(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220517BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20220517BHJP
H01L 29/417 20060101ALI20220517BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H01L29/78 652S
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/50 M
H01L29/78 652B
H01L29/78 652C
H01L29/78 652K
H01L29/78 652N
H01L29/78 652P
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
(21)【出願番号】P 2017234452
(22)【出願日】2017-12-06
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】特許業務法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦上 泰
(72)【発明者】
【氏名】辻村 理俊
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一平
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-115223(JP,A)
【文献】特開2011-243946(JP,A)
【文献】特開2012-160706(JP,A)
【文献】特開2007-110002(JP,A)
【文献】特開2015-222743(JP,A)
【文献】特開2015-146368(JP,A)
【文献】特開2017-162993(JP,A)
【文献】特開2013-219161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01L 29/12
H01L 29/06
H01L 29/417
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のゲート構造を有し、一部の前記ゲート構造が保護膜(50)の下方に位置する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(13)と、
前記ベース領域の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1高不純物濃度領域(14)と、
前記第1高不純物濃度領域と前記ドリフト層との間に挟まれた前記ベース領域の表面を含んで形成されたゲート絶縁膜(18)と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極(17)と、を有する前記ゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース領域と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の第2高不純物濃度領域(11)と、
前記ゲート絶縁膜のうちの前記ゲート電極が配置される部分と異なる部分に形成されたコンタクトホール(18a)に埋め込まれて前記ベース領域および前記第1高不純物濃度領域と電気的に接続される第1電極(19)と、
前記第2高不純物濃度領域と電気的に接続される第2電極(21)と、
一部の前記ゲート構造上に位置する状態で配置され、前記第1電極より熱伝導率が低い材料で構成された前記保護膜と、を備え、
前記ゲート電極に所定の電圧が印加されると、前記ベース領域のうちの前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と接する部分にチャネル領域が形成され、前記第1高不純物濃度領域、前記チャネル領域および前記ドリフト層を介して前記第1電極と前記第2電極との間に電流が流れるオン状態となり、
前記保護膜の下方の領域を第1セル部(1a)、前記保護膜の下方と異なる領域を第2セル部(1b)とすると、
前記第1セル部は、オン状態である際、前記第2セル部より電流密度が小さくなる構成とされ
、前記第2セル部より前記第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされており、
前記ゲート電極は、前記ドリフト層および前記ベース領域の積層方向と交差する一方向に沿って延設されており、
前記第2セル部は、前記積層方向から視たとき、前記第1高不純物濃度領域が前記ゲート電極の両側にそれぞれ形成されており、
さらに、前記第1セル部は、前記積層方向から視たとき、前記第1高不純物濃度領域が前記ゲート電極の片側に形成されている半導体装置。
【請求項2】
前記第1セル部は、前記ゲート電極が複数備えられ、前記積層方向から視たとき、前記第1高不純物濃度領域が複数の前記ゲート電極それぞれに対して同じ側に形成されている請求項
1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記ゲート電極は、前記ドリフト層および前記ベース領域の積層方向と交差する一方向に沿って延設されており、
前記第2セル部は、前記一方向に沿って前記第1高不純物濃度領域が延設され、
前記第1セル部は、前記一方向に沿って複数の前記第1高不純物濃度領域が離れて形成されている請求項
1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
複数のゲート構造を有し、一部の前記ゲート構造が保護膜(50)の下方に位置する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(13)と、
前記ベース領域の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1高不純物濃度領域(14)と、
前記第1高不純物濃度領域と前記ドリフト層との間に挟まれた前記ベース領域の表面を含んで形成されたゲート絶縁膜(18)と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極(17)と、を有する前記ゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース領域と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の第2高不純物濃度領域(11)と、
前記ゲート絶縁膜のうちの前記ゲート電極が配置される部分と異なる部分に形成されたコンタクトホール(18a)に埋め込まれて前記ベース領域および前記第1高不純物濃度領域と電気的に接続される第1電極(19)と、
前記第2高不純物濃度領域と電気的に接続される第2電極(21)と、
一部の前記ゲート構造上に位置する状態で配置され、前記第1電極より熱伝導率が低い材料で構成された前記保護膜と、を備え、
前記ゲート電極に所定の電圧が印加されると、前記ベース領域のうちの前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と接する部分にチャネル領域が形成され、前記第1高不純物濃度領域、前記チャネル領域および前記ドリフト層を介して前記第1電極と前記第2電極との間に電流が流れるオン状態となり、
前記保護膜の下方の領域を第1セル部(1a)、前記保護膜の下方と異なる領域を第2セル部(1b)とすると、
前記第1セル部は、オン状態である際、前記第2セル部より電流密度が小さくなる構成とされ
、前記第2セル部より前記第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされており、
前記ゲート電極は、前記ドリフト層および前記ベース領域の積層方向と交差する一方向に沿って延設されており、
前記第2セル部は、前記一方向に沿って前記第1高不純物濃度領域が延設され、
さらに、前記第1セル部は、前記一方向に沿って複数の前記第1高不純物濃度領域が離れて形成されている半導体装置。
【請求項5】
前記第1セル部は、前記一方向に沿って隣合う前記第1高不純物濃度領域同士の間隔が等しくされている請求項
3または4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1セル部は、前記コンタクトホールが複数形成され、前記一方向に沿って隣合う少なくとも一部の前記第1高不純物濃度領域が異なる前記コンタクトホールから露出している請求項
3ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1セル部は、前記第2セル部側と反対側の方が前記第2セル部側より前記第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされている請求項
1ないし
6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
複数のゲート構造を有し、一部の前記ゲート構造が保護膜(50)の下方に位置する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(13)と、
前記ベース領域の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1高不純物濃度領域(14)と、
前記第1高不純物濃度領域と前記ドリフト層との間に挟まれた前記ベース領域の表面を含んで形成されたゲート絶縁膜(18)と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極(17)と、を有する前記ゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース領域と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の第2高不純物濃度領域(11)と、
前記ゲート絶縁膜のうちの前記ゲート電極が配置される部分と異なる部分に形成されたコンタクトホール(18a)に埋め込まれて前記ベース領域および前記第1高不純物濃度領域と電気的に接続される第1電極(19)と、
前記第2高不純物濃度領域と電気的に接続される第2電極(21)と、
一部の前記ゲート構造上に位置する状態で配置され、前記第1電極より熱伝導率が低い材料で構成された前記保護膜と、を備え、
前記ゲート電極に所定の電圧が印加されると、前記ベース領域のうちの前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と接する部分にチャネル領域が形成され、前記第1高不純物濃度領域、前記チャネル領域および前記ドリフト層を介して前記第1電極と前記第2電極との間に電流が流れるオン状態となり、
前記保護膜の下方の領域を第1セル部(1a)、前記保護膜の下方と異なる領域を第2セル部(1b)とすると、
前記第1セル部は、オン状態である際、前記第2セル部より電流密度が小さくなる構成とされ
、前記第2セル部より前記第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされており、
さらに、前記第1セル部は、前記第2セル部側と反対側の方が前記第2セル部側より前記第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされている半導体装置。
【請求項9】
前記第1セル部は、前記第2セル部より、前記チャネル領域が形成される絶縁ゲート構造の閾値電圧における絶対値が大きくなる構成とされている請求項1ないし8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1セル部は、前記第2セル部より前記ベース領域の不純物濃度が高くされている請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1セル部は、前記第2セル部と反対側の方が前記第2セル部側より前記ベース領域の不純物濃度が高くされている請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
複数のゲート構造を有し、一部の前記ゲート構造が保護膜(50)の下方に位置する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(13)と、
前記ベース領域の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1高不純物濃度領域(14)と、
前記第1高不純物濃度領域と前記ドリフト層との間に挟まれた前記ベース領域の表面を含んで形成されたゲート絶縁膜(18)と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極(17)と、を有する前記ゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース領域と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の第2高不純物濃度領域(11)と、
前記ゲート絶縁膜のうちの前記ゲート電極が配置される部分と異なる部分に形成されたコンタクトホール(18a)に埋め込まれて前記ベース領域および前記第1高不純物濃度領域と電気的に接続される第1電極(19)と、
前記第2高不純物濃度領域と電気的に接続される第2電極(21)と、
一部の前記ゲート構造上に位置する状態で配置され、前記第1電極より熱伝導率が低い材料で構成された前記保護膜と、を備え、
前記ゲート電極に所定の電圧が印加されると、前記ベース領域のうちの前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と接する部分にチャネル領域が形成され、前記第1高不純物濃度領域、前記チャネル領域および前記ドリフト層を介して前記第1電極と前記第2電極との間に電流が流れるオン状態となり、
前記保護膜の下方の領域を第1セル部(1a)、前記保護膜の下方と異なる領域を第2セル部(1b)とすると、
前記第1セル部は、オン状態である際、前記第2セル部より電流密度が小さくなる構成とされ
、前記第2セル部より、前記チャネル領域が形成される絶縁ゲート構造の閾値電圧における絶対値が大きくなる構成とされ、前記第2セル部より前記ベース領域の不純物濃度が高くされ、前記第2セル部と反対側の方が前記第2セル部側より前記ベース領域の不純物濃度が高くされている半導体装置。
【請求項13】
前記第1セル部は、前記第2セル部より前記ゲート絶縁膜が厚くされている請求項9
ないし12のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項14】
前記第1セル部は、前記第2セル部側と反対側の方が前記第2セル部側より前記ゲート絶縁膜が厚くされている請求項1
3に記載の半導体装置。
【請求項15】
複数のゲート構造を有し、一部の前記ゲート構造が保護膜(50)の下方に位置する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(13)と、
前記ベース領域の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1高不純物濃度領域(14)と、
前記第1高不純物濃度領域と前記ドリフト層との間に挟まれた前記ベース領域の表面を含んで形成されたゲート絶縁膜(18)と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極(17)と、を有する前記ゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース領域と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の第2高不純物濃度領域(11)と、
前記ゲート絶縁膜のうちの前記ゲート電極が配置される部分と異なる部分に形成されたコンタクトホール(18a)に埋め込まれて前記ベース領域および前記第1高不純物濃度領域と電気的に接続される第1電極(19)と、
前記第2高不純物濃度領域と電気的に接続される第2電極(21)と、
一部の前記ゲート構造上に位置する状態で配置され、前記第1電極より熱伝導率が低い材料で構成された前記保護膜と、を備え、
前記ゲート電極に所定の電圧が印加されると、前記ベース領域のうちの前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と接する部分にチャネル領域が形成され、前記第1高不純物濃度領域、前記チャネル領域および前記ドリフト層を介して前記第1電極と前記第2電極との間に電流が流れるオン状態となり、
前記保護膜の下方の領域を第1セル部(1a)、前記保護膜の下方と異なる領域を第2セル部(1b)とすると、
前記第1セル部は、オン状態である際、前記第2セル部より電流密度が小さくなる構成とされ
、前記第2セル部より、前記チャネル領域が形成される絶縁ゲート構造の閾値電圧における絶対値が大きくなる構成とされ、前記第2セル部より前記ゲート絶縁膜が厚くされ、前記第2セル部側と反対側の方が前記第2セル部側より前記ゲート絶縁膜が厚くされている半導体装置。
【請求項16】
前記ゲート電極は、前記ドリフト層および前記ベース領域の積層方向と交差する一方向に沿って延設されており、
前記第1セル部および前記第2セル部は、前記ゲート電極を複数有し、
前記第1セル部は、前記第2セル部より隣合う前記ゲート電極同士の間隔が広くされている請求項1ないし1
5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項17】
前記第1セル部は、前記第2セル部側と反対側の方が前記第2セル部側より隣合う前記ゲート電極同士の間隔が広くされている請求項1
6に記載の半導体装置。
【請求項18】
複数のゲート構造を有し、一部の前記ゲート構造が保護膜(50)の下方に位置する半導体装置であって、
第1導電型のドリフト層(12)と、
前記ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(13)と、
前記ベース領域の表層部に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1高不純物濃度領域(14)と、
前記第1高不純物濃度領域と前記ドリフト層との間に挟まれた前記ベース領域の表面を含んで形成されたゲート絶縁膜(18)と、前記ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極(17)と、を有する前記ゲート構造と、
前記ドリフト層を挟んで前記ベース領域と反対側に形成され、前記ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の第2高不純物濃度領域(11)と、
前記ゲート絶縁膜のうちの前記ゲート電極が配置される部分と異なる部分に形成されたコンタクトホール(18a)に埋め込まれて前記ベース領域および前記第1高不純物濃度領域と電気的に接続される第1電極(19)と、
前記第2高不純物濃度領域と電気的に接続される第2電極(21)と、
一部の前記ゲート構造上に位置する状態で配置され、前記第1電極より熱伝導率が低い材料で構成された前記保護膜と、を備え、
前記ゲート電極に所定の電圧が印加されると、前記ベース領域のうちの前記ゲート絶縁膜を介して前記ゲート電極と接する部分にチャネル領域が形成され、前記第1高不純物濃度領域、前記チャネル領域および前記ドリフト層を介して前記第1電極と前記第2電極との間に電流が流れるオン状態となり、
前記保護膜の下方の領域を第1セル部(1a)、前記保護膜の下方と異なる領域を第2セル部(1b)とすると、
前記第1セル部は、オン状態である際、前記第2セル部より電流密度が小さくなる構成とされて
おり、
前記ゲート電極は、前記ドリフト層および前記ベース領域の積層方向と交差する一方向に沿って延設されており、
前記第1セル部および前記第2セル部は、前記ゲート電極を複数有し、
さらに、前記第1セル部は、前記第2セル部より隣合う前記ゲート電極同士の間隔が広くされ、前記第2セル部側と反対側の方が前記第2セル部側より隣合う前記ゲート電極同士の間隔が広くされている半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のゲート構造を有し、一部のゲート構造が保護膜の下方に配置された半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セル部と、当該セル部を囲み、ガードリング等の耐圧を向上する構成が形成された外周部とを有し、セル部にゲート構造を有する半導体素子が形成された半導体装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この半導体装置では、セル部に、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略)素子が形成されている。より詳しくは、セル部は、ドリフト層と、ドリフト層の表層部に形成されたベース領域と、ベース領域の表層部に形成されたソース領域と、ドリフト層を挟んでベース領域と反対側に形成されたドレイン層とを有している。そして、セル部は、ソース領域およびベース領域を貫通するようにトレンチが形成されており、トレンチの内壁面にゲート絶縁膜が形成され、ゲート絶縁膜上にゲート電極が形成されたトレンチゲート構造を有している。なお、ゲート絶縁膜は、トレンチの内壁面以外の表面にも形成されており、ソース領域の一部も覆うように形成されている。言い換えると、ゲート絶縁膜のうちのトレンチの内壁面以外の表面に形成された部分には、ソース領域の残部を露出させるコンタクトホールが形成されている。
【0003】
そして、セル部は、MOSFET素子上に層間絶縁膜が形成され、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールおよびゲート絶縁膜に形成されたコンタクトホールを通じてソース領域およびベース領域と電気的に接続されるように第1電極が配置されている。なお、第1電極は、金属材料で構成され、層間絶縁膜に形成されたコンタクトホールおよびゲート絶縁膜に形成されたコンタクトホールを埋め込むように配置されている。このため、第1電極は、ゲート絶縁膜と接した状態となる。また、セル部は、ドレイン層と電気的に接続される第2電極が配置されている。
【0004】
このような半導体装置は、ゲート電極に所定のゲート電圧が印加されると、トレンチの側面に接するベース領域にチャネル領域が形成される。これにより、ソース領域、チャネル領域、およびドリフト層を介して第1電極と第2電極との間に電流が流れるオン状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような半導体装置は、通常、外周部上に保護膜が形成された状態で用いられる。なお、保護膜は、例えば、ポリイミド等の樹脂材料を用いて構成される。そして、このような構成では、第1電極および第2電極との間の沿面放電が発生することを抑制するため、保護膜を外周部からセル部の外縁部上まで形成することがある。このように保護膜を配置した場合には、セル部の外縁部では、保護膜の下方にトレンチゲート構造が位置する構成となる。
【0007】
この場合、半導体装置がオン状態の際には、セル部では、電流が流れることで発熱するが、保護膜は金属材料よりも熱伝導率が低いために放熱性が低く、保護膜の下方の領域では、保護膜の下方と異なる領域よりも温度が高くなり易い。この現象は、特に大電流が急激に流れる短絡状態で顕著になる。このため、保護膜の下方の領域では、第1電極の熱膨張により、当該第1電極と接するゲート絶縁膜が圧縮されて破壊される可能性がある。
【0008】
なお、このような問題は、セル部にMOSFET素子が形成されている場合のみではなく、例えば、セル部にIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor素子の略)素子が形成されている場合においても発生し得る。また、セル部にトレンチゲート構造ではなく、プレーナゲート構造が形成されている場合においても発生し得る。
【0009】
本発明は上記点に鑑み、保護膜の下方に位置するゲート絶縁膜が破壊されることを抑制できる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1では、複数のゲート構造を有し、一部のゲート構造が保護膜(50)の下方に位置する半導体装置であって、第1導電型のドリフト層(12)と、ドリフト層上に形成された第2導電型のベース領域(13)と、ベース領域の表層部に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型の第1高不純物濃度領域(14)と、第1高不純物濃度領域とドリフト層との間に挟まれたベース領域の表面を含んで形成されたゲート絶縁膜(18)と、ゲート絶縁膜上に配置されたゲート電極(17)と、を有するゲート構造と、ドリフト層を挟んでベース領域と反対側に形成され、ドリフト層よりも高不純物濃度とされた第1導電型または第2導電型の第2高不純物濃度領域(11)と、ゲート絶縁膜のうちのゲート電極が配置される部分と異なる部分に形成されたコンタクトホール(18a)に埋め込まれてベース領域および第1高不純物濃度領域と電気的に接続される第1電極(19)と、第2高不純物濃度領域と電気的に接続される第2電極(21)と、一部のゲート構造上に位置する状態で配置され、第1電極より熱伝導率が低い材料で構成された保護膜と、を備え、ゲート電極に所定の電圧が印加されると、ベース領域のうちのゲート絶縁膜を介してゲート電極と接する部分にチャネル領域が形成され、第1高不純物濃度領域、チャネル領域およびドリフト層を介して第1電極と第2電極との間に電流が流れるオン状態となり、保護膜の下方の領域を第1セル部(1a)、保護膜の下方と異なる領域を第2セル部(1b)とすると、第1セル部は、オン状態である際、第2セル部より電流密度が小さくなる構成とされている。
さらに、請求項1では、第2セル部より第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされており、ゲート電極は、ドリフト層およびベース領域の積層方向と交差する一方向に沿って延設されており、第2セル部は、積層方向から視たとき、第1高不純物濃度領域がゲート電極の両側にそれぞれ形成されており、さらに、第1セル部は、積層方向から視たとき、第1高不純物濃度領域がゲート電極の片側に形成されている。
請求項4では、第2セル部より第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされており、ゲート電極は、ドリフト層およびベース領域の積層方向と交差する一方向に沿って延設されており、第2セル部は、一方向に沿って第1高不純物濃度領域が延設され、さらに、第1セル部は、一方向に沿って複数の第1高不純物濃度領域が離れて形成されている。
請求項8では、第1セル部は、第2セル部より第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされており、さらに、第1セル部は、第2セル部側と反対側の方が第2セル部側より第1高不純物濃度領域の形成密度が疎とされている。
請求項12では、第2セル部より、チャネル領域が形成される絶縁ゲート構造の閾値電圧における絶対値が大きくなる構成とされ、第2セル部よりベース領域の不純物濃度が高くされ、第2セル部と反対側の方が第2セル部側よりベース領域の不純物濃度が高くされている。
請求項15では、第2セル部より、チャネル領域が形成される絶縁ゲート構造の閾値電圧における絶対値が大きくなる構成とされ、第2セル部よりゲート絶縁膜が厚くされ、第2セル部側と反対側の方が第2セル部側よりゲート絶縁膜が厚くされている。
請求項18では、ゲート電極は、ドリフト層およびベース領域の積層方向と交差する一方向に沿って延設されており、第1セル部および第2セル部は、ゲート電極を複数有し、さらに、第1セル部は、第2セル部より隣合うゲート電極同士の間隔が広くされ、第2セル部側と反対側の方が第2セル部側より隣合うゲート電極同士の間隔が広くされている。
【0011】
これによれば、オン状態である際、第1セル部では、第2セル部よりも電流密度が小さくなるため、第1セル部の温度が高くなることを抑制できる。したがって、第1セル部において、ゲート絶縁膜に大きな応力が印加されて当該ゲート絶縁膜が破壊されることを抑制できる。
【0012】
なお、上記および特許請求の範囲における括弧内の符号は、特許請求の範囲に記載された用語と後述の実施形態に記載される当該用語を例示する具体物等との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態におけるSiC半導体装置の平面図である。
【
図2】
図1中のII-II線に沿った断面図である。
【
図3】
図1中の領域Aに相当する平面模式図である。
【
図4】従来のSiC半導体装置がオン状態である際の第1セル部および第2セル部の境界部分近傍の温度分布を示すシミュレーション結果である。
【
図5A】
図4中の領域Cにおける応力分布を示すシミュレーション結果である。
【
図5B】
図4中の領域Dにおける応力分布を示すシミュレーション結果である。
【
図6】第2実施形態における
図1中の領域Aに相当する平面模式図である。
【
図7】第2実施形態における
図1中の領域Bに相当する平面模式図である。
【
図8】第3実施形態における
図1中の領域Aに相当する平面模式図である。
【
図9】第3実施形態における
図1中の領域Bに相当する平面模式図である。
【
図10】第4実施形態における
図1中の領域Aに相当する平面模式図である。
【
図11】第5実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図12】第7実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図13】第8実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【
図14】第9実施形態における
図1中の領域Aに相当する平面模式図である。
【
図15】他の実施形態におけるSiC半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、半導体装置として、トレンチゲート構造の反転型のMOSFET素子を半導体素子とするSiC半導体装置を例に挙げて説明する。
【0016】
図1および
図2に示されるように、SiC半導体装置は、トレンチゲート構造のMOSFET素子が形成されるセル部1と、このセル部1を囲む外周部2とを有する構成とされている。外周部2は、ガードリング部2aと、ガードリング2a部よりも内側、つまりセル部1とガードリング部2aとの間に配置される繋ぎ部2bとを有する構成とされている。なお、本実施形態では、1つのセル部1とこのセル部1を囲む外周部2とを有する構成について説明するが、複数のセル部1を有するようにしてもよい。この場合は、各セル部1の間に位置する部分も外周部2となるため、例えば、SiC半導体装置の略中央部に外周部2が位置する場合もあり得る。
【0017】
SiC半導体装置は、
図2に示されるように、SiCからなる高濃度不純物層を構成するn
+型の基板11の表面側に、基板11よりも低不純物濃度のSiCからなるn
-型のドリフト層12がエピタキシャル成長させられた半導体基板を用いて形成されている。つまり、裏面側が基板11による高濃度不純物層、表面側がそれよりも低不純物濃度とされたドリフト層12とされた半導体基板が用いられている。そして、ドリフト層12の上に、p型のベース領域13がエピタキシャル成長させられ、さらにベース領域13の表層部にn
+型のソース領域14が形成されている。
【0018】
基板11は、例えば、n型不純物濃度が1.0×1019/cm3とされ、表面が(0001)Si面とされている。ドリフト層12は、基板11よりも低不純物濃度で構成され、例えば、n型不純物濃度が0.5~2.0×1016/cm3とされている。
【0019】
ベース領域13は、チャネル領域が形成される部分であり、例えば、p型不純物濃度が2.0×1017/cm3程度とされ、厚さが300nmで構成されている。ソース領域14は、ドリフト層12よりも高不純物濃度とされ、例えば、表層部におけるn型不純物濃度が2.5×1018~1.0×1019/cm3、厚さが0.5μm程度で構成されている。
【0020】
セル部1および繋ぎ部2bでは、基板11の表面側においてベース領域13が残されており、ガードリング部2aでは、ベース領域13を貫通してドリフト層12に達するように凹部30が形成されている。このような構造とすることでメサ構造が構成されている。
【0021】
また、セル部1および繋ぎ部2bでは、ベース領域13の表面にp型高濃度層によって構成されるコンタクト領域13aが形成されている。
【0022】
さらに、セル部1では、ベース領域13よりも下方、つまりドリフト層12の表層部にp型のディープ層15が形成されている。ディープ層15は、ベース領域13よりもp型不純物濃度が高くされている。ディープ層15は、
図1の紙面垂直方向、すなわち後述するトレンチゲート構造と同方向を長手方向として延設されている。具体的には、ディープ層15は、ドリフト層12に複数本が等間隔に配置され、互いに交点なく離れて配置されたストライプ状のトレンチ15a内に備えられている。各ディープ層15は、例えば、p型不純物濃度が1.0×10
17~1.0×10
19cm
3、幅0.7μm、深さ2.0μm程度で構成されている。
【0023】
また、ベース領域13およびソース領域14を貫通してドリフト層12に達するように、例えば、幅が0.8μm、深さが1.0μmのゲートトレンチ16が形成されている。言い換えると、ベース領域13およびソース領域14は、ゲートトレンチ16の側面と接するように配置されている。ゲートトレンチ16は、本実施形態では、
図2の紙面左右方向を幅方向、紙面垂直方向を長手方向、紙面上下方向を深さ方向とし、複数本が平行に等間隔に形成されている。つまり、本実施形態では、ゲートトレンチ16は、ドリフト層12とベース領域13との積層方向(以下では、単に積層方向ともいう)と交差する方向、詳しくは直交する方向に延設されている。言い換えると、本実施形態では、複数のゲートトレンチ16は、基板11の面方向における一方向に沿って延設されている。そして、ゲートトレンチ16は、延設方向の先端部で引き回されることで環状構造とされている。なお、ゲートトレンチ16は、複数本が平行に等間隔で形成されたストライプ状とされていてもよい。
【0024】
そして、ゲートトレンチ16は、ゲート電極17およびゲート絶縁膜18によって埋め尽くされている。すなわち、ベース領域13のうちのゲートトレンチ16の側面に位置している部分を、縦型MOSFET素子の作動時にソース領域14とドリフト層12との間を繋ぐチャネル領域とし、チャネル領域を含むゲートトレンチ16の内壁面にゲート絶縁膜18が形成されている。ゲート絶縁膜18は、例えば熱酸化膜等によって構成されている。そして、ゲート絶縁膜18の表面には、ドープドPoly-Siにて構成されたゲート電極17が形成されている。
【0025】
なお、ゲート絶縁膜18は、ゲートトレンチ16の内壁面以外の表面にも形成されている。具体的には、ゲート絶縁膜18は、ソース領域14の表面の一部も覆うように形成されている。言い換えると、ゲート絶縁膜18は、ゲート電極17が配置される部分と異なる部分において、コンタクト領域13aおよびソース領域14の残部を露出させるコンタクトホール18aが形成されている。但し、本実施形態では、後述するように、ゲートトレンチ16の側面にソース領域14が形成されていない部分があり、この部分では、ゲート絶縁膜18は、コンタクト領域13aの表面の一部を覆うように形成されている。
【0026】
また、ゲート絶縁膜18は、繋ぎ部2bにおけるベース領域13の表面にも形成されている。ゲート電極17についても、同様に、繋ぎ部2bにおけるゲート絶縁膜18の表面上まで延設されている。以上のようにして、本実施形態のトレンチゲート構造が構成されている。
【0027】
ソース領域14およびコンタクト領域13aの表面は、第1電極に相当するソース電極19に接続されている。同様に、ゲート電極17は、繋ぎ部2bに延設された部分において、ゲート配線41に接続されている。これらソース電極19およびゲート配線41は、ゲート絶縁膜18等の上に形成された層間絶縁膜20を介してMOSFET素子の各構成要素が形成された半導体上に形成されている。
【0028】
ソース電極19は、層間絶縁膜20に形成されたコンタクトホール20aおよびゲート絶縁膜18のうちのゲート電極17が配置される部分と異なる部分に形成されたコンタクトホール18aを通じてコンタクト領域13aおよびソース領域14と接続されている。また、ゲート配線41は、層間絶縁膜20に形成されたコンタクトホール20bを通じて、繋ぎ部2bまで延設されたゲート電極17と電気的に接続されている。
【0029】
なお、層間絶縁膜20に形成されたコンタクトホール20aとゲート絶縁膜18に形成されたコンタクトホール18aは連通しており、1つのコンタクトホールとして機能する。このため、以下では、コンタクトホール18aおよびコンタクトホール20aを纏めてコンタクトホール18bともいう。
【0030】
また、ソース電極19は、コンタクトホール18b内に埋め込まれて配置されており、ゲート絶縁膜18と接した状態となっている。本実施形態では、後述するように、コンタクトホール18bに沿ってバリアメタル19bが形成されるため、ソース電極19のうちのバリアメタル19bがゲート絶縁膜18と接した状態となっている。なお、層間絶縁膜20は、BPSG(Boro-phospho silicate glassの略)等で構成されており、ゲート絶縁膜18より柔らかい材料で構成されている。
【0031】
ソース電極19およびゲート配線41は、本実施形態では、複数の金属で構成されている。コンタクトホール18bのパターンについては任意であり、例えば複数の正方形のものを配列させたパターン、長方形のライン状のものを配列させたパターン、もしくは、ライン状のものを並べたパターン等が挙げられる。本実施形態では、具体的には後述するが、
図3に示されるように、コンタクトホール18bは、ゲートトレンチ16の長手方向に沿ったライン状とされている。
【0032】
ソース電極19は、次のように構成されている。具体的には、
図2に示されるように、ソース電極19のうちソース領域14およびコンタクト領域13aとの接触箇所には、Ni(ニッケル)等の金属を用いて形成した金属シリサイド19aが形成されている。その上には、Ti(チタン)やTiN等で構成されるバリアメタル19bが形成されている。なお、バリアメタル19bは、コンタクトホール18bの壁面や層間絶縁膜20の表面にも沿って形成されている。バリアメタル19bの上には、Alを主成分とするAl-Si層19cが形成されている。また、Al-Si層19cの表面にはNiメッキ層19dを介してAu層19eが形成されている。
【0033】
なお、本実施形態では、Al-Si層19cは、セル部1と外周部2との境界部分まで形成されているが、Niメッキ層19dおよびAu層19eは、当該境界部分まで形成されていない。つまり、Niメッキ層19dおよびAu層19eは、Al-Si層19cの外縁を露出させるように形成されている。
【0034】
ゲート配線41は、次のように構成されている。具体的には、ゲート配線41のうち、ゲート電極17との接触箇所には、TiN等で構成されるバリアメタル41aが形成され、さらにその上に、Alを主成分とするAl-Si層41bが形成されている。なお、ここでは図示していないが、Al-Si層41bの表面にも、Niメッキ層を介してAu層を形成しても良い。そして、このゲート配線41は、適宜引き回され、
図1に示すパッド3のうちの1つと電気的に接続されている。
【0035】
なお、本実施形態では、詳細な説明はしないが、SiC半導体装置は、電流センスや温度センス等が適宜形成されている。そして、これらの各センスは、
図1に示す各パッド3と適宜電気的に接続される。
【0036】
金属シリサイド19aは、ソース領域14およびコンタクト領域13aとソース電極19との間の接触抵抗の低減のために備えられている。
【0037】
バリアメタル19b、41aは、Al-Si層19c、41bに含まれるAlが半導体側や層間絶縁膜20側に拡散することを抑制する役割を果たす。また、バリアメタル19bについては、金属シリサイド19a内のNiがAl-Si層19c側に拡散することを抑制する役割も果たす。
【0038】
Al-Si層19c、41bは、一般的な電極材料として用いられるものであるが、Alのみで構成したり、Alを主成分とする他の材料で構成しても良い。基本的には、ソース電極19やゲート配線41をAlを主成分とするAl-Si層19c、41bのみで構成できると好ましい。しかしながら、Alの拡散等を考慮して、本実施形態では、Al-Si層19c、41bのみでなく、他の材料を共に用いてソース電極19やゲート配線41を構成している。
【0039】
Niメッキ層19dおよびAu層19eは、ソース電極19を通じて外部との接続を図る際のはんだ濡れ性を向上させるために形成されている。さらに、基板11の裏面側には、基板11と電気的に接続された第2電極に相当するドレイン電極21が形成されている。このような構造により、nチャネルタイプの反転型のトレンチゲート構造のMOSFETが構成されている。そして、このようなMOSFETが複数セル配置されることでセル部1が構成されている。なお、本実施形態では、基板11がドレイン層を構成し、第2高不純物濃度領域に相当している。
【0040】
一方、ガードリング部2aでは、上記したように、ソース領域14およびベース領域13を貫通してドリフト層12に達するように凹部30が形成されている。このため、セル部1から離れた位置ではソース領域14およびベース領域13が除去されて、ドリフト層12が露出させられている。そして、基板11の厚み方向において、凹部30よりも内側に位置するセル部1や繋ぎ部2bが島状に突き出したメサ部となっており、セル部1および繋ぎ部2bとガードリング部2aとの間において段差が構成されている。
【0041】
また、凹部30の下方に位置するドリフト層12の表層部には、セル部1を囲むように、複数本のp型のガードリング31が備えられている。本実施形態では、ガードリング31の上面レイアウトは、積層方向から視たき、四隅が丸められた四角形状や円形状等とされている。ガードリング31は、例えば、ドリフト層12の表層部に形成されたトレンチ31a内に配置され、エピタキシャル成長によるp型のエピタキシャル膜によって構成されている。
【0042】
なお、積層方向から視るとは、言い換えると、基板11の面方向に対する法線方向から視ることである。また、図示していないが、必要に応じてガードリング31よりも外周にEQR構造が備えられることにより、セル部1を囲む外周耐圧構造が備えられたガードリング部2aが構成されている。
【0043】
また、セル部1からガードリング部2aに至るまでの間を繋ぎ部2bとして、繋ぎ部2bおよびガードリング部2aの内周側において、ドリフト層12の表層部にp型のリサーフ層40が形成されている。例えば、積層方向から視たとき、セル部1を囲むように繋ぎ部2bが形成されており、さらに繋ぎ部2bの外側を囲むように、四隅が丸められた四角形状のガードリング31が複数本形成されている。リサーフ層40は、セル部1の周りを囲みつつ、ガードリング部2aに至るように延設されている。このリサーフ層40も、ドリフト層12の表層部に形成したトレンチ40a内に配置され、エピタキシャル成長によるエピタキシャル膜によって構成されている。
【0044】
このようなリサーフ層40を形成することで、等電位線をガードリング部2a側に導くことができ、繋ぎ部2b内で電界集中する部位が発生しないようにできるため、耐圧低下を抑制することが可能となる。
【0045】
さらに、繋ぎ部2bおよびガードリング部2aを覆うように、ポリイミド等によって構成される保護膜50が形成されている。本実施形態では、保護膜50は、ソース電極19とドレイン電極21との間で沿面放電が発生することを抑制するため、外周部2からセル部1の外縁部上まで形成されている。具体的には、保護膜50は、Al-Si層19cのうちのNiメッキ層19dおよびAu層19eから露出する部分を覆い、かつNiメッキ層19dおよびAu層19eを露出させるように形成されている。本実施形態では、このように保護膜50が形成されており、保護膜50の下方にもトレンチゲート構造が位置する構成とされている。
【0046】
以下では、セル部1のうちの保護膜50の下方に位置する部分を第1セル部1aとし、セル部1のうちの保護膜50の下方と異なる部分に位置する部分を第2セル部1bとして説明する。なお、
図1に示されるように、セル部1を囲むように外周部2が配置されているため、第1セル部1aは、第2セル部1bを囲むように位置している。
【0047】
以上が本実施形態のSiC半導体装置における基本的な構成である。なお、本実施形態では、N+型、N-型が第1導電型に相当しており、P型、P+型が第2導電型に相当している。
【0048】
上記SiC半導体装置は、MOSFET素子をオンするときには、ゲート電極17に対してトレンチゲート構造における閾値電圧Vt以上の電圧を印加することにより、ゲートトレンチ16の側面に位置するベース領域13の表面部にチャネル領域を形成する。これにより、ソース電極19からソース領域14に電子が注入されて、当該電子がソース領域14からチャネル領域、ドリフト層12を介してドレイン電極21に流れる。このようにして、ソース電極19とドレイン電極21との間に電流が流れてオン状態となる。
【0049】
また、逆バイアス時には、繋ぎ部2bでは、リサーフ層40が形成されていることで等電位線のせり上がりが抑制されて、ガードリング部2a側に向かうようにされる。そして、ガードリング部2aでは、ガードリング31によって等電位線の間隔が外周方向に向かって広がりながら終端させられるようになり、ガードリング部2aでも所望の耐圧を得ることができる。したがって、所望の耐圧を得ることが可能なSiC半導体装置とすることができる。
【0050】
そして、本実施形態のSiC半導体装置は、オン状態である際、第1セル部1aは、第2セル部1bよりも電流密度が小さくなるように構成されている。
【0051】
具体的には、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりもソース領域14の形成密度が疎となるように形成されている。より詳しくは、
図2および
図3に示されるように、第2セル部1bでは、ゲートトレンチ16の側面における両側にソース領域14が形成されている。これに対し、第1セル部1aでは、ゲートトレンチ16の側面における一方の側面のみにソース領域14が形成されている。本実施形態では、第1セル部1aでは、ソース領域14は、各ゲートトレンチ16の側面における一方の側面のうちのそれぞれ第2セル部1b側に形成されている。つまり、第1セル部1aでは、ソース領域14は、各ゲートトレンチ16に対して同じ側に形成されている。
【0052】
なお、
図3は、積層方向から視た平面模式図であり、コンタクト領域13a、ソース領域14、ゲート電極17、ゲート絶縁膜18、コンタクトホール18bの位置関係を示す平面模式図である。また、
図3は断面図ではないが、理解をし易くするためにソース領域14、ゲート電極17およびゲート絶縁膜18にそれぞれハッチングを施してある。但し、ゲート絶縁膜18は、ゲートトレンチ16の壁面に沿って配置される部分のみにハッチングを施しており、ソース領域14の表面等を覆う部分にはハッチングを施していない。
【0053】
ここで、第1セル部1aおよび第2セル部1bが同じ電流密度とされている従来のSiC半導体装置(以下では、単に従来のSiC半導体装置ともいう)がオン状態である場合の温度分布および応力分布について、
図4、
図5Aおよび
図5Bを参照しつつ説明する。なお、
図4は、ソース電極19上にはんだ60を配置した場合のシミュレーション結果であり、ソース領域14等の詳細な構成要素は省略して示してある。また、
図5Aおよび
図5B中の数値は、ミーゼス応力を示している。
【0054】
まず、
図4に示されるように、従来のSiC半導体装置をオン状態にすると、保護膜50の熱伝導率がソース電極19より低く放熱性が低いため、第1セル部1aの方が第2セル部1bよりも温度が高くなっていることが確認される。そして、
図5Aおよび
図5Bに示されるように、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりソース電極19に発生する熱応力が大きく、ゲート絶縁膜18に印加される熱応力が大きくなっていることが確認される。つまり、第1セル部1aでは、第2セル部1bより温度が高くなるために、ゲート絶縁膜18に大きな熱応力が印加されていることが確認される。
【0055】
このため、本実施形態では、上記のように、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりもソース領域14の形成密度が疎となるように形成されている。したがって、SiC半導体装置がオン状態である際、第1セル部1aでは、第2セル部1bより電流密度が小さくなり、温度が高くなることを抑制できるため、ゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりもソース領域14の形成密度が疎となるように形成されている。このため、SiC半導体装置がオン状態である際、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりも電流密度が小さくなり、温度が高くなることを抑制できる。したがって、第1セル部1aにおいて、ゲート絶縁膜18に大きな応力が印加されて当該ゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。
【0057】
また、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりもソース領域14の形成密度が疎となるようにしているが、ソース領域14が形成されている。つまり、第1セル部1aにも電流が流れるようにしている。このため、オン電圧が高くなることを抑制しつつ、ゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。
【0058】
さらに、第1セル部1aでは、ソース領域14は、各ゲートトレンチ16における同じ側の側面に形成されている。このため、ソース領域14が各ゲートトレンチ16に対して異なる側の側面に形成されている場合と比較して、各ゲートトレンチ16(すなわち、トレンチゲート構造)に対してソース領域14に起因する熱応力が均等に印加されるようにでき、各トレンチゲート構造の特性がばらつくことを抑制できる。
【0059】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ソース領域14の形状を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0060】
本実施形態では、
図6および
図7に示されるように、第1セル部1aでは、第2セル部1bと同様に、ゲートトレンチ16の側面における両側にソース領域14が形成されている。しかしながら、第1セル部1aでは、ソース領域14は、ゲート電極17の延設方向に沿って分離して形成されている。つまり、第1セル部1aでは、ソース領域14は、ゲート電極17の延設方向に沿って選択的に形成されている。本実施形態では、ソース領域14は、ゲート電極17の延設方向に沿って隣合うソース領域14同士の間隔が等しくなるように形成されている。
【0061】
なお、
図6および
図7は、積層方向から視た平面模式図であり、コンタクト領域13a、ソース領域14、ゲート電極17、ゲート絶縁膜18、コンタクトホール18bの位置関係を示す平面模式図である。また、
図6および
図7は断面図ではないが、理解をし易くするためにソース領域14、ゲート電極17およびゲート絶縁膜18にハッチングを施してある。但し、ゲート絶縁膜18は、ゲートトレンチ16の壁面に沿って配置される部分のみにハッチングを施しており、ソース領域14の表面等を覆う部分にはハッチングを施していない。
【0062】
このような構成としても、SiC半導体装置をオン状態とした際、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりも電流密度が低くなるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
また、ソース領域14は、ゲート電極17の延設方向に沿って隣合うソース領域14同士の間隔が等しくなるように形成されている。このため、隣合うソース領域14同士の間隔が等しくない場合と比較して、各ゲートトレンチ16(すなわち、トレンチゲート構造)に対してソース領域14に起因する熱応力がほぼ均等に印加され、各トレンチゲート構造の特性がばらつくことを抑制できる。
【0064】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対し、ソース領域14の形状を変更したものであり、その他に関しては第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
本実施形態では、
図8および
図9に示されるように、第1セル部1aでは、第2実施形態と同様に、ソース領域14が選択的に形成されている。そして、第1セル部1aでは、ソース領域14は、外周部2側の方が第2セル部1b側より形成密度が疎となるように形成されている。本実施形態では、ソース領域14は、外周部2側の方が第2セル部1b側よりゲート電極17の延設方向に沿って隣合うソース領域14同士の間隔が広くされている。
【0066】
なお、
図8および
図9は、積層方向から視た平面模式図であり、コンタクト領域13a、ソース領域14、ゲート電極17、ゲート絶縁膜18、コンタクトホール18bの位置関係を示す平面模式図である。また、
図8および
図9は断面図ではないが、理解をし易くするためにソース領域14、ゲート電極17およびゲート絶縁膜18にハッチングを施してある。但し、ゲート絶縁膜18は、ゲートトレンチ16の壁面に沿って配置される部分のみにハッチングを施しており、ソース領域14の表面等を覆う部分にはハッチングを施していない。
【0067】
これによれば、第1セル部1aにおいて、さらにゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。すなわち、
図4に示されるように、第1セル部1a内にも温度勾配があり、第1セル部1aは、第2セル部1b側より外周部2側の方が温度が高くなり易い。
【0068】
このため、第1セル部1aでは、外周部2側が第2セル部1b側よりソース領域14の形成密度が疎とされることにより、当該外周部2側の部分の電流密度を小さくできる。したがって、第1セル部1aにおける外周部2側の温度が高くなることを抑制でき、さらにゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。また、第1セル部1aでは、第2セル部1b側が外周部2側よりソース領域14の形成密度が密となるように形成されることにより、第1セル部1aの全体が外周部2側と同じようにソース領域14が形成されている場合と比較して、オン電圧の低減を図ることができる。
【0069】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対し、コンタクトホール18bの形状を変更したものであり、その他に関しては上記第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0070】
本実施形態では、
図10に示されるように、第1セル部1aでは、コンタクトホール18bは、隣合うゲート電極17の間の領域に複数形成されている。つまり、第1セル部1aでは、コンタクトホール18bは、ゲート電極17の延設方向に沿って複数形成されている。そして、ゲート電極17の延設方向に沿った隣合うソース領域14は、異なるコンタクトホール18bから露出している。つまり、第1セル部1aでは、ソース領域14が形成されていない部分にはコンタクトホール18bが形成されていない。
【0071】
なお、
図10は、積層方向から視た平面模式図であり、コンタクト領域13a、ソース領域14、ゲート電極17、ゲート絶縁膜18、コンタクトホール18bの位置関係を示す平面模式図である。また、
図10は断面図ではないが、理解をし易くするためにソース領域14、ゲート電極17およびゲート絶縁膜18にハッチングを施してある。但し、ゲート絶縁膜18は、ゲートトレンチ16の壁面に沿って配置される部分のみにハッチングを施しており、ソース領域14の表面等を覆う部分にはハッチングを施していない。
【0072】
これによれば、第1セル部1aでは、ゲート絶縁膜18が破壊されることをさらに抑制できる。すなわち、
図2に示されるように、ゲート絶縁膜18は、コンタクトホール18bに埋め込まれたソース電極19と接するが、コンタクトホール18bが形成されていなければソース電極19と接しない。このため、ソース領域14を露出させない領域にコンタクトホール18bを形成しないようにすることにより、ゲート絶縁膜18のうちのソース電極19と接する部分を低減でき、ゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。
【0073】
なお、このSiC半導体装置では、ソース領域14が形成されていない領域にコンタクトホール18bを形成しないものであり、ソース領域14とソース電極19との接触領域は変化しない。このため、本実施形態では、オン電圧が増加することを抑制しつつ、さらにゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。
【0074】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、ベース領域13の濃度を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0075】
本実施形態では、
図11に示されるように、第1セル部1aには、ゲートトレンチ16の側面の両側にソース領域14が形成されている。また、特に図示しないが、本実施形態では、第1セル部1aのソース領域14は、第2セル部1bのソース領域14と同様に、ゲート電極17の延設方向に沿ってそれぞれ形成されている。つまり、第1セル部1aおよび第2セル部1bでは、ソース領域14が同じ形状とされている。
【0076】
そして、本実施形態では、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりもベース領域13の不純物濃度が高くされ、例えば、不純物濃度が3.0×10
17~1.0×10
18cm
3程度とされている。なお、このようなベース領域13は、例えば、第1セル部1aおよび第2セル部1bに対して、例えば、p型不純物濃度が2.0×10
17/cm
3程度となるベース領域13が形成されるようにp型不純物をイオン注入した後、第1セル部1aに対してさらにp型不純物をイオン注入することによって形成される。また、
図11中では、第2セル部1bのベース領域13をpとして示し、第1セル部1aのベース領域を第2セル部1bのベース領域13より不純物濃度が高いことを明確に示すためにp
+として示している。但し、
図11中では、第1セル部1aのベース領域13は、第2セル部1bのベース領域13より不純物濃度が高いことを示すためにp
+と表記しているが、例えば、同じp
+で表記されたコンタクト領域13aよりは不純物濃度が低くされている。つまり、
図11では、第1セル部1aのベース領域13をp
+として示しているが、この表記は、コンタクト領域13a等と同じ不純物濃度であることを示しているのではなく、第1セル部1aのベース領域13が第2セル部1bのベース領域13より不純物濃度が高いことを単に示すだけのものである。
【0077】
これによれば、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりベース領域13の不純物濃度が高くされている。このため、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりトレンチゲート構造における閾値電圧Vtの絶対値が大きくなり、飽和電流が小さくなる。したがって、このようなSiC半導体装置としても、第1セル部1aでは第2セル部1bより電流密度が小さくなるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。本実施形態は、第5実施形態に対し、第1セル部1aにおけるベース領域13の濃度を変更したものであり、その他に関しては第5実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0079】
本実施形態のSiC半導体装置は、基本的な構成は上記第5実施形態と同様である。但し、本実施形態では、第1セル部1aでは、第2セル部1b側より外周部2側の方がベース領域13の不純物濃度が高くされている。より詳しくは、第1セル部1aでは、第2セル部1b側から外周部2側に向かってベース領域13の不純物濃度が次第に高くなるように形成されている。
【0080】
これによれば、上記第3実施形態と同様に、第1セル部1aでは、外周部2側が第2セル部1b側より電流密度が小さくなるため、当該外周部2側の部分の温度が高くなることを抑制でき、さらにゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。また、第1セル部1aでは、第2セル部1b側が外周部2側より電流密度が高くなるため、第1セル部1aのベース領域13が外周部2側の不純物濃度で一定とされている場合と比較して、オン電圧の低減を図ることができる。
【0081】
なお、このようなSiC半導体装置は、例えば、第1セル部1aにおいて、適宜マスクを変更してイオン注入を複数回行う等し、第2セル部1b側から外周部2側に向かって次第に不純物濃度が高くなるようにすることで形成される。
【0082】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1セル部1aにおけるゲート絶縁膜18の厚さを変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0083】
本実施形態では、
図12に示されるように、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりゲート絶縁膜18が厚くされている。なお、このようなゲート絶縁膜18は、例えば、次のように製造される。すなわち、まず、第1セル部1aおよび第2セル部1bのゲートトレンチ16に熱酸化等によってゲート絶縁膜18を形成する。次に、第2セル部1bのゲートトレンチ16に対し、酸素不透過性の窒化膜等で構成される保護膜を形成する。その後、再び熱酸化等を行い、第1セル部1aのゲートトレンチ16に形成されたゲート絶縁膜18を厚くする。以上のようにして、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりゲート絶縁膜18が厚くされたSiC半導体装置が製造される。
【0084】
これによれば、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりゲート絶縁膜18が厚くされているため、上記第5実施形態と同様に、トレンチゲート構造における閾値電圧Vtの絶対値が大きくなり、飽和電流が小さくなる。このため、このようなSiC半導体装置としても、第1セル部1aでは第2セル部1bより電流密度が小さくなるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
また、本実施形態では、第1セル部1aでは、ゲート絶縁膜18を厚くしているため、当該ゲート絶縁膜18の破壊耐量を高くできる。したがって、さらに第1セル部1aにおいて、ゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。
【0086】
(第8実施形態)
第8実施形態について説明する。本実施形態は、第7実施形態に対し、第1セル部1aにおけるゲート絶縁膜18の膜厚を変更したものであり、その他に関しては第7実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0087】
本実施形態では、
図13に示されるように、第1セル部1aでは、外周部2側の方が第2セル部1b側よりゲート絶縁膜18が厚くされている。
【0088】
これによれば、上記第3実施形態と同様に、第1セル部1aでは、外周部2側が第2セル部1b側より電流密度が小さくなるため、当該外周部2側の部分の温度が高くなることを抑制でき、さらにゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。また、第1セル部1aでは、第2セル部1b側が外周部2側より電流密度が高くなるため、第1セル部1aのゲート絶縁膜18が外周部2側のゲート絶縁膜18と同じ厚さとされている場合と比較して、オン電圧の低減を図ることができる。
【0089】
(第9実施形態)
第9実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、第1セル部1aにおいて、隣合うゲートトレンチ16の間隔を変更したものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0090】
本実施形態では、
図14に示されるように、第1セル部1aでは、第2セル部1bより隣合うゲートトレンチ16の間隔が広くされている。なお、
図14は、積層方向から視た平面模式図であり、コンタクト領域13a、ソース領域14、ゲート電極17、ゲート絶縁膜18、コンタクトホール18bの位置関係を示す平面模式図である。また、
図14は断面図ではないが、理解をし易くするためにソース領域14、ゲート電極17およびゲート絶縁膜18にハッチングを施してある。但し、ゲート絶縁膜18は、ゲートトレンチ16の壁面に沿って配置される部分のみにハッチングを施しており、ソース領域14の表面等を覆う部分にはハッチングを施していない。
【0091】
このような構成としても、第1セル部1aでは、第2セル部1bより電流密度が小さくなるため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、特に図示しないが、上記9実施形態において、第1セル部1aでは、第2セル部1b側から外周部2側に向かって隣合うゲートトレンチ16の間隔が徐々に広くなるようにしてもよい。
【0092】
(他の実施形態)
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0093】
例えば、上記各実施形態では、SiC半導体装置を例に挙げて説明した。しかしながら、SiC半導体装置は1例であり、その他の半導体材料、すなわちシリコンや化合物半導体を用いた半導体装置に上記各実施形態を適用することもできる。
【0094】
また、上記各実施形態では、第1導電型をn型、第2導電型をp型としたnチャネルタイプのMOSFET素子を例に挙げて説明したが、各構成要素の導電型を反転させたpチャネルタイプのMOSFET素子としてもよい。また、上記各実施形態は、半導体素子としてのMOSFET素子に加えて、同様の構造のIGBT素子に対しても適用することができる。IGBT素子は、上記各実施形態に対して基板11の導電型をn型からp型に変更するだけであり、その他の構造は上記各実施形態と同様である。さらに、縦型のMOSFET素子としてトレンチゲート構造のものを例に挙げて説明したが、トレンチゲート構造のものに限らず、プレーナ型のものであっても良い。
【0095】
さらに、上記各実施形態では、ソース領域14がイオン注入によって形成される場合を想定しているが、ソース領域14をエピタキシャル成長によって形成することもできる。
【0096】
また、上記第1実施形態において、第1セル部1aでは、ソース領域14は、ゲートトレンチ16の側面における一方の側面のうちの外周部2側に形成されていてもよい。また、第1セル部1aでは、ゲートトレンチ16の側面における第2セル部1b側にソース領域14が形成されている部分と、外周部2側に形成されている部分とが混在していてもよい。また、上記第2実施形態では、ゲート電極17の延設方向に沿って隣合うソース領域14同士の間隔が等しくなるように形成されていなくてもよい。上記第4実施形態では、ゲート電極17の延設方向に沿った隣合うソース領域14は、一部が異なるコンタクトホール18bから露出していればよい。つまり、ゲート電極17の延設方向に沿った隣合うソース領域14は、一部が同じコンタクトホール18bから露出していてもよい。これらのような構成としても、第1セル部1aでは、第2セル部1bよりも電流密度が小さくなるため、第1セル部1aでゲート絶縁膜18が破壊されることを抑制できる。
【0097】
さらに、上記第1実施形態において、
図15に示されるように、バリアメタル19bの上にW(タングステン)プラグ19fを形成し、バリアメタル41aの上にWプラグ41cを形成するようにしてもよい。このWプラグ19f、41cは、Al-Si層19c、41bの下地面の平坦化を行ってコンタクトホール18b、20b内へのAl-Si層19c、41bの入り込みを少なくする役割を果たすものである。また、Wプラグ19f、41cは、Alよりも融点が高い材料でコンタクトホール18b、20b内を埋め込む役割も果たすものである。コンタクトホール18b、20b内へのAl-Si層19c、41bの入り込みを少なくすると、Al-Si層19c、41bが伸縮する際、もしくは、発熱によって溶融してから固化する際に、平坦面上で伸縮もしくは固化するだけとなる。このため、層間絶縁膜20に対して加えられる応力が抑制される。また、Wの融点がAlよりも高いことから、コンタクトホール18b、20b内にWプラグ19c、41bを配置しても、半導体素子の発熱によって溶融することが生じにくいため、溶融してから固化するという現象が発生することを抑制できる。よって、層間絶縁膜20に対して加えられる応力が更に抑制される。なお、特に図示しないが、他の実施形態においても、Wプラグ19f、41cを形成するようにしてもよい。
【0098】
そして、上記各実施形態を適宜組み合わせることができる。例えば、上記第2実施形態を上記第5~第9実施形態に組み合わせ、第1セル部1aでは、ゲート電極17の延設方向に沿って複数のソース領域14が離れて形成されていてもよい。また、上記第3実施形態を上記第5~第9実施形態に組み合わせ、第1セル部1aでは、ソース領域14は、外周部2側の方が第2セル部1b側よりソース領域14同士の間隔が広くされるようにしてもよい。さらに、上記第4実施形態を上記第5~第9実施形態に組み合わせ、ゲート電極17の延設方向に沿った隣合うソース領域14は、異なるコンタクトホール18bから露出するようにしてもよい。また、上記第5、第6実施形態を上記第7~第9実施形態に組み合わせ、第1セル部1aは、第2セル部1bよりベース領域13の不純物濃度が高くされていてもよい。そして、上記第7、第8実施形態を上記第9実施形態に組み合わせ、第1セル部1aは、第2セル部1bよりゲート絶縁膜18が厚く形成されていてもよい。さらに、上記各実施形態を組み合わせたもの同士を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1a 第1セル部
1b 第2セル部
11 基板(第2高不純物濃度領域)
12 ドリフト層
13 ベース領域
14 ソース領域(第1高不純物濃度領域)
17 ゲート電極
18 ゲート絶縁膜
18a コンタクトホール
19 第1電極(ソース電極)
21 第2電極(ドレイン電極)
50 保護膜