(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】アクチュエータの駆動制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 3/12 20060101AFI20220517BHJP
H02P 25/034 20160101ALI20220517BHJP
B25J 19/00 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
G05D3/12 305L
H02P25/034
B25J19/00 A
(21)【出願番号】P 2016213849
(22)【出願日】2016-10-31
【審査請求日】2019-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】野呂 正夫
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-095989(JP,A)
【文献】国際公開第2010/082452(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 3/12
H02P 25/034
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動部に対して圧力を発生するアクチュエータを駆動する駆動部を含み、前記可動部の位置を示す位置検出信号と前記可動部の位置を指示する位置制御信号との位置誤差を示す位置誤差信号に応じて前記駆動部に与える圧力指示信号を制御することにより
、前記可動部の位置を前記位置制御信号が示す位置に一致させるバネとして機能するよう、前記アクチュエータが発生する圧力を制御する位置制御手段と、
前記位置誤差信号に応じて前記圧力指示信号を制御する際の、前記圧力指示信号のゲインを圧力制御信号に応じて制御する
ことにより、前記バネとして機能する前記アクチュエータのバネ定数を変化させる圧力制御手段と、
制動力制御信号に応じて前記駆動部の出力インピーダンスを制御
することにより、前記アクチュエータにおいて発生する制動力を制御する制動力制御手段と、
を具備することを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
前記制動力制御手段は、前記アクチュエータの駆動電流の帰還制御を行うことにより前記圧力指示信号に応じた駆動電流を前記駆動部に出力させる制御および前記駆動部の出力インピーダンスの制御を行う制動力制御ループを含み、
前記圧力制御手段は、前記位置誤差信号に前記圧力制御信号に基づく信号処理を施すことにより前記圧力指示信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記制動力制御手段は、前記制動力制御信号に応じて、前記制動力制御ループのゲインおよび帰還量の極性を制御することを特徴とする請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記圧力制御手段は、前記圧力指示信号を前記圧力制御信号により定まる限界以内に制限することを特徴とする請求項2または3に記載の駆動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボット制御技術に係り、特にロボットにより可動部を駆動するアクチュエータの駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の産業ロボットなどに使われるロボットアームの位置や速度を制御する精度はすでに人間の能力を超えていると思われる。また、ロボットの可動部分の慣性を小さくすることを可能にする技術(例えば特許文献1参照)や、ロボットの手先の柔軟性を制御する技術(例えば特許文献2参照)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ロボットに人間らしい動作をさせることは難しく、楽器演奏もあたかも人間が弾いているような演奏をさせることは極めて難しい。
【0006】
一般的なロボットアームやロボットの動力として使われているアクチュエータ(人工筋肉)は、駆動信号に対しては滑らかに精度良く動作するものの、外力に対しては基本的に剛体である。
【0007】
アクチュエータの種類によっては、柔らかいものもあるが(例えば特許文献2参照)、ロボットとして精度良く動かすためには位置制御(位置フィードバック)を行う必要がある。しかし、この位置制御を行うと、アクチュエータは剛体化に向かい、正常な動作中はほぼ同じ固さを維持する。このため、アクチュエータの振舞いは、人間の筋肉の振る舞いと大きく異なったものになる。
【0008】
例として「太鼓を叩く」という動作の場合、実際に人間が太鼓を叩いている映像からバチの先端の軌跡を分析し、その動作をロボットアームで再現することは可能である。そして、ロボットにおいて、このバチの先端の位置制御を行うことは、かなりの精度で実現可能であり、おそらく人間以上の精度での位置制御が可能であると考えられる。
【0009】
しかし、そのようなバチの先端の位置制御を行うだけでは、人間が太鼓を叩いたような音には響かない。何故ならば、バチの軌跡は、すべてが人間の意思で動いているのではなく多くの部分が太鼓側のリアクションによって作られているためである。バチの軌跡の最初の部分は、人間の意思で太鼓の皮に向かって力を込めてバチに運動エネルギーを与えることにより形成される。このとき筋肉は硬直した固いばねのような状態となる。このままの状態でバチが皮に当たるまでバチを振り続けると、音は出るものの、バチを皮に押し付けた状態になるので、皮の自由振動が妨げられる。このため、バチによる打撃音がミュートされ、太鼓特有の音の余韻が得られない。ロボットアームによる打撃もこれに近い状態になると考えられる。
【0010】
実際の演奏では、バチに力を与えて加速した後、皮に当たる直前に筋肉の力を抜く(脱力する)ことで、バチに運動エネルギーを与え、バチの先端を皮にぶつける。そうすることでバチの質量と皮のバネ性との間で連成共振を起こさせ、バチの運動エネルギーを効率よく皮の振動エネルギーに変えて音を発生させる。その後、演奏者は、バチが皮の反発力で跳ね返されたタイミングに合わせて筋肉に力を入れてバチを受け止める。この一連の動作の中で、人間の筋肉の力がバチの動きに関与しているのは最初の加速時と最後の静止時となる。音が出るタイミングの前後は、基本的に筋肉が完全に脱力しているため、バチの動きはバチと太鼓の皮で決定されており、良い音を出すには筋肉がこの動きを妨げないようにすることが重要である。
【0011】
しかしながら、アクチュエータの駆動制御において、このような脱力の制御を可能にする手段は提供されていない。
【0012】
この発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、アクチュエータの駆動制御において脱力の制御を可能にする技術的手段を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、アクチュエータにより駆動される可動部の位置を示す位置検出信号と前記可動部の位置を指示する位置制御信号との位置誤差を示す位置誤差信号に応じて前記アクチュエータの駆動制御を行う位置制御手段と、圧力制御信号に応じて前記アクチュエータが発生する圧力の制御への前記位置誤差信号の関与を制御する圧力制御手段とを具備することを特徴とするアクチュエータの駆動制御装置を提供する。
【0014】
この発明によれば、圧力制御信号に応じて位置誤差信号のアクチュエータの圧力の制御への関与を制御することができる。従って、圧力制御信号により、位置誤差信号のアクチュエータの圧力の制御への関与を弱めることで、位置誤差信号に基づくアクチュエータの圧力の制御の働きを弱め、脱力状態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の第1実施形態である駆動制御装置の適用対象であるアクチュエータとこれが取り付けられたロボットアームを示す図である。
【
図2】同アクチュエータの構成を示す組み立て図である。
【
図3】同アクチュエータの構成を示す側面図である。
【
図4】同アクチュエータの構成を示す平面図である。
【
図5】同アクチュエータにおいてコイルが巻き回されていない状態のコイル保持体を示す側面図である。
【
図7】人間による楽器演奏のモデルの構成を示すブロック図である。
【
図8】この発明の第1実施形態であるアクチュエータシステムの構成を示すブロック図である。
【
図9】同実施形態におけるアクチュエータの駆動制御装置の構成例を示す回路図である。
【
図10】同駆動制御装置における位置制御ループの構成例を示す回路図である。
【
図11】同駆動制御装置における位置制御ループの他の構成例を示す回路図である。
【
図12】同駆動制御装置における制動力制御ループの構成例を示す回路図である。
【
図13】定電流駆動回路の構成例を示す回路図である。
【
図14】定電流駆動回路における駆動回路の出力インピーダンスを説明する回路図である。
【
図15】定電流駆動回路を利用した可変出力インピーダンス回路の構成例を示す回路図である。
【
図16】同駆動制御装置における電圧リミタの構成例を示す回路図である。
【
図17】同駆動制御装置におけるループゲイン制御部および電圧リミタからなる回路の伝達特性を示す図である。
【
図18】同実施形態の第1の動作例を示すタイムチャートである。
【
図19】同実施形態の第2の動作例を示すタイムチャートである。
【
図20】この発明の第2実施形態によるアクチュエータの駆動制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
<<本実施形態の適用対象>>
図1はこの発明の第1実施形態による駆動制御装置(
図1では図示略)の適用対象であるアクチュエータ200Aとこれが取り付けられたロボットアーム300を示す図である。このロボットアーム300は、ドラム演奏に用いられる。
図1に示すように、ロボットアーム300は、上腕部301と、下腕部302とを有する。ここで、下腕部302の先端にはドラムスティック304が固定されている。上腕部301の先端には、関節303が設けられている。この関節303は、下腕部302のドラムスティック304と反対側の端部の近傍部分を貫通する軸(図示略)を備えている。下腕部302は、この関節303を支点として回動可能である。
【0018】
アクチュエータ200Aは、上腕部301の下面に固定されている。下腕部302のドラムスティック304と反対側の端部は、連結棒299を介して、このアクチュエータ200Aのコイル保持体(
図1では図示略)に連結されている。本実施形態では、このアクチュエータ200Aの駆動制御を行うことにより、ロボットアーム300にドラム演奏を行わせる。
【0019】
<<アクチュエータの構成>>
図2は本実施形態において使用するアクチュエータ200Aの組み立て図、
図3は同アクチュエータ200Aを
図1の紙面垂直方向から見た側面図、
図4は同アクチュエータ200Aを
図1の左斜め下方から見た平面図である。なお、以下では、説明の便宜のため、「軸方向」という言葉を用いるが、この「軸方向」は
図3および
図4における左右方向を意味する。
【0020】
図2~
図4に示すように、アクチュエータ200Aは、筐体部210と、コイル保持体220Aとを有する。筐体部210は、上下の壁をなす外側ヨーク211および212と、前後の壁をなす外側ヨーク213a、213b、214a、214bとにより囲まれ、側方が吹き抜け状態の略直方体の筐体である。ここで、外側ヨーク211、212、213a、213b、214a、214bは、各々矩形平板状の磁性体により構成されている。なお、
図2では、図面が煩雑になるのを防ぐため、外側ヨーク214a、214bの図示が省略されている。
【0021】
外側ヨーク211および212は、互いに平行であり、所定間隔を空けて対向した平面部を各々有している。この外側ヨーク211および212の平面部間の空間の中央に矩形平板状の磁性体からなる内側ヨーク215が位置している。この内側ヨーク215は、外側ヨーク213a、213bの外側から外側ヨーク213aおよび213b間の隙間を貫通し、外側ヨーク214aおよび214b間の隙間に至っており、この内側ヨーク215は、その表裏2面の各平面部を外側ヨーク211および212の各平面部に対向させている。外側ヨーク213a、213bから突出した内側ヨーク215の端部は、図示しないボルト等の固定手段により
図1の上腕部301に固定される。
【0022】
コイル保持体220Aは、軸方向に貫通する中空領域を内包した直方体形状の本体221と、この本体221の軸方向一端の幅方向両端の2箇所から軸方向に突き出した2本の棒部222a’および222b’と、この棒部222a’および222b’の端部間に挟まれた橋絡部223とを有する。橋絡部223は、
図1の連結棒299の端部に連結される。また、本体221の軸方向両端付近の各領域にはコイル225’および226’が巻回されている。内側ヨーク215は、この本体221内の中空領域を貫通している。本体221は、この内側ヨーク215に沿って軸方向に移動可能である。
【0023】
図5はコイルが巻回されていない状態のコイル保持体220Aを示す側面図、
図6は同コイル保持体220Aの平面図である。図示のようにコイル保持体220Aの本体221の軸方向両端には、本体221の中心軸廻りに1周する凹部227および228が形成されている。この凹部227および228に
図2~
図4のコイル225’および226’が巻回される。
【0024】
コイル225’および226’において、外側ヨーク211に面した側には、外側ヨーク211に平行なコイル配線の束からなる平面部がある。また、コイル225’および226’において、外側ヨーク212に面した側にも、外側ヨーク212に平行なコイル配線の束からなる平面部がある。
【0025】
図2~
図4に示すように、アクチュエータ200Aは、4個の平板状の永久磁石231~234を有する。ここで、永久磁石231および233は、軸方向に間隔を空け、磁極面を内側ヨーク215に対向させて外側ヨーク211に固定されている。また、永久磁石232および234は、軸方向に間隔を空け、磁極面を内側ヨーク215に対向させて外側ヨーク212に固定されている。
【0026】
図3および
図4に示すように、永久磁石231および233の中心間の間隔、永久磁石232および234の中心間の間隔は、コイル225’および226’の中心間の間隔と等しい。また、永久磁石231~234の軸方向の長さL1および磁極表面積は互いに等しく、コイル225’および226’の軸方向の長さL2および巻回数も互いに等しい。そして、本実施形態では、永久磁石231~234の軸方向の長さL1は、コイル225’および226’の軸方向の長さL2よりも長い。
【0027】
また、永久磁石231~234の各磁極の関係は次のようになっている。
図3において、永久磁石231は上がS極、下がN極、永久磁石232は、上がN極、下がS極である。また、永久磁石233は上がN極、下がS極、永久磁石234は、上がS極、下がN極である。このように本実施形態では、軸方向の位置が同じである永久磁石に着目した場合、内側ヨーク215の外側ヨーク211側と外側ヨーク212側とで永久磁石の磁極の向きが逆向きになっており、内側ヨーク215の一方の側(例えば外側ヨーク211側)に着目した場合、軸方向に隣り合う永久磁石の磁極の向きが逆向きになっている。このため、アクチュエータ200Aでは、次の6つの異なった磁路M1~M6を各々通過する磁束流が発生する。
第1の磁路M1:永久磁石231→内側ヨーク215→外側ヨーク213a→外側ヨーク211→永久磁石231という磁路
第2の磁路M2:永久磁石232→内側ヨーク215→外側ヨーク213b→外側ヨーク212→永久磁石232という磁路
第3の磁路M3:永久磁石231→内側ヨーク215→永久磁石233→外側ヨーク211→永久磁石231という磁路
第4の磁路M4:永久磁石232→内側ヨーク215→永久磁石234→外側ヨーク211→永久磁石232という磁路
第5の磁路M5:永久磁石233→外側ヨーク211→外側ヨーク214a→内側ヨーク215→永久磁石233という磁路
第6の磁路M6:永久磁石234→外側ヨーク212→外側ヨーク214b→内側ヨーク215→永久磁石234という磁路
以上がアクチュエータ200Aの構成である。
【0028】
このアクチュエータ200Aでは、互いに逆向きの電流をコイル225’および226’に流すことにより、コイル保持体220Aに軸方向の力を発生させ、コイル保持体220Aを内側ヨーク215に沿って並進運動させることが可能である。コイル225’および226’に電流を流さない状態では、コイル225’および226’に駆動力は発生せず、脱力状態となる。
【0029】
そして、このアクチュエータ200Aによれば、平板状の永久磁石231~234により、平板状の外側ヨーク211および212の各々と、平板状の内側ヨーク215との各間に平等磁界を発生させ、この磁界中に直方体形状のコイル225’および226’を配置したので、軽量で高い駆動力の得られるアクチュエータ200Aを実現することができる。
【0030】
仮に既存のスピーカ用のアクチュエータのようにコイル225’および226’を円筒形にしたとすると、それに合わせて、外側ヨーク、内側ヨークおよび永久磁石からなる磁気回路を円筒形状にする必要があり、そのためには重量の大きな磁性材料が必要になる。
【0031】
しかしながら、このアクチュエータ200Aでは、上述のように直方体形状のコイル225’および226’を採用したため、磁気回路を構成する永久磁石231~234、外側ヨーク211および212、内側ヨーク215を全て平板状とすることができ、少ない磁性材料により軽量のアクチュエータ200Aを実現することができる。
【0032】
また、コイル225’および226’は、
図2~
図4に示すように外側ヨーク211および212と対向する上下の平面部を有する扁平な直方体形状をなしている。このため、磁路M1~M6を通過する磁束と直交し、駆動力の発生に寄与する平面部のコイル巻線の総巻線長が、平面部に垂直な側面部のコイル巻線の総巻線長よりも長く、高い駆動力を発生することができる。
【0033】
また、このアクチュエータ200Aでは、永久磁石231~234の軸方向の長さL1が、コイル225’および226’の軸方向の長さL2よりも長い。従って、コイル225’(226’)を軸方向に移動させた場合において、コイル225’(226’)と永久磁石231、232(233、234)との重複領域の面積が同一となる範囲において、コイル保持体220Aのコイルに流す電流とコイル保持体220Aに働く力との関係をリニアに保つことができる。
【0034】
また、
図3に示すように、アクチュエータ200Aの筐体部210を軸方向に3分割した各区間のうち図中左側の区間に磁路M1およびM2を、真中の区間に磁路M3およびM4を、右側の区間に磁路M5およびM6を生じさせるため、磁路M1~M6の各磁路長を短くすることができる。従って、各磁路M1~M6の磁気抵抗を下げるために各磁路M1~M6の断面積を大きくする必要がない。従って、この意味においても、磁性材料を少なくしてアクチュエータ200Aを軽量化することができる。
【0035】
また、このアクチュエータ200Aでは、軸方向に並んだ2個のコイル225’および226’によりコイル保持体220Aに対する駆動力を発生するので、高い駆動力を得ることができる。
【0036】
以上のように、軽量であり、かつ、高い駆動力が得られ、脱力の制御が可能なアクチュエータ200Aを実現することができる。従って、このアクチュエータ200Aにより楽器演奏が可能なロボットを実現することができる。
以上が本実施形態におけるアクチュエータ200Aの構成である。
【0037】
<<人間による楽器演奏のモデル>>
図7は人間による楽器演奏のモデルを示すブロック図である。
図7に示すように、人間による楽器演奏では、意識的な動作のフィードバック制御FB1の他に、無意識的な動作のフィードバック制御FB2と、性質・個性を決定するフィードバック制御FB3が働く。
【0038】
無意識的な動作のフィードバック制御FB2には、例えばドラム演奏において、スティックを強振した後、力を抜いて、ドラム側からのリアクションに身体を委ねる圧力制御(脱力制御)がある。また、性質・個性を決定するフィードバック制御FB3には、例えばドラム演奏において、筋肉の粘性により生じるスティックの制動がある。
【0039】
従来のアクチュエータシステムでは、フィードバック制御FB1のみが実現されており、フィードバック制御FB2およびFB3が実現されていない。本実施形態では、アクチュエータシステムにおいて、フィードバック制御FB1に加え、フィードバック制御FB2およびFB3を実現する。
【0040】
<<本実施形態におけるアクチュエータシステムの概略>>
図8は、本実施形態におけるアクチュエータシステムの概略構成を示すブロック図である。
【0041】
アクチュエータシステムは、アクチュエータ200Aと、本実施形態による駆動制御装置100とにより構成されている。
図8に示すように、駆動制御装置100は、位置検出部1と、比較部2と、ループゲイン制御部3と、電圧リミタ4と、加算部5と、可変極性ゲイン増幅部6と、電流検出部7と、駆動部8とを有する。
【0042】
図8において、アクチュエータ200A、位置検出部1、比較部2、駆動部8を含むループは、アクチュエータ200Aの駆動対象である可動部の位置(本実施形態ではドラムスティック304の先端位置)を位置制御信号が示す位置に一致させる位置制御ループFBaを構成している。
【0043】
この位置制御ループFBaにおいて、位置検出部1は、アクチュエータ200Aによって駆動される可動部の位置を検出し、検出結果を示す位置検出信号を生成する手段である。比較部2は、位置制御信号が示す位置と位置検出信号が示す位置の誤差を示す位置誤差信号を生成する手段である。この位置誤差信号は、ループゲイン制御部3および電圧リミタ4を介すことにより圧力指示信号となり、加算部5を介して駆動部8に供給される。駆動部8は、このようにして供給される圧力指示信号に応じてアクチュエータ200Aのコイルを駆動し、アクチュエータ200Aにより可動部を駆動する。このようにして可動部の位置を位置制御信号が示す位置に一致させる位置制御が行われる。
【0044】
以下、このアクチュエータシステムにおいて、上述した
図7の無意識的な動作のフィードバック制御FB2と、性質・個性を決定するフィードバック制御FB3を如何にして実現するかについて説明する。
【0045】
上述した無意識的な動作のフィードバック制御FB2を実現するためには、アクチュエータシステムにおいて「脱力」の制御を実現する必要がある。しかしながら、アクチュエータ200Aに働く制動がこの「脱力」の制御を実現する邪魔になる。その理由は次の通りである。
【0046】
一般に動電型アクチュエータを駆動するリニアアンプもしくはPWMアンプは基本的に定電圧駆動を行うようになっている。このようなアンプにアクチュエータを接続すると、アンプからアクチュエータのコイルに電流が流れることにより、コイルにトルクが働いてコイルが移動し、これによりコイルに逆起電力が発生する。そして、逆起電力がコイルの駆動電圧を上回るとコイルに回生電流が流れ、コイルに電磁制動が掛かるのである。定電圧駆動においては、このような電磁制動が発生し易く、これが「脱力」を実現する上での障害となる。アクチュエータシステムにおいて、「脱力」を実現するためには、電磁制動力を全く発生させないでアクチュエータ200Aを駆動する必要がある。そのためには、アクチュエータ200Aを高インピーダンスで駆動(定電流駆動)する必要がある。
【0047】
一方、筋肉自体の粘性抵抗は、制動要素として働く。上述した
図7の性質・個性を決定するフィードバック制御FB3を実現するためには、アクチュエータシステムにおいて、この制動要素を適切に働かせるためのアクチュエータ200Aの定電流駆動を行う必要がある。また、この制動要素は、常時機能している必要があり、他のコントロール要素の影響を受けるべきではない。そこで、制動要素を最も内側で高速な制御ループにより実現すべきである。
【0048】
そこで、
図8に示すアクチュエータシステムでは、アクチュエータ200A、電流検出部7、可変極性ゲイン増幅部6、加算部5および駆動部8からなる制動力制御ループFBbが設けられている。
【0049】
ここで、電流検出部7は、アクチュエータ200Aのコイルに流れる電流を検出し、電流検出信号として出力する。この電流検出信号は、可変極性ゲイン増幅部6を介して加算部5に供給される。加算部5では、電圧リミタ4が出力する圧力指示信号と可変極性ゲイン増幅部6を介して供給される電流検出信号との差分に相当する信号を出力する。駆動部8は、この加算部5の出力信号に応じてアクチュエータ200Aのコイルを駆動する。このようなフィードバック制御により駆動部8によるアクチュエータ200Aのコイルの定電流駆動が行われる。
【0050】
実際の筋肉の制動力は、想定する筋肉の個性や実際に物を動かした時に必要とされる動作安定性などに応じて変化させる必要がある。このような制動力の制御が制動力制御ループFBbによる定電流駆動の制御により実現される。
【0051】
また、本実施形態では、電磁制動力を高くするために、負性インピーダンス駆動を採用している。具体的には、本実施形態では、可変極性ゲイン増幅部6が位置検出信号を増幅して出力する際のゲインと極性を制動力制御信号に応じて切り替える。これにより、制動力制御ループFBbを電流負帰還回路または電流正帰還回路として動作させることが可能である。そして、制動力制御ループFBbを電流正帰還回路として動作させた場合には、駆動部8の出力インピーダンスを負性インピーダンスとし、高い電磁制動力を得ることができる。
【0052】
次に、アクチュエータシステムにおいて、上述した
図7の無意識的な動作のフィードバック制御FB2を如何にして実現するかについて説明する。
【0053】
フィードバック制御FB2を実現するためには、筋肉の「脱力」と「硬直」の制御(「力み」の制御)を模擬する手段が必要である。ここで、筋肉をバネにより模擬した場合、筋肉の「脱力」と「硬直」は、バネ定数の変化と見なすことができる。
【0054】
バネは初期位置からの変位と力が比例するものであるから、アクチュエータ200Aにより駆動される可動部の位置と位置制御信号が示す位置との誤差を位置誤差信号として検出し、この位置誤差信号が示す変位(距離)に比例した圧力指示信号を加算部5にフィードバックすることでアクチュエータ200Aをバネとして機能させることができる。そして、アクチュエータ200Aの駆動制御に対する位置誤差信号の関与の度合い、具体的にはアクチュエータ200Aの駆動制御へのフィードバック量を変化させればアクチュエータ200Aのバネ定数を変化させることができる。そこで、本実施形態では、位置誤差信号のフィードバック量を圧力制御信号に応じて変化させるループゲイン制御部3が設けられている。
【0055】
さて、一般的なバネは変位が大きくなれば力(圧力)も比例して大きくなる。しかし、人間の筋肉は、変位が大きい場合は、一定の力で押すような動作になるため、力(圧力)を一定にする機能を併用する必要がある。
【0056】
ここで、アクチュエータ200Aの発生する力(駆動力)は、アクチュエータ200Aのコイルに流れる電流を一定値にすることにより一定にすることができる。そこで、駆動部8に可変電流リミタ機能を設けることが考えられる。しかし、駆動部8に可変電流リミタ機能を設けると、アクチュエータ200Aの制動力の制御能力に支障を来す。
【0057】
一方、制動力制御ループFBbに対する入力電圧(加算部5に対する入力電圧)は、アクチュエータ200Aに発生させる圧力を指示する圧力指示信号であり、ループゲイン制御部3を介して与えられる。そこで、
図8に示すアクチュエータシステムでは、制動力の制御を活かしながら圧力一定を実現するために、アクチュエータ200Aの駆動制御に対する位置誤差信号の関与の限度を制御する手段、具体的には「力み」「圧力」を制御するループゲイン制御部3の出力電圧を制限する電圧リミタ4が設けられている。
以上が本実施形態によるアクチュエータの駆動制御装置100の概略である。
【0058】
<<アクチュエータの駆動制御装置の具体的構成例>>
図9は本実施形態によるアクチュエータの駆動制御装置100の具体的構成例を示す回路図である。なお、
図9では、アクチュエータシステムにおける駆動制御装置100の役割を分かりやすくするため、駆動制御装置100に加えてアクチュエータ200Aの構成が図示されている。
【0059】
図9に示す例では、光学式の位置検出部1が用いられている。アクチュエータ200Aにより駆動される可動部11には、光源12が固定されている。ここで、可動部11は、
図2のコイル保持体220Aと、
図1の連結棒299と、上腕部302と、ドラムスティック304とからなる。光源12は、この可動部11において直進運動をする部位、すなわち、コイル保持体220Aに固定されている。この光源12は、コイル保持体220Aの直進運動に伴って、受光素子13Aおよび13B間の経路に沿って移動するようになっている。具体的には、光源12は、
図3~
図6に示すコイル保持体220Aの本体221の軸方向中央付近に固定された2個のLEDにより構成されている。これらの2個のLEDのうちの一方は軸方向左側に向けて発光し、他方は軸方向右側に向けて発光する。光源12として、2個のLEDを使用するのは、軸方向両側に出射される光量を均等にするためである。受光素子13Aおよび13Bは、
図3および
図4に示す筐体部210の軸方向両端近傍に各々固定されている。これらの受光素子13Aおよび13Bは、受光量に応じて抵抗値が変化する素子であり、電源+B1の電圧を分圧する分圧回路13を構成している。
【0060】
位置検出部1は、受光素子13Aおよび13B間の経路上における光源12の位置を検出することにより、この光源12と連動するドラムスティック304の先端の位置を検出するものである。光源12が受光素子13Bから離れて受光素子13Aに近づくと、受光素子13Aの抵抗値が減少するとともに受光素子13Bの抵抗値が増加し、分圧回路13の出力電圧が上昇する。一方、光源12が受光素子13Aから離れて受光素子13Bに近づくと、受光素子13Bの抵抗値が減少するとともに受光素子13Aの抵抗値が増加し、分圧回路13の出力電圧が低下する。
【0061】
このようにしてドラムスティック304の先端の位置に応じて増減する出力電圧が分圧回路13から得られる。可変ゲイン増幅器14は、分圧回路13の出力電圧を指定されたゲインで増幅し、ドラムスティック304の先端の位置を示す位置検出信号として出力する。
【0062】
図10には、可変ゲイン増幅器14の具体的構成例が示されている。この例において、可変ゲイン増幅器14は、オペアンプ141からなるボルテージフォロワと、非反転入力端子が接地されたオペアンプ142と、オペアンプ141の出力端子に一端が接続された抵抗143と、オペアンプ142の出力端子と抵抗143の他端との間に直列接続された7個の抵抗144と、外部から与えられる位置検出ゲイン制御信号に従って7個の抵抗144の両端のいずれか一端を選択してオペアンプ142の反転入力端子に接続するスイッチ回路145とにより構成されている。位置検出信号は、この可変ゲイン増幅器14のオペアンプ142から比較部2に出力される。なお、7個の抵抗144は、互いに抵抗値が等しくてもよく、異なっていてもよい。
【0063】
この構成によれば、位置検出ゲイン制御信号に応じて、オペアンプ141の出力端子とオペアンプ142の反転入力端子との間の総抵抗値と、オペアンプ142の反転入力端子と出力端子との間の総抵抗値との比が切り替えられ、可変ゲイン増幅器14のゲインが切り替えられる。
【0064】
光学式の位置検出部1に代えて、
図11に例示する機械式の位置検出部1’を採用してもよい。この位置検出部1’では、位置検出部1における光源12、受光素子13Aおよび13Bが分圧回路として機能する摺動抵抗器15に置き換えられている。ここで、摺動抵抗器15の摺動子15sは、アクチュエータ200Aにより駆動される可動部11と連動して摺動抵抗器15を摺動する。そして、この摺動子15sから得られる分圧回路の出力電圧が可変ゲイン増幅器14に入力される。可変ゲイン増幅器14の構成は
図10のものと同様である。
【0065】
図9において、比較部2は、抵抗21および22と、ゲイン+1を有するバッファ23とにより構成されており、位置制御信号が示す位置と位置検出信号が示す位置との誤差を示す位置誤差信号を生成する。
【0066】
ループゲイン制御部3は、
図9に示す例では、非反転入力端子が接地されたオペアンプ31と、このオペアンプ31の反転入力端子および出力端子間に挿入されたゲイン切替部32とにより構成されている。この可変ゲイン増幅部3は、比較部2が出力する位置誤差信号を圧力制御信号に応じたゲインで増幅して出力する。
【0067】
電圧リミタ4は、可変ゲイン増幅部3の出力信号を圧力制御信号に応じて定まる限界電圧以内に制限し、圧力指示信号として出力する。
【0068】
加算部5は、抵抗51および52とゲインが+1であるバッファ53により構成されている。この加算部5は、電圧リミタ4の出力信号と可変極性ゲイン増幅部6の出力信号を加算して出力する。
【0069】
駆動部8は、PWM部81と、ゲートドライバ82と、出力段部83とにより構成されている。
【0070】
PWM部81は、加算部5の出力信号によりパルス幅変調されたPWMパルス列を出力する。
【0071】
出力段部83は、NチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体構造の電界効果トランジスタであり、以下、単にトランジスタという)83Ha、83Hb、83La、83Lbにより構成されている。ここで、トランジスタ83Haおよび83Hbは各々のドレインが電源+B0に接続され、各々のソースがトランジスタ83Laおよび83Lbの各ドレインに各々接続されている。また、トランジスタ83Laおよび83Lbのソースは接地されている。そして、トランジスタ83Haのソースおよびトランジスタ83Laのドレインの接続ノードと、トランジスタ83Hbのソースおよびトランジスタ83Lbのドレインの接続ノードとの間には、アクチュエータ200Aのコイル225’、226’と電流検出抵抗71が直列接続されている。
【0072】
ゲートドライバ82は、例えばPWM部81の出力信号がLレベルである場合にトランジスタ83Haおよび83Lbの組がON、トランジスタ83Hbおよび83Laの組がOFFとなるゲート-ソース間電圧を各トランジスタに供給し、PWM部81の出力信号がHレベルである場合にトランジスタ83Haおよび83Lbの組がOFF、トランジスタ83Hbおよび83Laの組がONとなるゲート-ソース間電圧を各トランジスタに供給する回路である。
【0073】
電流検出部7は、電流検出抵抗71の両端の電圧を検出し、コイル225’、226’に流れる電流を示す電流検出信号を出力する回路である。
【0074】
可変極性ゲイン増幅部6は、極性・ゲイン切替部61と、オペアンプ62と、オペアンプ62の出力端子および反転入力端子間に接続された抵抗63と、オペアンプ62の非反転入力端子および接地線間に接続された抵抗64とにより構成されている。この可変極性ゲイン増幅部6は、アクチュエータ200Aに発生させる制動力を制御する手段であり、制動力制御信号に応じたゲインおよび極性で電流検出信号を正相増幅または反転増幅し、オペアンプ62から加算部5に出力する。
【0075】
図12は、駆動部8、電流検出部7および可変極性ゲイン増幅部6の詳細な構成を示す回路図である。
【0076】
図12に示すように、電流検出部7は、抵抗701~706、キャパシタ711~716およびオペアンプ720により構成されている。ここで、抵抗701および702は、コイル225’および電流検出抵抗71間の接続ノードとオペアンプ720の反転入力端子との間に直列接続されている。また、抵抗703および704は、コイル226’および電流検出抵抗71間の接続ノードとオペアンプ720の非反転入力端子との間に直列接続されている。キャパシタ711は、抵抗701および電流検出抵抗71間の接続ノードと接地線との間に接続され、キャパシタ712は、抵抗701および702間の接続ノードと接地線との間に接続されている。また、キャパシタ713は、抵抗703および電流検出抵抗71間の接続ノードと接地線との間に接続され、キャパシタ714は、抵抗703および704間の接続ノードと接地線との間に接続されている。抵抗705およびキャパシタ715は、オペアンプ720の出力端子および反転入力端子間に並列接続され、抵抗706およびキャパシタ716は、オペアンプ720の非反転入力端子および接地線間に並列接続されている。
【0077】
この電流検出部7は、PWM部81においてPWMパルス列を生成するために用いられるキャリアの周波数成分を電流検出抵抗71の両端間の電圧から除去し、残った低域成分を電流検出信号としてオペアンプ720から出力する。
【0078】
可変極性ゲイン増幅部6の極性・ゲイン切替部61は、オペアンプ62の反転入力端子および非反転入力端子間に直列接続された7個の抵抗65と、制動力制御信号に従って、オペアンプ720の出力端子をこれらの7個の抵抗65の各両端のいずれか一端に接続するスイッチ回路66とにより構成されている。
【0079】
この可変極性ゲイン増幅部6は、制動力制御信号に従って駆動部8の出力インピーダンスを制御し、アクチュエータ200Aにおいて発生する制動力を制御する役割を果たす。以下、その詳細を説明する。
【0080】
図13および
図14では、
図12における電流検出部7および可変極性ゲイン増幅部6を合わせたものをアンプ10として示している。
図13に示すように、アンプ10のゲインが-βである場合、すなわち、アンプ10が電流検出抵抗71の両端間電圧を極性反転し、β倍にして出力する場合、
図12に示す回路では、電流負帰還が行われ、アクチュエータ200Aのコイル225’、226’の定電流駆動が行われる。
【0081】
一方、
図14に示すようにアンプ10のゲインがβである場合、すなわち、アンプ10が電流検出抵抗71の両端間電圧をβ倍に正相増幅する場合、
図12に示す回路では、電流正帰還が行われ、駆動部8の出力インピーダンスが負性インピーダンスとなる。より詳しくは、駆動部8のゲインをAとし、電流検出抵抗71の抵抗値をRsとすると、駆動部8の出力インピーダンスZoは、次式により与えられる。
Zo=(1-A・β)Rs ……(1)
【0082】
この駆動部8の出力インピーダンスZoが負性インピーダンスである状態では、アクチュエータ200Aに制動力が発生する。
【0083】
そこで、本実施形態では、可変極性ゲイン増幅部6を設けることにより、加算部5、駆動部8、コイル225’および226’、電流検出部7、可変極性ゲイン増幅部6からなる電流制御のフィードバックループを
図13に示す状態と
図14に示す状態との間で制動力制御信号に従って連続的に切り替えるようにしている。
【0084】
図15は本実施形態における制動力制御ループFBbの概略を示した回路図である。なお、
図15では、電流検出部7の図示が省略されている。
【0085】
図15において、摺動抵抗器65Mは
図12における直列接続された7個の抵抗65である。本実施形態では、
図12のスイッチ回路66が電流検出信号の供給位置を制動力制御信号に従って切り替える。摺動抵抗器65Mにおいて、電流検出信号の供給位置がオペアンプ62の非反転入力端子側に移動すると、可変極性ゲイン増幅部6の正相増幅のゲインが増すので、制動力制御ループFBbでは正帰還制御が行われる。これに対し、電流検出信号の供給位置がオペアンプ62の反転入力端子側に移動すると、可変極性ゲイン増幅部6の反転増幅のゲインが増すので、制動力制御ループFBbでは負帰還制御が行われる。本実施形態では、正帰還制御のゲインおよび負帰還制御のゲインが制動力制御信号に従って連続的に制御される。従って、アクチュエータ200Aに発生させる制動力も連続的に制御可能である。
【0086】
具体的には、制動力制御信号の電圧値が0Vである場合、電流検出部7および可変極性ゲイン増幅部6を合わせたアンプ10のゲインが絶対値の大きな負のゲインとなり、制動力制御ループFBbでは負帰還制御が行われる。この場合、駆動部8の出力インピーダンスZoは、絶対値の大きな正の値となり、駆動部8はアクチュエータ200Aのコイル225’および226’の定電流駆動を行う。このとき、アクチュエータ200Aに働く制動力は0となる。
【0087】
制動力制御信号の電圧値が0Vから上昇してゆくと、アンプ10の負のゲインの絶対値が徐々に小さくなり、駆動部8の出力インピーダンスZoが小さくなり、アクチュエータ200Aでは制動力が発生し始める。そして、制動力制御信号の電圧値が制動力制御信号の可変範囲の中央付近になると、アンプ10のゲインが0となり、駆動部8の出力インピーダンスZoもほぼ0となる。この状態では、駆動部8によりコイル225’および226’の定電圧駆動が行われ、アクチュエータ200Aでは、アクチュエータ200A自体の特性に基づく電磁制動が行われる。
【0088】
さらに制動力制御信号の電圧値が上昇すると、アンプ10は、正相増幅を行うようになり、駆動部8の出力インピーダンスZoは負のインピーダンスとなる。これによりアクチュエータ200Aにおいて発生する制動力が増加する。
以上が本実施形態において行われる制動力の制御の詳細である。
【0089】
次に
図9に示すループゲイン制御部3および電圧リミタ4について、さらに詳しく説明する。
図16は電圧リミタ4の具体的構成例を示す回路図である。この電圧リミタ4は、オペアンプ41a、41b、41c、41dと、ゲイン+1を有するバッファ42と、抵抗43a、43b、43c、43d、44と、ダイオード45a、45bとを有する。
【0090】
ここで、オペアンプ41aはボルテージフォロアを構成しており、非反転入力端子に与えられる限界電圧+VLIMと同じ電圧を出力する。この限界電圧+VLIMは、圧力制御信号に基づいて決定されるようになっている。
【0091】
オペアンプ41aの反転入力端子および出力端子の接続ノードは抵抗43aを介してオペアンプ41bの反転入力端子に接続されている。このオペアンプ41bは、非反転入力端子が接地されており、反転入力端子と出力端子との間に抵抗43bが接続されている。ここで、抵抗43aおよび43bの抵抗値は等しい。従って、オペアンプ41bは、オペアンプ41aが出力する限界電圧+VLIMの極性を反転させた限界電圧-VLIMを出力する。
【0092】
オペアンプ41aが出力する限界電圧+VLIMは、オペアンプ41cの非反転入力端子に供給される。このオペアンプ41cの反転入力端子にはダイオード45aのアノードが接続され、出力端子にはダイオード45aのカソードが接続されている。
【0093】
オペアンプ41bが出力する限界電圧-VLIMは、オペアンプ41dの非反転入力端子に供給される。このオペアンプ41dの反転入力端子にはダイオード45bのカソードが接続され、出力端子にはダイオード45bのアノードが接続されている。
【0094】
抵抗44は、
図9のループゲイン制御部3のオペアンプ31の出力端子とバッファ42の入力端子との間に接続されている。抵抗43cは、ダイオード45aのアノードとバッファ42の入力端子との間に接続されている。抵抗43dは、ダイオード45bのカソードとバッファ42の入力端子との間に接続されている。ここで、抵抗43cおよび43dは同じ抵抗値を有している。また、抵抗43cおよび43dの抵抗値は抵抗44の抵抗値に比べて十分に低い。
【0095】
以上の構成において、ループゲイン制御部3の出力信号の電圧値が限界電圧+VLIMと限界電圧-VLIMの間の範囲内にある場合、ダイオード45aおよび45bはOFFとなり、電圧リミタ4による電圧の制限は働かず、ループゲイン制御部3の出力信号はそのままの電圧値でバッファ42から出力される。
【0096】
ループゲイン制御部3の出力信号の電圧値が限界電圧+VLIMよりも高いと、ダイオード45aがONとなり、抵抗44、43cおよびダイオード45aを介してオペアンプ41cの出力端子に電流が流れ込む。このときオペアンプ41cは、出力信号のレベルを限界電圧+VLIMよりもダイオード45aの順方向電圧だけ低いレベルとし、反転入力端子の電圧を非反転入力端子に与えられる限界電圧+VLIMに一致させる。このため、ループゲイン制御部3の出力信号と限界電圧+VLIMとを抵抗44および43cの各抵抗値に基づく重み係数により重み付け加算した電圧がバッファ42に供給される。ここで、抵抗43cの抵抗値は抵抗44の抵抗値よりも十分に低いので、限界電圧+VLIMに対する重み係数は、ループゲイン制御部3の出力信号に対する重み係数よりも十分に大きい。従って、バッファ42に供給される電圧は、限界電圧+VLIMにほぼ一致した電圧値となる。
【0097】
一方、ループゲイン制御部3の出力信号の電圧値が限界電圧-VLIMよりも低いと、ダイオード45bがONとなり、ダイオード45b、抵抗43dおよび44を介してオペアンプ41dの出力端子から電流が流出する。この場合の動作はループゲイン制御部3の出力信号の電圧値が限界電圧+VLIMよりも高い場合の動作と同様であり、バッファ42に供給される電圧は、限界電圧-VLIMにほぼ一致した電圧値となる。
以上が電圧リミタ4の詳細である。
【0098】
図17は、ループゲイン制御部3の伝達特性と、ループゲイン制御部3および電圧リミタ4を合わせた回路の伝達特性を示す図である。
図17において、横軸は位置誤差信号が示す位置誤差であり、縦軸はループゲイン制御部3または電圧リミタ4の出力信号が示す圧力値である。
【0099】
本実施形態では、位置誤差信号に対するループゲイン制御部3の出力信号のゲインと、電圧リミタ4に与える限界電圧+VLIMを圧力制御信号に応じて変化させる。具体的には、圧力制御信号の信号値が高くなる程、位置誤差信号に対するループゲイン制御部3の出力信号のゲインを増加させ、これに連動して電圧リミタ4に与える限界電圧+VLIMを増加させる。
【0100】
図17において、P1~P3は、圧力制御信号を各種変化させた場合のループゲイン制御部3の出力信号を示している。この例において、圧力制御信号の信号値は、P1、P2、P3の順に高くなっている。
【0101】
図17において、Pm1~Pm3は、信号P1~P3に各々対応した電圧リミタ4の出力信号を示している。
図17に示すように、電圧リミタ4の出力信号Pm1~Pm3は、位置誤差の変化に対し、信号P1~P3と連動して各々立ち上がり、各々の飽和電圧に近づくに従って勾配が緩やかになって飽和する。この信号Pm1~Pm3の飽和電圧は、電圧リミタ4に与えられる限界電圧+VLIMに依存する。本実施形態では、
図17に示すように、ループゲイン制御部3のゲイン(直線P1~P3の勾配)が高くなるに従って、限界電圧+VLIMも高くなり、信号Pm1~Pm3の飽和電圧も高くなる。
【0102】
以上説明したループゲイン制御部3および電圧リミタ4は、アクチュエータ200Aの駆動制御に対する位置誤差信号の関与を制御して、筋肉の「脱力」と「硬直」を模擬する圧力制御手段を構成している。上述したように、筋肉をバネにより模擬した場合、筋肉の「脱力」と「硬直」はバネ定数の変化と見なすことができる。そこで、本実施形態では、
図17に示すように、アクチュエータ200Aに発生させる圧力を指示する圧力指示信号Pm1~Pm3の位置誤差信号に対するゲイン(バネ定数=信号Pm1~Pm3の勾配)を圧力制御信号に従って変化させることにより(すなわち、アクチュエータ200Aの駆動制御への位置誤差信号の関与の態様を変化させ)、筋肉の「脱力」と「硬直」に相当するものをアクチュエータシステムにおいて実現している。
【0103】
ここで、一般的なバネは変位が大きくなれば力(圧力)も比例して大きくなるが、人間の筋肉は変位が大きい場合は一定の力で押すような動作になる。そこで、本実施形態では、ループゲイン制御部3の出力信号P1~P3の信号値(圧力)を電圧リミタ4が圧力制御信号に従って制限し(すなわち、アクチュエータ200Aの駆動制御への位置誤差信号の関与を制限し)、圧力指示信号Pm1~Pm3として出力する。
【0104】
このようにすることで、制動力制御ループFBbにおける制動力制御を活かしながら、位置誤差信号が高い領域において電圧リミタ4を介して加算部5に入力される圧力指示信号の信号値を一定値(限界電圧+VLIM)に制限することが可能になる。
【0105】
<<動作例>>
図18は本実施形態の第1の動作例を示すタイムチャートである。この
図18において、横軸は時間軸、縦軸は各種の信号の信号値である。後に参照する
図19も同様である。
【0106】
この第1の動作例では、アクチュエータ200Aの設けられたロボットアーム300にドラム演奏の一形態であるシングルストロークを行わせる。
図18には、このシングルストロークをロボットアーム300に行わせるために駆動制御装置100に供給される位置制御信号、圧力制御信号および制動力制御信号の各波形が示されている。この位置制御信号、圧力制御信号および制動力制御信号は、駆動制御装置100の上位装置であるホストコンピュータ(図示略)により生成される。
【0107】
図18において、位置制御信号はドラムスティックの先端の目標位置を指示する信号である。この位置制御信号によりドラムスティックの動作範囲や振り下げ速度が決定される。第1の動作例では、時刻t11において、位置制御信号が初期位置に対応した信号値からヘッド位置よりもやや低い位置に対応した信号値に向けてある時間勾配で低下し始める。位置制御信号をヘッド位置よりもやや低い位置に対応した信号値まで変化させるのは、ドラムの位置が多少ずれても確実にドラムスティックの先端がヘッド(皮)に当たるようにするためである。
【0108】
時刻t11では、圧力制御信号は、所望の打撃速度に基づいて決定された電圧値VPaを維持している。制動力制御信号は、制動力が殆ど働かない状態にするための電圧値VBaを維持している。この状態では、位置制御信号が示す位置と位置検出信号が示すドラムスティック304の先端位置(
図9における可動部11の位置)との位置誤差をなくす位置制御が位置制御ループFBaにおいて行われる。この場合、圧力制御信号が電圧値VPaを有するので、位置誤差信号は、電圧値VPaに対応した高めのゲインで増幅され、電圧リミタ4から圧力指示信号として加算部5に供給される。また、制動力制御信号が電圧値VBaを有するので、制動力制御ループFBbでは、負帰還制御が行われ、電圧リミタ4が出力する圧力指示信号に対応した定電流がアクチュエータ200Aに供給される。この結果、アクチュエータ200Aが発生する圧力によりロボットアーム300の駆動が行われ、ドラムスティック304の先端が位置制御信号に追従してヘッド位置に向けて移動する。
【0109】
ドラムスティック304の先端がヘッド位置に到達する時刻t13のやや前の時刻t12になると、圧力制御信号が緩やかに低下し始める。この結果、位置誤差信号を増幅するゲインが緩やかに低下し、また、電圧リミタ4における限界電圧+VLIMも徐々に低下し、加算部5に供給される圧力指示信号が徐々に弱まって行く。すなわち、アクチュエータ200Aの駆動制御に対する位置誤差信号の関与の程度が弱まって行く。このため、アクチュエータ200Aが発生する圧力も徐々に弱まって行く。
【0110】
そして、位置制御信号が示すドラムスティック304の先端位置がヘッド位置に一致する時刻t13になると、圧力制御信号が0となり、これ以降の所定時間、圧力制御信号は0を維持する。
【0111】
この圧力制御信号が0である期間は、ループゲイン制御部3のゲインが0とされ、加算部5へ供給される圧力指示信号が0となる。この場合、制動力制御信号が電圧値VBaを有するため、制動力制御ループFBbでは、アクチュエータ200Aに流れる電流を0にする負帰還制御が働き、アクチュエータ200Aの定電流駆動が行われる。この結果、アクチュエータ200Aは、完全な「脱力」状態となる。
【0112】
圧力制御信号が0を維持する期間内に、位置制御信号の信号値はヘッド位置のやや下の最低位置に対応した信号値となり、その後、上昇する。しかし、この間、圧力指示信号が0であるため、アクチュエータ200Aは「脱力状態」となり、ドラムスティックの先端は位置制御信号に従わない。ロボットアーム300の下腕部302およびドラムスティック304は、アクチュエータ200Aからの束縛のない自由な状態で、慣性により移動し、ドラムスティック304の先端をヘッド面に衝突させる。その後、ヘッド面からのリアクションによりドラムスティック304の先端がヘッド位置から浮く。
図18にはこのドラムスティックの先端の挙動が破線で示されている。
【0113】
そして、位置制御信号が示す位置は、時刻t13においてヘッド位置を下回った後、ヘッド位置からやや下の位置において上昇に転じ、時刻t14においてヘッド位置を上回り、その後、最大位置に達する。
【0114】
ここで、時刻t13から時刻t14までの期間、制動力信号の電圧値はVBbとされる。この電圧値VBbは、ドラムスティック304による打撃音についての音質的な好みとドラムスティック304の跳ね具合による誤動作を考慮して設定される。
【0115】
そして、時刻t14において、制動力制御信号は、電圧値VBbから上昇し始め、その後、制動力制御信号の電圧値はVBbよりも大きいVBcとなる。また、時刻t14のやや後の時刻t15において、圧力制御信号は立ち上がり、その後、圧力制御信号の電圧値はVPaより高いVPbとなる。
【0116】
そして、時刻t11以降、位置制御信号は、時刻t13と時刻t14との間において極小値となり、その後、上昇し、極大値に達する。この間、圧力制御信号の電圧値がVPbであるため、位置誤差信号は電圧値VPbに対応した高いゲインで増幅され、位置指示信号として制動力制御ループFBbに与えられる。このため、圧力指示信号に基づくアクチュエータ200Aの定電流駆動が行われ、ドラムスティック304の先端は位置制御信号に追従して極大値に対応した位置まで持ち上がる。このとき、制動力制御ループFBbには、電圧値VBbよりも大きな電圧値VBcを有する制動力信号が与えられるため、アクチュエータ200Aに時刻t13およびt14間よりも大きな制動力が発生する。これは、位置制御信号が極大値に向かう過程では、ドラムスティック304の先端をヘッド位置から高い位置まで急速に戻すため、ドラムスティック304の跳ね返りに抗する制動力を発生して、ドラムスティック304を停止させる必要があるからである。
【0117】
その後、位置制御信号が示すドラムスティック304の先端位置は、ヘッド位置のやや下の位置に向けて移動する。以降の動作は上述と同様である。
【0118】
図19は本実施形態の第2の動作例を示すタイムチャートである。この第2の動作例では、アクチュエータ200Aの設けられたロボットアーム300にドラム演奏の他の一形態であるロールを行わせる。
【0119】
この動作例において、位置制御信号が示すドラムスティック304の先端位置は、極大値から低下し、時刻t21においてヘッド位置を下回り、以後、所定時間、ヘッド位置のやや下の位置を維持する。
【0120】
時刻t21以降の所定時間長の期間、圧力制御信号は、それ以前の電圧値VPdよりも低い電圧値VPeとなる。上述したシングルストロークの場合は、同じ状況において圧力制御信号を0とした。これに対し、ロールの場合には、圧力制御信号の電圧値をVPeとする。また、ロールの場合、時刻t21以降の所定時間長の期間、制動力制御信号を0とし、制動力制御ループFBbにおいて負帰還制御を行わせ、制動力を0にする。
【0121】
このようにすると、ドラムスティック304の先端がヘッド面に当たった後も、圧力制御信号の電圧値VPeに応じたゲインで位置誤差信号が増幅され、圧力指示信号として定電流フィードバック制御ループFBbに与えられる。この結果、
図19に破線で示すように、ドラムスティック304の先端は、ヘッド面から跳ね返った後、圧力指示信号の作用により、位置制御信号が示す位置に戻るという挙動を繰り返す。このようにしてアクチュエータシステムによりロールの動作が実現される。
【0122】
以上のように、本実施形態によれば、位置誤差信号の位置制御ループFBaにおいて行われるアクチュエータ200Aの駆動制御において、位置誤差信号のアクチュエータ200Aの駆動制御への関与の制御、具体的には位置誤差信号に適用されるゲインおよび電圧制限の圧力制御信号に基づく制御を行うようにしたので、アクチュエータ200Aの脱力制御を行うことができる。また、制動力制御信号に応じて、制動力制御ループFBbにおいて位置検出信号に適用されるゲインおよび極性を制御し、駆動部8の出力インピーダンスZoを制御するようにしたので、アクチュエータ200Aに発生する制動力を自在に制御することができる。従って、本実施形態によれば、上述した無意識的な動作のフィードバック制御FB2と、性質・個性を決定するフィードバック制御FB3とをアクチュエータ200Aの制御においても実現し、人間が行うのと同様な楽器演奏をロボットに行わせることができる。
【0123】
<第2実施形態>
上記第1実施形態では、アクチュエータの駆動制御装置をアナログ回路により実現した。しかし、上記第1実施形態による駆動制御装置の一部あるいは殆どの部分をデジタル回路やDSP(Digital Signal Processor;デジタル信号処理装置)等のプロセッサによって実現することも可能である。
【0124】
図20はこの発明の第2実施形態による駆動制御装置100Bの構成を示すブロック図である。なお、この
図20において、前掲
図9に示された要素と対応する要素には共通の符号を使用し、その説明を省略する。
【0125】
この駆動制御装置100Bでは、電流検出部7から出力されるアナログ形式の電流検出信号がAD変換器1001によってデジタル形式の電流検出信号に変換され、制御コア1000に供給される。また、この駆動制御装置100Bでは、位置検出部1から出力されるアナログ形式の位置検出信号がAD変換器1002によってデジタル形式の位置検出信号に変換され、制御コア1000に供給される。
【0126】
制御コア1000は、デジタル信号処理回路あるいはDSPにより構成されている。この制御コア1000は、上記第1実施形態における比較部2、ループゲイン制御部3、電圧リミタ4、加算部5、可変極性ゲイン増幅部6およびPWM部81が行うアナログ処理と等価なデジタル処理を実行する比較部2D、ループゲイン制御部3D、リミタ4D、加算部5D、可変極性ゲイン増幅部6DおよびPWM部81Dを含む。
【0127】
この駆動制御装置100Bでは、PWM部81Dがデジタル信号処理により生成したPWMパルス列が制御コア1000外部のゲートドライバ82に供給される。
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様な効果が得られる。
【0128】
<他の実施形態>
以上、この発明の第1および第2実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0129】
(1)上記第1実施形態の制動力制御ループFBbでは、コイル225’および226’に流れる電流(あるいはコイル225’および226’に発生するトルク)の帰還制御を行ったが、アクチュエータ200Aにより駆動される可動部11(より具体的にはドラムスティック304の先端)の速度の帰還制御を行うようにしてもよい。具体的には、アクチュエータ200Aにより駆動される可動部11(より具体的にはコイル保持体220A)に速度検出コイルを付け、この速度検出コイルの出力電圧の帰還制御を行う。その際に帰還量のゲインおよび極性を制動力制御信号により制御する。あるいは上記第1実施形態において、位置検出信号を微分回路により速度信号に変換し、この速度信号の帰還制御を制動力制御ループFBbにおいて行うようにしてもよい。あるいはアクチュエータ200Aにより駆動される可動部11(より具体的にはコイル保持体220A)に加速度ピックアップを付け、この加速度ピックアップの出力信号を積分回路により速度信号に変換し、この速度信号の帰還制御を制動力制御ループFBbにおいて行うようにしてもよい。上記第2実施形態についても同様である。
【0130】
(2)上記第1実施形態では、アクチュエータ200Aにおいて、永久磁石231~234の軸方向の長さL1を、コイル225’および226’の軸方向の長さL2よりも長くした。しかし、逆に、コイル225’および226’の軸方向の長さL2を、永久磁石231~234の軸方向の長さL1よりも長くしてもよい。
【0131】
(3)上記各実施形態では、この発明を楽器演奏に適用したが、この発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。例えば、この発明による駆動制御装置を肩たたき用ロボット等のアクチュエータに適用してもよい。
【符号の説明】
【0132】
300……ロボットアーム、301……上腕部、302……下腕部、303……関節、304……ドラムスティック、200A……アクチュエータ、299……連結棒、210……筐体部、211,212,213a,213b,214a,214b……外側ヨーク、215……内側ヨーク、220A……コイル保持体、225’,226’……コイル、222a’,222b’……棒部、223……橋絡部、227,228……凹部、231,232,233,234……永久磁石、400……身体、FB1……意識的な動作のフィードバック制御、FB2……無意識的な動作のフィードバック制御、FB3……性質・個性を決定するフィードバック制御、FBa……位置制御ループ、FBb……制動力制御ループ、1……位置検出部、11……可動部、2,2D……比較部、3,3D……ループゲイン制御部、4……電圧リミタ、4D……リミタ、5,5D……加算部、6,6D……可変極性ゲイン増幅部、7……電流検出部、8……駆動部、12……光源、13A,13B……受光素子、14,23,53,42……バッファ、10……アンプ、32……ゲイン切替部、81,81D……PWM部、82……ゲートドライバ、83……出力段部、83Ha,83Hb,83La,83Lb……Nチャネルトランジスタ、62,141,142,720,41a,41b,41c,41d……オペアンプ、143,144,63,64,65,701~706,43a,43b,43c,43d……抵抗、711~716……キャパシタ、14……可変ゲイン増幅部、15……摺動抵抗、45a,45b……ダイオード、1001,1002……AD変換器。