(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】法面における酸性水排水構造および酸性水排水方法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/18 20060101AFI20220517BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20220517BHJP
C02F 1/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
E02D17/18 Z
E02D17/20 103C
C02F1/00 J
(21)【出願番号】P 2018052072
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】高松 賢一
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄一
(72)【発明者】
【氏名】坪田 裕至
(72)【発明者】
【氏名】広兼 修治
(72)【発明者】
【氏名】小西 克文
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-018294(JP,A)
【文献】特開2011-250729(JP,A)
【文献】特開昭63-261016(JP,A)
【文献】実開昭50-099705(JP,U)
【文献】特開2013-044222(JP,A)
【文献】特開2005-113536(JP,A)
【文献】特開昭52-045107(JP,A)
【文献】特開昭63-315731(JP,A)
【文献】特開昭52-154203(JP,A)
【文献】特開平07-054344(JP,A)
【文献】米国特許第04572705(US,A)
【文献】特開2008-297780(JP,A)
【文献】特開2007-113391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00-17/20
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
法面に四角い枠状の法枠が格子状に設置され、
前記法枠の横方向に延びる横枠部に水抜き孔が形成され、
上下に隣接する前記横枠部の水抜き孔同士が、前記法枠内
の法面上に配設され長尺状で集排水性を有する集排水材で連結され、
前記集排水材の外径よりも幅が大きく透水性を有する帯状の下敷き用透水マットが前記集排水材の下で前記法面に接し、かつ、上下の前記水抜き孔間を繋ぐように敷設され、
透水性を有する帯状の透水マットが、前記法枠内の酸性水析出箇所から前記
下敷き用透水マットに向かって下向きに配設され、
かつ、前記透水マットの端部が前記下敷き用透水マットに重ねられており、
前記酸性水析出箇所から析出した酸性水が、前記透水マット
および前記下敷き用透水マットを介して前記集排水材に集水され、前記水抜き孔を通って下方に流れる、
ことを特徴とする法面における酸性水排水構造
【請求項2】
前記集排水材と前記透水マットと
前記下敷き用透水マットとがコンクリート層によって覆われている、
ことを特徴とする請求項1に記載の法面における酸性水排水構造。
【請求項3】
前記下敷き用透水マット
の下面は、非透水性シートによって覆われている、
ことを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の法面における酸性水排水構造。
【請求項4】
最下端に位置する前記横枠部の水抜き孔から、前記酸性水を排水路に導く排水管を備える、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の法面における酸性水排水構造。
【請求項5】
法面に四角い枠状の法枠を格子状に設置し、
前記法枠の横方向に延びる横枠部に水抜き孔を形成し、
上下に隣接する前記横枠部の水抜き孔同士を、前記法枠内
の法面上に配設され長尺状で集排水性を有する集排水材で連結し、
前記集排水材よりも幅が大きく透水性を有する帯状の下敷き用透水マットを前記集排水材の下で前記法面に接し、かつ、上下の前記水抜き孔間を繋ぐように敷設し、
透水性を有する帯状の透水マットを、前記法枠内の酸性水析出箇所から前記
下敷き用透水マットに向かって下向きに配設し、
かつ、前記透水マットの端部を前記下敷き用透水マットに重ね、
前記酸性水析出箇所から析出した酸性水を、前記透水マット
および前記下敷き用透水マットを介して前記集排水材に集水し、前記水抜き孔を通して下方に流す、
ことを特徴とする法面における酸性水排水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、法面における黄鉄鉱に起因する酸性水を排水するための、法面における酸性水排水構造および酸性水排水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切取法面工事においては、切り取った法面の長期安定化のために、四角い枠状の法枠コンクリートを格子状に設置し、法枠内を緑化する(厚層基材を吹き付ける)ことが一般に行われている。一方、切取法面の地山に黄鉄鉱(FeS2)が含まれている場合、法面からの地下水の流出とともに、黄鉄鉱が水や空気と化学反応することで茶褐色の酸性水が析出する可能性がある。そして、酸性水が析出すると、法枠内を緑化した植物の育成阻害、法枠コンクリートの中性化による健全性の低下、および茶褐色変色による外観不良などの悪影響を及ぼす可能性がある。また、切取法面の地山に黄鉄鉱が含まれている限り、酸性水の析出を止めることはできない。
【0003】
そこで、酸性水発生物質を含む盛土中の水を排出することができる、という排水構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この排水構造は、浸透した雨水を排出するために盛土を鉛直方向に貫通し、側面に通水孔が設けられた縦樋を設け、この縦樋の周囲に中和材を石等とともに設ける。そして、雨水と黄鉄鉱の接触で生じた酸性水を、中和材で中和した後に縦樋内に導くものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地下水の浸透方向は一方向ではなく、あらゆる箇所、方向から地下水が浸透する。このため、特許文献1に記載の排水構造を適用する場合、多くの箇所に縦樋を設置して周囲に中和材等を配置しなければならず、大規模な工事となり現実的ではない。
【0006】
そこでこの発明は、法面における酸性水を適正に排水可能で適用が容易な、法面における酸性水排水構造および酸性水排水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、法面に四角い枠状の法枠が格子状に設置され、前記法枠の横方向に延びる横枠部に水抜き孔が形成され、上下に隣接する前記横枠部の水抜き孔同士が、前記法枠内の法面上に配設され長尺状で集排水性を有する集排水材で連結され、前記集排水材の外径よりも幅が大きく透水性を有する帯状の下敷き用透水マットが前記集排水材の下で前記法面に接し、かつ、上下の前記水抜き孔間を繋ぐように敷設され、透水性を有する帯状の透水マットが、前記法枠内の酸性水析出箇所から前記下敷き用透水マットに向かって下向きに配設され、かつ、前記透水マットの端部が前記下敷き用透水マットに重ねられており、前記酸性水析出箇所から析出した酸性水が、前記透水マットおよび前記下敷き用透水マットを介して前記集排水材に集水され、前記水抜き孔を通って下方に流れる、ことを特徴とする法面における酸性水排水構造である。
【0008】
この発明によれば、酸性水析出箇所から析出した酸性水が、透水マットに透水・浸透して下向きに流れ、下敷き用透水マットを介して集排水材に集水され、集排水材を流れて下位の水抜き孔を通る。このようにして、各法枠内で析出した酸性水が順次下位の水抜き孔を通って下方に排水される。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の酸性水排水構造において、前記集排水材と前記透水マットと前記下敷き用透水マットとがコンクリート層によって覆われている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の酸性水排水構造において、前記下敷き用透水マットの下面は、非透水性シートによって覆われている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載の酸性水排水構造において、最下端に位置する前記横枠部の水抜き孔から、前記酸性水を排水路に導く排水管を備える、ことを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、法面に四角い枠状の法枠を格子状に設置し、前記法枠の横方向に延びる横枠部に水抜き孔を形成し、上下に隣接する前記横枠部の水抜き孔同士を、前記法枠内の法面上に配設され長尺状で集排水性を有する集排水材で連結し、前記集排水材よりも幅が大きく透水性を有する帯状の下敷き用透水マットを前記集排水材の下で前記法面に接し、かつ、上下の前記水抜き孔間を繋ぐように敷設し、透水性を有する帯状の透水マットを、前記法枠内の酸性水析出箇所から前記下敷き用透水マットに向かって下向きに配設し、かつ、前記透水マットの端部を前記下敷き用透水マットに重ね、前記酸性水析出箇所から析出した酸性水を、前記透水マットおよび前記下敷き用透水マットを介して前記集排水材に集水し、前記水抜き孔を通して下方に流す、ことを特徴とする法面における酸性水排水方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および請求項5の発明によれば、各法枠内で析出した酸性水が、透水マットおよび下敷き用透水マットを介して集排水材に集水されて水抜き孔を通って下方に流れるため、法面における酸性水を適正に排水することが可能となる。この結果、法面の健全性を長期的に維持することが可能となる(法面の風化防止、および、法枠コンクリートの中性化防止および変色化防止などが可能となる。)。しかも、上下に隣接する横枠部の水抜き孔同士を集排水材で連結し、下敷き用透水マットを集排水材の下で法面に接し、かつ、上下の水抜き孔間を繋ぐように敷設し、透水マットを酸性水析出箇所から下敷き用透水マットに向かって下向きに配設して端部を重ねればよいため、容易に適用することが可能(実現可能)である。
【0014】
請求項2の発明によれば、集排水材と透水マットと下敷き用透水マットとがコンクリート層で覆われているため、集排水材と透水マットと下敷き用透水マットとを強固、安定に配設、固定することができるとともに、集排水材と透水マットと下敷き用透水マットとが変色して外観が損なわれるのを防止することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、下敷き用透水マットの下面は、非透水性シートによって覆われているため、透水マットから流れた酸性水が法面側に流れずに、漏れなく効率的に排水することが可能となる。
【0016】
請求項4の発明によれば、最下端に位置する横枠部の水抜き孔から、酸性水を排水路に導く排水管を備えるため、酸性水を漏れなく効率的に排水路に流すことができるとともに、横枠部から排水路までの面が酸性水で変色等するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の実施の形態に係る法面の中央部における酸性水排水構造を示す側面断面図である。
【
図2】この発明の実施の形態に係る法面の下端部における酸性水排水構造を示す側面断面図である。
【
図5】
図1の酸性水排水構造における集排水材を示す正面図(a)と側面図(b)である。
【
図6】この発明の実施の形態に係る法面における酸性水排水方法を示し、法枠内の酸性水析出箇所を確認した状態を示す正面図である。
【
図7】
図6に続いて、下敷き用透水マットと透水マットを配設した状態を示す正面図である。
【
図8】
図7に続いて、集排水材を配設した状態を示す正面図である。
【
図9】この発明の実施の形態に係る法面に法枠を設置した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0019】
図1~
図9は、この発明の実施の形態を示し、
図1および
図2は、この実施の形態に係る法面における酸性水排水構造(以下、単に「酸性水排水構造」という)を示す側面断面図であり、
図1は、法面101の中央部を示し、
図2は、法面101の下端部を示す。この酸性水排水構造は、切土や盛土などによって作られた斜面である法面101において、黄鉄鉱などに起因する酸性水Wを排水するための構造であり、各法枠1の枠内1aで析出した酸性水Wを順次下方に流して排水するものである。
【0020】
まず、法面101に四角い枠状の法枠1が格子状に設置されている。すなわち、
図9に示すように、コンクリート(モルタルを含む)製で横方向・水平方向に延びる横枠部11が法面101の上下方向に所定間隔で複数設置され、コンクリート製で縦方向・垂直方向に延びる縦枠部12が法面101の左右方向に所定間隔で複数設置されることで、四角い枠状の法枠1が格子状に連続的に法面101に設置されている。従って、上下および左右に隣接する法枠1は、横枠部11および縦枠部12を共有する。
【0021】
また、各法枠1の横方向に延びる横枠部11の中央部には、
図1および
図3に示すように、上下に貫通する水抜き孔11aが形成され、さらに、この水抜き孔11aには、管状の水抜きパイプ2が挿入、装着されている。ここで、水抜きパイプ2の内径は、各法枠内1aで析出した酸性水Wを下方に流せるように設定されている。
【0022】
そして、上下に隣接する横枠部11の水抜き孔11a同士つまり水抜きパイプ2同士が、法枠内1aに配設され長尺状で集排水性を有する集排水材4で連結されている。すなわち、集排水材4は、
図5に示すように、線材を固めて形成されて多くの空隙を有することで、高い集水性と排水性を備えるもの(ヘチマ状・スポンジ状)で、かつ変形自在で、この実施の形態では、軸心に孔4aを有する空中円管状に形成されている。このような集排水材4が各法枠1の枠内1aに配置され、
図1および
図3に示すように、一端部が上位の水抜きパイプ2に挿入され、他端部が下位の水抜きパイプ2に挿入されている。ここで、集排水材4の内外径および集排水性は、各法枠内1aで析出した酸性水Wを下方に流せるように設定されている。
【0023】
さらに、集排水材4の下には、
図3、
図4に示すように、透水性を有する帯状の下敷き用透水マット31が配設されている。すなわち、下敷き用透水マット31は、多孔性で水の浸透性・透水性が高い帯状体で、下面が法枠内1aの法面101に接して上下の水抜きパイプ2間を繋ぐように敷設されている。そして、長手方向のほぼ全長にわたって下敷き用透水マット31の上面に接するように、集排水材4が配設されている。
【0024】
ここで、下敷き用透水マット31の幅は、集排水材4の外径よりも大きく、酸性水Wを漏れなく効率的に授受できるように設定されている。また、上下の水抜きパイプ2間を繋ぐように敷設されることで、下敷き用透水マット31は、法面101に沿って下向きに配設されている。さらに、下敷き用透水マット31の下面(法面101側)を非透水性のシートなどで覆い、後述する透水マット32からの酸性水Wが法面101側に流れずに、漏れなく効率的に集排水材4に伝わるようにしてもよい。
【0025】
また、透水性を有する帯状の透水マット32が、法枠内1aの酸性水析出箇所Pから集排水材4つまり下敷き用透水マット31に向かって下向きに配設されている。すなわち、透水マット32は、多孔性で水の浸透性・透水性が高い帯状体で、
図7に示すように、下面が法枠内1aの法面101に接して、一端側が酸性水析出箇所Pを覆い、他端側が下敷き用透水マット31と重なるように敷設されている。
【0026】
この際、一端側から他端側に下向きになるように、透水マット32が配設されている。つまり、正面から見た状態で、下敷き用透水マット31を幹として透水マット32が上に延びる枝のように、透水マット32が配設されている。このように、透水マット32が下敷き用透水マット31に向かって下向きに配設されているため、酸性水析出箇所Pから析出した酸性水Wが、自重によって法面101の斜面に沿って効率的に下敷き用透水マット31に流れる。
【0027】
また、この実施の形態では、下敷き用透水マット31の上に透水マット32の他端側が重なって、
図8に示すように、その上に、集排水材4が配設されている。さらに、透水マット32の幅は、酸性水Wを漏れなく効率的に授受できるように設定されている。ここで、酸性水析出箇所Pとは、法枠内1aにおいて酸性水Wが析出している箇所あるいは析出すると予測される箇所であり、目視によって酸性水Wの析出や亀裂、変色などが確認できる箇所や、PH試験などで酸性水Wの析出が確認できる箇所などである。
【0028】
このようにして、下敷き用透水マット31、透水マット32および集排水材4が配設されていることで、酸性水析出箇所Pから析出した酸性水Wが、透水マット32と下敷き用透水マット31を介して集排水材4に集水され、水抜き孔11aつまり水抜きパイプ2を通って下方に流れる。すなわち、酸性水析出箇所Pから析出した酸性水Wが、透水マット32に透水・浸透して下向きに流れて下敷き用透水マット31に伝わり、集排水材4に集水される。そして、酸性水Wが集排水材4を下方に流れて、下位の水抜きパイプ2を通って下位の法枠内1a側に流れる。このようにして、各法枠内1aで析出した酸性水Wが、順次下位の水抜きパイプ2を通って下方に排水される。
【0029】
さらに、下敷き用透水マット31、透水マット32および集排水材4が、コンクリート層5によって覆われている。すなわち、
図3、
図4に示すように、法枠内1aの全面に対してコンクリートが吹き付けられて、コンクリート層5が形成されている。
【0030】
一方、法面101の下端部つまり排水路110側においては、
図2に示すように、最下端に位置する横枠部11の水抜き孔11aつまり水抜きパイプ2から、酸性水Wを排水路110に導く排水管21を備える。すなわち、最下端に位置する水抜きパイプ2に排水管21の一端部が接続され、排水管21が路面102に沿って敷設されて他端部が排水路110に達している。これにより、各法枠内1aで析出した酸性水Wが、排水管21内を流れて排水路110に排水されるようになっている。
【0031】
ここで、排水路110の上面は、路面102と面一になっている。また、路面102にU字状の収容溝を形成し、この収容溝に排水管21を配置、収容することで排水管21が路面102から突出しないようにしてもよいし、排水管21を地中に埋設し、排水路110に地中で接続してもよい。なお、この実施の形態では、最下端の横枠部11においてV字状の溝1bが形成され、この溝1bから最下端の水抜きパイプ2の一部が露出している。
【0032】
次に、このような構成の酸性水排水構造の作成方法、つまり、法面における酸性水排水方法(以下、単に「酸性水排水方法」という)について説明する。
【0033】
まず、
図9に示すように、法面101に四角い枠状の法枠1を格子状に設置する(法枠設置ステップ)とともに、各法枠1の横方向に延びる横枠部11に水抜き孔11aを形成して、水抜きパイプ2を装着する(水抜き孔形成ステップ)。次に、
図6に示すように、各法枠1に対して、目視やPH試験などによって酸性水析出箇所Pを特定する(析出箇所特定ステップ)。続いて、
図7に示すように、上下の水抜きパイプ2間を繋ぐように下敷き用透水マット31を敷設するとともに、法枠内1aの酸性水析出箇所Pから下敷き用透水マット31に向かって、透水マット32を下向きに敷設する(透水マット配設ステップ)。ここで、
図7では、2つの酸性水析出箇所Pに対してそれぞれ透水マット32が敷設されている。
【0034】
次に、
図8に示すように、上下に隣接する横枠部11の水抜きパイプ2同士を、法枠内1aに配設され長尺状で集排水性を有する集排水材4で連結する(集排水材配設ステップ)。そして、
図3に示すように、法枠内1aの全面を覆うようにコンクリート層5を形成する(コンクリート層形成ステップ)。また、最下端の水抜きパイプ2に排水管21を接続して、排水管21を排水路110まで延ばして配設するものである。
【0035】
このように、この酸性水排水構造および酸性水排水方法によれば、各法枠1a内で析出した酸性水Wが、透水マット32を介して集排水材4に集水されて水抜き孔11aつまり水抜きパイプ2を通って下方に流れるため、法面101における酸性水Wを適正に排水することが可能となる。この結果、法面101の健全性(非風化や非変色化など)を長期的に維持することが可能となる。しかも、上下に隣接する横枠部11の水抜きパイプ2同士を集排水材4で連結し、透水マット32を酸性水析出箇所Pから集排水材4に向かって下向きに配設すればよいため、容易に適用することが可能(実現可能)である。
【0036】
また、集排水材4や透水マット32などを含む法枠内1aがコンクリート層5で覆われているため、集排水材4や透水マット32などを強固、安定に配設、固定することができるとともに、集排水材4や透水マット32などが変色して外観が損なわれるのを防止することができる。
【0037】
さらに、下敷き用透水マット31が集排水材4の下に配設され、この下敷き用透水マット31に向かって透水マット32が配設されているため、透水マット32から流れた酸性水Wが、下敷き用透水マット31を介して効率的に集排水材4に集水される。すなわち、下敷き用透水マット31と透水マット32が重なって面接触しているため、透水マット32からの酸性水Wが下敷き用透水マット31に効率的に流れる。しかも、下敷き用透水マット31と集排水材4が長手方向のほぼ全長にわたって接触しているため、下敷き用透水マット31から集排水材4に酸性水Wが効率的に透水・浸透する。この結果、法枠内1aで析出した酸性水Wを漏れなく効率的に排水することが可能となる。
【0038】
一方、最下端に位置する横枠部11の水抜きパイプ2から、酸性水Wを排水路110に導く排水管21を備えるため、酸性水Wを漏れなく効率的に排水路110に流すことができるとともに、横枠部11から排水路110までの路面102が酸性水Wで変色等するのを防止することができる。
【0039】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、水抜き孔11aに水抜きパイプ2を装着しているが、水抜きパイプ2を配設しないで水抜き孔11a同士を直接集排水材4で連結してもよい。また、上下に隣接する水抜きパイプ2が同心に配設されているが、法面101の形状などに応じて同心に配設しなくてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 法枠
1a 枠内
11 横枠部
11a 水抜き孔
12 縦枠部
2 水抜きパイプ
21 排水管
31 下敷き用透水マット
32 透水マット
4 集排水材
5 コンクリート層
101 法面
110 排水路
W 酸性水
P 酸性水析出箇所