の材料組成を変更して組織への電流送達を改善すること、及び電流の送達をパルス化して断続的な冷却を可能にすることが含まれている。
【0007】
従来型のカテーテルは、組織と接触するように適合されている遠位部分で、温度を測定するように装備されている。典型的に、このカテーテルは、制御ハンドルから延び、カテーテルシャフトを通り、遠位部分に達する熱電対ワイヤペア80及び82を含み、この遠位部分に、ワイヤペアの「温」接点すなわち温度測定接点Hが配置される。図3Bに示すように、ワイヤペア80及び82は典型的に、当該技術分野で周知のように、絶縁被覆85が剥がされ、ねじられ、ハンダ付けされ、かつ遠位端電極84内に形成された止まり穴86内に収容されている。しかしながら、ワイヤペア80及び82の被覆が剥がされ、ねじられて、通常はそれ自体がUターン形状88に折り曲げられているため、止まり穴86の深さが既知であり得るとしても、止まり穴86内又は尖端電極84に対する遠位端の「温」接点Hの正確な位置は不明である。別の組立方法には、バイファイラワイヤの小さな領域の絶縁をレーザー剥離し、次いでその場所でワイヤをハンダ付けで接合する方法が挙げられる。熱電対接点を形成するこれら2つの方法では、止まり穴の一番底に接合を形成する能力は限定されている。熱電対接点の正確な位置は、ワイヤが電気的に接続される場所に隣接した場所である。よって、温度が実際に測定される場所は、設計上、少なくとも、ハンダ付け接合の軸方向長さに限定される。特定のタイプのカテーテルにおいて、少なくとも数10分の1ミリメートルまでの温接点の位置精度を有することが望ましく、また熱電対接点を穴のできるだけ深い位置に配置することが望ましい。よって、温度が検出されるより正確な位置が既知であるような温度センサー付きカテーテルが望まれている。更に、従来の熱電対ワイヤペアは、図3Cに示すように、扱いにくい外形を有しており、これはしばしば2本のワイヤの間で分離又は裂開が起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、温度検出エレメントの位置がより正確であるような温度センサー付きカテーテルが望まれている。特に、より正確な「温」接点の位置を有する熱電対ワイヤペアと、改善された外形と、より丈夫な構造と、より容易な組立方法とを備えたカテーテルが望まれている。カテーテル内のスペースには常に制約があるため、より細い熱電対ワイヤペアを備えたカテーテルが更に望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、より正確な温度検出位置を有する温度センサーを目的とする。温度センサーは、温度測定のために第1金属性材料と第2金属性材料とが互いに電気的に接続される、より正確な「温」接点を有する同軸熱電対ワイヤペアを含む。
【0010】
一実施形態において、本発明は、医療装置(例えば電気生理学的カテーテル)と共に使用するための温度検出伸張性部材を含み、これは、近位端及び遠位端を有する細長い本体を含む。この本体は、第1金属性材料のコアであって、長手方向軸を画定する、コアと、コアを周方向に取り囲む絶縁材料の第1同軸層と、第1層を周方向に取り囲む第2金属性材料の第2同軸層と、を含み、第2金属性材料が第1金属性材料とは異なり、絶縁材料の第1層が、本体の長さに沿ってコアと第2層との間を互いから電気的に絶縁し、絶縁材料の第2層が、アセンブリを取り囲んで、アセンブリを環境から電気的に絶縁している。部材は更に、遠位端にあるハンダキャップであって、コアと第2層とを遠位端で電気的に接続している、ハンダキャップを含む。
【0011】
より詳しい一実施形態において、コアはコンスタンタンを含み、第2層は銅を含み、又は逆もまた同様であり、絶縁材料は、セラミック及び/又はポリマーを含む。
【0012】
より詳しい一実施形態において、部材は更に、非導電性の外側保護シースを含む。
【0013】
より詳しい一実施形態において、本体はダイを通して引き抜かれている。
【0014】
本発明はまた、電気生理学的カテーテルも目的とし、この電気生理学的カテーテルは、細長いカテーテル本体と、遠位側電極部材と、伸張性本体を有する温度センサーとを備え、伸張性本体は、カテーテル本体を通って延在し、少なくとも遠位側電極部材内に収容される遠位端を有する。温度センサーは、長手方向軸を画定する第1金属性材料のコアと、コアを周方向に取り囲む同軸絶縁材料と、絶縁材料を周方向に取り囲む第2金属性材料の同軸層と、アセンブリを周方向に取り囲む同軸絶縁材料と、伸張性本体の遠位端にあるハンダキャップであって、コアと層とを電気的に接続している、ハンダキャップとを含む。
【0015】
より詳しい一実施形態において、本体はダイを通して引き抜かれており、同軸絶縁材料は、セラミック微粒子を含む。
【0016】
本発明は更に、電気生理学的カテーテルと共に使用するように適合された同軸熱電対ワイヤペア部材の製造方法を含み、この方法は、長手方向軸を画定する第1金属性材料のコアを提供することと、コアを絶縁セラミック材料で同軸状に取り囲むことと、絶縁材料を、第1金属性材料とは異なる第2金属性材料で同軸状に取り囲むことと、ダイを通して部材を引き抜くことと、アセンブリをポリマーコーティングで絶縁することと、部材の遠位端にハンダを適用して、コアと層とを遠位端で電気的に接続することとを含む。
【0017】
より詳しい一実施形態において、この方法は、ダイを通して部材を引き抜いた後、遠位端にハンダを適用する前に、遠位端をトリミングしてコア及び層を露出させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、添付の図面と共に考慮するとき、以下の詳細な説明を参照することによって更に理解されよう。
図1A】一実施形態による、本発明の引き抜かれた層状部材の斜視図である。
図1B図1Aの引き抜かれた層状部材の端部の詳細図である。
図2A】一実施形態による、本発明の引き抜かれた熱電対ワイヤペア部材を形成している、遠位端にあるハンダキャップを含む、引き抜かれた層状部材の側断面図である。
図2B図2Aの引き抜かれた層状部材の、線B-Bに沿った端部断面図である。
図2C】一実施形態によるハンダ付け近位端を含む、図2の引き抜かれた層状部材の側面図である。
図3A】一実施形態による引き抜かれた層状部材を備えた、本発明のカテーテルの遠位先端部分の側断面図である。
図3B】先行技術の従来のカテーテルの遠位先端部分の側断面図である。
図3C図3Cの従来の熱電対ワイヤペアの、線C-Cに沿った端部断面図である。
図4】一実施形態による、本発明のカテーテルの平面図である。
図5】本発明の一製造方法による、引き抜かれている層状部材の側面図である。
図6】引き抜かれる前の本発明の層状部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1、2A及び2Bを参照して、本発明の引き抜かれた熱電対同軸ワイヤペア部材10は、概ね円形の断面を備えた単一の細長い伸張性本体12を含む。部材10は、本体12の長手方向軸を画定する導電性コア14を有する。コア14は、ワイヤペアの第1ワイヤとして、金属性材料を含む。部材10はまた、ワイヤペアの第2ワイヤとして、異なる又は異種金属性材料を含む導電性同軸層16を有する。有利にも、金属性コア14と金属性層16との間には、本体12の長さに沿って延在する絶縁層18があり、これは、コア14を取り囲み、そのコア14を層16から分離及び絶縁する。コア14及び金属性層16は、任意の好適な金属であってよく、例えばコンスタンタンと銅、又は逆もまた同様であってもよい。絶縁層18は任意の好適な材料であってよく、例えばセラミックであってよい。部材全体を覆うよう、電気的絶縁外側シース26が提供され得る。図2Bに示すように、部材10は、概ね円形の断面を提供する同軸構造を備え、有用性、便利さ及び審美性の点で、改善されたプロファイルを有する。部材10の第1及び第2ワイヤの金属性材料は、銅及びコンスタンタン、又は逆もまた同様であり得る。あるいは、これらは、熱電対を形成する任意の他の異種金属であってもよい。絶縁層18は、例えばポリマー及び/又はセラミックを含めて任意の好適な材料で構築されてよい。絶縁シース26は、例えばポリマーセラミックを含めて任意の好適な材料で構築されてよい。シース26を適用する好ましい方法は、当該技術分野で示されるように、磁性ワイヤを絶縁するのに使用されるフィルム流延手法であり得る。
【0020】
図2Aに示すように、部材10の遠位端12Dは、コア14と層16との間に回路Cの遠位接合部を形成する充填材金属のハンダキャップ20Dを有する。遠位側ハンダキャップ20Dは、「温」接点又は「測定接点」として、組織の温度を測定するように適合される。図2Cに示すように、近位側では、2つの導電性層が、対応する材料のワイヤに取り付けられている。これは、シース26並びに層16及び18を研磨して、部材10の近位端12Pから除去し(破線として図示)、コア14を露出させることによって達成され得る。この研磨より遠位側で、シース26を機械的又は熱的に除去して、層16を露出させることができる。露出させた後、層14及び16を回路にハンダ付けすることができか、又は、それぞれ20P1及び20P2でこれらに直接ハンダ付けされた、対応する材料のワイヤW1及びW2を有することができる。この取り付けに使用されるハンダ20P1及び20P2、及び遠位側ハンダキャップ20Dは、当業界で好ましいとされる任意のハンダであってよいが、通常は、主にスズからなる。
【0021】
図3Aを参照して、カテーテル遠位端32は、診断及び/又は治療手順のために組織と接触するように適合された遠位端30Dを有する遠位端電極30を含み、この診断及び/又は治療手順は、遠位端が止まり穴42に固定されて収容されている導線40を使って行われる。先端電極30は近位端30Pも有し、この面は、本発明の熱電対ワイヤペア部材10の遠位端12Dとハンダキャップ20Dとを受容するための止まり穴34を備えて構成される。止まり穴34は、端又は「底」36に所定の既知の深さXを有しており、ここに、遠位側ハンダキャップ20Dが配置され、部材10の部分が折れる又は曲がることなく線状に穴34内に収容される。よって、遠位端電極30で部材10により温度が測定されるとき、遠位側ハンダキャップ20D(「温接点」)の正確な位置は、遠位端電極に対して既知である。当業者には理解されるように、部材10は、遠位端32から、カテーテルシャフト62(屈曲部分64を備える)を通り、制御ハンドル66内まで延在しており、図4に示すように、ハンドルの近位端で電気的コネクター68に接続されている。1つ又は2つ以上の部材10を任意の遠位側電極アセンブリと共に使用することができ、このアセンブリは、例えば円形、ラッソー形、バスケット形、又は棘状カテーテルなどの2D形状又は3D形状(2-D configuration of a 3-D configuration)を有することを更に理解されたい。
【0022】
本発明は、熱電対ワイヤペア部材10の製造方法を含む。熱電対ワイヤペアは最初に、医療用及び産業用利用の精密ワイヤ系材料の製造メーカーであるFort Wayne Metals Research Products Corporation(Fort Wayne,Indiana)が所有及び実践している引き抜きプロセスにより成形することができる。図6を参照して、層状(引き抜き済み)の部材10’は、第1金属性材料の細長い中実コア14を含み、この中実コア14は、絶縁層18を形成する絶縁材料(例えばセラミック)の層で周方向に取り囲まれる。コア14と層18は、コアの第1金属性材料とは異なる第2金属性材料の層で周方向に取り囲まれ、これが外側層16を形成している。部材10’は、中実のロッドとして構成されているコア14を、層18の第1内側中空チューブ内に挿入し、次にこれらを一緒に、層16の第2外側中空チューブ内に挿入することで、組み立てることができる。図5を参照して、部材10’は、上述のように、元の外径D1を有しており、これが、部材10’の端を受容するように適合されたダイ50を通って、望ましい形状及び寸法に引き抜かれ、これには、結果として得られる引き抜かれたより小さな外径D2が含まれる。ダイホルダー52が、ダイ50を保持するために提供される。引き抜きプロセスは、望ましいように、又は適切なように、「低温」又は「高温」引き抜きであり得る。部材10’は、当該技術分野で周知のように、ダイ50を通して押し込まれるか及び/又は引っ張られることができる。部材10’がダイを通して引き抜かれるとき、コア14並びに層16及び18の一部又は全体が変形し、例えば薄く延伸されて、引き抜かれた部材10になる。絶縁層18がセラミックであるとき、セラミックは粉砕されるか、さもなければ割れて、小さな粒子になる。引き抜きを繰り返した後、セラミックは粉砕されて粉末状44になり得る。典型的に、この引き抜きプロセスは、1回に数千フィートの長さになり得る。図6に示すように、コア14並びに層18及び16を含む成形済み部材は、次に、複数の層コーティングプロセス(すなわちフィルム流延)を行って、外側に絶縁ポリマー層を適用することができる。
【0023】
部材10’を引き抜いて、望ましい直径を備えた細長い本体12を有する部材10にした後、遠位端12Dをハンダキャップのために準備することができ、これは、遠位端12Dをトリミングしてコア14及び層16を露出させ、ハンダに浸して、図2Aに示すような遠位側ハンダキャップ20Dを形成することによる。好ましくは、遠位側ハンダキャップ20Dは、外側シース26を超えて円周方向に延出していない。換言すれば、ハンダキャップ20Dの直径は、外側シース26付きの引き抜かれた部材10の直径以下である。また近位端12Pは、図2Cに示すように、すべての層(コーティング26、並びに層16及び18を含む)を除去してコアを露出させ、また若干より遠位側の位置で、コーティング26を含むすべての層を除去して層16を露出させることにより、ハンダ付けのための準備を行い、この露出したコア14及び露出した層16にそれぞれ、対応する材料のワイヤW1及びW2をハンダ付けする。
【0024】
上記の説明は、現時点における本発明の好ましい実施形態を参照して示したものである。本発明が関係する分野及び技術の当業者であれば、本発明の原理、趣旨及び範囲を著しく逸脱することなく、説明された構造の改変及び変更を実施できることが理解されよう。当業者に理解されるように、図面は必ずしも一定の縮尺ではない。また、必要に応じて、又は適切であれば、1つ又は2つ以上の実施形態の異なる特徴が組み合わされてもよい。更に、本明細書に記載のカテーテルは、マイクロ波、レーザー、高周波、及び/又は凍結材を含む、様々なエネルギー形態を印加するように適合されてよい。したがって、上記の説明は、添付図面に記載されかつ図示される厳密な構造のみに関連したものとして読み取るべきではなく、むしろ、以下の最も完全で公正な範囲を有するとされる「特許請求の範囲」と一致し、かつそれらを支持するものとして読み取るべきである。
【0025】
〔実施の態様〕
(1) 医療装置と共に使用するための温度検出伸張性部材であって、
近位端及び遠位端を有する細長い本体であって、前記本体が、
第1金属性材料のコアであって、長手方向軸を画定する、コアと、前記コアを周方向に取り囲むセラミック材料の第1同軸層と、前記第1層を周方向に取り囲む第2金属性材料の第2同軸層と、を含み、前記第2金属性材料が前記第1金属性材料とは異なり、前記第1層が、前記本体の長さに沿って前記コアと前記第2層とを互いから電気的に絶縁している、細長い本体と、
前記遠位端にあるハンダキャップであって、前記コアと前記第2層とを前記遠位端で電気的に接続している、ハンダキャップと、を備える、温度検出伸張性部材。
(2) 前記コアがコンスタンタンを含み、前記第2層が銅を含む、実施態様1に記載の温度検出伸張性部材。
(3) 前記コアが銅を含み、前記第2層がコンスタンタンを含む、実施態様1に記載の温度検出伸張性部材。
(4) 前記セラミック材料が粉砕可能である、実施態様1に記載の温度検出伸張性部材。
(5) 外側保護シースを更に備える、実施態様1に記載の温度検出伸張性部材。
【0026】
(6) 前記外側保護シースが非導電性である、実施態様5に記載の温度検出伸張性部材。
(7) 前記本体がダイを通して引き抜かれている、実施態様1に記載の温度検出伸張性部材。
(8) 医療装置であって、
細長いカテーテル本体と、
遠位側電極部材と、
伸張性本体を有する温度センサーと、を備え、前記伸張性本体が、前記カテーテル本体を通って延在し、少なくとも前記遠位側電極部材内に収容される遠位端を有しており、前記温度センサーが、
長手方向軸を画定する第1金属性材料のコアと、
長さに沿って前記コアを周方向に取り囲む同軸絶縁材料と、
長さに沿って前記絶縁材料を周方向に取り囲む第2金属性材料の同軸層と、
前記伸張性本体の前記遠位端にあるハンダキャップであって、前記コアと前記層とを電気的に接続している、ハンダキャップと、を含む、医療装置。
(9) 前記コアがコンスタンタンを含み、前記第2層が銅を含む、実施態様8に記載の医療装置。
(10) 前記コアが銅を含み、前記第2層がコンスタンタンを含む、実施態様8に記載の医療装置。
【0027】
(11) 前記同軸絶縁材料がセラミック微粒子を含む、実施態様8に記載の医療装置。
(12) 外側保護シースを更に備える、実施態様8に記載の医療装置。
(13) 前記外側保護シースが非導電性である、実施態様12に記載の医療装置。
(14) 前記本体がダイを通して引き抜かれている、実施態様1に記載の温度検出伸張性部材。
(15) 電気生理学的カテーテルと共に使用するように適合された同軸熱電対ワイヤペア部材の製造方法であって、
長手方向軸を画定する第1金属性材料のコアを提供することと、
前記コアを絶縁セラミック材料で同軸状に取り囲むことと、
前記絶縁材料を、前記第1金属性材料とは異なる第2金属性材料で同軸状に取り囲むことと、
ダイを通して前記部材を引き抜くことと、
前記部材の遠位端にハンダを適用して、前記コアと前記金属性層とを前記遠位端で電気的に接続することと、を含む、方法。
【0028】
(16) 前記引き抜かれた熱電対ワイヤペア部材の外側に、フィルム流延手法により非導電性層を形成することを更に含む、実施態様15に記載の方法。
(17) ダイを通して前記部材を引き抜いた後、前記遠位端にハンダを適用する前に、前記遠位端をトリミングして前記コア及び前記層を露出させることを更に含む、実施態様15に記載の方法。
(18) ダイを通して前記部材を引き抜くことにより、前記絶縁セラミック材料を粉砕する、実施態様15に記載の方法。
(19) ダイを通して前記部材を引き抜くことにより、前記絶縁セラミック材料を概ね粉砕して微粒子にする、実施態様15に記載の方法。
(20) ダイを通して前記部材を引き抜くことにより、前記絶縁セラミック材料を概ね粉砕して粉末にする、実施態様15に記載の方法。
【0029】
(21) 前記第1金属性材料及び前記第2金属性材料のうちの一方が銅であり、前記第1金属性材料及び前記第2金属性材料のうちの他方がコンスタンタンである、実施態様15に記載の方法。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6