(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】動態解析装置及び動態解析システム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
A61B6/00 350C
A61B6/00 330A
(21)【出願番号】P 2017185574
(22)【出願日】2017-09-27
【審査請求日】2020-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松谷 哲嗣
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0269592(US,A1)
【文献】特開2012-192255(JP,A)
【文献】特開2015-226852(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
G06T 7/00-7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体における血管を含む部位を放射線撮影することにより得られた動態画像内の複数の領域において前記血管の位置や形状に関する指標値の経時変化を測定する指標値測定手段と、
前記指標値測定手段が測定した各領域の指標値の経時変化に基づいて、各領域における血管の伸長率を算出する伸長率算出手段と、
前記伸長率算出手段が算出した各領域における伸長率を一覧表示する伸長率表示手段と、を備え、
前記血管を含む部位は肺野であり、
前記指標値測定手段は、肺野全体に分布するように配置され
、前記動態画像に含まれる各フレーム画像において同一部位に付された複数のマーカーのうち、肺野内に設定された大きさ及び座標が一定の領域内にあるマーカーの数を指標値として測定することを特徴とする動態解析装置。
【請求項2】
被写体における血管を含む部位を放射線撮影することにより得られた動態画像内の複数の領域において前記血管の位置や形状に関する指標値の経時変化を測定する指標値測定手段と、
前記指標値測定手段が測定した各領域の指標値の経時変化に基づいて、各領域における血管の伸長率を算出する伸長率算出手段と、
前記伸長率算出手段が算出した各領域における伸長率を一覧表示する伸長率表示手段と、
前記動態画像に所定の画像処理を施すことにより肺野内の肺血管を検出する血管検出手段と、
を備え、
前記血管を含む部位は肺野であり、
前記指標値測定手段は、肺野全体に分布するように配置され
、前記動態画像に含まれる各フレーム画像において同一部位に付された複数のマーカーのうち、肺野内に設定された大きさ及び座標が一定の領域内にあるマーカーの数を指標値として測定
し、
前記指標値として、前記領域に占める肺血管領域の密度を測定することを特徴とする動態解析装置。
【請求項3】
前記動態画像に所定の画像処理を施すことにより肺野内の肺血管を検出する血管検出手段を備え、
前記指標値測定手段は、前記指標値として、一本の肺血管上に設定された二点の距離を測定することを特徴とする請求項1
から請求項2のいずれか一項に記載の動態解析装置。
【請求項4】
前記動態画像に所定の画像処理を施すことにより肺野内の肺血管を検出する血管検出手段を備え、
前記指標値測定手段は、前記指標値として、二本の異なる肺血管上にそれぞれ設定された二点の距離を測定することを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれか一項に記載の動態解析装置。
【請求項5】
前記動態画像に所定の画像処理を施すことにより肺野内の肺血管を検出する血管検出手段を備え、
前記指標値測定手段は、前記指標値として、肺血管の周辺に設定された三つ以上の点を直線で結ぶことにより構成される多角形の面積を測定することを特徴とする請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の動態解析装置。
【請求項6】
前記伸長率算出手段は、二時点における指標値の差、指標値の増加速度、加速度及び増加開始タイミングのいずれかに基づいて前記伸長率を算出することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の動態解析装置。
【請求項7】
前記伸長率表示手段は、伸長率に対応する色で領域を塗り分けた撮影部位の画像を表示可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の動態解析装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の動態解析装置と、
被写体における血管を含む部位を放射線撮影して動態画像を生成し、前記動態解析装置へ出力する撮影装置と、を備えることを特徴とする動態解析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動態解析装置、及びこの装置を備える動態解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフィルム/スクリーンや輝尽性蛍光体プレートを用いた放射線(X線)の静止画撮影及び診断に対し、FPD(flat panel detector)等の半導体イメージセンサーを利用して診断対象の部位(対象部位という)の動態画像を撮影し、診断に応用する試みがなされるようになってきている。具体的には、半導体イメージセンサーの画像データの読取・消去の応答性の早さを利用し、半導体イメージセンサーの読取・消去のタイミングと合わせて放射源からパルス状の放射線を連続的に照射し、1秒間に複数回の撮影を行って、対象部位の動態を撮影する。撮影により取得された一連の複数枚の画像を順次表示することにより、医師は対象部位の一連の動きを観察することが可能となる。
【0003】
肺の診断においては、肺の機能(換気機能や肺血流機能)が低下している箇所がないかを観察することは重要である。しかし、医師が動態画像を観察して目視で機能の異常個所を認識することは難しい。特に、肺の呼吸運動や心臓の拍動には個人差があり、個人差を考慮しながら換気機能や肺血流機能の異常箇所を視認することは困難である。
そこで、動態撮影で得られた動態画像を解析して診断支援情報を生成し、早期診断に向けて医師に提供することが提案されている。例えば、特許文献1には、呼吸動態画像のフレーム間差分画像を作成し、フレーム間差分画像の対応画素毎に絶対値が最大の差分画素を求めて差分画素からなる最大値画像を作成し、その画像を特定の呼吸位相の画像に重ねて表示することが記載されている。このような技術を用いれば、呼吸状態に関連した画像の濃度変化を基に、肺疾患の局所的な位置を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたような画像の濃度変化に基づいて肺疾患を検出するシステムでは、呼吸に伴う肋骨の移動や体動、体厚の変化により、画像の濃度変化にアーティファクトが生じてしまうことがあった。
具体的には、呼吸に伴って肋骨が所定の関心領域(ROI)内へ出入りすることで、濃度変化量が大きくなり、疾患部位を健常な状態であると誤判断してしまう要因となっていた。
【0006】
本発明の課題は、上記課題に鑑みてなされたもので、動態画像を解析して肺疾患を検出する動態解析システムにおいて、肋骨の移動や体動、体厚の変化の影響を受けることなく、肺疾患を正確に検出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る動態解析装置は、
被写体における血管を含む部位を放射線撮影することにより得られた動態画像内の複数の領域において前記血管の位置や形状に関する指標値の経時変化を測定する指標値測定手段と、
前記指標値測定手段が測定した各領域の指標値の経時変化に基づいて、各領域における血管の伸長率を算出する伸長率算出手段と、
前記伸長率算出手段が算出した各領域における伸長率を一覧表示する伸長率表示手段と、を備え、
前記血管を含む部位は肺野であり、
前記指標値測定手段は、肺野全体に分布するように配置され、前記動態画像に含まれる各フレーム画像において同一部位に付された複数のマーカーのうち、肺野内に設定された大きさ及び座標が一定の領域内にあるマーカーの数を指標値として測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、肋骨の移動や体動、体厚の変化の影響を受けることなく、肺疾患を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における動態解析システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1の動態解析システムを構成する撮影用コンソールが実行する撮影制御処理を表すフローチャートである。
【
図3】
図1の動態解析システムを構成する診断用コンソールが実行する画像解析処理を表すフローチャートである。
【
図4】指標値を測定するためのマーカーの配置例である。
【
図5】指標値を測定するためのマーカーの配置例である。
【
図6】指標値を測定するための画像の処理例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0011】
〔動態解析システム100の構成〕
まず、構成を説明する。
図1に、本実施形態における動態解析システム100の全体構成を示す。
図1に示すように、動態解析システム100は、撮影装置1と、撮影用コンソール2とが通信ケーブル等により接続され、撮影用コンソール2と、診断用コンソール3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNTを介して接続されて構成されている。動態解析システム100を構成する各装置は、DICOM(Digital Image and Communications in Medicine)規格に準じており、各装置間の通信は、DICOMに則って行われる。
【0012】
なお、撮影装置1と撮影用コンソール2とが通信ネットワークを介して接続されていてもよいし、撮影用コンソール2と診断用コンソール3が通信ケーブルで接続されていてもよい。
また、
図1には、撮影用コンソール2と診断用コンソール3を別々に設けたものを例示したが、これらは一体(一の装置が撮影用コンソールと診断用コンソールの機能を兼ね備えたもの)になっていてもよい。
【0013】
〔撮影装置1の構成〕
撮影装置1は、例えば、呼吸運動に伴う肺の膨張及び収縮の形態変化、心臓の拍動等の、周期性(サイクル)を持つ動態を撮影する撮影手段である。動態撮影とは、被写体に対し、X線等の放射線をパルス状にして所定時間間隔で繰り返し照射するか(パルス照射)、もしくは、低線量率にして途切れなく継続して照射する(連続照射)ことで、動態を示す複数の画像を取得することをいう。動態撮影により得られた一連の画像を動態画像と呼ぶ。また、動態画像を構成する複数の画像のそれぞれをフレーム画像と呼ぶ。なお、以下の実施形態では、パルス照射により動態撮影を行う場合を例にとり説明する。
【0014】
放射線源11は、被写体Mを挟んで放射線検出部13と対向する位置に配置され、放射線照射制御装置12の制御に従って、被写体Mに対し放射線(X線)を照射する。
放射線照射制御装置12は、撮影用コンソール2に接続されており、撮影用コンソール2から入力された放射線照射条件に基づいて放射線源11を制御して放射線撮影を行う。撮影用コンソール2から入力される放射線照射条件は、例えば、パルスレート、パルス幅、パルス間隔、1撮影あたりの撮影フレーム数、X線管電流の値、X線管電圧の値、付加フィルター種等である。パルスレートは、1秒あたりの放射線照射回数であり、後述するフレームレートと一致している。パルス幅は、放射線照射1回当たりの放射線照射時間である。パルス間隔は、1回の放射線照射開始から次の放射線照射開始までの時間であり、後述するフレーム間隔と一致している。
【0015】
放射線検出部13は、FPD等の半導体イメージセンサーにより構成される。FPDは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線源11から照射されて少なくとも被写体Mを透過した放射線をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。FPDにはX線をシンチレーターを介して光電変換素子により電気信号に変換する間接変換型、X線を直接的に電気信号に変換する直接変換型があるが、何れを用いてもよい。
放射線検出部13は、被写体Mを挟んで放射線源11と対向するように設けられている。
【0016】
読取制御装置14は、撮影用コンソール2に接続されている。読取制御装置14は、撮影用コンソール2から入力された画像読取条件に基づいて放射線検出部13の各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、放射線検出部13に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データを取得する。この画像データがフレーム画像である。そして、読取制御装置14は、取得したフレーム画像を撮影用コンソール2に出力する。画像読取条件は、例えば、フレームレート、フレーム間隔、画素サイズ、画像サイズ(マトリックスサイズ)等である。フレームレートは、1秒あたりに取得するフレーム画像数であり、パルスレートと一致している。フレーム間隔は、1回のフレーム画像の取得動作開始から次のフレーム画像の取得動作開始までの時間であり、パルス間隔と一致している。
【0017】
ここで、放射線照射制御装置12と読取制御装置14は互いに接続され、互いに同期信号をやりとりして放射線照射動作と画像の読み取りの動作を同調させるようになっている。
【0018】
〔撮影用コンソール2の構成〕
撮影用コンソール2は、放射線照射条件や画像読取条件を撮影装置1に出力して撮影装置1による放射線撮影及び放射線画像の読み取り動作を制御するとともに、撮影装置1により取得された動態画像を撮影技師等の撮影実施者によるポジショニングの確認や診断に適した画像であるか否かの確認用に表示する。
撮影用コンソール2は、
図1に示すように、制御部21、記憶部22、操作部23、表示部24、通信部25を備えて構成され、各部はバス26により接続されている。
【0019】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部21のCPUは、操作部23の操作に応じて、記憶部22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って後述する撮影制御処理を始めとする各種処理を実行し、撮影用コンソール2各部の動作や、撮影装置1の放射線照射動作及び読み取り動作を集中制御する。
【0020】
記憶部22は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部22は、制御部21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。例えば、記憶部22は、
図2に示す撮影制御処理を実行するためのプログラムを記憶している。また、記憶部22は、撮影部位に対応付けて放射線照射条件及び画像読取条件を記憶している。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部21は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0021】
操作部23は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部21に出力する。また、操作部23は、表示部24の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部21に出力する。
【0022】
表示部24は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部21から入力される表示信号の指示に従って、操作部23からの入力指示やデータ等を表示する。
【0023】
通信部25は、LANアダプターやモデムやTA(Terminal Adapter)等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0024】
〔診断用コンソール3の構成〕
診断用コンソール3は、撮影用コンソール2から動態画像を取得し、取得した動態画像や動態画像の解析結果を表示して医師の診断を支援するための動態解析装置である。
診断用コンソール3は、
図1に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0025】
制御部31は、CPU、RAM等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや、各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、後述する画像解析処理を始めとする各種処理を実行し、診断用コンソール3各部の動作を集中制御する。
【0026】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で後述する画像解析処理を実行するためのプログラムを始めとする各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。これらの各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
【0027】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。
【0028】
表示部34は、LCDやCRT等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、各種表示を行う。
【0029】
通信部35は、LANアダプターやモデムやTA等を備え、通信ネットワークNTに接続された各装置との間のデータ送受信を制御する。
【0030】
〔動態解析システム100の動作〕
次に、上記動態解析システム100における動作について説明する。
【0031】
(撮影装置1、撮影用コンソール2の動作)
まず、撮影装置1、撮影用コンソール2による撮影動作について説明する。
図2に、撮影用コンソール2の制御部21において実行される撮影制御処理を示す。撮影制御処理は、制御部21と記憶部22に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0032】
まず、撮影実施者により撮影用コンソール2の操作部23が操作され、被検者(被写体M)の患者情報(患者の氏名、身長、体重、年齢、性別等)、検査情報(例えば、撮影部位(ここでは、胸部)、呼吸方法(深呼吸、安静呼吸)等)の入力が行われる(ステップS1)。
【0033】
次いで、放射線照射条件が記憶部22から読み出されて放射線照射制御装置12に設定されるとともに、画像読取条件が記憶部22から読み出されて読取制御装置14に設定される(ステップS2)。
【0034】
次いで、操作部23の操作による放射線照射の指示が待機される(ステップS3)。ここで、撮影実施者は、被写体Mにおける血管を含む部位(例えば肺野)を放射線源11と放射線検出部13の間に配置してポジショニングを行う。また、本実施形態においては、呼吸状態下で撮影を行うため、被検者(被写体M)に楽にするように指示し、安静呼吸を促す。或いは、「吸って、吐いて」等の深呼吸の誘導を行うこととしてもよい。撮影準備が整った時点で、操作部23を操作して放射線照射指示を入力する。
【0035】
操作部23により放射線照射指示が入力されると(ステップS3;YES)、放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影開始指示が出力され、動態撮影が開始される(ステップS4)。即ち、放射線照射制御装置12に設定されたパルス間隔で放射線源11により放射線が照射され、放射線検出部13によりフレーム画像が取得される。
【0036】
予め定められたフレーム数の撮影が終了すると、制御部21により放射線照射制御装置12及び読取制御装置14に撮影終了の指示が出力され、撮影動作が停止される。撮影されるフレーム数は、少なくとも1呼吸サイクルが撮影できる枚数である。
【0037】
撮影により取得されたフレーム画像は順次撮影用コンソール2に入力され、撮影順を示す番号(フレーム番号)と対応付けて記憶部22に記憶されるとともに(ステップS5)、表示部24に表示される(ステップS6)。撮影実施者は、表示された動態画像によりポジショニング等を確認し、撮影により診断に適した画像が取得された(撮影OK)か、再撮影が必要(撮影NG)か、を判断する。そして、操作部23を操作して、判断結果を入力する。
なお、撮影用コンソール2を介さずにフレーム画像を直接診断用コンソール3へ出力する場合があってもよい。
【0038】
操作部23の所定の操作により撮影OKを示す判断結果が入力されると(ステップS7;YES)、動態撮影で取得された一連のフレーム画像のそれぞれに、動態画像を識別するための識別IDや、患者情報、検査情報、放射線照射条件、画像読取条件、撮影順を示す番号(フレーム番号)等の情報が付帯され(例えば、DICOM形式で画像データのヘッダ領域に書き込まれ)、通信部25を介して診断用コンソール3に送信される(ステップS8)。そして、本処理は終了する。一方、操作部23の所定の操作により撮影NGを示す判断結果が入力されると(ステップS7;NO)、記憶部22に記憶された一連のフレーム画像が削除され(ステップS9)、本処理は終了する。この場合、再撮影が必要となる。
【0039】
(診断用コンソール3の動作)
次に、診断用コンソール3における動作について説明する。
図3は、診断用コンソール3が実行する画像解析処理の流れを表すフローチャートである。
診断用コンソール3は、通信部35を介して撮影用コンソール2から動態画像の一連のフレーム画像の画像データが入力されたこと、記憶部32に一連のフレーム画像の画像データを格納している状態で操作部33に所定操作がなされたこと等を契機として、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により
図3に示す画像解析処理を実行する。
【0040】
画像解析処理においては、まず、入力された動態画像内の複数の領域において血管の位置や形状に関する指標値の経時変化を測定する(ステップS11)。具体的には、胸部動態画像を構成する複数のフレーム画像のそれぞれについて、各領域の指標値を測定する。
測定対象領域Rの設定の仕方としては、例えば、マス目を使って肺野を複数の小領域に区切り、その小領域を測定対象領域Rとしてもよいし、画像上に設定した点を中心とする円や複数の点を頂点とする多角形、あるいは画像解析を用いて肺野から抜き出した血管領域のみを測定対象領域Rとしてもよい。
各フレーム画像のそれぞれ対応する測定対象領域Rの測定値を時系列で並べれば、測定値の経時変化を知ることができる。
【0041】
本実施形態では、指標値として、例えば、下記の(1)~(3)の少なくとも一つを測定する。
(1)マーカー間距離
(2)マーカー数
(3)血管密度
これらの具体的な測定手法については以下に述べる。
【0042】
(1)マーカー間距離
肺血管は、肺の膨張・収縮に合わせて伸縮を繰り返す。すなわち、血管上における所定の二か所以上の部位(点)を定めると、それらの距離が変化する。そこで(1)では、指標値として、一本の肺血管上に設定された二点の距離を測定する。
具体的には、まず、フレーム画像に複数のマーカーMを配置する。マーカーMは、ランダムに分布するように配置する、整列するように配置する等、その配置方法は特に限定されるものでは無いが、例えば、
図4(a)に示したように、血管Vの分岐点や先端に付すことで、測定の精度を向上させることができる。
【0043】
一のフレーム画像にマーカーMを配置したら、他のフレーム画像にもマーカーMを順次配置する。被写体は時間を追うごとに移動・変形するため、次のフレーム画像に移る度にマーカーMを付す部位(点)を追跡する必要がある。マーカーMを付す部位(点)の追跡は、例えば、パターンマッチング(マーカーM近傍の血管Vの画像を保持しておき変形後の画像において一致する領域を突き止める方法)やオプティカルフロー(部位の移動をベクトルで表す)等の従来公知の画像処理技術を用いて行う。これにより、フレーム画像毎に被写体の位置や形状が異なっていても、同一部位にマーカーMを付すことができる。すなわち、
図4(b)に示したように、肺の伸縮(部位の移動)に応じてマーカーMが移動するようになる。
【0044】
なお、血管Vの周囲の組織も、肺血管Vと共に伸縮するため、血管V周囲に配置したマーカーMの距離の変化を、血管Vの収縮とみなすことができる。
このため、
図5(a)に示したように、指標値として、二本の異なる血管V上にそれぞれ設定された二点の距離を測定するようにしてもよい。
また、
図5(b)に示したように、マーカーMを血管Vの周辺に複数配置し、それらの距離を測定したり、近接する3つ以上のマーカーMを直線で結ぶことにより構成される多角形の面積を測定したりするようにしてもよい。
その他、血管V上に配置されたマーカーMと血管Vの周辺に配置されたマーカーMとの距離や、これらに基づく図形の面積を測定するようにしてもよい。
【0045】
マーカーMを付した後は、所定2マーカーMの距離をフレーム画像毎にそれぞれ測定する。隣接するマーカーM間の距離であってもよいし、離れたマーカーM間の距離であってもよい。いくつかの測定値の平均値としてもよい。
【0046】
(2)マーカー数
複数のマーカーMを肺野全体に分布するように配置すると、複数のマーカーMは、肺の膨張・収縮に合わせて離散・集合を繰り返す。すなわち、移動・変形しない領域を肺野内に設定すると、当該領域内のマーカーMが出入りを繰り返すため、領域内におけるマーカー数が増減する。そこで(2)では、指標値として、この領域内のマーカー数を測定する。
具体的には、まず、各フレーム画像において、領域内に複数のマーカーMを付す。マーカーMの付し方は(1)と同様特に限定されるものでは無い。
そして、肺野に少なくとも一ヶ所の小領域R1を設定する。小領域R1は上述した測定対象領域Rと同じであってもよいし、その中に更に設定するものであってもよい。小領域R1の大きさ、座標は各フレーム画像で一致させておく。
【0047】
マーカーMを付し、小領域R1を設定した後は、各フレーム画像における小領域R1内のマーカー数をそれぞれ計数する。
なお、小領域R1の中から特定のマーカーMを選び出し、その特定マーカーMを中心とした円や、特定のマーカーMを中心又は頂点とする多角形の閉領域内にあるマーカーMの数を測定するようにしてもよい。
【0048】
(3)血管密度
肺が膨張すると、隣り合う血管同士の距離が伸びることが考えられる。すなわち、移動・変形しない領域を肺野に設定すると、当該領域に占める血管の密度が増減する。そこで(3)では、指標値として、領域に占める肺血管領域の密度を測定する。本実施形態では、密度のより具体的な値として、所定領域に占める血管領域の面積(占有率(%))又は所定領域内に存在する血管の本数を測定する。
【0049】
(3-1)血管領域占有率
まず、動態画像に所定の画像処理を施すことにより血管を検出する。具体的には、血管の画素の信号値と血管以外の組織の信号値との間に閾値を設け、フレーム画像に対して2値化処理を施す。これにより、フレーム画像は、
図6に示したように、血管Vが描かれた血管領域Rvとそれ以外の非血管領域Rnとに分けられる。すなわち、診断用コンソール3は、本発明における血管検出手段として機能する。
なお、二値化処理を行うに当たっては、肋骨等の骨領域をあらかじめ認識しておき、除外して計算するのが望ましい。
【0050】
血管Vを検出した後は、各フレーム画像において、肺に少なくとも一ヶ所の小領域R1を設定する。小領域R1の設定方法は(2)と同様である。
小領域R1を設定した後は、各フレーム画像の小領域R1に占める血管領域Rvの面積(占有率)をそれぞれ算出する。
なお、小領域R1の中から特定のマーカーMを選び出し、各マーカーMを線で結んで得られる円形や多角形の閉領域内の血管領域Rvの占有率を測定するようにしてもよい。
【0051】
(3-2)血管本数
まず、血管V上に複数のマーカーMを配置し、隣接するマーカーM同士を結んだ線を血管モデルとする。そして、各フレーム画像において、肺に少なくとも一ヶ所の小領域R1を設定する。小領域R1の設定方法は(2)や(3)と同様である。
そして、各フレーム画像の小領域R1内にある血管Vの本数をそれぞれ計数する。
以上のような各種指標値の経時変化を測定する本実施形態の診断用コンソール3は、本発明における指標値測定手段ということになる。
【0052】
血管Vの位置や形状に関する指標値の経時変化を測定した後は、各測定対象領域Rの指標値の経時変化に基づいて、各測定対象領域Rにおける血管Vの伸長率を算出する(ステップS12)。本実施形態においては、二時点における指標値の差、指標値の増加速度、加速度及び増加開始タイミングの少なくともいずれかに基づいて伸長率を算出する。
【0053】
指標値の差は、
図7(a)に示したように、複数得られる測定値を、時間(フレーム番号)を横軸、測定値を縦軸とするグラフにしたときの、所定時点における測定値(極大値、極小値又は中間値)と所定時点よりも後の時点における測定値極大値、極小値又は中間値)との差である。なお、それらの比を用いてもよい。
増加速度は、
図7(b)に示したように、測定値が増加する期間における、単位時間当たりの測定値の増加量(グラフの傾き)である。
加速度は、
図7(c)に示したように、測定値が増加しているある時点における測定値の増加量(グラフの接線の傾き)である。
伸長タイミングは、
図7(d)に示したように、増加を始める(グラフの接線の傾きが所定以上となる)タイミングである。
【0054】
得られた測定値は、指標値の測定にマーカーMを用いた場合には、マーカーM上に記憶し、文字・色情報により、動態画像上にマッピングする。
一方、指標値の測定にマーカーMを用いなかった場合には、測定した位置(座標)毎に測定値を記憶し、文字・色情報により、動態画像上にマッピングするようにする。
以上のような伸長率を算出する本実施形態の診断用コンソール3は、本発明における伸長率算出手段ということになる。
【0055】
伸長率を算出した後は、算出した各領域における伸長率を一覧表示する(ステップS13)。一覧表示の仕方としては、表の形であってもよいし、撮影部位の画像(静止画でも動画でもよい)の対応する箇所に表示する形であってもよい。
ユーザーは、一覧表示を見て、ある測定対象領域Rの伸長率を、他の領域R2における伸長率と比較する。具体的には、
図8(a)に示したように、当該測定対象領域Rの周囲の領域R2における伸長率と比較する。又は、
図8(b)に示したように、左右一方側の肺Lにおけるある測定対象領域Rの伸長率を、他方側の肺Lにおける対応する(左右対称の位置にある)領域R2の伸長率と比較する。
【0056】
健全な(疾患のない)肺において、ある特定の部位の伸長率が周囲に比べて大きく異なるということは考えにくいため、ある測定対象領域Rの伸長率が、周囲の領域の伸長率から大きくかい離している(小さい、遅い)場合、肺野におけるその測定対象領域Rに対応する部位に疾患等の異常が存在する可能性が高いということになる。
以上のような伸長率を一覧表示する診断用コンソール3は、本発明における伸長率表示手段ということになる。
なお、他の領域の伸長率と比較するのではなく、所定の基準値を予め保持しておき、その基準値と比較するようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態の診断用コンソール3は、
図9に示したように、伸長率に対応する色で領域を塗り分けた撮影部位の静止画像(カラーマッピング)を表示部34に表示することが可能となっている。相対的に伸長率が低い測定対象領域Rを周囲と異なる色(ここでは白)にすることで、数値をそのまま一覧表示するよりも伸長率が他からかい離している領域を見つけやすくなる。
その際、伸長率の数値を色による表示と併せて行うようにしてもよい。伸長率は、常に全小領域R1の値を一覧表示することとしてもよいし、カラーマッピング表示の画像上で操作部33により指定された(クリックされた又はカーソルを合わせた)領域の伸長率だけを表示することとしてもよい。
【0058】
以上説明したように、診断用コンソール3は、被写体における肺野(血管Vを含む部位)を放射線撮影することにより得られた動態画像の画像データを入力する入力手段と、入力手段により入力された動態画像内の複数の測定対象領域Rにおいて肺血管Vの位置や形状に関する指標値の経時変化を測定する指標値測定手段と、指標値測定手段が測定した各測定対象領域Rの指標値の経時変化に基づいて、各測定対象領域Rにおける肺血管Vの伸長率を算出する伸長率算出手段と、血管伸長率計算部が算出した各測定対象領域Rにおける伸長率を一覧表示する伸長率表示手段と、を備える。
【0059】
これにより、診断用コンソール3は、画像の濃度変化を用いることなく、肺野における硬い領域を検出することができるため、肋骨の移動や体動、体厚の変化の影響を受けることなく、肺疾患を正確に検出することができる。
【0060】
なお、本実施形態における記述は、本発明に係る動態解析システムの一例であり、これに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、人体の胸部の動態を撮影することにより得られた胸部動態画像から対象部位として肺や肺血管Vの柔らかさを評価する場合を例にとり説明したが、これに限定されず、他の部位を撮影した動態画像から他の部位の柔らかさを評価する場合に適用することとしてもよい。
【0061】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピュータ読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、CD-ROM
等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0062】
その他、動態解析システム100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0063】
100 動態解析システム
1 撮影装置
11 放射線源
12 放射線照射制御装置
13 放射線検出部
14 読取制御装置
2 撮影用コンソール
21 制御部
22 記憶部
23 操作部
24 表示部
25 通信部
26 バス
3 診断用コンソール(動態解析装置)
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス
M マーカー
R 測定対象領域
R1 小領域
R2 他の領域
Rv 血管領域
Rn 非血管領域
V 血管