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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】極板、電極体及び蓄電素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20220517BHJP
   H01G 11/28 20130101ALI20220517BHJP
   H01G 11/68 20130101ALI20220517BHJP
   H01G 11/70 20130101ALI20220517BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20220517BHJP
【FI】
H01M4/13
H01G11/28
H01G11/68
H01G11/70
H01M10/0585
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017229556
(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公開番号】P2019102185
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】田邊 森人
(72)【発明者】
【氏名】辻田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】大杉 勇太
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-206743(JP,A)
【文献】特開2016-012484(JP,A)
【文献】特開2017-120766(JP,A)
【文献】特開2016-122646(JP,A)
【文献】特開2015-103394(JP,A)
【文献】特開2016-066454(JP,A)
【文献】特開2013-093238(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029618(WO,A1)
【文献】特開2016-072236(JP,A)
【文献】特開2018-174098(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0178753(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104409681(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13-4/1399
H01M 4/64-4/84
H01G 11/28
H01G 11/68
H01G 11/70
H01M 10/0585
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、
前記集電体に積層される中間層と、
前記中間層に積層される活物質層とを有し、
前記中間層が導電性粒子及び絶縁性粒子を含み、
前記中間層の端縁の少なくとも一部は前記活物質層が積層されておらず、
前記中間層の前記活物質層が積層されていない領域における前記絶縁性粒子の質量含有率が、前記中間層の前記活物質層が積層されている領域における前記絶縁性粒子の質量含有率よりも大きく、
前記中間層全体における前記絶縁性粒子の質量含有率が40質量%以上である
極板。
【請求項2】
前記導電性粒子が炭素材であり、前記絶縁性粒子がアルミナである
請求項1に記載の極板。
【請求項3】
前記中間層が前記絶縁性粒子の凝集を調節する凝集抑制剤をさらに含む
請求項1又は請求項2に記載の極板。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の極板と、
前記極板に対向し、前記極板と極性が異なる対向極板と、
前記極板及び前記対向極板間に介在するセパレータと
を備える電極体。
【請求項5】
請求項4に記載の電極体と、
前記電極体を収容するケースと
を備える蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極板、電極体及び蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、電気自動車等の様々な機器に、充放電可能な蓄電素子(二次電池)が使用されている。近年、これらの機器の高出力化や高性能化に伴い、より小型で電気容量が大きい(エネルギー密度が大きい)蓄電素子が求められている。
【0003】
蓄電素子としては、集電体の表面に正極活物質層が形成された正極板(正の極板)と集電体の表面に負極活物質層が形成された負極板(負の極板)とを電気絶縁性を有するセパレータを介して交互に積層して形成される電極体を備えるものが広く用いられている。このような蓄電素子で単位体積当たりの電気容量を大きくするには、セパレータを薄くすることが有効である。このため、セパレータを多孔性の樹脂フィルムによって形成した蓄電素子が実用化されている。
【0004】
樹脂フィルムによってセパレータを形成した蓄電素子では、通常の使用状態ではないが何らかの要因によって電極体の温度が上昇した場合にセパレータが熱によって収縮し、正極板と負極板とが直接接触する可能性がある。極板の集電体が対向する極板(集電体又は活物質層)に接触すると、活物質層同士が接触する場合と比べても電気抵抗が小さくなるため、非常に大きな短絡電流が流れて過度の発熱を生じるおそれがある。極板は、自身を外部端子に接続するために、通常、集電体を部分的に活物質層から突出するよう帯状に延ばして形成されるタブを有するので、このタブが温度上昇時に対向する極板に接触する可能性が高い。
【0005】
極板は、集電体と活物質層との密着性を向上するために、中間層と呼ばれる中間層が設けられる場合がある。そこで、上述のように集電体が対向する極板に直接接触することを防止するために、タブ等の集電体の活物質層が積層されていない領域にまで中間層を積層し、集電体がこの中間層を介して接触するようにして、短絡抵抗を大きくすることが提案されている(例えば特開2014-75335号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-75335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記公報に記載されるように、中間層の抵抗による短絡電流の抑制効果を大きくする場合には中間層の電気抵抗を大きくする必要があるが、中間層の電気抵抗を大きくすると集電体と活物質層との間の電気抵抗も大きくなる。このため、前記公報に記載の構成において短絡電流の抑制効果を大きくすると、中間層の電気抵抗による内部損失が大きくなり、蓄電素子のエネルギー効率が低下するおそれがある。
【0008】
このような事情に鑑みて、本発明は、対向する極板との短絡電流の抑制効果が大きい極板、電極体及び蓄電素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明の一態様に係る極板は、集電体と、前記集電体に積層される中間層と、前記中間層に積層される活物質層とを有し、前記中間層が導電性粒子及び絶縁性粒子を含み、前記中間層の端縁の少なくとも一部は前記活物質層が積層されておらず、前記中間層の前記活物質が積層されていない領域における前記絶縁性粒子の質量含有率が、前記中間層の前記活物質層が積層されている領域における前記絶縁性粒子の質量含有率よりも大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る極板は、対向する極板との短絡電流の抑制効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の蓄電素子の模式的分解斜視図である。
図2図1の蓄電素子の電極体の模式的断面図である。
図3図2の電極体の正極板の模式的平面図である。
図4図3の正極板の模式的部分拡大断面図である。
図5】本発明の一実施形態の実施例を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一態様に係る極板は、集電体と、前記集電体に積層される中間層と、前記中間層に積層される活物質層とを有し、前記中間層が導電性粒子及び絶縁性粒子を含み、前記中間層の端縁の少なくとも一部に前記活物質層が積層されておらず、前記中間層の前記活物質が積層されていない領域における前記絶縁性粒子の質量含有率が、前記中間層の前記活物質層が積層されている領域における前記絶縁性粒子の質量含有率よりも大きい。
【0013】
当該極板は、前記集電体と前記活物質層との間に積層される中間層のうち、前記活物質が積層されていない領域における前記絶縁性粒子の質量含有率が、前記中間層の前記活物質層が積層されている領域における前記絶縁性粒子の質量含有率よりも大きいことによって、前記中間層の前記活物質が積層されていない領域の電気抵抗が前記活物質層が積層されている領域の電気抵抗よりも大きい。このため、当該極板は、当該極板を用いて形成される蓄電素子の内部抵抗を大きくすることなく、極板同士の接触時の短絡抵抗を大きくして、短絡電流を効果的に抑制できる。
【0014】
当該極板において、前記導電性粒子が炭素材であり、前記絶縁性粒子がアルミナであることが好ましい。この構成によれば、塗工及び乾燥によって前記中間層を形成するために用いられる塗工液において、前記導電性粒子と前記絶縁性粒子との分散性の差異が大きくなり易いと考えられる。このため、前記中間層の端縁における前記絶縁性粒子の質量含有率を大きくすることが容易となるので、当該極板の製造が容易となる。
【0015】
当該極板において、前記中間層が前記絶縁性粒子の凝集を調節する凝集抑制剤をさらに含むことが好ましい。この構成によれば、塗工及び乾燥によって前記中間層を形成するために用いられる塗工液において、前記絶縁性粒子の分散性を適性化することができる。このため、前記中間層の端縁における前記絶縁性粒子の質量含有率を大きくすることが容易となるので、当該極板の製造が容易となる。
【0016】
本発明の別の態様に係る電極体は、前記極板と、前記極板に対向し、前記極板と極性が異なる対向極板と、前記極板及び前記対向極板間に介在するセパレータとを備える。当該電極体は、前記活物質が積層されていない領域における前記絶縁性粒子の質量含有率が大きい前記極板を備えるため、前記極板と前記対向極板との接触時の短絡電流を効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明の別の態様に係る蓄電素子は、前記電極体と、前記電極体を収容するケースとを備える。当該蓄電素子は、前記電極体を備えるため、前記極板と前記対向極板との接触時の短絡電流を効果的に抑制することができる。
【0018】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0019】
図1に、本発明の一実施形態に係る蓄電素子の構成を示す。この蓄電素子は、電極体1と、この電極体1を収容するケース2とを備える。ケース2の中には、電極体1と共に電解液が封入される。なお、電極体1は、それ自体が本発明に係る積層電極体の一実施形態である。
【0020】
電極体1は、図2に示すように、複数の正極板3と、正極板3と対向するよう交互に積層され、正極板と極性が異なる対向極板である複数の負極板4と、正極板3及び負極板4間にそれぞれ介在する複数のセパレータ5とを備える。なお、正極板3は、それ自体が本発明に係る極板の一実施形態である。
【0021】
正極板3は、図3及び図4に示すように、正極集電体6と、正極集電体6の両面に積層される中間層7と、中間層7の正極集電体6と反対側の面に積層される正極活物質層8とを有する。
【0022】
正極集電体6は、正極活物質層8が積層される平面視矩形状の活物質領域と、この活物質領域から幅の小さい帯状に延出する正極タブ9を有する。
【0023】
正極集電体6の材質としては、アルミニウム、鉄、ニッケル等の金属又はそれらの合金が用いられる。これらの中でも、導電性の高さとコストとのバランスからアルミニウム、アルミニウム合金がより好ましい。また、正極集電体6の形成形態としては、箔、蒸着膜等が挙げられ、コストの面から箔が好ましい。つまり、正極集電体6としてはアルミニウム箔が好ましい。なお、アルミニウム又はアルミニウム合金としては、JIS-H4000(2014)に規定されるA1085P、A3003P等が例示できる。
【0024】
正極集電体6の平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、正極集電体6の平均厚さの上限としては、40μmが好ましく、20μmがより好ましい。正極集電体6の平均厚さを前記下限以上とすることによって、正極集電体6に十分な強度を付与することができる。また、正極集電体6の平均厚さを前記上限以下とすることによって、電極体1のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0025】
中間層7は、正極集電体6と正極活物質層8との間に介在することにより、正極集電体6に対する正極活物質層8の接着強度を向上する。また、中間層7は、正極集電体6と正極活物質層8とを電気的に接続するために導電性を有する。
【0026】
中間層7は、通常の使用状態ではないが何らかの原因により蓄電素子が過熱状態となってセパレータ5が熱収縮した場合に、正極集電体6が負極板4に直接接触することを防止して、中間層7の電気抵抗によって短絡電流を抑制する。このため、中間層7は、正極集電体6の負極板4と対向する領域全体に積層されていることが好ましい。
【0027】
中間層7は、複数の導電性粒子及び複数の絶縁性粒子並びにこれらのバインダを含む。中間層7は、絶縁性粒子の凝集を調節する凝集抑制剤をさらに含むことが好ましい。中間層7は、例えば増粘剤、難燃剤等の添加剤をさらに含んでもよい。
【0028】
中間層7は、その端縁の少なくとも一部、特に正極タブ9に積層される部分に、正極活物質層8が積層されておらず、負極板4に対向するよう露出している。この中間層7は、正極活物質層8が積層されていない露出領域における絶縁性粒子の質量含有率が、正極活物質層8が積層されている積層領域における絶縁性粒子の質量含有率よりも大きい。
【0029】
中間層7は、バインダを溶媒に溶解したバインダ溶液に、導電性粒子及び絶縁性粒子を分散した塗工液の正極集電体6への塗工及び乾燥によって形成することができる。塗工液における絶縁性粒子の凝集性を適正化することによって、コーヒーリング効果により乾燥時に塗工領域の外縁部において絶縁性粒子の質量含有率が大きい露出領域を形成することができると考えらえる。なお、「コーヒーリング効果」とは、塗工領域の外縁における分散媒の蒸発量が大きくなることで、分散質が塗工領域外縁部に集まって凝集し、乾燥後に分散質が外縁部に集中して取り残される現象である。
【0030】
中間層7の積層領域における表面抵抗の下限としては、0.03mΩ/□が好ましく、0.05mΩ/□がより好ましい。一方、中間層7の積層領域における表面抵抗の上限としては、40mΩ/□が好ましく、20mΩ/□がより好ましい。中間層7の積層領域における表面抵抗を前記下限以上とすることによって、露出領域における表面抵抗を十分に大きくすることができる。また、中間層7の積層領域における表面抵抗を前記上限以下とすることによって、当該蓄電素子の内部抵抗による損失を十分に小さくすることができる。なお、中間層7の積層領域における表面抵抗は、MCP-TESTER LORESTA-FP(三菱油化製)を用いた四端子法で測定する。
【0031】
中間層7の露出領域における表面抵抗の下限としては、500mΩ/□が好ましく、1Ω/□がより好ましい。一方、中間層7の露出領域における表面抵抗の上限としては、200Ω/□が好ましく、100Ω/□がより好ましい。中間層7の露出領域における表面抵抗を前記下限以上とすることによって、中間層7の露出領域が負極板4と接触したときの短絡電流を十分に抑制できる。また、中間層7の露出領域における表面抵抗を前記上限以下とすることによって、中間層7の積層領域における表面抵抗を十分に小さくすることができる。なお、中間層7の露出領域における表面抵抗は、MCP-TESTER LORESTA-FP(三菱油化製)を用いた四端子法で測定する。
【0032】
中間層7の平均厚さの下限としては、0.5μmが好ましく、1μmがより好ましい。一方、中間層7の平均厚さの上限としては、20μmが好ましく、5μmがより好ましい。中間層7の平均厚さを前記下限以上とすることによって、正極活物質層8が積層されていない領域における絶縁性粒子の質量含有率を大きくすることが容易となるので、正極板3の生産性を向上することができる。また、中間層7の平均厚さを前記上限以下とすることによって、正極板3の厚さを低減して、当該蓄電素子のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0033】
中間層7に含まれる導電性粒子は、正極集電体6と正極活物質層8との間の導電性を担保する。
【0034】
中間層7の導電性粒子としては、例えば黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素材、鉄、ニッケル、銅、アルミニウム、金、銀等の金属、導電性セラミックス等が挙げられる。中でも、分散媒中における挙動を後述する絶縁性粒子と異ならせ易い点で炭素材が特に好適に用いられる。導電性粒子として用いられる炭素材としては、例えばファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、黒鉛などを挙げることができる。
【0035】
中間層7の導電性粒子の平均粒径の下限としては、0.001μmが好ましく、0.003μmがより好ましい。一方、中間層7の導電性粒子の平均粒径の上限としては、1μmが好ましく、0.5μmがより好ましい。中間層7の導電性粒子の平均粒径を前記下限以上とすることによって、中間層7を形成する塗工液中で導電性粒子を分散し易くなるので、積層領域における電気抵抗を一定にすることができる。また、中間層7の導電性粒子の平均粒径を前記上限以下とすることによって、均一な厚さの中間層7を形成することができる。なお、「平均粒径」とは、Z8827-1(2008)に準拠して顕微鏡観察画像において測定される各粒子の円相当径の平均値を意味する。
【0036】
中間層7全体における導電性粒子の含有率の下限としては、3質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。一方、中間層7全体における導電性粒子の含有率の上限としては、40質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。中間層7全体における導電性粒子の含有率を前記下限以上とすることによって、中間層7の導電性を確保することができる。また、中間層7全体における導電性粒子の含有率を前記上限以下とすることによって、中間層7の露出領域の電気抵抗を十分に大きくすることができる。
【0037】
中間層7に含まれる絶縁性粒子は、中間層7の導電性を調節し、特に中間層7の露出領域の電気抵抗を大きくすることにより、セパレータ5が収縮して正極板3と負極板4とが接触したときの短絡電流を抑制する。
【0038】
中間層7の絶縁性粒子としては、例えば酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ポリオレフィン(PE、PP、PTFE)等を挙げることができる。中でも、分散媒中における挙動を上述の絶縁性粒子と異ならせ易い点で金属酸化物が好適に用いられ、金属酸化物の中でも酸化アルミニウムが特に好適に用いられる。
【0039】
中間層7の絶縁性粒子の平均粒径の下限としては、0.01μmが好ましく、0.10μmがより好ましい。一方、中間層7の絶縁性粒子の平均粒径の上限としては、10μmが好ましく、5μmがより好ましい。中間層7の絶縁性粒子の平均粒径を前記下限以上とすることによって、中間層7の積層領域に均等に絶縁性粒子を分散させることができる。また、中間層7の絶縁性粒子の平均粒径を前記上限以下とすることによって、コーヒーリング効果によって外縁部の絶縁性粒子の質量含有量を高くして中間層7の露出領域の電気抵抗を十分に低下させることができる。また、コーヒーリング効果は粒径が小さいほど大きくなる傾向にあるため、中間層7の絶縁性粒子の平均粒径は、導電性粒子の平均粒径よりも小さいことがより好ましい。
【0040】
中間層7全体における絶縁性粒子の含有率の下限としては、40質量%が好ましく、50質量%がより好ましい。一方、中間層7全体における絶縁性粒子の含有率の上限としては、90質量%が好ましく、85質量%がより好ましい。中間層7全体における絶縁性粒子の含有率を前記下限以上とすることによって、中間層7の露出領域の電気抵抗を十分に大きくすることができる。また、中間層7全体における絶縁性粒子の含有率を前記上限以下とすることによって、導電性粒子及びバインダの含有率を確保して密着性及び積層領域における導電性を担保することができる。
【0041】
中間層7に含まれるバインダは、導電性粒子及び絶縁性粒子間を接続すると共に、中間層7の正極集電体6及び正極活物質層8に対する密着性を発現する。
【0042】
中間層7に含まれるバインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、キトサン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸等の樹脂を用いることができる。
【0043】
中間層7全体におけるバインダの含有率の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましい。一方、中間層7全体におけるバインダの含有率の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましい。中間層7全体におけるバインダの含有率を前記下限以上とすることによって、中間層7の強度を確保することができる。また、中間層7全体におけるバインダの含有率を前記上限以下とすることによって、中間層7の積層領域の導電性を得ることができる。
【0044】
中間層7に含まれ得る凝集抑制剤は、絶縁性粒子の凝集を調節する役割を有しており、コーヒーリング効果により中間層7の外縁部において絶縁性粒子の含有率の大きい領域を形成することができる。絶縁性粒子と凝集抑制剤とを予め混合して絶縁性粒子の表面に凝集抑制剤を付着させる等により凝集抑制剤の効果を大きくすることができ、比較的容易に中間層7の外縁部に絶縁性粒子の含有率の大きい領域を形成することができる。
【0045】
中間層7に含まれ得る凝集抑制剤としては、例えばアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、双性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、高分子界面活性剤等の各種界面活性剤を用いることができる。中でも、絶縁性粒子の凝集を適度に抑制できる高分子界面活性剤が特に好適に用いられる。
【0046】
中間層7全体における凝集抑制剤の含有率の下限としては、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。一方、中間層7全体における凝集抑制剤の含有率の上限としては、5質量%が好ましく、4質量%がより好ましい。上記範囲とすることで、絶縁性粒子の凝集性の適正化を図ることができる。
【0047】
中間層7を形成するための塗工液の分散媒としては、バインダを溶解できるものであればよいが、例えばN-メチル-2-ピロリドン、トルエン等の有機溶媒、水を挙げることができ、これらを単独又は複数を混合して用いることができる。
【0048】
中間層7を形成するための塗工液の固形分含有率の下限としては、10質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。一方、中間層7を形成するための塗工液の固形分含有率の上限としては、30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。中間層7を形成するための塗工液の固形分含有率を前記下限以上とすることによって、中間層7の厚さを確保して積層領域における電気抵抗を適切化することができる。また、中間層7を形成するための塗工液の固形分含有率を前記上限以下とすることによって、塗工液の乾燥時にコーヒーリングによって露出領域における絶縁性粒子の含有率を相対的に大きくすることができる。
【0049】
中間層7を形成するための塗工液の粘度の下限としては、10Pa・sが好ましく、100Pa・sがより好ましい。一方、中間層7を形成するための塗工液の粘度の上限としては、10000Pa・sが好ましく、1000Pa・sがより好ましい。中間層7を形成するための塗工液の粘度を前記下限以上とすることによって、中間層7の厚さを確保して積層領域における電気抵抗を適切化することができる。また、中間層7を形成するための塗工液の粘度を前記上限以下とすることによって、均一な塗工ひいては厚さが均一な中間層7の形成が可能となる。なお、塗工液の粘度は、B型粘度計を用いて測定した値である。詳しくは、TVB15型(東機産業製)と同等機種を用いて、No.3のローターで、12rpmの回転数で3分後の数値を粘度とする。
【0050】
中間層7を形成するための塗工液の乾燥時間(分散媒の含有率が10質量%以下になるまでの時間)の上限としては、20分が好ましく、10分がより好ましい。中間層7を形成するための塗工液の乾燥時間を前記上限以下とすることによって、正極板3の製造効率を向上することができる。
【0051】
なお、凝集抑制剤は、導電性粒子及び絶縁性粒子の両方と結合する可能性がある。このため、その含有率によっては、いずれか一方と先に混合していずれか一方の粒子の表面に優先的に結合させることによって、絶縁性粒子の凝集性を適正化することができると考えられる。
【0052】
正極活物質層8は、正極活物質を含むいわゆる正極合材から形成される。また、正極活物質層8を形成する正極合材は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤等の任意成分を含む。
【0053】
前記正極活物質としては、例えばLixMOy(Mは少なくとも一種の遷移金属を表す)で表される複合酸化物(LixCoO2、LixNiO2、LixMn2O4、LixMnO3、LixNiαCo(1-α)O2、LixNiαMnβCo(1-α-β)O2、LixNiαMn(2-α)O4等)、LiwMex(XOy)z(Meは少なくとも一種の遷移金属を表し、Xは例えばP、Si、B、V等を表す)で表されるポリアニオン化合物(LiFePO4、LiMnPO4、LiNiPO4、LiCoPO4、Li3V2(PO4)3、Li2MnSiO4、Li2CoPO4F等)が挙げられる。これらの化合物中の元素又はポリアニオンは他の元素又はアニオン種で一部が置換されていてもよい。正極活物質層8においては、これら化合物の一種を単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。また、正極活物質の結晶構造は、層状構造又はスピネル構造であることが好ましい。
【0054】
正極活物質層8における正極活物質の含有率の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。一方、正極活物質の含有率の上限としては、99質量%が好ましく、94質量%がより好ましい。正極活物質の含有率を前記下限以上とすることによって、電極体1のエネルギー密度を大きくすることができる。また、正極活物質の含有率を前記上限以下とすることによって、正極活物質層8の強度を確保することができる。
【0055】
前記導電剤としては、電池性能に悪影響を与えない導電性材料であれば特に限定されない。このような導電剤としては、天然又は人造の黒鉛、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、金属、導電性セラミックスなどが挙げられる。導電剤の形状としては、粉状、繊維状等が挙げられる。
【0056】
正極活物質層8における導電剤の含有率の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。一方、導電剤の含有率の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。導電剤の含有率を前記範囲内とすることで、電極体1ひいては当該蓄電素子のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0057】
前記バインダとしては、例えばフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等の熱可塑性樹脂、例えばエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム等のエラストマー、多糖類高分子などが挙げられる。
【0058】
正極活物質層8におけるバインダの含有率の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましい。一方、バインダの含有率の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。バインダの含有率を前記範囲内とすることで、正極活物質を安定して保持することができる。
【0059】
前記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類高分子が挙げられる。また、増粘剤がリチウムと反応する官能基を有する場合、予めメチル化等によりこの官能基を失活させておくことが好ましい。
【0060】
正極活物質層8の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、正極活物質層8の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。正極活物質層8の平均厚さを前記下限以上とすることによって、正極反応を十分に活性化することができる。また、正極活物質層8の平均厚さを前記上限以下とすることによって、電極体1ひいては当該蓄電素子のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0061】
負極板4は、導電性を有する箔状乃至シート状の負極集電体10と、この負極集電体10の表面に積層される負極活物質層11とを有する。具体的には、負極板4は、負極集電体10の表面に活物質層が積層される平面視矩形状の活物質領域と、この活物質領域から活物質領域よりも幅の小さい帯状に、正極タブ9と間隔を空けて正極タブ9と同じ方向に延出する負極タブ12とを有する。
【0062】
負極板4の負極集電体10は、上述の正極集電体6と同様の構成とすることができるが、材質としては、銅又は銅合金が好ましい。つまり、負極板4の負極集電体10としては銅箔が好ましい。銅箔としては、圧延銅箔、電解銅箔等が例示される。
【0063】
負極活物質層11は、負極活物質を含むいわゆる負極板合材から形成される。また、負極活物質層11を形成する負極板合材は、必要に応じて導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分を含む。導電剤、バインダ、増粘剤、フィラー等の任意成分は、正極活物質層8と同様のものを用いることができる。
【0064】
負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる材質が好適に用いられる。具体的な負極活物質としては、例えばリチウム、リチウム合金等の金属、金属酸化物、ポリリン酸化合物、例えば黒鉛、非晶質炭素(易黒鉛化炭素又は難黒鉛化性炭素)等の炭素材などが挙げられる。
【0065】
負極活物質層11における負極活物質の含有率の下限としては、60質量%が好ましく、80質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。一方、負極活物質の含有率の上限としては、99質量%が好ましく、98質量%がより好ましい。負極活物質の含有率を前記範囲内とすることで、電極体1ひいては当該蓄電素子のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0066】
負極活物質層11におけるバインダの含有率の下限としては、1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。一方、バインダの含有率の上限としては、20質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。バインダの含有率を前記範囲内とすることで、負極活物質を安定して保持することができる。
【0067】
負極活物質層11の平均厚さの下限としては、10μmが好ましく、20μmがより好ましい。一方、負極活物質層11の平均厚さの上限としては、200μmが好ましく、100μmがより好ましい。負極活物質層11の平均厚さを前記下限以上とすることによって、負極反応を十分に活性化することができる。また、負極活物質層11の平均厚さを前記上限以下とすることによって、電極体1ひいては当該蓄電素子のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0068】
セパレータ5は、正極板3と負極板4との間に介在して正極板3と負極板4とが直接接触することを防止すると共に、その内部に電解液が含浸して、正極板3と負極板4との間でイオンを介した電荷の受け渡しを可能にする。
【0069】
セパレータ5は、多孔質樹脂フィルムから形成することができる。また、セパレータ5は、多孔質樹脂フィルムの少なくとも一方の面(好ましくは正極板3に対向する面)に、耐酸化層又は耐熱層を有してもよく、最外層に正極板3又は負極板4に対してセパレータ5を接着する接着剤層を有してもよい。
【0070】
このセパレータ5を形成する多孔質樹脂フィルムの主成分としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、などを採用することができる。中でも、セパレータ5を形成する多孔質樹脂フィルムの主成分としては、耐電解液性及び耐久性に優れるポリエチレン及びポリプロピレンが好適に用いられる。なお、「主成分」とは、最も質量含有率が大きい成分を意味する。
【0071】
セパレータ5を形成する多孔質樹脂フィルムの平均厚さの下限としては、5μmが好ましく、10μmがより好ましい。一方、セパレータ5を形成する多孔質樹脂フィルムの平均厚さの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましい。セパレータ5を形成する多孔質樹脂フィルムの平均厚さを前記下限以上とすることによって、セパレータ5の強度を確保することができる。また、セパレータ5を形成する多孔質樹脂フィルムの平均厚さを前記上限以下とすることによって、電極体1ひいては当該蓄電素子のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0072】
セパレータ5の耐酸化層又は耐熱層は、セパレータ5を形成する多孔質樹脂フィルムが酸化して劣化することを抑制するために設けられる層であり、多数の無機粒子とこの無機粒子間を接続するバインダとを含む。
【0073】
無機粒子の主成分としては、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ベーマイトなどが挙げられる。中でも、耐酸化層又は耐熱層の無機粒子の主成分としては、アルミナ、シリカ及びチタニアが特に好ましい。
【0074】
耐酸化層又は耐熱層の無機粒子の平均粒径の下限としては、1nmが好ましく、7nmがより好ましい。一方、無機粒子の平均粒径の上限としては、5μmが好ましく、1μmがより好ましい。無機粒子の平均粒径を前記下限以上とすることによって、耐酸化層又は耐熱層中のバインダの比率を小さくして、耐酸化層又は耐熱層の耐熱性を大きくすることができる。また、無機粒子の平均粒径を前記上限以下とすることによって、均質な耐酸化層又は耐熱層を形成することができる。
【0075】
耐酸化層又は耐熱層の平均厚さの下限としては、2μmが好ましく、4μmがより好ましい。一方、耐酸化層又は耐熱層の平均厚さの上限としては、6μmが好ましく、5μmがより好ましい。耐酸化層又は耐熱層の平均厚さを前記下限以上とすることによって、耐酸化層又は耐熱層の強度を確保できる。また、耐酸化層又は耐熱層の平均厚さを前記上限以下とすることによって、電極体1ひいては当該蓄電素子のエネルギー密度を大きくすることができる。
【0076】
電解液としては、有機溶媒に支持電解液を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解液としては、リチウム塩が好適に用いられる。リチウム塩としては、特に制限はないが、例えばLiPF6、LiAsF6、LiBF4、LiSbF6、LiAlCl4、LiClO4、等が挙げられる。中でも、有機溶媒に溶け易く高い解離度を示すLiPF6、LiClO4、CF3SO3Liが特に好ましい。
【0077】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解液を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えばジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなど一種又は複数種を組み合わせて用いることができる。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いカーボネート類が特に好適に用いられる。
【0078】
ケース2は、電極体1を収容し、内部に電解液が封入される密閉容器である。
【0079】
ケース2の材質としては、電解液を封入できるシール性と、電極体1を保護できる強度とを備えるものであれば、例えば樹脂等であってもよいが、金属が好適に用いられる。換言すると、ケース2としては、例えばラミネートフィルムから形成され、可撓性を有する袋体等であってもよいが、電極体1をより確実に保護できる堅固な金属ケースを用いることが好ましい。
【0080】
ケース2は、有底四角筒状のケース本体13と、このケース本体13の開口を封止する板状の蓋体14とを備える構成とすることができる。また、蓋体14には、正極板3の正極タブ9に電気的に接続される正極外部端子15と、負極板4の負極タブ12に電気的に接続される負極外部端子16とが配設される。具体的には、正極外部端子15及び負極外部端子16は、蓋体14を貫通するよう設けられる。
【0081】
また、当該蓄電素子は、ケース2の内側で正極外部端子15及び負極外部端子16に取り付けられ、電極体1の正極タブ9及び負極タブ12が接続される正極接続部材17及び負極接続部材18をさらに備えてもよい。
【0082】
<利点>
正極板3は、中間層7の露出領域における絶縁性粒子の含有率が、積層領域における絶縁性粒子の含有率よりも大きくなっていることによって、当該蓄電素子において、通常の使用状態ではないが何らかの原因により蓄電素子が過熱状態となってセパレータ5が熱収縮した場合に、中間層7の絶縁性粒子の含有率が大きく比較的電気抵抗が大きい露出領域が正極集電体6と負極板4との間に介在して短絡電流を抑制することができる。また、異物が露出領域に付着することで、異物が極板間に侵入するのを防ぐことができるので、異物混入による短絡等を防ぐことができる。
【0083】
[その他の実施形態]
前記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、前記実施形態は、本明細書の記載及び技術常識に基づいて前記実施形態各部の構成要素の省略、置換又は追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0084】
本発明に係る極板は、負極板であってもよい。つまり、負極板も、前記実施形態に係る正極板と同様に、負極集電体と負極活物質層との間に中間層が積層され、中間層の負極活物質層が積層されていない領域における絶縁性粒子の質量含有率が、中間層の負極活物質層が積層されている領域における絶縁性粒子の質量含有率よりも大きいものであってもよい。
【0085】
前記実施形態では、タブを備えた極板であったが、タブを備えない極板であってもよい。例えば、帯状の集電体に中間層及び活物質層を塗工する際に、帯状の幅方向の端部には中間層及び活物質層を塗工していない領域(未塗工領域)を形成し、その未塗工領域で外部端子との電気的接続を確保してもよい。
【実施例
【0086】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
(実施例)
絶縁性粒子としてのアルミナとN-メチル-2-ピロリドンとを質量比50:50で混合し、凝集抑制剤としての高分子界面活性剤をアルミナの質量に対して4質量%加えて混練することで、固形分比率が約50%の予備塗工液を調製した。この予備塗工液に、アセチレンブラック(導電性粒子)及びポリフッ化ビニリデン(バインダー)を、アルミナとアセチレンブラックとポリフッ化ビニリデンの質量比が77:8:15になるように加えて混練することで本塗工液を得た。本塗工液の固形分比率が18%になるように調整した。
【0088】
この本塗工液を帯状のアルミニウム箔(集電体)にブレードを用いて塗布した後に、80℃の恒温槽で20分乾燥させることで、実施例のアルミニウム箔を得た。得られた実施例のアルミニウム箔の写真を図5に示す。中間層の中央部分は黒色であるのに対して、外縁部は白色であり、外線部においてアルミナの質量含有量が高くなっていることがわかる。
【0089】
上記実施例では、一度の中間層の塗工にて導電性の高い領域(前記絶縁性粒子の質量含有率が低い領域)と抵抗の高い領域(前記絶縁性粒子の質量含有率が高い領域)とを形成することができる。つまり、導電性の高い領域と抵抗の高い領域とを同時に形成することができ、別々に形成する態様と比較して効率良く上記2つの領域を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る極板、電極体及び蓄電素子は、電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)といった車両の電力源として特に好適に利用される。また、本発明に係る蓄電素子は、蓄電システム(大規模蓄電システム、家庭用小規模蓄電システム)、例えば太陽光、風力等の自然エネルギーと組み合わせた分散電源システム、鉄道向け電源システム、無人搬送車(AGV)向け電源システムといった産業用途にも好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 電極体
2 ケース
3 正極板(正の極板)
4 負極板(対向極板)
5 セパレータ
6 正極集電体
7 中間層
8 正極活物質層
9 正極タブ
10 負極集電体
11 負極活物質層
12 負極タブ
13 ケース本体
14 蓋体
15 正極外部端子
16 負極外部端子
17 正極接続部材
18 負極接続部材
図1
図2
図3
図4
図5