(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】透明導電層および透明導電性フィルム
(51)【国際特許分類】
H01B 5/14 20060101AFI20220516BHJP
B32B 7/025 20190101ALI20220516BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220516BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
H01B5/14 A
B32B7/025
B32B9/00 A
G06F3/041 495
G06F3/041 490
(21)【出願番号】P 2021545488
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011159
(87)【国際公開番号】W WO2021187582
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2020049864
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020074854
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020074853
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020134832
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020134833
(32)【優先日】2020-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020140238
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020140239
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020140240
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020140241
(32)【優先日】2020-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020149474
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020181349
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020200421
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020200422
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】藤野 望
(72)【発明者】
【氏名】鴉田 泰介
【審査官】和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-262829(JP,A)
【文献】特開昭61-290421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/14
B32B 7/025
B32B 9/00
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クリプトン原子を含み、
(222)面における結晶粒子径が、
364Å以上である結晶子を含み、
X線回折のピークの半値幅が、(222)面において、0.31°以下である、透明導電層。
【請求項2】
インジウムスズ複合酸化物を含む、請求項1に記載の透明導電層。
【請求項3】
比抵抗が、2.3×10
-4Ω・cm未満である、請求項1または2に記載の透明導電層。
【請求項4】
パターン形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の透明導電層。
【請求項5】
基材層と、請求項1~4のいずれか一項に記載の透明導電層とを厚み方向一方側に向かって順に備える、透明導電性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電層および透明導電性フィルムに関する。詳しくは、透明導電層、および、その透明導電層を備える透明導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
透明導電性フィルムなどの光学フィルムは、タッチパネルなどの光学用途に用いられることが知られている。
【0003】
このような透明導電性フィルムとして、有機高分子フィルム基材と、透明導電膜とを順に備える透明導電性フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、このような透明導電性フィルムは、スパッタリングにより、アルゴンガス存在下で、有機高分子フィルム基材の表面に、透明導電膜を成膜することにより得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、透明導電膜を、酸により、エッチングする場合がある。このような場合において、透明導電膜の耐酸性が過度に低いと、エッチングの加工精度(例えば、パターン寸法やパターン形状の加工精度)が悪化する場合がある。
また、透明導電膜の比抵抗を、より一層低くすることも要求される。
【0007】
本発明は、耐酸性に優れ、かつ、比抵抗が低い透明導電層、および、その透明導電層を備える透明導電性フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、クリプトン原子を含み、X線回折のピークの半値幅が、(222)面において、0.31°以下である、透明導電層である。
【0009】
本発明[2]は、インジウムスズ複合酸化物を含む、上記[1]に記載の透明導電層を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、比抵抗が、2.3×10-4Ω・cm未満である、上記[1]または[2]に記載の透明導電層を含んでいる。
【0011】
本発明[4]は、パターン形状を有する、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の透明導電層を含んでいる。
【0012】
本発明[5]は、基材層と、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の透明導電層とを厚み方向一方側に向かって順に備える、透明導電性フィルムを含んでいる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の透明導電層は、クリプトン原子を含み、かつ、X線回折のピークの半値幅が、(222)面において、0.31°以下である。そのため、耐酸性に優れ、かつ、比抵抗を低くできる。
【0014】
本発明の透明導電性フィルムは、本発明の透明導電層を備える。そのため、耐酸性に優れ、かつ、比抵抗を低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の透明導電層の第1実施形態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の透明導電性フィルムの第1実施形態を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の透明導電層、および、透明導電性フィルムの製造方法の第1実施形態を示す概略図である。
図3Aは、第1工程において、透明基材を準備する工程を示す。
図3Bは、第1工程において、透明基材の厚み方向一方面に、ハードコート層を配置する工程を示す。
図3Cは、第2工程において、基材層の厚み方向一方面に、クリプトン含有透明導電層を配置する第4工程を示す。
図3Dは、第2工程において、クリプトン含有透明導電層の厚み方向一方面に、アルゴン含有透明導電層を配置する第5工程を示す。
図3Eは、透明導電層を加熱する第3工程を示す。
【
図4】
図4は、非晶性の透明導電層の比抵抗と、酸素導入量との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、本発明の透明導電層の第2実施形態を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の透明導電性フィルムの第2実施形態を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の透明導電層、および、透明導電性フィルムの製造方法の第2実施形態を示す概略図である。
図7Aは、基材層を準備する第1工程を示す。
図7Bは、基材層の厚み方向一方面に、透明導電層を配置する第2工程を示す。
図7Cは、透明導電層を加熱する第3工程を示す。
【
図8】
図8は、透明導電層フィルム付き物品の一実施形態を示す概略図である。
【
図9】
図9は、透明導電層付き物品の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<透明導電層>
透明導電層1は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。透明導電層1は、厚み方向と直交する面方向に延びる。透明導電層1は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0017】
透明導電層1は、優れた導電性を発現する透明な層である。透明導電層1は、結晶質を含み、好ましくは、結晶質からなる。
【0018】
透明導電層1は、クリプトン原子を含む。換言すれば、透明導電層1は、クリプトン原子を含むクリプトン含有透明導電層10(KrITOと称する場合がある。)を備える。
【0019】
また、透明導電層1は、クリプトン含有透明導電層10とともに、クリプトン原子を含まないクリプトン不含透明導電層11を備えることもできる。
【0020】
以下、透明導電層1が、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11とを順に備える第1実施形態、および、クリプトン含有透明導電層10からなる第2実施形態について、順に説明する。
【0021】
1.第1実施形態
透明導電層1は、
図1に示すように、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11とを順に備える。より具体的には、透明導電層1は、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン含有透明導電層10の上面(厚み方向一方面)に配置されるクリプトン不含透明導電層11とを備える。好ましくは、透明導電層1は、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11とのみを備える。
【0022】
クリプトン含有透明導電層10は、金属酸化物と、微量のクリプトン原子とを含む。クリプトン含有透明導電層10は、好ましくは、金属酸化物と、微量のクリプトン原子とからなる。具体的には、クリプトン含有透明導電層10では、金属酸化物マトリックス中に、微量のクリプトン原子が存在する。
【0023】
金属酸化物として、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、および、Wからなる群より選択される少なくとも1種の金属および/または半金属の酸化物である。金属酸化物として、具体的には、インジウム含有酸化物、および、アンチモン含有酸化物が挙げられる。インジウム含有酸化物としては、例えば、インジウムスズ複合酸化物(ITO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、および、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)が挙げられる。アンチモン含有酸化物としては、例えば、アンチモンスズ複合酸化物(ATO)が挙げられる。
【0024】
金属酸化物として、好ましくは、インジウム含有酸化物、より好ましくは、インジウムスズ複合酸化物(ITO)が挙げられる。つまり、好ましくは、クリプトン含有透明導電層10(透明導電層1)は、インジウムスズ複合酸化物(ITO)を含む。クリプトン含有透明導電層10(透明導電層1)が、インジウムスズ複合酸化物(ITO)を含めば、透明導電層1の比抵抗を低くできる。
【0025】
金属酸化物が、インジウムスズ複合酸化物(ITO)である場合、酸化スズの含有割合は、酸化スズおよび酸化インジウムの合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、8質量%以上、とりわけ好ましくは、9質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下、より好ましくは、12質量%以下である。
【0026】
酸化スズの含有割合が上記した下限以上であれば、低抵抗化が促進される。酸化スズの含有割合が上記した上限以下であれば、クリプトン含有透明導電層10は、加熱安定性に優れる。
【0027】
また、クリプトン含有透明導電層10は、クリプトン原子を含む。
【0028】
クリプトン原子は、後述するスパッタリングガスとしてのクリプトンガスに由来する。換言すれば、詳しくは後述するが、スパッタリング法において、スパッタリングガスとしてのクリプトンガスが、クリプトン含有透明導電層10に取り込まれる。
【0029】
クリプトン含有透明導電層10におけるクリプトン原子の含有量は、例えば、1.0原子%以下、より好ましくは、0.7原子%以下、さらに好ましくは、0.5原子%以下、とりわけ好ましくは、0.3原子%以下、最も好ましくは、0.2原子%以下、さらには、0.1原子%未満、また、例えば、0.0001原子%以上である。
【0030】
クリプトン原子の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱分光法により測定することができる。また、クリプトン原子の存在は、例えば、蛍光X線分析により確認することができる。クリプトン含有透明導電層10において、クリプトン原子の含有量が過度に少ない場合(具体的には、クリプトン原子の含有量が、ラザフォード後方散乱分析の検出限界値(下限値)以上でない場合)には、クリプトン原子の含有量をラザフォード後方散乱分析によって、定量できない場合がある。しかし、本願では、このような場合であっても、蛍光X線分析によって、クリプトン原子の存在が同定される場合には、クリプトン原子の含有量が、少なくとも、0.0001原子%以上であると判断する。
【0031】
また、クリプトン含有透明導電層10は、結晶質を含み、好ましくは、結晶質からなる。
【0032】
クリプトン含有透明導電層10が、結晶質であれば、比抵抗を小さくできる。
【0033】
クリプトン含有透明導電層10の結晶質性は、例えば、クリプトン含有透明導電層10の断面を、FE-TEMで観察し、結晶粒の存在を確認することで判断できる。FE-TEMでの観察倍率は、結晶粒の存在が確認できる倍率であれば制限はないが、例えば、20万倍である。また、より高倍率(例えば、200万倍以上)での観察において、クリプトン含有透明導電層10に格子縞の存在が確認される場合も、該当部分が結晶質であると判断できる。
【0034】
クリプトン含有透明導電層10は、好ましくは、後結晶質層(後結晶質膜)である。後結晶質とは、成膜中、および、直後(例えば、成膜後10時間以内)は非晶質であり、その後、加熱などの工程を経て、結晶質に転化した膜である。クリプトン含有透明導電層10が、後結晶質層であれば、比抵抗が小さく、外観品位に優れる透明導電層1、及び、後述する透明導電性フィルム20を得やすい。
【0035】
クリプトン不含透明導電層11は、クリプトン原子を含まない。詳しくは後述するが、クリプトン不含透明導電層11は、スパッタリング法において、クリプトンガス以外の希ガスを含むスパッタリングガス(例えば、アルゴンガス、キセノンガス)に由来する原子を含む。
【0036】
クリプトン不含透明導電層11としては、例えば、アルゴン含有透明導電層(ArITOと称する場合がある。)が挙げられる。
【0037】
アルゴン含有透明導電層は、上記した金属酸化物と、微量のアルゴン原子とを含む。
【0038】
金属酸化物としては、好ましくは、インジウム含有酸化物、より好ましくは、インジウムスズ複合酸化物(ITO)が挙げられる。
【0039】
金属酸化物が、インジウムスズ複合酸化物(ITO)である場合、酸化スズの含有割合は、酸化スズおよび酸化インジウムの合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、5質量%以上、さらに好ましくは、8質量%以上、とりわけ好ましくは、9質量%以上、また、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下、より好ましくは、12質量%以下である。
【0040】
また、アルゴン含有透明導電層は、アルゴン原子を含む。
【0041】
アルゴン原子は、後述するスパッタリングガスとしてのアルゴンガスに由来する。換言すれば、詳しくは後述するが、スパッタリング法において、スパッタリングガスとしてのアルゴンガスが、アルゴン含有透明導電層に取り込まれる。
【0042】
アルゴン含有透明導電層におけるアルゴン原子の含有量は、例えば、0.8原子%以下、好ましくは、0.5原子%以下、より好ましくは、0.2原子%以下、さらに好ましくは、0.1原子%以下、また、例えば、0.0001原子%以上である。
【0043】
アルゴン原子の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱分光法により測定することができる。
【0044】
また、アルゴン含有透明導電層は、結晶質を含み、好ましくは、結晶質からなる。
【0045】
アルゴン含有透明導電層が、結晶質であれば、比抵抗を小さくできる。
【0046】
アルゴン含有透明導電層の結晶質性は、クリプトン含有透明導電層10の結晶質性と同様の方法で確認できる。
【0047】
透明導電層1は、透明性を有している。具体的には、透明導電層1の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上である。
【0048】
透明導電層1の厚みは、例えば、10nm以上、好ましくは、40nm以上、より好ましくは、50nm以上、さらに好ましくは、100nm以上、また、例えば、1000nm以下、好ましくは、500nm以下、より好ましくは、300nm未満、さらに好ましくは、280nm以下、ことさらに好ましくは、200nm以下、とりわけ好ましくは、170nm以下、特に好ましくは、150nm以下、最も好ましくは、148nm以下である。
【0049】
また、透明導電層1において、クリプトン含有透明導電層10の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、40nm以上、さらに好ましくは、60nm以上、また、例えば、800nm以下、好ましくは、300nm未満、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは、150nm未満、とりわけ好ましくは、100nm以下、特に好ましくは、100nm未満、最も好ましくは、90nm以下である。また、クリプトン不含透明導電層11の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、10nm以上、より好ましくは、40nm以上、また、例えば、500nm以下、好ましくは、200nm以下、より好ましくは、100nm以下、さらに好ましくは、60nm以下である。
【0050】
透明導電層1の厚みに対するクリプトン含有透明導電層10の厚みは、例えば、1%以上、好ましくは、20%以上、より好ましくは、30%以上、さらに好ましくは、50%以上、とりわけ好ましくは、60%以上、また、例えば、99%以下、好ましくは、80%以下、より好ましくは、70%以下である。
【0051】
クリプトン含有透明導電層10の厚みが、上記下限以上、および、上記上限以下であれば、比抵抗を低くでき、かつ、耐酸性を向上させることができる。
【0052】
なお、透明導電層1の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡を用いて、透明導電性フィルム20の断面を観察することにより測定することができる。なお、
図1では、クリプトン含有透明導電層10とクリプトン不含透明導電層11との境界が実線によって描出されているが、クリプトン含有透明導電層10とクリプトン不含透明導電層11との境界は明確には判別できない場合がある。
【0053】
透明導電層1の比抵抗は、例えば、2.3×10-4Ω・cm未満、好ましくは、2.2×10-4Ω・cm未満、より好ましくは、2.0×10-4Ω・cm以下、さらに好ましくは、1.7×10-4Ω・cm以下、とりわけに好ましくは、1.5×10-4Ω・cm以下、また、例えば、0.01×10-4Ω・cm以上、好ましくは、0.05×10-4Ω・cm以上、より好ましくは、0.1×10-4Ω・cm以上、さらに好ましくは、0.5×10-4Ω・cm以上、とりわけ好ましくは、1.0×10-4Ω・cm以、特に好ましくは、1.01×10-4Ω・cm以上である。
【0054】
なお、比抵抗は、JIS K7194に準拠して、4端子法により測定した表面抵抗値と、透明導電層1の厚みとを乗じることにより求めることができる。
【0055】
透明導電層1の表面抵抗値は、例えば、200Ω/□以下、好ましくは、80Ω/□以下、より好ましくは、60Ω/□以下、さらに好ましくは、50Ω/□以下、とりわけ好ましくは、30Ω/□以下、最も好ましくは、20Ω/□以下、また、通常、0Ω/□超過、また、1Ω/□以上である。
【0056】
なお、表面抵抗値は、JIS K7194に準拠して、4端子法により測定することができる。
【0057】
そして、透明導電層1の、X線回折のピークの半値幅が、(222)面において、0.31°以下、好ましくは、0.28°以下、より好ましくは、0.25°以下、さらに好ましくは、0.24°以下、とりわけ好ましくは、0.235°以下である。
【0058】
透明導電層1の、上記半値幅が、上記上限以下であれば、結晶粒子径、すなわち、結晶子サイズを大きくできる。
【0059】
具体的には、透明導電層1は、(222)面において、例えば、280Å以上、好ましくは、300Å以上、より好ましくは、320Å以上、さらに好ましくは、340Å以上、とりわけ好ましくは、350Å以上、また、例えば、800Å以下、好ましくは、500Å以下、より好ましくは、450Å以下、さらに好ましくは、400Å以下の結晶子を含む。
【0060】
その結果、耐酸性に優れ、かつ、比抵抗を低くできる。
【0061】
一方、上記半値幅が、上記上限を超過すると、結晶粒子径を大きくできない。その結果、耐酸性が低下する。また、比抵抗を低くできない。
【0062】
なお、X線回折の測定方法、および、結晶粒子径(結晶子のサイズ)の測定方法については、後述する実施例で詳述する。
【0063】
<透明導電性フィルム>
透明導電性フィルム20は、
図2に示すように、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)を有する。透明導電性フィルム20は、厚み方向と直交する面方向に延びる。透明導電性フィルム20は、平坦な上面および平坦な下面を有する。
【0064】
透明導電性フィルム20は、基材層2と、透明導電層1とを厚み方向一方側に向かって順に備える。より具体的には、透明導電性フィルム20は、基材層2と、基材層2の上面(厚み方向一方面)に配置される透明導電層1とを備える。好ましくは、透明導電性フィルム20は、基材層2と、透明導電層1とのみを備える。
【0065】
また、より具体的には、透明導電性フィルム20は、基材層2と、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11とを厚み方向一方側に向かって順に備える。さらに具体的には、透明導電性フィルム20は、基材層2と、基材層2の上面(厚み方向一方面)に配置されるクリプトン含有透明導電層10と、クリプトン含有透明導電層10の上面(厚み方向一方面)に配置されるクリプトン不含透明導電層11とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0066】
透明導電性フィルム20は、例えば、画像表示装置に備えられるタッチパネル用基材や電磁波シールドなどの一部品であり、つまり、画像表示装置ではない。すなわち、透明導電性フィルム20は、画像表示装置などを作製するための部品であり、OLEDモジュールなどの画像表示素子を含まず、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
【0067】
透明導電性フィルム20の厚みは、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、250μm以下、また、例えば、1μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、50μm以上である。
【0068】
<基材層>
基材層2は、透明導電性フィルム20の機械強度を確保するための透明な基材である。
【0069】
基材層2は、フィルム形状を有する。基材層2は、透明導電層1の下面に接触するように、透明導電層1の下面全面に、配置されている。
【0070】
基材層2は、透明基材3および機能層4を備えている。
【0071】
具体的には、基材層2は、透明基材3と、機能層4とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。具体的には、基材層2は、透明基材3と、透明基材3の厚み方向一方面に配置される機能層4とを備える。
【0072】
<透明基材>
透明基材3は、フィルム形状を有する。
【0073】
透明基材3の材料としては、例えば、オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、および、ポリスチレン樹脂が挙げられる。オレフィン樹脂として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、シクロオレフィンポリマーが挙げられる。ポリエステル樹脂として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、および、ポリエチレンナフタレートが挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、例えば、ポリメタクリレートが挙げられる。耐熱性に劣り、高温(例えば、200℃以上)の加熱工程に耐えられないが、平滑性に優れ、耐酸性に優れる透明導電層1、および、透明導電性フィルム20を得やすい観点では、透明基材3の材料として、オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられ、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。
【0074】
透明基材3は、透明性を有している。具体的には、透明基材3の全光線透過率(JIS K 7375-2008)は、例えば、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、85%以上である。
【0075】
透明基材3の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、好ましくは、30μm以上、また、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下、より好ましくは、250μm以下、さらに好ましくは、200μm以下、とりわけ好ましくは、100μm以下、最も好ましくは、60μm以下である。
【0076】
<機能層>
機能層4は、透明基材3の厚み方向一方面に配置されている。
【0077】
機能層4は、フィルム形状を有する。
【0078】
機能層4としては、例えば、ハードコート層が挙げられる。
【0079】
このような場合には、基材層2は、透明基材3と、ハードコート層とを、厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0080】
以下の説明では、機能層4がハードコート層である場合について、説明する。
【0081】
ハードコート層は、透明導電性フィルム20に傷が発生することを抑制するための保護層である。
【0082】
ハードコート層は、例えば、ハードコート組成物から形成される。
【0083】
ハードコート組成物は、樹脂、および、必要により、粒子を含む。つまり、ハードコート層は、樹脂、および、必要により、粒子を含む。
【0084】
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、および、硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂が挙げられる。
【0085】
硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線(例えば、紫外線、および、電子線)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、および、加熱により硬化する熱硬化性樹脂が挙げられる。硬化性樹脂としては、好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
【0086】
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、および、有機シラン縮合物が挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、好ましくは、(メタ)アクリル系紫外線硬化性樹脂が挙げられる。
また、樹脂は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を含むことができる。具体的には、樹脂は、多官能(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0087】
樹脂は、単独使用または2種以上併用できる。
【0088】
粒子としては、例えば、金属酸化物微粒子および有機系微粒子が挙げられる。金属酸化物微粒子の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、および、酸化アンチモンが挙げられる。有機系微粒子の材料としては、ポリメチルメタクリレート、シリコーン、ポリスチレン、ポリウレタン、アクリル-スチレン共重合体、ベンゾグアナミン、メラミン、および、ポリカーボネートが挙げられる。
【0089】
粒子は、単独使用または2種以上併用できる。
【0090】
また、ハードコート組成物には、必要により、チキソトロピー付与剤、光重合開始剤、充填剤(例えば、有機粘土)、および、レベリング剤を適宜の割合で配合することができる。また、ハードコート組成物は、公知の溶剤で希釈することができる。
【0091】
また、ハードコート層を形成するには、詳しくは後述するが、ハードコート組成物の希釈液を仮支持体2の厚み方向一方面に塗布し、必要により加熱して、乾燥させる。乾燥後、例えば、活性エネルギー線照射により、ハードコート組成物を硬化させる。
【0092】
これにより、ハードコート層を形成する。
【0093】
ハードコート層の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上、より好ましくは、1μm以上、また、例えば、20μm以下、好ましくは、10μm以下、より好ましくは、5μm以下である。
【0094】
<透明導電層、および、透明導電性フィルムの製造方法>
透明導電層1および透明導電性フィルム20の製造方法は、基材層2を準備する第1工程と、基材層2の厚み方向一方面に、透明導電層1を配置する第2工程と、透明導電層1を加熱する第3工程とを備える。また、この製造方法では、各層を、例えば、ロールトゥロール方式で、順に配置する。
【0095】
<第1工程>
第1工程では、基材層2を準備する。
【0096】
基材層2を準備するには、
図3Aに示すように、透明基材3を準備する。
【0097】
次いで、
図3Bに示すように、透明基材3の厚み方向一方面に、ハードコート組成物の希釈液を塗布し、乾燥後、紫外線照射または加熱により、ハードコート組成物を硬化させる。これにより、透明基材3の厚み方向一方面に、ハードコート層(機能層4)を形成する。これにより、基材層2を準備する。
【0098】
<第2工程>
第2工程では、基材層2(ハードコート層)の厚み方向一方面に、透明導電層1を配置する。
【0099】
上記第1実施形態の透明導電層、および、この透明導電層を備える透明導電性フィルムを製造する場合には、第2工程は、基材層2の厚み方向一方面に、クリプトン含有透明導電層10を配置する第4工程と、クリプトン不含透明導電層11を配置する第5工程とを備える。
【0100】
第4工程では、
図3Cに示すように、基材層2の厚み方向一方面に、クリプトン含有透明導電層10を配置する。
【0101】
具体的には、スパッタリング装置において、クリプトン含有透明導電層10の材料からなるターゲットに、基材層2の厚み方向一方面を対向させながら、クリプトンガス存在下、スパッタリングする。また、スパッタリングにおいて、基材層2は、成膜ロールの周方向に沿って、密着している。また、このとき、クリプトンガス以外に、例えば、酸素などの反応性ガスを存在させることもできる。
【0102】
スパッタリング装置内におけるクリプトンガスの分圧は、例えば、0.05Pa以上、好ましくは、0.1Pa以上、また、例えば、10Pa以下、好ましくは、5Pa以下、より好ましくは、1Pa以下である。
【0103】
図4に示すように、反応性ガスの導入量は、非晶質のクリプトン含有透明導電層10の表面抵抗によって見積もることができる。詳しくは、非晶質のクリプトン含有透明導電層10内部に導入される反応性ガスの導入量によって、非晶質のクリプトン含有透明導電層10の膜質(表面抵抗)が変化するため、目的とする非晶質のクリプトン含有透明導電層10の表面抵抗に応じて、反応性ガスの導入量を調整することができる。なお、非晶質のクリプトン含有透明導電層10を加熱して結晶膜のクリプトン含有透明導電層10を得るためには、
図4の領域Xの範囲で反応性ガスの導入量を調整し、非晶質のクリプトン含有透明導電層10を得るのがよい。
【0104】
具体的には、非晶質のクリプトン含有透明導電層10の比抵抗が、例えば、8.0×10-4Ω・cm以下、好ましくは、7.0×10-4Ω・cm以下、また、例えば、2.0×10-4Ω・cm以上、好ましくは、4.0×10-4Ω・cm以上、より好ましくは、5.0×10-4Ω・cm以上となるように、反応性ガスを導入する。
【0105】
スパッタリング装置内における圧力は、実質的に、クリプトンガスの分圧、および、反応性ガスの分圧の合計圧力である。
【0106】
電源は、例えば、DC電源、AC電源、MF電源、および、RF電源のいずれであってもよい。また、これらの組み合わせであってもよい。
【0107】
ターゲットの長辺に対する放電出力の値は、例えば、0.1W/mm以上、好ましくは、0.5W/mm以上、より好ましくは、1W/mm以上、さらに好ましくは、5W/mm以上、また、例えば、30W/mm以下、好ましくは、15W/mm以下である。なお、ターゲットの長辺方向は、例えば、ロールトゥロール方式のスパッタリング装置における、搬送方向と直交する方向(TD方向)である。
【0108】
ターゲット表面上の水平磁場強度は、例えば、10mT以上、好ましくは、60mT以上であり、また、例えば、300mT以下である。ターゲット表面上の水平磁場強度を上記範囲とすることで、クリプトン含有透明導電層10の(222)面におけるX線回折のピークの半値幅を小さくすることができる。
【0109】
そして、スパッタリングによりターゲットからはじき出されたクリプトン含有透明導電層10の材料は、基材層2に着膜する。この時、熱エネルギーが発生するため、クリプトン含有透明導電層10の成膜時には、成膜ロールによって、基材層2の冷却を通じてクリプトン含有透明導電層10を冷却し、クリプトン含有透明導電層10の結晶化を抑制する。
【0110】
詳しくは、成膜ロールの温度は、例えば、-50℃以上、好ましくは、-30℃、より好ましくは、-20℃以上であり、また、例えば、20℃以下、好ましくは、15℃以下、より好ましくは、10℃以下、さらに好ましくは、5℃以下、とりわけ好ましくは、0℃以下である。上記温度範囲であれば、基材層2を十分冷却でき、確実に、非晶質のクリプトン含有透明導電層10を得られる。また、基材層2からのアウトガス(水や有機溶剤)が出にくく、クリプトン含有透明導電層10内の不純物成分を低減でき、クリプトン含有透明導電層10は耐酸性に優れる。
【0111】
これにより、基材層2の厚み方向一方面に、非晶質のクリプトン含有透明導電層10を配置する。
【0112】
また、上記したように、スパッタリングガスとしてのクリプトンガスを用いているため、クリプトンガスに由来するクリプトン原子が、クリプトン含有透明導電層10に取り込まれる。
【0113】
第5工程では、
図3Dに示すように、クリプトン含有透明導電層10の厚み方向一方面に、クリプトン不含透明導電層11を配置する。
【0114】
なお、以下の説明では、クリプトン不含透明導電層11が、アルゴン含有透明導電層である場合について詳述する。
【0115】
第5工程では、スパッタリング装置において、アルゴン含有透明導電層の材料からなるターゲットに、クリプトン含有透明導電層10の厚み方向一方面を対向させながら、アルゴンガス存在下、スパッタリングする。また、スパッタリングにおいて、基材層2(クリプトン含有透明導電層10を備える基材層2)は、成膜ロールの周方向に沿って、密着している。また、このとき、アルゴンガス以外に、例えば、酸素などの反応性ガスを存在させることもできる。
【0116】
スパッタリング装置内におけるアルゴンガスの分圧は、例えば、0.1Pa以上、好ましくは、0.3Pa以上、また、例えば、10Pa以下、好ましくは、5Pa以下、より好ましくは、1Pa以下である。
【0117】
反応性ガスの導入量は、上記した第4工程における反応性ガスの導入量と同様である。
【0118】
スパッタリング装置内における圧力は、実質的に、アルゴンガスの分圧、および、反応性ガスの分圧の合計圧力である。電源は、上記した第4工程における、電源と同様である。ターゲットの長辺に対する放電出力は、上記した第4工程における、ターゲットの長辺に対する放電出力と同様である。
【0119】
そして、スパッタリングによりターゲットからはじき出されたアルゴン含有透明導電層の材料は、クリプトン含有透明導電層10に着膜する。この時、熱エネルギーが発生するため、アルゴン含有透明導電層の成膜時には、成膜ロールによって、クリプトン含有透明導電層10(基材層2)の冷却を通じてアルゴン含有透明導電層を冷却し、アルゴン含有透明導電層の結晶化を抑制する。
【0120】
成膜ロールの温度は、上記した第4工程における成膜ロールの温度と同様である。
【0121】
これにより、クリプトン含有透明導電層10の厚み方向一方面に、非晶質のアルゴン含有透明導電層を配置する。
【0122】
また、上記したように、スパッタリングガスとしてのアルゴンガスを用いているため、アルゴンガスに由来するアルゴン原子が、アルゴン含有透明導電層に取り込まれる。
【0123】
上記したように、第4工程および第5工程によって、基材層2の厚み方向一方面に、非晶質のクリプトン含有透明導電層10と、非晶質のアルゴン含有透明導電層とを順に配置する。これにより、基材層2の厚み方向一方面に、非晶質の透明導電層1(非晶質のクリプトン含有透明導電層10および非晶質のアルゴン含有透明導電層)を配置する。
【0124】
<第3工程>
第3工程では、非晶質の透明導電層1を加熱する。例えば、加熱装置(例えば、赤外線ヒーター、および、熱風オーブン)によって、非晶質の透明導電層1を加熱する。
【0125】
加熱温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、110℃以上、また、例えば、200℃未満、好ましくは、180℃以下である。また、加熱時間は、例えば、1分以上、好ましくは、10分間以上、より好ましくは、30分間以上、また、例えば、24時間以下、好ましくは、4時間以下、より好ましくは、2時間以下である。
【0126】
これにより、
図3Eに示すように、非晶質の透明導電層1が結晶化され、結晶質の透明導電層1が形成される。
【0127】
これにより、透明導電層1が得られるとともに、基材層2と、透明導電層1とを順に備える透明導電性フィルム20が得られる。
【0128】
その後、透明導電層1をパターンニングすることもできる。パターンニングは、例えば、エッチングによって実施される。
【0129】
透明導電層1をパターンニングすれば、透明導電層1はパターン形状を有する。透明導電層1がパターン形状を有すると、パターン形状を自由に設計することができる。
【0130】
2.第2実施形態
<透明導電層>
透明導電層1は、
図5に示すように、クリプトン含有透明導電層10からなる。
【0131】
クリプトン含有透明導電層10は、上記した第1実施形態のクリプトン含有透明導電層10と同様である。
【0132】
透明導電層1の全光線透過率は、上記した第1実施形態の全光線透過率と同様である。
【0133】
透明導電層1の厚みは、上記した第1実施形態の厚みと同様である。
【0134】
透明導電層1の比抵抗、表面抵抗値、および、上記したX線回折のピークの半値幅は、上記した第1実施形態の表面抵抗値、および、X線回折のピークの半値幅と同様である。
【0135】
<透明導電性フィルム>
透明導電性フィルム20は、
図6に示すように、基材層2と、透明導電層1(クリプトン含有透明導電層10)とを厚み方向一方側に向かって順に備える。より具体的には、透明導電性フィルム20は、基材層2と、基材層2の上面(厚み方向一方面)に配置される透明導電層1(クリプトン含有透明導電層10)とを備える。好ましくは、透明導電性フィルム20は、基材層2と、透明導電層1(クリプトン含有透明導電層10)とのみを備える。
【0136】
<透明導電層、および、透明導電性フィルムの製造方法>
透明導電層1および透明導電性フィルム20の製造方法は、基材層2を準備する第1工程と、基材層2の厚み方向一方面に、透明導電層1を配置する第2工程と、透明導電層1を加熱する第3工程とを備える。
【0137】
<第1工程>
第1工程では、
図7Aに示すように、上記した第1実施形態と同様の方法で、基材層2を準備する。
【0138】
<第2工程>
第2工程では、基材層2(ハードコート層)の厚み方向一方面に、透明導電層1を配置する。
【0139】
上記第2実施形態の透明導電層、および、この透明導電層を備える透明導電性フィルムを製造する場合には、第2工程では、クリプトン不含透明導電層11を配置する第5工程を実施しない。つまり、第2工程では、クリプトン含有透明導電層10を配置する第4工程のみを実施する。
【0140】
第4工程では、
図7Bに示すように、上記した第1実施形態と同様の方法で、基材層2の厚み方向一方面に、クリプトン含有透明導電層10を配置する。これにより、基材層2の厚み方向一方面に、透明導電層1を配置する。
【0141】
<第3工程>
第3工程では、
図7Cに示すように、上記した第1実施形態と同様の方法で、非晶質の透明導電層1を加熱する。これにより、非晶質の透明導電層1が結晶化され、結晶質の透明導電層1が形成される。
【0142】
これにより、透明導電層1が得られるとともに、基材層2と、透明導電層1とを順に備える透明導電性フィルム20が得られる。
【0143】
3.作用効果
透明導電層1は、クリプトン原子を含み、かつ、X線回折のピークの半値幅が、(222)面において、0.31°以下である。これにより、透明導電層1の結晶粒子径を大きくできる。そうすると、耐酸性に優れ、かつ、比抵抗を低くできる。
【0144】
透明導電層1は、耐酸性に優れる。そのため、透明導電層1を、酸により、エッチングする場合には、精度のよい加工を実現できる。
【0145】
また、透明導電層1、および、透明導電性フィルム20の製造方法において、第2工程における第4工程では、クリプトンガス存在下で、スパッタリングすることにより、非晶質の透明導電層1(クリプトン含有透明導電層10)を配置する。
【0146】
通常、スパッタリング法によって、非晶質の透明導電層1を配置する場合には、スパッタリングガスが非晶質の透明導電層1に取り込まれる。
【0147】
しかし、この方法では、スパッタリングガスとして、通常用いられるアルゴンに代えて、アルゴンよりも原子量の大きいクリプトンガスを用いる。そのため、クリプトン原子が非晶質の透明導電層1に取り込まれることを抑制できる。
【0148】
そして、このような非晶質の透明導電層1は、第3工程において、結晶質の透明導電層1となる。
【0149】
結晶質の透明導電層1(クリプトン含有透明導電層10)は、クリプトン原子を含むものの、上記したように、クリプトン原子が取り込まれている量は、抑制されている。そのため、第3工程において、透明導電層1の結晶化が促進され、結晶粒子径が大きくなる。そうすると、透明導電層1の上記X線回折のピークの半値幅を、所定の範囲にすることができる。その結果、耐酸性に優れ、かつ、比抵抗を低くできる透明導電層1および透明導電性フィルム20を製造できる。
【0150】
4.透明導電層フィルム付き物品および透明導電層付き物品
透明導電性フィルム20を、部品31の厚み方向一方面に配置して、透明導電層フィルム付き物品30を得ることもできる。
【0151】
図8に示すように、透明導電層フィルム付き物品30は、部品31と、透明導電性フィルム20とを厚み方向一方側に向かって順に備える。詳しくは、透明導電層フィルム付き物品30は、部品31と、基材層2と、透明導電層1とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0152】
なお、
図8には、第2実施形態の透明導電層1を備える透明導電層フィルム付き物品30を示す。
【0153】
物品30としては、特に限定されず、例えば、素子、部材、および、装置が挙げられる。より具体的には、素子としては、例えば、調光素子および光電変換素子が挙げられる。調光素子としては、例えば、電流駆動型調光素子および電界駆動型調光素子が挙げられる。電流駆動型調光素子としては、例えば、エレクトロクロミック(EC)調光素子が挙げられる。電界駆動型調光素子としては、例えば、PDLC(polymer dispersed liquid crystal)調光素子、PNLC(polymer network liquid crystal)調光素子、および、SPD(suspended particle device)調光素子が挙げられる。光電変換素子としては、例えば、太陽電池が挙げられる。太陽電池としては、例えば、有機薄膜太陽電池、ペロブスカイト太陽電池、および、色素増感太陽電池が挙げられる。部材としては、例えば、電磁波シールド部材、熱線制御部材、ヒーター部材、照明、および、アンテナ部材が挙げられる。装置としては、例えば、タッチセンサ装置および画像表示装置が挙げられる。
【0154】
透明導電層フィルム付き物品30は、例えば、部品31と、透明導電性フィルム20における基材層2とを固着機能層を介して、接着することにより得られる。
【0155】
固着機能層としては、例えば、粘着層および接着層が挙げられる。
【0156】
固着機能層としては、透明性を有するものであれば特に材料の制限なく使用できる。固着機能層は、好ましくは、樹脂から形成されている。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、変性ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、天然ゴム、および、合成ゴムが挙げられる。特に、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性および接着性などの粘着特性を示し、耐候性および耐熱性等にも優れるという観点から、樹脂として、好ましくは、アクリル樹脂が選択される。
【0157】
固着機能層(固着機能層を形成する樹脂)には、透明導電層1の腐食およびマイグレーション抑制するために、公知の腐食防止剤、および、マイグレーション防止剤(例えば、特開2015-022397号に開示の材料)を添加することもできる。また、固着機能層(固着機能層を形成する樹脂)には、透明導電層フィルム付き物品30の屋外使用時の劣化を抑制するために、公知の紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、および、トリアジン系化合物が挙げられる。
【0158】
また、透明導電層フィルム付き物品30における透明導電層1の上面にカバー層を配置することもできる。
【0159】
カバー層は、透明導電層1を被覆する層であり、透明導電層1の信頼性を向上させ、キズによる機能劣化を抑制できる。
【0160】
カバー層は、好ましくは、誘電体である。カバー層は、樹脂および無機材料の混合物から形成されている。樹脂としては、固着機能層で例示する樹脂が挙げられる。無機材料は、例えば、酸化珪素、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、酸化カルシウムなどの無機酸化物およびフッ化マグネシウムなどのフッ化物を含有する組成からなる。
【0161】
また、カバー層(樹脂および無機材料の混合物)には、上記した固着機能層と同様の観点から、腐食防止剤、マイグレーション防止剤、および、紫外線吸収剤を添加することもできる。
【0162】
また、図示しないが、部品31と、透明導電性フィルム20における透明導電層1とを固着機能層を介して、接着することにより、透明導電層フィルム付き物品30を得ることもできる。
【0163】
透明導電性フィルム付き物品30は、透明導電性フィルム20を備える。そのため、耐酸性に優れ、かつ、比抵抗を低くできる。
【0164】
また、透明導電層1を、部品31の厚み方向一方面に配置して、透明導電層付き物品40を得ることもできる。
【0165】
図9に示すように、透明導電層付き物品40は、部品31と、透明導電層1とを厚み方向一方側に向かって順に備える。詳しくは、透明導電層付き物品40は、部品31と、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11とを厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0166】
なお、
図9には、第2実施形態の透明導電層1を備える透明導電層付き物品40を示す。
【0167】
透明導電層付き物品40は、部品31の厚み方向一方面に、スパッタリング法により、透明導電層1を配置するか、部品31の厚み方向一方面に、透明導電性フィルム20から、透明導電層1を転写することにより得られる。
【0168】
また、部品31と、透明導電層1とを、上記固着機能層を介して、接着することもできる。
【0169】
また、透明導電層付き物品40における透明導電層1の上面にカバー層を配置することもできる。
【0170】
透明導電層付き物品40は、透明導電層1を備える。そのため、耐酸性に優れ、かつ、比抵抗を低くできる。
【0171】
5.変形例
変形例において、第1実施形態および第2実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、第1実施形態および第2実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、第1実施形態、第2実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0172】
上記した説明では、機能層4がハードコート層である場合について説明したが、機能層4は、光学調整層であってもよい。
【0173】
光学調整層は、透明導電層1のパターン視認を抑制したり、透明導電性フィルム20内の界面での反射を抑制しつつ、透明導電性フィルム20に優れた透明性を確保するために、導電性フィルム10の光学物性(例えば、屈折率)を調整する層である。
【0174】
光学調整層は、例えば、光学調整組成物から形成される。
【0175】
光学調整組成物は、例えば、樹脂および粒子を含有する。樹脂としては、上記ハードコート組成物で挙げた樹脂が挙げられる。粒子としては、上記ハードコート組成物で挙げた粒子が挙げられる。光学調整組成物は、樹脂単体、または、無機物単体であっても良い。樹脂としては、上記ハードコート組成物で挙げた樹脂が挙げられる。また、無機物としては、例えば、酸化珪素、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化カルシウム、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモンなどの半金属酸化物および/または金属酸化物が挙げられる。半金属酸化物および/または金属酸化物は、化学両論組成であるか否かは問わない。
【0176】
光学調整層の厚みは、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上、また、例えば、200nm以下、好ましくは、100nm以下である。光学調整層の厚みは、例えば、瞬間マルチ測光システムを用いて観測される干渉スペクトルの波長に基づいて算出することができる。また、光学調整層の断面を、FE-TEMで、観察することで厚みを特定しても良い。
【0177】
また、機能層4として、ハードコート層および光学調整層を併用(ハードコート層および光学調整層を含む多層)することもできる。
【0178】
上記した説明では、第1実施形態では、透明導電性フィルム20は、基材層2と、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11とを厚み方向一方側に向かって順に備える。一方、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11との順番は特に限定されない。詳しくは、透明導電性フィルム20は、基材層2と、クリプトン不含透明導電層11と、クリプトン含有透明導電層10とを厚み方向一方側に向かって順に備えることもできる。このような透明導電性フィルム20を製造するためには、第2工程において、第5工程の後に第4工程を実施する。
【0179】
上記した説明では、クリプトン含有透明導電層10は、金属酸化物と、微量のクリプトン原子とを含むが、クリプトン含有透明導電層10は、さらに、微量のクリプトン原子以外の希ガス(例えば、アルゴン、キセノン)を含むこともできる。このような場合には、クリプトン含有透明導電層10では、金属酸化物マトリックス中に、微量のクリプトン原子、および、クリプトン原子以外の希ガスが存在する。このようなクリプトン含有透明導電層10は、例えば、スパッタリングガスとして、クリプトンガスおよびクリプトン原子以外の希ガスを併用することにより、製造できる。
【0180】
上記した説明では、第3工程では、非晶質の透明導電層1を加熱することにより、透明導電層1を結晶化するが、例えば、常温以下(例えば、40℃以下)の温度で、長期間(例えば、5日以上)静置することで、非晶質の透明導電層1を結晶化することもできる。
【0181】
上記した説明では、透明導電層フィルム付き物品30は、部品31と、基材層2と、透明導電層1とを厚み方向一方側に向かって順に備えるが、透明導電層フィルム付き物品30は、基材層2と、透明導電層1と、部品31とを厚み方向一方側に向かって順に備えることもできる。
【0182】
上記した説明では、透明導電層付き物品40は、部品31と、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11とを厚み方向一方側に向かって順に備えるが、透明導電層付き物品40は、クリプトン含有透明導電層10と、クリプトン不含透明導電層11と、部品31とを厚み方向一方側に向かって順に備えることもできる。
【実施例】
【0183】
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0184】
1.透明導電層および透明導電性フィルムの製造
実施例1
<第1工程>
透明基材としての長尺のPETフィルム(厚さ50μm、東レ社製)の厚み方向一方面に、ハードコート組成物(アクリル樹脂を含有する紫外線硬化性樹脂)を塗布して塗膜を形成した。次に、紫外線照射によって、塗膜を硬化させた。これにより、ハードコート層(厚さ2μm)を形成した。これにより、基材層を準備した。
【0185】
<第2工程>
次に、反応性スパッタリング法により、基材層(ハードコート層)の厚み方向一方面に、厚さ130nmの非晶質の透明導電層(クリプトン含有透明導電層)を配置した。反応性スパッタリング法では、ロールトゥロール方式で成膜プロセスを実施できるスパッタ成膜装置(DCマグネトロンスパッタリング装置)を使用した。
【0186】
詳しくは、ターゲットとしては、酸化インジウムと酸化スズとの焼結体(酸化スズ濃度は10質量%)を用いた。ターゲットに対する電圧印加のための電源としては、DC電源を用いた。ターゲット上の水平磁場強度は90mTとした。スパッタリング装置において、基材層を、成膜ロールの周方向に沿って、密着させた。成膜ロールの温度は、-5℃とした。また、スパッタ成膜装置が備える成膜室内の到達真空度が0.8×10
-4Paに至るまでスパッタ成膜装置内を真空排気した後、スパッタ成膜装置内に、スパッタリングガスとしてのクリプトンと、反応性ガスとしての酸素とを導入し、スパッタ成膜装置内の気圧を0.2Paとした。スパッタ成膜装置に導入されるクリプトンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は約2.5流量%であった。酸素導入量は、
図4に示すように、比抵抗-酸素導入量曲線の領域X内であって、非晶質のクリプトン含有透明導電層の比抵抗の値が6.6×10
-4Ω・cmになるように調整した。
図4に示す比抵抗-酸素導入量曲線は、酸素導入量以外の条件は上記と同じ条件で、非晶質のクリプトン含有透明導電層を反応性スパッタリング法で形成した場合の、非晶質のクリプトン含有透明導電層の比抵抗の酸素導入量依存性を、予め調べて作成できる。
【0187】
<第3工程>
非晶質の透明導電層を、熱風オーブン内での加熱によって結晶化させた。加熱温度は165℃とし、加熱時間は1時間とした。
【0188】
これにより、透明導電層とともに、透明導電性フィルムを得た。
【0189】
実施例2
実施例1と同様にして、透明導電層とともに、透明導電性フィルムを得た。
【0190】
但し、第2工程を以下の通りに変更した。
<第2工程>
第2工程では、第4工程および第5工程の順に実施した。
【0191】
<第4工程>
第4工程では、実施例1の第2工程と同様にして、基材層の厚み方向一方面に、クリプトン含有透明導電層を配置した。
但し、酸素導入量は、非晶質のクリプトン含有透明導電層の比抵抗の値が6.5×10-4Ω・cmになるように調整した(クリプトンおよび酸素の合計導入量に対する酸素導入量の割合は約2.6流量%)。また、非晶質のクリプトン含有透明導電層の厚みを、表1に従って、変更した。
【0192】
<第5工程>
第5工程では、上記第2工程と同様にして、クリプトン含有透明導電層の厚み方向一方面に、クリプトン不含透明導電層(アルゴン含有透明導電層)を配置した。
【0193】
但し、スパッタリングガスを、アルゴンガスに変更し、スパッタ成膜装置内の気圧を0.4Paに変更した。また、非晶質のアルゴン含有透明導電層の厚みを、表1に従って、変更した。
【0194】
実施例3
実施例2と同様にして、透明導電層とともに、透明導電性フィルムを得た。
【0195】
但し、クリプトン含有透明導電層およびアルゴン含有透明導電層を、表1に従って、変更した。
【0196】
比較例2
実施例2と同様にして、透明導電層とともに、透明導電性フィルムを得た。
但し、第2工程では、第5工程および第4工程の順に実施した。また、非晶質のクリプトン含有透明導電層、および、非晶質のアルゴン含有透明導電層の厚みを、表1に従って、変更した。
【0197】
実施例5
実施例1と同様にして、透明導電層とともに、透明導電性フィルムを得た。
但し、スパッタリングガスとして、クリプトンおよびアルゴンの混合ガス(クリプトン90体積%、アルゴン10体積%)を用い、酸素導入量は、非晶質のクリプトン含有透明導電層の比抵抗の値が5.8×10-4Ω・cmになるように調整した。また、非晶質のクリプトン含有透明導電層の厚みを、表1に従って、変更した。
【0198】
比較例1
実施例1と同様にして、透明導電層とともに、透明導電性フィルムを得た。
【0199】
但し、第2工程において、スパッタリングガスをアルゴンガスに変更した。また、スパッタ成膜装置内の気圧を0.4Paに変更した。
【0200】
2.評価
<透明導電層の厚み>
各実施例および各比較例の透明導電層の厚みを、FE-TEM観察により測定した。具体的には、まず、FIBマイクロサンプリング法により、各実施例および各比較例の透明導電層の断面観察用サンプルを作製した。FIBマイクロサンプリング法では、FIB装置(商品名「FB2200」、Hitachi製)を使用し、加速電圧を10kVとした。次に、断面観察用サンプルにおける透明導電層の厚さを、FE-TEM観察によって測定した。FE-TEM観察では、FE-TEM装置(商品名「JEM-2800」、JEOL製)を使用し、加速電圧を200kVとした。
また、実施例2および実施例3において、クリプトン含有透明導電層の厚みは、クリプトン含有透明導電層の厚み方向一方面に、アルゴン含有透明導電層を配置する前に、クリプトン含有透明導電層から、断面観察用サンプルを作製し、そのサンプルをFE-TEM観察にすることにより測定した。また、アルゴン含有透明導電層の厚みは、透明導電層の厚みから、クリプトン含有透明導電層の厚みを差し引くことにより算出した。
【0201】
また、比較例2において、アルゴン含有透明導電層の厚みは、アルゴン含有透明導電層の厚み方向一方面に、クリプトン含有透明導電層を配置する前に、アルゴン含有透明導電層から、断面観察用サンプルを作製し、そのサンプルをFE-TEM観察によることにより測定した。また、クリプトン含有透明導電層の厚みは、透明導電層の厚みから、アルゴン含有透明導電層の厚みを差し引くことにより算出した。
【0202】
<(222)面におけるX線回折のピークの半値幅、および、結晶粒子径>
各実施例および各比較例の透明導電層のX線回折ピークは、水平型X線回折装置(商品名「SmartLab」、株式会社リガク製)を用いて、下記測定条件に基づいて、X線回折測定することにより取得した。また、X線ピークプロファイルは、各実施例および各比較例のPETフィルム(各実施例および各比較例の透明導電層と同条件で加熱済みのPETフィルム)由来のバックグラウンドを差し引いた値とした。その後、解析ソフトウェア(ソフト名「SmartLab StudioII」)を用いて、2θが29.5°~31.5°の範囲となるように(222)面に対応するX線回折ピークのプロファイルを作成し、X線回折ピークのフィッティング(ピーク形状;分割型PearsonVII関数、バックグラウンドタイプ;B-スプライン、フィッティング条件;自動)をすることで、222)面におけるX線回折のピークの半値幅(FWHM、単位;°)、および、結晶粒子径(結晶子サイズ、単位:Å)を求めた。その結果を表1に示す。
【0203】
[測定条件]
平行ビーム光学配置
光源:CuKα線(波長:1.54059Å)
出力:45kV、200mA
入射側スリット系:ソーラスリット5.0°
入射スリット:1.000mm
受光スリット:20.100mm
受光側スリット:パラレルスリットアナライザー(PSA)0.114deg.
検出器:多次元ピクセル検出器 Hypix-3000
試料ステージ:透明導電性フィルムの透明基材に、粘着層を介してガラスを貼り合せた検体を、試料板(4インチウェーハ試料板)に静置した。
スキャン軸:2θ/θ(Out of Plane測定)
ステップ間隔:0.02°
測定スピード:0.8°/分
測定範囲:10°~90°
【0204】
<比抵抗>
各実施例および各比較例の透明導電層について、比抵抗を測定した。具体的には、JIS K 7194(1994年)に準拠した四端子法により、透明導電層の表面抵抗を測定した。その後、表面抵抗値と透明導電層の厚さとを乗じることにより、比抵抗(Ω・cm)を求めた。その結果を表1に示す。
【0205】
<耐酸性>
各実施例および各比較例における透明導電性フィルムの透明導電層について、耐酸性を評価した。具体的には、透明導電性フィルムについて、下記第1ステップ、下記第2ステップ、および、下記第3ステップがこの順で実施される1サイクルを繰り返した。評価は、第3ステップにおいて、後述する基準に基づきエッチングが完了したと判定されるまで、1サイクルを繰り返した。
【0206】
第1ステップ:透明導電性フィルムを、濃度7質量%の塩酸に浸漬した。浸漬温度は35℃とした。浸漬時間は30秒間とした。
第2ステップ:透明導電性フィルムを、水洗し、その後に乾燥した。
第3ステップ:透明導電性フィルムの透明導電層の露出面において、表面抵抗測定テスタを使用して、離隔距離15mmの一対の端子の間の抵抗(端子間抵抗)を測定した。
【0207】
第3ステップにおいて、測定された端子間抵抗が100kΩを超えた場合、または、測定不能であった場合に、第3ステップが属するサイクルの第1ステップにおいて、透明導電層の溶解(エッチング)が完了したと判定した。複数サイクルにおける複数の第1ステップの累積浸漬時間(溶解時間)を、透明導電層の厚さで除することにより、溶解速度(秒/nm)を求めた。その値を表1に示す。なお、本評価では、溶解速度の値が大きい程、透明導電層の耐酸性が優れていることを示す。
【0208】
<透明導電層内のKr原子の確認>
各実施例における各透明導電層がKr原子を含有することは、次のようにして確認した。まず、走査型蛍光X線分析装置(商品名「ZSX PrimusIV」、リガク社製)を使用して、下記の測定条件にて蛍光X線分析測定を5回繰り返し、各走査角度の平均値を算出し、X線スペクトルを作成した。そして、作成されたX線スペクトルにおいて、走査角度28.2°近傍にピークが出ていることを確認することにより、透明導電層にKr原子が含有されることを確認した。
【0209】
[測定条件]
スペクトル;Kr-KA
測定径:30mm
雰囲気:真空
ターゲット:Rh
管電圧:50kV
管電流:60mA
1次フィルタ:Ni40
走査角度(deg):27.0~29.5
ステップ(deg):0.020
速度(deg/分):0.75
アッテネータ:1/1
スリット:S2
分光結晶:LiF(200)
検出器:SC
PHA:100~300
【0210】
【0211】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明の透明導電層および透明導電性フィルムは、例えば、電磁波シールド部材、熱線制御部材、ヒーター部材、照明、アンテナ部材、タッチセンサ装置および画像表示装置において、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0213】
1 透明導電層
2 基材層
20 透明導電性フィルム