(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ポジトロンCT装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/161 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
G01T1/161 A
(21)【出願番号】P 2018151592
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】橘 一成
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-087490(JP,U)
【文献】特開2014-081372(JP,A)
【文献】特開平02-262086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/161 - 1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状に配置された光子検出器を有するポジトロンCT装置であって、
線状の放射線発生部材と、
前記光子検出器を覆い、円柱状の検査用空間を形成するカバー部材と、
前記放射線発生部材を、前記検査用空間の内部において前記カバー部材の表面に沿って旋回させる旋回機構と、
前記放射線発生部材と前記旋回機構とを着脱自在に接続する接続部材と、
外部から前記検査用空間に至る開口部を遮蔽可能な蓋部材と、
前記蓋部材が前記開口部を遮蔽しているか否かを検出するセンサと、
を備えたことを特徴とするポジトロンCT装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のポジトロンCT装置において、
前記センサ
により前記蓋部材が前
記開口部を遮蔽していない
ことが検出されたときに、前記旋回機構による前記放射線発生部材の旋回動作を禁止する旋回禁止部をさらに備えるポジトロンCT装置。
【請求項3】
リング状に配置された光子検出器を有するポジトロンCT装置であって、
線状の放射線発生部材と、
前記光子検出器を覆い、円柱状の検査用空間を形成するカバー部材と、
前記放射線発生部材を、前記検査用空間の内部において前記カバー部材の表面に沿って旋回させる旋回機構と、
前記放射線発生部材と前記旋回機構とを着脱自在に接続する接続部材と、
前記接続部材が前記旋回機構と接続されているか否かを検出するセンサ
と、
前記センサにより前記接続部材が前記旋回機構と接続されていないことが検出されたときに、前記旋回機構による前記放射線発生部材の旋回動作を禁止する旋回禁止部と、
を備え、
前記接続部材
が、前記カバー部材の表面に沿った円筒部と、前記円筒部と前記カバー部材の間において前記放射線発生部材を支持する支持部と、前記旋回機構に対して着脱自在な接続部とを有することを特徴とするポジトロンCT装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポジトロンCT装置(Positron Emission Computed-Tomography:PET)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポジトロンCT装置においては、あらかじめ放射性薬剤を投与した被検者の検査領域を、リング状に配置された光子検出器内の空間に配置し、被検者の検査領域から放射される放射線としての対消滅光子を光子検出器により検出する。そして、その光子を検出した時刻を測定し、光子検出器における2個の検出領域での検出時刻差が一定時間以内の場合にそれを一対の対消滅光子として計数し、さらに、対消滅発生地点を、光子を検出した2個の検出領域の直線上の位置であると特定する。このようにして得たエミッションデータを蓄積し、蓄積したエミッションデータを用いて画像再構成を行なうことにより、PET画像を取得する。そして取得したPET画像をモニターに表示するとともに、病院内のサーバ等に転送する。
【0003】
このようなポジトロンCT装置に使用される光子検出器の検出感度は一定ではない。このため、リング状に配置された光子検出器内の空間内において校正用の線状の放射線発生部材を旋回させ、そのときの光子検出器の出力を計測することにより、検出感度を補正するようにしている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなポジトロンCT装置においては、従来、光子検出器の検出感度の校正時に校正用の放射線発生部が人等の障害物と衝突する危険を防止するため、光子検出器をカバー部材で覆うとともに、このカバー部材の内部、すなわち、このカバー部材により形成される円柱状の検査用空間の外側(光子検出器側)で校正用の放射線発生部を旋回させる構成が採用されている。このような構成を採用することにより、外部からアクセス可能な空間と校正用の放射線発生部の旋回量域とをカバー部材により遮断することができることから、校正用の放射線発生部が障害物と衝突することを防止することが可能となる。
【0006】
しかしながら、このような構成を採用したときには、カバー部材により形成される円柱状の検査用空間の内径が、放射線発生部材の旋回軌跡より小さくなる。このため、被検者の検査領域を配置する空間が狭くなることから、体格の大きな被検者の検査が困難となり、あるいは、被検者とカバー部材が接近して被検者に大きな圧迫感を与えるという問題が生じている。
【0007】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、検査用空間を大きく維持しながら、光子検出器の検出感度の校正を安全に実行することが可能なポジトロンCT装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、リング状に配置された光子検出器を有するポジトロンCT装置であって、線状の放射線発生部材と、前記光子検出器を覆い、円柱状の検査用空間を形成するカバー部材と、前記放射線発生部材を、前記検査用空間の内部において前記カバー部材の表面に沿って旋回させる旋回機構と、前記放射線発生部材と前記旋回機構とを着脱自在に接続する接続部材と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、外部から前記検査用空間に至る開口部を遮蔽可能な蓋部材と、前記蓋部材が前記外部から前記検査用空間に至る開口部を遮蔽しているか否かを検出するセンサと、を備える。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記センサが、前記蓋部材が前記外部から前記検査用空間に至る開口部を遮蔽していないと判定したときに、前記旋回機構による前記放射線発生部材の旋回動作を禁止する旋回禁止部を備える。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記接続部材は、前記カバー部材の表面に沿った円筒部と、前記円筒部と前記カバー部材の間において前記放射線発生部材を支持する支持部と、前記旋回機構に対して着脱自在な接続部とを有するとともに、前記接続部材が前記旋回機構と接続されているか否かを検出するセンサを備える。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、光子検出器の検出感度の校正時には、円柱状の検査用空間内において放射線発生部材を旋回させるとともに、検査を行うときには放射線発生部材を旋回機構から離脱させる構成であることから、検査用の空間を大きく維持しながら、光子検出器の検出感度の校正を安全に実行することが可能となる。また、被検体を光子検出器により接近させることができることから、より高精度にエミッションデータを取得することができ、精度の高いPET画像を取得することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、センサの作用により、蓋部材により外部から検査用空間に至る開口部が遮蔽され、校正作業を実行しても安全な状態であることを容易に認識することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、蓋部材が外部から検査用空間に至る開口部を遮蔽していないときには放射線発生部材の旋回動作が禁止されることから、校正作業を安全に実行することが可能となる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、センサの作用により、放射線発生部材を支持する接続部材が旋回機構と接続され、校正作業を実行し得る状態であることを容易に認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明に係るポジトロンCT装置の概要図である。
【
図2】この発明に係るポジトロンCT装置に使用される放射線発生部材12の斜視図である。
【
図3】この発明に係るポジトロンCT装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【
図4】この発明の第2実施形態のポジトロンCT装置の概要図である。
【
図5】この発明の第2実施形態に係るポジトロンCT装置に使用される接続部材40および放射線発生部材19の斜視図である。
【
図6】この発明の第2実施形態に係るポジトロンCT装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係るポジトロンCT装置の概要図である。また、
図2は、この発明に係るポジトロンCT装置に使用される放射線発生部材12の斜視図である。
【0018】
このポジトロンCT装置は、例えば、あらかじめ放射性薬剤を投与した被検者の頭部を円柱状の形状を有する検査用空間10内に配置し、被検者の頭部から放射される対消滅光子を検出することによりPET画像を取得するものである。
【0019】
このポジトロンCT装置は、放射線を検出する光子検出器11を検査用空間10を取り囲むようにリング状に配置した構成を有する。リング状に配置された光子検出器11は、
図1に示す実施形態においては3列配置されており、検査用空間10は、リング状に配置された複数の光子検出器11により取り囲まれている。複数の光子検出器11は、カバー部材16により覆われている。このカバー部材16は、リング状に配置された複数の光子検出器11の表面に沿う形状を有し、このカバー部材16により円柱状の検査用空間10が形成される。
【0020】
外部から円柱状の検査用空間10に至る開口部17の前面には、この開口部17を遮蔽可能な蓋部材26が配設されている。この蓋部材26は、コネクタ27を介して装置本体と着脱自在に連結されている。このコネクタ27には、蓋部材26が外部から検査用空間10に至る開口部17を遮蔽しているか否かを検出するための接続センサ29(後述する
図3参照)が配設されている。
【0021】
検査用空間10における開口部17とは逆側には、図示しない支持部材により回転可能に支持された回転円盤21が配設されている。この回転円盤21は、モータ25の駆動により回転する同期プーリ24と、同期ベルト23を介して連結されている。このため、回転円盤21は、モータ25の駆動により回転する。この回転円盤21の回転中心は、検査用空間10の中心と一致している。そして、回転円盤21には、放射線発生部材12との連結部22が配設されている。
【0022】
図2に示すように、放射線発生部材12は、内部にポジトロンを放出する放射線源が充填された線状の棒状部13と、ハンドル15とを備える。棒状部13のハンドル15とは逆側の端部は、ネジ加工がされた雄ネジ部14となっている。この雄ネジ部14は、回転円盤21に配設された連結部22に穿設された雌ネジ部(図示せず)と螺合可能となっている。放射線発生部材12を連結部22に固定するときには、ハンドル15を操作して放射線発生部材12を棒状部13の軸心を中心として回転させる。このため、放射線発生部材12は、雄ネジ部14と連結部22の作用により、回転円盤21に対して着脱自在に接続される。そして、この放射線発生部材12は、回転円盤21が矢印Aで示すように回転すると、矢印Bに示すように、検査用空間10の内部においてカバー部材16の表面に沿って旋回する。この雄ネジ部14と連結部22とは、この発明における接続部材を構成する。
【0023】
図3は、この発明に係るポジトロンCT装置の主要な制御系を示すブロック図である。
【0024】
このポジトロンCT装置は、装置全体を制御する制御部30を備える。この制御部30は、ソフトウエアがインストールされたコンピュータから構成される。この制御部30に含まれる各部の機能は、コンピュータにインストールされているソフトウエアを実行することで実現される。
【0025】
この制御部30は、モータ25を駆動することにより回転円盤21および放射線発生部材12の回転を制御する旋回制御部31と、コネクタ27における接続センサ29と接続され、蓋部材26が外部から検査用空間10に至る開口部17を遮蔽していないと判定したとき放射線発生部材12の旋回動作を禁止する旋回禁止部32と、蓋部材26が外部から検査用空間10に至る開口部17を遮蔽することなく放射線発生部材12の旋回開始操作を行ったときに警告を表示する警告表示部33と、を備える。
【0026】
以上のような構成を有するポジトロンCT装置において、PET画像を取得するためにCT撮影を実行するときには、放射線発生部材12は、回転円盤21から取り外される。また、蓋部材26も、外部から円柱状の検査用空間10に至る開口部17の前面から取り外される。
【0027】
一方、以上のような構成を有するポジトロンCT装置において、光子検出器11の検出感度の校正を行うときには、放射線発生部材12におけるハンドル15を保持し、棒状部13の先端に形成された雄ネジ部14を連結部22に穿設された雌ネジ部に螺合させることにより、放射線発生部材12を回転円盤21に固定する。また、蓋部材26をコネクタ27と連結させ、外部から円柱状の検査用空間10に至る開口部17を蓋部材26により遮蔽する。そして、モータ25の駆動により回転円盤21を回転させ、これにより放射線発生部材12を検査用空間10の内部においてカバー部材16の表面に沿って旋回させる。
【0028】
この時には、外部から円柱状の検査用空間10に至る開口部17が蓋部材26により遮蔽されていることから、人等の障害物と旋回する放射線発生部材12とが衝突する危険を防止することが可能となる。また、外部から円柱状の検査用空間10に至る開口部17が蓋部材26により遮蔽されていない状態において放射線発生部材12の旋回動作を開始しようとしても、旋回禁止部32の作用によりモータ25の駆動が禁止される。また、警告表示部33により図示しない表示部等に警告表示がなされるとともに、必要に応じ、警告音が発生される。
【0029】
なお、上述した実施形態においては、円柱状の検査用空間10の一端に形成された開口部17に対して蓋部材26を配置しているが、検査用空間10の両側に開口部が存在するときには、両方に蓋部材26を配設すればよい。
【0030】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。
図4は、この発明の第2実施形態に係るポジトロンCT装置の概要図である。また、
図5は、この発明の第2実施形態に係るポジトロンCT装置に使用される接続部材40および放射線発生部材19の斜視図である。さらに、
図6は、この発明の第2実施形態に係るポジトロンCT装置の主要な制御系を示すブロック図である。なお、
図1および
図3に示す実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0031】
この第2実施形態においては、回転機構を構成する回転円盤21に対して着脱自在な接続部材40が、カバー部材16の表面に沿った円筒部41と、回転円盤21に対して着脱自在な接続部42と、フランジ部43と、両端を接続部42とフランジ部43とに支持された筒状部材から構成され、フランジ部43に形成された孔部45から挿入された放射線発生部材19を円筒部41とカバー部材16との間において支持する支持部44と、を有している。
【0032】
また、装置本体の側面には、投光部47aと受光部47bとを有し、接続部材40における回転円盤21に装着された接続部42を検知することにより、接続部材40が回転円盤21と接続されているか否かを検出するセンサ47が配設されている。
【0033】
この第2実施形態に係るポジトロンCT装置において、PET画像を取得するためにCT撮影を実行するときには、放射線発生部材19を支持する接続部材40は、回転円盤21から取り外される。
【0034】
一方、この第2実施形態に係るポジトロンCT装置において、光子検出器11の検出感度の校正を行うときには、接続部材40を回転円盤21に固定する。そして、モータ25の駆動により回転円盤21を回転させ、これにより放射線発生部材19を接続部材40とともに、検査用空間10の内部においてカバー部材16の表面に沿って旋回させる。
【0035】
この時には、放射線発生部材19は、接続部材40における円筒部41とカバー部材16との間の領域で旋回することから、人等の障害物と旋回する放射線発生部材19とが衝突する危険を防止することが可能となる。また、接続部材40と回転円盤21とが接続されていない状態において放射線発生部材19の旋回動作を開始しようとしても、旋回禁止部32の作用によりモータ25の駆動が禁止される。また、警告表示部33により図示しない表示部等に警告表示がなされるとともに、必要に応じ、警告音が発生される。
【符号の説明】
【0036】
10 検査用空間
11 光子検出器
12 放射線発生部材
13 棒状部
14 雄ネジ部
15 ハンドル
16 カバー部材
17 開口部
19 放射線発生部材
21 回転円盤
22 連結部
23 同期ベルト
24 同期プーリ
25 モータ
26 蓋部材
27 コネクタ
29 接続センサ
30 制御部
31 旋回制御部
32 旋回禁止部
33 警告表示部
40 接続部材
41 円筒部
42 接続部
43 フランジ部
44 支持部
47 センサ