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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220517BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20220517BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20220517BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20220517BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G02B27/01
G02F1/13 505
G02F1/1335 510
G02F1/1333
B60K35/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018007235
(22)【出願日】2018-01-19
(65)【公開番号】P2019124888
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】山口 稔
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0226965(US,A1)
【文献】特開2015-118271(JP,A)
【文献】特開2012-022294(JP,A)
【文献】特開2007-047245(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0109753(US,A1)
【文献】特開2008-268485(JP,A)
【文献】特開2003-005130(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122491(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02F 1/13
G02F 1/1335
G02F 1/1333
B60K 35/00
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源部と、
前記第1光源部からの光を透過する第1液晶層と、前記第1液晶層を透過した光を偏光させる第1偏光板とを含む第1液晶パネルと、
前記第1光源部の光軸上に配置され、前記第1液晶パネルを透過した光を受ける第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有し、透過軸及び反射軸を有する反射型偏光板と、
前記反射型偏光板の前記第2面に向けて光を出射する第2光源部と、
前記第2光源部からの光を透過する第2液晶層と、前記第2液晶層を透過した光を偏光させる第2偏光板とを含む第2液晶パネルと
を具備し、
前記第1光源部の光軸は、前記反射型偏光板の垂線に対して斜めであり、
前記第2光源部の光軸は、前記反射型偏光板の垂線に対して斜めであり、
前記第1偏光板の透過軸は、前記反射型偏光板の透過軸と平行であり、
前記第2偏光板の透過軸は、前記反射型偏光板の反射軸と平行であり、
前記第1液晶パネルの垂線は、前記反射型偏光板の垂線に平行である
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1光源部の光軸と前記第1液晶パネルの垂線とが斜めになるように、前記第1光源部と前記第1液晶パネルとを固定する支持部材をさらに具備する
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記反射型偏光板は、前記第1液晶パネルに貼り付けられる
請求項1又は2に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
第1光源部と、
前記第1光源部からの光を透過する第1液晶層と、前記第1液晶層を透過した光を偏光させる第1偏光板とを含む第1液晶パネルと、
前記第1光源部の光軸上に配置され、前記第1液晶パネルを透過した光を受ける第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有し、透過軸及び反射軸を有する反射型偏光板と、
前記反射型偏光板の前記第2面に向けて光を出射する第2光源部と、
前記第2光源部からの光を透過する第2液晶層と、前記第2液晶層を透過した光を偏光させる第2偏光板とを含む第2液晶パネルと
を具備し、
前記第1光源部の光軸は、前記反射型偏光板の垂線に対して斜めであり、
前記第2光源部の光軸は、前記反射型偏光板の垂線に対して斜めであり、
前記第1偏光板の透過軸は、前記反射型偏光板の透過軸と平行であり、
前記第2偏光板の透過軸は、前記反射型偏光板の反射軸と平行であり、
前記第1液晶パネルの垂線は、前記第1光源部の光軸と平行であり、
前記第1液晶パネルの垂線と前記反射型偏光板の垂線とのなす角度は、5度より大きく35度より小さく、
前記反射型偏光板の垂線と前記第2光源部の光軸とのなす角度は、5度より大きく35度より小さく、
前記第1液晶パネルと前記反射型偏光板とが一体で構成される
ヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記反射型偏光板の垂線と前記第1液晶パネルの垂線とが斜めになるように、前記反射型偏光板と前記第1液晶パネルとを固定する支持部材をさらに具備する
請求項に記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項6】
前記第1液晶パネルから出射されかつ前記反射型偏光板を透過した光と、前記第2液晶パネルから出射されかつ前記反射型偏光板で反射された光とを透過し、直線偏光を円偏光又は楕円偏光に変換する位相差板をさらに具備する
請求項1乃至のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項7】
前記第1液晶パネルから出射されかつ前記反射型偏光板を透過した光と、前記第2液晶パネルから出射されかつ前記反射型偏光板で反射された光とを表示部材に向けて反射する反射部材をさらに具備する
請求項1乃至のいずれかに記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置に係り、例えば、液晶表示装置を用いたヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用の情報提供手段として、ヘッドアップディスプレイ(HUD)が知られている。ヘッドアップディスプレイは、車両のウインドシールド越しに、前方視野の前景に重畳して、運転情報(例えば、速度表示、及び経路案内表示等)を虚像として表示することが可能である。
【0003】
例えば、ヘッドアップディスプレイは、運転席から前方に約3mの距離の一箇所に虚像を結像させる。一方、虚像の結像位置を複数有する技術が報告されている(特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4941070号公報
【文献】特開2015-11212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、結像位置の異なる複数の虚像を表示することが可能であり、かつ信頼性を向上できるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るヘッドアップディスプレイ装置は、第1光源部と、前記第1光源部からの光を透過する第1液晶層と、前記第1液晶層を透過した光を偏光させる第1偏光板とを含む第1液晶パネルと、前記第1光源部の光軸上に配置され、前記第1液晶パネルを透過した光を受ける第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを有し、透過軸及び反射軸を有する反射型偏光板と、前記反射型偏光板の前記第2面に向けて光を出射する第2光源部と、前記第2光源部からの光を透過する第2液晶層と、前記第2液晶層を透過した光を偏光させる第2偏光板とを含む第2液晶パネルとを具備する。前記第1光源部の光軸は、前記反射型偏光板の垂線に対して斜めである。前記第2光源部の光軸は、前記反射型偏光板の垂線に対して斜めである。前記第1偏光板の透過軸は、前記反射型偏光板の透過軸と平行である。前記第2偏光板の透過軸は、前記反射型偏光板の反射軸と平行である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、結像位置の異なる複数の虚像を表示することが可能であり、かつ信頼性を向上できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の断面図。
図2】第1光源部の断面図。
図3】第1液晶パネルの断面図。
図4】ヘッドアップディスプレイ装置の動作を説明する模式図。
図5】第1液晶パネルの画像を運転者が視認する様子を具体的に説明する模式図。
図6】本発明の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0010】
[第1実施形態]
[1] ヘッドアップディスプレイ装置の構成
図1は、本発明の第1実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置10の断面図である。ヘッドアップディスプレイ装置10は、第1液晶表示装置11、反射型偏光板17、第2液晶表示装置18、反射部材23、及び位相差板24を備える。第1液晶表示装置11、反射型偏光板17、第2液晶表示装置18、反射部材23、及び位相差板24は、ヘッドアップディスプレイ装置10のほぼ全体を囲むケース(図示せず)にそれぞれ取り付けられた複数の固定部材(図示せず)によって所定の位置(図1に示した位置)に固定される。
【0011】
第1液晶表示装置11は、第1光源部(バックライト)12、支持部材13、及び第1液晶パネル14を備える。第1液晶パネル14は、第1光源部12側に配置された偏光板15と、第1光源部12の反対側に配置された偏光板16とを備える。
【0012】
第1光源部12は、例えば面形状を持つ光源(面光源)から構成され、第1液晶パネル14に向けて照明光を出射する。図1に示した第1光源部12を起点とした破線矢印は、第1光源部12から出射される光の光路(光軸)を示している。
【0013】
支持部材13は、第1光源部12と第1液晶パネル14とに接し、第1光源部12と第1液晶パネル14とを固定する。また、支持部材13は、第1光源部12の光軸と第1液晶パネル14の垂線とが斜めになるように、第1光源部12と第1液晶パネル14とを固定する。支持部材13は、例えば、第1光源部12の縁に沿って形成され、平面形状が矩形の枠で構成される。支持部材13は、例えば樹脂から構成される。
【0014】
第1液晶パネル14の垂線は、第1光源部12の光軸に対して下方かつ斜めに設定される。すなわち、第1液晶パネル14の垂線と第1光源部12の光軸とのなす角度θは、0度より大きく90度より小さい。より好ましくは、第1液晶パネル14の垂線と第1光源部12の光軸とのなす角度θは、5度より大きく35度より小さい。
【0015】
第1液晶パネル14は、第1光源部12からの照明光を透過して光変調を行う。そして、第1液晶パネル14は、車速等の運転情報を示す画像を表示する。第1液晶パネル14の駆動モードについては特に限定されず、TN(Twisted Nematic)モード、VA(Vertical Alignment)モード、又はホモジニアスモードなどを用いることができる。また、第1液晶パネル14は、ノーマリーブラックモード(オフ状態での光透過率又は輝度がオン状態でのそれよりも低いモード)であってもよいし、ノーマリーホワイトモード(オフ状態での光透過率又は輝度がオン状態でのそれよりも高いモード)であってもよい。
【0016】
偏光板15、16の各々は、面内において、互いに直交する透過軸及び吸収軸を有する。偏光板15、16は、ランダムな方向の振動面を有する光から、透過軸と平行な一方向の振動面を有する光を透過する、すなわち直線偏光(直線偏光した光成分)を透過する。偏光板15、16は、例えば、互いの透過軸が直交するように、クロスニコル状態で配置される。偏光板15、16の透過軸の関係は、液晶モードに応じて適宜設定される。
【0017】
反射型偏光板17は、第1液晶パネル14と平行に配置される。すなわち、反射型偏光板17の垂線は、第1液晶パネル14の垂線と平行である。例えば、反射型偏光板17は、第1液晶パネル14に貼り付けられる。反射型偏光板17は、面内において、互いに直交する透過軸及び反射軸を有する。反射型偏光板17は、ランダムな方向の振動面を有する光のうち、透過軸に平行な振動面を有する直線偏光(直線偏光した光成分)を透過し、反射軸に平行な振動面を有する直線偏光(直線偏光した光成分)を反射する。反射型偏光板17の透過軸は、第1液晶パネル14に含まれる偏光板16の透過軸と平行に設定される。これにより、反射型偏光板17は、第1液晶パネル14から出射される光(表示光)を透過する。
【0018】
第2液晶表示装置18は、第2光源部(バックライト)19、及び第2液晶パネル20を備える。第2液晶パネル20は、第2光源部19側に配置された偏光板21と、第2光源部19の反対側に配置された偏光板22とを備える。
【0019】
第2光源部19は、例えば面形状を持つ光源(面光源)から構成され、第2液晶パネル20に向けて照明光を出射する。図1に示した第2光源部19を起点とした破線矢印は、第2光源部19から出射される光の光路(光軸)を示している。
【0020】
第2液晶パネル20は、第2光源部19からの照明光を透過して光変調を行う。第2光源部19の光軸は、第2液晶パネル20の垂線と平行である。第2液晶パネル20は、車速等の運転情報を示す画像を表示する。第1液晶パネル14と同様に、第2液晶パネル20の駆動モードについても特に限定されず、TNモード、VAモード、又はホモジニアスモードなどを用いることができる。また、第2液晶パネル20は、ノーマリーブラックモードであってもよいし、ノーマリーホワイトモードであってもよい。
【0021】
偏光板21、22は、例えば、互いの透過軸が直交するように、クロスニコル状態で配置される。偏光板21、22の透過軸の関係は、液晶モードに応じて適宜設定される。第2液晶パネル20に含まれる偏光板22の透過軸は、反射型偏光板17の反射軸と平行に設定される。換言すると、第2液晶パネル20に含まれる偏光板22の透過軸は、第1液晶パネル14に含まれる偏光板16の透過軸と直交するように設定される。
【0022】
第2液晶パネル20は、反射型偏光板17(又は、第1液晶パネル14)に向き合うとともに、反射型偏光板17の垂線に対して斜め下方に配置される。また、第2液晶パネル20は、第2液晶パネル20から出射された光(表示光)が反射型偏光板17に斜めに入射するように配置される。すなわち、反射型偏光板17の垂線と第2光源部19の光軸とのなす角度θは、0度より大きく90度より小さい。より好ましくは、反射型偏光板17の垂線と第2光源部19の光軸とのなす角度θは、5度より大きく35度より小さい。反射型偏光板17の垂線と第2光源部19の光軸とのなす角度θは、前述した第1液晶パネル14の垂線と第1光源部12の光軸とのなす角度θと同じである。これにより、反射型偏光板17は、第2液晶パネル20から出射される光(表示光)を反射する。
【0023】
反射部材(反射鏡)23は、第1光源部12の光軸上に配置される。反射部材23は、凹面鏡、又は平面鏡などから構成される。反射部材23は、第1液晶表示装置11及び第2液晶表示装置18からの表示光を表示部材25に向けて反射する。反射部材23として凹面鏡を用いた場合、凹面鏡は、液晶表示装置からの表示光を所定の拡大率で拡大することが可能である。
【0024】
位相差板24は、反射部材23によって反射された光の光軸上に配置される。位相差板24は、入射光を円偏光又は楕円偏光に変換する。位相差板24は、例えばλ/4板から構成される。反射部材23によって反射された表示光は、位相差板24を透過する。なお、位相差板24は、反射部材23と反射型偏光板17との間に配置してもよい。
【0025】
表示部材25は、第1液晶表示装置11及び第2液晶表示装置18からの表示光を投射するために使用される。表示部材25によって反射された表示光を運転者(観察者)26が視認することで、運転者26は、表示部材25越しに虚像27、28を視認することができる。虚像27、28として運転者26に視認される情報としては、車速、エンジン回転数、走行距離、ナビゲーション情報、及び外気温などが挙げられる。
【0026】
表示部材25は、車両のウインドシールドである。また、表示部材25は、ヘッドアップディスプレイ装置10専用に設けられた半透明(又は透明)なスクリーン(コンバイナー)であってもよい。コンバイナーは、例えば、車両のインストルメントパネル(フロントパネル、ダッシュボードともいう)上に配置されたり、運転者26の前方に配置されたルームミラーに装着されたり、ウインドシールドの上部に設置されたサンバイザーに装着されて使用される。コンバイナーは、例えば、曲面を有する板状の合成樹脂製の基材からなり、その基材の表面には酸化チタン、酸化シリコンなどからなる蒸着膜が施され、この蒸着膜によって半透過の機能を備える。
【0027】
[1-1] 第1光源部12及び第2光源部19の構成
次に、第1光源部12及び第2光源部19の構成について説明する。図2は、第1光源部12の断面図である。第2光源部19の構成は、第1光源部12の構成と同じである。
【0028】
第1光源部12は、基板30、発光素子31、ヒートシンク(熱吸収板)32、支持部材33、光源光学系34、及び支持部材(レンズホルダー)35を備える。基板30上には、1個又は複数個の発光素子31が設けられる。発光素子31としては、例えば白色の発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)が用いられる。基板30は、発光素子31に電源を供給するための配線が設けられた回路基板から構成される。基板30の底面には、第1光源部12の熱を吸収又は放射するためのヒートシンク32が設けられる。
【0029】
発光素子31の上方には、光源光学系34が設けられる。光源光学系34は、例えば、平凸レンズL1、及び凸レンズ(両凸レンズ)L2から構成される。平凸レンズL1は、基板30上に設けられた支持部材33によって支持され、凸レンズL2は、ヒートシンク32上に設けられた支持部材35によって支持される。光源光学系34は、発光素子31からの照明光を集光して一定方向に出射する。光源光学系34から液晶パネル側へ出射された照明光は、面光源となる。
【0030】
[1-2] 第1液晶パネル14及び第2液晶パネル20の構成
次に、第1液晶パネル14及び第2液晶パネル20の構成について説明する。図3は、第1液晶パネル14の断面図である。第2液晶パネル20の構成は、第1液晶パネル14の構成と同じである。
【0031】
第1液晶パネル14は、TFT及び画素電極等が形成されるTFT基板40と、カラーフィルター及び共通電極等が形成されかつTFT基板40に対向配置されるカラーフィルター基板(CF基板)41とを備える。TFT基板40及びCF基板41の各々は、透明基板(例えば、ガラス基板、又はプラスチック基板)から構成される。TFT基板40は、バックライトに対向配置され、バックライトからの照明光は、TFT基板40側から第1液晶パネル14に入射する。第1液晶パネル14の2つの主面のうちバックライトと反対側の主面が、第1液晶パネル14の表示面である。
【0032】
液晶層42は、TFT基板40及びCF基板41間に充填される。具体的には、液晶層42は、TFT基板40及びCF基板41と、シール材(図示せず)とによって包囲された領域内に封入される。液晶層42を構成する液晶材料は、TFT基板40及びCF基板41間に印加された電界に応じて液晶分子の配向が操作されて光学特性が変化する。
【0033】
シール材は、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFT基板40及びCF基板41に塗布された後、紫外線照射、又は加熱等により硬化させられる。シール材の中には、TFT基板とCF基板との間隔(ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布される。なお、シール材にギャップ材を混入させることに加えて若しくは代えて、画像表示領域の周辺に位置する周辺領域にギャップ材を配置するようにしてもよい。
【0034】
TFT基板40の液晶層42側には、複数のスイッチング素子(アクティブ素子)43が設けられる。スイッチング素子43としては、例えばTFT(Thin Film Transistor)が用いられ、またnチャネルTFTが用いられる。TFT43は、走査線GLとして機能するゲート電極と、ゲート電極上に設けられたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に設けられた半導体層(例えばアモルファスシリコン層)と、半導体層に部分的に接しかつ互いに離間して設けられたソース電極及びドレイン電極とを備える。ソース電極は、信号線SLに電気的に接続される。
【0035】
TFT43上には、絶縁層44が設けられる。絶縁層44上には、複数の画素に対応する複数の画素電極45が設けられる。絶縁層44内かつTFT43のドレイン電極上には、画素電極45に電気的に接続されたコンタクトプラグ(コンタクトホール)46が設けられる。
【0036】
CF基板41の液晶層42側には、カラーフィルター47が設けられる。カラーフィルター47は、複数の着色フィルター(着色部材)を備え、具体的には、複数の赤フィルター47-R、複数の緑フィルター47-G、及び複数の青フィルター47-Bを備える。一般的なカラーフィルターは光の三原色である赤(R)、緑(G)、青(B)で構成される。隣接したR、G、Bの三色のセットが表示の単位(画素)となっており、1つの画素中のR、G、Bのいずれか単色の部分はサブピクセル(サブ画素)と呼ばれる最小駆動単位である。TFT43及び画素電極45は、サブピクセルごとに設けられる。以下の説明では、画素とサブ画素との区別が特に必要な場合を除き、サブ画素を画素と呼ぶものとする。
【0037】
赤フィルター47-R、緑フィルター47-G、及び青フィルター47-Bの境界部分、及び画素(サブピクセル)の境界部分には、遮光用のブラックマトリクス(遮光膜)48が設けられる。すなわち、ブラックマトリクス48は、網目状に形成される。ブラックマトリクス48は、例えば、着色部材間の不要な光を遮蔽し、コントラストを向上させるために設けられる。
【0038】
カラーフィルター47及びブラックマトリクス48上には、共通電極49が設けられる。共通電極49は、第1液晶パネル14の表示領域全体に平面状に形成される。
【0039】
TFT基板40の液晶層42と反対側には、位相差板50、及び偏光板15が設けられる。CF基板41の液晶層42と反対側には、位相差板51、及び偏光板16が設けられる。なお、第2液晶パネル20の場合、図3の偏光板15、16がそれぞれ偏光板21、22に置き換わる。
【0040】
位相差板50、51は、屈折率異方性を有しており、面内において互いに直交する遅相軸及び進相軸を有する。位相差板50、51は、遅相軸と進相軸とをそれぞれ透過する所定波長の光の間に所定のリタデーション(λを透過する光の波長としたとき、λ/4の位相差)を与える機能を有する。すなわち、位相差板50、51は、λ/4板から構成される。位相差板50、51の遅相軸はそれぞれ、偏光板15、16の透過軸に対して概略45°に設定される。
【0041】
なお、前述した偏光板及び位相差板を規定する角度は、所望の動作を実現可能な誤差、及び製造工程に起因する誤差を含むものとする。例えば、前述した概略45°は、45°±5°の範囲を含むものとする。例えば、前述した直交は、90°±5°の範囲を含むものとする。
【0042】
画素電極45、コンタクトプラグ46、及び共通電極49は、透明電極から構成され、例えばITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。絶縁層44としては、透明な絶縁材料が用いられ、例えば、シリコン窒化物(SiN)が用いられる。
【0043】
[2] ヘッドアップディスプレイ装置10の動作
上記のように構成されたヘッドアップディスプレイ装置10の動作について説明する。図4は、ヘッドアップディスプレイ装置10の動作を説明する模式図である。図4では、画像14A、20A、及び虚像27、28を矢印で例示している。図4の“f”は、凹面鏡(反射部材)23の焦点であり、図4の“o”は、凹面鏡23の曲率中心である。凹面鏡の曲率中心は、光軸と凹面鏡とが交差する極(又は極の近辺)に接する球面(曲率円)の中心である。
【0044】
反射部材として凹面鏡23を用いた場合、第1液晶パネル14及び第2液晶パネル20は、凹面鏡23の焦点f内に配置される。
【0045】
第1液晶パネル14は、画像14Aを表示する。第1液晶パネル14の偏光板16の透過軸は、反射型偏光板17の透過軸と平行である。よって、第1液晶パネル14からの表示光は、反射型偏光板17を透過し、運転者26に届く。運転者26は、第1液晶パネル14からの表示光を、虚像27として視認する。
【0046】
図5は、第1液晶パネル14の画像14Aを運転者26が視認する様子を具体的に説明する模式図である。運転者26は、凹面鏡23に写る画像14Aを、ウインドシールド25越しに虚像27として視認する。
【0047】
第2液晶パネル20は、画像20Aを表示する。第2液晶パネル20の偏光板22の透過軸は、反射型偏光板17の反射軸と平行である。よって、第2液晶パネル20からの表示光は、反射型偏光板17で反射され、運転者26に届く。運転者26は、第2液晶パネル20からの表示光を、虚像28として視認する。運転者26が虚像28を視認する様子は、図5と同じである。
【0048】
ここで、第2液晶パネル20から凹面鏡23までの光路長は、第1液晶パネル14から凹面鏡23までの光路長より長い。よって、第2液晶パネル20の虚像28は、第1液晶パネル14の虚像27よりウインドシールド25から遠い位置で結像する。運転者26は、結像位置が異なる2つの虚像27、28を視認することができる。
【0049】
図4に示すように、凹面鏡23から虚像27までの距離は、曲率中心oと画像14Aとを通る直線L1と、焦点fと画像14Aとを通る直線が凹面鏡23に達する点から水平方向に延長した直線L2とが交わる点と凹面鏡23との水平距離である。同様に、凹面鏡23から虚像28までの距離は、曲率中心oと画像20Aとを通る直線L3と、焦点fと画像20Aとを通る直線が凹面鏡23に達する点から水平方向に延長した直線L4とが交わる点と凹面鏡23との水平距離である。
【0050】
また、図1に示すように、第1液晶パネル14及び第2液晶パネル20からの表示光は、位相差板24を透過した後、ウインドシールド25に照射される。第1液晶パネル14及び第2液晶パネル20からの表示光には、互いに偏光面が直交する2つの偏光成分、すなわちP波(P偏光)及びS波(S偏光)が含まれる。P偏光とS偏光とでは、反射面での反射率が異なる。位相差板24によって直線偏光を円偏光(又は楕円偏光)に変換することで、第1液晶パネル14から出射された直線偏光と、第2液晶パネル20から出射された直線偏光との間で、ウインドシールド25で反射される際の反射率の差を低減できる。
【0051】
[3] 第1実施形態の効果
以上詳述したように第1実施形態では、ヘッドアップディスプレイ装置10は、第1光源部12と、第1光源部12からの光を透過する第1液晶パネル14と、第1光源部12の光軸上に配置され、第1液晶パネル14を透過した光を受ける第1面と、第1面と反対側の第2面とを有する反射型偏光板17と、反射型偏光板17の第2面に向けて光を出射する第2光源部19と、第2光源部19からの光を透過する第2液晶パネル20とを備える。第1液晶パネル14は、液晶層を透過した光を偏光させる偏光板16を含む。第2液晶パネル20は、液晶層を透過した光を偏光させる偏光板22を含む。第1光源部12の光軸は、反射型偏光板17の垂線に対して斜めに設定される。第1液晶パネル14の垂線は、反射型偏光板17の垂線に平行に設定される。第2光源部19の光軸は、反射型偏光板17の垂線に対して斜めに設定される。偏光板16の透過軸は、反射型偏光板17の透過軸と平行に設定される。偏光板22の透過軸は、反射型偏光板17の反射軸と平行に設定される。
【0052】
従って第1実施形態によれば、第1液晶パネル14が画像14Aを表示し、第2液晶パネル20が画像20Aを表示した場合、結像位置が異なる2つの虚像27、28を表示させることができる。例えば、運転者26に近い虚像27には通常の運転に必要な速度情報を表示し、運転者26から遠い虚像28には一時的な情報(危険回避情報や道案内情報など)を表示させることが可能となる。
【0053】
また、レンズなどで光学系の焦点距離を変えることなく、結像位置が異なる複数の虚像を表示することが可能である。これにより、ヘッドアップディスプレイ装置10が可動機構を有さないため、信頼性を向上できる。また、高価な光学部材を使用しないため、製造コストを低減できる。
【0054】
また、ヘッドアップディスプレイ装置10は、第1液晶パネル14から出射されかつ反射型偏光板17を透過した光と、第2液晶パネル20から出射されかつ反射型偏光板17で反射された光とを透過し、直線偏光を円偏光又は楕円偏光に変換する位相差板24を備えている。これにより、第1液晶パネル14から出射された直線偏光と、第2液晶パネル20から出射された直線偏光との間で、ウインドシールド25で反射される際の反射率の差を低減できる。この結果、第1液晶パネル14による虚像27と、第2液晶パネル20による虚像28との輝度の差を低減できる。
【0055】
[第2実施形態]
第2実施形態は、第1光源部12と第1液晶パネル14とを平行に配置し、第1液晶パネル14と反射型偏光板17とを斜めに配置するようにしている。図6は、本発明の第2実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置10の断面図である。
【0056】
第1液晶表示装置11は、第1光源部12、及び第1液晶パネル14を備える。第1液晶パネル14の垂線は、第1光源部12の光路(光軸)と平行に設定される。
【0057】
支持部材13は、第1液晶パネル14と反射型偏光板17とに接し、第1液晶パネル14と反射型偏光板17とを固定する。また、支持部材13は、第1液晶パネル14の垂線と反射型偏光板17の垂線とが斜めになるように、第1液晶パネル14と反射型偏光板17とを固定する。第1液晶パネル14の垂線と反射型偏光板17の垂線とのなす角度は、第1実施形態で説明した角度θと同じである。支持部材13は、例えば、第1液晶パネル14の縁に沿って形成され、平面形状が矩形の枠で構成される。
【0058】
図6に示すようにヘッドアップディスプレイ装置10を構成した場合でも、第1実施形態と同じ動作を実現できる。
【0059】
第2実施形態では、第1光源部12からの照明光は、第1液晶パネル14に垂直に入射する。これにより、第1液晶パネル14の画像が劣化するのを抑制できる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0060】
なお、上記実施形態では、2つの虚像を結像させることが可能なヘッドアップディスプレイ装置10について説明しているが、第3の液晶表示装置又はそれ以上の液晶表示装置を用意し、3個以上の虚像を結像させるようにしてもよい。なお、3つの液晶表示装置は、反射部材としての凹面鏡の焦点内に配置される。
【0061】
上記実施形態では、第2液晶パネル20が反射型偏光板17の斜め下方に配置されている。反射型偏光板17を傾ける方向と第2液晶パネル20の位置とが揃っていれば、第2液晶パネル20は、反射型偏光板17の斜め下方、斜め上方、斜め左側、及び斜め右側などのいずれに配置してもよい。
【0062】
本明細書において、板やフィルムなどは、その部材を例示した表現であり、その構成に限定されるものではない。例えば、位相差板は、板状の部材に限定されるものではなく、明細書で記載した機能を有するフィルムやその他の部材であってもよい。偏光板は、板状の部材に限定されるものではなく、明細書で記載した機能を有するフィルムやその他の部材であってもよい。
【0063】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、構成要素を変形して具体化することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、1つの実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合わせ、若しくは異なる実施形態に開示される構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を構成することができる。例えば、実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、これらの構成要素が削除された実施形態が発明として抽出されうる。
【符号の説明】
【0064】
10…ヘッドアップディスプレイ装置、11…第1液晶表示装置、12…第1光源部、13…支持部材、14…第1液晶パネル、15,16…偏光板、17…反射型偏光板、18…第2液晶表示装置、19…第2光源部、20…第2液晶パネル、21,22…偏光板、23…反射部材、24…位相差板、25…ウインドシールド、27,28…虚像、30…基板、31…発光素子、32…ヒートシンク、33,35…支持部材、34…光源光学系、40…TFT基板、41…CF基板、42…液晶層、43…スイッチング素子、44…絶縁層、45…画素電極、46…コンタクトプラグ、47…カラーフィルター、48…ブラックマトリクス、49…共通電極、50,51…位相差板
図1
図2
図3
図4
図5
図6