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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】レベルシフト回路及び集積回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0185 20060101AFI20220517BHJP
   H03K 19/0175 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H03K19/0185 210
H03K19/0175 210
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021020820
(22)【出願日】2021-02-12
(62)【分割の表示】P 2019519805の分割
【原出願日】2017-05-22
(65)【公開番号】P2021073827
(43)【公開日】2021-05-13
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】川井 重明
(72)【発明者】
【氏名】松田 篤
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-026715(JP,A)
【文献】特開平05-243963(JP,A)
【文献】特開平10-022810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/0185
H03K 19/0175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源線への供給電圧である第1の電源電圧で動作し、入力された入力信号を反転させた第1の信号を第1のノードに出力する第1のインバータと、
前記第1のノードから入力された前記第1の信号を反転させた第2の信号を第2のノードに出力する第2のインバータと、
第2の電源線への供給電圧であって、前記第1の電源電圧とは異なる第2の電源電圧で動作し、前記第2のノードから入力された前記第2の信号を反転させた出力信号を出力する第3のインバータと、
前記入力信号のパルス幅と前記出力信号のパルス幅とが一致するように、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との間の電圧である中間電圧を生成する電圧生成回路とを備え、
前記第2のインバータは、前記中間電圧で動作し、
前記電圧生成回路は、
前記第1の電源線と前記第2の電源線のうち、供給される電源電圧が高い方の電源線と、前記中間電圧が供給される第3の電源線の間に接続され、ゲートに制御電圧が入力されるトランジスタと、
前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧に基づいて参照電圧を生成する参照電圧生成回路と、
前記中間電圧に基づいてフィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成回路と、
第1の入力ノードに前記参照電圧が入力され、第2の入力ノードに前記フィードバック電圧が入力され、出力ノードが前記トランジスタのゲートに接続され、前記参照電圧及び前記フィードバック電圧に基づいて、前記制御電圧を生成して、前記トランジスタのゲートに入力する制御電圧生成回路と、
を備える、レベルシフト回路。
【請求項2】
前記中間電圧は、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との平均電圧である、請求項1に記載のレベルシフト回路。
【請求項3】
前記第1のインバータは、前記第1の電源線にソースが接続された第1のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第1のN型トランジスタとを有し、
前記第2のインバータは、前記電圧生成回路にソースが接続された第2のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第2のN型トランジスタとを有し、
前記第3のインバータは、前記第2の電源線にソースが接続された第3のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第3のN型トランジスタとを有する、請求項1又は2に記載のレベルシフト回路。
【請求項4】
第1の電源線への供給電圧である第1の電源電圧で動作する第1の内部回路と、
第2の電源線への供給電圧であって、前記第1の電源電圧とは異なる第2の電源電圧で動作する第2の内部回路と、
前記第1の内部回路と前記第2の内部回路との間で信号のレベルをシフトするレベルシフト回路とを備え、
前記レベルシフト回路は、
前記第1の電源電圧で動作し、前記第1の内部回路から入力された入力信号を反転させた第1の信号を第1のノードに出力する第1のインバータと、
前記第1のノードから入力された前記第1の信号を反転させた第2の信号を第2のノードに出力する第2のインバータと、
前記第2の電源電圧で動作し、前記第2のノードから入力された前記第2の信号を反転させた出力信号を前記第2の内部回路に出力する第3のインバータと、
前記入力信号のパルス幅と前記出力信号のパルス幅とが一致するように、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との間の電圧である中間電圧を生成する電圧生成回路とを備え、
前記第2のインバータは、前記中間電圧で動作し、
前記電圧生成回路は、
前記第1の電源線と前記第2の電源線のうち、供給される電源電圧が高い方の電源線と、前記中間電圧が供給される第3の電源線の間に接続され、ゲートに制御電圧が入力されるトランジスタと、
前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧に基づいて参照電圧を生成する参照電圧生成回路と、
前記中間電圧に基づいてフィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成回路と、
第1の入力ノードに前記参照電圧が入力され、第2の入力ノードに前記フィードバック電圧が入力され、出力ノードが前記トランジスタのゲートに接続され、前記参照電圧及び前記フィードバック電圧に基づいて、前記制御電圧を生成して、前記トランジスタのゲートに入力する制御電圧生成回路と、
を備える、集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベルシフト回路及び集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、異なる電源電圧間で信号のレベルをシフトするレベルシフト回路が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-502558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の従来技術のようにラッチ構造を用いたレベルシフト回路では、ラッチアップまでに時間がかかることによって、信号がレベルシフトされる前後で当該信号のパルス幅が変化することがある。レベルシフトされる前後で信号のパルス幅が変化すると、信号の内容が誤って伝達されるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示では、レベルシフトされる前後での信号のパルス幅の変化を抑制できる、レベルシフト回路及び集積回路が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様では、
第1の電源線への供給電圧である第1の電源電圧で動作し、入力された入力信号を反転させた第1の信号を第1のノードに出力する第1のインバータと、
前記第1のノードから入力された前記第1の信号を反転させた第2の信号を第2のノードに出力する第2のインバータと、
第2の電源線への供給電圧であって、前記第1の電源電圧とは異なる第2の電源電圧で動作し、前記第2のノードから入力された前記第2の信号を反転させた出力信号を出力する第3のインバータと、
前記入力信号のパルス幅と前記出力信号のパルス幅とが一致するように、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との間の電圧である中間電圧を生成する電圧生成回路とを備え、
前記第2のインバータは、前記中間電圧で動作し、
前記電圧生成回路は、
前記第1の電源線と前記第2の電源線のうち、供給される電源電圧が高い方の電源線と、前記中間電圧が供給される第3の電源線の間に接続され、ゲートに制御電圧が入力されるトランジスタと、
前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧に基づいて参照電圧を生成する参照電圧生成回路と、
前記中間電圧に基づいてフィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成回路と、
第1の入力ノードに前記参照電圧が入力され、第2の入力ノードに前記フィードバック電圧が入力され、出力ノードが前記トランジスタのゲートに接続され、前記参照電圧及び前記フィードバック電圧に基づいて、前記制御電圧を生成して、前記トランジスタのゲートに入力する制御電圧生成回路と、
を備える、レベルシフト回路が提供される。
【0007】
本開示の他の一態様では、
第1の電源線への供給電圧である第1の電源電圧で動作する第1の内部回路と、
第2の電源線への供給電圧であって、前記第1の電源電圧とは異なる第2の電源電圧で動作する第2の内部回路と、
前記第1の内部回路と前記第2の内部回路との間で信号のレベルをシフトするレベルシフト回路とを備え、
前記レベルシフト回路は、
前記第1の電源電圧で動作し、前記第1の内部回路から入力された入力信号を反転させた第1の信号を第1のノードに出力する第1のインバータと、
前記第1のノードから入力された前記第1の信号を反転させた第2の信号を第2のノードに出力する第2のインバータと、
前記第2の電源電圧で動作し、前記第2のノードから入力された前記第2の信号を反転させた出力信号を前記第2の内部回路に出力する第3のインバータと、
前記入力信号のパルス幅と前記出力信号のパルス幅とが一致するように、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との間の電圧である中間電圧を生成する電圧生成回路とを備え、
前記第2のインバータは、前記中間電圧で動作し、
前記電圧生成回路は、
前記第1の電源線と前記第2の電源線のうち、供給される電源電圧が高い方の電源線と、前記中間電圧が供給される第3の電源線の間に接続され、ゲートに制御電圧が入力されるトランジスタと、
前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧に基づいて参照電圧を生成する参照電圧生成回路と、
前記中間電圧に基づいてフィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成回路と、
第1の入力ノードに前記参照電圧が入力され、第2の入力ノードに前記フィードバック電圧が入力され、出力ノードが前記トランジスタのゲートに接続され、前記参照電圧及び前記フィードバック電圧に基づいて、前記制御電圧を生成して、前記トランジスタのゲートに入力する制御電圧生成回路と、
を備える、集積回路が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、レベルシフトされる前後での信号のパルス幅の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示に係る集積回路の構成の一例を示す図である。
図2】本開示に係るレベルシフト回路の第1の構成例を示す図である。
図3】電圧生成回路の構成の一例を示す図である。
図4】各端子及び各ノードでの動作波形の一例を示す図である。
図5】本開示に係るレベルシフト回路の第2の構成例を示す図である。
図6】閾値電圧の具体例を示す図である。
図7】VDD1を固定してVDD2を変化させたときのVth2の変化を示す図である。
図8】レベルシフト回路を備えた集積回路の一具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本開示に係る集積回路の構成の一例を示す図である。図1に示される集積回路10は、異なる電源電圧で動作する回路間で信号の受け渡しを行うレベルシフト回路13を備える。集積回路10は、半導体集積回路の一例であり、第1の内部回路11と、レベルシフト回路13と、第2の内部回路12とを備える。
【0012】
第1の内部回路11は、第1の電源電圧の一例である電源電圧VDD1で動作する。電源電圧VDD1は、第1の電源線への供給電圧の一例である。第2の内部回路12は、第2の電源電圧の一例である電源電圧VDD2で動作する。電源電圧VDD2は、第2の電源線への供給電圧の一例である。電源電圧VDD2は、電源電圧VDD1と異なる電圧である。
【0013】
レベルシフト回路13は、第1の内部回路11と第2の内部回路12との間で信号のレベル(「振幅」とも称する)をシフトする。レベルシフト回路13は、第1の内部回路から入力された信号のレベルをシフトし、レベルをシフトした信号を第2の内部回路12に出力する。本開示に係るレベルシフト回路13は、電源電圧VDD2が電源電圧VDD1よりも高い場合にも低い場合にも適用することが可能である。
【0014】
図2は、本開示に係るレベルシフト回路の第1の構成例を示す図である。図2に示されるレベルシフト回路31は、図1のレベルシフト回路13の一例である。レベルシフト回路31は、直列に接続された奇数個(本例では、3個)のインバータ21,22,23を備える。インバータ21,22,23は、それぞれ、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタとが直列に接続されたCMOS型のインバータである。CMOSは、Complementary MOS(Metal Oxide Semiconductor)を意味する。PMOSのPは、P型(Pチャネル型)を表し、NMOSのNは、N型(Nチャネル型)を表す。
【0015】
インバータ21は、第1のインバータの一例であり、電源線41への供給電圧である電源電圧VDD1で動作する。電源線41は、第1の電源線の一例である。電源電圧VDD1は、電源線41とグランド線40との間の電圧である。
【0016】
インバータ21は、入力端子INから入力された信号(「入力信号Sin」と称する)のレベルを反転させた信号(「信号Sa」と称する)を中間ノードAに出力する。信号Saは、第1の信号の一例である。中間ノードAは、第1のノードの一例である。入力端子INには、第1の内部回路11が接続されている。第1の内部回路11からの入力信号Sinが入力端子INを介してインバータ21の共通ゲートに入力される。
【0017】
インバータ21は、電源線41にソースが接続されたP型トランジスタ21pと、グランド線40にソースが接続されたN型トランジスタ21nとを有する。P型トランジスタ21pとN型トランジスタ21nとの各々のゲートは、入力端子INに接続され、P型トランジスタ21pとN型トランジスタ21nとの各々のドレインは、中間ノードAに接続されている。
【0018】
インバータ23は、第3のインバータの一例であり、電源線43への供給電圧である電源電圧VDD2で動作する。電源線43は、第2の電源線の一例である。電源電圧VDD2は、電源線43とグランド線40との間の電圧である。
【0019】
インバータ23は、中間ノードBから入力された信号(「信号Sb」と称する)のレベルを反転させた信号(「出力信号Sout」と称する)を出力端子OUTに出力する。信号Sbは、第2の信号の一例である。中間ノードBは、第2のノードの一例である。出力端子OUTには、第2の内部回路12が接続されている。インバータ23の共通ドレインから出力端子OUTを介して出力された出力信号Soutは、第2の内部回路12へ入力される。
【0020】
インバータ23は、電源線43にソースが接続されたP型トランジスタ23pと、グランド線40にソースが接続されたN型トランジスタ23nとを有する。P型トランジスタ23pとN型トランジスタ23nとの各々のゲートは、中間ノードBに接続され、P型トランジスタ23pとN型トランジスタ23nとの各々のドレインは、出力端子OUTに接続されている。
【0021】
インバータ22は、第2のインバータの一例であり、電源線42への供給電圧である電源電圧VDD12で動作する。電源線42は、電源電圧VDD12の供給源と接続された第3の電源線の一例である。電源電圧VDD12は、電源線42への供給電圧とグランド線40への供給電圧との間の電圧である。電源電圧VDD12は、電源電圧VDD1と電源電圧VDD2との間の電圧である中間電圧の一例である。本実施形態では、電源電圧VDD12は、電源電圧VDD1と電源電圧VDD2との間の平均電圧(=(VDD1+VDD2)/2)に等しい。
【0022】
インバータ22は、中間ノードAから入力された信号Saのレベルを反転させた信号Sbを中間ノードBに出力する。
【0023】
インバータ22は、電源線42にソースが接続されたP型トランジスタ22pと、グランド線40にソースが接続されたN型トランジスタ22nとを有する。P型トランジスタ22pとN型トランジスタ22nとの各々のゲートは、中間ノードAに接続され、P型トランジスタ22pとN型トランジスタ22nとの各々のドレインは、中間ノードBに接続されている。
【0024】
レベルシフト回路31は、電源電圧VDD12を生成する電圧生成回路を備える。電圧生成回路は、入力端子INから入力される入力信号Sinのパルス幅と出力端子OUTから出力される出力信号Soutのパルス幅とが一致するように、電源電圧VDD12を生成する。
【0025】
図3は、電源電圧VDD12を生成する電圧生成回路の一例を示す図である。図3に示されるレギュレータ50は、電源電圧VDD12を生成する電圧生成回路の一例である。レギュレータ50は、電源電圧VDD12が電源電圧VDD1と電源電圧VDD2との間の平均電圧になるように、電源電圧VDD12を調整する。レギュレータ50は、抵抗51~58と、オペアンプ59と、P型トランジスタ60とを備える。
【0026】
抵抗51~56によって構成された参照電圧生成回路は、電源電圧VDD1と電源電圧VDD2に基づいて所定の参照電圧を生成し、生成した参照電圧をオペアンプ59の反転入力ノードに供給する。P型トランジスタ60は、オペアンプ59の出力ノードに接続されたゲートと、電源線41又は電源線43に接続されたソースと、抵抗57,58を介してグランド線40に接続されたドレインとを有するMOSトランジスタである。P型トランジスタ60のソースは、電源線41と電源線43とのうち、供給される電源電圧が高い方の電源線に接続される。抵抗57と抵抗58との中間接続点は、オペアンプ59の非反転入力ノードに接続される。抵抗57と抵抗58によって構成されたフィードバック電圧生成回路は、抵抗57と抵抗58の中間接続点においてフィードバック電圧を生成し、生成したフィードバック電圧をオペアンプ59の非反転入力ノードに供給する。オペアンプ59は、供給された参照電圧とフィードバック電圧に基づいて、P型トランジスタ60のゲートに制御電圧を供給する制御電圧生成回路として機能する。このような構成を有するレギュレータ50は、抵抗51~58の各抵抗値を調整することにより、P型トランジスタ60のドレインから電源電圧VDD12(=(VDD1+VDD2)/2)を出力できる。
【0027】
図2のレベルシフト回路31では、インバータの閾値電圧が電源電圧の半分となるように設計される。このように設計される場合、VDD12=(VDD1+VDD2)/2とすることで、1段目のインバータ21の閾値電圧と2段目のインバータ22の閾値電圧との差分と、2段目のインバータ22の閾値電圧と3段目のインバータ23の閾値電圧との差分とが、等しくなる。
【0028】
例えば、1段目のインバータ21において、入力信号Sinの電圧をV1とすると、各トランジスタの飽和領域でのドレイン電流式は、
Id(PMOS)=βp×(VDD1-V1-Vthp)2
Id(NMOS)=βn×(V1-Vthn)2
となる。Id(PMOS)は、P型トランジスタのドレイン電流を表し、Id(NMOS)は、N型トランジスタのドレイン電流を表す。利得βp及びβnは、
βp=1/2×(Wp×μp×Cox/Lp)
βn=1/2×(Wn×μn×Cox/Ln)
である。Wp、μp、Cox、Lpは、それぞれ、P型トランジスタの、ゲート幅、正孔の移動度、ゲート容量、ゲート長を表す。Wn、μn、Cox、Lnは、それぞれ、N型トランジスタのゲート幅、電子の移動度、ゲート容量、ゲート長を表す。P型トランジスタの閾値電圧VthpとP型トランジスタの閾値電圧Vthnとはほぼ等しく、βp=βnであるようにトランジスタ比は設計される。インバータの閾値電圧Vthは、Id(PMOS)=Id(NMOS)のときの入力電圧V1であるので、
VDD1-V1=V1
が成立し、
V1=VDD1/2
という関係式が得られる。つまり、インバータ21の閾値電圧Vth1=VDD1/2と求めることができる。同様に、2段目ではVth2=VDD12/2、3段目ではVth3=VDD2/2となる。
【0029】
したがって、図2のレベルシフト回路31の場合、1段目のインバータ21の閾値電圧と2段目のインバータ22の閾値電圧との差分と、2段目のインバータ22の閾値電圧と3段目のインバータ23の閾値電圧との差分とが、等しくなる効果が得られる。
【0030】
これにより、Vth1、Vth2、Vth3の順に電圧値が大きくなっても、図4に示すように、1段目から2段目へのレベルシフトによるパルス幅の変動量と2段目から3段目へのレベルシフトによるパルス幅の変動量とが等しくなる。その結果、インバータで信号が反転する効果によって差分が打ち消しあう。よって、3段目のインバータ23からの出力信号Soutのパルス幅は、入力信号Sinと同じパルス幅になるとともに、レベルがVDD1からVDD2にシフトした出力信号Soutを得ることができる。そして、入力信号Sinの内容を正しくインバータ23の後段の回路に伝達することができる。Vth4は、インバータ23の後段の回路の閾値電圧を表す。
【0031】
図5は、本開示に係るレベルシフト回路の第2の構成例を示す図である。図5に示されるレベルシフト回路32は、図1のレベルシフト回路13の一例である。レベルシフト回路32は、直列に接続された奇数個(本例では、3個)のインバータ21,72,23を備える。インバータ21,72,23は、それぞれ、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタとが直列に接続されたCMOS型のインバータである。第2の構成例のうち上述の構成例と同様の構成については、上述の説明を援用することで省略又は簡略する。
【0032】
インバータ72は、中間ノードAから入力された信号Saのレベルを反転させた信号Sbを中間ノードBに出力する。
【0033】
インバータ72は、電源線41にソースが接続されたP型トランジスタ72p1と、電源線43にソースが接続されたP型トランジスタ72p2と、グランド線40にソースが接続されたN型トランジスタ72nとを有する。P型トランジスタ72p1とP型トランジスタ72p2とN型トランジスタ72nとの各々のゲートは、中間ノードAに接続されている。P型トランジスタ72p1とP型トランジスタ72p2とN型トランジスタ72nとの各々のドレインは、中間ノードBに接続されている。
【0034】
図5のレベルシフト回路32の場合、P型トランジスタ21pのゲート幅が、N型トランジスタ21nのゲート幅のX(Xは正の値)倍であり、P型トランジスタ23pのゲート幅が、N型トランジスタ23nのゲート幅のX倍であると定義する。このとき、P型トランジスタ72p1とP型トランジスタ72p2の各々のゲート幅は、N型トランジスタ72nのゲート幅の(X/2)倍で形成されている。このように形成されることで、1段目のインバータ21の閾値電圧と2段目のインバータ22の閾値電圧との差分と、2段目のインバータ22の閾値電圧と3段目のインバータ23の閾値電圧との差分とが、略等しくなる。
【0035】
例えば、2段目のインバータ72において、信号Saの電圧をV2とすると、各トランジスタの飽和領域でのドレイン電流式は、
Id(PMOS)=βp×{ (VDD1-V2-Vtp)2+(VDD2-V2-Vtp)2}/2
Id(NMOS)=βn×(V2-Vtn)2
となる。P型トランジスタの閾値電圧VtpとP型トランジスタの閾値電圧Vtnとはほぼ等しく(Vtp=Vtn=Vt)、βp=βnであるようにトランジスタ比は設計される。インバータ72の閾値電圧Vth2は、Id(PMOS)=Id(NMOS)のときの入力電圧V2であるので、閾値電圧Vth2は、
Vth2=(VDD12+ VDD22-2×VDD1×Vt-2×VDD2×Vt)/(2×VDD1+2×VDD2-8Vt)
となる。
【0036】
この式に具体的な3つの場合での電圧を代入すると、図6に示される値になる。図6に示されるように、2段目の閾値電圧Vth2は、VDD1とVDD2との大小関係によらず、1段目の閾値電圧Vth1=VDD1/2と3段目の閾値電圧Vth3=VDD2/2との平均値(VDD1+VDD2)/4と近い値となることが分かる。
【0037】
したがって、図5のレベルシフト回路32の場合、1段目のインバータ21の閾値電圧と2段目のインバータ72の閾値電圧との差分と、2段目のインバータ72の閾値電圧と3段目のインバータ23の閾値電圧との差分とが、略等しくなる効果が得られる。
【0038】
これにより、Vth1、Vth2、Vth3の順に電圧値が大きくなっても、図4に示すように、1段目から2段目へのレベルシフトによるパルス幅の変動量と2段目から3段目へのレベルシフトによるパルス幅の変動量とが等しくなる。その結果、インバータで信号が反転する効果によって差分が打ち消しあう。よって、3段目のインバータ23からの出力信号Soutのパルス幅は、入力信号Sinと同じパルス幅になるとともに、レベルがVDD1からVDD2にシフトした出力信号Soutを得ることができる。そして、入力信号Sinの内容を正しくインバータ23の後段の回路に伝達することができる。Vth4は、インバータ23の後段の回路の閾値電圧を表す。
【0039】
図7は、VDD1を0.8Vに固定してVDD2を変化させたときのVth2の変化を示す。図では、Vt=0.2Vとしている。図7に示されるように、Vth2は、Vth1とVth3のほぼ中間の値となり、理想値である(VDD1+VDD2)/4との差分は小さい。また、VDD1とVDD2の値が決まっていれば、サイズ比(βp及びβn)を2段目のみ調整することで、Vth2を(VDD1+VDD2)/4に略一致させることもできる。
【0040】
したがって、図5のレベルシフト回路32の場合、1段目のインバータ21の閾値電圧と2段目のインバータ72の閾値電圧との差分と、2段目のインバータ72の閾値電圧と3段目のインバータ23の閾値電圧との差分とが、略等しくなる効果が得られる。
【0041】
図8は、レベルシフト回路を備えた集積回路の一具体例を示す図である。集積回路110は、CPU(Central Processing Unit)111を備える。また、集積回路110は、SERDES(SERializer/DESerializer)112を備える。CPUは、プロセッサの一例である。SERDESは、シリアルデータとパラレルデータとの間で相互に変換する回路の一例である。
【0042】
レベルシフタ131は、CPU111とマルチプレクサ(MUX)121との異なる電源電圧で動作する回路間で信号を伝送する。レベルシフタ132は、デマルチプレクサ(DMUX)122とCPU111との異なる電源電圧で動作する回路間で信号を伝送する。CPU111の消費電力が大きいため、CPU111の電源電圧は、プロセスばらつきや動作状態によって調整されることにより、CPU111の消費電力を最適化する技術が使用されている。一方、SERDES112の電源電圧は、高速動作を実現するために、固定されている。この場合、CPU111とSERDES112との間で電源電圧の大小関係が逆転することがある。したがって、レベルシフタ131,132に本実施形態に係るレベルシフト回路を適用することによって、電源電圧が異なる回路間であっても、レベルシフトされる前後での信号のパルス幅の変化を抑制することができる。
【0043】
レベルシフタ133は、マルチプレクサ(MUX)121と送信回路(Tx)123との異なる電源電圧で動作する回路間で信号を伝送する。レベルシフタ134は、受信回路(Rx)124とデマルチプレクサ(DMUX)122との異なる電源電圧で動作する回路間で信号を伝送する。SERDES112の電源電圧は、高速動作を実現するために、高く設定されている。送信回路(Tx)123は、所望の出力電圧を出力するために高い電圧が必要になるが、SERDES112回路全体の電源電圧を高くすると、消費電力が大きくなる。そのため、SERDES112のうち必要な回路の電源電圧が高くされる。この場合、レベルシフタ133,134は、高速動作を実現するため、要求される立ち上がり又は立ち下がり時間が短くなり、パルス幅の変化量も小さいことが望まれる。したがって、レベルシフタ133,134に本実施形態に係るレベルシフト回路を適用することによって、電源電圧が異なる回路間であっても、レベルシフトされる前後での信号のパルス幅の変化を抑制することができる。
【0044】
以上、レベルシフト回路及び集積回路を実施形態により説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。他の実施形態の一部又は全部との組み合わせや置換などの種々の変形及び改良が、本発明の範囲内で可能である。
【0045】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
第1の電源線への供給電圧である第1の電源電圧で動作し、入力された信号を反転させた第1の信号を第1のノードに出力する第1のインバータと、
前記第1のノードから入力された前記第1の信号を反転させた第2の信号を第2のノードに出力する第2のインバータと、
第2の電源線への供給電圧であって、前記第1の電源電圧とは異なる第2の電源電圧で動作し、前記第2のノードから入力された前記第2の信号を反転させた信号を出力する第3のインバータとを備え、
前記第2のインバータは、前記第1の電源線にソースが接続された第1のP型トランジスタと、前記第2の電源線にソースが接続された第2のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第1のN型トランジスタとを有し、
前記第1のP型トランジスタと前記第2のP型トランジスタと前記第1のN型トランジスタの各々のゲートが前記第1のノードに接続され、前記第1のP型トランジスタと前記第2のP型トランジスタと前記第1のN型トランジスタの各々のドレインが前記第2のノードに接続された、レベルシフト回路。
(付記2)
前記第1のインバータは、前記第1の電源線にソースが接続された第3のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第2のN型トランジスタとを有し、
前記第3のインバータは、前記第2の電源線にソースが接続された第4のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第3のN型トランジスタとを有し、
前記第3のP型トランジスタのゲート幅が、前記第2のN型トランジスタのゲート幅のX(Xは正の値)倍であり、前記第4のP型トランジスタのゲート幅が、前記第3のN型トランジスタのゲート幅のX倍であるとき、
前記第1のP型トランジスタと前記第2のP型トランジスタの各々のゲート幅は、前記第1のN型トランジスタのゲート幅の(X/2)倍である、付記1に記載のレベルシフト回路。
(付記3)
第1の電源線への供給電圧である第1の電源電圧で動作する第1の内部回路と、
第2の電源線への供給電圧であって、前記第1の電源電圧とは異なる第2の電源電圧で動作する第2の内部回路と、
前記第1の内部回路と前記第2の内部回路との間で信号のレベルをシフトするレベルシフト回路とを備え、
前記レベルシフト回路は、
前記第1の電源電圧で動作し、前記第1の内部回路から入力された信号を反転させた第1の信号を第1のノードに出力する第1のインバータと、
前記第1のノードから入力された前記第1の信号を反転させた第2の信号を第2のノードに出力する第2のインバータと、
前記第2の電源電圧で動作し、前記第2のノードから入力された前記第2の信号を反転させた信号を前記第2の内部回路に出力する第3のインバータとを備え、
前記第2のインバータは、前記第1の電源線にソースが接続された第1のP型トランジスタと、前記第2の電源線にソースが接続された第2のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第1のN型トランジスタとを有し、
前記第1のP型トランジスタと前記第2のP型トランジスタと前記第1のN型トランジスタの各々のゲートが前記第1のノードに接続され、前記第1のP型トランジスタと前記第2のP型トランジスタと前記第1のN型トランジスタの各々のドレインが前記第2のノードに接続された、集積回路。
(付記4)
第1の電源線への供給電圧である第1の電源電圧で動作し、入力された入力信号を反転させた第1の信号を第1のノードに出力する第1のインバータと、
前記第1のノードから入力された前記第1の信号を反転させた第2の信号を第2のノードに出力する第2のインバータと、
第2の電源線への供給電圧であって、前記第1の電源電圧とは異なる第2の電源電圧で動作し、前記第2のノードから入力された前記第2の信号を反転させた出力信号を出力する第3のインバータと、
前記入力信号のパルス幅と前記出力信号のパルス幅とが一致するように、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との間の電圧である中間電圧を生成する電圧生成回路とを備え、
前記第2のインバータは、前記中間電圧で動作する、レベルシフト回路。
(付記5)
前記中間電圧は、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との平均電圧である、付記4に記載のレベルシフト回路。
(付記6)
前記第1のインバータは、前記第1の電源線にソースが接続された第1のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第1のN型トランジスタとを有し、
前記第2のインバータは、前記電圧生成回路にソースが接続された第2のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第2のN型トランジスタとを有し、
前記第3のインバータは、前記第2の電源線にソースが接続された第3のP型トランジスタと、グランド線にソースが接続された第3のN型トランジスタとを有する、付記4又は5に記載のレベルシフト回路。
(付記7)
前記電圧生成回路は、
前記第1の電源線と前記第2の電源線のうち、供給される電源電圧が高い方の電源線と、前記中間電圧が供給される第3の電源線の間に接続されたトランジスタと、
前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧に基づいて参照電圧を生成する参照電圧生成回路と、
前記中間電圧に基づいてフィードバック電圧を生成するフィードバック電圧生成回路と、
第1の入力ノードに前記参照電圧が入力され、第2の入力ノードに前記フィードバック電圧が入力され、前記参照電圧及び前記フィードバック電圧に基づいて、前記トランジスタの制御電圧を生成する制御電圧生成回路と、
を備える、付記4に記載のレベルシフト回路。
(付記8)
第1の電源線への供給電圧である第1の電源電圧で動作する第1の内部回路と、
第2の電源線への供給電圧であって、前記第1の電源電圧とは異なる第2の電源電圧で動作する第2の内部回路と、
前記第1の内部回路と前記第2の内部回路との間で信号のレベルをシフトするレベルシフト回路とを備え、
前記レベルシフト回路は、
前記第1の電源電圧で動作し、前記第1の内部回路から入力された入力信号を反転させた第1の信号を第1のノードに出力する第1のインバータと、
前記第1のノードから入力された前記第1の信号を反転させた第2の信号を第2のノードに出力する第2のインバータと、
前記第2の電源電圧で動作し、前記第2のノードから入力された前記第2の信号を反転させた出力信号を前記第2の内部回路に出力する第3のインバータと、
前記入力信号のパルス幅と前記出力信号のパルス幅とが一致するように、前記第1の電源電圧と前記第2の電源電圧との間の電圧である中間電圧を生成する電圧生成回路とを備え、
前記第2のインバータは、前記中間電圧で動作する、集積回路。
【符号の説明】
【0046】
10,110 集積回路
11 第1の内部回路
12 第2の内部回路
13,31,32 レベルシフト回路
21,22,23,72 インバータ
50 レギュレータ(電圧生成回路の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8