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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】燃料電池スタック及び多孔体流路板
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0271 20160101AFI20220517BHJP
   H01M 8/0273 20160101ALI20220517BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20220517BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20220517BHJP
【FI】
H01M8/0271
H01M8/0273
H01M8/0258
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018181546
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020053265
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉野 祐記
(72)【発明者】
【氏名】二見 諭
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-175763(JP,A)
【文献】特開2011-044399(JP,A)
【文献】特開2007-335353(JP,A)
【文献】特開2008-052953(JP,A)
【文献】特開2005-011741(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜電極接合体を有する発電部と、前記発電部の外周を囲む枠部材と、前記発電部及び前記枠部材を挟持する一対のセパレータと、前記一対のセパレータの少なくとも一方と前記発電部との間に設けられ、反応ガスを流通させる網目状のガス流路部を有する多孔体流路板と、を備える単セルが複数積層されてなる燃料電池スタックであって、
前記発電部との間に前記多孔体流路板が設けられる前記セパレータと前記枠部材との間は、シール部によりシールされており、
前記ガス流路部の側縁部と前記シール部との間には、前記セパレータと前記発電部との間の反応ガスの流れを遮蔽する遮蔽部が設けられている、
燃料電池スタック。
【請求項2】
前記遮蔽部は、前記ガス流路部の両方の前記側縁部と前記シール部との間に設けられている、
請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記遮蔽部は、前記ガス流路部と一体に形成されている、
請求項1または請求項2に記載の燃料電池スタック。
【請求項4】
前記発電部は、前記膜電極接合体を挟持する一対のガス拡散層を備えており、
前記遮蔽部の先端縁は、前記ガス拡散層に当接している、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の燃料電池スタック。
【請求項5】
前記遮蔽部は、前記単セルの積層方向において当該セパレータ側から前記発電部側に向かうほど前記ガス流路部から離間するように傾斜している、
請求項4に記載の燃料電池スタック。
【請求項6】
反応ガスを流通させる網目状のガス流路部を有し、膜電極接合体を有するとともに枠部材によって外周を囲まれた発電部とセパレータとにより挟持されることで燃料電池スタックの単セルの一部を構成する多孔体流路板において、
前記ガス流路部の側縁部には、前記セパレータと前記発電部との間の反応ガスの流れを遮蔽する遮蔽部が一体に形成されている、
多孔体流路板。
【請求項7】
前記遮蔽部は、前記多孔体流路板の厚さ方向において当該セパレータ側から前記発電部側に向かうほど前記ガス流路部から離間するように傾斜している、
請求項6に記載の多孔体流路板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタック及び燃料電池スタックの単セルの一部を構成する多孔体流路板に関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子形燃料電池は、複数の単セルを積層して構成される燃料電池スタックを備えている(例えば、特許文献1参照)。
同文献1に記載の単セルは、膜電極接合体、膜電極接合体を厚さ方向において挟持する一対のセパレータ、及び膜電極接合体と一対のセパレータとの間にそれぞれ設けられた一対の多孔体流路板を備えている。膜電極接合体は、電解質膜がその厚さ方向において一対の電極により挟持されたものであり、燃料電池の発電部を構成している。
【0003】
多孔体流路板は、複数の凹凸が交互に並んだ網目状のガス流路部を有している。膜電極接合体と上記凹凸とにより区画される部分は、燃料ガスや酸化剤ガスの流路として機能する。
【0004】
単セルには、燃料ガスを供給する燃料ガス供給マニホールドと、燃料ガスを排出する燃料ガス排出マニホールドとが面方向において発電部を挟んで設けられている。単セルには、燃料ガス供給マニホールドと多孔体流路板のガス流路部とを接続する複数の接続流路が並設されている。
【0005】
また、単セルには、酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給マニホールドと、酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出マニホールドとが面方向において発電部を挟んで設けられている。単セルには、酸化剤ガス供給マニホールドと多孔体流路板のガス流路部とを接続する複数の接続流路が並設されている。
【0006】
燃料ガス供給マニホールドを通じて供給される燃料ガスは、接続流路を通じて多孔体流路板のガス流路部に流入し、燃料ガス排出マニホールドに向かって流れる際に発電部のアノード側に流入する。
【0007】
また、酸化剤ガス供給マニホールドを通じて供給される酸化剤ガスは、接続流路を通じて多孔体流路板のガス流路部に流入し、酸化剤ガス排出マニホールドに向かって流れる際に発電部のカソード側に流入する。
【0008】
そして、発電部において燃料ガスと酸化剤ガスとが電気化学反応することにより発電が行われる。
なお、多孔体流路板の流路を通過した後の燃料ガス及び酸化剤ガスは、燃料ガス排出マニホールド及び酸化剤ガス排出マニホールドを通じてそれぞれ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-108573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、多孔体流路板のガス流路部は複数の凹凸が交互に並んだ網目状をなしているため、ガス流路部を流れる燃料ガスや酸化剤ガス(以下、反応ガスと総称する)が多孔体流路板の側方に流れ出ること、所謂脇流れが生じる。こうした脇流れした反応ガスは発電に寄与しないため、燃料電池の発電効率を低下させるおそれがある。
【0011】
本発明の目的は、発電効率の低下を抑制できる燃料電池スタック及び多孔体流路板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための燃料電池スタックは、膜電極接合体を有する発電部と、前記発電部の外周を囲む枠部材と、前記発電部及び前記枠部材を挟持する一対のセパレータと、前記一対のセパレータの少なくとも一方と前記発電部との間に設けられ、反応ガスを流通させる網目状のガス流路部を有する多孔体流路板と、を備える単セルが複数積層されてなる燃料電池スタックであって、前記発電部との間に前記多孔体流路板が設けられる前記セパレータと前記枠部材との間は、シール部によりシールされており、前記ガス流路部の側縁部と前記シール部との間には、前記セパレータと前記発電部との間の反応ガスの流れを遮蔽する遮蔽部が設けられている。
【0013】
同構成によれば、発電部との間に多孔体流路板が設けられるセパレータと枠部材との間は、シール部によりシールされている。また、ガス流路部の側縁部とシール部との間には、上記セパレータと発電部との間を遮蔽する遮蔽部が設けられている。このため、ガス流路部の側縁部とシール部との間における反応ガスの脇流れを抑制することができる。したがって、燃料電池の発電効率の低下を抑制することができる。
【0014】
上記燃料電池スタックにおいて、前記遮蔽部は、前記ガス流路部の両方の前記側縁部と前記シール部との間に設けられていることが好ましい。
同構成によれば、ガス流路部の両側方において反応ガスの脇流れを抑制することができる。したがって、燃料電池の発電効率の低下を一層抑制することができる。
【0015】
上記燃料電池スタックにおいて、前記遮蔽部は、前記ガス流路部と一体に形成されていることが好ましい。
同構成によれば、遮蔽部がガス流路部と一体に形成されているため、ガス流路部と遮蔽部とを各別に設ける必要がない。したがって、燃料電池スタック、ひいては燃料電池の製造が容易となる。
【0016】
上記燃料電池スタックにおいて、前記発電部は、前記膜電極接合体を挟持する一対のガス拡散層を備えており、前記遮蔽部の先端縁は、前記ガス拡散層に当接していることが好ましい。
【0017】
同構成によれば、遮蔽部の先端縁が膜電極接合体を挟持するガス拡散層に当接しているため、ガス流路部の側方に流れた反応ガスがガス拡散層よりも外側に脇流れすることがなくなり、当該反応ガスが発電に寄与するガス拡散層に到達することとなる。したがって、燃料電池の発電効率の低下を一層抑制することができる。
【0018】
上記燃料電池スタックにおいて、前記遮蔽部は、前記単セルの積層方向において当該セパレータ側から前記発電部側に向かうほど前記ガス流路部から離間するように傾斜していることが好ましい。
【0019】
前記遮蔽部は、遮蔽部が単セルの積層方向においてセパレータ側から発電部側に向かうほどガス流路部から離間するように傾斜している。これにより、ガス流路部の側方に流れた反応ガスが遮蔽部の内面に沿って流れることでガス拡散層に案内されやすくなる。したがって、燃料電池の発電効率の低下をより一層抑制することができる。
【0020】
また、上記目的を達成するための多孔体流路板は、反応ガスを流通させる網目状のガス流路部を有し、膜電極接合体を有するとともに枠部材によって外周を囲まれた発電部とセパレータとにより挟持されることで燃料電池スタックの単セルの一部を構成する多孔体流路板において、前記ガス流路部の側縁部には、前記セパレータと前記発電部との間の反応ガスの流れを遮蔽する遮蔽部が一体に形成されている。
【0021】
同構成によれば、多孔体流路板のガス流路部の側縁部には、発電部とセパレータとの間を遮蔽する遮蔽部が一体に形成されている。このため、ガス流路部の側縁部から側方に向かう反応ガスの脇流れを抑制することができる。したがって、燃料電池の発電効率の低下を抑制することができる。
【0022】
また、上記構成によれば、多孔体流路板と遮蔽部とを各別に設ける必要がなくなるため、燃料電池スタック、ひいては燃料電池の製造が容易となる。
上記多孔体流路板において、前記遮蔽部は、前記多孔体流路板の厚さ方向において当該セパレータ側から前記発電部側に向かうほど前記ガス流路部から離間するように傾斜していることが好ましい。
【0023】
同構成によれば、遮蔽部は、多孔体流路板の厚さ方向においてセパレータ側から発電部側に向かうほどガス流路部から離間するように傾斜している。これにより、ガス流路部の側方に流れた反応ガスが遮蔽部の内面に沿って流れることでガス拡散層に案内されやすくなる。したがって、燃料電池の発電効率の低下を一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、燃料電池の発電効率の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】燃料電池スタックの一実施形態について、燃料電池スタックの単セルの構成を示す分解斜視図。
図2】同実施形態の多孔体流路板の一部を示す斜視図。
図3】同実施形態の燃料電池スタックの幅方向における端部を示す断面図。
図4】同実施形態のロール成形装置により基材がロール成形される様子を模式的に示す側面図。
図5】同実施形態のロール成形装置により基材がロール成形される様子を示す断面図。
図6】変更例の多孔体流路板の製造過程を示す図であって、(a)は、ロール成形された基材を成形型に配置する工程を示す図、(b)は、成形型により基材をプレスする工程を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1図5を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の燃料電池スタックは、固体高分子形燃料電池を構成するものであり、平面視略長方形板状をなす複数の単セル10が積層された構造を有している。単セル10は、発電部11を構成する膜電極ガス拡散層接合体(Membrane Electrode Gas Diffusion Layer Assembly、以下、MEGA30)、MEGA30を厚さ方向において挟持する第1セパレータ20及び第2セパレータ60、並びにMEGA30と第2セパレータ60との間に設けられる多孔体流路板50を備えている。
【0027】
MEGA30は、エポキシ樹脂などの樹脂材料からなる枠部材40の内側に嵌め込まれている。枠部材40、第1セパレータ20及び第2セパレータ60は、いずれも平面視略長方形板状をなしており、同一の外形寸法を有している。枠部材40は、第1セパレータ20と第2セパレータ60とにより厚さ方向において挟持される。
【0028】
第1セパレータ20は、発電部11のアノード側に配置される。また、第2セパレータ60は、発電部11のカソード側に配置される。
多孔体流路板50は、平面視略長方形状をなし、酸化剤ガスを流通させる網目状のガス流路部51を有している(図2参照)。多孔体流路板50は、ガス流路部51の互いに平行な二対の辺と単セル10の互いに平行な二対の辺とがそれぞれ平行をなすようにして配置される。
【0029】
以降において、単セル10の長方形の長辺に沿った方向を長手方向Xと称し、同長方形の短辺に沿った方向を幅方向Yと称する。
<単セル10>
図1に示すように、単セル10には、燃料ガス(例えば水素ガス)を供給する燃料ガス供給マニホールド12と、燃料ガスを排出する燃料ガス排出マニホールド13とが単セル10の面方向において発電部11を挟んで設けられている。より詳しくは、燃料ガス供給マニホールド12は、長手方向Xの一端側(同図の右側)であり、且つ幅方向Yの一端側(同図の上側)に位置している。また、燃料ガス排出マニホールド13は、長手方向Xの他端側(同図の左側)であり、且つ幅方向Yの他端側(同図の下側)に位置している。
【0030】
単セル10には、酸化剤ガス(例えば空気)を供給する酸化剤ガス供給マニホールド14と、酸化剤ガスを排出する酸化剤ガス排出マニホールド15とが単セル10の面方向において発電部11を挟んで設けられている。より詳しくは、酸化剤ガス供給マニホールド14は、長手方向Xの他端側(同図の左側)であり、且つ幅方向Yの一端側(同図の上側)に位置している。また、酸化剤ガス排出マニホールド15は、長手方向Xの一端側(同図の右側)であり、且つ幅方向Yの他端側(同図の下側)に位置している。
【0031】
また、単セル10には、冷却水を供給する冷却水供給マニホールド16と、冷却水を排出する冷却水排出マニホールド17とが単セル10の面方向において発電部11を挟んで設けられている。より詳しくは、冷却水供給マニホールド16は、幅方向Yにおいて燃料ガス供給マニホールド12と酸化剤ガス排出マニホールド15との間に位置している。また、冷却水排出マニホールド17は、幅方向Yにおいて燃料ガス排出マニホールド13と酸化剤ガス供給マニホールド14との間に位置している。
【0032】
各マニホールド12~17は、単セル10(第1セパレータ20、枠部材40、及び第2セパレータ60)を貫通している。
次に、単セル10の各構成について詳細に説明する。
【0033】
<第1セパレータ20>
図1及び図3に示すように、第1セパレータ20は、ステンレス鋼などの金属板材からなり、略長方形板状をなしている。第1セパレータ20の中央部には、MEGA30が当接される。また、第1セパレータ20の中央部よりも外周側の部分には、枠部材40が当接される。
【0034】
第1セパレータ20の上記中央部には、長手方向Xに沿って延びる溝状の複数の燃料ガス流路21が幅方向Yに並設されている。第1セパレータ20における燃料ガス供給マニホールド12と燃料ガス流路21との間には、燃料ガス供給マニホールド12と燃料ガス流路21とを接続する複数の燃料ガス供給流路22が幅方向Yに並設されている。また、燃料ガス流路21と燃料ガス排出マニホールド13との間には、燃料ガス流路21と燃料ガス排出マニホールド13とを接続する複数の燃料ガス排出流路23が幅方向Yに並設されている。
【0035】
図3に示すように、第1セパレータ20における燃料ガス流路21とは反対側の面には、溝状の複数の冷却水流路24が形成されている。冷却水流路24は、幅方向Yにおいて互いに隣り合う燃料ガス流路21同士の間の部分に1つずつ形成されており、冷却水供給マニホールド16と冷却水排出マニホールド17とに連通されている。なお、図1では、冷却水流路24の図示を省略している。
【0036】
<MEGA30>
図3に示すように、MEGA30は、膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly、以下、MEA31)と、MEA31を挟持するアノード側ガス拡散層32及びカソード側ガス拡散層33とを備えている。MEGA30は、平面視略長方形状をなしている。
【0037】
MEA31は、プロトン導電性を有する電解質膜34と、電解質膜34を挟持するアノード側電極触媒層35及びカソード側電極触媒層36とを備えている。
各電極触媒層35,36には、発電部11における反応ガスの電気化学反応を促進するための触媒(例えば白金)が担持されている。
【0038】
各ガス拡散層32,33は、反応ガスをMEA31の面方向に拡散させるためのものであり、カーボンペーパーやカーボンクロスなどのガス透過性及び導電性を有する材料により形成されている。
【0039】
<第2セパレータ60>
図1及び図3に示すように、第2セパレータ60は、ステンレス鋼などの金属板材からなり、略長方形板状をなしている。第2セパレータ60は、平板状の中央部61を有している。この中央部61には、多孔体流路板50が当接される。また、第2セパレータ60の中央部61よりも外周側の部分、より詳しくは、各マニホールド12~17よりも外周側の部分には、枠部材40に向かって突出する平面視長方形環状のシール部60aが一体に形成されている。シール部60aは、枠部材40に当接されることで第2セパレータ60と枠部材40との間をシールする。
【0040】
第2セパレータ60には、酸化剤ガス供給マニホールド14とガス流路部51の縁部50aとを接続する複数の溝状の酸化剤ガス供給流路62が設けられている。複数の酸化剤ガス供給流路62は、縁部50aの幅方向Yの全体にわたって接続されている。
【0041】
また、第2セパレータ60には、ガス流路部51の縁部50bと酸化剤ガス排出マニホールド15とを接続する溝状の複数の酸化剤ガス排出流路63が設けられている。複数の酸化剤ガス排出流路63は、縁部50bの幅方向Yの全体にわたって接続されている。
【0042】
<多孔体流路板50>
図2及び図3に示すように、多孔体流路板50は、平面視略長方形状をなす網目状のガス流路部51と、ガス流路部51の幅方向Yの両側の側縁部50cから延びるとともに同側縁部50cと第2セパレータ60のシール部60aとの間において第2セパレータ60と発電部11との間を遮蔽する遮蔽部59とを有している。なお、図2においては、幅方向Yの一方の遮蔽部59のみを図示している。
【0043】
図2に一部を拡大して示すように、多孔体流路板50のガス流路部51は、長手方向Xに沿って延在する平棒状の複数の平坦部52を備えている。
ガス流路部51は、平坦部52に対してMEGA30側に突出する第1凸部53と、平坦部52に対して第2セパレータ60側に突出する第1凹部54とを有し、第1凸部53及び第1凹部54が長手方向Xにおいて交互に配置されて波形状をなす第1波状部55を備えている。
【0044】
ガス流路部51は、平坦部52に対してMEGA30側に突出する第2凸部56と、平坦部52に対して第2セパレータ60側に突出する第2凹部57とを有し、第2凸部56及び第2凹部57が長手方向Xにおいて交互に配置されて波形状をなす第2波状部58を備えている。
【0045】
第1波状部55は、平坦部52の幅方向Yの両側に配置されている。第2波状部58は、第1波状部55の平坦部52とは反対側に配置されている。
各凸部53,56の頂面は、MEGA30のカソード側ガス拡散層33に当接される。また、各凹部54,57の底面とは反対側の面は、第2セパレータ60に当接される(図3参照)。
【0046】
第1波状部55の第1凸部53と第2波状部58の第2凹部57とが幅方向Yにおいて隣り合うとともに、第1波状部55の第1凹部54と第2波状部58の第2凸部56とが幅方向Yにおいて隣り合うように、第1波状部55と第2波状部58とが幅方向Yにおいて隣り合っている。
【0047】
遮蔽部59は、幅方向Yの最も外側に位置する第1波状部55の第1凹部54の側縁部50cから延びており、多孔体流路板50の厚さ方向(図3の上下方向)において第2セパレータ60側から発電部11側に向かうほどガス流路部51から離間するように傾斜している。遮蔽部59の先端縁は、カソード側ガス拡散層33に当接している。
【0048】
平坦部52、第1波状部55、第2波状部58、及び遮蔽部59は、幅方向Yにおいて各々が隣接する部分において互いに連結されている。
ガス流路部51のうちMEGA30との間に形成される流路には、酸化剤ガスが流通する一方、第2セパレータ60との間に形成される流路には、燃料ガスと酸化剤ガスとの電気化学反応により生成される生成水が流通する。
【0049】
こうした、多孔体流路板50は、後述するロール成形装置70により、ステンレス鋼板などからなる基材をロール成形することによって形成される。
次に、ロール成形装置70による多孔体流路板50の製造方法について説明する。
【0050】
図4及び図5に示すように、ロール成形装置70は、第1軸71と一体に回転される第1ロール72と、第2軸75と一体に回転される第2ロール76とを備えている。第1軸71及び第2軸75は互いに平行に配置されている。すなわち、第1ロール72及び第2ロール76は、それらの外周面が対向するように配置されている。なお、第1ロール72と第2ロール76とは互いに逆方向に回転するように構成されている。
【0051】
図5に示すように、第1ロール72は、複数の刃体73が軸線方向に積層された構造を有している。各刃体73の外周面には、複数の切刃73aが周方向に互いに間隔をおいて突設されている。互いに隣接する刃体73同士は、各々の切刃73aが軸線方向において隣接しないように、互いに周方向に所定ピッチずれた位置にて第1軸71に固定されている。
【0052】
また、第2ロール76は、複数の刃体77が軸線方向に積層された構造を有している。各刃体77の外周面には、複数の切刃77aが周方向に互いに間隔をおいて突設されている。互いに隣接する刃体77同士は、各々の切刃77aが軸線方向において隣接しないように、互いに周方向に所定ピッチずれた位置にて第2軸75に固定されている。
【0053】
第1ロール72の軸線方向の両端部には、複数の刃体が積層されてなり、軸線方向の外側に位置する刃体ほど外径が段階的に小さくされた第1刃体群74が設けられている。
また、第2ロール76の軸線方向の両端部には、複数の刃体が積層されてなり、軸線方向の外側に位置する刃体ほど外径が段階的に大きくされた第2刃体群78が設けられている。なお、図5においては、ロール成形装置70の軸線方向における一端部のみを図示しているが、他端部は一端部を反転させた形状を有していることから、重複する説明を省略する。
【0054】
次に、ロール成形装置70による多孔体流路板50の製造方法について説明する。
図4に示すように、まず、搬送装置(図示略)により、金属板材からなる基材150が第1ロール72と第2ロール76との間に供給される。そして、図5に示すように、回転する第1ロール72及び第2ロール76の刃体73,77により、基材150には網目状をなすガス流路部51が形成される(以上、第1工程)。また、このとき、基材150の幅方向(搬送方向に直交する方向)の両側におけるガス流路部51が形成されない側端部には、刃体群74,78の間を通過することでガス流路部51から側方に向かって階段状に延びる遮蔽部59が形成される(以上、第2工程)。
【0055】
このようにしてガス流路部51及び遮蔽部59を有する多孔体流路板50が製造される。
本実施形態の作用について説明する。
【0056】
図1に示すように、燃料ガス供給マニホールド12に供給された燃料ガスは、第1セパレータ20の燃料ガス供給流路22を通じて燃料ガス流路21に流入する。そして、当該燃料ガスは、燃料ガス排出マニホールド13に向かって流れる際に発電部11のアノード側ガス拡散層32に到達する。
【0057】
また、酸化剤ガス供給マニホールド14を通じて供給される酸化剤ガスは、第2セパレータ60の酸化剤ガス供給流路62を通じて多孔体流路板50のガス流路部51に流入する。そして、当該酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出マニホールド15に向かって流れる際に発電部11のカソード側ガス拡散層33に到達する。
【0058】
そして、発電部11において燃料ガスと酸化剤ガスとが電気化学反応することにより発電が行われる。
なお、燃料ガスは、燃料ガス排出流路23から燃料ガス排出マニホールド13を通じて排出される。また、酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出流路63から酸化剤ガス排出マニホールド15を通じて排出される。
【0059】
ここで、図4に示すように、本実施形態では、多孔体流路板50がガス流路部51の側縁部50cと第2セパレータ60のシール部60aとの間に位置する遮蔽部59を有している。このため、側縁部50cとシール部60aとの間における酸化剤ガスの脇流れが抑制される。
【0060】
本実施形態の効果について説明する。
(1)第2セパレータ60と枠部材40との間は、シール部60aによりシールされており、ガス流路部51の側縁部とシール部60aとの間には、第2セパレータ60と発電部11との間を遮蔽する遮蔽部59が設けられている。
【0061】
こうした構成によれば、上記作用を奏することから、燃料電池の発電効率の低下を抑制することができる。
(2)遮蔽部59は、ガス流路部51の両方の側縁部50cとシール部60aとの間に設けられている。
【0062】
こうした構成によれば、ガス流路部51の両側方において反応ガスの脇流れを抑制することができる。したがって、燃料電池の発電効率の低下を一層抑制することができる。
(3)遮蔽部59は、ガス流路部51と一体に形成されている。
【0063】
こうした構成によれば、遮蔽部59がガス流路部51と一体に形成されているため、ガス流路部51と遮蔽部59とを各別に設ける必要がない。したがって、燃料電池スタック、ひいては燃料電池の製造が容易となる。
【0064】
(4)発電部11は、MEA31を挟持するアノード側ガス拡散層32及びカソード側ガス拡散層33を備えており、遮蔽部59の先端縁は、カソード側ガス拡散層33に当接している。
【0065】
こうした構成によれば、遮蔽部59の先端縁がカソード側ガス拡散層33に当接しているため、ガス流路部51の側方に流れた反応ガスがカソード側ガス拡散層33よりも外側に脇流れすることがなくなり、当該反応ガスが発電に寄与するカソード側ガス拡散層33に到達することとなる。したがって、燃料電池の発電効率の低下を一層抑制することができる。
【0066】
(5)遮蔽部59は、単セル10の積層方向において第2セパレータ60側から発電部11側に向かうほどガス流路部51から離間するように傾斜している。
こうした構成によれば、ガス流路部51の側方に流れた酸化剤ガスが遮蔽部59の内面に沿って流れることでカソード側ガス拡散層33に案内されやすくなる。したがって、燃料電池の発電効率の低下をより一層抑制することができる。
【0067】
(6)第1工程において、ロール成形装置70により、金属板材からなる基材150にガス流路部51を形成するようにした。第2工程において、ロール成形装置70により、基材150におけるガス流路部51が形成されない側端部をガス流路部51から側方に向かって階段状に延びる遮蔽部59を形成するようにした。
【0068】
こうした方法によれば、上記効果(1)に準じた効果を奏することができる。また、多孔体流路板50を同一のロール成形装置70にて製造することができる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0069】
・多孔体流路板50の遮蔽部59は、第2セパレータ60と発電部11との間を遮蔽するものであれば、その形状は特に限定されない。他に例えば、第2セパレータ60から発電部11に向かうほどガス流路部51から離間するように傾斜した傾斜面を有する遮蔽部であってもよい。また、ガス流路部51の側縁部50cから単セル10の積層方向に沿って延びる遮蔽部であってもよい。この場合、上記傾斜面を有する遮蔽部は、基材150の側端部を曲げ成形することにより形成してもよいし、図6(a)及び図6(b)に示すように、成形型80を用いて形成してもよい。
【0070】
図6(a)に示すように、成形型80は、多孔体流路板50が載置される固定型81と、固定型81に対して進退可能な可動型85とを備えている。固定型81は、ガス流路部51の下面が当接される当接部82と、遮蔽部59の下面を保持する保持部83とを有している。可動型85は、ガス流路部51の上面が当接される当接部86と、遮蔽部59の上面を押圧する押圧部87と、遮蔽部59の先端部を剪断する剪断部88とを有している。こうした成形型80を用いて遮蔽部を形成する際には、まず、固定型81上に多孔体流路板50を載置する。次に、可動型85を固定型81に対して降下させる。これにより、遮蔽部59は、下面が保持部83に保持されるとともに、上面が押圧部87により押圧される。そして、階段状に延びる遮蔽部59がプレス成形されることで、傾斜面159aを有する平板状の遮蔽部159が形成される。このとき、遮蔽部59の先端部59aは剪断部88により剪断される。なお、このとき、固定型81の当接部82と可動型85の当接部86とが当接されるガス流路部51は可動型85の降下により変形しない。
【0071】
・多孔体流路板50のガス流路部51を形成する第1工程と、遮蔽部59を形成する第2工程とを各別に行うこともできる。すなわち、曲げ成形機など、ロール成形装置70とは別の装置を用いて第2工程を行ってもよい。
【0072】
・本実施形態の多孔体流路板50は、ガス流路部51と遮蔽部59とが一体に形成されるものであったが、第2セパレータ60と発電部11との間に、多孔体流路板とは別体の遮蔽部を設けるようにしてもよい。
【0073】
・遮蔽部59の先端縁は、枠部材40に当接していてもよい。
・遮蔽部59は、発電部11側から第2セパレータ60側に向かうほどガス流路部51の側方に位置するように傾斜していてもよい。
【0074】
・遮蔽部は多孔体流路板50のガス流路部51と一体に形成されるものに限定されない。他に例えば、第2セパレータ60のシール部60aよりも幅方向Yの内側の部分に第2セパレータ60から発電部11に向かって突出する凸部を設け、同凸部を遮蔽部として機能させるようにしてもよい。
【0075】
・遮蔽部を、ガス流路部51の幅方向Yの片側にのみ形成することもできる。
・発電部11のアノード側に配置される第1セパレータ20に代えて、カソード側に配置される多孔体流路板50及び第2セパレータ60に準じた構成の多孔体流路板及びセパレータを採用することもできる。
【0076】
・多孔体流路板のガス流路部51の形状は、本実施形態において例示したものに限定されず、周知の形状のガス流路部に変更することもできる。
【符号の説明】
【0077】
10…単セル、11…発電部、12…燃料ガス供給マニホールド、13…燃料ガス排出マニホールド、14…酸化剤ガス供給マニホールド、15…酸化剤ガス排出マニホールド、16…冷却水供給マニホールド、17…冷却水排出マニホールド、20…第1セパレータ、21…燃料ガス流路、22…燃料ガス供給流路、23…燃料ガス排出流路、24…冷却水流路、30…MEGA、31…MEA、32…アノード側ガス拡散層、33…カソード側ガス拡散層、34…電解質膜、35…アノード側電極触媒層、36…カソード側電極触媒層、40…枠部材、50…多孔体流路板、50a…縁部、50b…縁部、50c…側縁部、51…ガス流路部、52…平坦部、53…第1凸部、54…第1凹部、55…第1波状部、56…第2凸部、57…第2凹部、58…第2波状部、59…遮蔽部、59a…先端部、60…第2セパレータ、60a…シール部、61…中央部、62…酸化剤ガス供給流路、63…酸化剤ガス排出流路、70…ロール成形装置、71…第1軸、72…第1ロール、73…刃体、73a…切刃、74…第1刃体群、75…第2軸、76…第2ロール、77…刃体、77a…切刃、78…第2刃体群、80…成形型、81…固体型、82…当接部、83…保持部、85…可動型、86…当接部、87…押圧部、88…剪断部、150…基材、159…遮蔽部、159a…傾斜面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6