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特許7073613バッキング材及びその製造方法、並びに音響波プローブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】バッキング材及びその製造方法、並びに音響波プローブ
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/00 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
A61B8/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018029899
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019141407
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2020-12-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004374
【氏名又は名称】日清紡ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(72)【発明者】
【氏名】冨田 秀司
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 尚
(72)【発明者】
【氏名】小林 繁雄
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-065793(JP,A)
【文献】特開平08-070498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、磁化粒子と、を含み、
前記磁化粒子の磁束密度が、1000~15000ガウスであり、前記磁化粒子の平均粒径が0.8~20μmである、バッキング材。
【請求項2】
前記磁化粒子がフェライトである、請求項1に記載のバッキング材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッキング材を備える、音響波プローブ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のバッキング材の製造方法であって、
液状樹脂と、磁性体粒子と、を含む樹脂組成物を得る工程と、
前記樹脂組成物を硬化させ、硬化物を得る工程と、
前記硬化物に磁場をかけ、前記磁性体粒子を磁化粒子とする工程と、を有る、バッキング材の製造方法。
【請求項5】
前記磁性体粒子の残留磁束密度が、1000~15000ガウスである、請求項4に記載のバッキング材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッキング材及びその製造方法、並びに本発明のバッキング材を備える音響波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超音波診断では、対象(生体)の内部に超音波を伝播してそのエコーを受信し、エコー受信信号に基づいて、対象の断層像をはじめとする各種の診断情報を取得する。
【0003】
このような超音波診断において、超音波の送受信は音響波プローブを通じて行われる。音響波プローブには、電気音響変換を担う圧電素子(振動子)が設けられている。さらに、圧電素子から見て、超音波送受信面側(対象物側)には音響整合層(音響マッチング層)及び音響レンズが順に、背面側(電源側)にはバッキング材が、それぞれ設けられている。
【0004】
このような音響波プローブにおいて、バッキング材は、圧電素子を保持するとともに、音響的に制動をかけて、余分な振動を抑制することにより超音波のパルス間隔を短くし、超音波診断画像における距離分解能を向上するために設けられている。このようなバッキング材に要求される特性としては、(i)バッキング材の内部で音波が効率よく吸収されること、(ii)圧電素子とバッキング材との界面における反射が少ないこと等である。
【0005】
従来、上記要求特性(i)に対しては、バッキング材の内部における音波振動の減衰効果を高める手法が検討されてきた。また、上記要求特性(ii)に対しては、特に界面付近において、バッキング材の音響インピーダンスを圧電素子に近づける手法、具体的にはフィラーの充填率を高める方法や、フィラーの沈降を防止し均一な組成とする方法、フェライト等の高密度粒子を使用する方法等が検討されてきた。
【0006】
例えば、特許文献1では、フィラーの充填率を高め、フィラーの沈降を防止し均一な組成のバッキング材を得るために、磁性体をコートしたフィラーを用い、磁界をかけて硬化することでフィラーの沈降を抑制する技術が提案されている。
【0007】
また、特許文献2では、音波振動の減衰量が高く、適切な音響インピーダンスを有し、ダイシング時の熱変形が少ないバッキング材を得るために、フィラー混合物とナノコンポジット化エポキシ樹脂を使用する技術が提案されている。
【0008】
しかしながら、上記のような技術では、近年の、音波振動の減衰量の更なる向上の要求には十分に対応できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平6-225392号公報
【文献】特開2011-176419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、音波振動の減衰効果に優れたバッキング材及びその製造方法、並びに本発明のバッキング材を備える音響波プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、バッキング材が、樹脂と、磁化粒子と、を含み、前記磁化粒子の磁束密度が、1000~15000ガウスであることにより、特に、音波振動の減衰効果に優れたバッキング材が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] 樹脂と、磁化粒子と、を含み、
前記磁化粒子の磁束密度が、1000~15000ガウスである、バッキング材。
[2] 前記磁化粒子の平均粒径が0.1~90μmである、上記[1]に記載のバッキング材。
[3] 前記磁化粒子がフェライトである、上記[1]又は[2]に記載のバッキング材。
[4] 上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のバッキング材を備える、音響波プローブ。
[5] 液状樹脂と、磁性体粒子と、を含む樹脂組成物を得る工程と、
前記樹脂組成物を硬化させ、硬化物を得る工程と、
前記硬化物に磁場をかけ、前記磁性体粒子を磁化粒子とする工程と、を有し
前記磁化粒子の磁束密度が、1000~15000ガウスである、バッキング材の製造方法。
[6] 前記磁性体粒子の残留磁束密度が、1000~15000ガウスである、上記[5]に記載のバッキング材の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、音波振動の減衰効果に優れたバッキング材及びその製造方法、並びに本発明のバッキング材を備える音響波プローブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、音響波プローブの代表的な構成を示す、概略斜視図である。
図2図2は、バッキング材の減衰効果評価方法を説明するための図である。
図3図3は、バッキング材の減衰効果のばらつき評価方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に従うバッキング材及びその製造方法の実施形態について、以下で詳細に説明する。
【0016】
本発明のバッキング材は、樹脂と、磁化粒子と、を含み、前記磁化粒子の磁束密度が、1000~15000ガウスであることを特徴とする。
【0017】
本発明のバッキング材は、フィラーとして、所定の磁束密度を有する磁化粒子を含むことにより、磁化粒子間に磁気的な相互作用が形成される。この相互作用がフィラーによる音波振動の減衰効果を効果的に高めることにより、バッキング材の内部で音波を効率よく吸収できる。
【0018】
本発明のバッキング材は、樹脂と、所定の磁束密度を有する磁化粒子とを含有してなる。また、本発明の効果を妨げない範囲で、その他の成分として樹脂及び磁化粒子以外の成分を含有していてもよい。以下、構成成分毎に詳しく説明していく。
【0019】
(樹脂)
本明細書において、単に「樹脂」という場合には、例えば、後述するバッキング材の製造方法において説明する未硬化の液状樹脂を硬化して得られたもの(樹脂硬化物)を指す。
このような樹脂としては、特に限定されないが、例えばシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム等が挙げられる。中でも、硬化前の状態において、混練のしやすい点で、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
シリコーン樹脂としては、例えばジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、フェニルシリコーン、変性シリコーン等が挙げられる。中でも硬化後に可撓性を有するジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンが好ましい。このような硬化後に可撓性を有するシリコーン樹脂を用いることにより、バッキング材としたときに、プローブの形状に合わせて曲げて使用することもできる。また、シリコーン樹脂は、後述する付加反応型液状シリコーン樹脂の硬化物であることが好ましい。ここで、付加反応型液状シリコーン樹脂には1液型と2液混合型があるが、付加反応型液状シリコーン樹脂が1液型であり、合わせて硬化剤を使用する場合、その硬化物とは、それらの混合物が硬化してなる硬化物の全体を指す。また、付加反応型液状シリコーン樹脂が2液混合型である場合、その硬化物とは、当該2液の混合物が硬化してなる物の全体を指す。
【0021】
エポキシ樹脂としては、硬化後に可撓性を有するものが好ましく、中でもゴム変性エポキシ樹脂、長鎖エポキシ樹脂等が好ましい。これら可撓性を有するエポキシ樹脂を用いることで、バッキング材としたときに、プローブの形状に合わせて曲げて使用することもできる。ここで、エポキシ樹脂は、後述する未硬化の液状エポキシ樹脂と硬化剤との混合物が硬化してなる硬化物の全体を指す。
【0022】
(磁化粒子)
磁化粒子は、フィラーとしての役割を担う。フィラーには、従来、フェライトやタングステン等の高密度粒子が用いられてきた。このような高密度粒子は、樹脂中に分散され、バッキング材中を伝播する音波の振動を減衰させる効果を発揮する。高密度粒子による振動の減衰が生じる機構は主に次の二つであると考えられる。まず、(1)粒子が高密度であるゆえ、振動させるために大きなエネルギーが必要となる、また(2)高密度粒子は周りの樹脂よりも振動し難いため、樹脂とは遅れて振動し、この遅れにより振動に逆位相が生じ、周囲の振動が相殺される、という2つの作用によるものである。
【0023】
本発明者らは、上記高密度粒子による振動の減衰機構を鋭意研究し、高密度粒子を振動し難くする観点で、粒子間に磁気的な相互作用をもたせることが有効であることを見出した。すなわち、樹脂に分散させる高密度粒子が、所定の磁力をもつ磁化粒子であることにより、粒子間に磁気的な相互作用が働き、上記2つの減衰作用を効率的に高めることができる。
【0024】
そして上記知見に基づき、バッキング材に含有させるフィラーとして、磁束密度が1000~15000ガウスである磁化粒子を用いることにより、粒子間に磁気的な相互作用を十分にもたせることができ、音波振動の減衰効果をさらに高めることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0025】
なお、本明細書において「磁化粒子」とは、磁性体粒子を磁化したものであり、磁気的な作用(磁力)を発揮する粒子を指す。
【0026】
磁化粒子の磁束密度は、1000~15000ガウスであり、好ましくは1100~10000ガウスであり、より好ましくは1200~5000ガウスである。磁化粒子の磁束密度が上記範囲であると、粒子間に十分な磁気的な相互作用を持たせることができ、音波振動の減衰効果をさらに高めることができる。一方で磁化粒子の磁束密度が1000ガウス未満であると、粒子間に十分な磁気的な相互作用をもたせることができない。また、15000ガウス超のものは、材料自身の取扱い性に課題を生じやすくなるため好ましくない。
【0027】
ここで、磁化粒子の磁束密度は、後述の、原料として用いられる磁性体粒子の残留磁束密度と実質的に同一であるとみなされる。なお、この値は、磁性体粒子の製品カタログに記載の残留磁束密度の値(カタログ値)によるものとし、該カタログ等から残留磁束密度の値が得られない場合は、公知の方法により測定した値としてもよい。
【0028】
磁化粒子の平均粒径は、好ましくは0.1~90μmであり、より好ましくは0.8~90μmであり、さらに好ましくは0.8~30μmである。上記範囲とすることにより、混練が容易となり表面に気泡を含むことなく良質なバッキング材を得ることができ、良好な音波振動の減衰効果が得られる。なお、磁化粒子の平均粒径は、後述する原料としての磁性体粒子の平均粒径と実質的に同一であるとみなされる。
【0029】
ところで、従来、音波振動の減衰効果を高めるために、フィラーとしては比較的径の大きな粒子(以下、単に「大径粒子」ということがある。)を用いるのが一般的であった。大径粒子は、比較的径の小さな粒子(以下、単に「小径粒子」ということがある。)に比べて、振動に要するエネルギーが大きく、音波振動の減衰を大きくできるためである。
しかし、近年では、音響波プローブの小型化に伴い、圧電素子自身の小型化も進んできており、対応するバッキング材にも細かい範囲における音波振動の減衰効果の均一性が求められてきている。そのため従来のバッキング材において、フィラー粒子として大径粒子を用いる場合には、大径粒子に起因する密度ムラが発生し易くなり、素子間での音波振動の減衰効果にばらつきが生じ易くなる傾向にある。これに対し、バッキング材の密度ムラに起因する減衰効果のばらつきを低減する観点から、フィラー粒子を小径化する方法も考えられるが、上述のように小径粒子は大径粒子に比べ音波振動の減衰効果が劣るため、バッキング材として十分な音波振動の減衰効果を維持できない。
このように、近年における素子の小型化の観点からは、減衰効果を良好に維持しつつ、減衰効果のばらつきが少ないバッキング材を得ることが難しかった。
【0030】
これに対し、本発明のバッキング材は、磁化粒子の持つ磁気的な相互作用を用いることにより、フィラー粒子として比較的小径の磁化粒子を用いても、音波振動の減衰作用を効率よく高めることができ、優れた音波振動の減衰効果が得られる。これにより、素子の小型化に対応した、音波振動の減衰効果の維持と減衰効果のばらつきの抑制とを両立したバッキング材を得ることができる。
【0031】
上記バッキング材の減衰効果のばらつき低減化の観点では、磁化粒子の平均粒径は、好ましくは90μm以下であり、より好ましくは50μm以下であり、さらに好ましくは30μm以下である。上記範囲とすることにより、素子形状が小型化しても、バッキング材の音波振動の減衰効果を良好に維持しつつ、バッキング材の減衰効果のばらつきを少なくすることができる。
【0032】
磁化粒子としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金やフェライト等の粒子が挙げられる。中でも上記所定の磁束密度を付与でき、導通せず、化学的に安定で、かつ高密度で、高い保磁力を有するフェライト粒子が好適である。フェライト粒子としては、例えばNi-Zn系フェライトや、Mn-Zn系フェライトなどが挙げられる。
【0033】
磁化粒子の密度は、好ましくは3.0~9.0g/cm、より好ましくは5.0~9.0/cmである。このような磁化粒子は、高密度粒子として音波振動を効果的に減衰させることができる。なお、密度は、磁化による体積変化はないため後述する原料としての磁性体粒子の密度と同一である。
【0034】
磁化粒子の形状は、特に限定されないが、例えば真球状、楕円球状、破砕形状等が挙げられる。
【0035】
磁化粒子の含有量は、バッキング材中に、50~90質量%であることが好ましく、より好ましくは67~89質量%、更に好ましくは75~88質量%である。上記範囲とすることにより、音波振動の減衰効果を十分発揮させることができる。一方で50質量%未満であると、音波振動の減衰効果が十分に得られず、90質量%超であると、混練に時間を要するだけでなく、成形性が悪化する傾向がある。
【0036】
(その他の成分)
バッキング材は、必要に応じて、上記以外の成分を更に含有してもよい。上記以外の成分としては、例えば、着色剤、白金触媒、硬化促進剤、硬化遅延剤、溶媒、分散剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等が挙げられる。
【0037】
着色剤は、識別や清浄状態確認を目的として配合されることが多く、このような着色剤としては、例えば、カーボンや酸化チタン等の顔料や、染料が挙げられる。これらの成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
また、硬化促進剤は、硬化時間を短くする、硬化反応温度を下げる等を目的として配合される成分である。このような硬化促進剤としては、例えばイミダゾール類が挙げられる。これらの成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
(硬度)
本発明のバッキング材は、JIS K 6253-3:2012に準拠し、タイプAデュロメーターにより測定される硬度(以下、「A硬度」ともいう)が、好ましくは50~95であり、より好ましくは60~95であり、更に好ましくは70~95である。A硬度が上記範囲であれば、バッキング材としての形状保持特性が良好となる。特に実用上の変形や割れ、減衰特性を考慮すると、A硬度は70~95とすることがより好ましい。
【0040】
(密度)
バッキング材の密度は、好ましくは1.7~5.0g/cmであり、より好ましくは2.3~4.7g/cmであり、更に好ましくは2.8~4.5g/cmである。密度が、上記範囲であれば、バッキング材に要求される優れた音響インピーダンスとなり、良好なバッキング材が得られる。なお、本明細書において、バッキング材の密度は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0041】
(音波振動の減衰効果)
バッキング材としての音波振動の減衰効果は、例えば、後述する音響波の減衰率によって評価することができる。バッキング材としては、上記減衰率が4.5以上であることが好ましく、より好ましくは6.0以上である。このような減衰率であれば、バッキング材として優れた音波振動の減衰効果を発揮する。具体的な減衰率の測定方法は実施例の頁にて説明する。
【0042】
[バッキング材の製造方法]
以下に、本発明のバッキング材の好ましい製造方法の一例を説明する。なお、本発明のバッキング材は、下記の製造方法により限定されるものではない。
【0043】
本発明のバッキング材の製造方法は、
液状樹脂と、磁性体粒子と、を含む樹脂組成物を得る工程と、
前記樹脂組成物を硬化させ、硬化物を得る工程と、
前記硬化物に磁場をかけ、前記磁性体粒子を磁化粒子とする工程と、を有し
前記磁化粒子の磁束密度が、1000~15000ガウスである。
以下、詳しく説明する。
【0044】
(樹脂組成物を得る工程)
まず、以下の液状樹脂と、磁性体粒子と、さらに必要に応じてその他の成分をそれぞれ準備し、所定の配合比率となるように適量秤量する。なお、秤量は、公知の方法により行うことができ、各成分の配合比率は、特に断らない限り、上述のバッキング材における含有量に準ずる。
【0045】
ここで、液状樹脂は、適度な流動性を有する樹脂材料を指し、硬化反応等により硬化して、一定の形状を維持できる程度の硬さを有する硬化物を形成し得るものである。このような液状樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム等が挙げられ、中でも付加反応型液状シリコーン樹脂、液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0046】
ここで、付加反応型液状シリコーン樹脂とは、付加反応によって硬化する液状シリコーン樹脂のことである。一般に、液状シリコーン樹脂は、硬化反応の種類によって、付加反応型と、縮合反応型とに分けられる。ここで縮合反応型は、硬化反応時に脱離成分として低分子化合物(例えば、アセトンやオキシム等)を生成し、これらが気化してバッキング材中に気泡を形成する場合がある。このような気泡は、バッキング材内部において、音響吸収に影響を与える構造形成に寄与する場合があり好ましくない。そのため、液状シリコーン樹脂としては、硬化反応において脱離成分を生成しないものが望ましく、付加反応型液状シリコーン樹脂が好適である。このような付加反応型液状シリコーン樹脂としては、例えば水素やビニル基を有するものが該当する。
【0047】
付加反応型液状シリコーン樹脂は、特に限定されず、公知の材料を広く用いることができ、実験合成品及び市販品のいずれであってもよい。また、付加反応型液状シリコーン樹脂には、1液型と、2液混合型とがあるが、どちらのタイプも用いることができる。
【0048】
上記のような付加反応型液状シリコーン樹脂としては、信越化学工業株式会社製「KE-1031 A/B」、「KE-109EA/B」、「KE-103」、東レ・ダウコーニング株式会社製「EG-3000」、「EG-3100」、「EG-3810」、「527」、「S1896FREG」等を例示することができる。
【0049】
ここで、1液型付加反応型液状シリコーンは硬化剤を添加しなくても硬化させることができるが、必要に応じてさらに硬化剤を添加してもよい。硬化剤を添加することにより、硬度を高めたり、硬化を促進して硬化時間を短くしたりすることができる。
硬化剤としては、付加型の反応により未硬化の液状シリコーン樹脂を硬化させられるものであれば、特に限定はされず、公知の物を広く用いることができ、実験合成品及び市販品のいずれであってもよく、信越化学工業株式会社製「C-8B」、東レ・ダウコーニング株式会社製「RD-7」等を例示することができる。
硬化剤の配合量は、特に限定されないが、付加反応型液状シリコーン樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0050】
液状エポキシ樹脂とは、反応性のエポキシ基を有し、各種硬化剤との反応により硬化性を有する液状樹脂のことである。液状エポキシ樹脂としては、特に限定されず、公知の原料を広く用いることができ、実験合成品及び市販品のいずれであってもよいが、可使時間が長く、硬化後に可撓性を有するものが好ましい。そのような液状エポキシ樹脂としては、例えば、ゴム変性エポキシ、長鎖エポキシ等を挙げることができる。
上記のような硬化後に可撓性を有する液状エポキシ樹脂としては、例えば、DIC株式会社製「EPICLON EXA―4816」、「EPICLON EXA―4850」等が挙げられる。
【0051】
上記液状エポキシ樹脂の硬化剤としては、特に限定されないが、硬化物の可撓性を損なわないものが好ましい。このような硬化剤としては、公知のものを広く用いることができ、実験合成品及び市販品のいずれであってもよく、例えば、DIC株式会社製「ラッカマイドEA-330」、「ラッカマイドTD-984」等が挙げられる。
硬化剤の配合量は、特に限定されないが、液状エポキシ樹脂のエポキシ当量と硬化剤の活性水素当量をもとに算定できる。ここでエポキシ当量とは、エポキシ基1当量を含むエポキシ樹脂の分子量を示した数値であり、活性水素当量とは、硬化反応に関与する活性水素1当量を含む硬化剤の分子量を示した数値である。硬化剤の配合量は、液状エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基1当量に対して、硬化反応に関与する活性水素が0.8~1.2当量となるように設定することが好ましく、硬化剤の配合量を上記範囲とすることにより、良好な硬化物を得ることができる。
【0052】
特に、バッキング材に用いる液状樹脂としては、硬化後に可撓性を有するものが好ましい。このような可撓性を有する樹脂によれば、プローブの形状に合わせ曲げて使用することもできる。
【0053】
磁性体粒子としては、磁場印加後に、磁束密度が1000~15000ガウスである磁化粒子となる磁性体粒子であれば、特に限定されない。
【0054】
なお、本明細書において、「磁性体粒子」とは、磁性を帯びる事が可能な物質を指し、磁化後に磁化粒子となり得る物質を指す。そのため、ここでは、「磁性体粒子」と称する場合には、磁化はされていない粒子、すなわち磁力を帯びていない粒子を意味するものとする。
【0055】
このような磁性体粒子としては、実験合成品及び市販品のいずれであってもよく、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、またはそれらの合金やフェライト等の粒子が挙げられる。これらの磁性体材料は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
フェライト粒子としては、例えば、Ni-Zn系フェライトや、Mn-Zn系フェライトなどが挙げられる。このようなフェライト粒子の市販品としては、例えばJFEケミカル株式会社製「KNI-106」、「KNI-106GMS」、「KNI-106GS」、「LD-M」等が挙げられる。
【0057】
このような磁性体粒子の残留磁束密度は、好ましくは1000~15000ガウスであり、より好ましくは1100~10000ガウスであり、さらに好ましくは1200~5000ガウスである。上記残留磁束密度の磁性体粒子を用いることにより、後述する工程において、成形体に磁場を印加することで、成形体中に含まれる磁性粒子を所望の磁束密度を有する磁化粒子に変化させることができる。
【0058】
なお、磁性体粒子の残留磁束密度は、物性値としての残留磁束密度であり、磁性体粒子の製品カタログに記載の残留磁束密度の値によるものとし、該カタログ等から残留磁束密度の値が得られない場合は、公知の方法により測定した値としてもよい。
【0059】
また、磁性体粒子の平均粒径は、好ましくは0.1~90μmであり、より好ましくは0.8~90μmである。本発明では、フィラー粒子が小径粒子であっても高い減衰特性が得られるため、減衰特性を良好に維持しつつ、素子間の音波振動の減衰効果のばらつきを低減できる。なお、平均粒径は、実施例に記載の方法により測定された値を意味する。
【0060】
磁性体粒子の密度は、好ましくは3.0~9.0g/cm、より好ましくは5.0~9.0/cmである。このような磁性体粒子は、高密度粒子として音波振動を効率よく減衰させることができる。なお、磁性体粒子の密度は、材料固有の真密度(カタログ値)を指し、磁性体粒子の製品カタログ等から真密度の値が得られない場合は、公知の方法により測定した値としてもよい。
【0061】
その他の成分としては、例えば、着色剤、白金触媒、硬化促進剤、硬化遅延剤、溶媒、分散剤、帯電防止剤、酸化防止剤、難燃剤、熱伝導性向上剤等が挙げられる。いずれの材料も公知のものを広く用いることができ、実験合成品又は市販品のいずれであってもよい。また、これらの成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、着色剤の配合量は、特に限定されないが、液状樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01~5質量部である。また、硬化促進剤の配合量は、特に限定されないが、液状樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましい。
【0062】
次に、上記のようにして準備した各成分を、混合して、樹脂組成物を調製する。本発明では、特に上記のような液状樹脂と、磁性体粒子とを混合することにより、作業性及び成形性が良好となる。
【0063】
また、混合方法は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。このような混合方法には、例えば、ロールミル、ニーダーなどによる混練、回転翼による撹拌、遊星式攪拌混合機による攪拌等の方法が挙げられる。なお、必要に応じて樹脂組成物に、後述する脱泡処理を行ってもよい。
【0064】
(樹脂組成物を硬化させる工程)
上記のようにして得られた樹脂組成物を、所定の形状に成形し、硬化させる。
【0065】
成形方法は、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、混合した樹脂組成物を成形型内に流し込み、型締めした後硬化するなどの方法を挙げることができる。また、成形形状も特に限定されず、使用形態等に応じて所望の形状としてもよく、後加工(例えば、切断、切削、研磨等の形状加工)により硬化物を所定の形状にすることとしてもよい。
【0066】
硬化方法は、特に限定されず、材料系により異なるが、例えば以下の条件で行われることが好ましい。
加熱硬化の場合、処理温度として好ましくは50~150℃であり、より好ましくは70~150℃である。上記範囲とすることにより、時間をかけずに硬化させることができるとともに寸法精度を得やすくなる。
硬化時間は、好ましくは0.5~5.0時間であり、より好ましくは0.5~3.0時間である。上記範囲とすることにより、実用上必要な強度を有するバッキング材を得ることができる。
【0067】
また、樹脂組成物は、製造工程において気泡を含有する場合があるため、泡の少ない成形品が望ましい場合には、脱泡処理を行うことが好ましい。脱泡処理は、公知の方法により行うことができ、例えば、真空脱泡、撹拌脱泡等が挙げられる。
【0068】
(硬化物に磁場をかける工程)
上記のようにして得られた樹脂組成物の硬化物に磁場を印加する。これにより、硬化物内に分散した磁性体粒子が磁化し、所望の磁束密度をもつ磁化粒子となる。このようにして得られた磁化後の硬化物(バッキング材)では、磁化粒子同士が磁気的に相互作用を有することで、優れた音波振動の減衰効果を発揮する。
【0069】
また、磁性体粒子の分散を良くするため、樹脂組成物の硬化前は、強く磁化されていない磁性体粒子の状態で存在することが望ましい。硬化前の状態で、磁性体粒子が強く磁化されてしまうと、粒子間に磁気的な相互作用が大きく働き、樹脂組成物内で粒子が凝集する等、フィラー粒子としての粒子分散性を悪化させるおそれがある。
【0070】
磁性体粒子を着磁させるために磁場を印加する方法としては、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。例えば、高圧コンデンサによるパルス方式や、希土類金属を使った無電源着磁法等が挙げられる。特に、このような磁場の印加は、磁性体粒子の飽和磁束密度に十分達するまで行うことが好ましい。このような磁場を印加された磁性体粒子は、実質的に、その飽和磁束密度に対応する、磁束密度を有する磁化粒子となる。
【0071】
(他の工程)
上記製造方法は、上記工程の他に、必要に応じて他の工程を含んでも良い。音波振動の減衰効果に影響を及ぼさない範囲であれば、耐薬品性、耐水性、耐摩耗性、接着性等を向上させるための各種処理を施すことも可能である。
【0072】
[音響波プローブ]
本発明のバッキング材は、音響波プローブの構成部材として好適に用いられる。
図1に、音響波プローブの代表的な構成を、概略斜視図(部分透過図)で示す。図1に示される音響波プローブ10は、超音波送受信面側(対象物側)から順に、音響レンズ1、音響整合層(音響マッチング層)2、圧電素子(振動子)3及びバッキング材4を有し、さらにこれらを収める筐体5を備える。
本発明のバッキング材4を備える音響プローブ10は、バッキング材4の内部で音波が効率よく吸収されるため、音響的に制動をかけて、余分な振動を抑制することにより超音波のパルス間隔を短くでき、これにより超音波診断画像における距離分解能を向上でき、鮮明な画像による超音波診断が可能となる。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【実施例
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、後述する実施例及び比較例について、各評価は以下の条件にて行った。
【0075】
[1]平均粒径
磁性体粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、商品名:LA-500)を用いて測定した。
具体的には、界面活性剤を加えた水中に磁性体粒子を加え、超音波処理を施して磁性体粒子を十分に分散させた後、このスラリーを測定用サンプルとして、上記装置により粒度分布を測定した。得られた磁性体粒子の累積粒度分布において、累積百分率50%の粒子径(D50)を平均粒径とした。
【0076】
[2]密度
密度は、水中置換法により、空気中と水中の試料の質量から下記式(1)で算出した。
試料密度=W/(W-W)×ρ ・・・(1)
なお、上記式(1)中で、Wは空気中での試料の質量、Wは水中での試料の質量、ρは室温(20℃±5℃)での水の密度である。
【0077】
[3]減衰効果
減衰効果は以下の方法で評価した。以下、図2の評価方法の概略図を参照しながら説明する。
本実施例及び比較例で作製したバッキング材を測定用サンプル4aとし、図2に示されるように、サンプル4aに対し、発信用探触子20を用いて10MHzの発信周波数を入射し、超音波の入射面とは反対の面の受信用探触子30により観測される1波目W1と2波目W2の強度をそれぞれ求め、下記式(2)より減衰率を算出した。
減衰率=20log(I1/I2)/2t ・・・(2)
なお、上記式(2)中で、I1とI2は受信用探触子30より観測される1波目W1及び2波目W2のそれぞれの強度であり、tはバッキング材の厚み[mm]である。
発信用探触子20及び受信用探触子30としては、発信周波数10MHz用の探触子(オリンパス株式会社製、商品名:V127-RM)を使用した。
本実施例では、減衰率が、6.0以上のものを「○」、6.0未満4.5以上を「△」、4.5未満を「×」と評価した。音波振動の減衰率が大きいものはバッキング材として好適に用いることができることを意味する。
【0078】
[4]減衰効果のばらつき
減衰効果のばらつきは以下の方法で評価した。以下、図3の評価方法の概略図を参照しながら説明する。
まず、本実施例及び比較例で作製したバッキング材に、接着剤を介して圧電素子を積層し、積層体を得た。次に、この積層体を、図3に示すように0.3mmピッチでバッキング材に達するまで圧電素子をダイシングして圧電素子を切り分け、切り分けた素子毎に電極を付けて、バッキング材上に素子片を作成した。
次に、上記素子片の中から任意に選択した100片について、それぞれ、所定の電圧を印加し、このときの素子片から得られる主信号の強度と、バッキング材の不要振動の信号の強度とを、オシロスコープ(テクトロニクス社製、型名:TBS1072B)を使用して測定し、主信号強度に対する不要振動の信号強度の比率(%)を算出した。このようにして求めた100片の上記比率(N=100)から、その平均値、最大値及び最小値を求めた。
本実施例では、100片の上記比率の最大値及び最小値のいずれもがその平均値の±3%以内であれば「〇」、100片の上記比率の最大値及び最小値の少なくともいずれか一方がその平均値の±3%超±5%以内であれば「△」、100片の上記比率の最大値及び最小値の少なくともいずれか一方がその平均値の±5%超であれば「×」と評価した。
なお、不要振動の信号とは、バッキング材により抑制しきれなかった余分な振動を示すものである。そのため、素子片毎の、不要振動の信号強度の違いにより、バッキング材の減衰効果のばらつきを確認することができる。
【0079】
(実施例1)
付加反応型液状シリコーン樹脂(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:EG-3100、粘度:室温(20℃±5℃)にて0.4Pa・s)と、硬化剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、商品名:RD-7)と、磁性粒子としてのフェライト粒子(JFEケミカル株式会社製、製品名:KNI-106、残留磁束密度(カタログ値):2500ガウス、平均粒子径:0.8μm)とを、所定の割合で配合し、混練処理して、樹脂組成物を得た。
ここで、上記樹脂組成物における、硬化剤の配合割合は、付加反応型液状シリコーン樹脂100質量部に対して1質量部とし、フェライト粒子の配合割合は、付加反応型液状シリコーン樹脂及び硬化剤の合計量100質量部に対して567質量部とした。
上記のようにして得られた樹脂組成物を、120℃で2時間、加熱硬化させ、20mm×80mm、厚さ2mmの成形品を作製した。その後、得られた成形品を、内径50mmの空芯コイル内に固定し、コンデンサ型着磁電源により、印加電圧2000Vで着磁したバッキング材を作製し、これを用いて上記各種評価を行った。なお、バッキング材に含まれる磁化粒子の磁束密度及び平均粒径は、使用した磁性体粒子の残留磁束密度及び平均粒径に対応するものとする。結果を表1に示す。
【0080】
(実施例2)
液状エポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON EXA-4850、粘度:室温(20℃±5℃)にて17.5Pa・s、エポキシ当量:440)と、硬化剤(DIC株式会社製、商品名:ラッカマイドEA-330、粘度:室温(20℃±5℃)にて3.3Pa・s、活性水素当量:95)と、磁性粒子としてのフェライト粒子(JFEケミカル株式会社製、製品名:KNI-106GSM、残留磁束密度(カタログ値):2500ガウス、平均粒子径:20μm)とを、所定の割合で配合し、混練処理して、樹脂組成物を得た。
ここで、上記樹脂組成物における、液状エポキシ樹脂と硬化剤との配合割合は、液状エポキシ樹脂82質量部に対して硬化剤18質量部とし、フェライト粒子の配合割合は、液状エポキシ樹脂及び硬化剤の合計量100質量部に対して511質量部とした。
実施例2では、上記のように樹脂組成物を調整した以外は、実施例1と同様の方法でバッキング材を得た。
【0081】
参考実施例4及び比較例1~3)
参考実施例4及び比較例1~3では、実施例1で用いたフェライト粒子に替えて、下記のフェライト粒子をそれぞれ用いた以外は、実施例1と同様の方法でバッキング材を得た。
参考:残留磁束密度(カタログ値)が2500ガウスであり、平均粒子径が90μmであるフェライト粒子(JFEケミカル株式会社製、製品名:KNI-106GS)
・実施例4:残留磁束密度(カタログ値)が1300ガウスであり、平均粒子径が12μmであるフェライト粒子(JFEケミカル株式会社製、製品名:LD-M)
・比較例1:残留磁束密度(カタログ値)が760ガウスであり、平均粒子径が12μmであるフェライト粒子(JFEケミカル株式会社製、製品名:LD-MH)
・比較例2:残留磁束密度(カタログ値)が800ガウスであり、平均粒子径が0.8μmであるフェライト粒子(JFEケミカル株式会社製、製品名:KNI-109)
・比較例3:残留磁束密度(カタログ値)が800ガウスであり、平均粒子径が100μmであるフェライト粒子(JFEケミカル株式会社製、製品名:KNI-109GS)
【0082】
(比較例4)
比較例4では、成形品に磁場をかけなかった以外は、参考と同様の方法でバッキング材を得た。すなわち、比較例4のバッキング材は、参考で作製した磁化前の成形品と同じである。
【0083】
【表1】
【0084】
表1に示されるように、磁束密度が1000~15000ガウスの範囲内にある磁化粒子を含むバッキング材は、音波振動の減衰効果に優れていることが確認された(実施例1~2、参考例1、実施例4)。
【0085】
これに対し、バッキング材に含まれる磁化粒子の磁束密度が1000ガウス未満である場合には、実施例1~2、参考例1、実施例4のバッキング材に比べて、音波振動の減衰効果が劣ることが確認された(比較例1~3)。
【0086】
磁化されていない磁性体粒子は、粒子間に磁気的な相互作用が働かないため、実施例1~2、参考例1、実施例4のバッキング材に比べて、音波振動の減衰効果が劣ることが確認された(比較例4)。
【0087】
また、本発明によれば、磁化粒子の平均粒径が90μm以下の場合でも、十分な音波振動の減衰効果が得られており、特に、磁化粒子の平均粒径が20μm以下の場合には、減衰効果についての素子間のばらつきも少ないことが確認された(実施例1、2及び4)。
【符号の説明】
【0088】
1 音響レンズ
2 音響整合層
3 圧電素子
4 バッキング材
4a 測定用サンプル
5 筐体
10 音響波プローブ
20 発信用探触子
30 受信用探触子
図1
図2
図3