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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】リザーブタンク
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/00 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
F01P11/00 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019004520
(22)【出願日】2019-01-15
(65)【公開番号】P2020112122
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 和文
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0861485(KR,B1)
【文献】実開昭60-152021(JP,U)
【文献】実開平04-132430(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータと連通管を介して接続されているタンク本体部を備えており、前記連通管が前記タンク本体部の上部から底部近傍まで挿入されているリザーブタンクであって、
前記タンク本体部を構成する第1のタンク片と第2のタンク片とを備えており、
前記第1のタンク片の内壁面には、前記連通管の内壁面の一部を構成する一方の連通管形成壁が形成されており、
前記第2のタンク片の内壁面には、前記連通管の内壁面の一部を構成する他方の連通管形成壁が形成されており、
前記第1のタンク片の縁部と前記第2のタンク片の縁部とが接合されることで前記タンク本体部が形成され、前記第1のタンク片の一方の連通管形成壁と前記第2のタンク片の他方の連通管形成壁とが接合されることで前記タンク本体部内に前記連通管が形成されており、
前記一方の連通管形成壁と前記他方の連通管形成壁とは、高さ方向に延びるように形成されており、
前記一方の連通管形成壁は、溝部であり、
前記他方の連通管形成壁は、前記溝部の開口部に対して合わせられる蓋部であるリザーブタンク。
【請求項2】
ラジエータと連通管を介して接続されているタンク本体部を備えており、前記連通管が前記タンク本体部の上部から底部近傍まで挿入されているリザーブタンクであって、
前記タンク本体部を構成する第1のタンク片と第2のタンク片とを備えており、
前記第1のタンク片の内壁面には、前記連通管の内壁面の一部を構成する一方の連通管形成壁が形成されており、
前記第2のタンク片の内壁面には、前記連通管の内壁面の一部を構成する他方の連通管形成壁が形成されており、
前記第1のタンク片の縁部と前記第2のタンク片の縁部とが接合されることで前記タンク本体部が形成され、前記第1のタンク片の一方の連通管形成壁と前記第2のタンク片の他方の連通管形成壁とが接合されることで前記タンク本体部内に前記連通管が形成されており、
前記一方の連通管形成壁は前記第1のタンク片の縁部に沿って形成されており、前記他方の連通管形成壁は前記第2のタンク片の縁部に沿って形成されており、
前記一方の連通管形成壁は、溝部であり、
前記他方の連通管形成壁は、前記溝部の開口部に対して合わせられる蓋部であるリザーブタンク。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載されたリザーブタンクであって、
前記第1のタンク片の縁部と前記第2のタンク片の縁部とは互いの接合面で接合される構成であり、
前記一方の連通管形成壁と前記他方の連通管形成壁とは互いの接合面で接合される構成であり、
前記第1のタンク片の縁部の接合面と前記一方の連通管形成壁の接合面とが同一面上にあり、
前記第2のタンク片の縁部の接合面と前記他方の連通管形成壁の接合面とが同一面上にあるリザーブタンク。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載されたリザーブタンクであって、
前記タンク本体部の上端位置に蓋付き注水口が設けられており、
前記タンク本体部の側面にそのタンク本体部内の連通管と、前記タンク本体部の外の連通管とを接続するための接続口が形成されているリザーブタンク。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれかに記載されたリザーブタンクであって、
前記タンク本体部内の前記連通管は、断面角形に形成されているリザーブタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータから押し出された冷却水を貯留し、また貯留した冷却水を前記ラジエータに戻すリザーブタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したリザーブタンクに関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載のリザーブタンク100は、図21に示すように、タンク本体部103とタンク蓋部104とから構成されている。タンク本体部103とタンク蓋部104とは、樹脂の射出成形品であり、周縁にフランジ部103f,104fを備えている。そして、タンク本体部103とタンク蓋部104とが互いのフランジ部103f,104fで接合されることで、リザーブタンク100が形成される。
【0003】
また、タンク蓋部104の下面には、パイプ状のタンク内連通管105がタンク本体部103の底面近傍まで下方に延びるように形成されている。タンク内連通管105は、ラジエータ(図示省略)側のタンク外連通管(図示省略)に接続されている。これにより、リザーブタンク100に貯留された冷却水をタンク内連通管105、タンク外連通管によりラジエータに戻せるようになる。
【0004】
ここで、タンク蓋部104は樹脂の射出成形品であるため、パイプ状のタンク内連通管105の長さ寸法を大きく設定するのは難しい。このため、タンク本体部103が深く、長さ寸法が大きなタンク内連通管105が必要な場合には、別工程で製造された管状体を前記タンク蓋部104の連通管接続部(図示省略)に接続することが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-232595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、タンク内連通管105として別工程で製造された管状体を使用する構成では、部品点数が増加するとともに、取付け工数が掛かり、コストアップとなる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、部品点数を少なくしてコスト低減を図るとともに、タンク本体部内の連通管を容易に成形できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、ラジエータと連通管を介して接続されているタンク本体部を備えており、前記連通管が前記タンク本体部の上部から底部近傍まで挿入されているリザーブタンクであって、前記タンク本体部を構成する第1のタンク片と第2のタンク片とを備えており、前記第1のタンク片の内壁面には、前記連通管の内壁面の一部を構成する一方の連通管形成壁が形成されており、前記第2のタンク片の内壁面には、前記連通管の内壁面の一部を構成する他方の連通管形成壁が形成されており、前記第1のタンク片の縁部と前記第2のタンク片の縁部とが接合されることで前記タンク本体部が形成され、前記第1のタンク片の一方の連通管形成壁と前記第2のタンク片の他方の連通管形成壁とが接合されることで前記タンク本体部内に前記連通管が形成されており、前記一方の連通管形成壁と前記他方の連通管形成壁とは、高さ方向に延びるように形成されており、前記一方の連通管形成壁は、溝部であり、前記他方の連通管形成壁は、前記溝部の開口部に対して合わせられる蓋部である
【0009】
本発明によると、第1のタンク片の縁部と第2のタンク片の縁部とが接合されることでタンク本体部が形成され、前記第1のタンク片の一方の連通管形成壁と前記第2のタンク片の他方の連通管形成壁とが接合されることで前記タンク本体部内に前記連通管が形成されている。即ち、第1のタンク片と第2のタンク片とを合わせて接合することにより、タンク本体部と、そのタンク本体部内の連通管とを同時に形成することができる。このため、タンク本体部と、そのタンク本体部内の連通管とを個別に製作する場合と比較して部品点数の低減を図ることできる。また、一方の連通管形成壁は第1のタンク片の内壁面に形成されており、他方の連通管形成壁は第2のタンク片の内壁面に形成されているため、長さ寸法が大きいタンク本体部内の連通管の成形が容易になる。
また、タンク本体部内に高さ方向に延びる連通管を形成することができる。
さらに、一方の連通管形成壁は、溝部であり、他方の連通管形成壁は、前記溝部の開口部に対して合わせられる蓋部であるため、タンク本体部内の連通管を容易に形成できる。
【0010】
第2の発明は、ラジエータと連通管を介して接続されているタンク本体部を備えており、前記連通管が前記タンク本体部の上部から底部近傍まで挿入されているリザーブタンクであって、前記タンク本体部を構成する第1のタンク片と第2のタンク片とを備えており、前記第1のタンク片の内壁面には、前記連通管の内壁面の一部を構成する一方の連通管形成壁が形成されており、前記第2のタンク片の内壁面には、前記連通管の内壁面の一部を構成する他方の連通管形成壁が形成されており、前記第1のタンク片の縁部と前記第2のタンク片の縁部とが接合されることで前記タンク本体部が形成され、前記第1のタンク片の一方の連通管形成壁と前記第2のタンク片の他方の連通管形成壁とが接合されることで前記タンク本体部内に前記連通管が形成されており、前記一方の連通管形成壁は前記第1のタンク片の縁部に沿って形成されており、前記他方の連通管形成壁は前記第2のタンク片の縁部に沿って形成されており、前記一方の連通管形成壁は、溝部であり、前記他方の連通管形成壁は、前記溝部の開口部に対して合わせられる蓋部である
【0011】
第2の発明によると、一方の連通管形成壁は第1のタンク片の縁部に沿って形成されており、他方の連通管形成壁は第2のタンク片の縁部に沿って形成されている。ここで、第1のタンク片と第2のタンク片とを合わせて(接合して)タンク本体部と連通管とを同時に形成する場合、一方の連通管形成壁の接合面と第1のタンク片の縁部の接合面とを同一面上に形成し、他方の連通管形成壁の接合面と第2のタンク片の縁部の接合面とを同一面上に形成する必要がある。このため、例えば、連通管をタンク本体部の中央に形成する場合には、タンク本体部の中央を絞って、一方の連通管形成壁の接合面と他方の連通管形成壁の接合面とを第1のタンク片と第2のタンク片との合わせ位置に保持する必要がある。しかし、連通管形成壁をタンク片の縁部に沿って形成すれば、タンク本体部の中央を絞る必要がなくなり、タンク容量を大きくできる。
また、一方の連通管形成壁は、溝部であり、他方の連通管形成壁は、前記溝部の開口部に対して合わせられる蓋部である。このため、タンク本体部内の連通管を容易に形成できる。
【0013】
第3の発明によると、第1のタンク片の縁部と第2のタンク片の縁部とは互いの接合面で接合される構成であり、前記一方の連通管形成壁と前記他方の連通管形成壁とは互いの接合面で接合される構成であり、前記第1のタンク片の縁部の接合面と前記一方の連通管形成壁の接合面とが同一面上にあり、前記第2のタンク片の縁部の接合面と前記他方の連通管形成壁の接合面とが同一面上にある。このため、例えば、第1のタンク片と第2のタンク片とを溶着させる場合、その溶着が容易に行える。
【0014】
第4の発明によると、タンク本体部の上端位置に蓋付き注水口が設けられており、前記タンク本体部の側面にそのタンク本体部内の連通管と、前記タンク本体部の外の連通管とを接続するための接続口が形成されている。このため、タンク本体部内の連通管とタンク本体部の外の連通管との接続が容易になる。
【0015】
第5の発明によると、タンク本体部内の連通管は、断面角形に形成されている。このため、例えば、第1のタンク片と第2のタンク片とを射出成形する場合、連通管の成形が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、部品点数が少なくなりコスト低減を図れるとともに、タンク本体部内の連通管を容易に成形できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係るリザーブタンクを備えるラジエータの取付け位置図である。
図2】前記リザーブタンクの取付け図である。
図3】前記ラジエータ、及びリザーブタンクの配管接続図である。
図4】前記リザーブタンクの正面図である。
図5】前記リザーブタンクの平面図である。
図6】前記リザーブタンクの側面図である。
図7】前記リザーブタンクの左右方向の縦断面図(図5のVII-VII矢視断面図)である。
図8】前記リザーブタンクのタンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す平断面図(図4図7のVIII-VIII矢視断面図)である。
図9】前記タンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す平断面図(図4図7のIX-IX矢視断面図)である。
図10】前記タンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す前後方向の縦断面図(図4図7のX-X矢視断面図)である。
図11】前記リザーブタンクの平断面図(図4図7のXI-XI矢視断面図)である。
図12】前記リザーブタンクの前後方向の縦断面図(図4図7のXII-XII矢視断面図)である。
図13】第1タンク片と第2タンク片との接合箇所を表す拡大平断面図である。
図14】第1タンク片と第2タンク片との接合箇所を表す拡大平断面図である。
図15】第1タンク片と第2タンク片との接合箇所を表す拡大平断面図である。
図16】本発明の実施形態2に係るリザーブタンクの正面図である。
図17】前記リザーブタンクの左右方向の縦断面図である。
図18】前記リザーブタンクのタンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す平断面図(図16図17のXVIII-XVIII矢視断面図)である。
図19】前記タンク本体部の第1タンク片と第2タンク片とを接合させる様子を表す平断面図(図16図17のXIX-XIX矢視断面図)である。
図20】前記リザーブタンクの平断面図(図16図17のXX-XX矢視断面図)である。
図21】従来のリザーブタンクの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態1]
以下、図1から図15に基づいて、本発明の実施形態1に係るリザーブタンクの説明を行う。本実施形態に係るリザーブタンク30は、ラジエータ10に取付けられて、前記ラジエータ10から押し出された冷却水を貯留し、またその冷却水を前記ラジエータ10に戻せるように構成されている。ここで、図中における前後左右及び上下は、ラジエータ10、及びリザーブタンク30を備える車両1の前後左右、及び上下に対応している。
【0019】
<ラジエータ10の概要について>
ラジエータ10は、車両1のエンジン2(図3参照)を冷却するための装置であり、図1に示すように、車両1のエンジンルームERの前部に設けられたラジエータサポート4に取付けられている。ラジエータ10は、図3に示すように、冷却水を流すためのラジエータホース15によってエンジン2と接続されている。
【0020】
ラジエータホース15は、図3に示すように、エンジン2から流れ出た冷却水をラジエータ10に導くアッパホース15uと、ラジエータ10から流れ出た冷却水をエンジン2に導くロアホース15dとを備えている。また、アッパホース15uとロアホース15dとがバイパスホース16によって接続されている。さらに、バイパスホース16とロアホース15dとの接続箇所には、サーモスタット14が設けられている。サーモスタット14は、冷却水の温度が所定温度よりも低いときにバイパスホース16とロアホース15dとを連通させ、ラジエータ10側の流路を閉鎖する。また、サーモスタット14は、冷却水の温度が所定温度よりも高いときにバイパスホース16側の流路を閉鎖し、ラジエータ10とロアホース15dとの流路を連通させる。
【0021】
ラジエータ10の背面の上部中央には、図2に示すように、リザーブタンク30が取付けられている。また、ラジエータ10の上端中央には、給水口(図示省略)が設けられており、その給水口がラジエータキャップ12によって塞がれている。ラジエータキャップ12には、図3に示すように、連通管20の一端が接続されており、その連通管20の他端がリザーブタンク30内に挿入されている。ラジエータキャップ12には、ラジエータ10内の圧力が所定値以上になると開弁する加圧弁(図示省略)と、ラジエータ10内の圧力が負圧になると開弁する負圧弁(図示省略)とが設けられている。そして、ラジエータキャップ12の加圧弁、あるいは負圧弁が開弁することで、ラジエータ10とリザーブタンク30とは連通管20とを介して連通する。なお、図2では、連通管20は省略されている。
【0022】
上記構成により、例えば、冷却水の温度が上昇してラジエータ10内の圧力が所定値以上になると、ラジエータキャップ12の加圧弁が開弁し、ラジエータ10から押し出された冷却水が連通管20によってリザーブタンク30に導かれる。また、冷却水の温度が低下してラジエータ10内の圧力が負圧になると、ラジエータキャップ12の負圧弁が開弁し、リザーブタンク30に貯留されている冷却水が連通管20によってラジエータ10に戻される。ここで、連通管20は、図3等に示すように、ラジエータ10とリザーブタンク30間に配管される可撓性の連通管本体22と、リザーブタンク30内の上部から底部近傍まで高さ方向に形成されるタンク内連通管24と、前記連通管本体22とタンク内連通管24とを接続する接続管26とから構成されている。
【0023】
<リザーブタンク30の概要について>
リザーブタンク30は、密閉型容器であり、図4に示すように、正面形状が底部側で幅狭となる略漏斗状で、平面形状が、図5に示すように、略長方形状に形成されている。ここで、リザーブタンク30は、上記したように、ラジエータ10の背面に取付けられているため、図において車両後側がリザーブタンク30の表面側であり、図において車両前側がリザーブタンク30の裏面側である。
【0024】
リザーブタンク30は、図4に示すように、タンク本体部300と、タンク本体部300の上部中央に形成された注水口312を塞ぐタンクキャップ32と、タンク本体部300をラジエータ10の背面に取付けるための取付け下ピン33、及び左右の取付けブラケット34とから構成されている。ここで、タンクキャップ32には、タンク本体部300内の冷却水がオーバーフローする際に前記冷却水を逃がすためのオーバーフロー通路(図示省略)が形成されている。
【0025】
<タンク本体部300について>
リザーブタンク30のタンク本体部300は、図5図6等に示すように、タンク本体部300の表側(後側)を構成する第1タンク片310と、前記タンク本体部300の裏側(前側)を構成する第2タンク片320とから構成されている。第1タンク片310と第2タンク片320とは、図8図10に示すように、浅い開放容器状に形成された板状体であり、樹脂の射出成形品である。第1タンク片310と第2タンク片320とには、周縁に接合フランジ部314,324が連続した状態で全周に亘って形成されている。そして、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面(図番省略)と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面(図番省略)とが、前後から合わせられて互いに接合されることで、タンク本体部300が形成される。
【0026】
また、第1タンク片310の上部には、図6図7等に示すように、上記したタンク本体部300の注水口312が上向きに形成されている。また、第1タンク片310には、図4に示すように、上記した取付け下ピン33、及び左右の取付けブラケット34が接合フランジ部314から外側に突出するように形成されている。
【0027】
第1タンク片310の内壁面の左右方向中央部には、図7図10に示すように、タンク内連通管24の内壁面後部を構成する断面角形の溝部316がタンク本体部300の底部Bから上方に延びるように形成されている。第1タンク片310の溝部316は、図9に示すように、前側が開放されており、その溝部316の開口部が接合フランジ部314の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。即ち、溝部316の開口部を接合フランジ部314の接合面と同一面上に保持するために、第1タンク片310の左右方向中央部が前方に窪むように絞られている。そして、溝部316の開口部が接合面となっている。また、溝部316の上端が、図7図10等に示すように、連通管20の接続管26を構成する横管部317に接続されている。
【0028】
横管部317は、図8図10に示すように、第1タンク片310の壁部を貫通して一定寸法だけ後方に突出している。そして、横管部317の突出部分に対して、図4に示すように、連通管20の連通管本体22が接続されている。また、横管部317の前端開放部は、図8に示すように、溝部316の開口部と同様に接合フランジ部314のフランジ面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。即ち、横管部317の前端開放部が接合面となっている。
【0029】
第2タンク片の内壁面には、図8図10に示すように、第1タンク片310の溝部316と横管部317とに対応する位置に蓋部326が上下方向に延びるように形成されている。そして、蓋部326の接合面326cが第2タンク片の接合フランジ部324の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。即ち、第2タンク片320の蓋部326の位置は、その蓋部326の接合面326cが第2タンク片の接合フランジ部324の接合面と同一面上になるように後方に絞られている。
【0030】
このため、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面とが前後から合わされることで、第1タンク片310の溝部316の開口部(接合面)と横管部317の前端開放部(接合面)とが第2タンク片の蓋部326の接合面326cに合わせられるようになる。そして、第1タンク片310の溝部316の開口部(接合面)、及び横管部317の前端開放部(接合面)が第2タンク片の蓋部326の接合面326cに接合されることで、タンク本体部300内にタンク内連通管24が形成される。ここで、タンク内連通管24の上端位置、即ち、接続管26(横管部317)は、図4に示すように、冷却水上側レベル線FULLよりも高い位置に設けられており、タンク内連通管24の下端位置は冷却水下側レベル線LOWよりも低い位置に設けられている。
【0031】
また、第1タンク片310の内側には、図7に示すように、タンク内連通管24を構成する溝部316の周囲に後側水流遮断板340が庇状に設けられている。後側水流遮断板340は、タンク内連通管24の下端開口から押し出され、勢い良く上方に跳ね返る冷却水の上昇流を遮る板であり、タンク本体部300の冷却水上側レベル線FULLより低い位置であって冷却水下側レベル線LOWより高い位置に設けられている。
【0032】
第1タンク片310の後側水流遮断板340は、図9に示すように、溝部316の右側に設けられた右側遮断板分割片341と、溝部316の左側に設けられた左側遮断板分割片342とから構成されている。右側遮断板分割片341は、溝部316の右側の内壁面から前記溝部316の開口部の位置まで前方に張り出すように設けられている。そして、右側遮断板分割片341の上方に第1タンク片310の注水口312(二点鎖線参照)が設けられている。ここで、右側遮断板分割片341の平面サイズは、前記注水口312の平面サイズよりも十分に大きな値に設定されている。また、右側遮断板分割片341の前端には溶着面341eが設けられており、その溶着面341eが溝部316の開口部(接合面)、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。
【0033】
第1タンク片310の後側水流遮断板340の左側遮断板分割片342は、溝部316の左側の内壁面から前記溝部316の開口部の位置まで前方に張り出すように設けられている。そして、左側遮断板分割片342の前端には溶着面342eが設けられており、その溶着面342eが右側遮断板分割片341の前端には溶着面341eと同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。
【0034】
第2タンク片320の内側には、図9に示すように、タンク内連通管24を構成する蓋部326の周囲に前側水流遮断板350が設けられている。前側水流遮断板350は、第1タンク片310の後側水流遮断板340と共にタンク内連通管24の下端開口から押し出され、勢い良く上方に跳ね返る冷却水の上昇流を遮る板であり、後側水流遮断板340と等しい高さ位置に設けられている。
【0035】
第2タンク片320の前側水流遮断板350は、図9に示すように、蓋部326の右側に設けられた右側遮断板分割片351と、蓋部326の左側に設けられた溶着部353とから構成されている。右側遮断板分割片351は、蓋部326の右側の内壁面から前記蓋部326の接合面326cの位置まで後方に張り出すように設けられている。そして、右側遮断板分割片351の後端には溶着面351eが設けられている。右側遮断板分割片351の溶着面351eは、溶着部353の溶着面とともに、蓋部326の接合面326cと第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。
【0036】
また、第1タンク片310の後側水流遮断板340の右端縁と左端縁には、図7に示すように、端側で高くなるように傾斜した傾斜壁部343が形成されている。また、第2タンク片320の前側水流遮断板350の右端縁にも、同じく傾斜壁部343が形成されている。これにより、タンク本体部300(第1タンク片310)の注水口312から落下した異物が後側水流遮断板340、前側水流遮断板350で受けられた後、タンク本体部300の下方に落下し難くなる。
【0037】
<タンク本体部300の製造について>
タンク本体部300の製造では、先ず、射出成形機を使用して樹脂により第1タンク片310と第2タンク片320とが成形される。次に、図8から図9に示すように、第1タンク片310と第2タンク片320とが前後から合わせられる。即ち、図11図12、及び図13図15に示すように、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面とが合わせられる。これにより、図14に示すように、第1タンク片310の溝部316の開口部(接合面)と横管部317の前端開放部(接合面)とが第2タンク片の蓋部326の接合面326cに合わせられる。また、第1タンク片310の後側水流遮断板340の溶着面341e,342eが第2タンク片320の前側水流遮断板350の溶着面351e(353)と合わせられる。
【0038】
そして、第1タンク片310と第2タンク片320とが、例えば、熱板溶着される。熱板溶着では、第1タンク片310と第2タンク片320との間に加熱した熱板(図示省略)を挟んで樹脂を溶融させ、前記熱板を除去した後、第1タンク片310と第2タンク片320との接合面を溶着させる。これにより、第1タンク片310と第2タンク片320との接合フランジ部314,324が接合される。また、第1タンク片310の溝部316の開口部と横管部317の前端開放部とに第2タンク片の蓋部326の接合面326cが接合される。さらに、第1タンク片310の後側水流遮断板340の溶着面341e,342eが第2タンク片320の前側水流遮断板350の溶着面351e(353)に接合される。この状態で、タンク本体部300が完成し、タンク本体部300内にタンク内連通管24が形成される。また、タンク内連通管24が接続管26と接続される。さらに、タンク本体部300内に互いに接続された後側水流遮断板340と前側水流遮断板350とが設けられる。
【0039】
[実施形態2]
以下、図16から図20に基づいて、本発明の実施形態2に係るリザーブタンクの説明を行う。本実施形態に係るリザーブタンク30は、実施形態1に係るリザーブタンク30のタンク内連通管24の位置を変更し、これに合わせて水流遮断板340,350の位置を変更したものである。なお、それ以外の構成については、実施形態1に係るリザーブタンク30と同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0040】
タンク本体部300の第1タンク片310の内壁面には、図16図19等に示すように、第1タンク片310の左側の接合フランジ部314に沿って溝部316がタンク本体部300の底部Bから上部まで形成されている。第1タンク片310の溝部316は、図18図19に示すように、前側が開放されており、その溝部316の開口部が接合フランジ部314の接合面と同一面上に保持されている(二点鎖線参照)。また、溝部316の上端が、図17図18に示すように、連通管20の接続管26を構成する横管部317に接続されている。
【0041】
タンク本体部300の第2タンク片の内壁面には、図18図19に示すように、第2タンク片320の左側の接合フランジ部324に沿って蓋部326がタンク本体部300の底部Bから上部まで形成されている。即ち、蓋部326は、第1タンク片310の溝部316と横管部317とに対応する位置に形成されている。そして、蓋部326の接合面326cが第2タンク片の接合フランジ部324の接合面と同一面上に保持されている。
【0042】
このため、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面とが前後から合わせられることで、第1タンク片310の溝部316の開口部(接合面)と横管部317の前端開放部(接合面)とが第2タンク片の蓋部326の接合面326cに合わせられるようになる。そして、第1タンク片310の溝部316の開口部(接合面)、及び横管部317の前端開放部(接合面)が第2タンク片の蓋部326の接合面326cに接合されることで、タンク本体部300内にタンク内連通管24が形成される。
【0043】
このように、タンク本体部300には、タンク内連通管24(溝部316、蓋部326)が第1タンク片310と第2タンク片320との接合フランジ部314,324に沿って形成されている。このため、実施形態1におけるタンク本体部300のように第1タンク片310と第2タンク片との左右方向中央部を前後方向に絞る必要がなくなり、図20に示すように、タンク本体部300の容量を大きくできる。
【0044】
また、第1タンク片310の内壁面には、図17図19等に示すように、タンク内連通管24を構成する溝部316と注水口312との間のタンク内空間を分けるように後側水流遮断板360が形成されている。後側水流遮断板360は、タンク内連通管24の下端開口から押し出され、注水口312の方向に勢い良く跳ね上がる冷却水の水流を遮る板である。後側水流遮断板360は、図17に示すように、縦板部362と上端傾斜板部365と下端傾斜板部363とから構成されている。後側水流遮断板360の縦板部362は、第1タンク片310の内壁面の溝部316と注水口312との間で高さ方向に延びるように形成されている。
【0045】
後側水流遮断板360の下端傾斜板部363は、図17に示すように、縦板部362の下端位置から右斜め下方に延びるように形成されており、上端傾斜板部365は縦板部362の上端位置から左斜め上方に延びるように形成されている。なお、後側水流遮断板360の下端傾斜板部363の先端と上端傾斜板部365の先端とは、それぞれ第1タンク片310の内壁面の下面と上面とから離れているため、後側水流遮断板360の上下には冷却水の流路Fが形成される。
【0046】
後側水流遮断板360は、図18図19に示すように、第1タンク片310の内壁面から接合フランジ部314の接合面の位置まで前方に張り出すように設けられている(二点鎖線参照)。そして、後側水流遮断板360の前端位置に溶着面360eが形成されている。即ち、後側水流遮断板360の溶着面360eと第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面とが同一面上に保持されている。
【0047】
第2タンク片310の内壁面には、第1タンク片310の後側水流遮断板360に対応する位置に前側水流遮断板370が形成されている。前側水流遮断板370は、第1タンク片310の後側水流遮断板360と共にタンク内連通管24の下端開口から押し出された冷却水の水流を遮る板である。前側水流遮断板370は、図17に示すように、後側水流遮断板360と等しい側面形状に成形されており、縦板部372と上端傾斜板部375と下端傾斜板部373とから構成されている。
【0048】
前側水流遮断板370は、図18図19に示すように、第2タンク片320の内壁面から接合フランジ部324の接合面の位置まで後方に張り出すように設けられている(二点鎖線参照)。そして、前側水流遮断板370の後端位置に溶着面370eが形成されている。即ち、前側水流遮断板370の溶着面370eと第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面とが同一面上に保持されている。
【0049】
このため、第1タンク片310の接合フランジ部314の接合面と第2タンク片320の接合フランジ部324の接合面とが前後から合わせられることで、後側水流遮断板360の溶着面360eと前側水流遮断板370の溶着面370eとが合わせられるようになる。そして、後側水流遮断板360の溶着面360eと前側水流遮断板370の溶着面370eとが接合されることで、タンク本体部300内に水流遮断板360,370が形成されるようになる。
【0050】
このように、水流遮断板360,370が高さ方向に延びる縦壁状に形成されて、タンク本体部300内を左右に区分している。そして、タンク本体部300内の左側の空間内にタンク内連通管24が設けられており、右側の空間側に注水口312が設けられている。このため、タンク内連通管24の先端開口から押し出されてタンク本体部300内で跳ね上がる冷却水の水流の影響が注水口312まで及ばない。したがって、冷却水がタンク内連通管24の先端開口から瞬間的に多量に押し出された場合でも、冷却水が注水口312からオーバーフローし難くなる。
【0051】
<実施形態1、2で使用した用語と本発明の用語との対応について>
第1タンク片310が本発明の第1のタンク片に相当し、第2タンク片320が本発明の第2のタンク片に相当する。第1タンク片310と第2タンク片320との接合フランジ部314,324が本発明の第1のタンク片と第2のタンク片との縁部に相当する。また、第1タンク片310の溝部316が本発明の一方の連通管形成壁に相当し、第2タンク片320の蓋部326が本発明の他方の連通管形成壁に相当する。また、タンク内連通管24が本発明のタンク本体部内に形成された連通管に相当し、接続管26が本発明の接続口に相当する。
【0052】
<実施形態1、2に係るリザーブタンク30の長所について>
実施形態1、2に係るリザーブタンク30によると、第1タンク片310と第2タンク片320との接合フランジ部314,324(縁部)が接合されることでタンク本体部300が形成される。また、第1タンク片310の溝部316(一方の連通管形成壁)と第2タンク片320の蓋部326(他方の連通管形成壁)とが接合されることでタンク本体部300内にタンク内連通管24が形成されている。即ち、第1タンク片310と第2タンク片320とを合わせて接合することにより、タンク本体部300とタンク内連通管24とを同時に形成することができる。このため、タンク本体部300とタンク内連通管24とを個別に製作する場合と比較して部品点数の低減を図ることできる。また、溝部316は第1タンク片310の内壁面に形成されており、蓋部326は第2タンク片320の内壁面に形成されているため、長さ寸法が大きいタンク内連通管24の成形が容易になる。
【0053】
また、実施形態2に係るリザーブタンク30のタンク本体部300には、タンク内連通管24(溝部316、蓋部326)が第1タンク片310と2タンク片320との接合フランジ部314,324に沿って形成されている。このため、実施形態1におけるタンク本体部300のように第1タンク片310と第2タンク片との左右方向中央部を前後方向に絞る必要がなくなり、図20に示すように、タンク本体部300の容量を大きくできる。
【0054】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、実施形態1、2では、第1タンク片310の内壁面に断面角形の溝部316を形成し、第2タンク片320の内壁面に蓋部326を形成して、溝部316と蓋部326とからタンク内連通管24を形成する例を示した。しかし、第1タンク片310の内壁面と第2タンク片320の内壁面との双方に溝部を形成し、前記溝部を合せることでタンク内連通管24を形成することも可能である。また、タンク内連通管24を断面角形に形成する例を示したが、タンク内連通管24の断面形状は適宜変更可能である。また、実施形態1では、タンク内連通管24をタンク本体部300のほぼ中央に直線状に形成する例を示し、実施形態2では、タンク内連通管24を第1タンク片310と第2タンク片320との左側の接合フランジ部314,324に沿って形成する例を示した。しかし、タンク内連通管24を第1タンク片310と第2タンク片320との右側の接合フランジ部314,324に沿って形成することも可能であるし、タンク内連通管24を複数本設けることも可能である。また、実施形態1、2では、第1タンク片310と第2タンク片320とを熱板溶着により接合する例を示したが、例えば、振動溶着等により接合することも可能である。
【符号の説明】
【0055】
10・・・ラジエータ
20・・・連通管
24・・・タンク内連通管(タンク本体部内に形成された連通管)
26・・・接続管(接続口)
30・・・リザーブタンク
300・・タンク本体部
310・・第1タンク片(第1のタンク片)
312・・注水口(蓋付き注水口)
314・・接合フランジ部(縁部)
316・・溝部(一方の連通管形成壁)
317・・横管部
320・・第2タンク片
324・・接合フランジ部(縁部)
326・・蓋部(他方の連通管形成壁)
図1
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