(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】調光フィルム、および調光装置、並びにスクリーン
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20220517BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20220517BHJP
G02F 1/1339 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1334
G02F1/1339 505
(21)【出願番号】P 2017117574
(22)【出願日】2017-06-15
【審査請求日】2020-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】矢野 勇士
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-184979(JP,A)
【文献】特開平6-186574(JP,A)
【文献】特表2013-542458(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0062215(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0115922(US,A1)
【文献】特開2016-157021(JP,A)
【文献】特開平11-242247(JP,A)
【文献】米国特許第06483643(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0170013(US,A1)
【文献】特開2007-334344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13,1/137-1/141
G02F 1/133,1/1333,1/1334
G02F 1/1339-1/1341,1/1347
G02F 1/15-1/19
E06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調光層と、前記調光層の両側の面に、透明電極と、透明性フィルム基材とをこの順に備え、前記透明電極を介して印加される電圧によって、ヘイズ(白色度)を2種以上切り替えることが可能な調光フィルム
を2つ以上並置した調光装置であって、
並びあう前記調光フィルムの間の領域が周縁部であり、
前記調光フィルムの周縁
部に、封止層を有し、
前記封止層と、透明状態の前記調光フィルムとの色度a*の差が、-10以上+10以下の範囲であり、
前記封止層と、散乱状態の前記調光フィルムとの色度a*の差が、-10以上+10以下の範囲であり、
前記封止層と、前記透明状態の前記調光フィルムとの色度b*の差が、-10以上+9.6未満の範囲であり、
前記封止層と、前記散乱状態の前記調光フィルムとの色度b*の差が、-10以上+10以下の範囲であることを特徴とする調光
装置。
【請求項2】
前記封止層が、その膜厚を150μmとした際に、波長380nmの光の透過率が、0~60%の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の調光
装置。
【請求項3】
前記調光装置において、前記調光フィルムに設けられた透明電極に電圧を供給する交流電源部と、前記電圧の供給を制御する制御部とを備える事を特徴とする請求項1または2に記載の調光装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の調光装置を用いたことを特徴とするスクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過-散乱型の液晶層を用いた調光フィルム、およびそれを備えた調光装置、並びにスクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置は、一般的な表示装置として、数値などの情報表示装置、映像などの画像表示装置などの様々な領域で利用されている。
【0003】
これら液晶材料を用いた表示装置では、一定の間隔を保持して配置された電極を有する基板間に液晶分子を配向して挟み込み、さらにこれらを2枚の偏光板で挟み込んだものであり、電気的に液晶を駆動することにより、偏向光の透過率を変えることで、表示を可能にしている。
【0004】
一方で、建築や自動車などの居住空間における窓などの領域において、外部環境の変化に応じて居住空間を常に快適に保つための光学的な機能を窓ガラスに持たせた調光ガラスの検討がなされてきた(例えば、非特許文献1)。
【0005】
このような調光ガラス用として液晶材料を用いる場合には、先に示した表示装置用の方式とは異なり、偏光板を用いず、光の利用効率の高い液晶表示素子として、液晶の透過状態(透明状態)と散乱状態との間でスイッチングを行う液晶表示素子があり、三次元の網目状に形成された樹脂からなるポリマーネットワークの内部に形成された空隙内に配置された液晶分子を有する構成のポリマーネットワーク型液晶(PNLC:Polymer Network Liquid Crystal)、または、液晶分子がポリマー中に分散配置された構成の高分子分散型液晶(PDLC:Polymer Dispersed Liquid Crystal)を用いたものが知られており、透過/遮光でなく透過/散乱の状態変化を奏する素子として採用されている。
【0006】
しかし、一般に液晶層は、酸、水分、紫外線などによって劣化が生じやすく、特に、端部は水分や酸、紫外線などに触れる可能性が高く、劣化が生じ易い。
【0007】
このため、特許文献1では、背面基板をラミネートして、PDLCパネルを作る際のシール方法について提案がなされている。
【0008】
すなわち、全面基板にコーティングされ乾燥したPDLCに、背面基板をラミネートし、PDLCパネルを形成し、更に、PDLCパネルの色と類似色のシール剤にて両基板の非平行な端面部分をシールする。さらに、シール剤として10万CPから50万CPの無溶剤シリコーン系接着剤を使用するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【非特許文献】
【0010】
【文献】NEW GLASS Vol.13 No.1 1998 P48-51
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、建築や液晶ディスプレイ用途で用いられている封止材料は、不透明であったりするなど、必ずしも光学特性が十分とは言えず、調光フィルムの周縁部に塗布した場合に、意匠性が悪化するという問題があった。
【0012】
本発明は、このような状況に鑑み、透過-散乱型液晶層を用いた調光フィルムにおいて、信頼性、意匠性の高い調光フィルムならびに調光装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものである。
すなわち、本発明の第一態様は、調光層と、前記調光層の両側の面に、透明電極と、透明性フィルム基材とをこの順に備え、前記透明電極を介して印加される電圧によって、ヘイズ(白色度)を2種以上切り替えることが可能な調光フィルムであって、
前記調光フィルムの周縁部分に、封止層を有し、
前記封止層と、透明状態の前記調光フィルムとの色度a*の差が、-10以上+10以下の範囲であり、
前記封止層と、散乱状態の前記調光フィルムとの色度a*の差が、-10以上+10以下の範囲であり、
前記封止層と、前記透明状態の前記調光フィルムとの色度b*の差が、-10以上+9.6未満の範囲であり、
前記封止層と、前記散乱状態の前記調光フィルムとの色度b*の差が、-10以上+10以下の範囲であることを特徴とする調光フィルムである。
【0014】
また、前記封止層が、その膜厚を150μmとした際に、波長380nmの光の透過率が、0~60%の範囲であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の第二態様は、本発明の第一態様の調光フィルムを1つ以上備えることを特徴とする調光装置である。
【0016】
また、前記調光フィルムを2つ以上並置した調光装置であって、並びあう前記調光フィルムの間の領域が周縁部であり、前記周縁部に、第一態様の封止層を設けることが好ましい。
【0017】
また、前記調光装置において、前記調光フィルムに設けられた透明電極に電圧を供給する交流電源部と、前記電圧の供給を制御する制御部とを備える事が好ましい。
【0018】
また、本発明の第三態様は前記調光装置を用いたことを特徴とするスクリーンである。
【発明の効果】
【0019】
本発明による調光フィルム、および調光装置であれば、調光フィルムを複数備えた調光装置であっても、透明で調光フィルム間の境目が目立ちにくく、意匠性に優れた調光装置を提供できる。
【0020】
また、紫外線による劣化が発生しにくく、高い信頼性を実現することができるため、例えば、建物の窓、パーテーション等に視野遮断素子として用いることができる。
【0021】
さらには、広告板、ショーウインドウ、コンピュータ端末、プロジェクション等のディスプレイとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態に係る調光フィルムの1例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る調光フィルムの別の1例を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る調光装置の1例を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るスクリーンの使用例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図において、同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0024】
また、各図面は本発明の実施形態の1例を示すもので、これらに限定されるものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る調光フィルムの1例を示す断面図である。調光フィルム10は、調光層13とその両面を挟み込むように、透明電極12を有する透明性フィルム11が設けられており、この調光フィルム10の周縁部には、封止層14が設けられ、基板15上に設置されている。
【0026】
基板15は、材質などは特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選定することが可能である。例えば、ガラス板、ポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料からなるシートなどを単独あるいは、複数のものを組み合わせた複合材としたものなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
基材15には、紫外線や熱線、電磁波などに対する反射層や吸収層などのほか、バリア層などの各種機能層が設けられてあっても何ら問題ない。
【0028】
透明性フィルム11は、実質的に透明なフィルムであれば、いずれも用いることができる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などのセルロース誘導体、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂などからなるフィルムを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0029】
このような透明性フィルムには、紫外線吸収剤、安定剤などが添加されてあっても良いし、透明性フィルムのいずれかの面に、紫外線吸収層、熱線反射層、バリア層などが設けられてあってもなんら問題ない。
【0030】
また、透明性フィルムには、適宜、易接着処理、帯電防止処理、などが施されてあっても良いし、更に補強基材などが設けられてあっても何ら問題ない。
【0031】
透明電極12は、従来公知の透明性を有する電極材料であればいずれも用いることができ、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)導電膜、酸化錫導電膜、酸化亜鉛導電膜、高分子導電膜などからなる電極を例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0032】
この様な透明電極12は、真空蒸着法やスパッタリング法等の物理的気相成長法(PVD法)、各種化学的気相成長法(CVD法)、各種塗布法等を用いることにより形成することができる。
【0033】
また、所望に応じて、透明電極12のパターニングが必要となった場合には、エッチング法、リフトオフ法、レーザトリミング法、各種マスクを用いる方法など、任意の方法によって行うことができる。
【0034】
透明電極12の上には、必要に応じて適宜、配向膜などが設けられてあっても良い。配向膜は従来公知の配向膜であれば、水平配向膜、垂直配向膜のいずれが用いられていても良く、用途に応じて適宜選定することができる。
【0035】
本発明では、調光層13としてPDLC,PNLCの何れのタイプの液晶組成物も採用可能である。
【0036】
PNLCによる調光層では、相分離において未反応成分が殆どなく、ポリマーネットワークと液晶領域が高い純度で明確に分かれる挙動を示す。
【0037】
また、基板(導電膜)のラビングによるプレチルト配向処理を行なうことなく、理想的な配向状態を実現することが可能であり、液晶分子はポリマーネットワークによって分割されたドメインごとにほぼ一様に配向することになる。
【0038】
PNLCの駆動電圧は、一般にポリマーネットワークの構造上の特性(ドメインの大きさや形状,ポリマーネットワークの膜厚など)に依存しており、ポリマーネットワークの構造と、得られる光透過/散乱度との関係において、駆動電圧が決定されている。100V以下の電圧領域において、十分な光透過/散乱度が得られるようなPNLCを構成するには、各ドメインがいずれも適正な大きさで均一となるように、かつ、形状も均一となるようにポリマーネットワークを形成する必要がある。
【0039】
本発明では、ポリマーネットワーク構造に依存するドメインサイズを3μm以下、好ましくは2μm以下、一層好ましくは約1μmとなる様に制御する。
【0040】
好適な製造方法の詳細については、九州ナノテック光学株式会社による特許第4387931号に説明されており、本発明の実施形態においても、調光層となる液晶素子(PNLC)の製造は前記特許に準拠したプロセスを採用する。
【0041】
高分子材料は、従来公知の材料をいずれも用いることができるが、紫外線照射によって重合反応を誘起し、硬化させることが可能な紫外線硬化型樹脂が好適に用いられる。
【0042】
具体的には、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリレート化合物などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
このような紫外線硬化型樹脂には、重合開始剤や増感剤、各種安定剤などが添加されてあっても良い。
【0044】
液晶材料は、ネマチック液晶、スメクチック液晶、コレステリック液晶など従来公知の液晶材料をいずれも用いることができる。中でも、低電圧での駆動ならびに散乱特性などを考慮すると、誘電率の異方性が高く、屈折率の異方性の大きいものが好ましい。
【0045】
このような液晶材料は、先に示した高分子材料の重合反応に供するエチレン基などの官能基を有していても良く、あるいは重合反応前の高分子材料に予め側鎖として導入されてあっても良い。
【0046】
上述のような調光層13には、スペーサが導入されてあっても良い。スペーサを導入することにより、調光層13の厚さを均一に保つことが可能となる。
【0047】
スペーサとしては、特に限定するものではないが、粒状の樹脂スペーサや、粒状のガラススペーサなどを好適に用いることができる。
【0048】
調光層13を設けるための方法としては、前記透明電極を有する透明性フィルム上に、各種コーター等を用いて液晶組成物を塗布した後、もう一方の透明電極を有する透明性フィルムをラミネートする方法や、液晶組成物を滴下する所謂ODF(One-Drop-Fill)法など、従来公知の工法を任意に用いることができる。
【0049】
上述の様にして得られた調光フィルム10の周縁部には、調光層13を水分、酸、紫外線などから守るための封止層14が設けられている。
【0050】
封止層14に用いられる材料としては、例えば、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エン-チオール系樹脂、シリコーン系樹脂、変性ポリマーなどの各種樹脂系において、熱硬化型や、光硬化型、湿気硬化型、嫌気硬化型などの各種樹脂材料を用いることができる。
【0051】
また、封止層14は、その色相において、前記調光フィルム10が透明状態ならびに散乱状態における色度a*との差が、それぞれ-10~+10の範囲であり、且つ色度b*の差が、それぞれ-10~+10の範囲であることが重要である。
【0052】
この様にすることによって、調光フィルム10を透明状態とした場合であっても、また散乱状態とした場合であっても、調光フィルム10の色度と封止層14の色度との差が小さく、封止層14の存在を視認し難くすることが可能となる。従って、得られる調光装置の意匠性を極めて高いものとすることができる。
【0053】
この様な特性を得るための封止層14は、実質的に透明であることが望ましいと言えるが、状況に応じて適宜、色素やフィラー類などが添加されてあっても良い。色素を添加する場合には、耐候性等を考慮すると、顔料系の色素であることが望ましい。
【0054】
ここで、先に示した色度a*、ならびに色度b*とは、国際照明委員会(CIE)にて規格化されたL*a*b*表色系において、色相と彩度を示す色度を表すもので、+a*は赤方向、-a*は緑方向、そして+b*は黄方向、-b*は青方向というように色の方向を示しており、それぞれ数値が大きくなるほど色あざやかになり、逆に中心に近づくに従ってくすんだ色となることを示している。
【0055】
また、封止層14は、更に紫外線遮蔽機能を有し、封止層14の膜厚を150μmとした際に、波長380nmの光(紫外線)の透過率が、0~60%の範囲であることが重要である。
【0056】
これにより、調光フィルム10の周縁部から紫外線が入射することによって調光層13が劣化するのを防ぐことができる。
【0057】
この様な特性を有する封止層14を得るために、封止層14には紫外線吸収剤が添加されていることが望ましい。
【0058】
紫外線吸収剤は、従来公知のものをいずれも任意に用いることができる。具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどの無機系紫外線吸収剤や、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等の有機系紫外線吸収剤などを、適宜選定し、単独あるいは、2種以上の混合物として用いることができる。
【0059】
上述の様な封止層14を設けることにより、極めて意匠性が高く、また劣化などの問題を抑えた信頼性の高い調光フィルム10ならびに調光装置を提供する事ができる。
【0060】
図2は、基板20上に、上述の様な調光フィルム10を2つ以上設けたものの例を示しており、各調光フィルム10の周縁部間に、上述の封止層14を設けた構造を示したものである。
【0061】
図2に示す様に、上述の封止層14を設けることにより、2つ以上の調光フィルムを並置した場合であっても、封止層14を視認し難くすることができ、意匠性を高めることができる。
【0062】
図3は、調光装置1において、交流電源31ならびに制御部32を設けた例を示している。
【0063】
交流電源31は、制御部32に接続され、制御部32によって、調光フィルム10に設けられた透明電極12に供給(印加)される電圧が制御される。
【0064】
例えば、調光フィルム10に印加される電圧をON又はOFFすることにより、調光層13中の液晶材料の配向状態を制御し、調光フィルム10を透明状態あるいは散乱状態とすることができ、調光フィルムのヘイズ(白色度)を制御することが可能となる。
【0065】
以上の様にして得られる調光装置1は、建物の窓、自動車の窓やサンルーフ、パーテーションなど、各種の用途に用いることができる。
【0066】
図4では、調光装置1をプロジェクタ42から投射された画像を映すためのスクリーン41として用いる例を示している。
【0067】
スクリーン41は、透明状態とした場合には、景観の邪魔をしない透明板として用いることができ、また散乱状態とした場合には、パーテーションとしても活用できる。
【0068】
さらに、散乱状態とした部分に、プロジェクタ42から投射された画像を映すことにより、スクリーンとして用いることができる。
【0069】
また、スクリーン41に、2つ以上の調光フィルムが設けられている場合には、スクリーンとして用いたい領域のみを散乱状態とし、それ以外の部分を透明状態とすることもでき、イベント会場などで、スクリーンの奥の様子を垣間見ることができながら、スクリーンに投影された画像を楽しむことが可能となる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0071】
〔色度差試験〕
(実施例1)
ITO層付き透明性フィルムを2枚用意し、その一方の透明性フィルムのITO層側に、25μm粒径のスペーサを塗布した。
【0072】
その後、スペーサ塗布面に、ODF(One-Drop-Fill)法にて下記の液晶組成物を滴下し、次いで、他方の透明性フィルムのITO面が向き合うように貼り合わせを行い、350nm以下の波長をカットした照度60mWのメタルハライドランプを用い
て、365nm換算で7J/cm2の紫外線照射を実施し、調光フィルムを得た。紫外線を照射する際の照射装置内は、25℃に制御した。
【0073】
この調光フィルムに粘着剤付き補強基材をラミネートし、両面の透明電極層と導通させるため一部端部をハーフカットし、補強基材付き調光フィルムを得た。
【0074】
このようにして得られた補強基材付き調光フィルム3枚を、5mmの間隔をあけて、青板ガラスに貼り付けた後、補強基材付き調光フィルムの隙間に、下記封止材1を塗布し、ブラックライトを表面のタック性がなくなるまで照射して、実施例1のサンプルを得た。
【0075】
<液晶組成物>
液晶組成物には、液晶と硬化性樹脂、二官能モノマー、並びにヒドロキシ基、カルボキシ基及びリン酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種の極性基を有するモノマーを含む。液晶には、ネマチック液晶、スメクチック液晶又はコレステリック液晶を用いることができる。
【0076】
<封止材1>
封止剤としては、ポリチオール化合物と、1分子中に2個以上の炭素-炭素二重結合を有するポリエン化合物と、光重合開始剤とを含有する光硬化型樹脂液として調製したものを用いることができ、ポリエン化合物としてはアリル化合物、プロペニル化合物、(メタ)アクリレート化合物等が上げられ、ポリエン-ポリチオール系樹脂、(メタ)アクリレート化合物を用いることができる。
【0077】
(実施例2)
実施例1と同様に調光フィルムを作製し、補強基材付き調光フィルム3枚を、5mmの間隔をあけて青板ガラスに貼り付けた後、補強基材付き調光フィルムの隙間に、封止材1と色相の異なるように調色した封止材2を塗布し、ブラックライトを表面のタック性がなくなるまで照射して、実施例2のサンプルを得た。
【0078】
(実施例3)
封止材1の色相を調色して封止材3とした以外は、実施例1と同様にして、実施例3のサンプルを得た。
【0079】
(実施例4)
封止材1の色相を調色して封止材4とした以外は、実施例1と同様にして、実施例4のサンプルを得た。
【0080】
(実施例5)
封止材1の色相を調色して封止材5とした以外は、実施例1と同様にして、実施例5のサンプルを得た。
【0081】
(実施例6)
封止材1の色相を調色して封止材6とした以外は、実施例1と同様にして、実施例6のサンプルを得た。
【0082】
(実施例7)
封止材1の色相を調色して封止材7とした以外は、実施例1と同様にして、実施例7のサンプルを得た。
【0083】
(実施例8)
封止材1の色相を調色して封止材8とした以外は、実施例1と同様にして、実施例8のサンプルを得た。
【0084】
(比較例1)
封止材1の色相を調色して封止材9とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1のサンプルを得た。
【0085】
(比較例2)
封止材1の色相を調色して封止材10とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2のサンプルを得た。
【0086】
(比較例3)
封止材1の色相を調色して封止材11とした以外は、実施例1と同様にして、比較例3のサンプルを得た。
【0087】
(比較例4)
封止材1の色相を調色して封止材12とした以外は、実施例1と同様にして、比較例4のサンプルを得た。
【0088】
(比較例5)
封止材1の色相を調色して封止材13とした以外は、実施例1と同様にして、比較例5のサンプルを得た。
【0089】
(比較例6)
封止材1の色相を調色して封止材14とした以外は、実施例1と同様にして、比較例6のサンプルを得た。
【0090】
(評価方法)
<目視観察>
各サンプルにつき、2mの距離からサンプルの観察を実施し、隙間が目立たないものを意匠性が優れるものとした。
【0091】
観察は、調光フィルムが透明状態の場合と、散乱状態の場合について実施した。
【0092】
<色度測定>
日立ハイテク社製「分光光度計 U-4100」を用いて、各サンプルの封止材部分の色度a*と、色度b*の測定を実施し、調光フィルムの透明状態の場合と散乱状態の場合との各色度の差を求めた。
【0093】
各評価結果は、表1にまとめた
【0094】
【0095】
〔紫外線透過率試験〕
(実施例9)
実施例1と同様に調光フィルムを作製し、補強基材付き調光フィルム3枚を、5mmの間隔をあけて青板ガラスに貼り付けた後、補強基材付き調光フィルムの隙間に、下記封止材15を塗布し、ブラックライトを表面のタック性が無くなるまで照射し、実施例9のサンプルを得た。
【0096】
<封止材15>
封止材15にはアクリル系モノマーおよび/またはアクリル系オリゴマーを含むラジカル重合性のアクリル系化合物と光重合開始剤と紫外線吸収材を用いることができる。
【0097】
(実施例10)
封止材15の紫外線吸収剤の添加量を調整し、封止材16とした以外は、実施例9と同様にして、実施例10のサンプルを得た。
【0098】
(実施例11)
封止材15の紫外線吸収剤の添加量を調整し、封止材17とした以外は、実施例9と同様にして、実施例11のサンプルを得た。
【0099】
(実施例12)
封止材16の紫外線吸収剤の添加量を調整し、封止材18とした以外は、実施例9と同様にして、実施例12のサンプルを得た。
【0100】
(比較例7)
封止材15の紫外線吸収剤の添加量を調整し、封止材19とした以外は、実施例9と同様にして、比較例7のサンプルを得た。
【0101】
(評価方法)
<紫外線透過率>
実施例10~実施例12、および比較例7で使用した各封止材につき、アプリケータを用いて、膜厚150μmのサンプルをそれぞれ作製し、日立ハイテク社製「分光光度計 U-4100」を用いて380nmの光の透過率を測定した。
【0102】
<耐光性試験>
実施例10~実施例12、および比較例7で作製した各サンプルにつき、スーパーUV(SUV)試験機にて、650W/m2、60℃、63%RHの条件で、100時間の紫外線照射を実施した後、封止部分の外観に変化があるかどうか、目視観察を実施した。
【0103】
評価結果を表2に示した
【0104】
【0105】
表1の結果より、2mの距離から観察して封止材が設けられた隙間部分が目立たないものは、封止材の色度a*、色度b*と、調光フィルムの透明状態ならびに散乱状態における色度a*、色度b*との差が、それぞれ-10~+10の範囲内であることが判った。
【0106】
本発明では、封止層と調光層の色度差(Δa*、Δb*)が、調光層の透過状態/散乱状態のそれぞれの場合で、絶対値で10以内であることが要求されるが、封止層および調光層の色度(a*、b*)が±0近傍の値であると、各部材の着色が目立たず好適である。
【0107】
また、表2の結果より、380nmの光の透過率が、0~60%の範囲である実施例9~実施例12では、スーパーUV試験において、封止部分の外観上の変化は認められず、良好な結果を示していることが判った。
【符号の説明】
【0108】
1 … 調光装置
10 … 調光フィルム
11 … 透明性フィルム
12 … 透明電極
13 … 調光層
14 … 封止層
20 … 基板
31 … 交流電源部
32 … 制御部
41 … スクリーン
42 … プロジェクタ