(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 33/12 20060101AFI20220516BHJP
A01N 59/16 20060101ALI20220516BHJP
A01N 25/02 20060101ALI20220516BHJP
A01N 25/22 20060101ALI20220516BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220516BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A01N33/12 101
A01N59/16 A
A01N25/02
A01N25/22
A01P1/00
A01P3/00
(21)【出願番号】P 2022006385
(22)【出願日】2022-01-19
【審査請求日】2022-03-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515020636
【氏名又は名称】大木 彬
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大 木 彬
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-310505(JP,A)
【文献】特開2008-115506(JP,A)
【文献】国際公開第2016/009928(WO,A1)
【文献】特表2007-534620(JP,A)
【文献】特許第5785666(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 33/12
A01N 59/16
A01N 25/02
A01N 25/22
A01P 1/00
A01P 3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、[ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジカチオンと、銀(1)イオンと、銀(1)イオンを減少させず、且つ毒性のないアニオン及び/又はアニオン供与物質と、水性溶媒と、を含み、pHが5.0乃至12.0であることを特徴とする抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【請求項2】
前記消毒剤組成物は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【請求項3】
前記消毒剤組成物の質量を100質量%とした場合に、[ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジカチオンを、[ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジクロライドの質量に換算して0.2質量%乃至10.0質量%含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【請求項4】
前記消毒剤組成物の質量を100質量%とした場合に、更にアルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンを、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの質量に換算して0.1質量%乃至5.0質量%含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【請求項5】
前記消毒剤組成物の質量を100kgとした場合に、銀(1)イオンを、遊離イオンに換算して0.1g乃至10.0g含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【請求項6】
前記アニオンは、硝酸アニオン又は有機カルボン酸アニオンであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【請求項7】
前記アニオン供与物質は、銀(1)イオンを安定化させる物質であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【請求項8】
前記アニオン供与物質は、フルボ酸であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【請求項9】
前記抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物中の銀イオンのモル当量と、フルボ酸のカルボキシル基のモル当量と、の比が、1:3乃至1:100の範囲内であることを特徴とする請求項8に記載の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物に係り、より詳しくは、屋内空間の天井、壁等に塗布又は噴霧して消毒し、屋内空間を経由する間接伝染を防止する、公衆衛生用の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
伝染病の伝染には、細菌、カビ、ウイルス等に感染した患者から未感染者に伝染する直接伝染と、公共施設、商業施設、娯楽施設、飲食施設、交通機関、教育施設、医療施設、あるいは家庭等の多数の人々が集まる場所において、保菌者が接触、咳、くしゃみ等によって室内空間の壁、床、天井空気等を汚染させ、汚染された室内空間を介して、不特定多数の未感染者に細菌、カビ、ウイルス等を伝染させてしまう間接伝染と、がある。間接伝染は、伝染病の大規模な流行を引き起こすことがあり、社会不安の要因となることもある。
【0003】
この、間接伝染を防ぐために、屋内の壁、床、天井、手すり、扉、家具などを消毒する公衆衛生が求められている。ちなみに、細菌、カビ、ウイルス等の広範な病原体が間接伝染の原因となるので、公衆衛生に用いる薬剤も、病原性を有する全ての細菌、カビ、ウイルス等を消毒することが求められている。特に、ウイルスが原因となる感染症は、有効な治療方法が確立されていないものが多く、抗ウイルス性を有する公衆衛生用の消毒剤の開発が強く求められている。
【0004】
このような、抗ウイルス性を有する消毒剤として、従来周知のエタノール及び次亜塩素酸ナトリウムがある。エタノール及び次亜塩素酸ナトリウムは、いずれも細菌、カビ、ウイルス等の広範な病原体に強い殺菌力を有し、手指、衣装、及び備品等のふき取り消毒等の局所的な消毒に汎用されている。
【0005】
しかし、エタノールは、沸点が低い液体であるために持続性がなく匂いが強く、更に乳幼児、子供、未成年者に対して毒性があり、エタノールに過敏な人もいるなどの問題があるため、使用はひとを排除できる場所や局所に限られる。また、次亜塩素酸ナトリウムは、固体であって高濃度の含水溶液として用いられ、溶液は特異臭を有し、消毒後に拭き取る必要があるため、大規模な公共施設を消毒するのには問題がある。
このように、細菌、カビ、ウイルス等の広範な病原体に強く持続性の高い殺菌力を有し、室内の壁、天井、設備、備品等に噴霧して簡便に使用できる抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤はなかった。
【0006】
ところで、抗ウイルス性を有する抗菌剤の一つとして、銀(1)イオンを活性成分とする殺菌剤がある。銀(1)イオンの殺菌剤としての第1の特徴は、カビ、細菌、ウイルス等の広範囲の微生物に対して、強い殺微生物活性を有することであり、例えば大腸菌に対する最小阻止濃度は、5~10ppbであると言われている。
【0007】
また、通常の抗性物質は細菌、カビ、ウイルス等の成長を阻止するものであって、放置すると菌が再成長することがあるが、銀(1)イオンは接触した細菌、カビ、ウイルス等死滅させるという殺菌特性を有する。更に、ヒトや大型の動物に対して安全性が高いこと、及び重金属アレルギーを起こさないという特徴もある。
【0008】
一方、銀(1)イオンは、不安定で活性が持続しないという問題点を有する。すなわち、銀(1)イオンは、短時間で光還元されて銀微粒子となるか、又は陰イオン、特に環境中に広く存在する塩素イオンと反応して不溶性の銀(1)塩になって抗微生物活性を失う。このために、銀(1)イオンは、一般的な公共施設の消毒には利用できないと考えられている。
【0009】
一方、安全な公衆衛生用消毒剤として、多数の第4級アンモニウム化合物が周知である。例えば、塩化ベンザルコニウムは、強い抗菌力と洗浄力とを有する逆性石鹸であり、安全で持続性のある公衆衛生用の消毒剤として広く用いられている。しかし、第4級アンモニウム化合物は抗ウイルス性を有しないと考えられていた。
【0010】
ところが、公知の抗菌性の第4級アンモニウム化合物である[ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジクロライド(特許文献1を参照、以下「ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライド」と略記することがある)に抗ウイルス活性があることが、報告された(特許文献2、3を参照)。
【0011】
しかし、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドの抗ウイルス活性は、繊維製品を[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドで処理し、次いで洗濯し加熱乾燥して得られる繊維製品であって、活性を示す条件が限定され、公衆衛生用消毒剤としては利用できないものであった。
【0012】
そこで、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライド及びその類似体の抗ウイルス活性の強化方法が検討された(例えば特許文献3を参照)。また、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドと他の成分との合剤を開発する研究も行われた(例えば特許文献4を参照)。
【0013】
ここで、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドの活性は、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンが担い、塩素イオンは活性には無関係であると考えられる。しかしながら、例えば特許文献4に記載された[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドと、銀(1)イオンとの混合物は、塩化銀(1)が沈殿し、また通常はクロライドのモル数が銀(1)のモル数より多いので、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドと、銀(1)イオンと、の混合物は、実際には銀(1)イオンは含まないと考えられる。活性のある銀(1)イオンと[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンと、を含む合剤の抗菌、抗カビ、抗ウイルス活性の報告は、見出すことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開平5-310505号公報
【文献】特開第2008-115506号公報
【文献】特許第6734776号公報
【文献】特開第2012-107027号公報
【文献】特開第2000-16905号公報
【文献】特開第2011-195582号公報
【非特許文献】
【0015】
【文献】「ゲル濾過法によるフルボ酸の分画とそのキレート能について」、山田秀和、米林甲陽、服部共生、森田修二、昭和47年度日本土壌肥料学会大阪大会要旨集(1975年7月26日受理)。https://core.ac.uk./download/pdf/235429797.pdf(2022年1月11日検索)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、銀(1)イオンと、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]カチオンと、を含み、塩素イオンを含まない組成物が、銀(1)イオンと[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンとの協働作用により、持続性の長い抗菌、抗カビ、抗ウイルス活性を示すことを期待して研究を開始した。
【0017】
ところが、塩素イオンを除去し銀(1)イオンを添加しても、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンの活性に変化はなかった代わりに[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンが銀(1)イオンを安定化させ、銀(1)イオンの優れた抗菌、抗カビ、抗ウイルス作用を持続させるという予想外の優れた効果を見出し、本発明に到達した。
なお、N原子が銀(1)イオンを安定化させる一般的な性質を有することは公知である(例えば特許文献5、6を参照)。
【課題を解決するための手段】
【0018】
かかる課題を解決するための本発明の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、[ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジカチオン(以下「[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオン」と略記することがある)と、銀(1)イオンと、銀(1)イオンを減少させず、且つ毒性のないアニオン及び/又はアニオン供与物質と、水性溶媒と、を含み、pHが5.0~12.0であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の消毒剤組成物は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンを更に含むことが好ましい。
また、本発明の消毒剤組成物は、組成物全体の質量を100質量%とした場合に、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンを、[ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジクロライドの質量に換算して0.2~10質量%含むことができる。
【0020】
また、本発明の消毒剤組成物は、消毒剤組成物全体の質量を100質量%とした場合に、更にアルキルジメチルベンジルアンモニウムジカチオンを、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの質量に換算して0.1~5.0質量%含むことを特徴とする。
また、本発明の消毒剤組成物は、消毒剤組成物全体の質量を100kgとした場合に、銀(1)イオンを、遊離イオンに換算して0.1~10.0g含むことができる。
【0021】
また、本発明の消毒剤組成物は、前記アニオンが硝酸アニオン又は有機カルボン酸アニオンであることが好ましい。
また、本発明の消毒剤組成物は、前記アニオン供与物質が、銀(1)イオンを安定化させる物質であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の消毒剤組成物は、前記アニオン供与物質が、フルボ酸であることを特徴とする。
また本発明の消毒剤組成物は、抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物中の銀(1)イオンのモル濃度と、フルボ酸のカルボキシル基のモル当量との比が、1:3乃至1:100の範囲内であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明者は、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドから塩素イオンを除去して[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンとした上で、銀(1)イオンと、銀(1)イオンを減少させず且つ毒性のないアニオンと、を加えることによって、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]の抗ウイルス活性が強化されるのではないかと期待して本研究に着手した。
【0024】
ところが、銀(1)イオンを加えても[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンの活性に変化はなかった代わりに、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンが消毒剤組成物中の銀(1)イオンを安定化し、消毒剤組成物の優れた抗菌、抗カビ、抗ウイルス作用を持続させるという予想外の効果を見出し、本発明に到達した。
【0025】
本発明の第1実施形態に係る、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンと銀(1)イオンと、を含む抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、銀(1)イオンが安定化され、銀(1)イオンの活性に基づく強力な抗菌、抗カビ、抗ウイルス活性を長時間持続して有するという特徴がある。
【0026】
また、本発明の第2実施形態に係る抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、第1実施形態の消毒剤組成物に、更に逆性石鹸であるアルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンを加えることによって、消毒剤組成物の抗菌、抗カビ活性を更に強化させ、長期間持続させるという効果を得た。なお、アルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンには銀(1)イオンを安定化させる効果はなかった。
【0027】
更に、本発明の第3実施形態に係る抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、第2実施形態に係る消毒剤組成物に、銀イオンを安定させる効果を有するフルボ酸を更に加えることによって、銀(1)イオンを更に安定化することができ、長期間にわたって優れた抗菌、抗カビ、抗ウイルス活性を維持することができるという優れた特徴を有する。
【0028】
本発明の消毒剤組成物は、水性溶媒に溶解された希薄溶液であるから、公共施設、商業施設、娯楽施設、飲食施設、交通機関、教育施設、医療施設、あるいは家庭等の施設に、刷毛等による塗付やスプレーによる散布によって、屋内空間の天井、壁、施設等を消毒して間接伝染を防止するという本発明の課題を解決する効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本願発明を詳細に説明する。この記載は、本願発明を説明するためのものであって、この記載によって本発明の技術範囲を限定するものではない。本発明は、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で、多様に変更して実施することが可能である。
【0030】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンと、銀(1)イオンと、銀(1)イオンを減少させず、且つ毒性のないアニオン及び/又はアニオン供与物質と、を含み、生成した組成物水溶液のpHが5.0~12.0であることを特徴とする。
【0031】
<「ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジカチオン>
[ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジクロライド([ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドと略記することがある)は、CAS No 31512-74-0が付与された既存化学物質であり、また、化粧品原料国際命名法により「ポリオクタニウム46」の名称が付された第4級アンモニウム高分子化合物のトイレタリー用物質である。
【0032】
ここで、本発明の第1実施形態に係る抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、組成物の質量を100質量%とした場合に、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンを、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドの質量に換算して0.2~10.0質量%含むことが好ましく、0.5~5.0質量%含むことがより好ましい。[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンのジクロライド換算含量が0.2質量%未満では、消毒剤組成物の抗ウイルス活性、及び銀(1)イオンの安定性が不十分になることがあり、10.0質量%以上加えても、効果は増強されず経済的に好ましくない。
【0033】
<銀(1)イオン>
本発明の、銀(1)イオンは、水溶性であって、銀(1)イオンとしての活性を有することが必要である。しかし、銀(1)イオンは多くのアニオンと不溶性の沈殿や錯化合物を形成して銀(1)イオンとしての活性を失うことがある。
【0034】
本発明の第1実施形態に係る抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、組成物全体の質量を100kgとした場合に、銀(1)イオンを、遊離イオンの質量に換算して0・1g~10.0g含むことが好ましく、0.5g~5.0g含むことがより好ましい。銀(1)イオンの遊離イオン換算含有量が0.1g未満では、組成物の抗菌、抗カビ、抗ウイルス活性が十分でないことがあり、10.0gを超えて加えても組成物の活性は増強されないことがあり、経済的に好ましくない。
【0035】
なお、フッ化銀(1)は水溶性であるがフッ素と銀(1)との結合が強くてイオン化せず、またチオ硫酸銀は水溶性であるが、錯化合物であって銀(1)イオンを生成せず、またシアン化銀は有毒であり、いずれも本発明に用いることはできない。
【0036】
<アニオン及び/又はアニオン供与物質>
本発明のアニオン及び/又はアニオン供与物質は、銀(1)イオンを減少させず、且つ毒性のない物質であれば特に制限されず、また1種類でも複数種類の混合物であってもよい。好ましいアニオンとしては、硝酸イオンと、酢酸、プロピオン酸等のアルキルカルボン酸、酪酸、乳酸、及びクエン酸等のオキシカルボン酸、アミノ酸、等を含む有機カルボン酸類を例示することができるが、これに限られるものではない。
【0037】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る消毒剤組成物は、第1実施形態の消毒剤組成物に、更にアルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンを配合したことを特徴とする。第2実施形態に係る消毒剤組成物は、抗ウイルス活性は第1実施形態の消毒剤組成物と同等であるが、抗菌、抗カビ活性が第1実施形態の消毒剤組成物より優れているという特徴を有する。
【0038】
<アルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオン>
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドは、示性式が C6H5CH2N+(CH3)2RCl-(RはC8H17~C18H37の長鎖アルキル)と表され、一般名を塩化ベンザルコニウムという周知の四級アンモニウム化合物の混合物であって、強く持続性のある抗菌、抗カビ活性を有し、その水溶液は逆性石鹸として殺菌・消毒用に広く用いられている。
【0039】
また、第2実施形態に係る消毒剤組成物は、組成物溶液の全質量を100質量%とした場合に、第1実施形態に係る組成物に、更にアルキルベンジルアンモニウムジカチオンを、アルキルベンジルアンモニウムクロライドの質量に換算して0.1~5.0質量%含むことが好ましく、0.2~2.5質量%含むことがより好ましい。アルキルベンジルアンモニウムカチオンのクロライド換算含量が0.1質量%未満では抗菌、抗カビ活性の持続性が不足することがあり、5.0質量%を超えて加えても、効果は増強されず経済的に好ましくない。
【0040】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態に係る抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、第2実施形態の消毒剤組成物に、アニオン供与物質として銀(1)イオンを安定化する物質を加えることを特徴とする。
銀(1)イオンを安定化するアニオン又はアニオン供与物質としては、銀(1)イオンと、銀(1)イオンを減少させず且つ毒性のないものであれば制限されないが、例えばフルボ酸(例えば非特許文献1を参照)およびアミノ酸(例えば特許文献5、6を参照)を例示することができる。
以下に、第3実施形態の1実施例に係る、フルボ酸を添加する例を示す。
【0041】
<フルボ酸>
フルボ酸は、土壌又は石炭質から希アルカリでフミン酸を抽出除去した後、無機酸で抽出したとき、酸性上澄み液に黄色ないし橙黄色を与える物質で、水、エタノールに可溶の無定型の酸性物質で、単一の化学構造式を有するものではなく、組成、分子量も一定しないものであって、原料及び採取条件により組成、分子量が変化するものである(化学大辞典、共立出版社、1964年)。
【0042】
フルボ酸は、金属イオンを安定化させるが、フルボ酸と金属イオンとの結合形式はフルボ酸のカルボキシル基を配位基とするキレート反応であると推定される(非特許文献1を参照)。天然界において、フルボ酸は金属イオンを安定化させ、山から海へと移動させる役割をしているといわれている。
【0043】
本願発明において使用するフルボ酸の製造方法は、非特許文献1に記載された方法で製造した精製フルボ酸を使用することが好ましい。
非特許文献1に記載された方法によれば、フルボ酸は水溶液として得られるので、フルボ酸の含有量は、中和滴定法によってフルボ酸溶液のカルボキシル基当量を測定して求め、[溶液の単位質量当たりのカルボキシル基のモル当量]として表すことが好ましい。
【0044】
本実施例の消毒剤組成物の銀(1)イオンのモル濃度と、前記フルボ酸のカルボキシル基のモル当量と、の比が、1:3乃至1:100の範囲であることが好ましい。銀(1)イオンのモル濃度とフルボ酸のカルボキシル基当量との比が、1:3未満では、フルボ酸の量が不足して銀(1)イオンが不安定になり抗微生物活性が低下することがある。また、その比が1:100を超えて加えても、銀(1)イオンの安定性を更に増加させることはできず、経済的に好ましくない。
【0045】
[製造例]
<消毒剤組成物>
[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンとアルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンとは、強アルカリ性なので、製造原料として使用する場合は、アニオン及び/又はアニオン供与物質との塩として扱うことが有利である。特に有利な実例として、アセテート水溶液を実例として挙げることができるが、これに限られるものではない。
【0046】
<製造例1>
ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジアセテート水溶液
[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライド10.0kgを脱イオン水30.0kgに溶解した溶液を、酢酸型塩基性イオン交換樹脂をイオン交換当量より多く充填したカラムを通過させ、脱イオン水で溶出して目的のジアセテート水溶液を含む溶出液100kgを捕集し、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドの質量に換算して10%の[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジアセテートを含む水溶液100kgを得た。
【0047】
<製造例2>[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテート水溶液
[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]クロライド10.0kgを脱イオン水30.0kgに溶解し、酢酸型塩基性イオン交換樹脂を交換当量より過剰に充填したカラムを通過させ、脱イオン水で溶出して目的物を含む溶出液100kgを捕集し、[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]クロライドの質量に換算して10%の[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテートを含む水溶液100kgを得た。
【0048】
<製造例3>[フルボ酸水溶液]
広葉樹林の表層土を取り除き、乾燥し、細粉化して得た10.0kgの腐食土を、0.1M水酸化ナトリウム水溶液と0.1Mリン酸1水素2ナトリウム水溶液の等量混合液200kgに加えて50℃で24時間緩やかに撹拌したのちろ過した。ろ液に3M硫酸を加えてpH1とし、室温に24時間放置したのち、遠心分離してフミン酸画分を除去し、粗フルボ酸溶液を得た。粗フルボ酸溶液を、20.0kgの活性炭を充填したカラムに通じてフルボ酸を吸着させ、活性炭カラムを水洗したのちに0.1M水酸化ナトリウム水溶液を用いて抽出し、抽出液をアンバーライトIRA400のカラム及びアンバーライトIR120のカラムを通過させて無機イオンを除去し、精製フルボ酸水溶液8.3kgを得た。得られた精製フルボ酸水溶液のカルボキシル基当量は、中和滴定法によって、45.2ミリカルボキシル基当量/kg溶液であった。
【0049】
<消毒剤組成物>
本発明の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物の配合順序は、製造工程において銀(1)イオンと塩素イオンとが接触しないようにすれば、それ以外は特に規定されるものではないが、例えば、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジアセテート水溶液、[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテート水溶液、アニオン及び/又はアニオン供与物質、フルボ酸水溶液のうちの必要な水溶液を混合した混合液に、銀(1)イオンを脱イオン水に溶解して加え、必要であればpH調整剤を加えてpH5.0~12.0に調整し、更に脱イオン水を加えて所定に重量まで希釈することによって製造できる。
本発明の消毒剤組成物のpHは特に限定されないが、pH5.0~12.0の略中性溶液であることが好ましい。
【0050】
また、本発明の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、更に親水性溶媒、界面活性剤、有機溶剤、増粘剤、酸化防止剤、光安定剤、消泡剤、香料、色素等の添加剤を含むことができる。
【0051】
[実施例]
<実施例1>
製造例1に記載のジクロライドの質量に換算して10%の[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジアセテートを含む水溶液20kgに、硝酸銀(1)を1.57g(銀(1)イオン1.00gに相当)を溶解させ、pH6.5~7.5に調整し、全体を脱イオン水で100kgに希釈することによって、実施例1の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を得た。
【0052】
<比較例1A>
1.57gの硝酸銀(1)(銀イオン1.00gに相当)を脱イオン水100kgに溶解させることによって、比較例1Aを得た。
<比較例1B>
製造例1に記載のジクロライドの質量に換算して20%の[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジアセテートを含む水溶液を、酢酸又は濃アンモニア水でpH6.5~7.5に調整し、全体を脱イオン水で100kgに希釈することによって比較例1Bの抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を得た。
<比較例1C>
[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライド20.0kgと、1.57gの硝酸銀(1)(銀イオン1.00gに相当)と、を脱イオン水に100kgに溶解させ、pH6.5~7.5に調整することによって比較例1Cを得た。
【0053】
<実施例2>
製造例1に記載のジクロライドの質量に換算して10%の[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジアセテートを含む水溶液20.0kgと、製造例2に記載のクロライドの質量に換算して10%の[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテートを含む水溶液10.0kgと、に硝酸銀(1)1.57g(銀(1)イオン1.00gに相当)を溶解させ、酢酸又は濃アンモニア水でpH6.5~7.5に調整し、全体を脱イオン水で100kgに希釈することによって、実施例2の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を得た。
【0054】
<比較例2A>
製造例2に記載のクロライドの質量に換算して10%の[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテートを含む水溶液10.0kgに硝酸銀(1)1.57g(銀(1)イオン1.00gに相当)を溶解させ、酢酸又は濃アンモニア水でpH6.5~7.5に調整し、全体を脱イオン水で100kgに希釈することによって比較例2Aを得た。
【0055】
<比較例2B>
製造例2に記載のクロライドの質量に換算して10%の[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテートを含む水溶液10.0kgを、酸又は濃アンモニア水でpH6.5~7.5に調整し、全体を脱イオン水で100kgに希釈することによって実施例2Bの抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を得た。
【0056】
<実施例3>
製造例1に記載のジクロライドの質量に換算して10%の[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジアセテートを含む水溶液20.0kgと、製造例2に記載のジクロライドの質量に換算し10%[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテートを含む水溶液10.0kgと、製造例3で製造したフルボ酸水溶液0.107kgとに、硝酸銀(1)1.57g(銀(1)イオン1.00gに相当)を溶解させ、酢酸又は濃アンモニア水でpH6.5~7.5に調整し、全体を脱イオン水で100kgに希釈することによって、実施例3の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を得た。
【0057】
<比較例3A>
製造例2に記載のクロライドの質量に換算して10%の[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテートを含む水溶液10.0kgと、製造例3で製造したフルボ酸水溶液0.107kgと、に硝酸銀(1)を1.57g(銀(1)イオン1.00gに相当)を溶解させ、酢酸又は濃アンモニア水でpH6.5~7.5に調整し、全体を脱イオン水で100kgに希釈することによって比較例3Aの抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を得た。
【0058】
<比較例3B>
製造例1に記載のジクロライドの質量に換算して10%の[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジアセテートを含む水溶液20.0kgと、製造例2に記載のクロライドの質量に換算して10%の[アルキルジメチルベンジルアンモニウム]アセテートを含む水溶液10.0kgと、製造例3で製造したフルボ酸水溶液0.107kgと、の混合液を、脱イオン水で100kgに希釈し、酢酸又は濃アンモニア水でpH6.5~7.5に調整し、全体を脱イオン水で100kgに希釈することによって比較例3Bの抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を得た。
【0059】
【0060】
[試験結果]
(抗菌性試験)
ニュートリエントブロス液体培地に、大腸菌又は黄色ブドウ状球菌の菌液を接種し、31±1℃で18時間振盪による前培養を行なった培養液を、新鮮なニュートリエントブロス培地で100倍に希釈し、該希釈液100μgを96穴のマイクロプレートに入れた。
これに、各試験サンプルを、第1穴の銀イオン濃度が10mg/kgになるように希釈し、以下順次に、10段階の2倍希釈で得た試験液各50μLを加えた。マイクロプレートを、31±1℃の環境下に48時間(大腸菌)又は24時間(黄色ブドウ状菌)置き培養した。該培養液を寒天含有培地に接種して菌が増殖するか否かで、菌の増殖の有無を判断し、最小阻止濃度を測定した。
【0061】
<大腸菌>
表2に大腸菌を用いた結果を示す。
試験菌:E.coli NBRC 3912)
【表2】
【0062】
<黄色ブドウ状球菌>
表3に試験菌として黄色ブドウ状菌を用いた結果を示す。
試験菌:S. aureus IID 1677
【表3】
【0063】
表2、3は、本発明の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物の実施例1~3の抗菌活性を示す。表2、3に示すように、本発明の実施例1~3の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物、及び銀(1)イオンを含む比較例2A、比較例3Aの組成物は、硝酸銀(1)である比較例1Aと同等の抗菌活性を示す。
なお、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンは、抗菌活性は有さず、アルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンは抗菌性逆性石鹸としての抗菌、抗カビ活性を示す。また、比較例1Aの[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジクロライドは、塩素イオンが硝酸銀(1)の抗菌活性を阻害する。
【0064】
(作用持続性試験)
本発明の抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を塗布して使用する場合を想定して、保存サンプルの抗菌作用の持続性を測定した。
試験菌:S. aureus IID 1677
実施例1~3.比較例1A~3Cをガラス試験管に入れ、試験管を栓で密封し、蛍光灯照射下(4000Lux)、25℃にて放置し、所定時間ごとに各サンプルの最小阻止濃度(MIC)を測定した。最小阻止濃度の測定方法は表3の例と同様である。
結果を表3に示す。
【0065】
【0066】
表4に示すように、本発明の実施例1に係る抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物は、48時間程度まで実用可能な強度の抗菌活性を保持し、実施例2に係る組成物は120時間まで抗菌活性を維持し、実施例3に係る組成物は弱いながらも120時間の抗菌活性を維持した。しかし、抗菌成分が硝酸銀(1)である比較例1Aは、塗布当初は強い抗菌活性を示すものの、光照射すると24時間以内に抗菌活性を失う。比較例2B、3Bの抗菌活性は、アルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンによるものである。
【0067】
(抗カビ性試験)
抗カビ性試験を、JIS Z 2911:2010「カビ抵抗性試験方法」塗料の試験 に準じて行った。
試験菌:Trichophyton rubrum 2659(白癬菌)
試験方法:試験片(30mm×30mm、1サンプル各6個)に対して試験液を10.0mL/m2の割合で噴霧し、暗所で1時間風乾したのちカビの混合胞子懸濁液を10.0mL/m2の割合で吹き付け、26±2℃、湿度95%~99%に保った恒温器の中に置き、無カビ状態及び空気中で4週間培養し、カビ発育状態を判定した。結果を表5に示す。
【0068】
表5に示すように、本発明の実施例1~3に係る組成物は抗カビ性を有することが示された。
【表5】
【0069】
(抗ウイルス性試験1)
抗ウイルス性試験を、JIS L 1922 抗ウイルス試験法に準拠して行った。
試験ウイルス:Feline calicivirus F-9 ATCC VR-782 (ネコカリシウイルス)
試験方法概要:
ウイルス作用前のウイルス感染価の常用対数値(logVa)と、ウイルス作用後のウイルス感染価の常用対数値(logVc)とを、プラーク法により測定し、その差からウイルス感染価(Mv)を測定した。
<判定基準>
Mv≧3 効果あり
3>Mv≧2 やや効果あり
Mv<2 効果なし
結果を表6に示す。
【0070】
【0071】
表6に示すように、銀(1)イオンが活性な組成物である実施例1~3及び銀(1)イオンを含有する比較例1A、1B、1Cは、製造直後には強い抗ウイルス性を有し、ウイルス伝染を阻止することが示された。
【0072】
(抗ウイルス性試験2)
実施例1~3及び比較例1A~3Aの資料をガラス製の試験官に入れ、栓で密封し、25℃にて蛍光灯照射下(4000Lux)に所定時間保存し、暗所に保存した試料溶液と、所定時間ごとの各サンプルのウイルス感染価(Mv)を測定し、抗ウイルス性試験1と同じ方法で抗ウイルス性試験を行って抗ウイルス活性値(Mv)を求めた。
(Mv)=(logVa)-(logVc)(1)
測定結果を表7に示す。
【0073】
【0074】
表6、7に示すように、実施例1~3及び比較例1A~3Aの銀(1)イオンを含む組成物は、光照射時間0時間においては強い抗ウイルス活性を示したが、比較例1A~3Aは、光照射時間12時間後においては殆ど抗ウイルス活性を失ってしまう。これに対して、[ポリ-オキシジメチルイミノエチレン]ジカチオンを含む実施例1、2の組成物は光照射時間48時間まで抗ウイルス活性を示した。また、更に、実施例3のフルボ酸を含む組成物は光照射時間120時間まで抗ウイルス活性を示した。
【0075】
以上、本発明に関する好ましい実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の属する技術範囲を逸脱しない範囲での全ての変更が含まれる。
【要約】 (修正有)
【課題】細菌、カビ、ウイルス等の広範な病原体に殺菌力及び抗菌力を有し、施設屋内の天井、壁、施設等に噴霧することで間接伝染を防除することができる抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を提供する。
【解決手段】[ポリ-オキシエチレンジメチルイミノエチレンジメチルイミノエチレン]ジカチオンと、アルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンと、銀(1)イオンと、アルキルジメチルベンジルアンモニウムカチオンと、銀(1)イオンを減少させず且つ毒性のないアニオン及び/又はアニオン供与物質と、水性溶媒と、を含み、pHが5.0乃至12.0である抗菌、抗カビ、抗ウイルス性消毒剤組成物を提供する。
【選択図】なし