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特許7074051ポリマーの製造方法、ネガ型感光性樹脂組成物の製造方法、樹脂膜の製造方法、電子装置の製造方法およびポリマー
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  • 特許-ポリマーの製造方法、ネガ型感光性樹脂組成物の製造方法、樹脂膜の製造方法、電子装置の製造方法およびポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ポリマーの製造方法、ネガ型感光性樹脂組成物の製造方法、樹脂膜の製造方法、電子装置の製造方法およびポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/14 20060101AFI20220517BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220517BHJP
   C08F 267/06 20060101ALI20220517BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20220517BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C08F8/14
C08F2/44
C08F267/06
C08F290/12
G03F7/038 501
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018504059
(86)(22)【出願日】2017-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2017004199
(87)【国際公開番号】W WO2017154439
(87)【国際公開日】2017-09-14
【審査請求日】2020-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2016044214
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】池田 陽雄
(72)【発明者】
【氏名】大西 治
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-096687(JP,A)
【文献】特開昭63-128004(JP,A)
【文献】特開昭51-149393(JP,A)
【文献】特開昭49-037701(JP,A)
【文献】特開昭63-314216(JP,A)
【文献】特開昭62-195002(JP,A)
【文献】特開昭63-072710(JP,A)
【文献】特開昭63-314205(JP,A)
【文献】国際公開第2011/129182(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/080629(WO,A1)
【文献】特開平11-323260(JP,A)
【文献】特開2001-330714(JP,A)
【文献】永松元太郎 乾英夫,機能性高分子シリーズ 感光性高分子,1刷,株式会社講談社,1977年11月01日,246-247,259頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-299/06
G03F 7/038
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1a)で示される構造単位を含む前駆体ポリマーを準備する工程と、
式(1a)で示される構造単位を含む前記前駆体ポリマーに対し、R-OHで表されるアルコール(ただし、Rは炭素数1~18の有機基である。)を作用させ、式(1a)で示される構造単位の無水マレイン酸部位を開環させ、前記前駆体ポリマー中にカルボキシル基またはその塩を生成させる工程と、
無水マレイン酸部位を開環させた前記前駆体ポリマーに対し、式(3)で示されるエポキシ基を備える化合物を反応させる工程と、
を含み、
前記前駆体ポリマーはさらに以下の式(2)で示される構造単位を含み、
前記前駆体ポリマー中、式(1a)で示される構造単位の含有割合は80モル%以下であり、式(2)で示される構造単位の含有割合は20モル%以上であり、
前駆体ポリマー中にカルボキシル基またはその塩を生成させる前記工程において、Rの構造中に炭素-炭素二重結合を有するアルコールが用いられるポリマーの製造方法。
【化1】
【化2】
(式(2)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~30の有機基である。nは0、1または2である。)
【化3】
(式(3)中、Rは炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
【請求項2】
請求項1に記載のポリマーの製造方法であって、
式(3)で示されるエポキシ基を備える前記化合物のRは、その構造中に、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む、ポリマーの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリマーの製造方法であって、
前記Rは、その構造中に、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む、ポリマーの製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法であって、
前記ポリマーの重量平均分子量(Mw)が2500以上35000以下である、ポリマーの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法であって、
前記ポリマーは、感光性樹脂膜形成用ポリマーである、ポリマーの製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のポリマーの製造方法によりポリマーを得て、さらに、光ラジカル発生剤を配合する工程を含むことを特徴とする、ネガ型感光性樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のネガ型感光性樹脂組成物の製造方法によりネガ型感光性樹脂組成物を得て、さらに、当該ネガ型感光性樹脂組成物を硬化させる工程を含む、樹脂膜の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂膜の製造方法を工程中に備える、電子装置の製造方法。
【請求項9】
以下の式(1)で示される構造単位と、以下の式(2)で示される構造単位と、を含み、前記式(2)で示される構造単位の含有割合は20%モル以上であり、前記式(1)中のRは、その構造中に炭素-炭素二重結合を有するポリマー。
【化4】
(式(1)中、Rは炭素数1~18の有機基である。Rは炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
【化5】
(式(2)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~30の有機基である。nは0、1または2である。)
【請求項10】
請求項9に記載のポリマーであって、
前記式(1)中のRは、その構造中に、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む、ポリマー。
【請求項11】
請求9または10に記載のポリマーであって、
前記式(1)中のRは、その構造中に、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む、ポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの製造方法、ネガ型感光性樹脂組成物の製造方法、樹脂膜の製造方法、電子装置の製造方法およびポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無水マレイン酸に由来する構造単位を有するポリマー(重合体)に関する検討が鋭意なされている。
この無水マレイン酸は、たとえばアルコール類等と反応させることにより、酸無水物に由来する部位が開環し、エステル結合を有する部位とカルボキシル基を有する部位とを与える。このように、容易に化学変換を行うことができるという背景もあり、とくに感光性樹脂の分野において、この無水マレイン酸に由来する構造単位を有する種々のポリマーについての応用的な開発がなされている。
【0003】
これに関連して、特許文献1には、インデン類を主成分とする重合成分と、無水マレイン酸とを主成分とする共重合体中の酸無水物基の少なくとも一部を不飽和アルコールによりエステル化して得られる感光性樹脂が開示されている。
当該文献によれば、この感光性樹脂は、耐熱性が高いものとされている。また、この感光性樹脂は、単独で、あるいは他の成分と組成物とすることにより、耐はんだレジスト、エッチングレジスト、耐メッキレジストおよび半導体素子製造時のパターン形成材料に展開できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-134413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の電子装置の高密度化、また、電子装置製造プロセスにおける効率化の要請から、感光性樹脂組成物は、より低露光量で確実に硬化することが求められている。そのため、感光性樹脂組成物を構成するポリマーについて、より硬化性能等に優れたものとすることの要請が大きい。
【0006】
このような事情を鑑み、本発明は、低露光量で硬化することができ、ネガ型感光性樹脂組成物等を構成するのに有用なポリマーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、
以下の式(1a)で示される構造単位を含む前駆体ポリマーを準備する工程と、
式(1a)で示される構造単位を含む上記前駆体ポリマーに対し、R-OHで表されるアルコール(ただし、Rは炭素数1~18の有機基である。)を作用させ、式(1a)で示される構造単位の無水マレイン酸部位を開環させ、上記前駆体ポリマー中にカルボキシル基またはその塩を生成させる工程と、
無水マレイン酸部位を開環させた上記前駆体ポリマーに対し、式(3)で示されるエポキシ基を備える化合物を反応させる工程と、
を含み、
上記前駆体ポリマーはさらに以下の式(2)で示される構造単位を含み、
上記前駆体ポリマー中、式(1a)で示される構造単位の含有割合は80モル%以下であり、式(2)で示される構造単位の含有割合は20モル%以上であり、
前駆体ポリマー中にカルボキシル基またはその塩を生成させる上記工程において、Rの構造中に炭素-炭素二重結合を有するアルコールが用いられるポリマーの製造方法が提供される。
【化1】
【化2】
(式(2)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~30の有機基である。nは0、1または2である。)
【化3】
(式(3)中、Rは炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
【0008】
また、本発明によれば、
上記のポリマーの製造方法によりポリマーを得て、さらに、光ラジカル発生剤を配合する工程を含むことを特徴とする、ネガ型感光性樹脂組成物の製造方法が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、
上記のネガ型感光性樹脂組成物の製造方法によりネガ型感光性樹脂組成物を得て、さらに、当該ネガ型感光性樹脂組成物を硬化させる工程を含む、樹脂膜の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、
上記の樹脂膜の製造方法を工程中に備える、電子装置の製造方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、
以下の式(1)で示される構造単位と、以下の式(2)で示される構造単位と、を含み、上記式(2)で示される構造単位の含有割合は20%モル以上であり、上記式(1)中のR は、その構造中に炭素-炭素二重結合を有するポリマーが提供される。
【化4】
(式(1)中、Rは炭素数1~18の有機基である。Rは炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
【化5】
(式(2)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~30の有機基である。nは0、1または2である。)
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリマーの製造方法では、無水マレイン酸に由来する構造単位から誘導されるカルボキシル基等の官能基に対して、エポキシ基を有する特定の化合物を作用させる。定かなものではないが、このような特定の化合物を作用させることにより、ポリマー構造中に感度を向上させるだけの官能基を生成させることができると考えられる。また、その結果、得られたポリマーを含む感光性樹脂組成物について露光した際に、飛躍的に硬化を促進できることが考えられる。
このことから、本発明の製造方法によって得られるポリマーは、低露光量で硬化することができ、また、ネガ型感光性樹脂組成物等を構成するのに有用であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0014】
図1】本実施形態に係る電子装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について、適宜図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、「~」はとくに断りがなければ、以上から以下を表す。
【0016】
[ポリマーの製造方法]
まず、本実施形態のポリマーの製造方法について説明する。
本実施形態のポリマーの製造方法は、以下の工程((i)~(iii)工程)を備えるものである。
(i) 以下の式(1a)で示される構造単位を含む前駆体ポリマーを準備する工程
(ii) 式(1a)で示される構造単位を含む前駆体ポリマーに対し、R-OHで表されるアルコール(ただし、Rは炭素数1~18の有機基である。)または水を作用させ、式(1a)で示される構造単位の無水マレイン酸部位を開環させ、前駆体ポリマー中にカルボキシル基またはその塩を生成させる工程
(iii) 無水マレイン酸部位を開環させた前駆体ポリマーに対し、式(3)で示されるエポキシ基を備える化合物を反応させる工程
【化4】
【化5】
(式(3)中、Rは炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
【0017】
以下、各工程について説明を行う。
【0018】
((i)工程)
本工程は、前述の式(1a)で示される構造単位を含む前駆体ポリマーを準備するものである。ここで、式(1a)で示される構造単位は無水マレイン酸を重合させることで誘導されるものであるが、この重合においては、無水マレイン酸以外の他のモノマーを共重合させることもできる。
【0019】
なお、この共重合を行うに際しては、他のモノマーとして、分子内にエチレン性二重結合を有する化合物を用いることができる。ここで、エチレン性二重結合とは、アリル基、アクリル基、メタクリル基、マレイミド基のほか、スチリル基やインデニル基のような芳香族ビニル基等も包含するものである。
【0020】
他のモノマーのより具体的な例としては、ノルボルネン等の脂環系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;の他、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等の化合物を用いることができる。
このような化合物の中でも、本実施形態においては、以下の式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーを用いることが好ましい。
【0021】
【化6】
(式(2a)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~30の有機基である。nは0、1または2である。)
【0022】
式(2a)中の、R、R、R、Rを構成する炭素数1~30の有機基は、その構造中にO、N、S、PおよびSiから選択される1以上の原子を含んでいてもよい。また、R、R、R、Rを構成する有機基は、いずれも酸性官能基を有しないものとすることができる。これにより、最終的に得られるポリマー中における酸価の制御を容易とすることができる。
【0023】
本実施形態において、R、R、R、Rを構成する有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基が挙げられる。
アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、たとえばフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、たとえばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、たとえばトリル基、キシリル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。ヘテロ環基としては、たとえばエポキシ基およびオキセタニル基が挙げられる。
【0024】
さらに、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基、およびヘテロ環基は、1以上の水素原子が、ハロゲン原子により置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。なかでもアルキル基の1以上の水素原子が、ハロゲン原子に置換されたハロアルキル基である場合を好ましい態様の一例として挙げることができる。このように、R、R、R、Rの少なくともいずれか1つをハロアルキル基とすることで、最終的に得られるポリマーを使用して硬化膜を構成した際、この硬化膜の誘電率を低下させることができる。また、ハロアルキルアルコール基とすることで、アルカリ現像液に対する溶解性を適切な範囲に調整できるだけでなく、耐熱変色性を向上させることができる。
なお、最終的に得られるポリマーを含んで構成される膜の光透過性を高める観点からは、R、R、R、Rのいずれか、またはすべてが水素であることが好ましい。
【0025】
式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーとしては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-エン(慣用名:2-ノルボルネン)があげられ、さらに、アルキル基を有するものとして、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネンなど、アルケニル基を有するものとしては、5-アリル-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネンなど、アルキニル基を有するものとしては、5-エチニル-2-ノルボルネンなど、アラルキル基を有するものとしては、5-ベンジル-2-ノルボルネン、5-フェネチル-2-ノルボルネンなどが挙げられる。
ノルボルネン型モノマーとしては、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。なかでも、最終的に得られるポリマーの光透過性の観点からは、ビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-エン(慣用名:2-ノルボルネン)を使用することが好ましい。
【0026】
本工程において、前述の式(2a)で示されるモノマーを用いた場合、前駆体ポリマーおよび最終生成物のポリマーは、以下の式(2)で示される構造単位を含むこととなる。
【0027】
【化7】
(式(2)中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して水素または炭素数1~30の有機基である。nは0、1または2である。)
【0028】
以下、本工程の具体的手順を、式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーと無水マレイン酸を用いて前駆体ポリマーを得る態様を例示しながら説明する。
【0029】
すなわち、本工程では、式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とを付加重合する。ここでは、たとえばラジカル重合により、式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸との共重合体(共重合体1)を形成する。
この付加重合により、前駆体ポリマー中に、無水マレイン酸に由来する前述の式(1a)で示される構造単位を含ませることができる。
【0030】
式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とのモル比(式(2a)で示される化合物のモル数:無水マレイン酸のモル数)は、0.5:1~1:0.5であることが好ましい。なかでも、分子構造制御の観点から、式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーのモル数:無水マレイン酸のモル数=0.8:1~1:0.8であることがより好ましい。
なお、この付加重合に際しては、上述のノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸以外にも共重合できるモノマーを添加することができる。このようなモノマーとして、分子内にエチレン性二重結合を有する基を含む化合物が挙げられる。ここで、エチレン性二重結合を有する基の具体例としては、アリル基、アクリル基、メタクリル基、マレイミド基や、スチリル基やインデニル基のような芳香族ビニル基等が挙げられる。
なお、本工程で得られる前駆体ポリマー全体における式(1a)で示される構造単位の含有割合は、たとえば20モル%以上であり、25モル%以上であることが好ましく、30モル%以上であることがより好ましい。
また、本工程で得られる前駆体ポリマー全体における式(1a)で示される構造単位の含有割合は、たとえば80モル%以下であり、75モル%以下であることが好ましく、70モル%以下であることがより好ましい。
この構造単位の含有割合は、たとえば、モノマーの仕込み量から計算することもできるし、得られた前駆体ポリマーについてNMR(核磁気共鳴)分析を行うことにより計算することもできる。
【0031】
重合方法としては、例えば、ラジカル重合開始剤及び必要に応じて分子量調整剤を用いて重合する方法が好適である。この場合、懸濁重合、溶液重合、分散重合、乳化重合等の方法を取ることができる。中でも、溶液重合が好ましい。溶液重合の際には、各単量体を全量一括仕込みで行っても良いし、一部を反応容器に仕込み、残りを滴下して行ってもよい。
【0032】
たとえば、式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸と、ラジカル重合開始剤とを溶媒に溶解し、その後、所定時間加熱することで、式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とを溶液重合する。加熱温度は、たとえば、50~80℃であり、加熱時間は10~20時間である。
【0033】
重合に使用される溶媒は、特に付加重合を阻害するものでなければ適宜選択することができる。本実施形態においては、たとえば、汎用性の高い溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等のうち、いずれか1種以上を使用することができる。
【0034】
ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物および過酸化物のうちのいずれか1種以上を使用できる。
アゾ化合物としては、たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(ABCN)が挙げられ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
また、過酸化物としては、たとえば過酸化水素、ジターシャリブチルパーオキサイド(DTBP)、過酸化ベンゾイル(ベンゾイルパーオキサイド,BPO)および、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKP)を挙げることができ、これらのうち、いずれか1種以上を使用できる。
【0035】
ラジカル重合開始剤の量(モル数)は、各モノマーの合計モル数(たとえば、式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーのモル数と無水マレイン酸のモル数の和)の0.05%~5%とすることが好ましい。ラジカル重合開始剤の量を前記範囲内で適宜設定し、かつ、反応温度、反応時間を適宜設定することで、得られる前駆体ポリマーの重量平均分子量(Mw)を適切な範囲に調整することができる。
【0036】
本工程により、上述の式(1a)で示される構造単位と、式(2)で示される構造単位とを有する前駆体ポリマー(共重合体1)を得ることができるが、この前駆体ポリマーは、式(1a)で示される構造単位と、式(2)で示される構造単位とが、ランダムに配置されたものであってもよく、また、交互に配置されたものであってもよい。また、式(2a)で示されるノルボルネン型モノマーと、無水マレイン酸とがブロック共重合したものであってもよい。ただし、本実施形態で製造されるポリマーを用いた樹脂組成物の溶解性の均一性を確保する観点からは、前駆体ポリマーは、式(1a)で示される構造単位と、式(2)で示される構造単位とが交互に配置された構造であることが好ましい。すなわち、前駆体ポリマー(共重合体1)は、以下の式(4)で表される構造単位を有するものであることが好ましい。
【0037】
【化8】
(式(4)において、n、R~Rは、上記式(2)と同じである。すなわち、nは0、1、2のいずれかであり、R~Rは、水素または炭素数1~30の有機基である。R~Rは、同一のものであっても異なっていてもよい。また、aは10以上、200以下の整数である。)
【0038】
本実施形態における前駆体ポリマー(共重合体1)は、たとえばGPC(Gel Permeation Chromatography)により得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下におけるピーク面積が、全体の1%以下であることが好ましい。
このように、GPCにより得られる分子量分布曲線の分子量1000以下におけるピーク面積の比率を上記範囲とすることにより、最終的に得られるポリマーを含む樹脂組成物からなる膜のパターン形状を良好なものとすることができる。
なお、前駆体ポリマー(共重合体1)における低分子量成分の量の下限は、特に限定されない。しかし、本実施形態における前駆体ポリマー(共重合体1)は、GPCにより得られる分子量分布曲線において分子量1000以下におけるピーク面積が全体の0.01%以上である場合を許容するものである。
【0039】
本実施形態における前駆体ポリマーは、たとえばMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が1.5以上5.0以下である。なお、Mw/Mnは、分子量分布の幅を示す分散度である。
このように、前駆体ポリマーにおける分子量分布を一定の範囲に制御することにより、最終的に得られるポリマーにより形成される膜について、硬化時におけるパターンの変形を抑制できることができる。そのため、前駆体ポリマーのMw/Mnを上記範囲とすることにより、最終生成物であるポリマーを含む樹脂組成物からなる膜の形状を良好なものとすることができる。なお、このような効果は、同時に上述のように前駆体ポリマーの低分子量成分を低減する場合において特に顕著に表れる。
【0040】
また、本実施形態の前駆体ポリマーのMw(重量平均分子量)は、たとえば2500以上であり、3000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましい。
一方、本実施形態の前駆体ポリマーのMw(重量平均分子量)は、たとえば35000以下であり、32000以下であることが好ましく、30000以下であることがより好ましい。
【0041】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(Mw/Mn)は、たとえばGPC測定により得られる標準ポリスチレン(PS)の検量線から求めた、ポリスチレン換算値を用いる。測定条件は、たとえば以下の通りである。
東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー装置HLC-8320GPC
カラム:東ソー社製TSK-GEL Supermultipore HZ-M
検出器:液体クロマトグラム用RI検出器
測定温度:40℃
溶媒:THF
試料濃度:2.0mg/ミリリットル
また、ポリマー中における低分子量成分量は、たとえばGPC測定により得られた分子量に関するデータに基づき、分子量分布全体の面積に占める、分子量1000以下に該当する成分の面積総和の割合から算出される。
【0042】
((ii)工程)
続いて、前述の前駆体ポリマーに対して、R-OHで表されるアルコール(ただし、Rは炭素数1~18の有機基である。)または水を作用させ、上記式(1a)で示される構造単位の無水マレイン酸部位を開環させ、前駆体ポリマー中にカルボキシル基またはその塩を生成させる。
【0043】
本工程において、アルコールを作用させた場合は、前駆体ポリマー中には、たとえば、以下の式(1b)で示される構造単位が生成することとなる。
【0044】
【化9】
(式(1b)において、Rは炭素数1~18の有機基である。)
【0045】
この式(1b)で示される構造単位において、Rは、炭素数1~18の有機基である。
ここでの有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキリデン基、アリール基、アラルキル基、アルカリル基、シクロアルキル基が挙げられる。
アルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、およびデシル基が挙げられる。アルケニル基としては、たとえばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基が挙げられる。アルキニル基としては、エチニル基が挙げられる。アルキリデン基としては、たとえばメチリデン基、およびエチリデン基が挙げられる。アリール基としては、たとえばフェニル基、ナフチル基、およびアントラセニル基が挙げられる。アラルキル基としては、たとえばベンジル基、およびフェネチル基が挙げられる。アルカリル基としては、たとえばトリル基、キシリル基が挙げられる。シクロアルキル基としては、たとえばアダマンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、およびシクロオクチル基が挙げられる。
【0046】
ここで、本実施形態で最終的に得られるポリマーは、たとえば、ネガ型感光性樹脂組成物を構成するポリマーとして用いることができるが、このようにネガ型感光性樹脂組成物に適用するに際しては、後に詳述するRのほか、Rについても、光ラジカル発生剤により、ラジカル重合を開始するラジカル重合性基を有していることが好ましい。より具体的にはRは、その構造中に炭素-炭素二重結合を有することが好ましく、また、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群から選ばれるいずれかの基を含むことがより好ましい。Rとして以下式(I)、式(II)のいずれかの基がさらに好ましい。
【0047】
【化10】
(式(I)において、fは1~5の整数であり、式(II)において、eは1~9の整数である。)
【0048】
なお、Rは式(1b)で示される複数の繰り返し単位において同じであることが好ましいが、式(1b)で示される繰り返し単位ごとに異なっていてもよい。
【0049】
また、Rとして、芳香環を含む炭素数8~18の有機基を用いてもよい。この場合、たとえばRとしては、ビニルアリール基(-Ar-CH=CH、Arは芳香族炭化水素基を表す。)を採用することができる。
【0050】
また、式(1b)におけるRを構成する炭素数1~18の有機基は、その構造中にO、N、S、P、Siのいずれか1以上の原子を含んでいてもよい。また、Rを構成する有機基は、酸性官能基を含まないものとすることができる。これにより、最終的に得られるポリマー中における酸価の制御を容易とすることができる。
【0051】
なお、本工程で変換される前駆体ポリマーについて、この式(1b)で示される構造単位、また、後述する式(1c)で示される構造単位は、その塩を含んでいてもよい。
【0052】
前述のアルコールを用いる態様とは別に、前駆体ポリマーに対して水を作用させた場合、前駆体ポリマー中には、以下の式(1c)で示される構造単位が生成することとなる。
【0053】
【化11】
【0054】
本工程は、前駆体ポリマー中の式(1a)で示される構造単位を、上述の式(1b)または式(1c)で示される構造単位、あるいはこれら式(1b)、式(1c)で示される構造単位の塩に変換するものである。ここで、以下の式で示される変換率は、たとえば5%以上に設定され、10%以上に設定されることが好ましく、20%以上に設定されることがより好ましい。
一方、以下の式で示される変換率の上限値はとくに制限されるものではないが、たとえば99.9%以下である。
・変換率(%)=100×[(本工程後の式(1b)で示される構造単位およびその塩のモル数)+(本工程後の式(1c)で示される構造単位およびその塩のモル数)]/[本工程前の式(1a)で示される構造単位のモル数)]
【0055】
本工程は、たとえば、式(1a)で示される構造単位を有する前駆体ポリマーを含む溶液に対し、アルコールまたは水を所定量加え、加熱することで行うことができる。
前駆体ポリマーを溶解する溶媒は、反応を阻害しないものの中から適宜選択することができ、加熱の条件としては、たとえば、50~100℃の範囲で設定することができる。反応時間は、ポリマーの化学構造の変化の度合などを観察しながら適宜設定できる。
なお、本工程に用いられる溶媒として、たとえば、汎用性の高い溶媒として、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル等のうち、いずれか1種以上を使用することができる。
【0056】
この加熱においては、反応を促進する観点から適宜触媒を加えることができ、たとえば塩基触媒や酸触媒を加えることができる。
塩基触媒としては、ピリジンや、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、ジメチルアニリン、ウロトロピン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物、酢酸ナトリウム等の金属塩を用いることができる。
また、酸触媒としては、硫酸や塩酸などの鉱酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、三フッ化ホウ素エーテラートなどのルイス酸などを用いることができる。
なお、本工程で塩基触媒を用いる場合においては、この塩基と、生成したカルボキシル基とが塩(カルボン酸塩)を形成することがある。この場合、このカルボン酸塩の構造を維持したまま次工程に移行することもできるし、また、塩酸やギ酸等の酸を作用させ、上述の式(1b)または式(1c)で示されるような、末端にカルボキシル基を備える構造単位に変換させることもできる。
【0057】
((iii)工程)
本工程では、前工程で得られた無水マレイン酸部位を開環させた前駆体ポリマーに対し、式(3)で示されるエポキシ基を備える化合物を反応させる。
【0058】
【化12】
(式(3)中、Rは炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
【0059】
本工程のより具体的な態様としては、前述の式(1b)または式(1c)で示される構造単位(またはその塩)を含む前駆体ポリマーを含む溶液と、式(3)で示される化合物とを混合し、加熱する。
前駆体ポリマーを溶解する溶媒は、反応を阻害しないものの中から適宜選択することができ、加熱の条件としては、たとえば、50~100℃の範囲で設定することができる。反応時間は、ポリマーの化学構造の変化の度合などを観察しながら適宜設定できる。
【0060】
また、式(3)で示される化合物は、特定のRを備えるものの中から適宜選択することができる。
具体的には、Rは、炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有するものであるが、Rとしては、たとえばアリル基、ペンテニル基、およびビニル基等のアルケニル基を含む有機基とすることができる。より具体的には、Rは、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群から選ばれるいずれかの基を含むことがより好ましく、アクリロイル基またはメタクリロイル基を含むことがさらに好ましい。
また、Rとしては、前述の式(I)、式(II)のいずれかの基を採用することもできる。
【0061】
また、Rは、形成される構造単位ごとにおいて同じであることが好ましいが、形成される構造単位ごとに異なっていてもよい。
また、Rとして、芳香環を含む炭素数8~18の有機基を用いてもよい。この場合、たとえばRとしては、ビニルアリール基(-Ar-CH=CH、Arは芳香族炭化水素基を表す)を採用することができる。
【0062】
また、Rを構成する炭素数2~18の有機基は、その構造中にO、N、S、P、Siのいずれか1以上の原子を含んでいてもよい。また、Rを構成する有機基は、酸性官能基を含まないものとすることができる。これにより、得られるポリマー中における酸価の制御を容易とすることができる。
【0063】
本実施形態において、入手容易性の高さを鑑み、この式(3)で示される化合物として、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0064】
ここで、式(1b)で示される構造単位に対し、式(3)で示される化合物を作用させた場合においては、この式(1b)で示される構造単位は、式(1)で示される構造単位に変換されうる。
すなわち、本実施形態によって得られるポリマーは、この式(1)で示される構造単位を含みうる。
【0065】
【化13】
(式(1)中、Rは炭素数1~18の有機基である。Rは炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
【0066】
一方、上記式(1c)で示される構造単位に対し、式(3)で示される化合物を作用させた場合においては、この式(1c)で示される構造単位は、式(1d)で示される構造単位に変換されうる。
なお、本実施形態において、この式(1d)で示される構造単位は、式(1)で示される構造単位に相当するものであることが好ましい。
【0067】
【化14】
(式(1d)中、Rは、それぞれ炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
【0068】
本工程においては、反応を促進する観点から適宜触媒を加えることができ、たとえば塩基触媒や酸触媒を加えることができる。
塩基触媒としては、ピリジンや、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、ジメチルアニリン、ウロトロピン、ジメチルアミノピリジンなどのアミン化合物、酢酸ナトリウム等の金属塩を用いることができる。
また、酸触媒としては、硫酸や塩酸などの鉱酸、パラトルエンスルホン酸などの有機酸、フッ化ホウ素エーテラートなどのルイス酸などを用いることができる。
なお、本工程で塩基触媒を用いる場合においては、この塩基とポリマー中のカルボキシル基とが塩(カルボン酸塩)を形成することがあるため、塩酸やギ酸等の酸を作用させ、ポリマー中のカルボン酸塩の部位を、カルボキシル基へと変換させることが好適である。
【0069】
以上のようにして、本実施形態のポリマーを製造することができるが、本実施形態のポリマーの製造方法においては、各工程の間に前駆体ポリマーを洗浄する処理を介在させてもよいし、また、無水マレイン酸や式(2a)で示される化合物に由来する構造単位以外の構造単位を含む場合は、かかる構造単位を変換するのに適した処理を、各工程の間に介在させてもよい。
【0070】
本実施形態によって得られるポリマーは、前述の式(1)で示される、無水マレイン酸に由来する構造単位を含みうるが、この構造単位のほか、以下に示す式(1b)で示される構造単位や式(1c)で示される構造単位を含むことができる。
これら構造単位はカルボキシル基を備えており、ポリマーとしてのアルカリ可溶性を付与するものである。
【0071】
【化15】
(式(1b)において、Rは、前述したRと同様である。)
【0072】
【化16】
【0073】
なお、本実施形態によって得られるポリマーのアルカリ溶解速度は、たとえば500Å/秒以上30000Å/秒以下である。ポリマーのアルカリ溶解速度は、たとえばポリマーをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させ、固形分20重量%に調整したポリマー溶液を、シリコンウェハ上にスピン方式で塗布し、これを110℃で100秒間ソフトベークして得られるポリマー膜を、23℃で2.38%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液に含浸させ、視覚的に前記ポリマー膜が消去するまでの時間を測定することにより算出される。
ポリマーのアルカリ溶解速度を500Å/秒以上とすることにより、アルカリ現像液による現像工程におけるスループットを良好なものとすることができる。また、ポリマーのアルカリ溶解速度を30000Å/秒以下とすることにより、アルカリ現像液による現像工程後における残膜率を向上させることができる。このため、リソグラフィ工程による膜減りを抑えることが可能となる。
同様の観点から、ポリマーのアルカリ溶解速度は1000Å/秒以上であることがより好ましく、2000Å/秒以上であることがさらに好ましい。また、ポリマーのアルカリ溶解速度は28000Å/秒以下であることがより好ましく、25000Å/秒以下であることがさらに好ましい。
【0074】
本実施形態により得られるポリマーは、たとえばGPC(Gel Permeation Chromatography)により得られる分子量分布曲線において、分子量1000以下におけるピーク面積が、全体の1%以下であることが好ましい。
このように、GPCにより得られる分子量分布曲線の分子量1000以下におけるピーク面積の比率を上記範囲とすることにより、このポリマーを含む樹脂組成物からなる膜のパターン形状を良好なものとすることができる。
なお、本実施形態により得られるポリマーにおける低分子量成分の量の下限は、特に限定されない。しかし、本実施形態におけるポリマーは、GPCにより得られる分子量分布曲線において分子量1000以下におけるピーク面積が全体の0.01%以上である場合を許容するものである。
【0075】
本実施形態により得られるポリマーは、たとえばMw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)が1.5以上5.0以下である。
このように、ポリマーにおける分子量分布を一定の範囲に制御することにより、本実施形態により得られるポリマーにより形成される膜について、硬化時におけるパターンの変形を抑制できることができる。そのため、ポリマーのMw/Mnを上記範囲とすることにより、ポリマーを含む樹脂組成物からなる膜の形状を良好なものとすることができる。
【0076】
また、本実施形態により得られるポリマーのMw(重量平均分子量)は、たとえば2500以上であり、3000以上であることが好ましく、4000以上であることがより好ましい。
一方、本実施形態により得られるポリマーのMw(重量平均分子量)は、たとえば35000以下であり、32000以下であることが好ましく、30000以下であることがより好ましい。
Mw(重量平均分子量)についてこのような範囲に設定することにより、本実施形態のポリマーは、ネガ型感光性樹脂組成物を作製する際に適度に溶媒に溶解し、かつ、樹脂膜を構成する際に適度な剛性を発現することができる。
【0077】
本実施形態により得られるポリマーは、この構造単位に含まれる化学的性能の特異性から、好ましくは、感光性樹脂膜を形成するために用いることができる。
なお、本明細書中において「感光性樹脂膜」とは、電子装置等の作製過程において、露光工程に供される樹脂膜を指す。より具体的には、「感光性樹脂膜」は、光が照射された部位が硬化し、一方、照射されない部位は現像工程で現像液(例えばアルカリ溶液)に溶解して除去される、ネガ型の感光性樹脂膜を指す。
【0078】
[ネガ型感光性樹脂組成物]
続いて、本実施形態にかかるネガ型感光性樹脂組成物について説明する。
本実施形態に係るネガ型感光性樹脂組成物は、先に説明した製造方法により得られるポリマーと、光ラジカル発生剤とを配合することにより得られるものである。
【0079】
光ラジカル発生剤としては、具体的には、例えば、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシー2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-〔4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル〕フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-〔(4-メチルフェニル)メチル〕-1-〔4-(4-モルホリニル)フェニル〕-1-ブタノン等のアルキルフェノン系化合物;ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテ等のベンゾイン系化合物;チオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物;2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシカルボキニルナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン等のハロメチル化トリアジン系化合物;2-トリクロロメチル-5-(2'-ベンゾフリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-〔β-(2'-ベンゾフリル)ビニル〕-1,3,4-オキサジアゾール、4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-フリル-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチル化オキサジアゾール系化合物;2,2'-ビス(2-クロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4-ジクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール、2,2'-ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)-4,4',5,5'-テトラフェニル-1,2'-ビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物;1,2-オクタンジオン,1-〔4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)〕、エタノン,1-〔9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル〕-,1-(O-アセチルオキシム)等のオキシムエステル系化合物;ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム等のチタノセン系化合物;p-ジメチルアミノ安息香酸、p-ジエチルアミノ安息香酸等の安息香酸エステル系化合物;9-フェニルアクリジン等のアクリジン系化合物;等を挙げることができる。
【0080】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物において、光ラジカル発生剤は、ポリマー全体100質量部に対し、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、さらには2質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0081】
また、上記光ラジカル発生剤とともに、光増感剤や光ラジカル重合促進剤を使用する事により、感度や架橋度を更に向上させることができる。例えば、キサンテン色素、クマリン色素などの色素系化合物、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル等のジアルキルアミノベンゼン系化合物、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール等のメルカプト系水素供与体等があげられる。
【0082】
(溶媒)
本実施形態に記載のネガ型感光性樹脂組成物は、上述の各成分を溶媒に溶解することで、ワニス状として使用することができる。
このような溶媒の例としては、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチル-1,3-ブチレングリコールアセテート、1,3-ブチレングリコール-3-モノメチルエーテル、ピルビン酸メチル、およびピルビン酸エチル及びメチル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。
なお、樹脂膜のクラック発生を顕著に抑制する観点からは、これらの化合物のうち、γ-ブチロラクロン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートからなる群から選ばれる化合物を用いることが好ましい態様である。
【0083】
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物における溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、ポリマー100質量部に対して、100質量部以上であることが好ましく、150質量部以上であることがより好ましい。
また、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物における溶媒の含有量は、ポリマー100質量部に対して、1000質量部以下であることが好ましく、800質量部以下であることがより好ましい。溶媒の含有量が上記範囲内であると、適度なハンドリング性をもたらすことができる。
【0084】
また、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、各用途の目的や要求特性に応じて、フィラー、先述のポリマー以外のバインダー樹脂、架橋剤、酸発生剤、耐熱向上剤、現像助剤、可塑剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、艶消し剤、消泡剤、レベリング剤、帯電防止剤、分散剤、スリップ剤、表面改質剤、揺変化剤、揺変助剤、界面活性剤、シラン系やアルミニウム系、チタン系などのカップリング剤、多価フェノール化合物等の上記の必須成分以外の成分が配合されても良い。
【0085】
[着色感光性樹脂組成物]
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物はさらに着色剤を含ませることにより、着色感光性樹脂組成物とすることができる。
このような着色感光性樹脂組成物は、たとえば、カラーフィルタを構成するブラックマトリクスや着色パターンを作製する際に、好適に用いることができる。
【0086】
本実施形態の着色感光性樹脂組成物は、従来公知の顔料や染料を含有するものである。
顔料としては有機顔料や無機顔料を用いることができる。
有機顔料としては、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、多環式顔料(キナクリドン系、ペリレン系、ペリノン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジオキサジン系、チオインジゴ系、アントラキノン系、キノフタロン系、金属錯体系、ジケトピロロピロール系等)、染料レーキ系顔料等を使用することができる。
無機顔料としては、白色・体質顔料(酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等)、有彩顔料(黄鉛、カドミニウム系、クロムバーミリオン、ニッケルチタン、クロムチタン、黄色酸化鉄、ベンガラ、ジンククロメート、鉛丹、群青、紺青、コバルトブルー、クロムグリーン、酸化クロム、バナジン酸ビスマス等)、黒色顔料(カーボンブラック、ボーンブラック、グラファイト、鉄黒、チタンブラック等)、光輝材顔料(パール顔料、アルミ顔料、ブロンズ顔料等)、蛍光顔料(硫化亜鉛、硫化ストロンチウム、アルミン酸ストロンチウム等)を使用することができる。
【0087】
使用できる顔料の色としては黄色、赤色、紫色、青色、緑色、褐色、黒色、白色が挙げられる。
【0088】
また、染料としては、例えば、特開2003-270428号公報や特開平9-171108号公報、特開2008-50599号公報等に記載されている公知の染料(化合物)を使用することができる。
【0089】
上述の着色剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。上述の着色剤は、目的、用途に応じて、適切な平均粒子径を有するものを使用できるが、特にカラーフィルタ用着色レジストのような透明性が要求される場合は、0.1μm以下の小さい平均粒子径が好ましく、その他、塗料などの隠蔽性が必要とされる場合は、0.5μm以上の大きい平均粒子径が好ましい。また、上述の色材は、目的、用途に応じて、ロジン処理、界面活性剤処理、樹脂系分散剤処理、顔料誘導体処理、酸化皮膜処理、シリカコーティング、ワックスコーティングなどの表面処理がなされていてもよい。
【0090】
本実施形態の着色感光性樹脂組成物における着色剤の含有割合は、目的、用途に応じて、適宜設定すればよいが、着色力と分散安定性のバランスを取る観点から、着色感光性樹脂組成物の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量部としたとき、好ましくは3質量%以上70質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは10質量%以上50質量%以下である。
【0091】
[用途]
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、硬化物とすることにより樹脂膜を得ることができる。
このような樹脂膜は、たとえばレジストとしての用途として用いることができ、また、たとえば保護膜、層間膜、またはダム材等の永久膜を構成することもできる。
【0092】
次に、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を適用した電子装置100の一例について説明する。
図1に示す電子装置100は、たとえば半導体チップである。この場合、たとえば電子装置100を、バンプ52を介して配線基板上に搭載することにより半導体パッケージが得られる。電子装置100は、トランジスタ等の半導体素子が設けられた半導体基板と、半導体基板上に設けられた多層配線層と、を備えている(図示せず)。多層配線層のうち最上層には、層間絶縁膜30と、層間絶縁膜30上に設けられた最上層配線34が設けられている。最上層配線34は、たとえばAlにより構成される。また、層間絶縁膜30上および最上層配線34上には、パッシベーション膜32が設けられている。パッシベーション膜32の一部には、最上層配線34が露出する開口が設けられている。
【0093】
パッシベーション膜32上には、再配線層40が設けられている。再配線層40は、パッシベーション膜32上に設けられた絶縁層42と、絶縁層42上に設けられた再配線46と、絶縁層42上および再配線46上に設けられた絶縁層44と、を有する。絶縁層42には、最上層配線34に接続する開口が形成されている。再配線46は、絶縁層42上および絶縁層42に設けられた開口内に形成され、最上層配線34に接続されている。絶縁層44には、再配線46に接続する開口が設けられている。
本実施形態においては、パッシベーション膜32、絶縁層42および絶縁層44のうちの一つ以上を、たとえば上述のネガ型感光性樹脂組成物を硬化することにより形成される樹脂膜により構成することができる。この場合、たとえばネガ型感光性樹脂組成物により形成される塗布膜に対し紫外線を露光し、現像を行うことによりパターニングした後、これを加熱硬化することにより、パッシベーション膜32、絶縁層42または絶縁層44が形成される。
【0094】
絶縁層44に設けられた開口内には、たとえばUBM(Under Bump Metallurgy)層50を介してバンプ52が形成される。電子装置100は、たとえばバンプ52を介して配線基板等に接続される。
【0095】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
[1]
上記式(1a)で示される構造単位を含む前駆体ポリマーを準備する工程と、
上記式(1a)で示される構造単位を含む上記前駆体ポリマーに対し、R -OHで表されるアルコール(ただし、R は炭素数1~18の有機基である。)または水を作用させ、上記式(1a)で示される構造単位の無水マレイン酸部位を開環させ、上記前駆体ポリマー中にカルボキシル基またはその塩を生成させる工程と、
無水マレイン酸部位を開環させた上記前駆体ポリマーに対し、上記式(3)で示されるエポキシ基を備える化合物を反応させる工程と、
を含むポリマーの製造方法。
(式(3)中、R は炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
[2]
[1]に記載のポリマーの製造方法であって、
式(3)で示されるエポキシ基を備える上記化合物のR は、その構造中に、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む、ポリマーの製造方法。
[3]
[1]または[2]に記載のポリマーの製造方法であって、
前駆体ポリマー中にカルボキシル基またはその塩を生成させる上記工程において、R の構造中に炭素-炭素二重結合を有するアルコールが用いられる、ポリマーの製造方法。
[4]
[3]に記載のポリマーの製造方法であって、
上記R は、その構造中に、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む、ポリマーの製造方法。
[5]
[1]ないし[4]のいずれか一つに記載のポリマーの製造方法であって、
上記前駆体ポリマーはさらに上記式(2)で示される構造単位を含む、ポリマーの製造方法。
(式(2)中、R 、R 、R およびR はそれぞれ独立して水素または炭素数1~30の有機基である。nは0、1または2である。)
[6]
[1]ないし[5]のいずれか一つに記載のポリマーの製造方法であって、
上記ポリマーの重量平均分子量(Mw)が2500以上35000以下である、ポリマーの製造方法。
[7]
[1]ないし[6]のいずれか一つに記載のポリマーの製造方法であって、
上記ポリマーは、感光性樹脂膜形成用ポリマーである、ポリマーの製造方法。
[8]
[1]ないし[7]のいずれか一つに記載のポリマーの製造方法によりポリマーを得て、さらに、光ラジカル発生剤を配合する工程を含むことを特徴とする、ネガ型感光性樹脂組成物の製造方法。
[9]
[8]に記載のネガ型感光性樹脂組成物の製造方法によりネガ型感光性樹脂組成物を得て、さらに、当該ネガ型感光性樹脂組成物を硬化させる工程を含む、樹脂膜の製造方法。
[10]
[9]に記載の樹脂膜の製造方法を工程中に備える、電子装置の製造方法。
[11]
上記式(1)で示される構造単位を含むポリマー。
(式(1)中、R は炭素数1~18の有機基である。R は炭素数2~18の有機基であって、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する。)
[12]
[11]に記載のポリマーであって、
上記式(1)中のR は、その構造中に、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む、ポリマー。
[13]
[11]または[12]に記載のポリマーであって、
上記式(1)中のR は、その構造中に炭素-炭素二重結合を有する、ポリマー。
[14]
[13]に記載のポリマーであって、
上記式(1)中のR は、その構造中に、ビニル基、ビニリデン基、アクリロイル基、メタクリロイル基からなる群より選ばれるいずれかの基を含む、ポリマー。
[15]
[11]ないし[14]のいずれか一つに記載のポリマーであって、
さらに上記式(2)で示される構造単位を含む、ポリマー。
(式(2)中、R 、R 、R およびR はそれぞれ独立して水素または炭素数1~30の有機基である。nは0、1または2である。)
【実施例
【0096】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0097】
(実施例1:ポリマー合成)
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸(株式会社日本触媒製、122.4g、1.25mol)、2-ノルボルネン(75wt%トルエン溶液、丸善石油化学株式会社製、156.8g、1.25mol)およびジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(V-601、和光純薬工業株式会社製、11.5g、50mmol)を計量し、メチルエチルケトン(MEK、150.8g)およびトルエン(38.5g)に溶解させた。
この溶解液に対して、10分間窒素を通気して酸素を除去し、その後、撹拌しつつ60℃に加熱した。16時間後、MEK(320g)を加えて希釈し、冷却した。
この反応混合物を大量のメタノールに滴下し、ポリマーを析出させた。ヌッチェを用いてろ過した後、さらにメタノールにて洗浄し固体を濾取した。得られたポリマーを70℃で真空乾燥した。収量は208.1g、重量平均分子量(Mw)は11,100、分散度(Mw/Mn)は2.25であった(本実施例項において、「前駆体ポリマー」と称する。)。
続いて、撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、上述の前駆体ポリマー(10.0g)を計量しMEK(30.0g)に溶解させた。さらにメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA、株式会社日本触媒製、8.5g、65mmol)、酢酸ナトリウム(1.0g)を添加し、70℃で8時間加熱した。
この反応液に対して、メタクリル酸グリシジル(GMA、3.7g、26mmol)を添加し、さらに70℃で16時間撹拌した。反応液にギ酸を加えて酸処理した後、大量の純水に滴下しポリマーを析出させた。濾取した固体を真空乾燥機にて40℃で16時間乾燥させ、13.8gの淡黄色固体を得た。
また、得られたポリマーの諸物性は以下に示す通りである。
・重量平均分子量(Mw):16,200
・分散度:2.46
【0098】
(実施例2:ポリマー合成)
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、無水マレイン酸(735g、7.5mol)、2-ノルボルネン(706g、7.5mol)およびジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(69g、0.3mol)を計量し、メチルエチルケトン(900g)およびトルエン(231g)に溶解させた。
この溶解液に対して、窒素バブリングにより系内の溶存酸素を除去した後、撹拌しつつ60℃、15時間の条件で熱処理を施した。これにより、2-ノルボルネンと無水マレイン酸の共重合体を得た。次いで、室温まで冷却した上記溶解液を大量のメタノールを用いて再沈させた後、析出物をろ取し、真空乾燥機にて乾燥させ、1100gの白色固体を得た。
この白色固体(10g)を10%水酸化ナトリウム溶液(40g)と混合し、70℃で16時間撹拌した。室温まで冷却した後、400gの5%塩酸水溶液に再沈し、その後純水で十分に洗浄した。真空乾燥機で乾燥させることでジカルボン酸体(8g)を得た。
こうして得られたジカルボン酸体(3.0g)をTHF(12g)に溶解させ、グリシジエルメタクリレート(4.0g)、トリエチルアミン(0.1g)と混合し、70℃で12時間反応させた。反応液をヘプタンへ再沈させた後、析出物をろ取し、真空乾燥機にて乾燥させることで4.3gの白色固体を得た。
また、得られたポリマーの諸物性は以下に示す通りである。
・重量平均分子量(Mw):13,600
・分散度:2.22
【0099】
(比較例1:エポキシ基を有する化合物を用いずに行ったポリマー合成)
撹拌機、冷却管を備えた適切なサイズの反応容器に、実施例1に記載の前駆体ポリマー(10.0g)を計量し、MEK(30.0g)に溶解させた。さらにメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(8.5g、65mmol)、酢酸ナトリウム(1.0g)を添加し、70℃で24時間加熱した。反応液にギ酸を加えて酸処理した後、大量の純水に滴下しポリマーを析出させた。濾取した固体を真空乾燥機にて40℃で16時間乾燥させ、11.2gのポリマーを得た。
また、得られたポリマーの諸物性は以下に示す通りである。
・重量平均分子量(Mw):12,400
・分散度:2.16
【0100】
[ネガ型感光性樹脂組成物の調製]
実施例及び比較例で得られたポリマー各2.0gに対し、それぞれ架橋剤であるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(A-DPH、新中村化学工業株式会社製)1.0g、以下の式(10)で表される光ラジカル発生剤(イルガキュアOXE02(BASF社製))0.1g、シランカップリング剤(KBM-403(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン;信越化学工業株式会社製))0.02g、界面活性剤(F556(DIC株式会社製))0.01gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートにて溶解し、固形分30%の溶液とした。その後孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過し、感光性樹脂組成物を調製した。
なお、用いたポリマーと、得られたネガ型感光性樹脂組成物との対応関係は表1に示した通りである。
【0101】
【化17】
【0102】
[評価]
得られたネガ型感光性樹脂組成物については、以下に従い評価を行った。
【0103】
(感度)
上記で得たネガ型感光性樹脂組成物を、シリコンウエハー上に回転塗布(回転数500~3000rpm)し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークし、約3μmの薄膜Aを得た。この薄膜Aに対し、露光装置を用いて5mJ/cmずつ露光量を変動させて露光を行った。露光装置としては、キヤノン株式会社製g+h+i線マスクアライナー(PLA-501F)を用いた。
露光を行った膜については、TMAH現像液(濃度:2.38%)を用いて23℃、60秒間現像し、純水リンスを施して、薄膜Bを得た。そして、薄膜B/薄膜A×100≧95%となる露光量を感度(mJ/cm)とした。この感度について、表1に結果をまとめた。比較例2に対し、特定の構造単位を有するポリマーを用いた実施例3、4のネガ型感光性樹脂組成物はいずれもより低露光量で高い残膜率を得られる事がわかった。
【0104】
(現像後残膜率)
上記で得たネガ型感光性樹脂組成物を、シリコンウエハー上に回転塗布(回転数500~3000rpm)し、100℃、120秒間ホットプレートにてベークし、約3μmの薄膜Aを得た。この薄膜Aに対し、露光装置を用いて100mJ/cm露光を行った。
露光を行った膜については、TMAH現像液(濃度:2.38%)を用いて23℃、60秒間現像し、純水リンスを施して、薄膜Bを得た。そして、(薄膜B/薄膜A)×100[%]を現像後残膜率として表1に示した。比較例2ではアルカリ現像液膨潤による膜厚増加が見られた一方、実施例3、4では膨潤が見られなかった。
【0105】
【表1】
【0106】
この出願は、2016年3月8日に出願された日本出願特願2016-044214号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明の製造方法により得られるポリマーは、低露光量で硬化することができるため、ネガ型感光性樹脂組成物等を構成するのに有用である。
図1