(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/447 20060101AFI20220517BHJP
B41J 2/45 20060101ALI20220517BHJP
G03G 15/04 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B41J2/447 101Q
B41J2/447 101P
B41J2/45
G03G15/04 111
(21)【出願番号】P 2017219119
(22)【出願日】2017-11-14
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001900
【氏名又は名称】特許業務法人 ナカジマ知的財産綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 壮太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義和
(72)【発明者】
【氏名】矢野 壯
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-036851(JP,A)
【文献】特開2007-210139(JP,A)
【文献】特開2006-076195(JP,A)
【文献】特開2011-183721(JP,A)
【文献】特開2002-120392(JP,A)
【文献】特開2014-184622(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0279967(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/447
B41J 2/45
G03G 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを有する画像形成装置であって、
発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲の主走査方向における位置情報を取得して、主走査方向において隣り合う発光素子群
の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、
前記結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、
前記補正手段は、前記結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、同一の画像データに対して発光素子の出射光量が多くなるように前記補正を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを有する画像形成装置であって、
発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲の主走査方向における位置情報を取得して、主走査方向において隣り合う発光素子群
の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、
前記結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、
前記補正手段は、画像データの階調値を補正することによって、前記結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、発光素子の光量を多くする
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを有する画像形成装置であって、
発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲の主走査方向における位置情報を取得して、主走査方向において隣り合う発光素子群
の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、
前記結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、
前記補正手段は、前記結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、発光素子の発光時間を長くする補正を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記間隔特定手段は、主走査方向における端部において前記結像範囲の間隔を検出し、
前記補正手段は、主走査方向における端部において検出された
前記結像範囲の間
隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記間隔特定手段は、隣り合う発光素子群のすべてについて前記結像範囲の間隔を検出する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記マイクロレンズは前記マイクロレンズアレイ上で千鳥配列されており、
前記間隔特定手段は、副走査方向において同じ位置にあり、かつ主走査方向において隣り合う発光素子群どうしで前記結像範囲の間隔を検出する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記マイクロレンズは前記マイクロレンズアレイ上で千鳥配列されており、
前記間隔特定手段は、副走査方向における両端に配置された発光素子群どうしで、かつ主走査方向において隣り合う発光素子群どうしで前記結像範囲の間隔を検出する
ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記間隔特定手段は、発光素子群のすべての発光素子を発光させたときの結像範囲を検出する
ことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記間隔特定手段は、発光素子群同士において、発光素子群の中で互いに同じ位置となる発光素子を発光させたときの結像範囲の間隔を検出する
ことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記発光素子群の中で互いに同じ位置となる発光素子は、前記発光素子群に含まれる発光素子のうち、当該発光素子群に対応するマイクロレンズの光軸に最も近い発光素子である
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを色成分毎に有し、カラー画像を形成する画像形成装置であって、
1つの色成分について、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲を検出して、主走査方向において隣り合う発光素子群
の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、
前記1つの色成分についての結像範囲の間隔に応じて、すべての色成分について発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、
前記補正手段は、前記1つの色成分についての結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、同一の画像データに対して発光素子の出射光量が多くなるように前記補正を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを色成分毎に有し、カラー画像を形成する画像形成装置であって、
1つの色成分について、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲を検出して、主走査方向において隣り合う発光素子群
の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、
前記1つの色成分についての結像範囲の間隔に応じて、すべての色成分について発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、
前記補正手段は、画像データの階調値を補正することによって、前記1つの色成分についての結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、発光素子の光量を多くする
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを色成分毎に有し、カラー画像を形成する画像形成装置であって、
1つの色成分について、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲を検出して、主走査方向において隣り合う発光素子群
の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、
前記1つの色成分についての結像範囲の間隔に応じて、すべての色成分について発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、
前記補正手段は、前記1つの色成分についての結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、発光素子の発光時間を長くする補正を行う
ことを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記間隔特定手段は、主走査方向における端部において前記1つの色成分についての結像範囲の間隔を検出し、
前記補正手段は、主走査方向における端部において検出された前記結像範囲の間
隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正する
ことを特徴とする請求項11から13の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記間隔特定手段は、隣り合う発光素子群のすべてについて前記結像範囲の間隔を検出する
ことを特徴とする請求項11から13の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記マイクロレンズは前記マイクロレンズアレイ上で千鳥配列されており、
前記間隔特定手段は、副走査方向において同じ位置にあり、かつ主走査方向において隣り合う発光素子群どうしで前記1つの色成分についての結像範囲の間隔を検出する
ことを特徴とする請求項11から13の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記マイクロレンズは前記マイクロレンズアレイ上で千鳥配列されており、
前記間隔特定手段は、副走査方向における両端に配置された発光素子群どうしで、かつ主走査方向において隣り合う発光素子群どうしで前記1つの色成分についての結像範囲の間隔を検出する
ことを特徴とする請求項11から13の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記間隔特定手段は、発光素子群のすべての発光素子を発光させたときの結像範囲を検出する
ことを特徴とする請求項11から17の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記間隔特定手段は、発光素子群どうしにおいて、発光素子群の中で互いに同じ位置となる発光素子を発光させたときの結像範囲を検出する
ことを特徴とする請求項11から17の何れかに記載の画像形成装置。
【請求項20】
前記発光素子群の中で互いに同じ位置となる発光素子は、前記発光素子群に含まれる発光素子のうち、当該発光素子群に対応するマイクロレンズの光軸に最も近い発光素子である
ことを特徴とする請求項19に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関し、特に、ライン光学型の光書き込み装置に搭載したマイクロレンズアレイの歪みに起因する画像品質の劣化を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の画像形成装置においては、走査光学系を用いてレーザーダイオードの出射光を偏向することによって感光体ドラムに光書き込みを行う光走査型の光書き込み装置が用いられてきたが、走査光学系は構造上、小型化が難しく、また、出射光のビーム径を絞ることが技術的に難しい。このため、光走査型の光書き込み装置を搭載した画像形成装置を小型化、低コスト化し、更に高解像度化するのには限界がある。
【0003】
一方、微小ドットの発光素子をライン状に配置した発光基板をレンズアレイと組み合わせたライン光学型の光書き込み装置では、例えば、主走査方向に約30,000個の発光素子を配列した発光基板を、主走査方向に数百個のレンズを配列したレンズアレイと組み合わせて、発光基板を数百に分割した領域ごとに1つのレンズが結像を行う。
【0004】
ライン光学型の光書き込み装置を用いれば、発光基板とレンズアレイとの何れも小型化、低コスト化することが容易であり、また、微小ドットの発光素子を用いて発光基板の分割領域ごとに1つのレンズで結像するので高解像度化することができる。従って、ライン光学型の光書き込み装置を搭載すれば、画像形成装置の小型化、低コスト化及び高解像度化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-036851号公報
【文献】特開2014-184622号公報
【文献】特開2013-202957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ライン光学型の光書き込み装置においては、レンズアレイとして、例えば、数μmから数mmの大きさのマイクロレンズを2次元アレイ状に並べて集積したマイクロレンズアレイ(MLA: Micro Lens Array)を用いることができる。マイクロレンズアレイは2枚玉、テレセントリック光学系を用いるのが一般的である。
【0007】
光書き込み装置に用いるマイクロレンズアレイは主走査方向に長尺な形状になっているため、画像形成装置の機内温度が上昇すると、主走査方向に大きく熱膨張してしまう。マイクロレンズアレイを保持している保持部材とマイクロレンズアレイとで熱膨張係数が異なる場合には、温度上昇に起因する線膨張差が大きくなるので、マイクロレンズアレイが歪んでしまう。
【0008】
マイクロレンズアレイが歪むと、発光基板、マイクロレンズアレイ及び感光体ドラムの位置関係が変化し、(1)ビーム径が増大したり、(2)マイクロレンズアレイを形成する各マイクロレンズに対応する発光素子群ごとの照射位置がずれたりする、といった現象が発生する。これらの現象は、発光基板、マイクロレンズアレイ及び感光体ドラムの位置関係の変化が最も小さい位置(以下、「基準位置」という。)から主走査方向に離隔するほど甚だしくなる。また現象(1)は、濃度むらによる画像品質の劣化を引き起こすおそれがある。
【0009】
本発明は、上述のような問題に鑑みて為されたものであって、マイクロレンズアレイの歪みに起因する画質劣化を抑制することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る画像形成装置は、主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを有する画像形成装置であって、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲の主走査方向における位置情報を取得して、主走査方向において隣り合う発光素子群の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、前記結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前記結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、同一の画像データに対して発光素子の出射光量が多くなるように前記補正を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このようにすれば、発光素子群ごとの結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正するので、マイクロレンズアレイの歪みに起因してマイクロレンズの光軸が発光素子の出射方向に対して傾斜し、結像範囲の位置ずれや露光スポット径の変化によって画像濃度が低下するのを抑制することができる。
【0012】
また、主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを有する画像形成装置であって、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲の主走査方向における位置情報を取得して、主走査方向において隣り合う発光素子群の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、前記結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、画像データの階調値を補正することによって、前記結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、発光素子の光量を多くすることを特徴とする。
また、主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを有する画像形成装置であって、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲の主走査方向における位置情報を取得して、主走査方向において隣り合う発光素子群の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、前記結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前記結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、発光素子の発光時間を長くする補正を行うことを特徴とする。
【0013】
また、前記間隔特定手段は、主走査方向における端部において前記結像範囲の間隔を検出し、前記補正手段は、主走査方向における端部において検出された前記結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正してもよい。
【0014】
また、前記間隔特定手段は、隣り合う発光素子群のすべてについて前記結像範囲の間隔を検出してもよい。
【0015】
また、前記マイクロレンズは前記マイクロレンズアレイ上で千鳥配列されており、前記間隔特定手段は、副走査方向において同じ位置にあり、かつ主走査方向において隣り合う発光素子群どうしで前記結像範囲の間隔を検出してもよい。
【0016】
また、前記マイクロレンズは前記マイクロレンズアレイ上で千鳥配列されており、前記間隔特定手段は、副走査方向における両端に配置された発光素子群どうしで、かつ主走査方向において隣り合う発光素子群どうしで前記結像範囲の間隔を検出してもよい。
【0017】
また、前記間隔特定手段は、発光素子群のすべての発光素子を発光させたときの結像範囲を検出してもよい。
【0018】
また、前記間隔特定手段は、発光素子群どうしにおいて、発光素子群の中で互いに同じ位置となる発光素子を発光させたときの結像範囲を検出してもよい。
【0019】
また、前記発光素子群の中で互いに同じ位置となる発光素子は、前記発光素子群に含まれる発光素子のうち、当該発光素子群に対応するマイクロレンズの光軸に最も近い発光素子であってもよい。
【0020】
また、本発明に係る画像形成装置は、主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを色成分毎に有し、カラー画像を形成する画像形成装置であって、1つの色成分について、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲を検出して、主走査方向において隣り合う発光素子群の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、前記1つの色成分についての結像範囲の間隔に応じて、すべての色成分について発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前記1つの色成分についての結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、同一の画像データに対して発光素子の出射光量が多くなるように前記補正を行うことを特徴とする。
また、主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを色成分毎に有し、カラー画像を形成する画像形成装置であって、1つの色成分について、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲を検出して、主走査方向において隣り合う発光素子群の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、前記1つの色成分についての結像範囲の間隔に応じて、すべての色成分について発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、画像データの階調値を補正することによって、前記1つの色成分についての結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、発光素子の光量を多くすることを特徴とする。
また、主走査方向に配列された複数の発光素子と、前記複数の発光素子を区分した複数の発光素子群に1対1に対応し、対応する発光素子群の出射光を感光体表面上に結像させるマイクロレンズを主走査方向に配列したマイクロレンズアレイとを色成分毎に有し、カラー画像を形成する画像形成装置であって、1つの色成分について、発光素子群ごとに感光体表面上での結像範囲を検出して、主走査方向において隣り合う発光素子群の結像範囲の間隔を特定する間隔特定手段と、前記1つの色成分についての結像範囲の間隔に応じて、すべての色成分について発光素子ごとの発光状態を補正する補正手段と、を備え、前記補正手段は、前記1つの色成分についての結像範囲間の間隔が広い発光素子群ほど、発光素子の発光時間を長くする補正を行うことを特徴とする。
この場合において、前記間隔特定手段は、主走査方向における端部において前記1つの色成分についての結像範囲の間隔を検出し、前記補正手段は、主走査方向における端部において検出された前記結像範囲の間隔に応じて発光素子ごとの発光状態を補正してもよい。
また、前記間隔特定手段は、隣り合う発光素子群のすべてについて前記結像範囲の間隔を検出してもよい。
また、前記マイクロレンズは前記マイクロレンズアレイ上で千鳥配列されており、前記間隔特定手段は、副走査方向において同じ位置にあり、かつ主走査方向において隣り合う発光素子群どうしで前記1つの色成分についての結像範囲の間隔を検出してもよい。
また、前記マイクロレンズは前記マイクロレンズアレイ上で千鳥配列されており、前記間隔特定手段は、副走査方向における両端に配置された発光素子群どうしで、かつ主走査方向において隣り合う発光素子群どうしで前記1つの色成分についての結像範囲の間隔を検出してもよい。
また、前記間隔特定手段は、発光素子群のすべての発光素子を発光させたときの結像範囲を検出してもよい。
また、前記間隔特定手段は、発光素子群どうしにおいて、発光素子群の中で互いに同じ位置となる発光素子を発光させたときの結像範囲を検出してもよい。
また、前記発光素子群の中で互いに同じ位置となる発光素子は、前記発光素子群に含まれる発光素子のうち、当該発光素子群に対応するマイクロレンズの光軸に最も近い発光素子であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置の主要な構成を示す図である。
【
図2】(a)は光書き込み装置100の主要な構成を示す断面図であり、(b)は発光基板200の主要な構成を示す平面図及び断面図である。
【
図3】(a)はTFT回路214の主要な構成を示すブロック図であり、(b)は選択回路301と発光ブロック302の構成を示す回路図である。
【
図4】ASIC220の主要な構成を示すブロック図である。
【
図5】(a)は副走査方向に垂直な断面における光書き込み装置100の断面図であり、(b)はG1レンズ510の平面図であり、(c)は絞り520の平面図である。
【
図6】発光基板200及び発光素子群600における発光素子320の配置を示す平面図である。
【
図7】制御部150の主要な構成を示すブロック図である。
【
図8】制御部150の主要な機能構成を示すブロック図である。
【
図9】制御部150によるマイクロレンズアレイ201の歪み検出動作を説明するフローチャートである。
【
図10】(a)はマイクロレンズアレイ201が歪んでいない場合のマイクロレンズアレイ201の断面と結像状態を示し、(b)はマイクロレンズアレイ201が歪んでいる場合のマイクロレンズアレイ201の断面と結像状態を示す。
【
図11】(a)はマイクロレンズ511の傾斜状態を示す断面図であり、(b)はマイクロレンズ511の傾斜に起因する光路オフセットZを説明する図である。
【
図12】
図12はインラインセンサー160による検出光量を例示するグラフである。
【
図13】マイクロレンズアレイ201の歪み状態を例示する断面図である。
【
図14】(a)は補正値算出用データを例示する表であり、(b)は補正値表を例示する表である。
【
図15】制御部150による画像データの補正処理を説明するフローチャートである。
【
図16】制御部150による発光素子320毎の光量補正処理を説明するフローチャートである。
【
図17】第2の実施の形態に係る発光ブロック302の構成を示す回路図である。
【
図18】制御部150による発光素子320毎の発光時間を決定する処理を説明するフローチャートである。
【
図19】(a)は発光時間算出用データを例示する表であり、(b)は発光時間表を例示する表である。
【
図20】マイクロレンズアレイ201の湾曲状態を説明する断面図である。
【
図21】光量補正値を記憶するテーブルを例示する表である。
【
図22】制御部150による輝度信号値の補正処理を説明するフローチャートである。
【
図23】(a)はマイクロレンズアレイ201が歪んでいないときの発光素子群600の結像範囲の間隔を説明する図であり、(b)は変形例に係る制御部150が検出する発光素子群600の結像範囲の間隔を説明する図である。
【
図24】(a)はマイクロレンズアレイ201が歪んでいないときの発光素子群600の副走査方向における結像範囲を説明する図であり、(b)は変形例に係る制御部150が検出する発光素子群600の結像範囲の副走査方向における間隔を説明する図である。
【
図25】(a)はマイクロレンズアレイ201の湾曲状態を例示する断面図であり、(b)は結像範囲どうしの重複状態を例示し、(c)は検出すべき結像範囲の間隔を説明する図である。
【
図26】(a)はマイクロレンズ2601の歪みに起因する露光スポットの歪みを例示する図であり、(b)は結像範囲に対するマイクロレンズ2601の歪みの影響を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る画像形成装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
[1]第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態に係る画像形成装置はマイクロレンズアレイを構成する各マイクロレンズに対応する光学素子の露光位置どうしの距離からマイクロレンズの歪みを検出し、検出した歪みに応じて画像データを補正することによって画質劣化を抑制することを特徴とする。
(1-1)画像形成装置の構成
まず、本実施の形態に係る画像形成装置の構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、画像形成装置1は、所謂タンデム方式のカラープリンターであって、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)各色のトナー像を形成する画像形成ステーション110Y、110M、110C及び110Kを備えている。画像形成ステーション110Y、110M、110C及び110Kは、矢印A方向に回転する感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kを有している。
【0024】
感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの周囲には外周面に沿って順に帯電装置102Y、102M、102C及び102K、光書き込み装置100Y、100M、100C及び100K、現像装置103Y、103M、103C及び103K、1次転写チャージャー104Y、104M、104C及び104K及びクリーニング装置105Y、105M、105C及び105Kが配設されている。
【0025】
帯電装置102Y、102M、102C及び102Kは感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面を一様に帯電させる。光書き込み装置100Y、100M、100C及び100Kは、感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面を露光して静電潜像を形成する。
【0026】
現像装置103Y、103M、103C及び103KはYMCK各色のトナーを供給して静電潜像を現像し、YMCK各色のトナー像を形成する。1次転写チャージャー104Y、104M、104C及び104Kは感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kが担持するトナー像を中間転写ベルト106へ静電転写する(1次転写)。
【0027】
クリーニング装置105Y、105M、105C及び105Kは、1次転写後に感光体ドラム101Y、101M、101C及び101Kの外周面上に残留する電荷を除電すると共に残留トナーを除去する。なお、以下において、画像形成ステーション110Y、110M、110C及び110Kに共通する構成について説明する際にはYMCKの文字を省略する。
【0028】
中間転写ベルト106は、無端状のベルトであって、2次転写ローラー対107及び従動ローラー108、109に張架されており、矢印B方向に回転走行する。この回転走行に合わせて1次転写することによって、YMCK各色のトナー像が互いに重ね合わされカラートナー像が形成される。中間転写ベルト106はカラートナー像を担持した状態で回転走行することによって、カラートナー像を2次転写ローラー対107の2次転写ニップまで搬送する。
【0029】
2次転写ローラー対107を構成する2つのローラーは互いに圧接されることによって2次転写ニップを形成する。これらのローラー間には2次転写電圧が印加されている。中間転写ベルト106によるカラートナー像の搬送にタイミングを合わせて給紙トレイ120から記録シートSが供給されると、2次転写ニップにおいてカラートナー像が記録シートSに静電転写される(2次転写)。
【0030】
記録シートSは、カラートナー像を担持した状態で定着装置130まで搬送され、カラートナー像を熱定着された後、排紙トレイ140上へ排出される。インラインセンサー160は、多数の微小な受光素子を一列に配列した撮像センサーであって、定着装置130から排出口161に至る記録シートSの搬送経路上に配設されており、記録シートSに定着されたトナー像を撮像する。
【0031】
画像形成装置1は、更に制御部150を備えている。制御部150は、PC(Personal Computer)等の外部装置から印刷ジョブを受け付けると、画像形成装置1の動作を制御して画像形成を実行させる。
(1-2)光書き込み装置100の構成
次に、光書き込み装置100の構成について説明する。
【0032】
図2(a)に示すように、光書き込み装置100は、発光基板200とマイクロレンズアレイ201とを保持部材202で保持する構成になっており、発光基板200の出射光Lをマイクロレンズアレイ201によって感光体ドラム101の外周面上に集光する。なお、光書き込み装置100と画像形成装置1の他の装置とを接続するためのケーブル等については図示を省略した。
【0033】
発光基板200は、
図2(b)に示すように、ガラス基板210、封止板211及びドライバーIC(Integrated Circuit)212等を備えている。ガラス基板210上にはTFT(Thin Film Transistor)回路214が形成されており、15,000個の発光素子(図示省略)が主走査方向に沿って21.2μmピッチ(1200dpi)で対応するマイクロレンズ毎に千鳥配列されている。
【0034】
また、ガラス基板210の発光素子が配設された基板面は封止領域となっており、スペーサー枠体213を挟んで封止板211が取着されている。これによって、封止領域が、外気に触れないように乾燥窒素等を封入した状態で、封止される。なお、吸湿のため、封止領域内に吸湿剤を併せて封入しても良い。なお、封止板211は、例えば、封止ガラスであっても良いし、ガラス以外の材料からなっていても良い。
【0035】
ガラス基板210の封止領域外にはドライバーIC212が実装されている。制御部150のASIC(Application Specific Integrated Circuit)220はフレキシブルワイヤー221を経由してドライバーIC212にデジタル輝度信号を入力する。ドライバーIC212はデジタル輝度信号をアナログ輝度信号(以下、単に「輝度信号」という。)に変換して発光素子毎の駆動回路に入力する。駆動回路は輝度信号に応じて発光素子の駆動電流を生成する。なお、本実施の形態において、輝度信号は電圧信号である。
(1-3)TFT回路214
次に、TFT回路214の構成について説明する。
【0036】
図3(a)に示すように、TFT回路214においては、15,000個の発光素子320が100個ずつ、150個の発光ブロック302に組分けられている。本実施の形態において、発光素子320がOLED(Organic Light Emitting Diode)である場合を例にとって説明するが、発光素子320は半導体LED(Light Emitting Diode)であってもよい。
【0037】
ドライバーIC212には150個の電流DAC(Digital to Analogue Converter)300が内蔵されている。電流DAC300はデジタル制御可能な可変電流源であって、それぞれ発光ブロック302と1対1に対応している。発光ブロック302は主走査方向に配列されている。マイクロレンズアレイ201を構成するマイクロレンズと発光ブロック302とは1対1に対応しており、1つの発光ブロック302に含まれる100個の発光素子320の出射光は1つのマイクロレンズによって感光体ドラム101の外周面上に集光される。
【0038】
電流DAC300から発光ブロック302に向かう各回路上には選択回路301が配設されている。更に、ドライバーIC212から選択回路301へ向かう回路上にはリセット回路303が接続されている。各電流DAC300は、配下の100個の発光素子320に対して、所謂ローリング駆動によって順次、輝度信号を出力する。1個の電流DAC300は、1対1に対応する発光ブロック302に含まれる100個の発光素子320によって時間共有されている。
【0039】
図3(b)に示すように、発光ブロック302は100個の発光画素回路からなっており、各発光画素回路は、キャパシター321、駆動TFT322及び発光素子320を1つずつ有している。また、選択回路301はシフトレジスター311と100個の選択TFT312とを備えており、リセット回路303は、リセットTFT340を備えている。
【0040】
シフトレジスター311は、100個の選択TFT312それぞれのゲート端子に接続されており、選択TFT312を順次オンする。選択TFT312のソース端子は、書き込み配線330を介して、電流DAC300に接続されており、ドレイン端子はキャパシター321の第1の端子並びに駆動TFT322のゲート端子に接続されている。
【0041】
シフトレジスター311が選択TFT312をオンすると、電流DAC300の出力電流がキャパシター321の第1の端子へ流れて、キャパシター321に電荷が蓄積される。キャパシター321に蓄積された電荷は、リセット回路303によってリセットされるまで保持される。
【0042】
キャパシター321の第1の端子は、駆動TFT322のゲート端子にも接続されており、キャパシター321の第2の端子は駆動TFT322のソース端子並びに電源配線331に接続されている。駆動TFT322のドレイン端子には発光素子320のアノード端子が接続されており、発光素子320のカソード端子は接地配線332に接続されている。接地配線332は接地端子GNDに接続されており、電源配線331は定電圧源Vpwrに接続されている。
【0043】
定電圧源Vpwrは、発光素子320に供給される駆動電流の供給源となっており、駆動TFT322は、キャパシター321の第1、第2の端子間に保持される輝度信号(電圧信号)をゲート-ソース電圧Vgsとして印加されることによって、輝度信号に応じた電流量の駆動電流を発光素子320に供給する。
【0044】
例えば、キャパシター321にHに相当する輝度信号が書き込まれると、駆動TFT322がオンして、発光素子320が発光する。また、キャパシター321にLに相当する輝度信号が書き込まれると、駆動TFT322はオフして、発光素子320は発光しない。キャパシター321に書き込まれた輝度信号は、次の輝度信号が書き込まれるか、またはリセットTFT340がオンされるまで保持される。
【0045】
リセットTFT340をオンすると電流DAC300からキャパシター321に至る配線がリセット電位にリセットされる。リセット電位は、Vdd電位であっても接地電位であってもよく、適切な電位を選択すればよい。また、本実施の形態においては、リセット状態で発光素子320が発光しない場合について説明するが、リセット状態で発光素子320が発光する構成としても良い。
【0046】
なお、本実施の形態においては、駆動TFT322がpチャンネルである場合を例にとって説明しているが、nチャンネルの駆動TFT322を用いても良いことは言うまでも無い。
【0047】
また、本実施の形態においては、リセット回路303をドライバーIC212とは別途設けて、ドライバーIC212の制御下におく構成としたが、これに代えて、リセット回路303をドライバーIC212に内蔵してもよい。また、リセット時と書込時で電流DACが出力する電流の極性を変えることによってリセット回路303の機能を実現してもよい。また、リセットTFT340に代えて、TFT以外のスイッチング素子を用いても良い。
(1-4)ASIC220
次に、ASIC220について説明する。
【0048】
図4に示すように、ASIC220は、駆動電流補正部401とドットカウント部402とを備えており、ドットカウント部402は各発光素子320に対応する15,000個のドットカウンター403を有している。ドットカウンター403は、対応する発光素子320が1回発光するたびに所定のカウント値が加算される。
【0049】
駆動電流補正部401は、個々の発光素子320についてドットカウンター403を参照し、カウンター値がドットカウント閾値に達するたびに駆動電流量を補正する。駆動電流量の補正に際して、駆動電流量補正部401は、発光素子320毎の駆動電流量、発光効率、発光光量及び劣化度を参照する。また、温度センサーを用いて画像形成装置1の機内温度を測定し、機内温度ごとに予め記憶している温度補正係数を用いて、駆動電流量を補正してもよい。
(1-5)マイクロレンズアレイ201
次に、マイクロレンズアレイ201の構成について説明する。
【0050】
本実施の形態において、マイクロレンズアレイ201は保持部材202よりも線膨張係数の大きな材料からなっており、環境温度が上昇または下降すると、マイクロレンズアレイ201と保持部材202との間で線膨張差が発生する。マイクロレンズアレイ201と保持部材202とは主走査方向において長尺になっているので、線膨張差も主走査方向において特に大きくなる。
【0051】
一方、副走査方向においては、マイクロレンズアレイ201よりも保持部材202の方が肉厚になっており剛性が高く変形し難い。このため、保持部材202よりもマイクロレンズアレイ201の方が、線膨張差の発生によって変形し易くなっている。
【0052】
図2(a)に示すように、マイクロレンズアレイ201の副走査方向における光源基板200側は保持部材202に固定されているので熱膨張が抑制されるのに対して、感光体ドラム101側は保持部材に固定されていないので熱膨張が抑制されない。このため、マイクロレンズアレイ201自体にも副走査方向における光源基板200側と感光体ドラム101側とで線膨張差が発生して、感光体ドラム101側へ湾出するように歪むことになる。
【0053】
図5(a)に示すように、マイクロレンズアレイ201は所謂テレセントリック光学系になっており、発光基板200に近い方から順にG1レンズ510、絞り520及びG2レンズ530が配設されている。G1レンズ510及びG2レンズ530は樹脂材料またはガラス材料からなる透明な部材である。
【0054】
G1レンズ510は平板状部材512の両主面に平凸レンズを固着したものであり、G2レンズ530は平板状部材532の発光基板200側の主面に平凸レンズを固着したものである。平凸レンズは球面状であってもよいし、非球面状であってもよい。
【0055】
図5(b)に示すように、G1レンズ510においては、150個のマイクロレンズ511が3行×50列の千鳥状に配列されている。各マイクロレンズ511は、2枚の平凸レンズを組み合わせることによって両凸レンズとして機能し、光軸方向から見て重なる位置にある100個の発光素子320からの出射光を屈折させる。
【0056】
G2レンズ530においても、G1レンズ510と同様に、150個のマイクロレンズ531が3行×50列の千鳥状に配列されており、各マイクロレンズ531は光軸方向から見て重なる位置にある100個の発光素子320からの出射光を屈折させる。ただし、G2レンズ530を構成するマイクロレンズ531は平凸レンズである。
【0057】
G1レンズ510は主走査方向におけるマイクロレンズ511が設けられている箇所が肉厚になっており、マイクロレンズ511が設けられていない箇所は相対的に肉薄になっている。このため、マイクロレンズ511が設けられている箇所よりも設けられていない箇所の方が、剛性が低く変形し易い。
【0058】
G2レンズ530についてもG1レンズ510と同様に、主走査方向におけるマイクロレンズ531が設けられている箇所が肉厚になっており、マイクロレンズ531が設けられていない箇所は相対的に肉薄になっている。このため、マイクロレンズ531が設けられている箇所よりも設けられていない箇所の方が、剛性が低く変形し易い。
【0059】
図5(c)に示すように、絞り520は、樹脂や金属などの遮光性を有する材料からなる平板状部材であって、各150個のマイクロレンズ511、531に1対1に対応する150個の貫通孔521が設けられている。発光素子320の出射光は、G1レンズ510のマイクロレンズ511を通過した後、絞り520によって貫通孔521に入射した部分のみがG2レンズ530のマイクロレンズ531へ進み、他の部分は遮光される。
【0060】
マイクロレンズアレイ201並びに発光基板200は、塵埃等が発光素子320の出射光を遮らないようにするために、不図示のカバーによって覆われている。
(1-6)発光基板200
次に、発光基板200の構成について説明する。
【0061】
図6に示すように、発光基板200のTFT回路214においては、光軸方向から見てマイクロレンズアレイ201の個々のマイクロレンズに対応する円形領域601内に、100個の発光素子320からなる発光素子群600が配設されている。発光素子群600は、発光ブロック302と1対1に対応しており、100個の発光素子320が10行×10列の千鳥状に配列されている。
【0062】
また、100個の発光素子320は、主走査方向において21.2μm間隔で配列されているので、円形領域601の直径は300μm以上必要であり、マイクロレンズも同様である。主走査方向において隣り合う発光素子群600どうしは、一方の発光素子群600の主走査方向における最上流に位置する発光素子320と、他方の発光素子群600の主走査方向における最下流に位置する発光素子320との間隔もまた21.2μmになっている。
(1-7)制御部150の構成
次に、制御部150の構成について説明する。
【0063】
図7に示すように、制御部150は、CPU(Central Processing Unit)701、ROM(Read Only Memory)702、RAM(Random Access Memory)703等を備えており、画像形成装置1に電源が投入されると、CPU701はROMからブートプログラムを読み出して起動し、RAM703を作業用記憶領域として、HDD(Hard Disk Drive)704から読み出したOS(Operating System)や制御プログラムを実行する。
【0064】
また、制御部150は、タイマー705を用いて画像形成装置1のさまざまな動作タイミングを制御したり、センサーによる検出タイミングを参照したりする。NIC(Network Interface Card)706は、LAN(Local Area Network)等の通信網を経由してPC(Personal Computer)等の外部装置と通信するために用いられる。制御部150は、外部装置から印刷ジョブを受け付けると画像形成装置1の各部を制御して印刷ジョブに応じた画像形成処理を実行する。
【0065】
この場合において、制御部150は、感光体ドラム駆動モーター711を制御して、感光体ドラム101を回転駆動しながら、感光体ドラム101の外周面を帯電装置102によって一様に帯電させ、光書き込み装置100によって露光し、現像装置103によって現像する。なお、制御部150はASIC220を内蔵しており、ASIC220を介して光書き込み装置100の動作を制御する。
【0066】
制御部150は、電流DAC300が出力する輝度信号値を指定することによって、発光素子320ごとの発光量を制御することができる。輝度信号値もまたASIC220を介して光書き込み装置100に指示される。このため、制御部150は発光素子320ごとに電流DAC300が出力すべき輝度信号値をHDD704に記憶している。
【0067】
更に、制御部150は、感光体ドラム101の回転駆動に合わせて、2次転写ローラー対駆動モーター712を制御し、2次転写ローラー対107を回転駆動する。これによって、中間転写ベルト106が回転走行する。制御部150は1次転写チャージャー104に1次転写電圧を印加して、感光体ドラム101の外周面上から中間転写ベルト106の外周面上へトナー像を静電転写する。
【0068】
制御部150は、定着ローラー駆動モーター713を制御して、定着装置130の定着ローラー131を回転駆動しながら、定着ヒーター132を昇温させることによって、記録シートSにカラートナー像を熱定着する。
【0069】
制御部150は、インラインセンサー160にて記録シートSの先頭を検出すると、記録シートに熱定着されたカラートナー像を読み取る。これによって、デジタル画像データが生成され、HDD704に記録される。デジタル画像データは、感光体ドラム101の外周面上における発光素子群600ごとの結像範囲の主走査方向における位置情報を含んでいる。
【0070】
図8は、制御部150の機能構成を表すブロック図である。
図8に示すように、制御部150は、テスト画像データ記憶部801、テスト画像形成部802、歪み判定部803及び画像データ補正部804を備えている。テスト画像データ記憶部801は、HDD704内に設けられており、マイクロレンズアレイ201の歪みを検出するためのテスト画像データを記憶している。本実施の形態においては、テスト画像としては主走査方向に連続してすべての画素を印字する1ライン分の画像を用いる。
【0071】
テスト画像形成部802は、テスト画像データ記憶部601に記憶されているテスト画像データを用いて、記録シートSにテスト画像を形成する。歪み判定部803は、インラインセンサー160を用いて検出したテスト画像を参照して、マイクロレンズアレイ201の歪み状態を判定する。画像データ補正部804は、歪み判定部803の判定結果に応じて画像データを補正する。
(1-8)マイクロレンズアレイ201の歪み検出動作
次に、制御部150によるマイクロレンズアレイ201の歪み検出動作について説明する。
【0072】
図9に示すように、制御部150は、HDD704からテスト画像データを読み出すと(S901)、記録シートSにテスト画像を形成し(S902)、インラインセンサー160を用いてテスト画像を検出する(S903)。
【0073】
マイクロレンズアレイ201に歪みがない場合には、
図10(a)に示すように、感光体ドラム101の外周面上において発光素子320毎の露光スポットが概ね21.2μm間隔に並ぶ。露光スポットの間隔は、同じ発光素子群600内で主走査方向に隣り合う発光素子320どうしであれ、異なる発光素子群600に属する発光素子320であって、かつ主走査方向に隣り合う発光素子320であっても概ね同じである。従って、記録シートS上で画素1000が等間隔に並ぶことになる。
【0074】
また、マイクロレンズアレイ201は、マイクロレンズ511が貼り付けられている箇所よりもマイクロレンズ511が貼り付けられていない箇所の方が肉薄であり、相対的に剛性が低くなっている。このため、マイクロレンズアレイ201に歪みが生じる際には、主に隣り合うマイクロレンズ511どうしの間でマイクロレンズ210が曲がることになる。
【0075】
すると、
図10(b)に示すように、発光素子群600ごとに露光スポットがまとまる一方、発光素子群600毎の露光スポット全体(以下、「結像範囲」という。)は発光素子群600どうしで離間してしまう。マイクロレンズアレイ201の歪みが大きいほど、マイクロレンズ511の光軸が発光素子320のビーム出射方向に対して傾斜する。
【0076】
図11(a)に示すように、マイクロレンズ511の光軸511aが傾斜すると、感光体ドラム101の外周面上で露光位置がずれる。また、
図11(b)に示すように、光軸511aの傾斜角θiが大きいほど露光位置のずれ量(光路オフセットz)が大きくなる。このため、マイクロレンズアレイ201が歪んで、マイクロレンズ511毎に光軸511aの傾斜角が異なっていると、発光素子群600どうしでの結像範囲が離間するので、静電潜像、トナー像及び記録シートS上における画素の形成位置が離間する。
【0077】
また、発光素子320のビーム出射方向に対するマイクロレンズ511の光軸511aの傾斜角θiが大きいほど、発光素子群600ごとの結像範囲が大きくなり、露光スポットのスポット径も大きくなる。
図10(b)では、発光素子群600は#i、#i+1、#i+2の順に光軸の傾斜角が大きくなっているので、この順で結像範囲Wi、Wi+1、Wi+2が大きくなっており、また、画素1000の径Hi、Hi+1、Hi+2もまたこの順で大きくなっている。
【0078】
露光スポットはスポット径が大きくなるほど単位面積当たりの露光量が低下するので、画素1000は径が大きくなるほど濃度が低下する。マイクロレンズ511の光軸511aの傾斜角θiが大きいほど発光素子群600どうしの間隔が広くなるので、発光素子群600どうしの間隔を検出して画像の階調を補正すれば、マイクロレンズアレイ201の歪みに起因する画像品質の劣化を抑制することができる。
【0079】
このため、インラインセンサー160の各受光素子の検出光量(画像濃度)を参照して、発光素子群600の間隔をすべて検出する(S904)。
図12に例示するように、受光素子毎の検出光量を主走査方向における位置の順に参照して、検出光量が所定の閾値を超えるか否かによって、発光素子群600ごとの結像範囲Wi、Wi+1等、並びに発光素子群600の間隔Ci,i+1、Ci+1,i+2等を検出することができる。
【0080】
次に、発光素子群600の間隔から画素ごとの階調低下を補正するための補正値を算出する(S905)。上述のように、マイクロレンズアレイ201は、感光体ドラム101側へ湾出するように歪むため、マイクロレンズ511の光軸511aの傾斜角θiは主走査方向における中央部において最も小さくなる。発光素子群600の間隔は光軸511aの傾斜角θiが大きいほど大きくなるため、発光素子群600の両隣の間隔Cが最も小さい発光素子群600の位置(以下、「基準位置」という。)から離れるほど、光軸511aの傾斜角θiが大きくなり(
図13)、発光素子群600どうしの間隔Cが大きくなる。
【0081】
また、隣り合うマイクロレンズ511の光軸511aどうしがなす角度が大きいほど、発光素子群600どうしの間隔Cが大きくなるので、発光素子のビーム出射方向に対する光軸511aの傾斜角θiは基準位置から起算した発光素子群600どうしの間隔Cの合計に比例する。また、発光素子のビーム出射方向に対する光軸511aの傾斜角θiが大きいほど、感光体ドラム101の外周面上での露光スポット径が大きくなって暗くなる。
【0082】
このため、発光素子群600ごとに基準位置から起算した間隔Cの合計値に応じて露光量が増加し、画素の濃度が高くなるように階調値を補正すれば、マイクロレンズアレイ201の歪みに起因する濃度低下を抑制することができる。本実施の形態においては、発光素子群600ごとに、
図14(a)に例示する光量補正値算出用データを用いて、間隔Cの合計値Sumから光量補正値Hを算出する。光量補正値算出用データDは合計値Sumが0のときに1となり、合計値Sumが大きいほど光量算出用データDも大きくなる。
【0083】
また、光量補正値算出用データにおいて間隔Cに一致する間隔値がない場合には、最も近い間隔値Ci<C<Ci+1を用いて、線形補間によって補正値Hを次式のように算出してもよい。
【0084】
H = {Di×(Ci+1-C)+Di+1×(C-Ci)}÷(Ci+1-Ci) …(1)
その後、発光素子群600ごとに算出した光量補正値Hを
図14(b)に例示するような光量補正値表に記憶して(S906)、処理を終了する。光量補正値表は、例えば、HDD704上に保存される。
(1-9)階調補正
マイクロレンズアレイ201の歪みに起因する階調低下を補正する方法として、画像データを補正する方法と、発光素子320の発光量(電流DAC300が出力する輝度信号値)を増加させる方法との2つについて説明する。
(1-9-1)画像データの補正処理
図15に示すように、画像データの主走査ライン毎にステップS1501からステップS1508までの処理を繰り返す。更に、1本の主走査ラインにおいては、画素ごとにステップS1502からステップS1507までの処理を繰り返す。まず、当該画素がどの発光素子群600に対応するかを特定する(S1503)。
【0085】
上述のように、本実施の形態においては、発光ブロック302に1対1に対応して150個の発光素子群600があるので、1ライン当たりの画素数をNhとすると、1個の発光素子群600に対応する画素数は(Nh/150)個である。1本の主走査ラインにおいて、最上流の画素を1番として順にNh番まで各画素に画素番号npを割り当てると、当該画素に対応する発光素子群600の番号Ngは
Ng = [np/Nh/150]+1 …(2)
となる。ただし、[・]はガウス記号であって、カッコ内の数値の整数部分を表している。
【0086】
次に、補正値表から発光素子群600の番号Ngに対応する補正値Hを読み出し(S1504)、当該画素の階調値に乗算して補正し(S1505)、補正後の階調値を記憶する(S1506)。
【0087】
このようにすれば、マイクロレンズアレイ201が歪んでマイクロレンズ511の光軸511aが傾斜することに起因する濃度低下を抑制することができる。特に、画像の階調をドットパターンで表現する場合には、ドットパターンに変換する前の画像データにおいて階調値を補正すれば、濃度低下を抑制することができる。
(1-9-2)光量補正
上記のように画像データを補正するのに代えて、発光素子320毎の発光量を補正してもよい。
【0088】
具体的には、
図16に示すように、各発光素子320についてステップS1601からステップS160までの処理を繰り返す。発光素子320には主走査方向における上流側から順に1から15,000までの番号が付与されており、上流側から100個ずつ順に1から150番目までの発光ブロック302及び発光素子群600に対応している。番号Neの発光素子320に対応する発光素子群600の番号は、
Ng = [Ne/100]+1 …(3)
のように特定される(S1602)。
【0089】
次に、発光素子群600の番号Ngに対応する光量補正値を光量補正値表から読み出すとともに(S1603)、当該発光素子320に対して指定されている輝度信号値をHDD704から読み出し(S1604)、これらを乗算することによって補正後の輝度信号値を算出する(S1605)。その後、補正後の輝度信号値をHDD704に記憶する(S1606)。
【0090】
このようにすれば、マイクロレンズ511の光軸511aの傾斜による濃度低下を、発光素子320の発光量を増加させることによって抑制することができる。また、一度、輝度信号値を補正すれば、画像データごとに補正処理を行う必要がないので、補正処理負荷を低減することができる。更に、画像データの補正ではすべての主走査ラインについて補正しなければならないのに対して、1ライン分の発光素子の発光量を補正するだけで画像濃度の低下を抑制することができる。
[2]第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る画像形成装置1は、上記第1の実施の形態に係る画像形成装置1と概ね共通の構成を備える一方、画像の濃度低下を抑制する方法において相違している。以下、主として相違点に着目して説明する。なお、本明細書においては、実施の形態どうしで共通する部材については共通の符号が付与されている。
(2-1)発光ブロック302の構成
まず、本実施の形態に係る発光ブロック302の構成について説明する。
【0091】
図17に示すように、本実施の形態に係る発光ブロック302は、駆動TFT322から発光素子320に至る各回路上にスイッチ1701が配設されている。ドライバーIC212は制御配線1702を経由してスイッチ1701に制御信号を入力することによって、スイッチ1701をオンオフ制御する。このような構成を備えれば、発光素子320の発光時間の長さを制御することができる。
【0092】
発光素子320を点灯させている間、感光体ドラム101は回転し続けるので、発光時間の長さは副走査方向におけるパルス幅(露光スポットの長さ)に比例する。
(2-2)発光時間の決定
本実施の形態に係る制御部150は、上記第1の実施の形態と同様にマイクロレンズアレイ511の歪みを検出し、検出した歪みに応じて発光素子320毎の発光時間を決定する。
図18は、発光時間を決定する処理を表したフローチャートであって、ステップS1801からステップS1804までは
図9におけるステップS901からステップS904までと同様である。
【0093】
発光素子群600の間隔を検出したら、発光ブロック302ごとに発光時間を算出する。マイクロレンズ511の光軸511aの傾斜角θiが大きいほど、露光スポット径が大きくなって、単位面積当たりの露光量が減少するので、この露光量の減少を補償するために、傾斜角θiが大きいほど発光時間が長くなるように、発光時間を制御する。
【0094】
図19(a)は、発光ブロック302毎の発光時間を算出するための発光時間算出データを例示する表である。本実施の形態においては、基準位置からの発光素子群600の間隔の合計から、発光時間算出データを用いた線形補間によって、発光ブロック302毎の発光時間を算出する(S1805)。発光時間を算出したら、
図19(b)に例示するような、発光時間表に発光時間を保存して(S1806)、処理を終了する。
(2-3)発光時間の制御
制御部150は、画像形成時には、発光時間表から発光ブロック302毎の発光時間を読み出し、ASIC220を介して光書き込み装置100に発光ブロック302毎に発光素子320の発光時間を指示する。光書き込み装置100は、ドライバーIC212を用いて、発光素子320毎に発光時間を制御する。ここで同じ発光ブロック302に属する発光素子320の発光時間は同じである。
【0095】
感光体ドラム101の露光量は露光強度と露光時間の積に比例するので、マイクロレンズ511の光軸511aの傾斜角θiが大きいほど、発光素子320の発光時間を長くすれば、光軸511aの傾斜角θiの大小に関わらず、感光体ドラム101の露光量を揃えることができる。従って、画像の濃度むらを抑制することができる。
[3]第3の実施の形態
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態に係る画像形成装置1は、上記第1の実施の形態に係る画像形成装置1と概ね共通の構成を備える一方、マイクロレンズアレイ201の歪みを検出する方法において相違している。以下、主として相違点に着目して説明する。
【0096】
インラインセンサー160で発光素子群600どうしの結像範囲の間隔を検出する場合、誤差の大きさは結像範囲の間隔の広さに無関係であるため、結像範囲の間隔が広くなるほど、結像範囲の間隔に対する誤差の割合が小さくなる。従って、結像範囲の間隔が広いほど結像範囲の間隔の検出精度が高くなる。
【0097】
マイクロレンズ511の光軸511aの傾斜角θiは、基準位置に近いほど小さく、基準位置から離れるほど大きくなるので、結像範囲の間隔は、基準位置に近いほど狭く、基準位置から離れるほど広くなる。
図20に示すように、基準位置は主走査方向における中央部である場合には、主走査方向における端部で結像範囲の間隔が最も広くなる。従って、主走査方向における端部で間隔Wmaxを検出すれば、結像範囲の間隔の検出精度を高めることができる。
【0098】
端部以外の間隔については、端部の間隔Wmaxから推定する。例えば、
図21に例示するように、あらかじめWmax0からWmaxNまでの端部の間隔Wmaxごとに光量補正値を記憶した光量補正値表を用意しておき、実測した端部の間隔Wmaxに応じて光量補正値を選択してもよい。また、実測した端部の間隔Wmaxに一致する値がない場合には、直近の2つの値を用いて光量補正値を線形補間によって求めてもよい。
【0099】
端部の間隔Wmaxを実測する際に、制御部150は、
図22に示すように、まず、テスト画像データをテスト画像データ記憶部601から読み出す(S2201)。
【0100】
主走査方向における一方の端部の間隔Wmaxのみを測定する場合には、テスト画像データは当該端部の発光素子群600とこれに隣接する発光素子群600を点灯させる画像データである。また、両端部の間隔Wmaxを測定して、実測値の平均を用いる場合には、テスト画像データは両端部の発光素子群600とこれらに隣接する発光素子群600を点灯させる画像データである。
【0101】
次に、制御部150は、読み出した画像データを用いてテスト画像を形成し(S2202)、インラインセンサー160を用いてテスト画像を検出する(S2203)。制御部150は、インラインセンサー160が検出したテスト画像を参照して、間隔Wmaxを算出し(S2204)、算出値に対応する光量補正値を光量補正値表から読み出し、発光素子群600毎に輝度信号値を補正して(S2205)、補正した輝度信号値をHDD704に保存する(S2206)。
【0102】
画像形成を実行する際には、ステップS2206で保存した輝度信号値をHDD704から読み出して、ASIC220を介して光書き込み装置100に補正後の輝度信号値を入力する。
【0103】
このようにすれば、特に、基準位置に近い発光素子群600について結像範囲の間隔の検出誤差に起因する輝度信号値の補正後差を低減することができるので、画質の向上を図ることができる。
[4]変形例
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
(4-1)上記実施の形態においては、主走査方向に隣り合う発光素子群どうしで結像範囲の間隔を検出する場合について説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0104】
例えば、
図23(a)に例示するように、発光素子群600が千鳥配列されているときには、
図23(b)に例示するように、副走査方向において同じ位置にある発光素子群600のうち、主走査方向に隣り合う発光素子群600どうしで結像範囲の間隔Ci,i+3、Ci+1,i+4、Ci+2,i+5等を検出してもよい。このようにすれば、熱膨張等によってマイクロレンズアレイ201が副走査方向についても歪んでいる場合であっても、主走査方向における結像範囲の間隔を精度よく検出することができる。
【0105】
また、副走査方向についてのマイクロレンズアレイ201の歪みによる濃度変化も補正したい場合には、千鳥配列されたマイクロレンズのうち、副走査方向における両端に配置されている発光素子群600どうしで副走査方向における結像範囲の間隔Cを検出してもよい(
図23(b))。このようにすれば、副走査方向に関するマイクロレンズアレイ201の歪みに起因する濃度変化も補正することができる。特に、副走査方向に関するマイクロレンズアレイ201の歪み量が主走査方向に沿って変化する場合に有効である。
(4-2)上記実施の形態においては、マイクロレンズアレイ201が保持部材202よりも線膨張係数の大きな材料からなっており、環境温度の上昇に伴ってマイクロレンズアレイ201の主走査方向における中央部が感光体ドラム101側へ湾出する場合(
図20)を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0106】
マイクロレンズアレイ201が保持部材202よりも線膨張係数の小さな材料からなっている場合には、環境温度の上昇に伴ってマイクロレンズアレイ201の主走査方向における中央部が発光基板200側へ湾出し、上記実施の形態とは逆向きにマイクロレンズの光軸511aが傾斜する(
図25(a))。このため、主走査方向における両端部に近付くにつれて、発光素子群600毎の結像範囲が広くなると共に中央部側へずれて、隣り合う発光素子群600どうしで結像範囲が重なり合うため(
図25(b))、結像範囲の間隔を検出することができなくなる。
【0107】
これに対して、発光素子群600に属するすべての発光素子320を発光させる代わりに、
図25(c)に示すように、主走査方向における各発光素子群600の中央の発光素子320のみを発光させれば、結像範囲が狭くなるので、結像範囲の間隔を検出することができる。このようにして検出される結像範囲の間隔は、すべての発光素子320を発光させたときの結像範囲の間隔とは異なるものの、マイクロレンズ201の傾斜角θiと相関関係にあるので、画像濃度を補正するための指標として用いることができる。
【0108】
なお、主走査方向における各発光素子群600の中央の発光素子320のみに限らず、発光素子群600に属するすべての発光素子320を発光させる代わりに特定の発光素子320のみを発光させて、結像範囲が狭くすれば、結像範囲の間隔を検出することができる。発光させる特定の発光素子320は、発光素子群600どうしで互いに発光素子群600内での位置が同じであれば、どの発光素子320を発光させてもよい。
【0109】
この場合において、発光させる発光素子320は1つだけであってもよい。また、発光させる発光素子320が1つだけではトナー像を確実に検出するのが難しい場合には、複数の発光素子320を発光させてもよい。複数の発光素子320を発光させる場合には、主走査方向において連続する発光素子320を発光させるのが望ましい。
【0110】
このようにすれば、マイクロレンズアレイ201の歪みに起因する濃度低下を抑制することができる。
(4-3)上記実施の形態においては、マイクロレンズアレイ201が全体として湾曲することに起因する画像劣化を抑制する場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに加えて次のようにしてもよい。
【0111】
マクロレンズアレイ201を構成するマイクロレンズが樹脂材料からなっている場合には、ガラス材料からなっている場合よりも線膨張係数が大きいので、マイクロレンズそのものの線膨張による画像劣化が無視できなくなるおそれがある。
【0112】
マイクロレンズが歪むと、
図26(a)に例示するように、マイクロレンズ2601の光軸2601aに近い位置にある発光素子320による露光スポット2600はスポット径が小さく、かつマイクロレンズ2601の歪みに起因する露光スポット2600の位置ずれも小さい。一方、発光素子320が光軸2601aから離れるほど、露光スポット2600のスポット径は大きくなり、露光スポット2600の位置ずれも大きくなる。
【0113】
図26(b)に示すように、マイクロレンズ2601の歪みが大きいと、歪みが小さい場合と比較して結像範囲が2Eだけ広くなるので、結像範囲どうしの間隔が2Eだけ狭くなる。マイクロレンズアレイ201の歪みが小さい場合も結像範囲の間隔が狭くなるので、マイクロレンズ2601が歪んでいるのかマイクロレンズアレイ201が歪んでいるのかを識別することができない。
【0114】
これに対して、マイクロレンズ2601の光軸2601aに最も近い発光素子のみを点灯すれば、その露光スポットはマイクロレンズ2601の歪みの影響を受け難いので、マイクロレンズ2601の歪みの大小に関わらず結像範囲の間隔の変化を検出して、マイクロレンズアレイ201の歪みに起因する濃度低下をさらに精度よく抑制することができる。
(4-4)上記実施の形態においては、YMCK各色のトナー像を形成する光書き込み装置100毎に結像範囲の間隔を検出する場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。
【0115】
YMCK各色のトナー像を形成する4つの光書き込み装置100のうちでマイクロレンズアレイ201の歪み方が類似している光書き込み装置100がある場合には、そのうちの1つの光書き込み装置100についてのみ結像範囲の間隔を検出して、補正値を決定し、他の光書き込み装置100については当該補正値を利用して濃度低下を抑制してもよい。
【0116】
このようにすれば、濃度低下を抑制するために必要になる処理負荷やメモリ容量を低減することができるので、処理の高速化や部品コストの低減を図ることができる。
(4-5)上記第1の実施の形態においては、主走査方向に隣り合う発光素子群600の組み合わせすべてについて結像範囲の間隔を検出する場合について説明し、また、上記第3の実施の形態においては、主走査方向における端部の発光素子群600について結像範囲の間隔Wmaxを検出する場合について説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これらに代えて次のようにしてもよい。
【0117】
例えば、結像範囲の間隔を2つおきや3つおき等、上記第1の実施の形態よりも少なく、上記第3の実施の形態よりも多い個所について検出してもよい。このようにすれば、上記第1の実施の形態よりも検出箇所数が少ないので、制御部150の処理負荷を低減することができる。また、マイクロレンズアレイ201の温度分布が主走査方向に一様でない場合には、上記第3の実施の形態よりも、温度分布に即した補正を行うことができる。
(4-6)上記実施の形態においては、インラインセンサー160を用いて記録シートSに熱定着されたテスト画像を撮像する場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、これに代えて次のようにしてもよい。例えば、中間転写ベルト106の回転走行方向における2次転写ローラー対107から、2次転写ローラー対107のすぐ上流側の画像形成ステーション110(
図1では、K色のトナー像を形成する画像形成ステーション101K)までの間にラインセンサーを配設して、中間転写ベルト106上に1次転写されたトナー像を撮像させる。
【0118】
このようなラインセンサーを用いて中間転写ベルト106上に転写されたテスト画像のトナー像を撮像することによって、撮像したテスト画像データから結像範囲の間隔を検出してもよい。
(4-7)上記実施の形態においては、画像形成装置1がタンデム方式のカラープリンターである場合を例にとって説明したが、本発明がこれに限定されないのは言うまでもなく、タンデム方式以外のカラープリンターやモノクロプリンターであってもよい。また、スキャナーを備えた複写装置やファクシミリ通信機能を備えたファクシミリ装置、或いはこれらの機能を兼ね備えた複合機(MPF: Multi-Function Peripheral)に本発明を適用しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明に係る画像形成装置は、ライン光学型の光書き込み装置に搭載したマイクロレンズアレイの歪みに起因する画像品質の劣化を抑制する装置として有用である。
【符号の説明】
【0120】
1………画像形成装置
100…光書き込み装置
150…制御部
160…インラインセンサー
200…発光基板
201…マイクロレンズアレイ
202…保持部材
320…発光素子
600…発光素子群