(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成システム、画像形成装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 29/38 20060101AFI20220517BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220517BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20220517BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20220517BHJP
B41J 15/16 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B41J29/38
G03G15/00 303
G03G21/14
G03G15/00 411
B41J11/42
B41J15/16
(21)【出願番号】P 2017238354
(22)【出願日】2017-12-13
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100194582
【氏名又は名称】栗原 康浩
(72)【発明者】
【氏名】松尾 賢広
(72)【発明者】
【氏名】宇井 真
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-052433(JP,A)
【文献】特開2007-276144(JP,A)
【文献】特開2010-097132(JP,A)
【文献】特開2016-102825(JP,A)
【文献】米国特許第05978613(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/00 - 29/70
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
G03G 13/20
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続紙を搬送する搬送部と、
連続紙に画像を出力する作像部と、
連続紙に熱を与える熱源部と、
前記作像部と前記熱源部とを用いて、前記搬送部により順方向に搬送される連続紙に画像を形成する印刷動作を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記印刷動作を中断させた場合に、前記印刷動作の中断前に連続紙に形成された最終画像が、前記熱源部より順方向の上流に規定される退避位置まで至るように、連続紙を逆方向に搬送させる退避制御を行
い、
前記退避制御を行った後に、連続紙を順方向及び逆方向に沿って交互に搬送する往復搬送制御を、前記印刷動作の中断が終了するまで行い、
前記往復搬送制御は、
前記最終画像より順方向の上流側となる連続紙の領域が、前記退避位置より順方向の上流に存在する範囲において行われる
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記印刷動作の中断が終了した場合、連続紙を順方向に搬送させて、前記最終画像より順方向の上流側となる連続紙の領域から、前記印刷動作を再開する
請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記印刷動作を中断させる場合、前記最終画像が前記熱源部より順方向の下流に至るまで連続紙を順方向に搬送させ、当該搬送の終了後に前記退避制御を行う
請求項1
又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記退避位置は、
連続紙の搬送経路において、画像形成装置の筐体より順方向の上流に規定される
請求項1から
3のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記退避位置は、
連続紙の搬送経路において、前記作像部より順方向の上流に規定される
請求項1から
3のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項6】
画像形成装置の筐体よりも順方向の上流及び下流にそれぞれ設けられ、連続紙に張力を付与する張力付与部をさらに有する
請求項1から
5のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記最終画像の位置を基準に、前記印刷動作の開始後の画像を形成する
請求項1から
6のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記作像部は、連続紙にトナー画像を転写するものであり、
前記熱源部は、前記作像部によって転写されたトナー画像を定着させるものであって、圧着状態と離間状態とが切り替え可能な一対の定着部材で構成されており、
前記制御部は、前記印刷動作を中断させる場合、前記一対の定着部材を圧着状態から離間状態へと切り替える
請求項1から
7のいずれか記載の画像形成装置。
【請求項9】
連続紙を供給する給紙装置と、
前記給紙装置から給紙される連続紙に画像を形成する、請求項1から
8のいずれか記載の画像形成装置と、
前記画像形成装置から排出される連続紙を巻き取る巻取装置と、を有する
画像形成システム。
【請求項10】
連続紙に画像を出力する作像部と熱を与える熱源部とを用いて、順方向に搬送される連続紙に画像を形成する印刷動作を行う画像形成装置の制御方法において、
中断事象の発生を条件に、前記印刷動作を中断させる
印刷中断ステップと、
前記印刷動作の中断前に連続紙に形成された最終画像が、前記熱源部より順方向の上流に規定される退避位置まで至るように、連続紙を逆方向に搬送させる退避制御を行う
退避ステップと、
前記退避ステップの後に、連続紙を順方向及び逆方向に沿って交互に搬送する往復搬送制御を、前記印刷動作の中断が終了するまで行う往復搬送ステップと、を有し、
前記往復搬送制御は、
前記最終画像より順方向の上流側となる連続紙の領域が、前記退避位置より順方向の上流に存在する範囲において行われる
画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
前記印刷動作の中断終了を条件に、連続紙を順方向に搬送させて、前記最終画像より順方向の上流側となる連続紙の領域から、前記印刷動作を再開する
印刷再開ステップをさらに有する
請求項1
0記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項12】
前記
印刷中断ステップは、
前記最終画像が前記熱源部より順方向の下流に至るまで連続紙を順方向に搬送させる処理を含む
請求項1
0又は1
1記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項13】
前記退避位置は、
連続紙の搬送経路において、画像形成装置の筐体より順方向の上流に規定される
請求項1
0又は1
2記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項14】
前記退避位置は、
連続紙の搬送経路において、前記作像部より順方向の上流に規定される
請求項1
0又は1
2記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項15】
前記
印刷再開ステップは、
前記最終画像の位置を基準に、前記印刷動作の開始後の画像を形成する
請求項1
1記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項16】
前記作像部は、連続紙にトナー画像を転写するものであり、
前記熱源部は、前記作像部によって転写されたトナー画像を定着させるものであって、圧着状態と離間状態とが切り替え可能な一対の定着部材で構成されており、
前記
印刷中断ステップは、前記一対の定着部材を圧着状態から離間状態へと切り替える処理を含む
請求項1
0から1
5のいずれか記載の画像形成装置の制御方法。
【請求項17】
請求項1
0から1
6のいずれか記載の画像形成装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成システム、画像形成装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、画像形成装置及びこの画像形成装置を含む画像形成システムが知られている。画像形成装置としては、電子写真プロセスを利用したものが知られており、画像を用紙に転写(出力)する、転写した画像を用紙に定着させる、という一連のプロセスを通じて用紙に画像を形成する。定着処理を行う定着装置は、互いに圧着されることにより定着ニップを形成する一対の定着部材を備えており、熱及び圧力により画像を定着させる。
【0003】
この類の画像形成装置は、一定サイズの用紙のみならず、ロール紙や帳票用紙等の長尺状の用紙(以下「連続紙」という)を用いることもできる。また、画像形成装置では、トナー切れ、廃トナーの満杯、画像補正実施といった中断事象の発生に伴い、印刷動作を中断させる必要がある。印刷動作の中断では、連続紙の搬送が一時的に停止させられる。
【0004】
例えば特許文献1には、連続紙の変形癖が付くことを抑制するために、連続紙への画像非形成時には、搬送経路上で連続紙を往復させる手法が開示されている。特許文献1に開示された技術によれば、画像形成装置の特定部位に対して連続紙が静止し続けるといった事態が抑制されるので、連続紙へのダメージの発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された技術にあっては、印刷動作が中断されている間に、その中断前に形成された最終画像より上流側の連続紙の領域(白紙領域)が定着装置の周囲に存在し続けてしまうことがある。この場合、白紙領域は定着装置から熱を受けることで水分が放出され、連続紙のサイズが縮小する。一方、印刷動作の再開時には、この縮小した白紙領域に画像が形成される。ところが、画像形成後には、連続紙が周囲の雰囲気から水分を吸収し、元のサイズに戻ることとなるので、これに併せて画像の倍率が変わってしまう可能性がある。
【0007】
また、往復動作を行わない場合であっても、印刷動作が中断されている間に、定着装置の周囲に白紙領域が存在する状況にあっては、同様の現象が発生する。
【0008】
加えて、このような現象は、電子写真プロセスを利用する画像形成装置の定着熱に因るものばかりでなく、画像の形成に伴い連続紙に熱を付与する方式の画像形成装置においては同様に発生する問題である。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、連続紙に関する印刷において、印刷動作の中断前後における画像倍率の変更を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、第1の発明は、連続紙を搬送する搬送部と、連続紙に画像を出力する作像部と、連続紙に熱を与える熱源部と、作像部と熱源部とを用いて、搬送部により順方向に搬送される連続紙に画像を形成する印刷動作を制御する制御部と、を有する画像形成装置を提供する。この画像形成装置において、制御部は、印刷動作を中断させた場合に、印刷動作の中断前に連続紙に形成された最終画像が、熱源部より順方向の上流に規定される退避位置まで至るように、連続紙を逆方向に搬送させる退避制御を行い、退避制御を行った後に、連続紙を順方向及び逆方向に沿って交互に搬送する往復搬送制御を、印刷動作の中断が終了するまで行い、往復搬送制御は、最終画像より順方向の上流側となる連続紙の領域が、退避位置より順方向の上流に存在する範囲において行われる。
【0011】
ここで、本発明において、制御部は、印刷動作の中断が終了した場合、連続紙を順方向に搬送させて、最終画像より順方向の上流側となる連続紙の領域から、印刷動作を再開することが好ましい。
【0013】
また、本発明において、制御部は、印刷動作を中断させる場合、最終画像が熱源部より順方向の下流に至るまで連続紙を順方向に搬送させ、当該搬送の終了後に退避制御を行うことが好ましい。
【0014】
また、本発明において、退避位置は、連続紙の搬送経路において、画像形成装置の筐体より順方向の上流に規定されることが好ましい。
【0015】
また、本発明において、退避位置は、連続紙の搬送経路において、作像部より順方向の上流に規定されることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、画像形成装置の筐体よりも順方向の上流及び下流にそれぞれ設けられ、連続紙に張力を付与する張力付与部をさらに有することが好ましい。
【0017】
また、本発明において、制御部は、最終画像の位置を基準に、印刷動作の開始後の画像を形成することが好ましい。
【0018】
また、本発明において、作像部は、連続紙にトナー画像を転写するものであり、熱源部は、作像部によって転写されたトナー画像を定着させるものであって、圧着状態と離間状態とが切り替え可能な一対の定着部材で構成されていることが好ましい。この場合、制御部は、印刷動作を中断させる場合、一対の定着部材を圧着状態から離間状態へと切り替えることが望ましい。
【0019】
また、第2の発明は、連続紙を供給する給紙装置と、給紙装置から給紙される連続紙に画像を形成する、第1の発明に係る画像形成装置と、画像形成装置から排出される連続紙を巻き取る巻取装置と、を有する画像形成システムを提供する。
【0020】
また、第3の発明は、連続紙に画像を出力する作像部と熱を与える熱源部とを用いて、順方向に搬送される連続紙に画像を形成する印刷動作を行う画像形成装置の制御方法を提供する。この制御方法は、中断事象の発生を条件に、印刷動作を中断させる印刷中断ステップと、印刷動作の中断前に連続紙に形成された最終画像が、熱源部より順方向の上流に規定される退避位置まで至るように、連続紙を逆方向に搬送させる退避制御を行う退避ステップと、退避ステップの後に、連続紙を順方向及び逆方向に沿って交互に搬送する往復搬送制御を、印刷動作の中断が終了するまで行う往復搬送ステップと、を有し、往復搬送制御は、最終画像より順方向の上流側となる連続紙の領域が、退避位置より順方向の上流に存在する範囲において行われる。
【0021】
ここで、本発明は、印刷動作の中断終了を条件に、連続紙を順方向に搬送させて、最終画像より順方向の上流側となる連続紙の領域から、印刷動作を再開する印刷再開ステップをさらに有することが好ましい。
【0023】
また、本発明において、印刷中断ステップは、最終画像が熱源部より順方向の下流に至るまで連続紙を順方向に搬送させる処理を含むことが好ましい。
【0024】
また、本発明において、退避位置は、連続紙の搬送経路において、画像形成装置の筐体より順方向の上流に規定されることが好ましい。
【0025】
また、本発明において、退避位置は、連続紙の搬送経路において、作像部より順方向の上流に規定されることが好ましい。
【0026】
また、本発明において、印刷再開ステップは、最終画像の位置を基準に、印刷動作の開始後の画像を形成することが好ましい。
【0027】
また、本発明において、作像部は、連続紙にトナー画像を転写するものであり、熱源部は、作像部によって転写されたトナー画像を定着させるものであって、圧着状態と離間状態とが切り替え可能な一対の定着部材で構成されていることが好ましい。この場合、印刷中断ステップは、一対の定着部材を圧着状態から離間状態へと切り替える処理を含むことが望ましい。
【0028】
さらに、第4の発明は、第3の発明に係る画像形成装置の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、印刷動作の中断前後における画像倍率の変更を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る画像形成システムの構成を模式的に示す説明図
【
図3】画像形成装置の制御方法を示すフローチャート
【
図6】退避制御を適用しない場合での連続紙の状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本実施形態に係る画像形成システム1の構成を模式的に示す説明図である。画像形成システム1は、給紙装置2、画像形成装置3、巻取装置4及びシステムコントローラー5を主体に構成されている。給紙装置2、画像形成装置3及び巻取装置4は、連続紙Pの搬送順方向FD1にかけて、給紙装置2、画像形成装置3、巻取装置4の順番で配置されている。なお、画像形成システム1は、これらの装置以外にも、画像が形成された連続紙Pに所定の処理を行う用紙処理装置等を追加的に備える構成であってもよい。また、以下の説明では、特に言及しない限り、「上流」及び「下流」という用語を、搬送順方向FD1を基準として用いる。
【0032】
給紙装置2は、連続紙Pを収容し、システムコントローラー5からの指示に従って連続紙Pを下流の装置に給紙する。ここで、連続紙Pは、例えばロール紙であるが、帳票用紙等であってもよい。また、連続紙Pは、紙以外に、例えば樹脂等を材質とするものも含む。この給紙装置2には、画像形成装置3内の連続紙Pに一定の張力が付与されるように、連続紙Pに付勢力を与える張力付与部2aが設けられている。
【0033】
図2は、画像形成装置3の構成を模式的に示す説明図である。画像形成装置3は、連続紙Pに画像を形成し、画像が形成された連続紙Pを下流側の装置に出力する。本実施形態において、画像形成装置3は、電子写真プロセスを用いる装置であり、原稿読取装置SC、画像形成部10Y,10M,10C,10K、搬送部13、定着装置15、操作表示部16及び制御部17を主体に構成されている。
【0034】
原稿読取装置SCは、照明装置により原稿の画像を照明し、その反射光をラインイメージセンサーにより読み取り、これにより、画像信号を得る。この画像信号は、A/D変換、シェーディング補正、圧縮等の処理が施された後、画像データとして制御部17に入力される。
【0035】
画像形成部10Y,10M,10C,10Kは、イエロー(Y)の画像を形成する画像形成部10Y、マゼンダ(M)の画像を形成する画像形成部10M、シアン(C)の画像を形成する画像形成部10C、ブラック(K)の画像を形成する画像形成部10Kから構成されている。
【0036】
画像形成部10Yは、感光体ドラム、並びにその周辺に配置された帯電部、光書込部、現像装置及びドラムクリーナーで構成されている。画像形成部10Yにおいて、感光体ドラム上には、イエローに対応する画像(トナー画像)が形成され、感光体ドラム上に形成された画像は、1次転写ローラーにより、無端ベルトである中間転写ベルト11上の所定位置へと転写される。また、残余の画像形成部10M,10C,10Kも、感光体ドラム、並びにその周辺に配置された帯電部、光書込部、現像装置及びドラムクリーナーで構成されており、その詳細については画像形成部10Yと同様である。
【0037】
中間転写ベルト11上に転写された各色の画像は、中間転写ベルト11に対して転写ニップを形成する2次転写ローラー12により、搬送部13により搬送される連続紙Pに転写される。本実施形態において、画像形成部10Y,10M,10C,10K、中間転写ベルト11及び2次転写ローラー12は、連続紙Pにトナー画像(画像)を転写(出力)する転写部(作像部)として機能する。なお、転写部は、中間転写ベルト11を用いることなく、連続紙Pに画像を直接的に転写するものであってもよい。
【0038】
搬送部13は、複数の搬送ローラーからなり、連続紙Pを搬送経路に沿って搬送する。搬送部13は、給紙装置2から供給された連続紙Pを、搬送経路に沿って配置された複数の搬送ローラーにより搬送し、その後、巻取装置4へと排紙する。
【0039】
定着装置15は、転写された画像を連続紙Pに定着させる装置である。定着装置15は、一対の定着部材で構成されており、これらの定着部材は、互いに圧着されることで定着ニップを形成している。
【0040】
一方の定着部材は、連続紙Pの定着対象面、すなわち、トナー画像が転写された面と対向する側、本実施形態では、連続紙Pの上方に配置されている。一方の定着部材は、加圧ローラー15a、定着上ローラー15b及び無端状の定着ベルト15cで構成されている。加圧ローラー15a及び定着上ローラー15bは、所定の距離だけ離間して配置されており、これらのローラー15a,15bの間には、定着ベルト15cが掛け渡されている。定着上ローラー15bの内部には、ヒーター15dが設けられている。
【0041】
他方の定着部材は、連続紙Pの定着対象面の裏面と対向する側、本実施形態では、搬送される連続紙Pの下方に配置されている。他方の定着部材は、定着下ローラー15eで構成されている。定着下ローラー15eは、定着ベルト15cを介して加圧ローラー15aに押し付けられるように配置されている。これにより、定着ベルト15cと定着下ローラー15eとの間に定着ニップが形成される。
【0042】
また、一方の定着部材は、図示しない駆動機構により駆動されることにより、他方の定着部材との相対距離が大きくなる方向へと移動することができる。これにより、定着ベルト15c及び定着下ローラー15eを、圧着状態(ニップ状態)から離間状態(ニップ解除状態)へと切り替えることができる。
【0043】
操作表示部16は、ユーザーの操作に応じた入力を受け付ける操作部であり、例えば、ディスプレイ及び当該ディスプレイ上に表示される情報に従い情報の入力を行うことが可能なタッチパネル、各種のスイッチ並びにボタンを含む。操作表示部16に対して行われた操作の情報は、制御部17又はシステムコントローラー5に入力される。ユーザーは、操作表示部16を操作することで、印刷ジョブを発行したり、種々の設定を行ったりすることができる。また、操作表示部16は、制御部17に制御されることにより、ユーザーに種々の情報を表示する表示部としても機能する。
【0044】
制御部17は、画像形成装置3を制御する機能を担っている。制御部17は、給紙装置2、巻取装置4及びシステムコントローラー5と通信可能に接続されており、給紙装置2及び巻取装置4と協調しながら動作することができる。
【0045】
制御部17としては、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェースを主体に構成されたマイクロコンピュータを用いることができる。CPUは、OSをベースとし、その上で、各種のプログラム等を実行する。ROMには、画像形成装置3を起動するためのプログラムが格納されており、CPUはこのプログラムに従って画像形成装置3を起動する。その後、CPUは、ハードディスク装置(図示せず)等に格納されているプログラムをRAMにロードし、そのロードされたプログラムに従って各種の処理を実行することで画像形成装置3が備える種々の機能を実現する(プロセッサ)。
【0046】
巻取装置4は、システムコントローラー5からの指示に従って上流側の装置から排出された連続紙Pを巻き取る。この巻取装置4には、画像形成装置3内の連続紙Pに一定の張力が付与されるように、連続紙Pに付勢力を与える張力付与部4aが設けられている。
【0047】
システムコントローラー5は、画像形成システム1を構成する各装置を統括的に制御する機能を担っている。システムコントローラー5は、給紙装置2、画像形成装置3及び巻取装置4が連携して動作するように、これらの装置に対して必要な制御を行う。
【0048】
このような構成の画像形成システム1において、画像形成装置3の制御部17は、搬送部13により搬送順方向FD1に搬送される連続紙Pに画像を形成する印刷動作を制御する。そして、制御部17は、中断事象が発生したことを判断した場合に、印刷動作を中断させる。
【0049】
制御部17は、印刷動作を中断させた場合に、印刷動作の中断前に連続紙Pに形成された最終画像Ifが、定着装置15より搬送順方向FD1の上流に規定される退避位置Peに至るように、連続紙Pを逆方向に搬送させる退避制御を行う。そして、制御部17は、退避制御を行った後に、連続紙Pを搬送順方向FD1及び搬送逆方向FD2に沿って交互に搬送する往復搬送制御を、印刷動作の中断が終了するまで行う。
【0050】
以下、本実施形態の特徴の一つである画像形成装置3の制御方法について説明する。ここで、
図3は、画像形成装置3の制御方法を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、画像形成装置3の制御部17により実行される。また、
図4及び
図5は、連続紙Pの搬送状態を示す説明図である。
【0051】
まず、ステップ10(S10)において、制御部17は、印刷動作を開始する。この印刷動作は、連続紙Pの搬送が適切になされるように、システムコントローラー5からの指示を受けつつ、給紙装置2及び巻取装置4と同期をもって実施される。画像形成装置3は、この印刷動作を通じて、連続紙P上に所定の画像を一定のピッチで形成する。
【0052】
ステップ11(S11)において、制御部17は、中断事象が発生したか否かを判断する。ここで、中断事象は、印刷動作を中断させる必要がある種々の事象をいい、トナー切れ、廃トナーの満杯、画像補正実施等がこれに該当する。また、これ以外に、給紙装置2又は巻取装置4を要因としてシステムコントローラー5から通知される中断指令もこれに該当する。
【0053】
中断事象が発生した場合には、ステップ11において肯定判定され、ステップ12(S12)に進む。一方、中断事象が発生していない場合には、ステップ11において否定判定され、ステップ17(S17)に進む。
【0054】
ステップ12において、制御部17は、印刷動作を中断させる。この場合において、制御部17は、転写された最終画像Ifが定着装置15より下流に至るまで、連続紙Pを搬送順方向FD1に搬送させた後、印刷動作を中断させる(
図4(a)参照)。また、制御部17は、印刷動作の中断に伴い、定着ベルト15c及び定着下ローラー15eを、圧着状態から離間状態へと切り替える。
【0055】
ステップ13(S13)において、制御部17は、退避制御を行う。この退避制御は、最終画像Ifが、定着装置15より上流に規定される退避位置Peに至るように、連続紙Pを搬送逆方向FD2に搬送させる制御である(
図4(b)参照)。この退避制御は、後述する往復搬送制御の実行中に、最終画像Ifより上流側の白紙領域Reが定着装置15からの熱影響を受けないように、白紙領域Reを退避させるために行われる。
【0056】
定着装置15は、画像形成装置3の筐体3a内に収容されているため、筐体3aの外は、定着装置15からの熱影響が少ない。そこで、本実施形態では、画像形成装置3の筐体3aより上流に、退避位置Peが規定されている。なお、退避位置Peが画像形成装置3から離れると、印刷動作の再開時に連続紙Pを再搬送する距離が長くなる。そのため、退避位置Peは、筐体3aの上流となる範囲のうち、当該筐体3aの近傍となる位置に規定されることが好ましい(後述する距離C=0)。したがって、この退避制御において搬送逆方向FD2に搬送させる連続紙Pの搬送量Lは、印刷動作を中断させた際の最終画像Ifの位置から定着装置15までの距離Aと、筐体3a内において連続紙Pが搬送される距離Bと、筐体3aの最上流位置から退避位置Peまでの距離Cとの和となる。
【0057】
ステップ14(S14)において、制御部17は、連続紙Pを搬送順方向FD1及び搬送逆方向FD2に沿って交互に搬送する往復搬送制御を行う。この場合において、制御部17は、白紙領域Reが退避位置Peより上流に存在する範囲において往復搬送制御を行う。本実施形態では、往復搬送制御の開始時、白紙領域Reの端部が筐体3aの直上に存在する。そのため、制御部17は、往復搬送制御を行う場合、連続紙Pの搬送を、搬送逆方向FD2からスタートさせる(
図4(c)参照)。その後、制御部17は、搬送逆方向FD2にかけて所定距離だけ連続紙Pの搬送を行うと、搬送方向を逆転させ、搬送順方向FD1にかけて連続紙Pの搬送を行う(
図4(d)参照)。往復搬送制御では、このような連続紙Pの往復動作が、印刷動作の中断が終了するまで繰り返される。
【0058】
なお、往復搬送制御を行う場合に、連続紙Pの搬送を搬送順方向FD1からスタートさせることも可能である。この場合には、往復搬送制御における搬送順方向FD1における連続紙Pの搬送形態を考慮して、退避制御における連続紙Pの搬送量Lが設定される(
図5(a)参照)。具体的には、この搬送量Lは、上述した距離A、距離B及び距離Cに加え、往復搬送制御において搬送順方向FD1に搬送される距離Dを加算した値となる。
【0059】
この場合、制御部17は、連続紙Pの搬送を、搬送順方向FD1からスタートさせる(
図5(b)参照)。その後、制御部17は、搬送順方向FD1にかけて距離Dだけ連続紙Pの搬送を行うと、搬送方向を逆転させ、搬送逆方向FD2にかけて連続紙Pの搬送を行う(
図5(c)参照)。往復搬送制御では、このような連続紙Pの往復動作が、印刷動作の中断が終了するまで繰り返される。これにより、退避制御を行った後に、連続紙Pの搬送を搬送順方向FD1からスタートさせても、白紙領域Reが退避位置Peより上流に存在する範囲において往復搬送制御を行うことができる。
【0060】
ステップ15(S15)において、制御部17は、印刷動作の中断を終了するか否かを判断する。中断事象が解消している場合には、ステップ15において肯定判定され、ステップ16(S16)に進む。一方、中断事象が解消していない場合には、ステップ15において否定判定され、ステップ14に戻る。
【0061】
ステップ16において、制御部17は、連続紙Pを搬送順方向FD1に搬送させて、白紙領域Reから印刷動作を再開する。また、制御部17は、印刷動作の再開に伴い、定着ベルト15c及び定着下ローラー15eを、離間状態から圧着状態へと切り替える。
【0062】
印刷動作の再開にあたっては、制御部17は、最終画像Ifの位置を基準に、印刷動作の開始後の画像を形成する(
図4(e)参照)。通常、連続紙Pへの画像を形成する場合には、画像が印刷された連続紙Pに各種の処理を行うために、画像位置を認識するためのパッチを同時に形成している。このパッチは、搬送経路において画像形成装置3よりも上流側の基準位置に配置された読取部によって読み取られ、その情報がシステムコントローラー5に入力されている。システムコントローラー5は、読取部からの情報に基づいて、最終画像Ifに付帯されたパッチが基準位置を通過したことを判断すると、パッチの通過情報を制御部17に対して出力する。制御部17は、基準位置までの距離、連続紙Pの搬送速度に基づいて、最終画像Ifに対して所定のピッチを維持するように、再開後の最初の画像を形成する。
【0063】
ステップ17において、制御部17は、印刷動作を終了するか否かを判断する。印刷動作を終了する場合には、ステップ17において肯定判定され、本ルーチンを終了する(END)。一方、印刷動作を継続する場合には、ステップ17において否定判定され、ステップ11に戻る。
【0064】
このように本実施形態の画像形成装置3によれば、印刷動作を中断させた場合に、印刷動作の中断前に連続紙Pに形成された最終画像Ifが、定着装置15より上流に規定される退避位置Peまで至るように、連続紙Pを逆方向に搬送させる退避制御が行われる。
【0065】
ここで、
図6は、退避制御を適用しない場合での連続紙Pの状態を示す説明図である。上述した実施形態と同様、印刷動作を中断させる場合、最終画像Ifが定着装置15より下流に至るまで連続紙Pを搬送順方向FD1に搬送させた後、印刷動作が中断させられる(
図6(a)参照)。
【0066】
本実施形態に示す退避制御を行わない場合には、印刷動作の中断後、往復搬送制御が行われる。ところで、中断時の連続紙Pの停止位置、又は、往復搬送制御における最初の搬送方向によっては、白紙領域Reが定着装置15に跨がるような状態で往復搬送制御が行われてしまう(
図6(b)参照)。この場合には、定着装置15の熱を受けて、連続紙Pから水分が放出されることとなり、これにより、連続紙P(白紙領域Re)の一部領域Raが縮小してしまう。
【0067】
一方、印刷動作の中断が終了すると、連続紙Pを搬送順方向FD1に搬送させて、白紙領域Reから印刷動作が再開される。この場合、中断後の画像は、縮小した領域Raに形成される(
図6(c)参照)。そして、連続紙Pに対する画像の形成が進行し、縮小した領域Raが画像形成装置3の筐体3a側へと搬送されると、周囲の雰囲気から水分を吸収し、領域Raは元のサイズに復帰する(
図6(d)参照)。これにより、領域Raにおいては、画像の倍率が変わってしまう。
【0068】
この点、本実施形態によれば、退避制御が実行されることで、往復搬送制御では、画像が既に形成されている領域が定着装置15の周囲に存在することとなる。画像が形成されている領域であっても、定着装置15の熱を受けることでサイズの縮小は発生する。しかしながら、この場合にあっては、連続紙Pの縮小に合わせて画像も縮小する。したがって、印刷動作の再開に伴い連続紙Pが下流側に搬送され、連続紙Pが周囲の雰囲気から水分を吸収することで、連続紙Pとともに画像も元のサイズに復帰することとなる。これにより、印刷動作の中断の前後における画像倍率の変更を抑制することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、退避制御として、搬送逆方向FD2のみに連続紙Pを搬送する形態について説明した。しかしながら、結果として最終画像Ifが退避位置Peに至るものであれば、その途中に、搬送順方向FD1へと連続紙Pを搬送するような動作が介在するものであってもよい。
【0070】
また、本実施形態において、制御部17は、印刷動作の中断が終了した場合、連続紙Pを搬送順方向FD1に搬送させて、白紙領域Reから印刷動作を再開している。これにより、印刷動作の中断前後における画像間隔を短くすることができるので、連続紙Pにおいて無駄な領域が発生することを抑制できる。
【0071】
また、本実施形態において、制御部17は、退避制御を行った後に、印刷動作の中断が終了するまで、往復搬送制御を行っている。この場合、制御部17は、白紙領域Reが、退避位置Peよりも上流に存在する範囲において往復搬送制御を行っている。この構成によれば、印刷動作が中断している間に、定着装置15から白紙領域Reが退避されるので、この白紙領域Reに対する熱影響を抑制することができる。
【0072】
また、本実施形態において、制御部17は、印刷動作を中断させる場合、最終画像Ifが定着装置15より下流に至るまで連続紙Pを搬送順方向FD1に搬送させ、この搬送の終了後に退避制御を行っている。これにより、未定着な画像を残したまま、印刷動作が中断するといった事態を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態において、退避位置Peは、連続紙Pの搬送経路上において、画像形成装置3の筐体3aより上流に規定されている。この構成によれば、退避制御により、白紙領域Reが画像形成装置3の筐体3a外部へと退避させられる。これにより、この白紙領域Reに対する熱影響を抑制することができる。
【0074】
なお、転写部である画像形成部10Y,10M,10C,10K、中間転写ベルト11及び2次転写ローラー12等が存在するため、この転写部よりも上流側においては、筐体3a内であっても定着装置15からの熱影響が少ない傾向がある。そこで、退避位置Peは、連続紙Pの搬送経路上において、転写部より上流に規定してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、画像形成装置3の筐体3aよりも上流及び下流のそれぞれに、連続紙Pに張力を付与する張力付与部2a,4aが設けられている。これにより、画像形成装置3において、搬送順方向FD1及び搬送逆方向FD2のそれぞれに連続紙Pを適切に搬送することができる。
【0076】
なお、本実施形態では、張力付与部2a,4aを給紙装置2及び巻取装置4に設けているが、これらの張力付与部2a,4aを画像形成装置3が備えるものであってもよい。
【0077】
また、本実施形態において、制御部17は、最終画像Ifの位置を基準に、印刷動作の開始後の画像を形成している。この構成によれば、印刷動作の中断の前後で、同一の画像間隔を維持することができる。これにより、印刷動作の中断による画像形成への影響を抑制することができる。
【0078】
なお、本実施形態では、連続紙Pに画像を転写する転写部と、連続紙Pに熱を与える定着装置15とを備える、電子写真プロセスを利用する画像形成装置3について説明した。しかしながら、本実施形態に係る画像形成装置3は、連続紙Pに画像を出力する作像部と、連続紙Pに熱を与える熱源部とを備える構成に広く適用可能である。例えば、紫外線硬化インク又は紫外線硬化ニスを出力する作像部と、紫外線を与える熱源部とを備えるものや、水性インクを出力する作像部と、乾燥用の熱を与える熱源部とを備えるもの(インクジェット方式)であってもよい。
【0079】
また、本実施形態では、印刷動作の中断期間中、往復搬送制御を行うことを前提に説明した。しかしながら、往復搬送制御は必ずしも実行する必要はない。例えば、巻取装置4に巻き取られている連続紙Pの量が十分に存在する場合には、白紙領域Reを所定距離(少なくとも最終画像Ifが退避位置Peに至る距離)だけ搬送逆方向FD2に搬送し、印刷動作の再開前に1度だけ搬送方向を反転させるような構成であってもよい。
【0080】
以上、本発明の実施形態にかかる画像形成装置及び画像形成システムについて説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その発明の範囲内において種々の変形が可能であることはいうまでもない。また、画像形成システム、画像形成装置の制御方法、この制御方法をコンピュータに実行させるプログラムそれ自体も本発明の一部として機能する。また、このプログラムが格納された情報記録媒体も本発明の一部として機能する。
【符号の説明】
【0081】
1 画像形成システム
2 給紙装置
2a 張力付与部
3 画像形成装置
3a 筐体
4 巻取装置
4a 張力付与部
5 システムコントローラー
10Y 画像形成部
10M 画像形成部
10C 画像形成部
10K 画像形成部
11 中間転写ベルト
12 2次転写ローラー
13 搬送部
15 定着装置
15a 加圧ローラー
15b 定着上ローラー
15c 定着ベルト
15d ヒーター
15e 定着下ローラー
16 操作表示部
17 制御部
FD1 搬送順方向
FD2 搬送逆方向
If 最終画像
Pe 退避位置