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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】複合型ヘッド及び放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   H05G 1/06 20060101AFI20220517BHJP
   H05G 1/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H05G1/06
H05G1/02 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020570614
(86)(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 CN2018115957
(87)【国際公開番号】W WO2019174293
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】201810208702.7
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520184099
【氏名又は名称】▲蘇▼州博思得▲電▼▲気▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】王▲維▼重
(72)【発明者】
【氏名】何▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】黄▲強▼
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-062240(JP,A)
【文献】実開昭62-081400(JP,U)
【文献】特開2012-028093(JP,A)
【文献】特開2016-154087(JP,A)
【文献】特開2007-005283(JP,A)
【文献】中国実用新案第2751420(CN,Y)
【文献】特開2004-103568(JP,A)
【文献】実開昭62-201500(JP,U)
【文献】米国特許第05222118(US,A)
【文献】特開昭60-136138(JP,A)
【文献】実公昭47-020464(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05G 1/00 - 1/70
A61B 6/00 - 6/14
G21K 1/00 - 7/00
H01J 35/00 -35/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合型ヘッドであって、
内部が絶縁媒体で満たされた密閉キャビティを有するケースと、
前記密閉キャビティ内に設けられる放射線管球と、
前記密閉キャビティの内部の絶縁媒体を循環させるために、前記密閉キャビティ内に設けられるポンプ及びチューブと、
高圧側の両端がそれぞれ前記放射線管球の陽極、陰極に接続される高周波トランスと、を備え、
前記ポンプは、前記放射線管球の陽極から離れた一方側に設けられ、前記チューブは、一端が前記ポンプの出口に接続され、他端が前記放射線管球の陽極付近まで延びており、または、前記ポンプは、前記放射線管球の陽極付近に設けられ、前記チューブは、一端が前記ポンプの入口に接続され、他端が前記放射線管球の陽極から離れた一方側まで延び
前記高周波トランスは、
柱状の第1の磁芯と、
前記第1の磁芯の外部に覆設される筒状の第1のフレームワークと、
前記第1のフレームワークの外壁面に巻設される第1のコイルと、
前記第1のコイルの外部に覆設される筒状の第2のフレームワークと、
前記第2のフレームワークの外壁面に巻設される第2のコイルと、
両端がそれぞれ前記第1の磁芯の両端に連結されて閉磁気ループを形成する柱状の第2の磁芯と、を備える
ことを特徴とする複合型ヘッド。
【請求項2】
前記ケースは、カバープレートとケース本体を備え、
前記複合型ヘッドは、前記密閉キャビティ内に設けられ、前記密閉キャビティを、連通している第1のキャビティと第2のキャビティとに仕切る第1の絶縁セパレータをさらに備え、前記カバープレートは前記第1のキャビティの側壁に位置し、
前記放射線管球は前記第1のキャビティに設けられ、前記ポンプは前記第2のキャビティのうち前記放射線管球の陽極から離れた一方側に設けられる、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型ヘッド。
【請求項3】
前記カバープレートには、透明カバーがシールして設けられる第1の開口が設けられ、前記放射線管球の放射線の出射面が前記透明カバーの位置に対応する、ことを特徴とする請求項2に記載の複合型ヘッド。
【請求項4】
前記第2のキャビティ内に設けられ、前記第1の絶縁セパレータと交差して設けられ、前記第2のキャビティを第1のサブキャビティと第2のサブキャビティとに仕切る第2の絶縁セパレータと、
高圧側の両端がそれぞれ前記放射線管球の陰極のフィラメントの両端に接続されるフィラメントトランスと、をさらに備え、
前記ポンプは前記第1のサブキャビティに設けられ、
前記第1のサブキャビティはさらに、前記高周波トランスと前記フィラメントトランスとを設けることに用いられ、
前記第2のサブキャビティは、前記複合型ヘッドの回路基板を設けることに用いられる、ことを特徴とする請求項2に記載の複合型ヘッド。
【請求項5】
前記第1のコイルは低圧コイルであり、前記第2のコイルは高圧コイルであり、且つ前記第2のコイルの中央部が接地している、ことを特徴とする請求項に記載の複合型ヘッド。
【請求項6】
前記ケースには第2の開口が設けられ、
前記複合型ヘッドは、前記密閉キャビティ内に設けられ、その開口が前記第2の開口にシールして接続されるカプセルをさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型ヘッド。
【請求項7】
前記放射線管球の陽極ターゲットが固設されており、前記放射線管球は、
前記陽極ターゲットの端部に接続され、前記放射線管球を貫通して前記密閉キャビティ内に伸びる放熱フィンをさらに備える、ことを特徴とする請求項1に記載の複合型ヘッド。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の複合型ヘッドを備えることを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項9】
C型アームX線装置であることを特徴とする請求項に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、具体的には、複合型ヘッド及び放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複合型ヘッドは、放射線を発生させる放射線管球を備え、たとえば、X線複合型ヘッドにおけるX線管球はX線を発生させることに用いられる。複合型ヘッドは、通常、CCDなどのイメージセンサー、プロセッサ及びブラケットと組み合わせて完全な放射線装置の製品を構成し、たとえば、C型アームX線装置は、手術中の透視造影に広く使用されている。従来技術では、陽極固定型X線管球を用いたX線複合型ヘッドの構造は、図1に示すように、ハウジング104内にX線管球101とX線管球101へ高電圧を供給する高電圧発生器102とが設けられ、ハウジング104内に絶縁油103が充填されている。ここでは、X線管球101は、真空ハウジング106と、真空ハウジング106内に配置される陰極フィラメント107、集束電極108及び陽極ターゲット110、放熱フィン111と、を備える。作動する際に、X線管球の陰極フィラメント107が、フィラメントトランスの高電圧に接続され、加熱されて発生した電子が陽極ターゲット109に衝撃し、X線が発生する。X線管球がX線を発生するときに、約1%だけのエネルギーがX線に変換され、99%を超えるエネルギーが熱エネルギーに変換されて陽極ターゲットの表面に集積されるが、陽極ターゲットの表面の熱エネルギーに対する耐性には限界があり、熱エネルギーがタイムリーに伝達できず、熱エネルギーの累積量がX線管球の陽極の耐性以上になると、陽極ターゲットの表面が破壊され、X線装置の破損を招く。
【0003】
したがって、図1に示す陽極固定型X線管球では、固定された陽極ターゲット110の端部に放熱フィン111が設けられ、陽極ターゲット110の熱をタイムリーに真空ハウジングの外部に伝達して絶縁油へ放出するために、放熱フィン111が真空ハウジング106の外部まで延びている。放熱効率を向上させるために、絶縁油に浸入した放熱フィン111の表面積を大きくすることが多い。X線複合型ヘッド内の絶縁油の比熱容量が大きいため、絶縁油で吸熱するだけによって、X線複合型ヘッド内の温度を正常な作動範囲に保つことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複合型ヘッド及び放射線撮影装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、複合型ヘッドであって、
密閉キャビティを有するケースと、
前記密閉キャビティ内に設けられる放射線管球と、
前記密閉キャビティ内に設けられるポンプ及びチューブと、を備え、
前記ポンプは、前記放射線管球の陽極から離れた一方側に設けられ、前記チューブは、一端が前記ポンプの出口に接続され、他端が前記放射線管球の陽極付近まで延びており、または、前記ポンプは、前記放射線管球の陽極付近に設けられ、前記チューブは、一端が前記ポンプの入口に接続され、他端が前記放射線管球の陽極から離れた一方側まで延びている。
【0006】
あるいは、前記ケースは、カバープレートとケース本体を備え、
前記複合型ヘッドは、前記密閉キャビティ内に設けられ、前記密閉キャビティを、連通している第1のキャビティと第2のキャビティとに仕切る第1の絶縁セパレータをさらに備え、前記カバープレートは前記第1のキャビティの側壁に位置し、
前記放射線管球は前記第1のキャビティに設けられ、前記ポンプは前記第2のキャビティのうち前記放射線管球の陽極から離れた一方側に設けられる。
【0007】
あるいは、前記カバープレートには、透明カバーがシールして設けられる第1の開口が設けられ、前記放射線管球の放射線の出射面が前記透明カバーの位置に対応する。
【0008】
あるいは、前記複合型ヘッドは、前記第2のキャビティ内に設けられ、前記第1の絶縁セパレータと交差して設けられ、前記第2のキャビティを第1のサブキャビティと第2のサブキャビティとに仕切る第2の絶縁セパレータをさらに備え、
前記ポンプは前記第1のサブキャビティに設けられ、前記第1のサブキャビティはさらに、
高圧側の両端がそれぞれ前記放射線管球の陽極、陰極に接続される前記複合型ヘッドの高周波トランスと、
高圧側の両端がそれぞれ前記放射線管球の陰極のフィラメントの両端に接続される前記複合型ヘッドのフィラメントトランスとを設けることに用いられ、
前記第2のサブキャビティは、前記複合型ヘッドの回路基板を設けることに用いられる。
【0009】
あるいは、前記高周波トランスは、
柱状の第1の磁芯と、
前記第1の磁芯の外部に覆設される筒状の第1のフレームワークと、
前記第1のフレームワークの外壁面に巻設される第1のコイルと、
前記第1のコイルの外部に覆設される筒状の第2のフレームワークと、
前記第2のフレームワークの外壁面に巻設される第2のコイルと、
両端がそれぞれ前記第1の磁芯の両端に連結されて閉磁気ループを形成する柱状の第2の磁芯と、を備える。
【0010】
あるいは、前記第1のコイルは低圧コイルであり、前記第2のコイルは高圧コイルであり、且つ前記第2のコイルの中央部が接地している。
【0011】
あるいは、前記ケースには第2の開口が設けられ、
前記複合型ヘッドは、前記密閉キャビティ内に設けられ、その開口が前記第2の開口にシールして接続されるカプセルをさらに備える。
【0012】
あるいは、前記放射線管球の陽極ターゲットが固設されており、前記放射線管球は、
前記陽極ターゲットの端部に接続され、前記放射線管球を貫通して前記密封キャビティ内に入る放熱フィンをさらに備える。
【0013】
本発明の第2の態様は、請求項1~8のいずれか1つに記載の複合型ヘッドを備える放射線撮影装置を提供する。
【0014】
あるいは、前記放射線撮影装置はC型アームX線装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の実施例による複合型ヘッド及び放射線撮影装置では、密閉キャビティ内に放射線管球、ポンプ及びチューブが設けられ、ポンプは、放射線管球の陽極から離れた一方側に設けられ、チューブは、一端がポンプの出口に接続され、他端が放射線管球の陽極付近まで延びており、または、ポンプは、放射線管球の陽極付近に設けられ、チューブは、一端がポンプの入口に接続され、他端が放射線管球の陽極から離れた一方側まで延びている。放射線管球の陽極から離れた位置での絶縁媒体と陽極付近の絶縁媒体との温度差が大きく、ポンプが作動する際に、チューブの他端とポンプの他方のポートが絶縁媒体に浸入し、それにより、陽極から離れた位置で絶縁媒体が陽極付近に吸引され、密閉キャビティの内部の絶縁媒体が循環を構成するように駆動され、それにより、陽極の位置とほかの位置との温度差が徐々に小さくなり、密閉キャビティ内の絶縁媒体の温度勾配分布がより均一になる。
【0016】
図面を参照すると、本発明の特徴及び利点をより明確に理解でき、図面は、例示的なものであり、本発明を何ら制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】従来の複合型ヘッドの放熱の模式図を示す。
図2】本発明の実施例に係る複合型ヘッドの立体構造模式図を示す。
図3】本発明の実施例に係るケース本体を取り外した複合型ヘッドの前面図を示す。
図4】本発明の実施例に係るケース本体を取り外した複合型ヘッドの後面図を示す。
図5図3に示す複合型ヘッドの第2のキャビティの上面図を示す。
図6】本発明の実施例に係るトランスの立体構造模式図を示す。
図7図4に示すトランスの分解図を示す。
図8図4に示すトランスの磁気リングの立体構造模式図を示す。
図9図4に示すトランスの第2のフレームワークの立体構造模式図を示す。
図10】本発明の実施例に係るトランスの原理図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案を明確かつ完全に説明するが、記述される実施例は、本発明の実施例の一部であり、すべての実施例ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、当業者が創造的な努力を要さずに想到し得る他のすべての実施例は、本発明の特許範囲に含まれるものとする。
【0019】
発明者は、大量のシミュレーション分析を行った結果、従来のX線複合型ヘッドでは、X線管球の作動時間が長いと、X線管球の陽極付近の絶縁油の温度がX線複合型ヘッド内のほかの部位の温度よりもはるかに高くなりやすく、温度勾配分布にムラが発生し、局所の絶縁油の温度が85℃よりも高くなり、絶縁性が大幅に低下し、それによりX線複合型ヘッド内の局所で点火現象が発生しやすいことを見出した。通常、X線管球の作動時間が短い(たとえば、20分間)ため、このような問題は、安全上の潜在的なリスクとして開発者に注目されていない。このような知見に基づいて、発明者は、従来のX線複合型ヘッドを改良することにより本願に記載の技術案を達成させることに至った。
【0020】
なお、本願における複合型ヘッドは、X線複合型ヘッドであってもよく、ほかの形態の放射線を発生させる過程に大量の熱エネルギーを生じるヘッドであってもよい。
【0021】
実施例1
本発明の実施例は複合型ヘッドを提供し、図2に示すように、この複合型ヘッドは、ケース10、放射線管球20、ポンプ30及びチューブ40を備える。ここでは、ケース10は密閉キャビティを有し、放射線管球20、ポンプ30及びチューブ30は密閉キャビティ内に設けられる。複合型ヘッドが実際に使用されるときに、密閉キャビティの内部が流動可能な絶縁媒体で満たされている。
【0022】
図2に示すように、ポンプ30は、放射線管球20の陽極から離れた一方側に設けられ、チューブ40は、一端がポンプ30の出口に接続され、他端が放射線管球20の陽極付近まで延びている。チューブ40の他端とポンプ30の入口が絶縁媒体に浸入している。放射線管球20の陽極から離れた位置での絶縁媒体の温度と陽極付近の絶縁媒体との温度差が大きく、ポンプ30が作動する際に、ポンプ30の位置での絶縁媒体が吸引され、チューブ40を介して放射線管球20の陽極へ流れて陽極管球の位置での温度を低下させ、密閉キャビティの内部にある絶縁媒体が循環を構成するように駆動され、それにより、陽極の位置とほかの位置での温度差が徐々に小さくなり、密閉キャビティ内の絶縁媒体の温度勾配分布がより均一になる。
【0023】
または、ポンプ30は放射線管球20の陽極付近に設けられ、チューブ40は、一端がポンプ30の入口に接続され、他端が放射線管球20の陽極から離れた一方側まで延びている。チューブ40の他端とポンプ30の出口が絶縁媒体に浸入している。放射線管球20の陽極から離れた位置での絶縁媒体の温度と陽極付近の絶縁媒体との温度差が大きく、ポンプ30が作動するときに、陽極付近から離れた絶縁媒体がチューブ40を介してポンプ30の位置に吸引され、陽極管球の位置での温度を低下させ、密閉キャビティの内部の絶縁媒体が循環を形成するように駆動され、それにより、陽極位置とほかの位置での温度差が徐々に小さくなり、密閉キャビティ内の絶縁媒体の温度勾配分布がより均一になる。
なお、密閉キャビティ内の絶縁媒体の比熱容量が通常大きいので、一般的には、放射線管球による放熱の要件を満たすことができ、また、従来の放射線ヘッドは体積が大きく重いので、従来の製品では、そもそも限りのある空間を占めるポンプを密閉キャビティの内部に設けることがない。
【0024】
これに加えて、なお、本願の実施例では、ポンプを密閉キャビティの内部に設けるのは、密閉キャビティの内部の熱循環を実現し、密閉キャビティの内部の温度勾配分布をより均一にするためである。従来技術では、ポンプを密閉キャビティの外部に設けるような設計は、密閉キャビティの熱を外部へ放散し、つまり、密閉キャビティ内の絶縁媒体の放熱問題を解決するためである。実質的には、密閉キャビティ内の絶縁媒体の比熱容量が通常大きいため、絶縁媒体が大量の熱を吸収しても全体的には平均温度の上昇の度合いがそれほど大きくないので、当業者は、通常、ポンプを設けることにより絶縁媒体の放熱の問題をさらに解決することはない。
【0025】
なお、密閉キャビティ内の絶縁媒体の比熱容量が通常大きいので、一般的には、放射線管球による放熱の要件を満たすことができ、また、従来の複合型ヘッドでは、一般には、複合型ヘッドの体積を増大することにより総熱容量を増加し、長時間の露出を可能にし、作動温度が規制による要件(65℃未満)を満たすようにし、したがって、従来の製品では、通常、熱伝達効率の向上、温度勾配の降低のために密閉キャビティの内部にポンプを設けることはない。
【0026】
これに加えて、なお、本願の実施例では、密閉キャビティの内部の熱循環を実現し、密閉キャビティの内部の温度勾配分布をより均一にし、複合型ヘッドの熱容量を向上させる目的で、ポンプを密閉キャビティの内部に設けるのである。従来の技術では、ポンプを密閉キャビティの外部に設けるような設計は、密閉キャビティの熱を外部へ放散させ、つまり、密閉キャビティ内の絶縁媒体の放熱の問題を解決するためである。実質的には、密閉キャビティ内の絶縁媒体の比熱容量のマージンが大きく、総熱容量が、連続的に透視する場合の平均温度の上昇が規制による温度を超えないという要件を満たすので、当業者は、通常、ポンプを設けることにより絶縁媒体の放熱の問題をさらに解決することはない。
【0027】
実施例2
本発明の実施例は複合型ヘッドを提供し、実施例1との相違点については、図2及び図3に示すように、ケース10は、カバープレート11とケース本体12を備える。複合型ヘッドは、第1の絶縁セパレータ50をさらに備える。第1の絶縁セパレータ50は、密閉キャビティ内に設けられ、密閉キャビティを、連通している第1のキャビティと第2のキャビティとに仕切り、カバープレート11は、第1のキャビティの側壁に位置し、放射線管球20は、第1のキャビティに設けられ、ポンプ30は第2のキャビティのうち放射線管球20の陽極から離れた一方側に設けられる。図2及び図4に示すように、カバープレート11には、透明カバーがシールして設けられる第1の開口13が設けられ、放射線管球20の放射線の出射面が透明カバーの位置に対応し、つまり、第1の開口は放射線の出射窓として機能する。
【0028】
なお、第1の開口13は、カバープレート11に設けられてもよく、ケース本体12に設けられてもよい。
【0029】
さらに、複合型ヘッドは、第2のキャビティ内に設けられ、第1の絶縁セパレータ50と交差して設けられ(好ましくは垂直に設けられる)、第2のキャビティを第1のサブキャビティと第2のサブキャビティとに仕切る第2の絶縁セパレータ70をさらに備える。ここでは、ポンプ30は第1のサブキャビティに設けられる。この第1のサブキャビティは、さらに、複合型ヘッドに必要な高周波トランス80、フィラメントトランス90を設けることに用いられ、図3及び図5に示すように、高周波トランス80は、それぞれ放射線管球20の陽極、陰極に接続され(通常、倍圧整流後、放射線管球20の陽極、陰極に接続される)、放射線管球の陰・陽極へ電圧差を供給し、フィラメントトランス90は、高圧側の両端がそれぞれ放射線管球20の陰極フィラメントの両端に接続され、放射線管球の陰極フィラメントへ電気エネルギーを供給することに用いられる。第2のサブキャビティは、複合型ヘッドの回路基板100を設けることに用いられ、これらの回路は、ブースト回路、倍圧回路、周波数逓倍回路、フィルタリング回路、整流回路などであってもよく、図4及び図5に示すように、回路基板100には、コンデンサ、抵抗などのデバイスが多く実装されている場合が多い。
【0030】
あるいは、本実施例は高周波トランスを提供し、図6及び図7に示すように、この高周波トランスは、第1の磁芯811、第2の磁芯812、第1のフレームワーク82、第1のコイル、第2のフレームワーク83及び第2のコイルを備える。ここでは、第1の磁芯811は柱状であり、第1のフレームワーク82は第1の磁芯811の外部に覆設され、第1のコイルは第1のフレームワーク82の外壁面に巻設され、第2のフレームワーク83は第1のコイルの外部に覆設され、第2のコイルは第2のフレームワーク83の外壁面に巻設され、第2の磁芯812の両端はそれぞれ第1の磁芯811の両端に連結されて閉磁気ループ81を形成する。ここでは、第1のコイルは低圧コイルであり、第2のコイルは高圧コイルであり、第2のコイルの中央部が接地している。
【0031】
この高周波トランスは、第1のコイル、第2のコイルはそれぞれ第1のフレームワーク、第2のフレームワークに覆設され、第2のフレームワークは第1のコイルの外部に覆設され、閉磁気ループの柱本体の部分が第1のフレームワークのキャビティを貫通しており、それによって、第1のコイルと第2のコイルの巻設パラメータが均一になり、同一コイル上の異なる巻のコイルの漏洩磁束、漏洩インダクタンス及び分布容量も同じになる。このため、本発明の実施例による高周波トランスから出力される正の高圧、負の高圧がバランスを取る。
【0032】
あるいは、上記第1の磁芯811は、形状が規則的な直柱状であることによって、コイル巻き付けパラメータの一致性をさらに向上させる。第2の磁芯812は、閉磁気ループを形成するようにU字形とされてもよい。なお、この好適な実施形態では、第1の磁芯811と第2の磁芯812は、必ずしも単一の部材であるとは限らず、概念的な分割に過ぎず、第1の磁芯と第2の磁芯は閉磁気ループを形成することができ、閉磁気ループの一部が直柱状であるようにすればよい。たとえば、図8に示すように、閉磁気ループは、2つのU字形磁気柱Aと複数の直柱状磁気柱Bとから構成され得る。本願における直柱状磁気柱とは、磁気柱の上面と下面が平行であり、且つ磁気柱の面分割線がこの2つの面に垂直であることを意味する。
【0033】
図9に示すように、第2のフレームワーク83の周方向の外壁面には、少なくとも3つの環状溝831が開けられ、隣接する2つの環状溝の間に環状凸起が形成され、隣接する2つの環状溝の間の間隔が等しい。第2のコイルは、第2の絶縁フレームワーク83の環状溝内に順次巻設される。第2のコイルは、全体として第2のフレームワーク83の外壁面に螺旋状に巻設されている。
【0034】
環状凸起には、隣接する2つの環状溝を連通させる切り欠き832が設けられ、第2のコイルの巻設方向において、隣接する2つの環状溝内のコイルのうち、後方の環状溝内にあるコイルの末端が切り欠きを通過して、前方の環状溝内にあるコイルの開始端に接続される。たとえば、第2のコイルは、環状溝Aに複数回巻き付けられてから、コイルの末端は環状凸起の切り欠きを通過して環状溝Bまで延びて、続けて複数回巻き付けられている。このことから分かるように、第2のフレームワーク83に環状溝を設計することによって、第2のコイルは、外壁面が小さい場合にも、複数回巻き付けることができ、高電圧を出力することができる。第2のフレームワーク83は絶縁材料で製造され、隣接する環状溝の間の絶縁凸起により、隣接する環状溝内のコイルの間の絶縁性を向上させることができる。あるいは、すべての切り欠き832の結び線は、第2のフレームワークの軸線に平行する直線である。
【0035】
第2のコイルは、1つであってもよく、且つその中央部が接地して設けられる。本実施例の1つの好ましい実施形態として、図10に示すように、第2のコイルは、それぞれQl、Q2、Q3、Q4という4つであり、この4つの第2のコイルは、第2のフレームワーク30の軸方向において、第2のフレームワーク30の外壁面に間隔を空けて設けられている。また、トランスは、VI、V2、V3、V4という4つの倍圧回路モジュールをさらに備え、これら4つの倍圧回路モジュールは、第2のコイルに1対1で対応し、入力された電圧を所定の倍数で増幅して出力することに用いられる。各倍圧回路モジュールの入力端が対応する第2のコイルの両端に接続され、4つの倍圧回路の出力端が順次直列接続され、直列接続された両端MNはトランスの出力端となり、図10に示すように、第2のフレームワーク30の軸方向において中央部に設けられた2つの第2のコイルの一端が接地する。一方では、トランスの出力した高圧は、コイルだけに依存して電圧を上げられる代わりに、倍圧回路モジュールを通じて電圧を上げられ、それによって、コイルの巻き数が大幅に減少し、さらにトランスが小型化する。他方では、中央部の2つの第2のコイルが接地して設けられるため、各第2のコイルの電位が低下し、中央部において接地している距離の最も小さい2つの第2のコイルは、電位が最低であり、両側にある隣接する第2のコイルは、電位が近く、このように、第2のフレームワーク30の絶縁性への要件が低下し、第2のフレームワーク30におけるコイル同士を電気的に離間する環状凸起の厚さが薄くなり、トランスが小型化する。
【0036】
なお、上記第2のコイルは、4つ以外のほかの偶数個、たとえば、2個、6個、8個・・・であってもよく、それに応じて、倍圧回路モジュールも2個、6個、8個・・・であり、両方は1対1で対応している。
【0037】
一変形態様として、切り欠きは、環状凸起に設けられる貫通孔としてもよい。
第1のフレームワーク82及び第2のコイルの巻き付け方式(未図示)については、第2のフレームワーク83及び第2のコイルの設計方式を参照することができる。又は、第1のフレームワーク82の外壁面の溝を螺旋状とし、コイルを外壁面に螺旋状に巻き付けるようにしてもよい。ただし、このような設計では、溝の向きに従ってコイルを巻き付けなければならず、溝内に1本のコイルしか巻き付けることができないので、溝の利用率が低く、第2のフレームワークの直径が小さく、長さが短い場合、第2のコイルは高電圧を出力しにくく、したがって、高周波トランスの小型化するためには、第2のフレームワーク83は螺旋状の溝を用いるのが好ましくない。
【0038】
本実施例の1つの好ましい実施形態として、閉磁気ループは長方形フレーム構造であってもよい。図6及び図7に示すように、この高周波トランスは、絶縁板841及び842をさらに備え、絶縁板841及び842は、一端が第2のフレームワーク83の端部に固設されており、他端が第2のフレームワーク83の外壁面に向かって曲がり、第2のコイルと第2の磁芯812との間に位置し、コイルによる磁芯の点火を防止することに用いられる。絶縁板841及び842のうち、第2のコイルと第2の磁芯812との間にある部分が接続されているようにしてもよく、このような場合、両端が第2のフレームワーク83の端面に固定された絶縁板が形成される。
【0039】
本実施例の1つの好ましい実施形態として、複合型ヘッドが作動する際に、放射線管球20から放出した熱のほとんどが最終的に密閉キャビティにおける絶縁媒体により吸收され、絶縁媒体の体積が大きくなり、ケースの変形を引き起こしやすい。このため、図2及び図4に示すように、本発明の実施例による複合型ヘッドのケース10には第2の開口14が設けられ、複合型ヘッドは、図3及び図4に示すように、密閉キャビティ内に設けられ、その開口が第2の開口14にシートして接続されるカプセル60をさらに備える。カプセル60のチャンバーが外部空間に連通しており、絶縁媒体の体積が大きくなると、カプセル60が最初に押さえられ、それにより、ケース10が押さえられて変形することを回避することができる。
【0040】
本願の実施例では、放射線管球の陽極ターゲットは固定型陽極ターゲットであってもよく、回転型陽極ターゲットであってもよい。本実施例の1つの好ましい実施形態として、放射線管球20の陽極ターゲットは固設されており(通常、Monoblock又はMonotankと呼ばれる)、この放射線管球20は、陽極ターゲットの端部に接続され、放射線管球20を貫通して密閉キャビティ内に入る放熱フィン(図1参照)をさらに備える。放熱フィンは、熱伝達方式で陽極ターゲットの大量の熱を密閉キャビティ内の絶縁媒体に素早く伝達することができる。
【0041】
実施例3
本発明の実施例は、実施例1若しくは実施例2及びその任意の好ましい実施形態に記載の複合型ヘッドを備える放射線撮影装置を提供する。
【0042】
あるいは、この放射線撮影装置はC型アームX線装置である。
【0043】
図面を参照しながら本発明の実施例を説明したが、当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなくさまざまな修正や変形を行うことができ、このような修正や変形はすべて添付の特許請求の範囲により限定される範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10