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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/04 20060101AFI20220517BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20220517BHJP
   H02G 15/04 20060101ALI20220517BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20220517BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H02G3/04 062
H01B7/00 301
H02G15/04
H02G1/14
B60R16/02 623U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018185105
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020058095
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕隆
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-170975(JP,U)
【文献】特開2008-067545(JP,A)
【文献】特開平08-191528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/04
H01B 7/00
H02G 15/04
H02G 1/14
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線部材と、
前記電線部材が挿通される外装部材と、
前記外装部材の一端側の外周面を覆って該外周面に固定される外装側固定部と、前記外装部材の一端部から導出された前記電線部材の外周面を覆って該外周面に固定される電線側固定部と、前記外装側固定部から前記外装部材の一端部を覆うように折返されて該外装部材の内部に入り込み、更に折返されて前記電線側固定部に接続された接続部とを有する柔軟性カバーとを備え
前記接続部は、前記外装側固定部から前記外装部材の一端部を覆うように折返された第1折返し部と、前記外装部材の内部において折返された第2折返し部と、前記第1折返し部及び前記第2折返し部を接続する第1延伸部と、前記第2折返し部及び前記電線側固定部を接続する第2延伸部とを備え、
前記第1延伸部は、前記第2折返し部に近付くほど前記外装部材から離間し、
前記第2延伸部は、前記第2折返し部に近付くほど前記電線部材から離間しているワイヤハーネス。
【請求項2】
前記電線部材は、芯線と該芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する電線と、該電線の外周を包囲する複数の金属素線が編成された編組部材とを備え、
前記編組部材における前記電線側固定部の内側の部位には、充填部材が充填された請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
前記充填部材は、前記編組部材と前記電線との間にも充填された請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記柔軟性カバーは、外力が加わっていない状態で二度折返された前記接続部が成形されている請求項1~3の何れか1項に記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
前記柔軟性カバーは、周方向の一部にスリットが形成された請求項4に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリッド車や電気自動車等の車両に用いられるワイヤハーネスとしては、電線部材の外側がコルゲートチューブや樹脂パイプ等の外装部材で覆われたワイヤハーネスが知られている。そして、このようなワイヤハーネスは、車両床下等に配索されて外部に晒される場合があるため、各種外装部材に覆われるとともに外装部材同士の間に発泡部材を介在させて外装部材と電線部材との間に砂等の異物が侵入することを防止しようとしたものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構成では、電線部材が砂等の異物と長期的に擦れ合って傷付くといったことが低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-201336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなワイヤハーネスとしては、電線部材が外装部材の一端部から導出されて一部露出した態様で車両に取り付けられる場合があり、このような場合では外装部材の一端部から砂等の異物が外装部材と電線部材との間に侵入する虞があった。なお、砂等の異物が外装部材と電線部材との間に侵入することは、電線部材が傷付く原因となる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、電線部材を良好に保護することができるワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するワイヤハーネスは、電線部材と、前記電線部材が挿通される外装部材と、前記外装部材の一端側の外周面を覆って該外周面に固定される外装側固定部と、前記外装部材の一端部から導出された前記電線部材の外周面を覆って該外周面に固定される電線側固定部と、前記外装側固定部から前記外装部材の一端部を覆うように折返されて該外装部材の内部に入り込み、更に折返されて前記電線側固定部に接続された接続部とを有する柔軟性カバーとを備える。
【0007】
同構成によれば、柔軟性カバーによって外装部材と電線部材との間に砂等の異物が侵入することが防止される。また、柔軟性カバーの接続部は、外装部材の一端部を覆うように折返されるため、外装部材の一端部の角に電線部材が擦れることが防止される。また、柔軟性カバーの接続部が二度折返されることなどから、外装部材に対して電線部材がその延在方向にずれることが許容され、外装側固定部、電線側固定部及び電線部材に大きな力が加わることが抑制される。よって、電線部材を良好に保護することができる。
【0008】
前記電線部材は、芯線と該芯線の外周を被覆する絶縁被覆とを有する電線と、該電線の外周を包囲する複数の金属素線が編成された編組部材とを備え、前記編組部材における前記電線側固定部の内側の部位には、充填部材が充填されることが好ましい。
【0009】
同構成によれば、編組部材によって電線が電磁シールドされる。そして、編組部材における電線側固定部の内側の部位には充填部材が充填されるため、金属素線同士の間を通って外装部材と電線部材との間に砂等の異物が侵入することが防止される。
【0010】
前記充填部材は、前記編組部材と前記電線との間にも充填されることが好ましい。
同構成によれば、前記充填部材は、前記編組部材と前記電線との間にも充填されるため、編組部材と電線との間を通って外装部材と電線部材との間に砂等の異物が侵入することが防止される。
【0011】
前記柔軟性カバーは、外力が加わっていない状態で二度折返された前記接続部が成形されていることが好ましい。
同構成によれば、柔軟性カバーは、外力が加わっていない状態で二度折返された前記接続部が成形されているため、例えば、成形時に二度折返された接続部が成形されていないシート状の柔軟性カバーを組み付け時に二度折返された接続部が形成されるように組み付ける場合に比べて、組み付けが容易となる。すなわち、成形された段階で接続部の形状が決まっているため、組み付け時に接続部の形状を整える場合に比べて、組み付けが容易となる。
【0012】
前記柔軟性カバーは、周方向の一部にスリットが形成されていることが好ましい。
同構成によれば、柔軟性カバーは、周方向の一部にスリットが形成されるため、例えば、外装部材の近傍における電線部材の延在方向の直交方向から組み付けることが可能となり、スリットが形成されていないものに比べて組み付けが容易となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のワイヤハーネスによれば、電線部材を良好に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態のワイヤハーネスを示す概略構成図。
図2】一実施形態のワイヤハーネスの一部断面図。
図3】一実施形態の柔軟性カバーの斜視図。
図4図2における4-4断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ワイヤハーネスの一実施形態について、図1図4に従って説明する。なお、各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0016】
図1に示すようにワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続するものであって、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両Vの前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両Vの後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両Vの床下等を通るように配索され、その一端がコネクタC1を介してインバータ11に接続され、他端がコネクタC1を介して高圧バッテリ12に接続される。インバータ11は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、百ボルト以上の電圧を供給可能なバッテリである。
【0017】
図2及び図4に示すように、ワイヤハーネス10は、電線部材20を備え、該電線部材20は、芯線21と該芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有する複数本(本実施形態では2本)の電線23と、該電線23の外周を包囲する電磁シールド部材であって複数の金属素線が編成された編組部材24とを備える。なお、本実施形態の編組部材24を構成する金属素線の材料は、アルミニウム系金属材料が用いられている。
【0018】
また、図1に示すように、ワイヤハーネス10は、前記電線部材20が挿通される種々の外装部材としての金属パイプ25とプロテクタ26とコルゲートチューブ27とを備える。金属パイプ25は、高圧バッテリ12から延びて車両Vの床下に配索される電線部材20を覆うように設けられている。プロテクタ26は、金属パイプ25よりもインバータ11側の電線部材20の屈曲部位を覆うように設けられている。コルゲートチューブ27は、プロテクタ26とインバータ11との間の電線部材20を覆うように設けられている。
【0019】
また、図2に示すように、ワイヤハーネス10は、柔軟性カバー30を備える。柔軟性カバー30は、プロテクタ26の一端側の外周面を覆って該外周面に固定される外装側固定部30aと、プロテクタ26の一端部から導出された電線部材20の外周面を覆って該外周面に固定される電線側固定部30bと、外装側固定部30aと電線側固定部30bとを接続する接続部30cとを有する。接続部30cは、外装側固定部30aからプロテクタ26の一端部を覆うように折返されて該プロテクタ26の内部に入り込み、更に折返されて電線側固定部30bに接続されている。
【0020】
図3に示すように、本実施形態の柔軟性カバー30は、例えばゴム等の弾性部材からなり、外力が加わっていない状態で(すなわち、プロテクタ26や電線部材20に固定される前の単独の状態で)前述したように二度折返された前記接続部30cが成形されている。
【0021】
また、柔軟性カバー30は、周方向の一部にスリット30dが形成され、例えば、プロテクタ26の近傍における電線部材20の延在方向の直交方向(すなわち、電線部材20の側方)からスリット30dを広げつつ組み付けることが可能とされている。
【0022】
また、柔軟性カバー30における外装側固定部30aは、プロテクタ26の一端側の外周面を覆った状態で、外装側固定部30aとプロテクタ26とに亘って巻回される粘着テープ31によって固定されている。
【0023】
また、柔軟性カバー30における電線側固定部30bは、電線部材20の外周面を覆った状態で、電線側固定部30bと電線部材20とに亘って巻回される粘着テープ32によって固定されている。なお、この電線側固定部30bから延びる電線部材20は前記金属パイプ25に挿通されるが、柔軟性カバー30付近は特に防水部材等に覆われずに外部から砂等の異物が掛かる可能性がある態様で車両Vに固定される。
【0024】
また、図2及び図4に示すように、電線部材20の編組部材24における電線側固定部30bの内側の部位には、充填部材としての接着剤33(図2及び図4中、ドットハッチングで図示)が充填されている。本実施形態では、接着剤33は、電線部材20の延在方向(長手方向)における粘着テープ32が配置される範囲と同じ範囲に充填されている。また、図4に示すように、接着剤33は、編組部材24と電線23との間(電線23同士の間を含む)にも充填されている。すなわち、接着剤33は、編組部材24の外表面から電線23の外表面との間に隙間が無くなるように充填されている。
【0025】
次に、上記のように構成されたワイヤハーネス10の作用について説明する。
例えば、車両Vの走行中等では、回転するタイヤによる跳ね上げや走行風等によって地面の砂等の異物が舞い上げられてワイヤハーネス10に掛かることがある。そして、プロテクタ26の一端部付近であって柔軟性カバー30付近に砂等の異物が掛かることもあるが、それら異物は柔軟性カバー30によってプロテクタ26の内部への侵入が阻止される。
【0026】
次に、上記実施形態の効果を以下に記載する。
(1)柔軟性カバー30によってプロテクタ26と電線部材20との間に砂等の異物が侵入することが防止される。また、柔軟性カバー30の接続部30cは、プロテクタ26の一端部を覆うように折返されるため、プロテクタ26の一端部の角に電線部材20(詳しくは、その外表面を構成する編組部材24)が擦れることが防止される。また、柔軟性カバー30の接続部30cが二度折返されることなどから、プロテクタ26に対して電線部材20が振動等によってその延在方向にずれることが許容され、外装側固定部30a、電線側固定部30b及び電線部材20に大きな力が加わることが抑制される。よって、電線部材20を良好に保護することができる。
【0027】
(2)編組部材24によって電線23が電磁シールドされる。そして、編組部材24における電線側固定部30bの内側の部位には接着剤33が充填されるため、金属素線同士の間を通ってプロテクタ26と電線部材20との間に砂等の異物が侵入することが防止される。
【0028】
(3)接着剤33は、編組部材24と電線23との間にも充填されるため、編組部材24と電線23との間を通ってプロテクタ26と電線部材20との間に砂等の異物が侵入することが防止される。
【0029】
(4)柔軟性カバー30は、外力が加わっていない状態で(すなわち、プロテクタ26や電線部材20に固定される前の単独の状態で)二度折返された接続部30cが成形されている。よって、例えば、成形時に二度折返された接続部30cが成形されていないシート状の柔軟性カバーを組み付け時に二度折返された接続部が形成されるように組み付ける場合に比べて、組み付けが容易となる。すなわち、成形された段階で接続部30cの形状が決まっているため、組み付け時に接続部30cの形状を整える(プロテクタ26と電線部材20との間に入れ込みつつ形状を整える)場合に比べて、組み付けが容易となる。
【0030】
(5)柔軟性カバー30は、周方向の一部にスリット30dが形成されるため、例えば、プロテクタ26の近傍における電線部材20の延在方向の直交方向(すなわち、電線部材20の側方)から組み付けることが可能となり、スリット30dが形成されていないものに比べて組み付けが容易となる。
【0031】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、電線部材20は、電線23と編組部材24とを備えるとしたが、少なくとも電線23を備えていれば、他の構成の電線部材としてもよい。例えば、編組部材24は他の構成の電磁シールド部材としてもよいし、電磁シールド部材を備えていない電線部材(電線23のみ)としてもよい。また、上記実施形態の編組部材24を構成する金属素線の材料は、アルミニウム系金属材料が用いられているとしたが、銅系金属材料等を用いてもよい。
【0032】
・上記実施形態では、編組部材24における電線側固定部30bの内側の部位には接着剤33が充填されるとしたが、これに限定されず、接着剤33が充填されていない構成としてもよい。また、接着剤33は、編組部材24と電線23との間(電線23同士の間を含む)にも充填されるとしたが、これに限定されず、編組部材24と電線23との間には充填されていない構成としてもよい。また、接着剤33は、同様の機能を有すれば、他の充填部材に変更してもよい。
【0033】
・上記実施形態では、柔軟性カバー30は、外力が加わっていない状態で(すなわち、プロテクタ26や電線部材20に固定される前の単独の状態で)二度折返された接続部30cが成形されているとしたが、これに限定されず、例えば、成形時には二度折返された接続部が形成されておらず、組み付け時に二度折返された接続部を形成してもよい。また、このような場合等、柔軟性カバー30の素材は折曲げ可能な柔らかい他の素材等に変更してもよい。
【0034】
・上記実施形態では、柔軟性カバー30は、周方向の一部にスリット30dが形成されるとしたが、これに限定されず、スリット30dが形成されていない構成としてもよい。
・上記実施形態では、外装側固定部30a及び電線側固定部30bは、粘着テープ31,32によって固定されるとしたが、これに限定されず、例えば、結束バンドによって固定する等、他の構成で固定してもよい。また、例えば、電線側固定部30bは、編組部材24に充填する接着剤33によって固定してもよい。
【0035】
・上記実施形態では、電線部材20の電線23を2本としたが、これに限定されず、1本としてもよいし、3本以上としてもよい。
・上記実施形態では、電線部材20が挿通される外装部材の1つであるプロテクタ26の一端部に柔軟性カバー30を設けた例としたが、金属パイプ25やコルゲートチューブ27等の他の外装部材の端部に同様に柔軟性カバーを設けて実施してもよい。
【0036】
・車両におけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10によって接続される電気機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続するワイヤハーネスに採用してもよい。すなわち、車両に搭載される電気機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…ワイヤハーネス
20…電線部材
21…芯線
22…絶縁被覆
23…電線
24…編組部材
26…プロテクタ(外装部材)
30…柔軟性カバー
30a…外装側固定部
30b…電線側固定部
30c…接続部
30d…スリット
33…接着剤(充填部材)
図1
図2
図3
図4