(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/20 20160101AFI20220517BHJP
B60K 6/442 20071001ALI20220517BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B60W20/20
B60K6/442 ZHV
F02D29/02 321A
(21)【出願番号】P 2017222592
(22)【出願日】2017-11-20
【審査請求日】2020-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(74)【代理人】
【識別番号】100161746
【氏名又は名称】地代 信幸
(72)【発明者】
【氏名】弓削 勝忠
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-226238(JP,A)
【文献】特開2009-001049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/20
B60K 6/442
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車の走行にあたって、充電池の充電状況に応じて、モータ駆動による走行と、モータアシストのあるエンジン駆動による走行との可否を判断し、
モータ駆動によらないエンジン駆
動による走行との間で走行モードを切り替え得る制御装置であって、
当該ハイブリッド車の走行開始時点で短距離移動であると推測させる所定の条件を満たすか否かを判定する短距離移動推定手段を実行し、
前記条件を満たす場合、
前記充電状況が
、モータ駆動による走行を行わないように判断する閾値より下であっても、モータ駆動による走行を可と
し、
上記条件の一つが、先のイグニッションの停止から新たなイグニッションの起動までの時間が、予め定めた所定時間以下である、走行制御装置。
【請求項2】
上記条件の一つが、シフトポジションがリバースである、請求項
1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
所定の第二条件を満たしたとき、シフトポジションがリバースであっても、モータ駆動による走行から他の走行モードに切り替える、請求項
2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
上記第二条件が、速度が所定の閾値以上になったとき、又は走行距離が所定の閾値以上になったときである、請求項
3に記載の走行制御装置。
【請求項5】
上記第二条件における閾値として、前記充電状況に応じて異なる値を適用する請求項
4に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記モータ駆動による走行とする制御の後、前記電池の充電状況がモータ駆動を不可能と判断する電池限界以下になったとき、
モータ駆動によらないエンジン駆
動による走行に切り替える請求項1乃至
5のいずれかに記載の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハイブリッド車及びその走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車では、燃費をできるだけ向上させるため、最適化を目指した様々な走行制御が行われている。充電池に蓄えた電力によるモータ駆動のみで走行することが可能なハイブリッド車では、充電量(SOC)に余裕があれば始動時にエンジンを始動させることなく、電気自動車としてのEV(Electric Vehicle)走行で始動させることができる。モータ駆動によるEV走行時の滑らかな走行フィーリングは快適なドライブに繋がる。特に出だしの加速はモータが有利であるため、出来る限りEV走行を優先することが望ましい。SOCがやや不足している場合には、モータでアシストしつつエンジンによる始動を行い、SOCがさらに不足している場合はエンジンのみで始動をする。すなわち、SOCの大小に応じて、始動の条件を切り替える。余裕があればEV走行とし、余裕が少なくなればアシスト走行とし、余裕が無くなればエンジン走行とする。
【0003】
駆動に用いるモータは、回生エネルギーによって充電も行い、適宜SOCを回復させるように制御される。ただし、充電を優先させるあまり停車時にもエンジンを駆動させるのは無駄となるため、停車時にはエンジンを停止させるハイブリッド車が特許文献1で提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、走行モードを切り替えるにあたり、SOCの閾値のみで判断すると、十分に最適とはいえないことがある。基本的にその閾値は長距離移動を行おうとする際に最適となるように設定する。ところが、長距離のEV走行やアシスト走行での長距離移動はできそうにない程度のSOCであっても、駐車後にわずかにやり直したい場合や、ごく短距離をバックしたい場合など、ごく短距離であればEV走行できる程度の容量を残していることは多い。
【0006】
そこで、この発明の課題は、ハイブリッド車の走行制御にあたり、無駄なエンジン始動をさらに減らして省エネを進めることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、
ハイブリッド車の走行にあたって、電池の充電状況に応じて、モータ駆動による走行と、モータアシストのあるエンジン駆動による走行との可否を判断し、エンジン駆動のみによる走行との間で走行モードを切り替え得る制御装置であって、
当該ハイブリッド車の走行開始時点で短距離移動であると推測させる所定の条件を満たすか否かを判定する短距離移動推定手段を実行し、
前記条件を満たす場合、
前記充電状況が、通常はモータ駆動による走行を行わないように判断する閾値より下であっても、モータ駆動による走行を可とする走行制御装置を採用した。
【0008】
ここで、上記条件の一つが、先のイグニッションの停止から新たなイグニッションの起動までの時間が、予め定めた短距離移動判定時間以下である構成を採用することができる。
【0009】
また、上記条件の一つが、シフトポジションがリバースである構成を採用することができる。この構成ではさらに、所定の第二条件を満たしたとき、シフトポジションがリバースであっても、モータ駆動による走行から他の走行モードに切り替える構成を採用することができる。上記第二条件としては、速度が所定の閾値以上になったとき、又は走行距離が所定の閾値以上になったときとする構成を採用することができる。この閾値は、前記充電状況に応じて異なる値とする構成を採用することができる。
【0010】
さらに、前記モータ駆動による走行とする制御の後、前記電池の充電状況がモータ駆動を不可能と判断する電池限界以下になったとき、エンジン駆動のみによる走行に切り替える構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明は、ハイブリッド車におけるSOCの閾値のみによる画一的な走行モードの切り替えを行う場合に比べて、短距離移動と判別できる条件下でのエンジン始動を抑制することができ、全体的な運用においてさらなる省エネを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明にかかる走行制御装置の実施形態例を備えたハイブリッド車の概念図
【
図2】走行制御装置が判断するSOCにおける閾値の関係図
【
図3】この発明にかかる走行制御装置の制御例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明は、
図1に示すようなモータ14とエンジン15とを有するハイブリッド車11の走行モードを制御する走行制御装置12に関する。モータ14はハイブリッド車11が有する一方のシャフト21(又はシャフト22)へ回転を伝達可能であり、シャフト21(又はシャフト22)から回生エネルギーを受けて発電することが可能である。なお、図示しないがハイブリッド車11は充電池を有し、モータ14により充電され、また、モータ14を駆動させる。
【0014】
この例ではシャフト21が前輪27を回転させ、シャフト22が後輪28を回転させる状況を説明する。ただし、本発明においては前輪27と後輪28と、モータ14、エンジン15との関係が逆でもよい。
【0015】
なお、モータ14とは別に、エンジン15の始動に用いるモータ17を備えていてもよい。
【0016】
この発明にかかる走行制御装置12を備えたハイブリッド車11は、モータ14による駆動(EV走行)と、エンジン15による駆動(エンジン走行)と、モータ14によるアシストを受けたエンジン15による駆動(エンジン+モータ走行)との3つの走行モードを切り替え可能である。この走行モードは、基本的にはハイブリッド車11が有する充電池の充電状況(SOC:State of Charge)に応じて切り替える。SOCに余裕があればEV走行可能であるため、エンジンを始動させる必要がない。SOCに余裕がなくなれば、モータ単独での走行ができず、エンジン+モータ走行とするか、エンジン走行とするため、エンジンを始動させる必要がある。
【0017】
上記のSOCについて
図2のように設定する。aはEV走行可能判定値であり、SOCがa以上であればEV走行を行う。これは、モータ14単独で始動できるという値ではなく、モータ14単独である程度の距離が走行可能なだけの十分な量の電力量を有していることを示す値である。bはモータ駆動アシスト可能判定値であり、SOCがb以上a未満であればモータ14によるアシストを受けたエンジン+モータ走行を行う。モータ14単独で動かそうとすると早期に電力量が尽きるが、アシストとして使う分には十分可能な程度の電力量を有していることを示す値である。SOCがb未満であれば基本的にはエンジン走行を行う。なお、当然にa>bである。
【0018】
ただし、この発明にかかる走行制御装置12は、さらにbより低い値である電池限界判定値cを設定する。すなわち、a>b>cである。この値cは、わずかの距離であればモータ14のみでエンジン15を始動させることなくハイブリッド車11を動かすことができる限界の値である。この発明にかかる走行制御装置12は、後述する条件下において、SOCがc以上b未満、又はc以上a未満の状況でもEV走行をさせる。
【0019】
この発明にかかる走行制御装置12がエンジン15,モータ14,及びエンジン15に繋がる第一クラッチ24と、モータ14に繋がる第二クラッチ25とを制御する際の振り分け例を説明する。まず、SOC≧aである場合の状況を表1に示す。列タイトルはシフトポジションであり、Pはパーキング、Rはリバース、Nはニュートラル、Dはドライブを示す。エンジン15は始動せず、エンジン15に繋がる第一クラッチ24は開いたままとする。シフトポジションがRかDのとき、モータ14を駆動させ、第二クラッチ25を閉じてシャフト22を回転させる。
【0020】
【0021】
次に、SOC<cである場合の状況を表2に示す。電池残量が残り少ないので、どのシフトポジションでもモータ14は駆動させず、第二クラッチ25は開いたままとする。準備状態から、シフトポジションがRかDのとき、エンジン15を駆動させ、第一クラッチ24を閉じてシャフト21を回転させる。
【0022】
【0023】
さらに、b≦SOC<aである場合の状況を表3に示す。エンジン15を駆動させるものの、モータ14も駆動させて、モータ14によるアシストとともにエンジンで駆動させる。ただし、後述するように、シフトポジションがRのときの限定された条件下では、エンジン15を駆動させず、第一クラッチ24を開いてもよい。
【0024】
【0025】
この発明にかかる走行制御装置12は、上記のような制御の例外的な処理として、ハイブリッド車11が走行を開始する時点で、短距離移動であると推測させる所定の条件を満たすか否かを判定する短距離移動推定手段を実行し、前記条件を満たす場合、前記SOCが、モータアシストのあるエンジン駆動を不可とする値(すなわち値bより下)であっても、モータ駆動による走行を可とするように制御する。ここで、所定の条件が複数ある場合、そのうちのいずれかの条件を満たせば短距離移動であると推定させるようにしてよい。ただし、選択的に適用される個々の条件が複合的であってもよい。これにより、例えば駐車のやり直しなどわずかの距離の移動であれば、エンジンを始動させることなく、出来る限りモータ14駆動で走行して、省エネを図ることができるようになる。
【0026】
上記短距離移動推定手段の所定の条件としては、例えば、先のイグニッションの停止から新たなイグニッションの起動までの時間が、予め定めた短距離移動判定時間α以下であるか否かによって判断することができる。駐車のやり直しをする場合、一度イグニッションを停止してから、実際の駐車の状況を確認して速やかにもう一度動かし、わずかな距離を前後してまた停止することが多い。このことから、一旦イグニッションが停止してから、次のイグニッションが始動するまでの間が短い場合には、駐車のやり直しである可能性が高いと判断できる。具体的なαの時間は運転者の経験や車種にもよるが、概ね、30秒~1分程度となることが多い。なお、αの値が大きすぎると、駐車のやり直しではなく僅かの時間停止しての買い物のような、その後に長距離移動を行うようなケースを誤認識してしまうおそれがある。
【0027】
上記短距離移動推定手段の別の条件としては、例えば、シフトポジションがリバースであるか否かによって判断することができる。基本的にリバースで長距離を移動するケースは稀であり、短距離の移動で済む場合が多いからである。
【0028】
ただし、シフトポジションがリバースであっても例外的に長距離を移動する場合はある。このため、所定の第二条件を設定しておき、この第二条件を満たしたときには、シフトポジションがリバースであっても、モータ駆動による走行から他の走行モードに切り替えるように制御するとよい。この第二条件としては、例えば、速度vが所定の閾値以上になったとき、又は走行距離が所定の閾値以上になったときが挙げられる。この第二条件となる速度vとしては、10km/h~40km/hの範囲で設定してもよい。また、設定する速度の条件をSOCに応じて変更してもよい。
【0029】
また、シフトポジションがリバースであっても例外的に長距離を移動していると判断する第二条件として、速度の代わりに走行距離に閾値を設定し、この閾値を超えたら長距離移動と判断するようにしてもよい。この閾値も適宜調整してよく、SOCに応じて条件を変更してもよい。
【0030】
さらに上記短距離移動推定手段の別の条件としては、ハイブリッド車11が有するナビゲーション装置に入力された行き先までの距離が、別途定めた短距離と判断する閾値以下であるか否かによって判断してもよい。また、ハイブリッド車11が有するナビゲーション装置だけでなく、走行制御装置12が有する通信インターフェースを介して、運転者のスマートフォン等から行き先を入力されて同様の判断を行ってもよい。
【0031】
さらにまた、上記短距離移動推定手段の別の条件としては、運転者が短距離移動であると直接に走行制御装置12に対して意志を伝達可能なスイッチなどのインターフェースを設け、そのスイッチがオンになったら短距離であると判断してもよい。
【0032】
この発明にかかる走行制御装置12は、いずれの判断によるものであっても、一旦、モータ駆動による走行(EV走行)とする制御の後、SOCがモータ駆動を不可能と判断する電池限界である値c以下になったとき、エンジン駆動に切り替えるとよい。値cはモータ駆動できる限界値であり、それよりも減少するとハイブリッド車11の他の部分の運用に問題を生じるおそれがある。
【0033】
上記のような原則的処理と例外的処理とを組み合わせた走行制御装置12による制御のフローチャート例を
図3とともに説明する。ただし、これは例であり、この発明はこのフローチャートに限定されるものではない。
【0034】
まず(S101)、イグニッションがオフになったら(S102)、走行制御装置12はこのオフになった時点からのタイマーカウントを開始する(S103)。走行制御装置12の記憶装置内に、カウントX(sec)を更新して記録し続ける。イグニッションがオンになったら(S104)、その時点でタイマーカウントを停止する(S105)。ただし、カウントの更新を停止するだけで、その時点でのX(sec)は記憶装置内に保持したままとする。
【0035】
イグニッションがオンになったこの段階で、走行制御装置12はSOCの値を取得する。SOCがc未満であれば(S106→NO)、いずれにしてもモータ14によるEV走行はできないので、エンジン15を始動し、エンジン走行を行う(S107)。走行後は(S108)、また最初の判断に戻る(S101)。なお、もう一度イグニッションがオフになった段階で(S102)、X(sec)はリセットして0からカウントを始める(S103)。又は、エンジン走行を開始した時点でX(sec)をリセットしてもよい。
【0036】
次に、S106においてSOCがc以上であった場合(S106→YES)、この発明にかかる走行制御装置12による独自の判断である短距離移動推定手段を実行する。その第一段階として、記憶装置内に保持されているX(sec)が、予め設定された短距離移動判定時間α以下であるか否かを判断する(S111)。X≦αであれば(S111→YES)、走行制御装置12はシフトポジションに拘わらずエンジン15を始動させないまま、モータ14によるEV走行を行うようにクラッチとモータ14を制御する(S112)。これは、一旦駐車した後の停め直しであると推定するものである。
【0037】
ただし、この推定が間違っている場合がある。例えば、走行開始からの移動距離が、通常運転であると判定する基準として予め定めた通常運転判定距離d以上となったら(S113→YES)、長距離移動であると判断される。このように判断できたとき、走行制御装置12はエンジン走行へと切り替える(S107)。この通常運転判定距離dも運転者の履歴や車種によるが、例えば30~50メートルを超えると通常の運転であると判断して差し支えない場合が多い。
【0038】
また、走行距離がd以上になる前であっても(S113→No)、SOCがc未満となったら(S114→NO)、モータ14による走行を続けることはできず、エンジン走行へと切り替える(S107)。これらのいずれかの条件を満たすまでは、EV走行を継続する(S115→S116→NO)。EV走行を続けられる条件の範囲で走行が終了したと判断したら(S116→YES)、上記と同様に最初の判断に戻る(S101)。なお、S116でいう走行終了とは、ハイブリッド車11の停止ではなくイグニッションのオフを条件とするとよい。
【0039】
次に、上記の短距離移動推定手段の第二段階として、タイマーカウントXが短距離移動判定時間を超えていた場合(S111→NO)、すなわち、前の走行からの時間が十分に経過している場合の判断を行う。ここで、シフトポジションがRであるか否かを判断する(S121)。Rであれば(S121→YES)短距離移動の可能性が高い。ここで、走行制御装置12は、SOCがa以上であるかを判断する(S122)。a以上であれば(S122→YES)仮に長距離移動だったとしても問題なくEV走行ができるので、EV走行させる(S123)。
【0040】
次に、SOCがa未満の場合(S122→NO)でも、シフトポジションがRであるため、短距離移動と判断でき、SOCに余裕がある範囲では出来る限りEV走行を行うようにする。この判断例として車速vによる判断を示す。SOCがb以上であれば(S124→YES)電気量にある程度余裕があるため、当初はそのままEV走行させる(S125→NO→S123)。また、SOCがb未満でも(S124→NO)c以上ではあるので、同様に当初はそのままEV走行させる(S126→NO→S123)。ただし、SOCがc未満になったら(S127→NO)エンジン走行に切り替える(S129)。走行を続けていき(S128→NO)、SOCがb以上a未満の状況で車速が30km/hを超えたら(S124→YES→S125→YES)、リバースながら長距離の本格的な移動であると判断して、エンジン走行に切り替える(S129)。なお、エンジン走行ではなくモータによるアシストのあるエンジン+モータ走行に切り替えてもよい。一方、SOCがb未満の状況で車速が15km/hを超えたら(S124→NO→S126→YES)、SOCにやや余裕がないため、早々に長距離移動として判断し、エンジン走行に切り替える(S129)。この設定される車速の違いは、SOCによって限界までの余裕が異なるため状況に合わせたものである。なお、それぞれの車速の値は運転者の履歴や車種等によって適宜変更されてよく、ここでは単に一例を挙げたのみである。
【0041】
なお、ここでは車速vを判断基準として判断を行っているが、車速vの代わりに走行距離で判断してもよい。この場合もSOCがb以上a未満の場合とb未満との場合で、エンジン走行に切り替える走行距離の判断基準となる数値を異なるように設定すると、より柔軟な対応ができて好ましい。これらの値は上記の通常運転判定距離dと共通してもよいし、異なっていても良い。
【0042】
走行制御装置12は、上記の短距離移動推定手段のどちらの段階にも該当しない場合は(S121→NO)、単純にSOCに応じた走行モードの切り替えを行う。ただし、シフトポジションがDではなくPやNの場合は(S131→NO)待機状態としてRに入る場合の判断を待つ(S121)。シフトポジションがDとなったら(S131→YES)、次のような判断を行う。SOCがa以上であればEV走行とする(S132→YES→S133)。SOCがb以上a未満であれば(S132→NO→S134→YES)、モータ14によるアシストがされたエンジン15による走行とする(S135)。SOCがb未満であれば(S134→NO)、エンジン15による走行とする(S136)。なお、S133及びS135の後、継続的にSOCの判断(S132、S134)を行う処理としてもよい。
【0043】
また、このフローチャートの制御のさらなる応用形態として、短距離移動であると推定させる他の条件を挿入し、SOCがc以上a未満の範囲であっても短距離移動と推定してEV走行させるようにしてもよい。追加条件を挿入する箇所としては例えばS131からS132の間が挙げられる。
【符号の説明】
【0044】
11 ハイブリッド車
12 走行制御装置
14 モータ(シャフト直結)
15 エンジン
17 モータ(エンジン始動)
21 シャフト(前輪の)
22 シャフト(後輪の)
24 第一クラッチ(シャフト21の)
25 第二クラッチ(シャフト22の)
27 前輪
28 後輪
a EV走行可能判定値
b モータ駆動アシスト可能判定値
c 電池限界判定値
d 通常運転判定距離
α 短距離移動判定時間