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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20220517BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B60H1/32 614E
B60H1/00 102S
B60H1/32 623A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2017202742
(22)【出願日】2017-10-19
(65)【公開番号】P2019073252
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591150797
【氏名又は名称】株式会社デンソーエアクール
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】富岡 史朗
(72)【発明者】
【氏名】有元 誠
(72)【発明者】
【氏名】多田 均
(72)【発明者】
【氏名】小林 大祐
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-006894(JP,A)
【文献】国際公開第2014/174715(WO,A1)
【文献】特開2016-211806(JP,A)
【文献】特開2015-209178(JP,A)
【文献】特許第6181684(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00 - 3/06
F25B 19/00
F25B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(5)の屋根または屋根内に搭載されて、ヒートポンプサイクル(10)を有して車室内(51)に対して空調空気を提供する少なくとも一つの空調ユニット(2A,2B,2C,2D)を備え、
前記空調ユニットは、
前記ヒートポンプサイクルに含まれる室内熱交換器(15)と前記車室内に送風される空気が流通する通路(210)とを含む室内熱交換器ユニット(21)と、
前記ヒートポンプサイクルに含まれる室外熱交換器(13)と外気が流通する通路とを含む室外熱交換器ユニット(20A)と、
前記ヒートポンプサイクルに含まれる圧縮機(11)を少なくとも含み、前記室外熱交換器ユニットと前記室内熱交換器ユニットの間に隣接して設けられた圧縮機ユニット(20B)と、
前記車室内の空気を前記室内熱交換器ユニットに取り入れる室内取入口(54)と、
前記室内熱交換器ユニットからの前記空調空気を前記車室内に吹き出す吹出口(53)と、
を有し、
前記空調ユニットとして、第1空調ユニット(2A,2C)と、前記車両の前後方向において前記第1空調ユニットの後側に設けられた第2空調ユニット(2B,2D)とが、前記室内熱交換器ユニット同士が隣接するように且つ前記室内取入口同士が隣接するように前記前後方向に隣接しており、
前記第1空調ユニット及び前記第2空調ユニットと、前記前後方向に延びた状態で前記第1空調ユニット及び前記第2空調ユニットを収容しているベース部(63)と、を有するグループ(4A,4B)として、
前記車両の幅方向において前記車両の他端よりも一端に近い一端寄りの位置に設けられた第1グループ(4A)と、
前記幅方向において前記車両の一端よりも他端に近い他端寄りの位置に設けられた第2グループ(4B)と、
が前記幅方向に隣接しており、前記第1グループの前記ベース部と前記第2グループの前記ベース部とは、これらベース部の間において前記前後方向に延びるように設けられた鋼材(64)により連結されており、
前記第1グループ及び前記第2グループのそれぞれにおいては、前記第1空調ユニット及び前記第2空調ユニットのそれぞれで、前記幅方向において前記室内取入口が前記吹出口から車両中央側に離間し且つ前記室内熱交換器と前記鋼材との間の位置に設けられている車両用空調装置。
【請求項2】
前記圧縮機ユニットは、前記ヒートポンプサイクルに含まれて暖房運転と冷房運転とにわたって冷媒経路を切り換え可能な流路切換装置(12)を含んでいる請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記流路切換装置は、冷媒通路を形成する配管が接続されている一方側部(120)と、冷媒通路を形成する配管が接続されている他方側部(121)とを有するハウジングを備え、
前記他方側部は、接続されている配管の個数が前記一方側部よりも多く、前記ハウジングにおいて前記一方側部の反対側に位置し、前記一方側部よりも車幅の中央に対して外側に位置するように設けられている請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記一方側部には、前記圧縮機に連結されている配管が接続されており、
前記他方側部には、前記室内熱交換器に連結されている配管と前記室外熱交換器に連結されている配管とが接続されている請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記圧縮機ユニットは、前記ヒートポンプサイクルに含まれて気相冷媒と液相冷媒とを分離する気液分離装置(16)をさらに含んでおり、
前記他方側部には、前記気液分離装置に連結されている配管が接続されている請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記流路切換装置は、前記気液分離装置および前記圧縮機よりも車幅の中央に対して外側に設置されている請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
車幅の中央に対して外側から内側に向けて、前記流路切換装置、前記気液分離装置、前記圧縮機の順に並んで設置されている請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記流路切換装置、前記気液分離装置および前記圧縮機は、前記車両の幅方向に重なる部分を有するように並んでいる請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記ヒートポンプサイクルに含まれて冷媒を減圧膨張する減圧装置(14)は、前記流路切換装置よりも車幅の中央に対して外側に設置されている請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記第1空調ユニット及び前記第2空調ユニットのそれぞれの前記室内熱交換器ユニットにおいてそれぞれの前記室内熱交換器を通過した空気が流れる通路と通路とを仕切る仕切り板(211)を備えている請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記第1空調ユニット及び前記第2空調ユニットは、前記第1グループ及び前記第2グループについて空調空気を互いに混合させてから前記車室内に提供する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記第1グループ及び前記第2グループは、それぞれ前記車室内において異なる場所に空調空気を提供するように設けられている請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
複数の前記空調ユニット(2A,2B;2C,2D)を備え、
複数の前記空調ユニットのそれぞれが有する前記圧縮機を制御する制御装置(3)を備え、
前記制御装置は、複数の前記空調ユニットが有する複数の前記圧縮機のうち共振が発生し得る所定の回転数条件を満たす前記圧縮機がある場合に、前記回転数条件を満たす前記圧縮機の回転数と、前記回転数条件を満たす前記圧縮機を有する前記空調ユニットに隣接する他の前記空調ユニットに属する前記圧縮機の回転数とをずらすように制御する請求項から請求項12のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項14】
複数の前記空調ユニット(2A,2B;2C,2D)を備え、
複数の前記空調ユニットのそれぞれが有する前記圧縮機を制御する制御装置(3)を備え、
前記制御装置は、複数の前記空調ユニットが有する複数の前記圧縮機のうち共振が発生し得る所定の回転数条件を満たす前記圧縮機がある場合に、前記回転数条件を満たす前記圧縮機の回転数と、前記第1グループ及び前記第2グループのうち前記回転数条件を満たす前記圧縮機と同じグループに属する他の前記圧縮機の回転数とをずらすように制御する請求項から請求項13のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記室外熱交換器は、前記車両の屋根面に対して前方側または後方側が高い位置となるように傾斜した姿勢で設置されている請求項1から請求項14のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記空調ユニットは、燃料電池車の屋根または屋根内に搭載された、燃料電池(500)と水素収容タンク(501)の間に設置されている請求項1から請求項15のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車室内の冷暖房を行う装置として、バス等の車両の屋根に設置する屋根搭載ユニットを開示している。屋根搭載ユニットは、冷媒の流れを逆転して室内熱交換器をコンデンサとして機能させることで暖房運転を可能とする冷凍サイクルを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6181684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載するような屋根搭載ユニットの場合、搭載スペースが確保しにくい場所に設置されているため、装置の体格を小型化することが求められている。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、車両用空調装置にはさらなる改良が求められている。
【0005】
この明細書における開示の目的は、車両の屋根または屋根内に搭載されたヒートポンプサイクルを備える空調ユニットの省スペース化を図る車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この明細書に開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。また、特許請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、一つの態様として後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例であって、技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
開示された車両用空調装置の一つは、車両(5)の屋根または屋根内に搭載されて、ヒートポンプサイクル(10)を有して車室内(51)に対して空調空気を提供する少なくとも一つの空調ユニット(2A,2B,2C,2D)を備え、
空調ユニットは、ヒートポンプサイクルに含まれる室内熱交換器(15)と車室内に送風される空気が流れる通路とを含む室内熱交換器ユニット(21)と、ヒートポンプサイクルに含まれる室外熱交換器(13)と外気が流通する通路とを含む室外熱交換器ユニット(20A)と、ヒートポンプサイクルに含まれる圧縮機(11)を少なくとも含み、室外熱交換器ユニットと室内熱交換器ユニットの間に隣接して設けられた圧縮機ユニット(20B)と、車室内の空気を室内熱交換器ユニットに取り入れる室内取入口(54)と、室内熱交換器ユニットからの空調空気を車室内に吹き出す吹出口(53)と、を有し、
空調ユニットとして、第1空調ユニット(2A,2C)と、車両の前後方向において第1空調ユニットの後側に設けられた第2空調ユニット(2B,2D)とが、室内熱交換器ユニット同士が隣接するように且つ室内取入口同士が隣接するように前後方向に隣接しており、
第1空調ユニット及び第2空調ユニットと、前後方向に延びた状態で第1空調ユニット及び第2空調ユニットを収容しているベース部(63)と、を有するグループ(4A,4B)として、
車両の幅方向において車両の他端よりも一端に近い一端寄りの位置に設けられた第1グループ(4A)と、
幅方向において車両の一端よりも他端に近い他端寄りの位置に設けられた第2グループ(4B)と、
が幅方向に隣接しており、第1グループのベース部と第2グループのベース部とは、これらベース部の間において前後方向に延びるように設けられた鋼材(64)により連結されており、
第1グループ及び第2グループのそれぞれにおいては、第1空調ユニット及び第2空調ユニットのそれぞれで、室内取入口が吹出口から幅方向の内側に離間し且つ室内熱交換器と鋼材との間の位置に設けられている。
【0008】
この車両用空調装置によれば、冷媒流動を制御する圧縮機を少なくとも含む圧縮機ユニットを、室外側の熱交換器および外気通路を含むユニットと室内側の熱交換器および空気通路を含むユニットとの間に隣接して設置する。これにより、熱交換するための、室外側の通路と室内側の通路とを離して配置して各通路スペースを確保でき、これらの通路スペースの間に、圧縮機および冷媒配管を含むヒートポンプサイクルの機能部品を集約して設置することができる。したがって、この車両用空調装置によれば、車両の屋根または屋根内に搭載された空調ユニットの省スペース化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の車両用空調装置が備えるヒートポンプサイクルにおける冷房運転時の冷媒流れを示した図である。
図2】第1実施形態のヒートポンプサイクルにおける暖房運転時の冷媒流れを示した図である。
図3】第1実施形態のヒートポンプサイクルにおける除霜運転時の冷媒流れを示した図である。
図4】第1実施形態のヒートポンプサイクルに関する制御構成図である。
図5】第1実施形態の車両用空調装置が備える複数の空調ユニットに関する制御構成図である。
図6】複数の空調ユニットを車両の屋根に設置した状態を示した図である。
図7】車両用空調装置、送風ダクトおよび車両を示した側面図である。
図8】カバーを取り外した状態の複数の空調ユニット、送風ダクトおよび車両の屋根を示した図である。
図9】屋根に設置された複数の空調ユニットについてカバーを取り外した状態を示した図である。
図10】複数の空調ユニットについてカバーを取り外した状態を示した側面図である。
図11】複数の空調ユニットについてカバーを取り外した状態を示した斜視図である。
図12】空調ユニットの室内側ユニットについてカバーを取り外した状態を示した拡大図である。
図13】空調ユニットにおける室外側ユニットおよびヒートポンプサイクルの位置関係を示した拡大図である。
図14】第2実施形態の車両用空調装置が実行する制御を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照しながら本開示を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態の車両用空調装置4について、図1図13を参照して説明する。車両用空調装置4は、複数の空調ユニットを有し、車両の車室内を空調する装置である。車両用空調装置4を搭載する車両は、新幹線電車、特急電車等の各種の鉄道車両、バス、大型車両、特殊車両等の各種の道路通行車両に適用することができる。この車両は、電気エネルギを走行用の駆動力に変換する車両、ガソリン、軽油、天然ガス等の化石燃料やバイオマス燃料を走行用の駆動力に変換する車両を含んでいる。例えば、この車両は電気自動車、燃料電池自動車、ハイブリッド自動車、ガソリン車、ディーゼル車、天然ガス車等に適用することができる。明細書に開示の目的を達成する車両用空調装置の一例として第1実施形態では、燃料電池を備えたバス車両に搭載する複数の空調ユニットを有する車両用空調装置4について説明する。
【0012】
車両用空調装置4は少なくとも一つの空調ユニットを有し、空調ユニットで発生した空調風を車室内に提供する。複数の空調ユニットのそれぞれは、同様の構成である。各空調ユニットは、図1図3に示すようなヒートポンプサイクル10を備えている。ヒートポンプサイクル10は冷暖房可能な冷媒回路を有している。ヒートポンプサイクル10は、圧縮機11と四方弁12と室外熱交換器13と固定絞り装置14と室内熱交換器15とアキュムレータ16とを備え、これらを順次、配管により接続して構成される閉サイクルの冷媒回路18を備えている。
【0013】
ヒートポンプサイクル10は、室外熱交換器13と固定絞り装置14とを連結する通路から分岐してアキュムレータ16の流入部に至るバイパス通路180と、バイパス通路180を開閉可能な電磁弁17とを備えている。電磁弁17は、除霜運転を行う流路に切り換え可能な第2流路切換装置の一例である。バイパス通路180は、冷媒回路18において固定絞り装置14に接続されている通路に対して、非常に大きい通路断面積となるように設定されている。この構成により、電磁弁17が開状態であるときには、室外熱交換器13を流出した冷媒はバイパス通路180を流れてアキュムレータ16に流入し、室内熱交換器15にはほとんど流れない。
【0014】
圧縮機11は、モータに通電されることにより、冷媒を圧縮する圧縮機構部を駆動する電動式の圧縮機である。圧縮機11は、吸入部がアキュムレータ16の流出部に連結されており、流出部が四方弁12に連結されている。圧縮機11と四方弁12を連結する通路を形成する配管には、冷媒の圧力を検出する圧力センサ181が設置されている。アキュムレータ16は、ヒートポンプサイクル10における、気相冷媒と液相冷媒とを分離する気液分離装置の一例である。アキュムレータ16は、例えば室内熱交換器15でガス化しきれなかった冷媒が液状のまま圧縮機11に吸入されることを防ぐ機能を果たしている。
【0015】
四方弁12は、冷媒が流れる流路を、冷房運転を実施する冷媒流路と暖房運転を実施する冷媒流路と除霜運転を実施する冷媒流路とにわたって切り換えることができる第1流路切換装置に含まれる一形態である。四方弁12は、圧縮機11の流出部に連結される圧縮機側通路122と、室外熱交換器13、アキュムレータ16の流入部および室内熱交換器15のそれぞれが連結される通路123,124,125と、これらの通路のうち連通関係となる通路を選択可能に切り換え可能な切換部とを備えている。切換部はハウジングの内部に設置されている。四方弁12と室外熱交換器13を連結する通路を形成する配管には、冷媒の温度を検出する配管温度センサ182が設置されている。
【0016】
四方弁12を形成するハウジングにおいて、圧縮機側通路122は一方側部120に設けられている。一方側部120は、車両5の外側に向いて設置されている。一方側部120は、車両5の幅方向(以下、車幅方向ともいう)について車両5の外側に向いて設置されている。室外熱交換器13、アキュムレータ16の流入部および室内熱交換器15のそれぞれが連結される通路123,124,125は、四方弁12のハウジングにおける他方側部121に設けられている。他方側部121は、四方弁12において、一方側部120よりも接続されている通路の個数が多い部位である。他方側部121は、車両5の内側に向いて設置されている。他方側部121は、車両5の幅方向について車両5の内側に向いて設置されている。他方側部121は一方側部120よりも車両5の内側に設置されている。他方側部121は四方弁12のハウジングにおいて一方側部120とは反対側に設けられている。四方弁12と電磁弁17とは、冷媒流路を切り換えて、暖房運転と冷房運転と除霜運転とにわたって切り換えることができる流路切換装置の一つの形態である。
【0017】
室外熱交換器13には、外気を通風する室外ファン131が付設されている。室外ファン131によって送風される外気は、室外熱交換器13の熱交換コア部を流通する冷媒と熱交換する。室外熱交換器13よりも空気流れの上流側には、外気温度を検出する外気温度センサ183が設置されている。固定絞り装置14は、あらかじめ設定された開度を有しており、高圧冷媒を減圧膨張する減圧装置の一例である。冷媒回路18を流通する冷媒は、固定絞り装置14によって減圧された状態で室内熱交換器15に流入する。固定絞り装置14は、キャビラリチューブで構成してもよいし、開度が調整可能な電子式膨張弁に置き換えてもよい。
【0018】
室内熱交換器15には、室内熱交換器15の熱交換コア部を通過した空気を車室内51に向けて送風する室内ファン151が付設されている。室内ファン151によって送風される空気は、室内熱交換器15の熱交換コア部を流通する冷媒と熱交換する。室内熱交換器15よりも空気流れの下流側には、車室内51に送風される空気の温度を検出する吹出し温度センサ184が設置されている。
【0019】
図4は各空調ユニットに関する制御構成図である。空調操作部40は、乗員等のユーザが操作可能な空調装置の強制運転指令スイッチ、自動運転スイッチ等を備えている。ユーザが強制運転指令スイッチを操作すると、操作に応じた運転指令信号が制御装置3の入力部30に入力され、制御装置3は暖房運転または冷房運転を実行するための機器を運転する。
【0020】
ユーザが自動運転スイッチを操作すると、自動運転指令信号が制御装置3の入力部30に入力され、制御装置3は、設定温度に応じて暖房運転または冷房運転を実行するとともに、後述する除霜運転を実行する。制御装置3は、圧力センサ181、配管温度センサ182、外気温度センサ183および吹出し温度センサ184の各検出値や所定のプログラムや制御テーブルを用いた判定処理を行い、空調運転を制御する。
【0021】
制御装置3は、制御出力部32に接続された、圧縮機11、四方弁12、電磁弁17、室外ファン131、室内ファン151等の制御対象部品について運転状態を制御する電子式の制御装置である。制御装置3は、制御対象部品の作動を制御するハードウェアおよびソフトウェアを有する。制御装置3は、プログラムに従って動作するマイコンのようなデバイスを主なハードウェア要素として備える。
【0022】
制御装置3は、制御対象部品、空調操作部40および各種センサ部と通信するインターフェース部と、演算処理部31と、記憶部とを少なくとも備えている。記憶部は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって提供されうる。演算処理部31は、演算処理装置であり、インターフェース部を通して空調操作部40や各種センサ部から取得した情報と、記憶部に記憶された制御特性マップやデータとを用いて所定のプログラムにしたがった判定処理や演算処理を行う。演算処理部31は、制御装置3における演算実行部であり判定処理実行部である。インターフェース部は、演算処理部31による判定結果、演算結果に基づいて制御対象部品を作動させる。したがって、インターフェース部は、制御装置3における入力部30および制御出力部32である。
【0023】
車両用空調装置4は、図5に示すように、車両5に搭載されて、それぞれヒートポンプサイクル10を有して車室内51に対して空調空気を提供する4個の空調ユニット2A,2B,2C,2Dを備えている。制御装置3は、前述したように、4個の空調ユニット2A,2B,2C,2Dのそれぞれの運転状態を制御する。
【0024】
車両用空調装置4は、車室内51に対して冷房風を提供する冷房運転を実施する場合、図1に示す冷媒流れに制御する。制御装置3は、四方弁12の切換部を以下に示す状態に制御する。四方弁12は、圧縮機11の流出部に通じる通路と室外熱交換器13に通じる通路とを連結し、室内熱交換器15に通じる通路とアキュムレータ16の流入部に通じる通路とを連結する流路を形成するように制御される。制御装置3は、電磁弁17を閉状態に制御し、設定温度を満たす冷房吹き出し温度になるように圧縮機11、室外ファン131、室内ファン151をそれぞれ運転する。これにより、圧縮機11と室外熱交換器13と固定絞り装置14と室内熱交換器15とアキュムレータ16とがこの順に配管を介して接続される冷房用の冷媒回路が形成されることになる。この冷媒回路では、室外熱交換器13は凝縮器として機能し、室内熱交換器15は蒸発器として機能する。室内ファン151の吸引力により室内取入口54から取り込まれた車室内51の空気は、室内熱交換器15に送風されて冷媒との熱交換により冷却された後、吹出口53から送風ダクト52内の送風通路520を通じて送られ複数の室内吹出口から車室内51の各所に冷房風として吹き出す。
【0025】
車両用空調装置4は、車室内51に対して暖房風を提供する暖房運転を実施する場合、図2に示す冷媒流れに制御する。制御装置3は、四方弁12の切換部を以下に示す状態に制御する。四方弁12は、圧縮機11の流出部に通じる通路と室内熱交換器15に通じる通路とを連結し、室外熱交換器13に通じる通路とアキュムレータ16の流入部に通じる通路とを連結する流路を形成するように制御される。制御装置3は、電磁弁17を閉状態に制御し、設定温度を満たす暖房吹き出し温度になるように圧縮機11、室外ファン131、室内ファン151をそれぞれ運転する。これにより、圧縮機11と室内熱交換器15と固定絞り装置14と室外熱交換器13とアキュムレータ16とがこの順に配管を介して接続される暖房用の冷媒回路が形成されることになる。この冷媒回路では、室内熱交換器15は凝縮器として機能し、室外熱交換器13は蒸発器として機能する。室内ファン151の吸引力により室内取入口54から取り込まれた車室内51の空気は、室内熱交換器15に送風されて冷媒との熱交換により加熱された後、吹出口53から送風ダクト52内の送風通路520を通じて送られ複数の室内吹出口から車室内51の各所に暖房風として吹き出す。
【0026】
車両用空調装置4は、室外熱交換器13に着霜して、除霜する除霜運転を実施する場合には、該当する室外熱交換器13を有するヒートポンプサイクル10において図3に示す冷媒流れに制御する。制御装置3は、四方弁12の切換部を以下に示す状態に制御する。四方弁12は、冷房運転時と同様に、圧縮機11の流出部に通じる通路と室内熱交換器15に通じる通路とを連結し、室内熱交換器15に通じる通路とアキュムレータ16の流入部に通じる通路とを連結する流路を形成するように制御される。制御装置3は、電磁弁17を開状態に制御し、圧縮機11、室外ファン131をそれぞれ運転し、室内ファン151を停止する。制御装置3は、室内ファン151を運転するように制御してもよい。これにより、圧縮機11と室外熱交換器13と電磁弁17とアキュムレータ16とがこの順に配管を介して接続される除霜用の冷媒回路が形成されることになる。この冷媒回路では、室外熱交換器13は放熱器として機能する。また、前述したように、バイパス通路180に対して固定絞り装置14側の通路の流通抵抗が大きいため、室外熱交換器13を流出した冷媒はほとんどバイパス通路180を流れてアキュムレータ16に流入する。制御装置3は、除霜運転を行う必要のない他のヒートポンプサイクル10については前述した暖房運転を継続する。
【0027】
次に、複数の空調ユニットを有する車両用空調装置4について図6図13を参照して説明する。車両用空調装置4は、同様の構成である2個の空調ユニットをバスの屋根に前後方向に並べたグループを、車両5の幅方向に2個並べて設置した構成であり、4個の空調ユニット2A~2Dを有している。車両用空調装置4は、複数の空調ユニットをバスの屋根と車室内51の天井との間の空間である屋根内に設置する構成でもよい。図6に示すように、4個の空調ユニット2A~2Dは、第1グループ4Aと第2グループ4Bとに分類されている。第1グループ4Aは空調ユニット2Aと空調ユニット2Bとを有している。第2グループ4Bは空調ユニット2Cと空調ユニット2Dとを有している。車幅方向に並ぶ隣接した空調ユニットは、ベース部63や架台61がアングル鋼材64を介して連結されて一体になって屋根に固定されている。
【0028】
図6に示すように、各空調ユニットは、室外側ユニット20と室内側ユニット21とに大きく分けられている。室外側ユニット20は、開閉自在なカバー60を有し、各空調ユニットにおいて室内側ユニット21よりも前側また後側に隣接して設置されている。図9図11に示すように、室外側ユニット20は、室外熱交換器13、室外ファン131、圧縮機11、四方弁12、固定絞り装置14、アキュムレータ16、電磁弁17、これらに接続されている配管等を含んでいるユニットである。室外側ユニット20は、室外熱交換器ユニット20Aと圧縮機ユニット20Bとを備えている。室外側ユニット20は、車両5の屋根に固定された架台61に設置されている。室外側ユニット20では、室外熱交換器13の凝縮熱等を放出するために室外ファン131によって外気を取り込んで熱交換後、車外に排出する。
【0029】
図10に示すように、室外熱交換器ユニット20Aは、室外熱交換器13と外気が流通する通路200とを少なくとも備えている。架台61は、屋根面に対して前方側または後方側が高い位置となるように傾斜した姿勢で設置されている。通路200は、屋根面に対して傾斜した姿勢で設置された室外熱交換器13を上側から下側に向けて通過する通路を構成する。室外熱交換器ユニット20Aは、さらに室外ファン131を備える構成でもよい。圧縮機ユニット20Bは、少なくとも圧縮機11を備えている。圧縮機ユニット20Bは、圧縮機11の他、四方弁12、アキュムレータ16等を備えている。
【0030】
車幅方向に並んで設置されている空調ユニット2Aと空調ユニット2Cは、室外側ユニット20が室内側ユニット21よりも前側に設置されている。車幅方向に並んで設置されている空調ユニット2Bと空調ユニット2Dは、室外側ユニット20が室内側ユニット21よりも後側に設置され、車両の前後方向に並んで設置されている、空調ユニット2Aと空調ユニット2B、空調ユニット2Cと空調ユニット2Dは、それぞれの室内側ユニット21が隣接して設置されている。
【0031】
室内側ユニット21は、開閉自在なカバー62を有する室内側ケース内にそれぞれ収納されている。室内側ユニット21は、車両5の屋根にボルト締めにより固定されたベース部63に設置されている。室外側ユニット20が設置されている架台61とベース部63とは、別体の部材であってもよいし、一体である同一の部材で構成してもよい。したがって、空調ユニットは、室外側ユニット20と室内側ユニット21とが一つのベース部63に収容された状態で、車両5に設置されている構成でもよい。室内側ユニット21は、室内熱交換器15、室内ファン151、これらに接続されている配管等を含んで構成されている。室内側ユニット21は、室内熱交換器15、室内ファン151、車室内51に送風される空気が流通する空気通路210等を含んでいる室内熱交換器ユニットである。
【0032】
各室内側ユニット21において室内熱交換器15と室内ファン151は、車幅方向に並んで設置されている。室内熱交換器15は、室内ファン151よりも車幅方向について外側に設置されている。室内熱交換器15は、熱交換コア部が上下方向および車両5の前後方向に平行な通風面を形成するような姿勢で設置されている。室内取入口54は、車室内51に連通する、車両前後方向に細長い矩形状の開口部であり、室内熱交換器15よりも車両幅方向について車両中央側に設置されている。室内ファン151は、ファンの回転軸方向に空気を吸い込む吸込み部を有してファンの遠心方向に吹き出す遠心式のファンを有する。
【0033】
各空調ユニットには、2個の室内ファンが前後方向に並んで設けられている。空調空気を吹き出す吹出口53は、各室内ファン151の吹出し部に接続されている。各室内ファン151の吹出し部は送風ダクト52に接続されており、吹出口53は送風ダクト52内の送風通路520に連通している。したがって、各室内ファン151の吸引力によって室内取入口54を通じて上方に取り出された車室内51の空気は、室内熱交換器15の熱交換コア部に対して直交する方向に流れて冷媒と熱交換されて空調される。熱交換コア部を通過後の空調空気は、室内ファン151の吸込み部に吸い込まれて、下方に向けて吹出口53から吹き出され、送風ダクト52内で他の吹出口53から吹き出された空気と混合して温調される。このように温調された空気は、車室内51においてバス車両の前後方向に伸長するように送風ダクト52における天井側の車両5の幅方向両側部位や車室内天井部付近の各室内吹出口から車室内全体に向けて送風される。
【0034】
図7に示すように、複数の空調ユニット2A~2Dは、燃料電池500と水素収容タンク501とが搭載された燃料電池車に設置されている。複数の空調ユニット2A~2Dは、燃料電池車が備える二次電池から供給される電力を使用して空調運転を行うように構成されている。したがって車両用空調装置4は、二次電池に蓄電された電力を、圧縮機11、四方弁12、電磁弁17、室外ファン131、室内ファン151等の運転のために使用して、冷房運転、暖房運転、除霜運転等を実施する。
【0035】
複数の空調ユニット2A~2Dは、車両5の屋根または屋根内において前後方向について燃料電池500と水素収容タンク501との間に位置するように設置されている。複数の空調ユニット2A~2Dは、その天部の位置が燃料電池500と水素収容タンク501よりも低くなるように設置されている。複数の空調ユニット2A~2Dの上下方向の寸法は、その天部の位置が燃料電池500と水素収容タンク501よりも低くなるように設定されている。
【0036】
図8に示すように、空調ユニット2Aと空調ユニット2Bのそれぞれの吹出口53から吹き出された空調風は、送風ダクト52内で互いに混合させてから、車室内51において一方側領域である、前方に向かって右側領域に配された各室内吹出口から車室内51に提供される。空調ユニット2Aと空調ユニット2Bのそれぞれの吹出口53から吹き出された空調風は、送風ダクト52内で互いに混合させてから、車室内51において他方側領域である、前方に向かって左側領域に配された各室内吹出口から車室内51に提供される。このように同じグループに属する空調ユニットは、それぞれが吹き出した空調空気を混合させてから車室内51に提供するように構成されている。さらに異なるグループに属する空調ユニットは、それぞれが吹き出した空調空気を車室内51において異なる場所に提供するように構成されている。
【0037】
各空調ユニットは、室内側ユニット21である室内熱交換器ユニットと、室外熱交換器ユニット20Aと、圧縮機ユニット20Bとを有する。圧縮機ユニット20Bは、ヒートポンプサイクル10に含まれる圧縮機11を少なくとも含み、室外熱交換器ユニット20Aと室内熱交換器ユニットの間に隣接して設けられている。圧縮機ユニット20Bは、ヒートポンプサイクル10に含まれる流路切換装置としての四方弁12を含んでいる。四方弁12は、暖房運転と冷房運転とにわたって冷媒経路を切り換え可能な流路切換装置である。
【0038】
図12に示すように、室内側ユニット21には、電源供給線や各種の信号線を含むハーネス71、リレー装置72、圧縮機11を制御するインバータ装置73、ヒューズボックス74、制御装置3等の電装部品が設置されている。リレー装置72、インバータ装置73、ヒューズボックス74、制御装置3等は、室内取入口54と室内熱交換器15とをつなぐ空気通路210に設けられている。
【0039】
ハーネス71は、送風ダクト52内から室内側ユニット21に延びるように配され、各空調ユニットに向けて分岐して延びている。ハーネス71が送風ダクト52内から室内側ユニット21に露出する部位は、室内ファン151の近傍である。ハーネス71を配線するスペースを確保するために、仕切り板211は、隣の室内側ユニット21の室内ファン151側に偏った位置に設置されている。仕切り板211は、隣接する室内側ユニット21における2つの室内熱交換器15を連結する機能を果たしており、振動に対する強度向上に寄与している。
【0040】
図13に示すように、四方弁12は、冷媒通路を形成する配管が接続されている一方側部120と、冷媒通路を形成する配管が接続されている他方側部121とを有するハウジングを備える。一方側部120には、圧縮機11に連結されて圧縮機側通路122を形成する配管が接続されている。他方側部121には、室内熱交換器15に連結されて通路125を形成する配管と、アキュムレータ16に連結されて通路123を形成する配管と、室外熱交換器13に連結されて通路123を形成する配管とが接続されている。このように他方側部121は、接続されている配管の個数が一方側部120よりも多い。他方側部121は、ハウジングにおいて一方側部120の反対側に位置し、一方側部120よりも車幅の中央に対して外側に位置するように設けられている。
【0041】
四方弁12のハウジングは、一方側部120が車幅の中央に向き、他方側部121が車両5の中央対して外側を向くように設置されている。したがって、圧縮機11に連結されている配管は、四方弁12から車幅の中央に向けて延びるように一方側部120に接続されている。室内熱交換器15に連結されている配管は、四方弁12から、車幅の中央に対して外側に向けて延びるように他方側部121に接続されている。室外熱交換器13に連結されている配管は、四方弁12から、車幅の中央に対して外側に向けて延びるように他方側部121に接続されている。アキュムレータ16に連結されている配管は、四方弁12から、車幅の中央に対して外側に向けて延びるように他方側部121に接続されている。
【0042】
図13に示すように、四方弁12はアキュムレータと圧縮機11よりも車幅の中央に対して外側に設置されている。ヒートポンプサイクル10において減圧装置として機能する固定絞り装置14は、四方弁12よりも車幅の中央に対して外側に設置されている。固定絞り装置14は、ヒートポンプサイクル10に含まれる機能部品のうち、圧縮機ユニット20Bにおいて、車幅の中央に対して最も外側に設置されている。四方弁12は、天部がアキュムレータ16や圧縮機11よりも低い位置にある。このため、車両5の外側から作業を行う場合に、遠くまで手が延ばしやすく、作業負担を軽減することができる。
【0043】
圧縮機11は、四方弁12と圧縮機11とを連結する配管113が接続されている接続部111と、アキュムレータ16と圧縮機11とを連結するホース配管112が接続されている接続部110と、を備えている。接続部110は、圧縮機11において接続部111よりも車幅の中央寄りに設けられている。つまり、接続部110は、接続部111よりも車幅の中央に対して内側に設置されている。この構成によれば、冷媒配管の長さを短く設置できる圧縮機ユニット20Bを構成することができる。
【0044】
圧縮機ユニット20Bは、室外熱交換器ユニット20Aと室内側ユニット21との間において、車幅方向の長さが室外熱交換器ユニット20Aや室内側ユニット21と同じ長さとなるように設置されている。圧縮機ユニット20Bは、車幅の中央に対して外側から内側に向けて、四方弁12、アキュムレータ16、圧縮機11の順に並ぶように設置されている。さらに四方弁12、アキュムレータ16および圧縮機11は、車両5の幅方向に重なる部分を有するように並んでいる。この配置によれば、圧縮機ユニット20Bの車両前後方向の長さを小さく抑えることに寄与している。さらに四方弁12、アキュムレータ16および圧縮機11は、車両5の幅方向に一列に並ぶように設置されていることが好ましい。
【0045】
ヒートポンプサイクルを有する空調ユニットを用いて車室内の空調を行う車両用空調装置の場合、熱交換器を除霜する除霜運転を実施すると、車室内への空調吹き出し温度が除霜運転によって大きく低下してしまうという課題がある。この実施形態の車両用空調装置4はこの課題を解決することができる。車両用空調装置4の制御装置3は、空調操作部40の強制運転指令スイッチまたは自動運転スイッチが操作されることによって運転指令が入力部30に入力されると、後述する制御を実行する。
【0046】
制御装置3の演算処理部31は、車両用空調装置4が備えるすべての室外熱交換器13について、着霜条件が成立するか否かを判定する。着霜条件は、室外熱交換器13に霜が付着する状態または霜の付着が予測される状態であると成立する。室外熱交換器13に着霜すると室外熱交換器13における熱交換性能が低下して車室内51への空調出力が損なわれるため、この状態を解消するために制御装置3は、この判定処理を繰り返し実行する。演算処理部31は、着霜条件が成立していないと判定している間は、空調操作部40からの運転指令に基づいた暖房運転または冷房運転を継続して実施する。
【0047】
演算処理部31は、例えば、外気温度センサ183が検出する外気温度と配管温度センサ182が検出する冷媒温度との温度差が基準値以上である場合は着霜条件が成立すると判定する。この温度差が基準値を下回る場合は着霜条件が成立しないと判定し、この判定処理を繰り返し実行する。基準値は、霜が付着する状態または霜の付着が予測される状態における、実験で求めた温度差であり、あらかじめ定められている。着霜条件が成立する場合は、チューブやフィン等の表面温度が氷点を下回ることで外気中の水分が凝固する場合であるので、通常は暖房運転中であることが想定できる。したがって、図2に示す冷媒流れである場合であって室外熱交換器13が蒸発器として機能するので、配管温度センサ182が検出する冷媒温度は室外熱交換器13において外気との熱交換を行った後の冷媒温度になる。冷媒温度は、熱交換コア部のフィンの温度を代用してもよい。着霜条件が成立するか否かは、外気温度と、冷媒温度、配管温度、フィン温度のいずれかとを用いて判定することができる。
【0048】
制御装置3は、着霜条件が成立すると判定した場合、所定時間が経過してから除霜運転を実施する。この所定時間は着霜条件が成立したときから除霜運転を開始するまでの遅延時間として設定されている。このように着霜条件が成立しても除霜運転を遅らせることにより、暖房運転をできるだけ継続して車室内51への暖房出力の低下を遅らせることができる。所定時間が経過すると、制御装置3は、除霜条件が成立した室外熱交換器13を有する空調ユニット以外の他の空調ユニットについて暖房出力を増加させる処理を実行する。例えば、制御装置3は、除霜運転を行わない空調ユニットについて圧縮機11の冷媒吐出量を増加させるように回転数等を制御して、当該空調ユニットの暖房出力を増加させる。制御装置3は、除霜条件が成立した室外熱交換器13を有する空調ユニットについて除霜運転を実施する。制御装置3は、図3を参照して前述したように、四方弁12を制御し、電磁弁17を開状態に制御し、圧縮機11、室外ファン131をそれぞれ運転し、室内ファン151を停止する。このように除霜運転を実施する空調ユニットと同じグループに属する他の空調ユニットについて暖房運転を継続するため、車室内51において同じ領域に送風される空調温度が除霜運転によって大きく低下することを回避できる。
【0049】
この除霜運転は、演算処理部31が除霜終了条件が成立したと判定するまで継続する。除霜終了条件は、例えば、除霜運転を実施している空調ユニットにおいて配管温度センサ182によって検出された冷媒温度があらかじめ定めた閾値以上になると成立するように設定することができる。また、除霜終了条件は、あらかじめ定めた除霜運転時間が経過すると成立するように設定してもよい。また、除霜終了条件は、あらかじめ定めた除霜運転時間が経過する前であっても、除霜運転を実施している空調ユニットにおいて配管温度センサ182によって検出された冷媒温度があらかじめ定めた閾値以上になった場合に成立するように設定してもよい。演算処理部31が除霜終了条件が成立したと判定すると、制御装置3は除霜運転を終了して除霜運転から暖房運転に変更するように空調ユニットを制御する。
【0050】
次に、第1実施形態の車両用空調装置4がもたらす作用、効果について説明する。車両用空調装置4は、車両5の屋根または屋根内に搭載されて、ヒートポンプサイクル10を有して車室内51に対して空調空気を提供する複数の空調ユニットを備える。各空調ユニットは、室内熱交換器ユニットと室外熱交換器ユニット20Aと圧縮機ユニット20Bとを備える。室内熱交換器ユニットは、ヒートポンプサイクル10に含まれる室内熱交換器15と車室内51に送風される空気が流通する空気通路210とを含んでいる。室外熱交換器ユニット20Aは、ヒートポンプサイクル10に含まれる室外熱交換器13と外気が流通する通路とを含んでいる。圧縮機ユニット20Bは、ヒートポンプサイクル10に含まれる圧縮機11を少なくとも含み、室外熱交換器ユニット20Aと室内熱交換器ユニットの間に隣接して設けられている。
【0051】
この車両用空調装置4によれば、冷媒流動を制御する圧縮機11を少なくとも含む圧縮機ユニット20Bを、室外熱交換器13および外気通路を含むユニットと室内熱交換器15および空気通路を含むユニットとの間に隣接して設置する。これにより、熱交換するための、室外側の通路と室内側の通路とを離して配置することで、各通路スペースを確保でき、これらの通路スペースの間に、圧縮機11および冷媒配管を含むヒートポンプサイクル10の機能部品を集約して設置することができる。したがって、この車両用空調装置4によれば、車両5の屋根または屋根内に搭載された空調ユニットの省スペース化を図ることができる。
【0052】
圧縮機ユニット20Bは、ヒートポンプサイクル10に含まれて暖房運転と冷房運転とにわたって冷媒経路を切り換え可能な流路切換装置を含んでいる。これにより、室外熱交換器ユニット20Aと室内熱交換器ユニットの間に、圧縮機11、流路切換装置およびこれらに接続されている冷媒配管等の機能部品を集約して設置することで、空調ユニットの設置スペースを抑制できる。
【0053】
さらに流路切換装置は、冷媒通路を形成する配管が接続されている一方側部と、冷媒通路を形成する配管が接続されている他方側部とを有するハウジングを備える。他方側部は、接続されている配管の個数が一方側部よりも多く、ハウジングにおいて一方側部の反対側に位置し、一方側部よりも車幅の中央に対して外側に位置するように設けられている。この構成によれば、室外熱交換器ユニット20Aと室内熱交換器ユニットの間に、配管接続数が数多い流路切換装置という機能部品を他の機能部品とともに集約して設置することで、空調ユニットの設置スペースを抑制できる。
【0054】
流路切換装置の一方側部には、圧縮機11に連結されている配管が接続されている。流路切換装置の他方側部には、室内熱交換器15に連結されている配管と室外熱交換器13に連結されている配管とが接続されている。この構成によれば、室外熱交換器ユニット20Aと室内熱交換器ユニットの間に、圧縮機11、室内熱交換器15および室外熱交換器13のそれぞれと流路切換装置との接続配管と、各機能部品とを集約して設置することで空調ユニットの設置スペースを抑制できる。
【0055】
圧縮機ユニット20Bは、気相冷媒と液相冷媒とを分離する気液分離装置をさらに含んでいる。流路切換装置の他方側部には、気液分離装置に連結されている配管が接続されている。この構成によれば、室外熱交換器ユニット20Aと室内熱交換器ユニットの間に、圧縮機11、室内熱交換器15、室外熱交換器13および気液分離装置のそれぞれと流路切換装置との接続配管と、各機能部品とを集約して設置することで空調ユニットの設置スペースを抑制できる。
【0056】
流路切換装置は、気液分離装置および圧縮機11よりも車幅の中央に対して外側に設置されている。この構成によれば、配管接続数が数多い流路切換装置という機能部品を他の機能部品よりも外側に設置することにより、メンテナンス時等の配管接続作業等を車両5の左または右の外側から行いやすい車両用空調装置4を提供できる。
【0057】
車両用空調装置4は、車幅の中央に対して外側から内側に向けて、流路切換装置、気液分離装置、圧縮機11の順に並んで設置されている。この構成によれば、配管接続数が数多い流路切換装置という機能部品を他の機能部品に対して最も外側に設置ことで、圧縮機ユニット20Bにおいて多くの配管を車両5の左または右の外側に集めることができ、配管作業性に優れた車両用空調装置4を提供できる。
【0058】
流路切換装置、気液分離装置および圧縮機11は、車両5の幅方向に重なる部分を有するように並んでいる。この構成によれば、室外熱交換器ユニット20Aと室内熱交換器ユニットの間に設置する圧縮機ユニット20Bについて、車両5の前後方向の長さを抑える空調ユニットを提供でき、省スペース化に寄与する。
【0059】
ヒートポンプサイクル10に含まれて冷媒を減圧膨張する減圧装置は、流路切換装置よりも車幅の中央に対して外側に設置されている。減圧装置は室外熱交換器13と室内熱交換器15とをつなぐ通路に設けられているため、この構成によれば、減圧装置を他の機能部品よりも外側に設置することで、室外熱交換器13と室内熱交換器15との配管接続作業等を車両5の外側から行いやすい車両用空調装置4を提供できる。また、圧縮機ユニット20Bと室外熱交換器13や室内熱交換器15とを連結する配管を車両5の外側に敷設することができる。また、比較的周囲空間が広い車両5の外側に敷設できることにより、配管に関する配置自由度が高い車両用空調装置4を提供できる。さらに圧縮機ユニット20Bに、減圧装置を含めた多くの機能部品を集約して設置することができる。
【0060】
少なくとも一つの空調ユニットは、一つのベース部63に収容されている。この構成によれば、コンパクトな空調ユニットを一つのベース部63に収容した状態で、車両5の屋根または屋根内に搭載可能な車両用空調装置4を提供できる。
【0061】
複数の空調ユニットの少なくとも2つは、車両5の前後方向に並んで設置されている。この車両用空調装置4によれば、各空調ユニットの省スペース化が図れるので、車両5の前後方向について、複数の空調ユニットに必要な設置スペースを抑えることに寄与する。
【0062】
車両5の前後方向に隣接している2つの空調ユニットは、室内熱交換器ユニット同士が隣接するように設置されている。隣接する2つの室内熱交換器ユニットにおいてそれぞれの室内熱交換器15を通過した空気が流れる通路と通路とを仕切る仕切り板211を備えている。この構成によれば、隣接している2つの空調ユニットの間を仕切り板211によって区画できるので、2つの空調ユニットについて車両5の前後方向長さを抑えた車両用空調装置4を提供できる。
【0063】
複数の空調ユニットは、各グループについて空調空気を互いに混合させてから車室内51に提供するように設けられた2つ以上のグループに分類されて搭載されている。2つ以上のグループは車両5の幅方向に並んでいる。この構成によれば、各グループの搭載スペースについて省スペース化が図れるとともに、2つ以上のグループの搭載スペースについても省スペースが図れる。
【0064】
さらに2つ以上のグループは、それぞれ車室内51において異なる場所に空調空気を提供するように設けられている。この構成によれば、車室内51の異なる場所に空調空気を提供する2つ以上のグループの搭載スペースについて省スペースが図れる。
【0065】
制御装置3は、複数の空調ユニットが有する熱交換器のうち着霜条件が成立した熱交換器がある場合に、着霜条件が成立した熱交換器を備える空調ユニットについて除霜運転を実施する。さらに制御装置3は、除霜運転を実施する空調ユニットと同じグループに属する他の空調ユニットについては圧縮機11による冷媒吐出量を増加させて暖房運転を実施する。この制御によれば、除霜運転時に他の空調ユニットが実施する暖房運転を暖房出力を大きくして実施するため、除霜運転による車室内51への吹き出し温度の低下をさらに抑えることが可能な空調を提供できる。
【0066】
制御装置3は、複数の空調ユニットが有する熱交換器のうち着霜条件が成立した熱交換器がある場合に、暖房運転を継続し、所定の遅延時間が経過後、暖房運転から除霜運転に切り換える。この制御によれば、着霜条件が成立したときに即座に除霜運転を実施せずに暖房運転を継続することができるので、暖房運転を長く実施でき、車室内51の乗員に対する暖房感をできるだけ長く提供する車両用空調装置4を提供できる。
【0067】
複数の空調ユニットは、各グループについて空調空気を互いに混合させてから車室内51に提供するように設けられた2つ以上のグループに分類されている。制御装置3は、各グループにおいて除霜運転を実施中である空調ユニット以外の空調ユニットについては暖房運転を実施する。これによれば、除霜運転を実施する空調ユニットと同じグループに属する他の空調ユニットについては暖房運転を継続する。これにより、除霜運転を実施する空調ユニットによる暖房出力の低下を、車室内51において同じ領域に送風する他の空調ユニットの暖房出力が補うため、この領域に送風される吹き出し温度が大きく低下することを回避する車両用空調装置4を提供できる。
【0068】
さらに2つ以上のグループはそれぞれ車室内51において異なる場所に空調空気を提供するように設けられている構成により、車室内51において異なる場所に提供される吹き出し温度が大きく低下することを回避できる。このため、車室内51の広い範囲にわたって除霜運転時の暖房感を改善することができる。
【0069】
同一のグループに属する空調ユニットは一つのベース部63に収容されている。この構成によれば、同一グループに属する空調ユニットを一つのベース部63に収容した状態で、車両5の屋根または屋根内に設置できるので、車両5への搭載性に優れた車両用空調装置4を提供できる。
【0070】
複数の空調ユニットは、空調空気を互いに混合させてから車室内51の一方側領域に提供する第1グループ4Aと、空調空気を互いに混合させてから車室内51の他方側領域に提供する第2グループ4Bとに分類されている。制御装置3は、第1グループ4Aと第2グループ4Bのそれぞれにおいて除霜運転を実施中である空調ユニット以外の空調ユニットについては暖房運転を実施する。これによれば、車室内51において一方側部と他方側部とに提供される吹き出し温度が大きく低下することを回避できるので、車室内51の広い範囲にわたって除霜運転時の暖房感を改善することができる。
【0071】
室外熱交換器13は、車両5の屋根面に対して前方側または後方側が高い位置となるように傾斜した姿勢で設置されている。これによれば、室外熱交換器ユニット20Aの車両前後方向の長さ寸法を抑えることができる車両用空調装置4を提供できる。さらにこの構成は、通風エリアを大きくできるので、外気の通風抵抗を抑制し、冷房能力を高めることにも寄与している。
【0072】
空調ユニットは燃料電池車に搭載されていることが好ましい。この場合、空調ユニットの省スペース化が図れるので、車両5に搭載される燃料電池500や水素収容タンク501の設置スペースに与える影響が小さい車両用空調装置4を提供できる。
【0073】
空調ユニットは、車両5の屋根または屋根内に搭載された、燃料電池500と水素収容タンク501の間に設置されている。この構成によれば、空調ユニットの省スペース化が図れるので、空調ユニットを搭載可能な、燃料電池500と水素収容タンク501の間の設置スペースを抑えることができる車両5を提供できる。
【0074】
空調ユニットは電気自動車に搭載されていることが好ましい。この場合、空調ユニットの省スペース化が図れるので、車両5に搭載される走行用モータや二次電池の設置スペースに与える影響が小さい車両用空調装置4を提供できる。
【0075】
空調ユニットはハイブリッド車両に搭載されていることが好ましい。この場合、空調ユニットの省スペース化が図れるので、車両5に搭載される走行用モータ、二次電池、エンジン等の設置スペースに与える影響が小さい車両用空調装置4を提供できる。
【0076】
(第2実施形態)
第2実施形態では、車両用空調装置4が実行する他の制御について図14を参照して説明する。図14のフローチャートに示す制御処理は、空調運転時に複数の空調ユニットが共振して振動が大きくなることを抑制するために、空調運転中に行われる。以下、第1実施形態と相違する内容について説明する。
【0077】
車両用空調装置4が実施する制御処理の一例を図14のフローチャートにしたがって説明する。車両用空調装置4の制御装置3は、空調操作部40の強制運転指令スイッチまたは自動運転スイッチが操作されることによって運転指令が入力部30に入力されると、図14に示すフローチャートの各ステップにおける処理を順に実行し、これらのステップを反復処理する。図14のフローチャートに示す処理に係る制御プログラムは、制御装置3の記憶部に記憶されている。
【0078】
まず、制御装置3は、ステップS100で、車両用空調装置4が備える複数の空調ユニットについて共振抑制条件が成立するか否かを判定する。共振抑制条件は、各空調ユニットが備える圧縮機11の振動に起因して空調ユニット間で共振が発生する状態または共振の発生が予測される状態である場合に成立する。空調ユニット間で共振が発生すると、うなり音や振動音が大きくなり、車室内51の騒音となる。特にエンジンを備えていない燃料電池車、電気自動車、モータ走行時のハイブリッド車両においては、うなり音や振動音が車室内51の騒音となりやすく、この状態を解消するためにステップS100の判定処理を繰り返し実行することが有用である。ステップS100で共振抑制条件が成立していないと判定している間は、空調操作部40からの運転指令に基づいた暖房運転、冷房運転等を継続して実施する。なお、制御装置3は、暖房運転、冷房運転等において、複数の空調ユニットにおける空調出力を同レベルに制御しているため、各圧縮機11の回転数は同レベルに制御されている。
【0079】
ステップS100では、例えば、各空調ユニットが備える圧縮機11の回転数が所定の共振範囲に入った場合に共振抑制条件が成立すると判定する。圧縮機11の回転数が共振範囲の回転数に含まれない場合は共振抑制条件が成立しないと判定し、この判定処理を繰り返し実行する。共振範囲の回転数は、実機を用いた実験結果から得られた数値であり、あらかじめ定められて制御装置3の記憶部に記憶されている。
【0080】
演算処理部31は、ステップS100で、共振抑制条件が成立すると判定すると、次のステップS200で各圧縮機11の回転数を制御する処理を実行する。制御装置3は、共振抑制条件が成立する圧縮機11について回転数を所定値分下げるように制御し、共振抑制条件が成立する圧縮機11と同じグループに属する他の空調ユニットの圧縮機11について回転数を所定値分上げるように制御する。この制御処理により、同じグループに属する空調ユニットにおいて圧縮機11の回転数が共振点を外したものになって共振を抑制できる。さらに、同じグループに属する空調ユニットにおいて回転数を下げる圧縮機と上げる圧縮機11とに制御するので、トータルの回転数の大きな変化を抑えるため空調出力の変動を抑えることができる。
【0081】
ステップS200において制御装置3は、共振抑制条件が成立する圧縮機11について回転数を所定値分上げるように制御し、共振抑制条件が成立する圧縮機11に隣接する空調ユニットの圧縮機11について回転数を所定値分下げるように制御してもよい。この制御処理により、隣接する空調ユニットにおいて圧縮機11の回転数が共振点を外したものになって共振を抑制することができる。
【0082】
図9に示すような位置関係に設置された4個の空調ユニット2A~2Dの場合には、例えば空調ユニット2Aと空調ユニット2Dの圧縮機11について共振抑制条件が成立したとき、次のように圧縮機11の回転数を制御すればよい。空調ユニット2Aと空調ユニット2Dの各圧縮機11について回転数を所定値分下げるように制御し、空調ユニット2Bと空調ユニット2Cの各圧縮機11について回転数を所定値分上げるように制御する。これにより、車両5の幅方向や前後方向に隣接する空調ユニットにおいて圧縮機11の回転数が共振点を外した回転数になって、車両5の屋根または屋根内において隣接する空調ユニットの共振を抑制できる。さらに同じグループに属する空調ユニット2A,2Bと空調ユニット2C,2Dのそれぞれにおいてトータルの回転数の変化を抑えることができるので、車室内51に対する空調出力が変動してしまうことを抑えることができる。
【0083】
また、制御装置3は、ステップS200で共振抑制条件が成立する圧縮機11について回転数を所定値分上げるように制御し、共振抑制条件が成立する圧縮機11と同じグループに属する空調ユニットの圧縮機11について回転数を所定値分下げるように制御してもよい。
【0084】
制御装置3は、ステップS200において、回転数を所定値分下げる圧縮機11と、回転数を所定値分上げる圧縮機11とを、所定時間経過毎に入れ換えるように制御する処理を実行する。したがって、ステップS200において、各圧縮機11は、回転数を低下させる処理と回転数を上げる処理とに交互に制御されることになる。
【0085】
ステップS200の制御処理は、演算処理部31がステップS300で共振抑制条件が成立しないと判定するまで継続する。演算処理部31がステップS300で共振抑制条件が成立しないと判定すると、制御装置3はステップS400でステップS200の共振抑制制御を終了し、再びステップS100に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
【0086】
第2実施形態の制御装置3は、複数の圧縮機11のうち共振が発生し得る所定の回転数条件を満たす圧縮機11がある場合に、この回転数条件を満たす圧縮機11の回転数と、回転数条件を満たす圧縮機11を有する空調ユニットに隣接する他の空調ユニットに属する圧縮機11の回転数とをずらすように制御する。これによれば、隣接する関係にある圧縮機11について回転数をずらすように制御する。これにより、隣接する空調ユニット間で共振が発生することを回避することができる。
【0087】
第2実施形態の制御装置3は、複数の圧縮機11のうち共振が発生し得る所定の回転数条件を満たす圧縮機11がある場合に、この回転数条件を満たす圧縮機11の回転数と、回転数条件を満たす圧縮機11と同じグループに属する他の圧縮機11の回転数とをずらすように制御する。これによれば、同じグループに属する圧縮機11について回転数をずらすように制御する。これにより、隣接する空調ユニット間で共振が発生することを回避することができる。また、所定の回転数条件を満たしている一方の圧縮機11の回転数を増加させ、他方の圧縮機11の回転数を低減する場合には、共振を抑制しつつ、車室内51において同じ領域に送風する空調ユニットの空調出力が大きく変化することを回避できる。
【0088】
(他の実施形態)
この明細書の開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品、要素の組み合わせに限定されず、種々変形して実施することが可能である。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品、要素が省略されたものを包含する。開示は、一つの実施形態と他の実施形態との間における部品、要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示される技術的範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0089】
前述の実施形態において図示する車両用空調装置4は複数の空調ユニットを有する構成であるが、明細書に開示の目的を達成可能な車両用空調装置は、1個の空調ユニットを有する構成でもよい。
【0090】
前述の実施形態において第1流路切換装置の一例として説明されている四方弁12は、複数の電磁弁を組み合わせて構成される流路切換手段により代替することもできる。
【0091】
前述の実施形態において図示する車両用空調装置4は、4個の空調ユニット2A,2B,2C,2Dを備えている。明細書に開示の目的を達成可能な車両用空調装置4が備える空調ユニットの個数は、1個以上の任意の数であればよく4個に限定するものではない。
【0092】
前述の実施形態において車両用空調装置4が有する複数の空調ユニットは、第1グループ4Aと第2グループ4Bとの2つのグループに分類されているが、この個数のグループに限定するものではない。車両用空調装置4が有する複数の空調ユニットは、2つ以上の任意の数のグループに分類することができる。
【0093】
前述の実施形態において2つのグループは、それぞれの空調ユニットが吹き出した空調空気を混合させてから車室内51における右側領域と左側領域とに提供するが、このような構成に限定されない。例えば2つのグループは、各グループの空調ユニットが吹き出した空調空気を混合させてから車室内51における前側領域や後側領域に提供するように構成してもよい。
【0094】
前述の実施形態において制御装置3は、除霜運転を行わない空調ユニットについて圧縮機11の冷媒吐出量を増加させるように回転数等を制御する。制御装置3、この処理の代わりにまたはこの処理に加えて、送風量を増加させるように室内ファン151を制御してもよい。この処理を実施する場合にも、暖房風を大きくできるため、除霜運転による暖房感の低下を抑えることが可能な空調を提供できる。
【符号の説明】
【0095】
2A…空調ユニット、 2B…空調ユニット
2C…空調ユニット、 2D…空調ユニット
5…車両、 10…ヒートポンプサイクル、 11…圧縮機
13…室外熱交換器、 15…室内熱交換器
20A…室外熱交換器ユニット、 20B…圧縮機ユニット
21…室内側ユニット(室内熱交換器ユニット)
51…車室内、 210…空気通路(通路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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