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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】無線通信装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/40 20150101AFI20220517BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20220517BHJP
   H04W 88/02 20090101ALI20220517BHJP
   H04B 1/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H04B1/40
H04W52/02
H04W88/02
H04B1/00 250
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019046100
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020150403
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 智祐
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0009022(US,A1)
【文献】特開平10-224428(JP,A)
【文献】特開2000-165287(JP,A)
【文献】特開2002-208856(JP,A)
【文献】特開昭62-78925(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/38 - 1/58
H04W 52/02
H04W 88/02
H04B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイムスロットにより受信および送信のタイミングが定められた通信を行なう無線通信装置であって、
前記無線通信装置は、前記無線通信装置の制御を行う制御部を備え、
前記制御部は、
1つ前のタイムスロットの受信データを、次のタイムスロットの開始のタイミング直後にデコード処理を開始するデコード部を備え、
前記制御部は、
デコード処理の結果が前記無線通信装置に対して送信を要求する情報であった場合に、デコード処理を行ったタイムスロットの期間内で、デコード処理の終了後より次のタイムスロットの開始までに送信を可とするための送信準備処理を行うこと、
を特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記無線通信装置の送信周波数または受信周波数を決定する周波数制御部を備え、
前記送信準備処理は、
前記周波数制御部が、受信周波数の設定から送信周波数への設定を行う処理と、
前記送信周波数への設定により無線通信装置の送信周波数が確定するまでの間に、送信するための変調信号を生成する処理を含むこと、
を特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記デコード部によるデコード処理後から次のタイムスロットの開始のタイミングまでの期間に、前記送信準備処理を完了する時間を確保できるよう、前記制御部の処理のリソースを前記デコード部のデコード処理にあてること、
を特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、
タイムスロット期間内に受信され受信バッファに記憶された復調信号をフィルタリングする受信フィルタと、
前記受信フィルタによってフィルタリングされた復調信号からシンボル検出するシンボル検出部と、
を備え、
前記受信フィルタおよび前記シンボル検出部と、前記デコード部とを、同一タイムスロット期間内で時間的に同時に動作させないこと、
を特徴とする請求項3に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記デコード部によるデコード処理の終了後、デコード処理を行ったタイムスロット期間の所定の時間から前記受信フィルタのフィルタリングと、前記シンボル検出部のシンボル検出とを開始することを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
タイムスロットにより受信および送信のタイミングが定められた通信を行なう無線通信装置として動作するコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
1つ前のタイムスロットの受信データを、次のタイムスロットの開始のタイミングでデコード処理を開始するステップと、
デコード処理をした結果が送信を要求する情報であるか否かを判定するステップと、
デコード処理の結果が前記無線通信装置に対して送信を要求する情報であった場合に、前記デコード処理を行ったタイムスロットの期間内で、デコード処理の終了後より次のタイムスロットの開始までに送信を可とするための送信準備処理を行うステップと、
を無線通信装置として動作するコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリー駆動の持ち運び可能なデジタル無線通信装置において、稼働時間を長くするために、CPU(Central Processing Unit)の動作クロックを可能な限り低く抑えることがある。あるデータを受信し、送信動作に移行するような場合、受信したデータのFEC(Forward Error Correction)デコードが終了するまでに時間がかかってしまい、CPUの動作クロックが低いほど送信動作への移行が遅れてしまう。そのため、デコード処理にかかる時間を短縮することができる技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、デコード処理の時間を短縮するために、データ受信中は51.2kHzに設定されていたCPUのクロック数を、データの処理中は1MHzに変更する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-354516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、デコード処理を実行しているか否かに応じてCPUの動作のクロック数を変更している。そのため、特許文献1は、CPUの消費電力は増加する。
【0006】
本発明は、消費電力を増加させず、デコード処理時間を短縮し、送信動作への移行時間を短縮することのできる無線通信装置およびプログラムを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無線通信装置は、タイムスロットにより受信および送信のタイミングが定められた通信を行なう無線通信装置であって、前記無線通信装置は、前記無線通信装置の制御を行う制御部を備え、前記制御部は、1つ前のタイムスロットの受信データを、次のタイムスロットの開始のタイミング直後にデコード処理を開始するデコード部を備え、前記制御部は、デコード処理の結果が前記無線通信装置に対して送信を要求する情報であった場合に、デコード処理を行ったタイムスロットの期間内で、デコード処理の終了後より次のタイムスロットの開始までに送信を可とするための送信準備処理を行うこと、を特徴とする。
【0008】
本発明のプログラムは、タイムスロットにより受信および送信のタイミングが定められた通信を行なう無線通信装置として動作するコンピュータに実行させるためのプログラムであって、1つ前のタイムスロットの受信データを、次のタイムスロットの開始のタイミングでデコード処理を開始するステップと、デコード処理をした結果が送信を要求する情報であるか否かを判定するステップと、デコード処理の結果が前記無線通信装置に対して送信を要求する情報であった場合に、前記デコード処理を行ったタイムスロットの期間内で、デコード処理の終了後より次のタイムスロットの開始までに送信を可とするための送信準備処理を行うステップと、を無線通信装置として動作するコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、デコード処理時間を短縮し、送信動作への移行時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施形態に係る無線通信装置の構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、受信フィルタ、シンボル検出部、およびデコード部が動作するタイミングを説明するためのタイミング図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る無線通信装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、受信フィルタ、シンボル検出部、およびデコード部が動作するタイミングを説明するためのタイミング図である。
図5図5は、受信フィルタ、シンボル検出部、およびデコード部が動作するタイミングを説明するためのタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含む。
【0012】
[実施形態]
図1を用いて、本発明の実施形態に係る無線通信装置1の構成について説明する。図1は、無線通信装置1の構成の一例を示すブロック図である。
【0013】
無線通信装置1は、局部発振部10と、アンテナ20と、アンテナ切替部30と、復調回路40と、A/D(Analog to Digital)コンバータ50と、D/A(Digital to Analog)コンバータ60と、変調回路70と、制御部100とを備える。本実施形態に係る無線通信装置1は、デジタル方式の無線通信を実行する無線通信装置である。
【0014】
局部発振部10は、信号の周波数を変更する。局部発振部10は、例えば制御部100からのPLL(Phase Lock Loop)制御に従って、復調回路40の受信周波数を変更する。局部発振部10は、例えば制御部100からの制御に従って、変調回路70の送信周波数を変更する。
【0015】
アンテナ20は、RF(Radio Frequency)信号を送信したり、受信したりする。アンテナ20は、アンテナ切替部30に接続されている。
【0016】
アンテナ切替部30は、アンテナ20と、復調回路40と、変調回路70と接続されている。アンテナ切替部30は、例えば制御部100からの制御に従って、アンテナ20と復調回路40とを接続する。アンテナ切替部30は、例えば制御部100からの制御に従って、アンテナ20と変調回路70との間を切り替える。
【0017】
復調回路40は、アンテナ20が受信したRF信号を受け付ける。復調回路40は、受け付けたRF信号を復調する。復調回路40は、復調した信号(復調信号)をA/Dコンバータ50に出力する。
【0018】
A/Dコンバータ50は、復調回路40から入力された復調信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。A/Dコンバータ50は、デジタル化された復調信号を制御部100の受信バッファ110に出力する。
【0019】
D/Aコンバータ60は、制御部100の送信バッファ180からから変調信号(デジタル信号)を受け付ける。D/Aコンバータ60は、受け付けた変調信号をアナログ信号に変換する。D/Aコンバータ60は、アナログ化された変調信号を変調回路70に出力する。
【0020】
変調回路70は、D/Aコンバータ60から受け付けた変調信号に基づいて変調を施す。変調回路70は、変調を施したRF信号をアンテナ20に出力する。これにより、アンテナ20は、RF信号を外部に送信する。
【0021】
制御部100は、無線通信装置1の各部を制御する。制御部100は、例えばCPU、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成されている。この場合、ROMには、CPUが各部を制御するためのプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されたプログラムを読み出し、RAMにデータ領域を確保して実行することで無線通信装置1の各部を制御する。制御部100は、受信バッファ110と、受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140と、エンコード部150と、シンボル生成部160と、送信フィルタ170と、送信バッファ180と、周波数制御部190と、アンテナ切替制御部200とを備える。
【0022】
受信バッファ110は、A/Dコンバータ50から入力された復調信号のデータを一時的に保存する。受信バッファ110は、所定量のデータが溜まると、そのデータを受信フィルタ120に出力する。
【0023】
受信フィルタ120は、復調信号におけるシンボル点を検出するためのロールオフフィルタであり、波形整形を行なう。受信フィルタ120は、受信バッファ110から入力された復調信号に波形整形(フィルタリング)を行いシンボル検出部130に出力する。
【0024】
シンボル検出部130は、受信フィルタ120から入力された信号からシンボル検出を行い、検出したシンボルのシンボル値の判定し、受信シンボルデータを生成する。シンボル検出部130は、受信シンボルデータをデコード部140に出力する。
【0025】
デコード部140は、シンボル検出部130から入力された受信シンボルデータに基づいて、デコード処理(FECデコード処理)を実行する。
【0026】
制御部100は、デコード部のデコード処理の結果に基づいて、無線通信装置1に対して各種の処理を制御する。例えば、受信した信号が音声信号の場合は図示しない音声出力部から音声を出力する制御を行い、受信した信号が文字データである場合には図示しない表示部に文字を表示させる制御を行う。また、制御部100は、受信した信号が無線通信装置1を制御する制御信号である場合、制御信号の内容に基づいた処理の制御を行う。
【0027】
エンコード部150は、無線通信装置1が外部に送信するためのデータに対してエンコード処理(FECエンコード処理)を実行する。エンコード部150は、エンコード処理が実行された送信データをシンボル生成部160に出力する。
【0028】
シンボル生成部160は、エンコード部150から入力された送信データをシンボル値に変換した送信シンボルデータを生成する。シンボル生成部160は、生成した送信シンボルデータを送信フィルタ170に出力する。
【0029】
送信フィルタ170は、シンボル生成部160から入力された送信シンボルデータに対して波形整形を行う。送信フィルタ170は、送信シンボルデータを有限の帯域とするためのフィルタであり、波形整形を行ない所定の帯域に制限し変調信号とする。送信フィルタ170は、所定の帯域に制限した変調信号を送信バッファ180に出力する。
【0030】
送信バッファ180は、送信フィルタ170から入力された変調信号を送信タイミングまで一時的に保存する。送信バッファ180は、送信タイミングになると、保存しておいた変調信号をD/Aコンバータ60に出力する。
【0031】
周波数制御部190は、局部発振部10を制御する。周波数制御部190は、例えば局部発振部10を制御し、復調回路40の受信周波数を決定する。周波数制御部190は、例えば局部発振部10を制御し、変調回路70の送信周波数を決定する。つまり、周波数制御部190は、無線通信装置1の送信周波数または受信周波数を決定する。
【0032】
アンテナ切替制御部200は、アンテナ切替部30を制御する。アンテナ切替制御部200は、例えば受信動作時にはアンテナ切替部30を制御し、アンテナ20と、復調回路40とを接続する。アンテナ切替制御部200は、送信動作時にはアンテナ切替部30を制御し、アンテナ20と、変調回路70とを接続する。
【0033】
[動作タイミング]
図2を用いて、実施形態に係る無線通信装置1の動作タイミングについて説明する。図2は、実施形態に係る無線通信装置1の受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140との処理のタイミングを示すタイミングチャートである。以降、タイムスロットまたはスロットと記載はするが、所定の時間毎に区切られ、区切られた時間内に配置されるデータのフォーマットが定められ、受信および送信のタイミングが定められ、連続して通信に使用される方式であればよく、例えばフレームも同意である。
【0034】
図2において、タイムスロットのスロット種別は、デジタル方式の無線通信における受信スロットと、送信スロットとのタイミングを示している。第1受信スロットと、第2受信スロットと、第3受信スロットと、第4受信スロットは、データを受信する期間を示すタイムスロット期間である。送信スロットは、データを送信する期間を示すタイムスロット期間である。
【0035】
図2には、局部発振部10と、受信バッファ110と、受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140の動作状態が示されている。各部の動作状態は「ON」と「OFF」で示されている。「ON」は動作状態であり、「OFF」は停止状態である。
【0036】
まず、周波数制御部190が局部発振部10を制御し、復調回路40に対して所望の受信周波数を設定する。アンテナ切替制御部200がアンテナ切替部30を制御し、アンテナ20と、復調回路40とを接続する。これにより、無線通信装置1は、所望の周波数のRF信号を受信可能となる。
【0037】
最初の第1受信スロットにおいて、アンテナ20がRF信号を受信すると、復調回路40は、アンテナ20が受信したRF信号を復調し、A/Dコンバータ50に出力する。A/Dコンバータ50は、復調回路40から受けた復調信号をデジタル信号に変更し、制御部100の受信バッファ110に書き込む。その後は、受信バッファ110に復調信号のデータが書き込まれるたびに、そのデータは受信フィルタ120、シンボル検出部130によって順番に処理される。
【0038】
第2受信スロットにおいて、デコード部140は、第1受信スロットで処理されたデータを速やかにデコード処理を行う。すなわち、デコード部140は、第2受信スロットから時間的に1つ前のタイムスロット期間である第1受信スロットでシンボル検出されたデータのデコード処理を、第2受信スロットの開始のタイミングの直後から開始する。この際、制御部100は、デコード部140の動作を開始させると同時に、受信フィルタ120と、シンボル検出部130との動作を停止させる。
【0039】
すなわち、制御部100は、制御部100のリソースをデコード部140のデコード処理に集中させる。詳細には、制御部100は、制御部100のCPUの処理の割合、RAMのデータ領域を確保するといったリソースをデコード処理に多く割り当てる。また、制御部100が、リソースをデコード部に集中させるタイミングは、受信スロットの前半、つまり受信スロットの開始直後としている。図2に示すように、期間T1の間は、デコード部140は動作しているが、受信フィルタ120と、シンボル検出部130とは停止している。つまり、受信フィルタ120とシンボル検出部130に対する制御部100のリソースの割り当ては、ゼロといえる。
【0040】
期間T1の経過後、制御部100は、受信フィルタ120のフィルタリングの処理と、シンボル検出部130の受信シンボルデータの生成処理とに制御部100のリソースを集中させる。制御部100は、デコード部140の動作を停止させ、受信フィルタ120と、シンボル検出部130との動作を開始させる。この際、受信フィルタ120と、シンボル検出部130とは、停止していた期間T1の間に受信バッファ110に保存されたデータをまとめて処理する。制御部100は、第3受信スロットも第2受信スロットと同様の処理を実行する。制御部100は、第4受信スロットも同様に第3受信スロットでシンボル検出されたデータのデコード処理を第4受信スロットの開始タイミング直後から開始する。
【0041】
第4受信スロットの開始タイミング直後からデコード部140により行なわれるデコード処理の結果に基づき、すみやかに送信することが必要になった場合、つまりデコードした結果が送信を要求する指示の制御データであった場合、制御部100は、デコード処理が完了後、送信準備処理を開始する。また、第4受信スロットの開始直後からのデコード処理が完了した結果、すみやかに送信することが必要になった場合、第4受信スロットでは、受信バッファ110に書き込まれるデータに対する受信フィルタ120のフィルタリングの処理と、シンボル検出部130の受信シンボルデータの生成の処理とを停止する。
【0042】
送信準備処理は、具体的には、制御部100の周波数制御部190が局部発振部10を制御し、変調回路70に対して所望の送信周波数を設定する。詳細には、制御部100は、第1受信スロットから第4受信スロットのデコード処理の終了までは局部発振部10には受信周波数が設定されているが、第4受信スロットにおけるデコード部140のデコード処理が終わった後、送信周波数に切り替える処理を実行する。また、制御部100は、アンテナ切替制御部200にアンテナ切替部30を制御させ、アンテナ20と、変調回路70とを接続する。これにより、無線通信装置1は、所望の周波数の信号を送信可能な状態となる。
【0043】
ここで、第4受信スロットに示すように、局部発振部10の出力信号の周波数が所望の送信周波数で安定するまでには一定の時間(周波数安定時間)が必要となる。PLL制御は、局部発振部10の発振周波数を変化させる場合に、所望の周波数にロックするまでのロックアップタイムを要するためである。周波数安定時間の間に、エンコード部150がエンコード処理を行なって送信データを生成し、シンボル生成部160が送信データのシンボルマッピングを行なって送信シンボルデータを生成し、送信フィルタ170が送信シンボルデータに帯域制限を行なって変調信号とし、送信スロットのタイミングまでの間、変調信号を一時的に送信バッファ180に保存する。制御部100は、タイムスロットの開始直後からデコード処理に制御部100のリソースを集中するため、そのデコードを行った後のスロットの残り期間で、つまり次のタイムスロットの開始までに局部発振部10の出力信号の周波数を所望の送信周波数で安定させるに十分な時間を確保することができる。つまり、送信準備処理は、受信周波数から送信周波数への変更処理であり、また無線通信装置1の送信周波数が確定するまでの間に、送信するための変調信号を生成する一連の処理を示す。
【0044】
送信スロットのタイミングまでに局部発振部10の出力信号の周波数が所望の周波数で安定した場合、送信バッファ180は、保存していたデータをD/Aコンバータ60に出力する。D/Aコンバータ60は、データをアナログ信号に変換して変調回路70に出力する。変調回路70は、D/Aコンバータ60から受けた変調信号に基づいて変調を施す。アンテナ20は、変調後のRF信号を空間に放射する。
【0045】
デコード処理をした結果が送信を要求している場合、次のスロットを送信準備処理にあてると、送信スロットは、送信要求を得てから2スロット分遅れることになる。それに対し本発明の無線通信装置1は、タイムスロットの開始直後からデコード処理に制御部100のリソースを集中して、デコードの結果をすみやかに得ることができる。そのため、本発明の無線通信装置1は、デコードした結果が送信を要求している場合、そのデコードを行った後のスロットの残り期間を送信準備処理として有効に活用し、次のスロットから送信を開始することができる。つまり送信動作への移行時間を短縮することができる。
【0046】
[無線通信装置の処理の流れ]
図3を用いて、本発明の実施形態に係る無線通信装置1の処理の流れについて説明する。図3は、本発明の実施形態に係る無線通信装置1の制御部100の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0047】
まず、制御部100は、アンテナ20がRF信号を受信すると、A/Dコンバータ50から復調信号を受け付ける(ステップS101)。そして、ステップS102に進む。
【0048】
制御部100は、復調信号を一定量に達するまで、一時的に保存する(ステップS102)。そして、ステップS103に進む。
【0049】
制御部100は、受信した復調信号が一定量に達した後、その復調信号に対してフィルタリングおよびシンボル検出を実行する(ステップS103)。そして、ステップS104に進む。
【0050】
制御部100は、シンボル検出された受信シンボルデータに対してデコード処理を実行する(ステップS104)、そして、ステップS105に進む。
【0051】
制御部100は、デコード処理を実行した後、デコードした結果が送信の要求であるかを判定する(ステップS105)。送信の要求ではないと判定された場合(ステップS105のNo)、制御部100は、ステップS101に進み、上述の処理を実行する。一方、送信の要求であると判定された場合(ステップS105のYes)、制御部100は、ステップS106に進む。
【0052】
ステップS106では、制御部100は、送信準備処理を開始する(ステップS106)。そして、制御部100は、図3の処理を実行する。
【0053】
[動作タイミングの第1変形例]
図4を用いて、実施形態の第1変形例に係る無線通信装置1の動作タイミングについて説明する。図4は、実施形態に係る無線通信装置1の受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140との処理のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0054】
図2に示したタイミングチャートでは、制御部100は、デコード部140の動作を開始させるとともに、受信フィルタ120と、シンボル検出部130との動作を停止させていた。制御部100は、予め決められた時間だけ受信フィルタ120と、シンボル検出部130とを停止させてもよい。
【0055】
図4に示すように、第2受信スロットにおいて、制御部100は、デコード部140を動作させるとともに、受信フィルタ120と、シンボル検出部130とを、予め決められた期間T2の間停止させる。期間T2はデコード部140の動作期間である期間T3よりも長く設定されているので、デコード部140によるデコード処理が終わった後も、受信フィルタ120と、シンボル検出部130とは停止したままである。
【0056】
また、制御部100は、受信フィルタ120と、シンボル検出部130とを、受信スロットの開始のタイミングから予め決められた期間T2経過後に処理を開始するものとしてもよい。この場合であっても、期間T2は、デコード部140の動作期間である期間T3よりも長く設定されている。期間T2は、デコード部140によるデコード処理を行うのに十分な時間であれば任意でよい。同様に、期間T2は、期間T2後に開始される受信フィルタ120と、シンボル検出部130による処理が受信スロット内で終了するのに十分な時間であれば任意でよい。
【0057】
制御部100は、第3受信スロットも第2受信スロットと同様の処理を実行する。制御部100は、第4受信スロットも同様に第3受信スロットでシンボル検出された受信シンボルデータのデコード処理を第4受信スロットの開始タイミング直後から開始する。
【0058】
[動作タイミングの第2変形例]
図5を用いて、実施形態の第2変形例に係る無線通信装置1の動作タイミングについて説明する。図5は、実施形態に係る無線通信装置1の受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140との処理のタイミングを示すタイミングチャートである。
【0059】
第2変形例も、スロットの開始タイミング直後からデコード処理を開始する点は同じである。つまりスロット開始タイミング直後からの処理は、デコード処理が優先される。
【0060】
図5に示すタイミングチャートには、局部発振部10と、受信バッファ110と、受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140との動作タイミングに加えて、制御部100の使用率が示されている。
【0061】
制御部100の使用率は、前記した制御部100のCPUの処理の負荷の程度とも言え、本実施例では「H」と「M」と「L」の3種類で示されている。「H」は、制御部100の使用率が高いことを意味している。「M」は、制御部100の使用率が通常であることを意味している。「L」は、制御部100の使用率が低いことを示している。
【0062】
図5に示すように、制御部100は、第2受信スロットの開始タイミング直後から、受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140との動作を開始する。期間T4においては、受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140とのそれぞれが動作しているため、この場合、制御部100の使用率は「H」となる。
【0063】
制御部100は、制御部100の使用率が「H」となると、デコード部140のデコード処理を優先するため、受信フィルタ120と、シンボル検出部130との動作を停止する。そのため。期間T5では、制御部100は、デコード部140を動作させているが、受信フィルタ120と、シンボル検出部130とは、動作を停止させている。この場合、制御部100の使用率は「M」となる。期間T5では、制御部100が受信フィルタ120と、シンボル検出部130との動作を停止させたことで、制御部100の使用率が低下する。
【0064】
期間T6では、デコード部140によるデコード処理が完了している。すなわち、期間T6では、制御部100は、受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140との動作を停止させている。この場合、制御部100の使用率は「L」となる。期間T6では、受信フィルタ120と、シンボル検出部130と、デコード部140とが停止しているので、制御部100の使用率はさらに低下している。
【0065】
制御部100は、デコード部140によるデコード処理が完了し、制御部100の使用率が「L」になると、受信フィルタ120と、シンボル検出部130とを動作を再開させる。これにより、期間T6の経過後、制御部100の使用率は「M」となる。制御部100は、第3受信スロットも第2受信スロットと同様の処理を実行する。制御部100は、第4受信スロットも同様に第3受信スロットでシンボル検出されたデータのデコード処理を第4受信スロットの開始タイミング直後から開始する。
【0066】
第2変形例では、制御部100は、制御部100のリソースを使用率に基づき動的に制御を行う。
【0067】
上述のとおり、本実施形態は、デコード部140の動作を受信スロットの開始タイミング直後にリソースを集中して行なうことによりデコード処理時間を短縮することで送信準備処理を行うのに十分な時間を確保し、送信動作への移行時間を短縮することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行なうことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 無線通信装置
10 局部発振部
20 アンテナ
30 アンテナ切替部
40 復調回路
50 A/Dコンバータ
60 D/Aコンバータ
70 変調回路
100 制御部
110 受信バッファ
120 受信フィルタ
130 シンボル検出部
140 デコード部
150 エンコード部
160 シンボル生成部
170 送信フィルタ
180 送信バッファ
190 周波数制御部
200 アンテナ切替制御部
図1
図2
図3
図4
図5