(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】学習装置、推定装置、学習方法、推定方法及びコンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/16 20060101AFI20220516BHJP
G16H 50/20 20180101ALI20220516BHJP
【FI】
A61B5/16 130
G16H50/20
(21)【出願番号】P 2021061720
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】399041158
【氏名又は名称】西日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】延原 広大
(72)【発明者】
【氏名】安楽 沙希
(72)【発明者】
【氏名】梅村 和弘
(72)【発明者】
【氏名】槇林 康雄
【審査官】高松 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-22732(JP,A)
【文献】特開2020-181307(JP,A)
【文献】特開2018-7312(JP,A)
【文献】特開2016-122347(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0031000(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/16
G16H 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人物の睡眠に係る生体情報と、前記人物の認知能力に関する情報と、を対応付けた単位教師データを複数の人物に関して有している教師データについて、前記生体情報を睡眠や就床の時間に応じた複数の区間に分割することによって学習データを生成する学習データ生成部と、
前記学習データを用いて学習処理を行うことで、推定対象者の生体情報に関する情報を入力することによって前記推定対象者の認知能力に関する情報を出力する学習済みモデルを取得する学習部と、
前記学習済みモデルのデータを出力する出力制御部と、
を備える学習装置。
【請求項2】
前記複数の区間は、前記推定対象者において取得された生体情報に基づいて定められた区間である、請求項1に記載の学習装置。
【請求項3】
推定対象者の生体情報を取得する情報取得部と、
請求項1又は2に記載の学習装置によって生成された学習済みモデルと、前記推定対象者の生体情報と、を用いて推定処理を行う推定部と、
を備える推定装置。
【請求項4】
人物の睡眠に係る生体情報と、前記人物の認知能力に関する情報と、を対応付けた単位教師データを複数の人物に関して有している教師データについて、前記生体情報を睡眠や就床の時間に応じた複数の区間に分割することによって学習データを生成する学習データ生成ステップと、
前記学習データを用いて学習処理を行うことで、推定対象者の生体情報に関する情報を入力することによって前記推定対象者の認知能力に関する情報を出力する学習済みモデルを取得する学習ステップと、
前記学習済みモデルのデータを出力する出力制御ステップと、
を有する学習方法。
【請求項5】
推定対象者の生体情報を取得する情報取得ステップと、
請求項1又は2に記載の学習装置によって生成された学習済みモデルと、前記推定対象者の生体情報と、を用いて推定処理を行う推定ステップと、
を有する推定方法。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の学習装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラム。
【請求項7】
請求項3に記載の推定装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人の認知能力に関する情報を推定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、社会全体の高齢化などに伴い、認知能力の低下の抑制が社会的な課題となってきている。認知能力の低下の抑制には、なるべく早期に認知能力の低下の傾向を発見することが大切である。そのため、学習処理を行うことによって、被験者が認知症であるか否かを推定する技術が提案されてきている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では精度よく推定を行うためには、ユーザーの体に対してモニタリング装置等のセンサー類を装着させる必要があった。しかしながら、意識的にモニタリング装置等のセンサー類を装着しなければならないことで、ユーザーにとって精神的な負担や身体的な負担が生じることもあった。また、センサー類の装着し忘れによって推定を正しく行えなくなる場合もあった。一方で、より簡易なセンサーを用いてしまうと、そもそも推定の精度が大きく低下してしまうという問題があった。
【0005】
上記事情に鑑み、本発明は、人の認知能力に関する情報を、推定の対象者の負担を抑えつつ、より高い精度で推定することを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、人物の睡眠に係る生体情報と、前記人物の認知能力に関する情報と、を対応付けた単位教師データを複数の人物に関して有している教師データについて、前記生体情報を睡眠や就床の時間に応じた複数の区間に分割することによって学習データを生成する学習データ生成部と、前記学習データを用いて学習処理を行うことで、推定対象者の生体情報に関する情報を入力することによって前記推定対象者の認知能力に関する情報を出力する学習済みモデルを取得する学習部と、前記学習済みモデルのデータを出力する出力制御部と、を備える学習装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記の学習装置であって、前記複数の区間は、前記推定対象者において取得された生体情報に基づいて定められた区間である。
【0008】
本発明の一態様は、推定対象者の生体情報を取得する情報取得部と、上記の学習装置によって生成された学習済みモデルと、前記推定対象者の生体情報と、を用いて推定処理を行う推定部と、を備える推定装置である。
【0009】
本発明の一態様は、人物の睡眠に係る生体情報と、前記人物の認知能力に関する情報と、を対応付けた単位教師データを複数の人物に関して有している教師データについて、前記生体情報を睡眠や就床の時間に応じた複数の区間に分割することによって学習データを生成する学習データ生成ステップと、前記学習データを用いて学習処理を行うことで、推定対象者の生体情報に関する情報を入力することによって前記推定対象者の認知能力に関する情報を出力する学習済みモデルを取得する学習ステップと、前記学習済みモデルのデータを出力する出力制御ステップと、を有する学習方法である。
【0010】
本発明の一態様は、推定対象者の生体情報を取得する情報取得ステップと、上記の学習装置によって生成された学習済みモデルと、前記推定対象者の生体情報と、を用いて推定処理を行う推定ステップと、を有する推定方法である。
【0011】
本発明の一態様は、上記の学習装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラムである。
【0012】
本発明の一態様は、上記の推定装置としてコンピューターを機能させるためのコンピュータープログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、人の認知能力に関する情報を、推定の対象者の負担を抑えつつ、より高い精度で推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の推定システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】本発明の学習装置10の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】統一固定型の区切り方の具体例を示す図である。
【
図4】個人固定型の区切り方の具体例を示す図である。
【
図6】本発明の推定装置30の機能構成を示す概略ブロック図である。
【
図7】学習装置10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。
【
図8】推定装置30の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の推定システム100のシステム構成を示す概略ブロック図である。推定システム100は、利用者(推定対象者)の認知能力に関する情報(以下「認知情報」という。)を推定するためのシステムである。推定システム100は、情報取得装置20、推定装置30及び利用者端末40を含む。推定システム100では、学習装置10による学習処理によって生成される学習済みモデルが使用されてもよい。推定装置30及び利用者端末40は、ネットワーク90を介して通信可能に接続される。情報取得装置20は、ネットワーク90を介して推定装置30と通信する。情報取得装置20は、例えば自装置に備えられた通信装置を用いて直接ネットワーク90に接続されてもよいし、利用者端末40との間で通信し、利用者端末40を経由することでネットワーク90に接続されてもよい。ネットワーク90は、無線通信を用いたネットワークであってもよいし、有線通信を用いたネットワークであってもよい。ネットワーク90は、複数のネットワークが組み合わされて構成されてもよい。
【0016】
学習装置10は、予め得られた情報に基づいて学習処理を実行し、学習済みモデルを生成する。学習装置10によって生成された学習済みモデルは推定装置30によって使用される。情報取得装置20は、利用者の生体情報を取得し、ネットワーク90を介して推定装置30に送信する。推定装置30は、情報取得装置20から受信された生体情報に基づいて、利用者の認知能力に関する情報を推定する。推定装置30は、推定結果に関する情報を利用者端末40等の情報処理装置に出力する。利用者端末40は、情報取得装置20を使用して自身の生体情報を推定装置30に送信する主体となる人物(以下「利用者」という。)によって使用される端末装置である。
【0017】
図2は、本発明の学習装置10の機能構成を示す概略ブロック図である。学習装置10は、複数の人物から得られた生体情報を含む教師データを用いて学習処理を行う。学習装置10は、学習処理の実行によって、推定対象者の認知能力に関する情報(認知情報)を推定するための学習済みモデルを生成する。学習装置10は、パーソナルコンピューターやサーバー装置等の情報処理装置を用いて構成される。学習装置10は、入力部11、出力部12、記憶部13及び制御部14を備える。
【0018】
入力部11は、教師データを学習装置10に入力する。入力部11は、例えばCD-ROMやUSBメモリー(Universal Serial Bus Memory)等の記録媒体に記録された教師データを記録媒体から読み出してもよい。また、入力部11は、ネットワークを介して他の装置から教師データを受信してもよい。入力部11は、教師データの入力を受けることが可能な構成であれば、さらに異なる態様で構成されてもよい。
【0019】
教師データは、個々の人物から得られた単位教師データを複数含む。すなわち、教師データは、複数の人物によって得られた単位教師データを含む。単位教師データは、複数のデータ項目の値と、そのデータ項目の値が得られた人物の認知能力に関する情報(例えば、“健常”、“MCI”、“認知症”のいずれに属するかという分類を示す情報)と、を対応付けた情報である。単位教師データに含まれるデータ項目の少なくとも1つは、生体に関する情報(以下「生体情報」という。)を示す。各人物の認知能力に関する情報は、医師の判断に基づいて得られることが望ましい。
【0020】
生体情報のデータ項目の具体例として、睡眠に関する情報(以下「睡眠情報」という。)がある。睡眠情報は、睡眠に関する情報であればどのような情報であってもよい。例えば、就床してから起床するまでの期間(以下「就床期間」という。)における生体情報が睡眠情報として用いられてもよい。より具体的には、就床から起床までの睡眠時間の総和、就床から起床までの間の覚醒(以下「中途覚醒」という。)の回数、中途覚醒の各時間、中途覚醒の総時間、睡眠時の心拍の時系列情報、睡眠時の呼吸回数の時系列情報、睡眠時の血圧の時系列情報、睡眠時の体動に関する情報、睡眠時の呼吸の中断(回数、時間、間隔)の時系列情報などが睡眠情報の具体例としてありえる。
【0021】
睡眠情報に限らず、利用者が活動している期間に取得された生体情報(呼吸数、心拍、脳波など)や、活動情報(行動履歴[飲食、排せつ、入浴、外出など]、位置情報など)が生体情報として用いられてもよい。生体情報は、どのような手段によって取得されてもよい。例えば、睡眠情報を人物から取得するセンサー等の装置を用いて生体情報が生成されてもよい。
【0022】
出力部12は、情報を学習装置10から外部に出力する。出力部12は、例えばCD-ROMやUSBメモリー等の記録媒体に対して学習済みモデルのデータを記録してもよい。また、出力部12は、ネットワークを介して他の装置に対し学習済みモデルのデータを送信してもよい。出力部12は、学習済みモデルのデータの出力を行うことが可能な構成であれば、さらに異なる態様で構成されてもよい。
【0023】
記憶部13は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部13は、制御部14によって使用されるデータや、制御部14によって生成されたデータを記憶する。例えば、記憶部13は、教師データ記憶部131、学習データ記憶部132及び学習済みモデル記憶部133として機能してもよい。
【0024】
教師データ記憶部131は、入力部11から入力された教師データを記憶する。学習データ記憶部132は、制御部14の処理によって教師データに基づいて生成された学習データを記憶する。学習データは、学習処理において使用される複数の特徴量を含むデータである。特徴量は、例えば教師データの統計値として得られてもよい。学習済みモデル記憶部133は、学習データを用いた学習処理によって得られる学習済みモデルのデータを記憶する。
【0025】
制御部14は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部14は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、情報取得部141、学習データ生成部142、学習部143及び出力制御部144として機能する。なお、制御部14の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD:Solid State Drive)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0026】
情報取得部141は、入力部11を介して、教師データを取得する。情報取得部141は、取得された教師データを教師データ記憶部131に記録する。
【0027】
学習データ生成部142は、教師データ記憶部131に記録されている教師データに対して所定の処理を行うことによって、複数の特徴量を有する学習データを生成する。学習データ生成部142は、生成された学習データを学習データ記憶部132に記録する。
【0028】
学習データ生成部142は、例えば、各単位教師データとして得られている生体データの時系列の値について統計値を取得し、取得された統計値を特徴量として用いることによって学習データを生成してもよい。このような統計値の具体例として、平均値、標準偏差、分散、最小値、最大値、第1四分位数、第3四分位数、四分位範囲などの値がある。学習データ生成部142は、例えば、睡眠情報について、睡眠や就床の時間に応じた複数の区間に区切り、各区間での統計値を取得してもよい。睡眠情報の時系列を複数の区間に区切る処理(以下「区間分割処理」という。)の区切り方について、幾つかの具体例を説明する。
【0029】
例えば、睡眠情報の区切り方には、“統一固定型”、“個人固定型”、“流動型”がある。以下の説明では、区切る対象の睡眠情報として、就床期間を例に説明をする。
図3~
図5は、就床期間の区切り方の具体例の概念を示す図である。
図3~
図5において、(A)~(C)それぞれの横軸は時間を示し、各横軸に定めあれた“就床”及び“起床”は、利用者A~利用者Cの就床時刻及び起床時刻を示している。なお、
図3~
図5において就床期間を区切る各区間は同じ長さであるが、各区間の長さが異なるように定義されてもよい。また、
図3~
図5において就床期間を区切る区間の数は4つであるが、3つ以下であってもよいし5つ以上であってもよい。
【0030】
図3は、統一固定型の区切り方の具体例を示す図である。統一固定型では、睡眠時間を区切る複数の区間は、複数の利用者が含まれる所定のグループにおける全ての利用者(例えば、全国の利用者、ある施設における全ての利用者、など)に対して共通して固定的に定められる。例えば、
図3に示される例では、睡眠時間を4つの区間に均等に分けることが定義されている。すなわち、4つの区間(第1区間~第4区間)それぞれの開始時刻と終了時刻とが固定的に且つ全利用者に共通して定められている。そのため、実際には、就床時刻と最初の区間(第1区間)の開始時刻は一致するとは限らないし、起床時刻と最後の区間(第4区間)の終了時刻は一致するとは限らない。しかし、統一固定型では、このずれについては予め定められたルールにしたがって適宜値が調整されてもよい。例えば、就床時刻が第1区間の開始時刻よりも遅い場合には、就床時刻が位置している区間の開始時刻を就床時刻に置き換えて区間が定められてもよい。例えば、起床時刻が第4区間の終了時刻よりも早い場合には、起床時刻が位置している区間の終了時刻を起床時刻に置き換えて区間が定められてもよい。
【0031】
図4は、個人固定型の区切り方の具体例を示す図である。個人固定型では、睡眠時間を区切る複数の区間は、利用者毎に独立して固定的に定められる。例えば、
図4に示される例では、利用者毎に、睡眠時間を4つの区間に均等に分けることが定義されている。すなわち、4つの区間(第1区間~第4区間)それぞれの開始時刻と終了時刻とが、個人毎に固定的に定められている。個人固定型における各区間の開始時刻及び終了時刻は、例えば、その利用者の所定期間における睡眠情報(例えば睡眠期間)に基づいて定められてもよい。例えば、所定の期間(例えば、情報取得装置20を利用し始めてから所定日数の間、前日を含む所定日数の間、など)に実際にその利用者に関して取得された就床時刻の統計値と起床時刻の統計値と、を用いて個人固定型の各区間が定められてもよい。個人固定型でも、実際には、就床時刻と最初の区間(第1区間)の開始時刻は一致するとは限らないし、起床時刻と最後の区間(第4区間)の終了時刻は一致するとは限らない。しかし、個人固定型でも、このずれについては予め定められたルールにしたがって適宜値が調整されてもよい。例えば、就床時刻が第1区間の開始時刻よりも遅い場合には、就床時刻が位置している区間の開始時刻を就床時刻に置き換えて区間が定められてもよい。例えば、起床時刻が第4区間の終了時刻よりも早い場合には、起床時刻が位置している区間の終了時刻を起床時刻に置き換えて区間が定められてもよい。
【0032】
図5は、流動型の区切り方の具体例を示す図である。流動型では、睡眠時間を区切る複数の区間は、その都度処理対象となる睡眠時間に応じて定められる。例えば、
図5に示される例では、睡眠時間を4つの区間に均等に分けることが定義されているが、各区間の開始時刻や終了時刻は予め定められてはいない。流動型では、実際に区分けの対象となる睡眠期間における就床時刻が最初の区間(第1区間)の開始時刻として定義され、起床時刻が最後の区間(第4区間)の終了時刻として定義される。
【0033】
学習部143は、学習データ生成部142によって生成された学習データ(学習データ記憶部132に記録されている学習データを含む。)を用いて、所定の学習モデルにしたがって学習処理を実行する。学習部143が使用する学習モデルは、予め定められる。学習部143が用いる学習モデルには、例えば決定木が用いられてもよいし、サポートベクターマシン(Support Vector Machine)が用いられてもよいし、他のアルゴリズムが用いられてもよい。学習部143が学習処理を行うことによって、学習データ生成部142によって行われた学習データの生成処理と同様の処理を行うことによって得られる入力データを用いて、その入力データの取得元となった人物の認知能力に関する情報を推定するための学習済みモデルが生成される。学習部143は、生成された学習済みモデルを学習済みモデル記憶部133に記録する。
【0034】
出力制御部144は、学習部143によって生成された学習済みモデル(学習済みモデル記憶部133に記憶されている学習済みモデルを含む。)を、出力部12を介して出力する。出力制御部144によって出力された学習済みモデルは、後述する推定装置30によって使用される。
【0035】
情報取得装置20は、1又は複数のセンサーと通信装置とを用いて構成される。情報取得装置20のセンサーは、利用者の生体情報を取得する。取得される生体情報の具体例として、利用者の睡眠に関する情報(睡眠情報)がある。情報取得装置20は、取得された生体情報を、推定対象データとして、ネットワーク90を介して推定装置30に送信する。
【0036】
図6は、本発明の推定装置30の機能構成を示す概略ブロック図である。推定装置30は、推定対象の人物から得られた生体情報を含む推定対象データを用いて推定処理を行う。推定装置30は、推定処理の実行によって、推定対象者の認知能力に関する情報(認知情報)を推定する。推定装置30は、パーソナルコンピューターやサーバー装置等の情報処理装置を用いて構成される。推定装置30は、入力部31、出力部32、記憶部33及び制御部34を備える。
【0037】
入力部31は、推定対象データを推定装置30に入力する。入力部31は、例えばCD-ROMやUSBメモリー等の記録媒体に記録された推定対象データを記録媒体から読み出してもよい。また、入力部31は、ネットワーク90を介して他の装置(例えば情報取得装置20)から推定対象データを受信する通信装置として構成されてもよい。入力部31は、推定対象データの入力を受けることが可能な構成であれば、さらに異なる態様で構成されてもよい。
【0038】
推定対象データは、学習データで用いられた教師データと同様のデータ項目の各値を有する。推定対象データは、例えば睡眠情報を含む場合には、推定対象者によって用いられている情報取得装置20によって推定対象者の睡眠中に得られたデータを用いて構成されてもよい。
【0039】
出力部32は、情報を推定装置30から外部に出力する。出力部32は、例えばCD-ROMやUSBメモリー等の記録媒体に対して推定結果を示すデータを記録してもよい。また、出力部32は、ネットワーク90を介して他の装置(例えば利用者端末40)に対し推定結果を示すデータを送信してもよい。出力部32は、推定結果を示すデータの出力を行うことが可能な構成であれば、さらに異なる態様で構成されてもよい。
【0040】
記憶部33は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置等の記憶装置を用いて構成される。記憶部33は、制御部34によって使用されるデータや、制御部34によって生成されたデータを記憶する。例えば、記憶部33は、学習済みモデル記憶部331、推定対象データ記憶部332、推定データ記憶部333及び推定結果データ記憶部334として機能してもよい。
【0041】
学習済みモデル記憶部331は、学習済みモデルのデータを記憶する。学習済みモデルのデータは、例えば学習装置10によって生成された学習済みモデルのデータである。学習済みモデルのデータは、予め学習済みモデル記憶部331に記録されていてもよいし、入力部31から入力されてもよい。推定対象データ記憶部332は、入力部31から入力された推定対象データを記憶する。推定データ記憶部333は、制御部34の処理によって推定対象データに基づいて生成された推定データを記憶する。推定データは、推定処理において使用される複数の特徴量を含むデータである。推定データに含まれる特徴量は、学習装置10において学習データに用いられた特徴量と同じ処理を推定対象データに対して行うことによって得られる。推定結果データ記憶部334は、推定データを用いた推定処理によって得られる推定結果を示すデータを記憶する。
【0042】
制御部34は、CPU等のプロセッサーとメモリーとを用いて構成される。制御部34は、プロセッサーがプログラムを実行することによって、情報取得部341、推定データ生成部342、推定部343及び出力制御部344として機能する。なお、制御部34の各機能の全て又は一部は、ASICやPLDやFPGA等のハードウェアを用いて実現されても良い。上記のプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピューター読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM、半導体記憶装置(例えばSSD)等の可搬媒体、コンピューターシステムに内蔵されるハードディスクや半導体記憶装置等の記憶装置である。上記のプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0043】
情報取得部341は、入力部31を介して、推定対象データを取得する。例えば、情報取得部341は、入力部31を介して情報取得装置20から推定対象者の生体情報(睡眠情報を含む)を受信することで推定対象データを取得してもよい。情報取得部341は、取得された推定対象データを推定対象データ記憶部332に記録する。情報取得部341は、入力部31を介して学習済みモデルのデータを取得する場合には、取得された学習済みモデルのデータを学習済みモデル記憶部331に記録する。
【0044】
推定データ生成部342は、学習装置10の学習データ生成部142と同様の処理を推定対象データに対して行うことによって、推定データを生成する。そのため、生成される推定データの構成は、学習データと同様の構成となっている。すなわち、推定データに含まれるデータ項目の数(次元数)や各データ項目の種別(取得法)は、学習データのデータ項目の数や各データ項目の種別と一致する。例えば、学習データの生成において共通パターンが用いられる場合には、同じ共通パターンが推定データの生成において使用される。推定データ生成部342は、生成された推定データを推定データ記憶部333に記録する。
【0045】
推定部343は、推定データ生成部342によって生成された推定データ(推定データ記憶部333に記憶されている推定データを含む。)を学習済みモデルの入力値として用いることによって、推定処理を行う。推定部343は、推定処理の実行によって、推定対象者の認知能力に関する情報を取得する。例えば、推定部343は、推定対象者が所定の分類(例えば、MCI及び認知症とそれ以外という分類、MCI、認知症、健常のいずれかという分類など)のいずれに該当する可能性があるかを示す推定結果を取得してもよい。推定部343は、取得された推定結果を示すデータを、推定結果データ記憶部334に記録する。
【0046】
出力制御部344は、推定部343によって得られた推定結果を示すデータ(推定結果データ記憶部334に記憶されているデータを含む。)を、出力部32を介して出力する。出力制御部344は、例えば推定対象者が使用する端末装置(利用者端末40)へ推定結果のデータを送信してもよい。
【0047】
図7は、学習装置10の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。学習データ生成部142は、取得されている教師データに対して区間分割処理を実行することによって学習データを生成する(ステップS101)。学習部143は、学習データを用いて学習処理を実行する(ステップS102)。学習部143は、学習処理の実行によって得られる学習済みモデルのデータを学習済みモデル記憶部133に記録する(ステップS103)。出力制御部144は、学習済みモデルのデータを出力する(ステップS104)。
【0048】
図8は、推定装置30の処理の流れの具体例を示すフローチャートである。推定データ生成部342は、取得されている推定対象データに対して区間分割処理を実行することによって推定データを生成する(ステップS201)。推定部343は、推定データを用いて推定処理を実行する(ステップS202)。推定部343は、推定処理の実行によって得られる推定結果のデータを推定結果データ記憶部334に記録する(ステップS203)。出力制御部344は、推定結果のデータを出力する(ステップS204)。
【0049】
このように構成された学習装置10及び推定装置30では、人の認知能力に関する情報を、推定の対象者の負担を抑えつつ、より高い精度で推定することが可能となる。
【0050】
例えば、学習装置10では、睡眠情報の時系列を複数の区間に区切って用いることで学習処理が行われ学習済みモデルが生成されてもよい。睡眠情報の時系列を複数の区間に区切ることによって、就床直後の区間や起床直前の区間など、それぞれの区間における特徴的な生体情報が表現される。一般的に、睡眠に関する行動や生体情報が認知能力に相関があることが知られている。一方で、本実施形態における睡眠情報の時系列は、睡眠時の生体情報であり比較的簡易なセンサーを用いて実現することが可能である。そのため、このような睡眠に関する従来にない新たな特徴量が用いられることによって、より簡易な装置で利用者の負担を抑えつつ、人の認知能力に関する情報をより高い精度で推定することが可能となる。
【0051】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0052】
10…学習装置, 11…入力部, 12…出力部, 13…記憶部, 131…教師データ記憶部, 132…学習データ記憶部, 133…学習済みモデル記憶部, 14…制御部, 141…情報取得部, 142…学習データ生成部, 143…学習部, 144…出力制御部, 30…推定装置, 31…入力部, 32…出力部, 33…記憶部, 331…学習済みモデル記憶部, 332…推定対象データ記憶部, 333…推定データ記憶部, 334…推定結果データ記憶部, 34…制御部, 341…情報取得部, 342…推定データ生成部, 343…推定部, 344…出力制御部
【要約】
【課題】人の認知能力に関する情報を、推定の対象者の負担を抑えつつ、より高い精度で推定すること。
【解決手段】人物の睡眠に係る生体情報と、前記人物の認知能力に関する情報と、を対応付けた単位教師データを複数の人物に関して有している教師データについて、前記生体情報を睡眠や就床の時間に応じた複数の区間に分割することによって学習データを生成する学習データ生成部と、前記学習データを用いて学習処理を行うことで、推定対象者の生体情報に関する情報を入力することによって前記推定対象者の認知能力に関する情報を出力する学習済みモデルを取得する学習部と、前記学習済みモデルのデータを出力する出力制御部と、を備える学習装置である。
【選択図】
図1