(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】音声出力装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
H04R1/02 101F
H04R1/02 105B
H04R1/02 102B
(21)【出願番号】P 2019567804
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2018002657
(87)【国際公開番号】W WO2019146096
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明善
【審査官】西村 純
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-098594(JP,U)
【文献】実開昭48-080536(JP,U)
【文献】特開2011-176449(JP,A)
【文献】実開昭53-147824(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対して着脱可能な筐体と、
前記筐体の内部に配置され、音声信号に応じて振動して放音する放音部を有す
るスピーカーユニットと、
前記筐体と一体的になるように、前記筐体に固定される支持部材と、を備え、
前記スピーカーユニットは音声信号による振動により音声を生成する振動板を含み、
前記支持部材は梁状であり、少なくとも一つの屈曲部を含み、前記スピーカーユニットを支持し前記スピーカーユニットの振動を減衰し、
前記支持部材と接続されたシール部材を備え、
前記筐体は、前記振動板に対応する位置に配置される貫通孔を有し、
前記シール部材と前記支持部材とが、前記貫通孔の周辺部と前記スピーカーユニットとの間のすき間を埋めることを特徴とする音声出力装置。
【請求項2】
前記筐体は、前記放音部に対応する箇所に貫通孔を有しており、
前記筐体の前記貫通孔を形成する縁部と前記支持部材との間には、
前記支持部材とは別体で構成され、振動を吸収するとともに、前記スピーカーユニットの支持を補助するための補助部材が設けられている請求項1に記載の音声出力装置。
【請求項3】
前記筐体と前記スピーカーユニットとの間には、振動を吸収する振動吸収材が設けられている請求項1または2に記載の音声出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声出力装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車内には、音声を出力するスピーカーユニットを有する音声出力装置が設けられている。音声出力装置は、自動車の内装に取り付けられており、音声に基づく電気信号を処理して放音する。
【0003】
また、近年、スピーカーユニットの振動が自動車の内装に伝わって内装が振動することで生じる雑音を低減するために、スピーカーユニットを内包する内箱を外箱で囲み、内箱と外箱との間に振動吸収材を介在させた音声出力装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の音声出力装置では、雑音は低減されるものの、内箱と外箱とを備えるため、部品点数が多く、コストがかかるという問題がある。
【0006】
本発明は前述した事情に鑑みてなされたもので、その目的は、雑音を低減しつつ、部品点数を少なくできる音声出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の第1の形態に係る音声出力装置は、筐体と、前記筐体の内部に配置され、音声信号に応じて振動して放音する放音部を有するスピーカーユニットと、前記筐体と一体的に構成され、前記スピーカーユニットを支持するとともに振動を減衰する緩衝性を有する支持部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る音声出力装置の概略構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す音声出力装置の内部を示す平面図である。
【
図4】
図1に示す音声出力装置が有する支持部材を示す平面図である。
【
図5】第2実施形態に係る音声出力装置の断面図である。
【
図6】
図5に示す音声出力装置が有する支持部材を示す平面図である。
【
図7】第3実施形態に係る音声出力装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、図面において各部の寸法や縮尺は実際のものと適宜異なり、理解を容易にするために模式的に示している部分もある。また、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る音声出力装置の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1に示す音声出力装置の断面図である。
図3は、
図1に示す音声出力装置の内部を示す平面図であって、
図2中のA1-A1線断面図である。なお、各図には、各部の配置の理解を容易にするために、互いに直交する3軸であるx軸、y軸およびz軸を図示している。
【0011】
図1および
図2に示すように、音声出力装置100は、筐体1と、筐体1の内部に設けられ、信号処理回路を有する回路基板2と、筐体1の内部に設けられ、信号処理回路から供給された電気信号である音声信号に応じて放音するスピーカーユニット3と、を有する。また、
図2に示すように、筐体1には、筐体1と一体的に構成され、スピーカーユニット3を支持するとともに、振動を減衰する緩衝性を有する支持部材15が設けられている。ここで、支持部材15と筐体1とが一体的に構成されていることとは、支持部材15と筐体1とが着脱自在に構成されていることを除く意味であり、支持部材15と筐体1とが一体成形されていることのみならず、支持部材15と筐体1とが溶接により一体化された構成を含む。
【0012】
また、音声出力装置100は、筐体1の内部に設けられ、音声を音声信号に変換する複数のマイクロホン4を有している。したがって、音声出力装置100は、音声入出力装置であるとも言える。なお、
図3ではマイクロホン4の図示を省略している。
【0013】
音声出力装置100は、ハンズフリー通話を実現する装置として利用することができる。音声出力装置100は、使用者が所持する携帯電話と有線または無線による通信が可能なように構成されている。音声出力装置100は、使用者の音声をマイクロホン4で収音して音声信号に変換する。また、音声出力装置100は、通話相手の音声をスピーカーユニット3から出力させることができる。例えば、音声出力装置100は、使用者の携帯電話を介して受信した通話相手の音声に関する音声信号を受信し、処理して放音する。また、音声出力装置100は、使用者の発した音声を音声信号に変換して処理し、処理した音声信号を使用者の携帯電話へと送信する。使用者の携帯電話に送信された音声信号は、使用者の携帯電話を介して通話相手の携帯電話に送信される。
【0014】
音声出力装置100は、例えば、自動車の室内で用いられる。その場合、音声出力装置100は、例えば自動車の内装等の物体7に取り付けられる(
図2参照)。以下、音声出力装置100の各部の構成について順次説明する。なお、以下では、音声出力装置100を自動車の室内に設置した場合を例に説明する。また、本明細書では、z軸方向から見ることを「平面視」という。
【0015】
[筐体]
筐体1は、回路基板2およびスピーカーユニット3を収容する内部空間Sを有する四角柱状の部材である。また、筐体1は、物体7に対して取り付け可能に構成されている。例えば、筐体1は、接着または嵌合等により物体7に対して着脱可能に取り付けることができる。なお、筐体1の外形は、図示の形状に限定されず、例えば円柱状等であっても構わない。
【0016】
筐体1は、四角形の平板状をなす第1部材11と、第1部材11に対して離間して設けられた四角形の平板状をなす第2部材12と、第1部材11と第2部材12との間に位置し、四角筒状をなす第3部材13と、を有する。また、筐体1には、後で詳述するが、支持部材15が第3部材13と一体的に形成されている。なお、本実施形態では、第1部材11、第2部材12および第3部材13は、別体で構成されていて例えば接着および嵌合等により接続されているが、これらは一体的に構成されていてもよい。
【0017】
第1部材11には、後述するスピーカーユニット3から出力される音声を外部に向かって導くための貫通孔101が形成されている。貫通孔101は、第1部材11の厚さ方向に貫通しており、第1部材11の中央部に形成されている。また、第1部材11には、後述するマイクロホン4に対して使用者の音声を導くための2つの貫通孔102が形成されている。これら貫通孔102は、それぞれ、第1部材11の厚さ方向に貫通しており、平面視で貫通孔101を挟むようにして第1部材11に形成されている。
【0018】
第1部材11の外表面には、筐体1と物体7との密着性を高めるための部材14が設けられている。部材14は、物体7に対して筐体1が取り付けられている状態で、物体7と第1部材11との間に介在し、これらの双方に接触している。なお、部材14は、貫通孔101および貫通孔102を塞がないように設けられている。
【0019】
部材14は、筐体1を物体7に取り付ける際、物体7の形状に追従して密着する。これにより、筐体1と物体7との間に隙間ができることを防ぎ、音響特性のばらつきを低減することができる。
【0020】
このような部材14としては、例えば、ゴム製部材、軟質な樹脂製部材、独立気泡スポンジあるいは連続気泡スポンジのような多孔質な構造体、またはゼリー状の物質等が挙げられる。これらの中でも、部材14としては、独立気泡スポンジであることが好ましい。独立気泡スポンジは反発弾性に優れているため、これを部材14として用いることで、音響特性のばらつきを特に効果的に低減することができる。また、入手がし易く取り扱いが容易である点でも優れている。
【0021】
なお、前述した第1部材11、第2部材12および第3部材13の各構成材料としては、特に限定されず、例えば各種樹脂材料等を用いることができる。
【0022】
[回路基板]
回路基板2は、第1部材11に対して例えば両面テープで構成された接着体201およびネジ301によって固定されている。回路基板2には、音声信号を増幅したり、各種音声処理を実行したりする信号処理回路を備えるIC(integrated circuit)が搭載されている。また、回路基板2には、音声信号の受信および送信を行う各種通信モジュールが搭載されている。
【0023】
回路基板2と第1部材11との間には、振動を吸収する振動吸収材51(第2振動吸収材)が介在している。振動吸収材51は、接着体201を除く部分に設けられており、図示では、平面視で接着体201より外側に位置している。回路基板2と第1部材11との間に振動吸収材51が設けられていることにより、回路基板2から筐体1に伝達され得る振動を効果的に吸収することができる。振動吸収材51としては、前述した部材14の例示として挙げた部材を用いることができる。また、振動吸収材51と部材14とは、同様の部材であってもよいし、異なる部材であってもよい。ただし、設計の簡略化やコスト削減のために、振動吸収材51と部材14とは、同様の部材であることが好ましく、双方ともに独立気泡スポンジであることが特に好ましい。
【0024】
なお、回路基板2の数や配置は、図示のものに限定されず任意である。したがって、回路基板2は、例えば、第1部材11側に位置していてもよいし、回路基板2は、複数であってもよい。
【0025】
[マイクロホン]
2つのマイクロホン4は、それぞれ、回路基板2に搭載されている。マイクロホン4は、前述した第1部材11に形成された貫通孔102に対応して設けられており、平面視で、スピーカーユニット3を挟むように配置されている。
【0026】
このマイクロホン4は、使用者の音声を電気信号である音声信号に変換する。変換した音声信号は、回路基板2の信号処理回路に出力される。マイクロホン4としては、例えばMEMS(Micro-Electrical-Mechanical Systems)マイクロホンを用いることができる。なお、マイクロホン4の数および配置は、それぞれ、図示のものに限定されず任意である。
【0027】
[スピーカーユニット]
スピーカーユニット3は、回路基板2の第2部材12側に位置しており、回路基板2および筐体1のそれぞれに対して離間して配置されている。
【0028】
スピーカーユニット3は、回路基板2が有する信号処理回路から供給された音声信号を振動に変換して音声を出力する。スピーカーユニット3は、回路基板2に対して複数の配線33を介して電気的に接続されている。このスピーカーユニット3は、主に、音声信号に応じて振動する振動部材で構成された放音部311と、放音部311を振動させる駆動源312と、駆動源312を収容しているフレーム313と、を有する。なお、変換の方式としては、特に限定されないが、例えば所謂ダイナミック方式を用いることができる。例えば、本体31が所謂ダイナミック方式である場合、駆動源312は永久磁石およびボイスコイルで構成されており、放音部311はボイスコイルに接続された振動板で構成されている。また、振動部材で構成された放音部311の形状は、板状であってもよいし、コーン状であってもよい。
【0029】
また、放音部311は、第1部材11側に位置しており、貫通孔101に対応して配置されている。具体的には、放音部311から出力された音声を外部に向かって放出可能なように貫通孔101が放音部311に対応して配置されている。
【0030】
[支持部材]
図2に示すように、支持部材15は、回路基板2とスピーカーユニット3との間に配置されており、筐体1が有する第3部材13と一体的に構成されていて、スピーカーユニット3を筐体1に対して支持している。また、支持部材15は、スピーカーユニット3の振動を減衰する機能を有する。
【0031】
図4は、
図1に示す音声出力装置が有する支持部材を示す平面図である。ここで、
図4に示すように、前述した第3部材13は、平面視で長方形の枠状をなしている。第3部材13は、側面部131a、131b、131c、および131dを備える。側面部131aは側面部131bに対向しており、側面部131cは側面部131dに対向している。側面部131cは側面部131aの一端と側面部131bの一端とを連結する。側面部131dは側面部131aの他端と側面部131bの他端とを連結する。
【0032】
支持部材15は、第3部材13の側面部131cと側面部131dとの間を連結するように架けられた梁状をなす。具体的には、支持部材15は、平面視で、筐体1内の中央部に位置する四角形状の本体部151と、本体部151と側面部131cとを連結する152aおよび152bと、本体部151と側面部131dとを連結する152cおよび152dとを有する。なお、以下では、連結部152a、152b、152c、および152dをそれぞれ区別しない場合、これらを総称して連結部152という。
【0033】
(本体部)
本体部151は枠状をなし、本体部151の中央部には、放音部311の位置および大きさ等に対応して形成された貫通孔1510が形成されている(
図2および
図4参照)。また、本体部151は、スピーカーユニット3が配置される配置部1511と、第1部材11に接続されている接続部1512と、を有する。配置部1511は、本体部151の他の部分よりもスピーカーユニット3側に向かって突出している。接続部1512は、本体部151の貫通孔1510を形成する縁部に形成されていて、本体部151の他の部分よりも第1部材11側に向かって突出している。
【0034】
本体部151では、配置部1511の-Z軸側の面がスピーカーユニット3に密着しており、接続部1512の+Z軸側の面が部材14に密着している。このような構成の本体部151は、スピーカーユニット3と第1部材11との間を気密的に封止する「封止部」を構成している。言い換えると、支持部材15は、筐体1の貫通孔101を形成する縁部とスピーカーユニット3との間を封止する「封止部」を有している。これにより、貫通孔101を形成する縁部とスピーカーユニット3との間を封止するガスケット等を省くことができるので、音声出力装置100が備える部品点数を削減することができる。
【0035】
なお、配置部1511は、スピーカーユニット3を配置できる構成であればよく、
図2に示すようにスピーカーユニット3側に向かって突出していなくてもよい。
【0036】
(連結部)
図2に示すように、4つの連結部152は、それぞれ、長尺な板状の部材を長手方向に沿って複数回屈曲させたような形状をなし、その長手方向の中央部に第2部材12側が凸になるよう折れ曲がった屈曲部1521を有する。また、
図4に示すように、連結部152a、および152bは、それぞれ本体部151と側面部131cとを連結していて、互いに離間しほぼ平行に配置されている。連結部152c、および152dは、それぞれ本体部151と側面部131dとを連結していて、互いに離間しほぼ平行に配置されている。また、連結部152a、および152cは、本体部151を挟んで両側に配置され、連結部152b、および152dは、本体部151を挟んで両側に配置されている。
【0037】
4つの連結部152は、前述したように板状の部材を用いて形成されているため、比較的簡単な構成で、スピーカーユニット3から回路基板2さらには筐体1に伝達される振動を低減することができる。また、連結部152は、厚さが薄いため弾性変形しやすい。そのため、スピーカーユニット3の振動を効果的に減衰させることができる。さらに、前述したように、4つの連結部152は、屈曲部1521を有するため、スピーカーユニット3の振動をより効果的に減衰させることができる。なお、屈曲部1521の数は1つに限らず複数であってもよい。すなわち、連結部152は蛇腹状であってもよい。これにより、振動を特に効果的に減衰させることができる。ただし、製造の簡便化を図りつつ、振動を効果的に減衰させるためには、屈曲部1521の数は、図示の通り1つであることが好ましい。なお、屈曲部1521は、例えば第1部材11側が凸になるよう折れ曲がっていてもよい。
【0038】
ここで、音声出力装置100では、スピーカーユニット3の質量と、支持部材15のコンプライアンスおよび筐体1の内部空間Sに存在する気体のコンプライアンスとによって、ローパスフィルターが形成されている。ローパスフィルターの入力は放音部311を駆動する力であり、その出力は回路基板2を押す力である。ゆえに、支持部材15は、スピーカーユニット3の質量と、支持部材15のコンプライアンスおよび筐体1の内部空間Sに存在する気体のコンプライアンスとでローパスフィルターを構成するように、例えば支持部材32の厚さ、形状、および材質等を適宜設定することが好ましい。これにより、回路基板2さらには筐体1に伝達される振動を低減することができる。その結果、筐体1の振動が物体7に伝達されて物体7が振動することにより生じる雑音をより低減することができる。
【0039】
また、前述したスピーカーユニット3と筐体1の第2部材12との間には、振動吸収材52(第1振動吸収材)が介在している。振動吸収材52は、平面視で、スピーカーユニット3の中央部に位置している。この構成により、振動吸収材52を設けない場合に比べ、スピーカーユニット3を安定して筐体1内に設置することができる。また、筐体1に伝達される振動を効果的に吸収することができる。そのため、スピーカーユニット3の振動が筐体1を介して物体7に伝達されて物体7が振動することにより生じる雑音を低減できる。
【0040】
振動吸収材52としては、前述した部材14の例示として挙げた部材を用いることができる。また、振動吸収材52は、部材14および振動吸収材51と同様の部材であってもよいし、異なる部材であってもよい。また、図示では、振動吸収材52は、スピーカーユニット3と筐体1との間の領域の一部のみに設けられているが、これらの間の領域全てを埋めるように設けられていてもよい。
【0041】
以上説明したように、音声出力装置100は、筐体1と、筐体1の内部に配置され、音声信号に応じて振動して放音する放音部311を有するスピーカーユニット3と、筐体1と一体的に構成され、スピーカーユニット3を支持するとともに振動を減衰する緩衝性を有する支持部材15と、を備える。
【0042】
このような音声出力装置100によれば、緩衝性を有する支持部材15を備えているため、スピーカーユニット3の振動を減衰することができる。そのため、支持部材15を介して筐体1に伝達される振動を低減することができる。その結果、スピーカーユニット3の振動が物体7に伝達されて物体7が振動することにより生じる雑音を低減することができる。また、筐体1と支持部材15とが一体的に構成されているため、これらが別体で形成されている場合に比べ、スピーカーユニット3の振動を特に効果的に減衰させることができる。また、支持部材15を備えることで物体7に伝わる振動が低減されるため、筐体1を介してマイクロホン4にスピーカーユニット3の振動が伝達されてマイクロホン4が振動することで発生する雑音を低減することができる。このようなことから、音声出力装置100の音質を高めることができる。また、支持部材15が筐体1と一体的に構成されているため、部品点数を減らすことができ、コストを削減できる。
【0043】
なお、本実施形態では、支持部材15は、第3部材13と一体的に構成されているが、第1部材11または第2部材12と一体的に構成されていてもよい。
【0044】
また、前述したように、支持部材15は、梁状である。そのため、スピーカーユニット3を安定的に支持することができる。また、梁状であることで、優れた弾性を有する支持部材15を形成し易い。そのため、振動を減衰させることができる支持部材15をより簡単に形成することができる。なお、支持部材15の形状は、梁状に限定されず、例えば網目状等であってもよい。
【0045】
さらに、前述したように、スピーカーユニット3の質量と、支持部材15のコンプライアンスおよび内部空間Sに存在する気体のコンプライアンスとによって、ローパスフィルターが形成されているため、筐体1に伝達される振動を低減できる。そのため、筐体1の振動が物体7に伝達されて物体7が振動することにより生じる雑音をより低減できる。そのため、音声出力装置100の音質を高めることができる。
【0046】
また、前述したように、音声出力装置100は、支持部材15に加えて、振動吸収材52を有している。支持部材15の振動緩和作用と、振動吸収材52の振動吸収作用との相乗効果によって、スピーカーユニット3の振動が物体7に伝達されて物体7が振動することにより生じる雑音を特に低減できる。さらには、音声出力装置100は、前述したように、部材14を有する。部材14は支持部材15に接続されている。そのため、スピーカーユニット3を支持している支持部材15の振動を吸収することができる。それゆえ、支持部材15に加えて部材14を備えることで、物体7が振動することにより生じる雑音を低減する作用をさらに高めることができる。例えば、振動吸収材52の材質、部材14の材質、および、支持部材15の形状等をコントロールすることで、音声出力装置100の振動が物体7に伝達された物体7が振動することにより生じる雑音を効果的に低減することができる。
【0047】
なお、前述した音声出力装置100は、音声以外の音、例えば音楽等も出力可能である。
【0048】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図5は、第2実施形態に係る音声出力装置の断面図である。
図6は、
図5に示す音声出力装置が有する支持部材を示す平面図である。
【0049】
本実施形態は、主に、支持部材の構成が異なること、およびガスケットがあること以外は、前述した第1実施形態と同様である。
【0050】
なお、以下の説明では、第2実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図5および
図6において、前述した第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0051】
図5および
図6に示す音声出力装置100Aが有する支持部材15Aは、前述した第1実施形態における支持部材15が有する接続部1512を有していない。すなわち、支持部材15Aは、その中央部に形成された厚さ方向に貫通する貫通孔1510と、スピーカーユニット3を配置する配置部1511とを有する本体部151Aを備える。
【0052】
また、本実施形態では、本体部151Aと筐体1の第1部材11との間には、シール部材60が設けられている。シール部材60は、例えば円環状のガスケットで構成されており、本体部151Aと第1部材11とのそれぞれに対して密着している。
【0053】
本実施形態では、第1実施形態と同様に、筐体1は、放音部311に対応する箇所に位置する貫通孔101を有している。また、前述したように、音声出力装置100Aは、支持部材15Aとは別体で構成され、筐体1の貫通孔101を形成する縁部とスピーカーユニット3との間を封止するシール部材60を有する。このように音声出力装置100Aは、スピーカーユニット3を支持することを主たる機能とする支持部材15Aとは別に、スピーカーユニット3と筐体1との間を密閉することを主たる機能とするシール部材60を有している。そのため、第1実施形態の構成に比べ、筐体1の内部空間Sの気密性を高めることができるので、外乱の影響を受けにくく、よって、雑音をより低減することができる。また、第1実施形態の支持部材15のように接続部1512を有していないため、支持部材15Aの構成を簡素化することができる。そのため、設計が容易であり、コストを低減することができる。
【0054】
以上説明したような第2実施形態によっても、雑音を低減しつつ、部品点数を少なくすることができる。
【0055】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態に係る音声出力装置の断面図である。
【0056】
本実施形態は、主に、ガスケットの代わりに補助部材を用いていること以外は、前述した第2実施形態と同様である。
【0057】
なお、以下の説明では、第3実施形態に関し、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項に関してはその説明を省略する。また、
図7において、前述した第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付している。
【0058】
図7に示す音声出力装置100Bでは、支持部材15Aと筐体1の第1部材11との間に、複数の補助部材61、および62が設けられている。補助部材61、および62は、支持部材15Aによるスピーカーユニット3の支持を補助する機能を有する。
【0059】
補助部材61は、第1部材11と回路基板2との間に位置し、これら双方に密着して設けられている。また、補助部材62は、回路基板2と本体部151Aとの間に位置し、これら双方に密着して設けられている。
【0060】
また、補助部材61、および62としては、例えば、前述した部材14の例示として挙げた部材を用いることができる。特に、補助部材61、および62としては、独立気泡スポンジであることが好ましい。これにより、補助部材61、および62によって、スピーカーユニット3の支持を補助するとともに、筐体1に伝達される振動をより低減することができる。
【0061】
このように筐体1の貫通孔101を形成する縁部と支持部材15Aとの間には、支持部材15Aとは別体で構成され、振動を吸収するとともに、支持部材15Aによるスピーカーユニット3の支持を補助するための補助部材61、および62が設けられている。この補助部材61、および62により、スピーカーユニット3から支持部材15Aに伝達される振動を吸収できる。そのため、回路基板2や筐体1に伝達される振動を低減することができる。また、スピーカーユニット3を安定的に支持することができる。さらに、第1実施形態における支持部材15の構成に比べ、支持部材15Aの構成を簡素化することができる。そのため、コストをより低減することができる。また、支持部材15Aおよび補助部材61、および62を用いることで、組み立てを容易に行うことができるので、歩留まりにも優れている。また、補助部材61、および62は、本体部151Aまたは第1部材11と、回路基板2とに対して密着して設けられているため、支持部材15A、補助部材61、および62および回路基板2によって、スピーカーユニット3と筐体1との間を気密的に封止することができる。そのため、筐体1内における外乱の影響を低減できるので雑音をより効果的に低減できる。
【0062】
以上説明したような第3実施形態によっても、雑音を低減しつつ、部品点数を少なくすることができる。
【0063】
以上、本発明の音声出力装置について図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。また、本発明の各部の構成は、前述した実施形態の同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。また、本発明は、前述した各実施形態の任意の構成同士を組み合わせるようにしてもよい。
【0064】
前述した実施形態では、マイクロホンを備える音声出力装置を例に説明したが、本発明は、マイクロホンを備えていなくてもよい。
【0065】
前述した実施形態では、音声出力装置を自動車の内部で用いた場合を例に説明したが、本発明は、自動車以外で用いることも可能である。例えば、音声出力装置は、建物の内壁に取り付けてもよい。
【0066】
前述した実施形態では、回路基板は、筐体内に配置されていたが、筐体外に配置されていてもよい。
【0067】
以上に例示した形態から、例えば以下の態様が把握される。
【0068】
本発明の好適な態様に係る音声出力装置は、筐体と、前記筐体の内部に配置され、音声信号に応じて振動して放音する放音部を有するスピーカーユニットと、前記筐体と一体的に構成され、前記スピーカーユニットを支持するとともに振動を減衰する緩衝性を有する支持部材と、を備える。この態様によれば、緩衝性を有する支持部材を備えているため、スピーカーユニットの振動を減衰させることができる。そのため、支持部材を介して筺体に伝達される振動を低減することができる。その結果、スピーカーユニットの振動が物体に伝達されて物体が振動することにより生じる雑音を低減することができる。また、支持部材が筐体と一体的に構成されているため、部品点数を減らすことができ、コストを削減できる。
【0069】
前述した音声出力装置の好適例において、前記支持部材は、梁状である。この態様によれば、スピーカーユニットを安定的に支持することができる。また、優れた弾性を有する支持部材を形成し易い。
【0070】
前述した音声出力装置の好適例において、前記筐体は、前記放音部に対応する箇所に貫通孔を有し、前記支持部材は、前記筐体の前記貫通孔を形成する縁部と、前記スピーカーユニットとの間を封止する封止部を有する。この態様によれば、当該縁部とスピーカーユニットとの間を封止するガスケットを省くことができるので、部品点数を削減することができる。
【0071】
前述した音声出力装置の好適例において、前記筐体は、前記放音部に対応する箇所に位置する貫通孔を有しており、前記支持部材とは別体で構成され、前記筐体の前記貫通孔を形成する縁部と前記スピーカーユニットとの間を封止するシール部材を有する。この態様によれば、スピーカーユニットを支持することを主たる機能とする支持部材の他に、密閉することを主たる機能とするシール部材を用いることで、筐体内の空間の気密性を高めることができる。そのため、シール部材を有さない構成に比べて、筐体内における外乱の影響を低減することができるので雑音をより低減することができる。また、前述した封止部を有する構成よりも、支持部材の構成を簡素化することができる。そのため、設計が容易であり、コストをより低減することができる。
【0072】
前述した音声出力装置の好適例において、前記筐体は、前記放音部に対応する箇所に貫通孔を有しており、前記筐体の前記貫通孔を形成する縁部と前記支持部材との間には、前記支持部材とは別体で構成され、振動を吸収するとともに、前記スピーカーユニットの支持を補助するための補助部材が設けられている。この態様によれば、スピーカーユニットから支持部材に伝達される振動を吸収するとともに、スピーカーユニットを安定的に支持することができる。
【0073】
前述した音声出力装置の好適例において、前記筐体と前記スピーカーユニットとの間には、振動を吸収する振動吸収材が設けられている。この態様によれば、振動吸収材を用いていない場合に比べて、スピーカーユニットをより安定して設置することができるとともに、スピーカーユニットから筐体に伝達される振動を吸収することができる。そのため、スピーカーユニットの振動が筐体を介して物体に伝達されて物体が振動することにより生じる雑音をより低減できる。
【符号の説明】
【0074】
1…筐体、3…スピーカーユニット、7…非取付物、15、15A…支持部材、52…振動吸収材(第1振動吸収材)、100,100A…音声出力装置、311…放音部、60…シール部材、61,62…補助部材