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特許7073600ネールボックス及びネールボックスを備える外科器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ネールボックス及びネールボックスを備える外科器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/072 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
A61B17/072
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018538925
(86)(22)【出願日】2016-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-08
(86)【国際出願番号】 CN2016087641
(87)【国際公開番号】W WO2017063382
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2018-04-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-10-27
(31)【優先権主張番号】201510672007.2
(32)【優先日】2015-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518132008
【氏名又は名称】イーシ(スーチョウ)メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518132019
【氏名又は名称】シャンハイ イーシ メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(72)【発明者】
【氏名】ニエ、ホンリン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、グアン
(72)【発明者】
【氏名】チャン、シーリャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シー、シウファン
(72)【発明者】
【氏名】リー、アンフア
【合議体】
【審判長】佐々木 一浩
【審判官】木村 立人
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-255804(JP,A)
【文献】特表2015-516224(JP,A)
【文献】特開2015-139703(JP,A)
【文献】特開平7-410(JP,A)
【文献】特開2002-282267(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00-18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実行器(100)、延長パイプ(200)及びコントローラ(300)を備える外科器具であって、
前記延長パイプ(200)は、ベンディング機構(312)と、ベンディングバー(508)と、前記コントローラ(300)と接続される近端と、遠端と、を有し、
前記実行器(100)が、前記ベンディング機構(312)によって、前記延長パイプ(200)の遠端に対して回転可能に設けられ、
前記ベンディング機構(312)が、第1フレキシブル部(514a)と、第2フレキシブル部(514b)と、ギヤ(512)と、前記ギヤ(512)と噛合するように配置される第1ラック(510a)及び第2ラック(510b)と、を有し、
前記第1ラック(510a)が前記第1フレキシブル部(514a)の近端及び前記ベンディングバー(508)の遠端と接続され、
前記第2ラック(510b)が前記第2フレキシブル部(514b)の近端と接続され、
前記ベンディングバー(508)が近位方向に移動するとき、前記第1ラック(510a)が近位方向に移動されることにより、前記第1フレキシブル部(514a)を近位方向に移動させるとともに、前記ギヤ(512)によって、前記第2ラック(510b)が遠位方向に移動されることにより、前記第2フレキシブル部(514b)を遠位方向に移動させることによって、前記実行器(100)を前記延長パイプ(200)の遠端に対して第1側に回転させ、
前記ベンディングバー(508)が遠位方向に移動するとき、前記第1ラック(510a)が遠位方向に移動されることにより、前記第1フレキシブル部(514a)を遠位方向に移動させるとともに、前記ギヤ(512)によって、前記第2ラック(510b)が近位方向に移動されることにより、前記第2フレキシブル部(514b)を近位方向に移動させることによって、前記実行器(100)を前記延長パイプ(200)の遠端に対して前記第1側と異なる第2側に回転させ、
前記延長パイプ(200)が、ケーシング(504)と、内管と、をさらに備え、
前記内管が前記ケーシング(504)と同軸上に配置され、
前記ギヤ(512)が前記内管に対して回転可能に配置され、
前記ベンディングバー(508)は、前記ケーシング(504)内に配置され、
前記内管は、第1内管(506a)及び第2内管(506b)と、を備え、
前記ギヤ(512)が前記第1内管(506a)及び前記第2内管(506b)に対して回転可能に配置され、
前記外科器具が、複数のヒンジ(522a、522b)と、複数の中間接続体(518)と当該複数の中間接続体(518)同士を固定して一体化するリベット(520)からなる中間接続部(502)と、をさらに備え、
前記複数のヒンジ(522a、522b)が、各々の前記中間接続体(518)と前記実行器(100)とを連結するヒンジ(522a)と、各々の前記中間接続体(518)と前記内管とを連結するヒンジ(522b)とを含み、
前記延長パイプ(200)の遠端に対して前記実行器(100)が回転する面上で、各々の前記中間接続体(518)は、前記実行器(100)に向かって先細りする形状を有して前記中間接続体(518)と前記実行器(100)との間の所望の回転角度を確保し、かつ、前記内管に向かって先細りする形状を有して前記内管と前記中間接続体(518)との間の所望の回転角度を確保し、
前記第1フレキシブル部(514a)と前記第2フレキシブル部(514b)の各々が、前記複数のヒンジ(522a、522b)の回転中心を通過せずに前記中間接続体(518)を横切って延び、
前記第1フレキシブル部(514a)の遠端と前記第2フレキシブル部(514b)の遠端とが、前記実行器(100)に、前記実行器(100)の中心軸に対して両側に接続される、ことを特徴とする外科器具。
【請求項2】
前記実行器(100)は、アンビルモジュール(120)と、カートリッジモジュール(140)と、を備え、
カートリッジモジュール(140)が、カートリッジ(142)と、一つ又は複数の縫合ネール(144)と、一つ又は複数のプッシュブロック(162)と、カートリッジベース(148)とを有し、
前記外科器具は、更に、カッター(164)とフレキシブルカッターバー(166)を有する駆動モジュール(160)を備え、
前記アンビルモジュール(120)の近端が前記カートリッジベース(148)の近端と可動的に接続され、
前記駆動モジュール(160)は、前記実行器(100)における前記アンビルモジュール(120)及びカートリッジモジュール(140)を、互いに開状態である第1状態と互いに閉状態である第2状態とを切り替えるように駆動することを特徴とする請求項1に記載の外科器具。
【請求項3】
前記実行器(100)が前記延長パイプ(200)の遠端に対して前記第1側及び前記第2側の少なくとも一方に回転する角度が、0°~180°の範囲の角度であることを特徴とする請求項1または2に記載の外科器具。
【請求項4】
前記第1フレキシブル部(514a)と前記第2フレキシブル部(514b)の少なくとも一方がフレキシブルシート又は糸であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の外科器具。
【請求項5】
内視鏡縫合器に用いられることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の外科器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関し、更に詳しくは、内視鏡器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外科縫合器は外科用器具であり、その作用の原理として、2つの対応する実行器(通常にアンビルモジュールとカートリッジモジュールを含む)の閉合によって組織を挟んで、それから縫合器のカートリッジの金属ネールを押し出して、組織を縫い合わせるのである。一部の縫合器では、また縫い合わせた組織を切って分けることに用いられるカッターを備えている。
【0003】
技術の進歩に従って、伝統的な手術方式は次第に内視鏡手術に移行している。内視鏡手術は腹部や胸部の異なる部位で多数の直径の5~12ミリメートルの小さい切り口を切って、これらの小さい切り口を経由してカメラと各種類の特殊な手術器具を差し込んで、腹腔内に差し込んだカメラで撮影した腹腔内の各臓器の画像をテレビのスクリーンに伝送して、外科の医者は画像を観察しながら、各種類の手術器具にて体外で操作を行って手術を完成するのである。そのうち、内視鏡縫合器は手術で最も肝心な役を演じているのである。
【0004】
しかし、内視鏡手術も制限がある。腹腔や胸腔内に空間の制限のため、伝統的な直線内視鏡縫合器はいくつかの極限な状況で、有効に手術の部位に到着して挟んで、横に切って、組織を縫い合わせることができないので、縫合器実行器が折り曲げ可能な内視鏡縫合器が登場した。
【0005】
米国Tyco Healthcare社(後にCovidienに改名した)のEndo GIA Universal切断縫合器とネールボックスは上記の機能を実現する代表的な製品である。開示番号がUS2010/0237131A1の米国特許出願中の製品構造はヒンジ+偏心剛性リンクヒンジの構造で実行器の偏向を実行するのである。この構造設計の原理に制限を受けて、このネールボックスの実行器は最大の曲がる角度が45°だけである。実行器が大きい角度で曲がないと完成できない手術の場合、曲がる角度の小さい実行器を利用すると、いくつかの部位の病巣を切除することを実現することができない。例えば、低位直腸切除術では、骨盤の中の空洞部の空間が器具の入る角度を制限したため、ネールバックスの実行器が曲がっても、一部の手術で実行器が依然として直腸と垂直の角度で縫い合わせたり、切断したりすることができなくて、それによって一部の腫瘍位置のわりに低い患者にこの器具を使って手術の治療を行うことができなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本願発明は更なる複雑な臨床条件での医療に適するように、より大きい角度で折り曲げ可能な外科器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明に係る一つの態様は、実行器、延長パイプ及びコントローラを備える外科器具であって、前記延長パイプは、その近端が前記コントローラと接続され、その遠端が前記実行器と接続され、前記実行器が前記延長パイプの遠端に対して回転可能に設けられ、前記コントローラは、少なくとも一つの方向に沿って移動するベンディング機構を有し、前記延長パイプは、前記ベンディング機構によって、少なくとも一つの方向に沿って移動することで前記実行器を前記延長パイプの遠端に対して少なくとも一側に回転させる第1フレキシブル部を有する外科器具を特徴とする。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記延長パイプは、更に第2フレキシブル部を有し、前記第1フレキシブル部の遠端と前記第2フレキシブル部の遠端がそれぞれ前記実行器の中心軸に沿う両側に接続され、前記ベンディング機構が第1方向に沿って移動するとき、前記第1フレキシブル部をその近端に沿って移動させるとともに、前記第2フレキシブル部をその遠端に沿って移動させるように前記第1フレキシブル部及び前記第2フレキシブル部を駆動することによって、前記実行器を前記延長パイプの遠端に対して第1側に回転させ、前記ベンディング機構が第2方向に沿って移動するとき、前記第1フレキシブル部をその遠端に沿って移動させるとともに、前記第2フレキシブル部をその近端に沿って移動させるように前記第1フレキシブル部及び前記第2フレキシブル部を駆動することによって、前記実行器を前記延長パイプの遠端に対して第2側に回転させてもよい。
【0009】
(3)上記(2)の構成において、前記ベンディング機構が、ギヤと、前記ギヤと噛合するように配置される第1ラック及び第2ラックと、を備え、前記第1ラックが前記第1フレキシブル部の近端と接続され、前記第2ラックが前記第2フレキシブル部の近端と接続されてもよい。
【0010】
(4)上記(2)の構成において、前記延長パイプが、更に、ネールボックスケーシング、ネールボックス内管、ベンディングバー、ギヤ、第1ラック及び第2ラックを備え、前記ネールボックス内管が前記ネールボックスケーシングと同軸上に配置され、前記ギヤが前記ネールボックス内管に回転可能に配置され、前記第1ラック及び第2ラックが前記ギヤの両側に前記ギヤと噛合するように配置され、前記ベンディングバーは、前記ネールボックスケーシング内に配置され、その近端が前記ベンディング機構と接続され、その遠端が前記第1ラックと固定接続され、前記第1ラックが前記第1フレキシブル部の近端と固定接続され、前記第2ラックが前記第2フレキシブル部の近端と固定接続され、前記ベンディング機構は、前記ベンディングバーがその近端に沿って移動するとき、前記第1ラックを引くことにより、前記第1フレキシブル部が引かれ、前記第1フレキシブル部が前記実行器を前記延長パイプの遠端に対して前記第1側に回転させるように引き、前記ベンディングバーがその遠端に沿って移動するとき、前記第1ラックを押し、前記ギヤによって前記第2ラックを近端の方向に移動させ、前記第2フレキシブル部が引かれ、前記第2フレキシブル部が前記実行器を前記延長パイプの遠端に対して前記第2側に回転させるように引くように、前記ベンディングバーの移動を制御してもよい。
【0011】
(5)上記(4)の構成において、前記ネールボックス内管は、前記ネールボックスケーシングと同軸上に配置される第1ネールボックス内管及び第2ネールボックス内管と、を備え、前記ギヤが前記第1ネールボックス内管又は前記第2ネールボックス内管に回転可能に配置されてもよい。
【0012】
(6)上記(1)の構成において、前記実行器は、アンビルモジュールと、カートリッジモジュールと、を備え、カートリッジモジュールが、カートリッジと、一つ又は複数の縫い合わせネールと、一つ又は複数のプッシュブロックと、カートリッジベースとを有し、前記外科器具は、更に、カッターとフレキシブルカッターバーを有する駆動モジュールを備え、前記アンビルモジュールの近端が前記カートリッジベースの近端と可動的に接続され、前記駆動モジュールは、前記実行器を第1状態と第2状態とを切り替えるように駆動してもよい。
【0013】
(7)上記(1)の構成において、前記実行器が前記延長パイプの遠端に対して少なくとも一側に回転する角度が0°~180°のいずれの値であってもよい。
【0014】
(8)上記(1)の構成において、前記延長パイプは、その遠端が一つ又は複数のヒンジによって前記実行器と接続され、前記第1フレキシブル部が、前記一つ又は複数のヒンジの中心を通過せず、少なくとも1つの前記フレキシブル部が、前記ヒンジを回転軸として前記実行器に回転トルクを与えることによって、前記実行器を前記延長パイプの遠端に対して少なくとも一側に回転させてもよい。
【0015】
(9)本発明に係るもう一つの態様は、ネールボックス本体、中間接続部及び実行器を備える折り曲げ可能なネールボックスであって、前記ネールボックス本体が前記中間接続部によって前記実行器と接続され、前記ネールボックス本体は、少なくとも一つの方向に沿って移動可能なベンディング機構と、少なくとも一つのフレキシブル部とを有し、少なくとも一つの前記フレキシブル部は、前記ベンディング機構が少なくとも一つの方向に沿って移動することによって、前記実行器を前記ネールボックス本体に対して少なくとも一側に回転させるようにするネールボックスを特徴とする。
【0016】
(10)上記(9)の構成において、ネールボックスは、内視鏡縫合器に用いられるものであってもよい。
【0017】
(11)上記(9)の構成において、前記ネールボックスは、更に第2フレキシブル部を有し、前記第1フレキシブル部の遠端と前記第2フレキシブル部の遠端がそれぞれ前記実行器の中心軸に沿う両側に接続され、前記ベンディング機構が第1方向に沿って移動するとき、前記第1フレキシブル部をその近端に沿って移動させるとともに、前記第2フレキシブル部をその遠端に沿って移動させるように前記第1フレキシブル部及び前記第2フレキシブル部を駆動することによって、前記実行器を前記ネールボックス本体の遠端に対して第1側に回転させ、前記ベンディング機構が第2方向に沿って移動するとき、前記第1フレキシブル部をその遠端に沿って移動させるとともに、前記第2フレキシブル部をその近端に沿って移動させるように前記第1フレキシブル部及び前記第2フレキシブル部を駆動することによって、前記実行器を前記ネールボックス本体の遠端に対して第2側に回転させてもよい。
【0018】
(12)本発明に係るもう一つの態様は、上記(9)の構成において、前記ネールボックスのベンディング機構が、ギヤと、前記ギヤと噛合するように配置される第1ラック及び第2ラックと、を備え、前記第1ラックが前記第1フレキシブル部の近端と接続され、前記第2ラックが前記第2フレキシブル部の近端と接続されてもよい。
【0019】
(13)本発明に係るもう一つの態様は、上記(9)の構成において、前記ネールボックス本体が、更に、ネールボックスケーシング、ネールボックス内管、ベンディングバー、ギヤ、第1ラック及び第2ラックを備え、前記ネールボックス内管が前記ネールボックスケーシングと同軸上に配置され、前記ギヤが前記ネールボックス内管に回転可能に配置され、前記第1ラック及び第2ラックが前記ギヤの両側に前記ギヤと噛合するように配置され、前記ベンディングバーは、前記ネールボックスケーシング内に配置され、その近端が前記ベンディング機構と接続され、その遠端が前記第1ラックと固定接続され、前記第1ラックが前記第1フレキシブル部の近端と固定接続され、前記第2ラックが前記第2フレキシブル部の近端と固定接続され、前記ベンディング機構は、前記ベンディングバーがその近端に沿って移動するとき、前記第1ラックを引くことにより、前記第1フレキシブル部が引かれ、前記第1フレキシブル部が前記実行器を前記ネールボックス本体の遠端に対して前記第1側に回転させるように引き、前記ベンディングバーがその遠端に沿って移動するとき、前記第1ラックを押し、前記ギヤによって前記第2ラックを近端の方向に移動させ、前記第2フレキシブル部が引かれ、前記第2フレキシブル部が前記実行器を前記ネールボックス本体の遠端に対して前記第2側に回転させるように引くように、前記ベンディングバーの移動を制御してもよい。
【0020】
(14)本発明に係るもう一つの態様は、上記(9)の構成において、前記ネールボックス内管は、前記ネールボックスケーシングと同軸上に配置される第1ネールボックス内管及び第2ネールボックス内管と、を備え、前記ギヤが前記第1ネールボックス内管又は前記第2ネールボックス内管に回転可能に配置されてもよい。
【0021】
(15)本発明に係るもう一つの態様は、上記(9)の構成において、前記実行器が前記ネールボックス本体の遠端に対して少なくとも一側に回転する角度が0°~180°のいずれの値であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、フレキシブル部を利用して実行器の延長パイプの遠端に対するベンディングを実現して、それによって実行器が更に大きい角度で曲がって、更に複雑な臨床条件での医療に適するように、外科器具を提供することができる。例えば空間が限られる部位(例えば、胸腔と骨盤の中の空洞部)で更に便利に手術を実施して、その他の外科器具で解決できない問題を解決することができるのである。本発明の実行器が大きい角度で折り曲げ可能な外科器具は各種類の難しい位置での病巣の切除、組織の切断と縫い合わせの機能を完成して、更に多い患者に受益させることができる。例えば、直腸癌患者について、本発明による器具の実行器は直腸の最低位で依然として直腸との垂直角度に曲がることができて、それによって更に多い低位直腸癌の患者も低侵襲手術を受け入れることができる。
【0023】
また、本発明による外科器具は外科手術に用いられるだけではなくて、関連治療と診断過程でも使われることができる。
【0024】
また、本発明は内視鏡縫合器に応用されるだけではなくて、また例えばクローザー、電気メスなどの製品に応用されることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例の外科器具の設計説明図を示す。
図2】本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの全体的な説明図を示す。
図3】本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの爆発図を示す。
図4】本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの実行器の直線状態説明図を示す。
図5図4の局部図を示す。
図6】本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの実行器が第1側に曲がる説明図を示す。
図7図6の局部図を示す。
図8】本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの実行器が第2側に曲がる説明図を示す。
図9】本発明のある実施例の外科器具の使用説明図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。これらは例示の目的で掲げたもので、これらにより本発明を限定するものではない。また、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0027】
言葉の「例示性」は本文で「例示、実例」を表すことに用いられる。本文で「例示性」に説明されたいかなる実現が必然的にその他の実現よりよいと説明されるものではない。
【0028】
簡明なために、縫合器を例にして本発明の器具を説明する。本発明の実行器が折り曲げ可能な外科器具が内視鏡縫合器に限定されていないことはこの分野の技術者が理解できる。例えばクローザー、電気メスなどのその他の製品にも本発明の技術を利用することができる。
【0029】
図1は本発明のある実施例の外科器具の設計説明図である。図1に示された外科器具は実行器100、延長パイプ200とコントローラ300を含んでいる。延長パイプ200がコントローラ300の遠端と可動に接続されて、そして実行器100の近端と接続されている。延長パイプ200は接続通路を構成して、コントローラ300を経由して出した動作を実行器100に伝えることに用いられる。コントローラ300は器具操作のコントロールに用いられる。
【0030】
本発明の外科器具は全体式の設計を採用することができるが、即ち延長パイプ200が全体としてそれぞれコントローラ300の遠端及び実行器100の近端と接続しているのである。異なった適応症と患者の具体的な情況によって、延長パイプ200の長さが異なっている。
【0031】
本発明の外科器具はまた図1のように、分体式の設計を採用することができる。図1のような実施例によって、本発明の外科器具の分体式設計は縫合器400とネールボックス500を含むことができる。縫合器400とネールボックス500は一定の組立関係によって一つの全体に組み合わせられて使われる。分体式設計では、手術中に、同じな縫合器は各種類のネールボックスに適用することができる。
【0032】
図1図3を参考にすると、延長パイプ200はベンディング機構312を含むことができる。例えば、ベンディング機構312は第1方向と第2方向に向って移動することができる。
例示として、ベンディング機構312はギヤ方向転換機構を採用することができる。ベンディング機構312はギヤ512、第1ラック510a、第2ラック510bを含むことができる。
ギヤ512、第1ラック510a、第2ラック510bが延長パイプの中に入れられるように理解できる。コントローラ300はハンドル部品を採用することができる。
この場合、コントローラ300は更にベンディングスパナ313、固定ハンドル314、固定ハンドルに対して可動に接続されている可動ハンドル316(例えばトリガー)、および可動ハンドル316の動作を実行器に伝える1組の伝動機構を含むことができる。
例えば、操作時に、ベンディングスパナ313を回して実行器100を延長パイプ200の遠端、及びヒンジ回転軸との垂直平面で一定角度に回転するように制御する。ベンディングスパナが各特定位置に回転すると、実行器100はそれに応じて特定の角度に回転する。
異なる臨床応用に適応するように、実行器100は異なる角度に回転することができる。トリガーを引くと、実行器が人体組織対する連続的な挟み、縫い合わせ、切断などの機能を実現することができる。
ベンディングスパナの回転によって実行器を回してトリガーを操作して、それによって実行器の作動を駆動するが、この2つの機能が互いに独立している。一般的に言えば、本発明の外科器具の操作手順は次の通りであるが、先にベンディングスパナを操作して実行器を臨床に必要な適当角度に回すように制御した後に、更に組織を実行器の口止めでの位置に調整して、それからトリガーを操作して組織に挟み、縫い合わせ、切断などを実施するのである。
【0033】
以下には分体式設計内視鏡縫合器を例にして詳しく説明する。
【0034】
図2図3を参考して、本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの全体図と爆発図を示す。
【0035】
本発明のある実施例によって、折り曲げ可能なネールボックス500を提供した。例示として、ネールボックス500はネールボックス本体501、中間接続部502、実行器100、と駆動モジュール160を含むことができる。
【0036】
例示として、ネールボックス本体501は主にネールボックスケーシング504、第1ネールボックス内管506a、第2ネールボックス内管506b、ベンディングバー508、第1ラック510a、第2ラック510b、ギヤ512、第1フレキシブルシート514a、第2フレキシブルシート514b、第1接続シート516a、第2接続シート516bなどを含むことができる。実施例では、第1ネールボックス内管506a、第2ネールボックス内管506bがネールボックスケーシング504と同軸上に配置されている。ギヤ512は回転可能に第1ネールボックス内管506aや第2ネールボックス内管506bに設けられている。図の中にネールボックス内管が多数の部分、例えば第1ネールボックス内管506aと第2ネールボックス内管506bに分けられているが、別の実施例では、ネールボックス内管が1つのものでもよいことが言うまでもない。
【0037】
中間接続部502は中間接続体518(図3では、2つの中間接続体を示した)、リベットb520を含むことができる。
【0038】
実行器100はアンビルモジュール120、カートリッジモジュール140を含むことができる。実行器100はまたアンビル接続体180、蓋182、リベットa184を含むことができる。アンビルモジュール120は何列のネール成形溝を含むネール成形面を含んでいる。カートリッジモジュール140はカートリッジ142、縫合ネール144、プッシュブロック146、およびカートリッジベース148を含むことができる。縫合ネール144とプッシュブロック146は一つでも多数でもよい。カートリッジ142の上表面が組織との接触面であるが、カートリッジ142がカートリッジベース148に据え付けられている。アンビルモジュール120は近端でカートリッジモジュール140のカートリッジベース148の近端と可動に接続されて、そして開の状態と閉の状態の間に切り替えることができる。駆動モジュール160が伝動機構と接続されて、例えばトリガーを引く動作を実行器100の閉、触発と開の動作に切り替えることに用いられる。普通では、アンビルモジュール120とカートリッジベース148は駆動モジュールの通過を収納する縦溝149aと149bを含むことができる。駆動モジュール160が上記の縦溝149a、149bを通じて実行器100の遠端に移動する時、アンビルモジュール120とカートリッジモジュール140を第1状態(例えば開けた状態)から第2状態(例えば閉じた状態)に変わるように駆動して、そしてプッシュブロック162とブッシュブロック146を縫合ネール144を押し出すように駆動して、且つアンビルモジュール120のネール成形面のネール成形溝の中で成形する。逆には同じである。そこで、駆動モジュールは前記の実行器を第1状態と第2状態の間で変わるように駆動する。
【0039】
普通では、駆動モジュール160はスライド162、切断カッター164、フレキシブルカッターバー166を含むことができる。切断カッター164は組織が縫合ネール144で縫い合わせられた後に、多数の列のネールの間で組織を切断する。
【0040】
ネールボックス本体501、中間接続体518、実行器100は一つや多数の回転可能なヒンジ、例えばヒンジ522a、522bを経由して接続されている。例示として、2つのヒンジ522a、522bが空間で互いに平行して、実行器の折り曲げ可能な平面に垂直している。
【0041】
本発明の一例によって、第1ネールボックス内管506a、第2ネールボックス内管506bがネールボックスケーシング504と同軸上に配置されている。ベンディングバー508が第1ネールボック内管506aと第2ネールボックス内管506bの間にあって、第1ラック510aと固定接続されている。第1ラック510aと第2ラック510bがそれぞれ第1ネールボックス内管506aの両側にあって、第1ネールボックス内管506aにある回転軸のギヤ512を経由して噛み合って伝動している。第1ラック510aが第1フレキシブルシート514aの近端と固定接続されて、第2ラック510bが第2フレキシブルシート514bの近端と固定接続されている。第1フレキシブルシート514aと第2フレキシブルシート514bがそれぞれ中間接続体518を横切って、実行器100の中心軸に沿う左右の両側に接続されている。
【0042】
本発明のある例示によって、駆動モジュール160のフレキシブルカッターバー166の一部がネールボックス本体501の内部にあって、そして中間接続体518を横切っている。切断カッター164とスライド162が実行器100の内部にある。
【0043】
ネールボックス500が縫合器400に据え付けられた時、縫合器400ベンディング機構312を経由して、ネールボックス500のベンディングバー508の前進や後退を制御することができる。
【0044】
図4図5は本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの実行器の直線状態説明図とその局部図を示す。
【0045】
図4のように、本発明のある実施例によって、実行器100と接続機構(例えば、ネールボックス本体や延長パイプ)の中心軸線が直線の状態を呈している。この実施例では、2つのフレキシブルシート514a、514bがそれぞれ実行器100のリベットa184の上に据え付けられている。このような設計では、フレキシブルシート514a、514bと実行器の接続位置が2つのヒンジ522a、522bの回転軸の中心対称平面に離れて、且つフレキシブルシート514a、514bがヒンジの中心を通さない。それによって、フレキシブルシートがヒンジを回転軸にして、実行器に一定の回転トルクを提供して、実行器に回転するように駆動する。
【0046】
図6図7は本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの実行器が第1側に曲がる説明図とその局部図を示す。
【0047】
図のように、ベンディングバー508が引っ張り力を受ける時、第1ラック510aをネールボックス500の近端に移動するように引いて(矢印のよう)、第1ラック510aが第1フレキシブルシート514aを引く。同時、第1ラック510aはギヤ512の回転を動かして、更に第2ラック510bをネールボックス500の遠端に移動するように動かして(矢印のよう)、第2フレキシブルシート514bを緩める。このように、ネールボックスの実行器100が第1側の方向(例えば、図のような反時計方向)に向って曲がる。実行器100がネールボックス本体501に対する回転角度をαとする。縫合器400ベンディング機構312を経由してベンディングバー508のフィード量を制御して、実行器100の回転角度αの大きさを制御することができる。本発明のある実施例によって、αは0°~180°のいずれの値であってもよい(例えば0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°、180°など)。
【0048】
図によって、第1フレキシブルシートが緊縮されて、第2フレキシブルシートが緩められることによって、実行器が曲がることを駆動することが明らかにした。この実施例では、ギヤと2つのラックのかみ合いによって、2つのラックの移動方向が反対で、実行器の回転時、第1フレキシブルシートの緊縮と第2フレキシブルシートの緩めで発生した変位が同じなので、互いに相殺する。本発明の設計では、またその他の方式で2つのフレキシブルシートの反対方法での変位を相殺することができる。
【0049】
図8は本発明のある実施例の外科器具のネールボックスの実行器が第2側に曲がる説明図である。
【0050】
図のように、ベンディングバー508がプッシュ力を受ける時、ベンディングバー508が第1ラック510aをネールボックス500の遠端に移動するように押して(矢印のよう)、第1フレキシブルシート514aが緩めるようになる。第1ラック510aはギヤ512の回転を動かして、更に第2ラック510bをネールボックス500の近端に移動するように動かして(矢印のよう)、第2ラック510bが第2フレキシブルシート514bを引いて、ネールボックスの実行器100を第2側の方向に曲がるようにして(例えば、図のような時計回り方向)、回転角度をβとする。縫合器400ベンディング機構312を経由してベンディングバー508のフィード量を制御して、実行器100の回転角度βの大きさを制御することができる。本発明のある実施例によって、βは0°~180°のいずれの値であってもよい(例えば0°、30°、45°、60°、90°、120°、135°、180°)。
【0051】
実行器が第2側方向に曲がる原理は上記の第1側の方向に曲がる原理に類似するが、違いとして、第2フレキシブルシートが緊縮されて、第1フレキシブルシートが緩められるのである
【0052】
図9は本発明のある実施例の外科器具の使用説明図である。
【0053】
本発明の外科器具が肺部、消化管(胃、腸を含む)の手術に用いられる。肺部の手術は普通に病巣を切除するのである。消化管の手術は普通に病巣を切除した後に、切断した腸管を再び接続するのである。
【0054】
普通では、折り曲げ可能な内視鏡縫合器のネールボックスの実行器が折り曲げ可能で、実行器の近端とコントローラ(例えば縫合器のハンドル)が中間機構(例えば、図の中のベンディングバー508)を経由して接続されて、ベンディング機構の調整によって実行器を多数の角度に曲がるように制御することができる。初期の状態で、実行器と接続機構の中心軸線が直線の状態を呈して、縫合器の実行器は穿刺器具を経由して胸腔や腹腔に入って、体外制御ハンドルのベンディング機構で実行器を一定の角度に曲がるように制御して、そして手術部位に対してはさみ、切断、縫合などの一連の操作を行う。手術の完成後に、体外制御ハンドルのベンディング機構で実行器を再び直線の状態にして、体から出す。
【0055】
例を挙げると、消化管の手術について、臨床では徹底的に腫瘍を切除して、腫瘍組織が残ることを防止するために、通常に横切切断線の位置が腫瘍の境より5cmぐらい離れている。直腸癌腫瘍の位置が患者の肛門に比較的に低い時、縫合器の実行器は狭い骨盤の中の空洞部内の更に低い位置に入る必要があるが、寛骨の制限で、曲がる角度の小さい縫合器の実行器が垂直に直腸を横切りで切断することができないので、腫瘍を完璧に切除できない手術のリスクを増えた。
【0056】
図から分かるように、実行器の曲がる角度の小さい外科器具(切断面線付き)は直腸を垂直に横に切ることができないが、実行器の曲がる角度の大きい縫合器(切断面線がない)は行うことができる。且つ、実行器の曲がる角度の更に大きい外科器具は更に低い位置の腫瘍(腫瘍2)に対応することができる。外科器具の実行器の曲がる角度が更に大きい場合、更に低い位置で腫瘍を切断することができて、わりに良く低位直腸癌手術やその他の体内空間が制限される場合に応用することができる。
【0057】
極端の場合に対応するために、本発明による外科器具は、その実行器の回転角度が90°甚だしきに至っては180°に達すことができる。
【0058】
本発明の別の実施例によって、代替として、上記のフレキシブルシート512a、512bに糸の縄も使うことができる。例えば、単糸やよりあわせたて糸類のフレキシブル部である。上記のフレキシブルシートや、糸は例示だけで、それに限らないが、実行器のベンディングを実現するために、本分野の技術者は更に多い類似したフレキシブル部を構想することができる。このような実現方式は本発明の範囲を逸脱したとみなされてはいけない。
【0059】
また、上記に説明した各実施例は例えば全体式設計の内視鏡縫合器のような外科器具で実現できることを理解するべきである。また、各実施例も例えばクローザー、電気メスなどのその他の製品にも利用することができる。
【0060】
本発明の外科器具はフレキシブル部を利用して実行器の延長パイプの遠端に対するベンディングを実現して、それによって実行器が更に大きい角度で曲がって、更に複雑な臨床条件での医療に適するようになる。例えば空間が限られる部位(例えば、胸腔と骨盤の中の空洞部)で更に便利に手術を実施して、その他の外科器具で解決できない問題を解決することができるのである。本発明の実行器は大きい角度の外科器具を曲げて各種類の難しい位置の病巣の切除、組織の切断と縫い合わせの機能を完成して、更に多い患者に受益させることができる。
【0061】
上記の説明と図示は説明的例示だけとして提供されたものである。単数形式の請求項元素に対するいかなる引用、例えば冠詞の「一」、「ある」や「当該」の引用はこの元素が単数に限定されることを釈明してはいけない。技術者は各特定の応用について異なる方式で説明した構造を実現することができるが、このような実現方式は本発明の範囲を逸脱したとみなされてはいけない。
【0062】
開示された実施例の説明は本分野のいかなる技術者が全て本発明を作ったり使ったりすることができるようにしたものである。これらの実施例に対する各種類の修正は本分野の技術者にとって、明らかなことであり、且つ本文に定義された普通の原理は本発明の範囲を逸脱せず、その他の実施例に応用されることができる。このため、本発明は決して本文に示された実施例だけに限定されることを目指すのではなくて、請求項と本文に開示された原理と清新性の特徴と一致した最も広義の範囲に応用されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9