(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】薬剤包装装置
(51)【国際特許分類】
B41J 17/04 20060101AFI20220517BHJP
B41J 17/36 20060101ALI20220517BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20220517BHJP
B41J 17/32 20060101ALI20220517BHJP
A61J 3/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B41J17/04
B41J17/36 B
B41J2/325 A
B41J17/32 Z
A61J3/00 310E
(21)【出願番号】P 2021074599
(22)【出願日】2021-04-27
(62)【分割の表示】P 2020086394の分割
【原出願日】2013-02-28
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2012048607
(32)【優先日】2012-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2012189757
(32)【優先日】2012-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592246705
【氏名又は名称】株式会社湯山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【氏名又は名称】神保 泰三
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【氏名又は名称】松川 克明
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼本 知大
(72)【発明者】
【氏名】荻野 啓
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 昇
(72)【発明者】
【氏名】小田 智生
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第6344504(JP,B2)
【文献】特開2012-076357(JP,A)
【文献】特開2008-024504(JP,A)
【文献】特表2007-502765(JP,A)
【文献】特許第4564437(JP,B2)
【文献】特開2000-203541(JP,A)
【文献】特開2002-283947(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0081844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/04
B41J 17/36
B41J 2/325
B41J 17/32
A61J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ヘッドでインクリボンと包装用連続シートとを互いに接触させて上記包装用連続シートに印字を行うとともに、上記包装用連続シートを用いて薬剤を1包分ずつ包装する薬剤包装装置において、
内側筒が外側筒に挿入され上記内側筒と外側筒との間に隙間が形成される構造の供給芯にインクリボンが捲回されており、上記隙間に記録媒体が設けられているインクリボンロールと、
上記インクリボンロールが着脱自在に装着されるインクリボンカセットと、
上記インクリボンカセットの外側の位置から上記インクリボンロールの上記供給芯に設けられた上記記録媒体から情報を読み取るとともに上記記録媒体に情報を書き込むリーダライタと
、
上記インクリボンの使用により変化した上記インクリボンの使用量または残存量を示す情報を上記記録媒体に書き込む情報として上記リーダライタに出力する情報出力部と、を備えており、
上記インクリボンロールの記録媒体には、上記インクリボンロールの使用量に対応した記憶エリアが複数あり、各記憶エリアを、随時に書き換え不能にし、
上記インクリボンロールの実際の使用量と上記記録媒体に記録された使用量とを比較し、異なっている場合、上記記録媒体に記録された使用量を実際の使用量に書き換えることを特徴とする薬剤包装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包装用連続シートに印字を行うとともにこの包装用連続シートを用いて薬剤を1包分ずつ包装する薬剤包装装置、および上記印字に用いられるインクリボンロールに関する。
【背景技術】
【0002】
包装用連続シートに患者名や服用日時等を印字するとともにこの包装用連続シートを用いて錠剤や散薬等の薬剤を1包分ずつ包装する薬剤包装装置として特許第4564437号公報に開示された薬剤払出装置が知られている。
【0003】
上記薬剤払出装置は、薬剤を包むための包装用連続シートをロールから供給し、上記包装用連続シートとインクリボンとを印字ヘッドの位置で重ね合わせて上記印字ヘッドにより患者名や服用日時などを印字し、このように印字された包装用連続シートを上向きに開口するように2つ折りの状態にして錠剤や散薬等の薬剤を1包分ずつ包装する。
【0004】
上記インクリボンは上記包装用連続シートに接触して上記包装用連続シートとともに走行し、上記印字ヘッドによる印字の後に上記包装用連続シートから引き離される。この引き離される上記インクリボンに弛みが生じると、上記インクリボンが上記包装用連続シートから垂直に離れるために印字不良が発生するおそれがある。このため、上記インクリボンの走行経路上に配置したテンションバーに上記インクリボンを掛け渡し、上記インクリボンが上記包装用連続シートから斜めに引き離されるようにして印字不良の発生を抑制している。上記テンションバーは回動可能に設けられ且つバネにより一方向に付勢されている。上記インクリボンが上記走行経路上で弛むと、上記バネの付勢力によってテンションバーが回動するので一定のテンションが確保される。そして、上記テンションバーが所定の位置まで回動すると、センサがそれを検知し、上記インクリボンを巻き取る巻取り部を回転させるモーターが始動して上記インクリボンが巻き取られる。そして、このようにして上記インクリボンが巻き取られると、上記テンションバーは上記インクリボンに押され上記バネの付勢に抗して反対側へ回動することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構造では、上記インクリボンを上記薬剤包装装置に装着するときに、上記インクリボンを上記テンションバーに正しく掛け渡す作業が要求されるため、ユーザにとって使い勝手が悪い。また、上記従来の構造では、上記テンションバーの周期的な揺動に応じて上記インクリボンの巻取りが間欠的に行われるため、印字の品質が低下するおそれがある。
【0007】
また、テンションバーは、片持ち支持で薬剤包装装置に支持されている。片持ち支持で支持すると、テンションバーの軸方向が、分包紙の搬送方向に対して直交する方向から多少ずれてしまうことがある。このずれが生じると、分包紙に均一にテンションを掛けることができなくなり、印字の品質が低下する。上記のずれは、テンションバーを両持ちとすれば解消できるが、両持ちとすると、テンションバーに分包紙を掛け渡し難くなるという問題がある。
【0008】
この発明は、上記の事情に鑑み、インクリボンにテンションを掛けるためのテンションバーが不要である薬剤包装装置を提供する。また、この薬剤包装装置にとって有用なインクリボンロールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の薬剤包装装置は、印字ヘッドでインクリボンと包装用連続シートとを互いに接触させて上記包装用連続シートに印字を行うとともに、上記包装用連続シートを用いて薬剤を1包分ずつ包装する薬剤包装装置において、
インクリボンロールの供給芯または巻取り芯に設けられた記録媒体から情報を読み取るとともに上記記録媒体に情報を書き込むリーダライタと、
上記インクリボンロールにおけるインクリボンを巻き取り方向に走行させる速度をV1、上記包装用連続シートの送り速度をV2とすると、V1>V2となるように、上記巻取り芯を支持する巻取り側支持軸を回転させる巻取りモーターを、上記記録媒体から読み取った情報であるインクリボンの使用量または残存量に基づいて制御する回転速度制御部と、
上記巻取りモーターの駆動力を上記巻取り側支持軸に伝達する駆動力伝達経路に設けられ、上記インクリボンと上記包装用連続シートとが互いに接触する印字時に、上記インクリボンを上記速度V2と同じ速度で走行させるためのトルク伝達制御部と、
上記インクリボンの使用により変化した上記インクリボンの使用量または残存量を示す情報を上記記録媒体に書き込む情報として上記リーダライタに出力する情報出力部と、
上記インクリボンロールの記録媒体には、上記インクリボンロールの使用量に対応した記憶エリアが複数あり、各記憶エリアを、随時に書き換え不能にすることを特徴とする。
【0010】
上記インクリボンロールの実際の使用量が、書換不能化処理された上記記憶エリアに対応する長さになっている場合、警告を出してもよい。
【0011】
上記インクリボンロールの実際の使用量と上記記録媒体に記録された使用量とを比較し、異なっている場合、上記記録媒体に記録された使用量を実際の使用量に書き換えてもよい。
【0012】
また、この発明のインクリボンロールは、上記薬剤包装装置によって書換不能化処理される記録媒体を有しており、この記録媒体は複数の記憶エリアを備えており、上記記憶エリアごとに書換不能化処理が行えることを特徴とする。
【0013】
上記インクリボンロールの終端に、非金属の反射テープからなる光反射領域を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明であれば、ユーザにとって面倒なインクリボンをテンションバーに掛け渡す作業が不要になる。また、上記インクリボンを一定速度で巻き取ることができるので、印字品質が向上する等の諸効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明の一実施形態に係る薬剤包装装置の概略構成を示した斜視図である。
【
図2】
図1の薬剤包装装置に設けられた印字包装ユニットを示した斜視図である。
【
図3】
図2に示した印字包装ユニットにおいて上記インクリボンカセットのカバー部等を外した状態を示した斜視図である。
【
図4】
図2に示した印字包装ユニットにおいて上記インクリボンカセットを取り外した状態を示した斜視図である。
【
図5】
図2に示した印字包装ユニット内の印字部の裏面側を示した斜視図である。
【
図6】
図1の薬剤包装装置の制御系を示したブロック図である。
【
図7】
図1の薬剤包装装置のインクリボンのロール径算定を説明する説明図である。
【
図8】
図1の薬剤包装装置の印字ヘッドと巻取りモーターの動作を示したタイミングチャートである。
【
図9】この発明の一実施形態に係る印字処理の概要を示したフローチャートである。
【
図10】この発明の一実施形態に係るインクリボン走行処理の概要を示したフローチャートである。
【
図11】この発明の一実施形態に係るインクリボンカセットを示した斜視図である。
【
図12】
図9に示したインクリボンカセットにおいて蓋及びカバー部を取外して蓋ロック部を露呈させた状態を示した斜視図である。
【
図13】
図9に示したインクリボンカセットにおいてインクリボンロールを露呈させた状態を示した斜視図である。
【
図14】この発明の一実施形態に係るインクリボンロールを示した斜視図である。
【
図15】
図9に示したインクリボンカセットの蓋ロック部を示した斜視図である。
【
図16】
図12に示したインクリボンロールにおける供給芯の内側筒及び外側筒を示した斜視図である。
【
図17】包装用連続シートロールの配置位置が異なる実施形態の印字包装ユニットを例示した斜視図である。
【
図18】
図12に示したインクリボンロールにおける内側の1/10と外側1/10を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この実施形態の薬剤包装装置1の本体内には、薬剤を種類ごとに収容するとともに処方箋に基づいて上記薬剤を1包分ずつ払い出すための薬剤収容払出ユニット11と、上記1包分ずつ払い出された薬剤を受け取るホッパー群12、13と、包装用連続シートロール2及びインクリボンカセット3が着脱可能に装着され、上記包装用連続シートロール2から供給される包装用連続シートSに印字を行い、この包装用連続シートSを用いて上記ホッパー群12、13から供給される薬剤を1包分ずつ包装する印字包装ユニット4と、を備える。上記印字包装ユニット4は、ヒンジによって上記本体内から引き出せるようになっている。
【0017】
図2は、上記包装用連続シートロール2及びインクリボンカセット3が装着された状態の上記印字包装ユニット4を示した斜視図である。また、
図5は上記印字包装ユニット4を裏面側から見た斜視図である。また、
図17は上記包装用連続シートロール2の配置位置が少し異なる形態の印字包装ユニット4を示した斜視図であるが、この
図17では包装部45も示している。この包装部45は、上記包装用連続シートSの開口から薬剤を導入するとともに、この導入した薬剤を封止するように上記包装用連続シートSを熱溶着する動作部である。上記包装用連続シートSは、2個のガイドシャフト4a(
図17では3個のガイドシャフト4a′)に掛かり、バックアップローラ4bと印字ヘッド4eの間を通り、さらにガイドシャフト4cに掛かるように通される。また、上記インクリボンカセット3内に収容されているインクリボンRは、上記印字包装ユニット4のテープガイド4d(
図2参照)によりガイドされ、上記バックアップローラ4bと上記印字ヘッド4eの間を通り、印字後に上記包装用連続シートSから離脱し、上記インクリボンカセット3内に戻る。
【0018】
図5に示したように、上記印字ヘッド4eが設けられるユニットは軸407を中心に揺動自在に支持されている。具体的には、リンク部材406と上記印字ヘッド4eとが上記軸407に取り付けられており、ヘッドソレノイド405がオンすると、リンク部材406が動作し、上記印字ヘッド4eが上記軸407を中心に回動する。そして、上記印字ヘッド4eは、上記バックアップローラ4b側に移動してインクリボンRを上記包装用連続シートSに押し当て、印字可能な状態を形成する。
【0019】
また、
図17に示したように、上記包装用連続シートSを案内する上記ガイドシャフト4cの近傍位置(上記包装用連続シートSの搬送方向の下流側)には、上記包装用連続シートSの搬送方向を上記包装部45の展開ガイド45aの直前で湾曲させる回転自在な湾曲ガイドローラ45b,45cが配置されている。上記展開ガイド45aの背面側には上記包装用連続シートSに薬剤を導入するホッパー装置が設けられている。上記展開ガイド45aは、二つ折りされた上記包装用連続シートSを展開して上記ホッパー装置の薬剤導出部(ノズル)を挿入するための開口を形成する。また、上記包装部45は、上記展開ガイド45aの下方に一対のヒータローラ45d,45eを備える。さらに、上記ヒータローラ45d,45eの下方には、図示しない送りローラが設けられる。これらヒータローラ45d,45eは、モーター、直動ギヤ、間欠ギヤ等からなる図示しない駆動機構により回転駆動される。上記ヒータローラ45d,45eにより、上記包装用連続シートSを、後述する送り速度V
2で走行させることができる。
【0020】
図3は
図2において上記インクリボンカセット3のカバー部3b等を外した状態を示した斜視図であり、
図4は
図2において上記インクリボンカセット3を取り外した状態を示した斜視図である。上記印字包装ユニット4に設けられている供給側支持軸41は、上記インクリボンカセット3の供給芯31を支持するものであり、この供給芯31の回転によって回転する。また、巻取り側支持軸42は、上記インクリボンカセット3の巻取り芯32を支持するものであり、この巻取り芯32を回転駆動する。
【0021】
上記巻取り側支持軸42は、
図5に示したように、巻取りモーター401および駆動力伝達経路402によって回転される。上記駆動力伝達経路402にはトルクリミッタ(トルク伝達制御部)403が設けられており、上記巻取り側支持軸42に一定以上の負荷が加わったときに駆動力伝達を遮断して上記巻取りモーター401を空回りさせる。上記の負荷は、上記印字ヘッド4eによって押される上記インクリボンRが上記包装用連続シートSの走行に引きずられてその走行速度と同速度(送り速度V
2)で走行しようとするときに生じる。さらに、上記巻取り側支持軸42には、当該巻取り側支持軸42の回転状態を検出するロータリエンコーダ(回転検出部)404の円板部404aが取り付けられている。そして、上記円板部404aの回転状態は、上記ロータリエンコーダ404の基盤404bに設けられた光センサよって検出される。上記ロータリエンコーダ404により、上記巻取り側支持軸42の回転が検出される。
【0022】
また、上記供給側支持軸41にも当該供給側支持軸41の回転状態を検出するロータリエンコーダ410の円板部411が取り付けられている。そして、上記円板部411の回転状態は、上記ロータリエンコーダ410の基盤412設けられた光センサによって検出される。上記ロータリエンコーダ410により、上記供給側支持軸41の回転が検出される。
【0023】
また、上記バックアップローラ4bには、その回転状態を検出するためのロータリエンコーダ4fが設けられている。
【0024】
上記インクリボンカセット3が装着される収容部の外側には板状の2枚のアンテナ43、44が設けられている。上記2枚のアンテナ43、44は、その電波送受信面が上記供給側支持軸41の周面に対面し(上記インクリボンカセット3が装着された状態では上記供給芯31の周面に対面し)且つ上記電波送受信面の向きが交差する(望ましくは90°配置となる)ように配置されている。
【0025】
図6は、上記のアンテナ43、44と上記供給芯31との位置関係並びに上記薬剤包装装置1の制御系を示したブロック図である。上記のアンテナ43、44は、無線通信式のリーダライタ54に接続されている。このリーダライタ54は、コントローラ5によって制御されるものであり、上記インクリボンカセット3内の上記供給芯31に設けられた無線通信式の記録媒体としてのICタグ(例えば、RFID:Radio Frequency Identification)100から情報を読み取るとともに上記ICタグ100に情報を書き込むようになっている。なお、上記情報の不正な書き換えを防止するために、上記情報を暗号化或いは圧縮して上記ICタグ100に書き込むようにしてもよい。
【0026】
上記コントローラ5は、マイクロコンピュータからなり、上記薬剤払出ユニット11を制御する薬剤払出制御部51として動作する他、上記巻取り側支持軸42の回転速度制御部52および書込情報出力部53としても機能する。
【0027】
上記回転速度制御部52は、上記インクリボンRを巻き取り方向に走行させる速度をV1、上記包装用連続シートSの送り速度をV2とすると、V1>V2となるように、上記インクリボンカセット3の巻取り芯32(巻取り側支持軸42)を回転させる上記巻取りモーター401を、上記ICタグ100から読み取った情報であるインクリボンの使用長(使用量)に基づいて制御する。この実施形態では、上記速度V1は上記速度V2の115%に設定しているが、この115%と異なる値を採用することもできる。ここで、上記インクリボンカセット3において、上記インクリボンRの使用長と、上記供給芯31に残存する上記インクリボンRの残存ロール径と、上記巻取り芯32に巻き取られた上記インクリボンRの巻取りロール径との間には、一定の関係が存在する。この関係については後で詳述する。
【0028】
上記一定の関係に基づき、上記インクリボンRの使用長の変化に応じて上記巻取り側支持軸42の回転速度を変更することで、上記インクリボンRを上記速度V1で走行させるような回転速度で上記巻取りモーター401を回転させることができる。また、上記トルクリミッタ403が設けられていることにより、上記ヘッドソレノイド405のオン時(上記印字ヘッド4eが上記インクリボンRを押圧する状態)において上記インクリボンRに一定のテンションを与えつつ上記インクリボンRを上記包装用連続シートSの送り速度V2で走行させることができる。
【0029】
上記トルクリミッタ403のオン/オフの閾値は以下のように設定される。すなわち、上記インクリボンRが上記包装用連続シートSの走行に引きずられて速度V2で走行する印刷状態で、上記インクリボンRを速度V1で引っ張っても上記インクリボンRにおける速度V2での走行を確保する。且つ、印字が終了し、上記ヘッドソレノイド405がオフになって上記インクリボンRが上記包装用連続シートSの走行に引きずられなくなる状態では、上記速度V1による上記インクリボンRの巻き取り状態を生じさせる。印字が終了すると上記巻取りモーター401は停止される。
【0030】
また、薬剤包装の実行中において上記インクリボンRが使用されていくので、この使用長を薬剤包装開始時の使用長に加算した合計使用長によって上記回転速度を再計算する。また、薬剤包装の実行中の上記インクリボンRの使用長は、上記インクリボンRにおける巻取り速度と巻取り時間とにより算出することができる。なお、新品のインクリボンロール30のICタグ100には、使用長がゼロであることを示す情報が記録されている。
【0031】
また、ICタグ100に、上記インクリボンRの種類(カラー、モノクロ等)、芯の外径または半径(供給芯31の外径または半径と巻取り芯32の外径または半径は同じとする)、インクリボンRの厚みなどの情報も記録することができる。このような情報が記録されていると、芯の外径およびインクリボンRの厚みが異なる場合でも対応可能となる。上記巻取り芯32にインクリボンRが巻き取られたときの巻取りロール径(ここでは半径とする)は、上記巻取り芯32の半径にインクリボンの積層厚み(インクリボンRの厚み×巻き数)を加算することで求めることができる。
【0032】
なお、巻取り芯32の側には上記のアンテナ43、44が無く、巻取り芯32の外径または半径をICタグ100から読み出せないため、巻取りロール径の算出に使う芯の外径または半径として、供給芯31のICタグ100に記録された芯の外径または半径を使用することになる。
【0033】
上記インクリボンRを巻き取り方向に走行させる速度V
1と上記包装用連続シートSの送り速度V
2との関係は、
図7に示した各部の符号を用いて以下の式1のように表すことができる。ここで、r
1は上記巻取り芯32の半径であり、r
2は上記インクリボンRの上記積層厚みであり、r
3は上記巻取りロール径(巻取り側のインクリボンロール30の半径(r
1+r
2))である。また、巻取り側支持軸42の回転速度をωで表す。
【0034】
[式1]
V1=V2×115%=2πr3×ω
【0035】
また、上記インクリボンRの使用長と上記積層厚みr
2と上記回転速度ωと上記ロータリエンコーダ404の1パルス当たりの巻取長P(1パルス当たりの使用長でもある)との関係の変化を表1に示している。
【表1】
【0036】
上記表1から分かるように、上記インクリボンRの使用長の変化に応じて上記巻取りロール径r3が変化し、この径の変化の各段階に基づいて上記巻取り側支持軸42の回転速度ωを変更することで上記速度V1を生じさせることができる。
【0037】
また、例えば、各段階で計数された上記ロータリエンコーダ404の出力パルス数の加算値から、上記インクリボンRの使用長(巻取長)の累計を計算することができ、印刷によって巻き取られた上記インクリボンRの長さを知ることができる。そして、上記印刷で使用された上記インクリボンRの長さから上記インクリボンRの新たな使用長を計算することができ、この新たな使用長がICタグ100に書き込まれる。
【0038】
上記ロータリエンコーダ404の出力パルス数の加算値(総パルス数)を上記インクリボンRの使用量(巻取量)としてICタグ100に書き込むようにしてもよい。ここで、上記巻取り側支持軸42(上記巻取り芯32)が1回転するときの上記ロータリエンコーダ404の出力パルス数は既知であり、上記1回転当たりの出力パルス数がカウントされる度に上記インクリボンロール30における上記巻取りロール径r3はインクリボンRの厚み分増加することになる。そして、上記ロータリエンコーダ404の総パルス数において、或る範囲のパルス数まではP1、次の範囲のパルス数まではP2のように対応することになる。したがって、この対応の情報に基づいて上記ICタグ100に書き込まれた総パルス数から上記インクリボンRの使用量(巻取量)を知ることができる。各段階の1パルス数あたりの使用量(巻取量)Pの情報は、薬剤包装装置1のメモリ55に記憶しておくことができる。
【0039】
各段階の1パルス数あたりの使用量(巻取量)Pの情報を用いなくても、上記速度V1を生じさせることができる。すなわち、上記ICタグ100に記憶されている上記ロータリエンコーダ404の総パルス数を当該ロータリエンコーダ404の1回転当たりの出力パルス数で除算すると、上記インクリボンRの使用量(巻取量)を表す上記巻取り芯32の総回転回数が求まる。この総回転回数は上記表1の段数番号に相当する。上記総回転回数の分だけ上記インクリボンRの厚みを加算して上記回転速度ωを設定することにより、上記速度V1を生じさせることができる。すなわち、上記ロータリエンコーダ404の総パルス数と、上記巻取り芯32の半径r1と、上記インクリボンRの厚みとによって上記速度V1を生じさせることができる。上記インクリボンRの厚み情報および上記巻取り芯32の半径r1の情報を薬剤包装装置1のメモリ55に記憶しておくこともできる。
【0040】
なお、上記表1に示している関係は、上記使用長の関係の他に、上記インクリボンRの残存長および上記供給芯31側の積層厚みと上記供給側支持軸41に設けられている上記ロータリエンコーダ410の1パルス当たりの供給長との関係にも対応している。上記インクリボンRの残存長は、新品のインクリボンロール30の全長を表す情報(新品時の供給側ロール径または表1の最下段に記載しているリボン周回数aでもよい)から使用長を減じることで算出できる。上記全長を表す情報は、薬剤包装装置1のメモリまたはICタグ100に記憶される。薬剤包装装置1の起動時において、上記のごとく全長を表す情報に基づく全長から、上記ICタグ100に記憶されている使用長を減算することで動作当初の残存長(表1参照)を求めた以降は、インクリボンRを供給側1周分の長さ使うたびに、インクリボンの厚み分、供給側ロールの径を小さくして新たな残存長を算出していくことができる。上記インクリボンRの供給側1周分の長さは、供給側のロール径(最初は初期径、その後は、その時の径)から算出することができる。初期径は、例えば、インクリボンロールの全長に対応するインクリボンRの積層厚みr2を表1から求め、求めたインクリボンの積層厚みr2に供給芯の半径r1を加算することで求めることができる。そして、径が分かると、上記表1に基づいて供給側1パルス当たりの供給長が分かる。上記1パルス当たりの供給長に、パルス数を乗じると、トータルの供給長が算出される。このように、上記供給長および巻取長の両方を算出すると、それらのおよその一致の結果を得ることで正常なリボン走行動作が行われていると判断できる一方、後述するように、それらが過度に相違するとの結果を得た場合には、リボン走行動作が正常でないとして、巻取り異常を警告する処理を行うことができる。
【0041】
ここで、例えば、10包分の印字を行うことにおいて、1~5包目のそれぞれの開始時の使用長が、表1の(1)の段階に対応し、6~10包目のそれぞれの開始時の使用長が、表1の(2)の段階に対応するものとする。1~5包目の印字動作中において、巻取り側の上記ロータリエンコーダ404の出力パルス数がN1であり、6~10包目の印字動作中において、上記ロータリエンコーダ404の出力パルス数がN2であるとする。この場合、上記インクリボンRの巻取長(使用長)は、P0×N1+P1×N2となる。また、上記のごとく、上記供給側支持軸41の回転状態を検出するロータリエンコーダ410の出力パルス数に基づいて印字動作中のインクリボンRの供給長を求めることができる。そして、上記コントローラ5は、上記巻取長と供給長との比(差)が異常値を示すか否かを判断する。薬剤包装装置1は、異常値が示されたときには警告を出す。このような異常値は、上記インクリボンRが切断されたときなどに発生する。この実施形態では、巻取長に対して供給長が2倍以上となったときに警報を出す。なお、例えば1.3倍といった低い値のときに警報を出すようにしてもよいが、あまりに低いと無駄に警報が出るおそれがある。また、この実施形態では、巻取長に対して供給長が0.6倍以下となったときにも警報を出す。このような事態は、ICタグ100に記録された誤った使用長(残量長)に基づいて巻取り制御が行われたときに生じる。
【0042】
メモリ55に上記インクリボンRの使用長に対する上記回転速度の情報を記録したデータテーブル55aを設けておいてもよい。この場合、上記回転速度制御部52は、上記インクリボンRの使用長を示す情報を読出アドレスとして上記データテーブル55aに与え、このデータテーブル55aから出力される回転速度の情報を取得することになる。そして、薬剤包装の実行中において上記インクリボンRが使用されていくので、この使用長を薬剤包装開始時の使用長に加算した合計使用長を、読出アドレスとして逐次上記データテーブル55aに与え、新たな回転速度の情報を取得する。なお、インクリボンロール30の種類ごとに上記データテーブル55aを設けておき、薬剤包装装置にセットされたインクリボンロール30の種類を上記ICタグ100から読み取るようにしてもよい。
【0043】
モーター制御部56は、上記回転速度制御部52の制御下で上記巻取りモーター401の駆動を制御する。すなわち、上記巻取り側支持軸42が上記回転速度ωで回転するように上記巻取りモーター401の回転を制御する。
【0044】
上記書込情報出力部53は、上記インクリボンRの使用により変化した上記インクリボンの合計使用長の情報を上記リーダライタ54に出力する。この情報は上記リーダライタ54によって上記ICタグ100に書き込まれる。例えば、上記回転速度制御部52は、薬剤包装の実行中に使用される上記インクリボンRの使用長を薬剤包装開始時の使用長に加算した合計使用長を、上記書込情報出力部53に逐次与える。上記書込情報出力部53は、上記合計使用長を、上記リーダライタ54に供給することになる。上記リーダライタ54は上記合計使用長を上記ICタグ100に逐次書き込む。次回、当該薬剤包装装置1は、上記ICタグ100から取得した上記インクリボンRの使用長に基づいて印字処理を実行すればよい。
【0045】
図8に上記ヘッドソレノイド405のオン/オフ(印字ヘッド4eがバックアップローラ4b側に移動して上記インクリボンRを押圧する状態とそうでない状態)と、上記巻取りモーター401のオン/オフの関係を示している。上記ヘッドソレノイド405がオンすると同時に上記巻取りモーター401はオンする。なお、
図8に記載のS4,S12,S7,S15は、
図9および
図10のフローチャートにおけるステップS4,S12,S7,S15のタイミングに対応する。
【0046】
上記ヘッドソレノイド405がオンしてから第1期間α1の後に印字ヘッド4eに印字データを転送して印字ヘッド4eを発熱させる。すなわち、上記ヘッドソレノイド405をオンにして上記包装用連続シートSと上記インクリボンRとを少し走行させた後に印字(インクの熱転写動作)をスタートさせる。ここで、上記ヘッドソレノイド405がオンすると同時に印字をスタートさせた場合には、印字ヘッド4eが上記インクリボンRを上記バックアップローラ4b側に押圧した直後に印字が開始されることになり、印字品質(インクの熱転写品質)が安定しなくなる。この実施形態では、上記第1期間α1を設けたことで印字品質を安定させることができる。上記第1期間α1は、例えば、上記インクリボンRが7mm送られる期間に相当し、上記ヘッドソレノイド405がオンしてからの上記バックアップローラ4bにおける上記ロータリエンコーダ4fの出力パルス数をカウントすることにより判定することができる。
【0047】
上記第1期間α1の後の一包の画像寸法分の期間において、上記印字データの転送が完了して印字ヘッド4eの発熱が終了する。ここで、上記包装用連続シートSに縁ずれ(上記包装用連続シートSを2つ折りにした状態でシート縁がきれいに揃わない状態)が生じるのを回避するため、この実施形態では、一包分の印字が終了する毎に、上記ヘッドソレノイド405をオフし、上記包装用連続シートSに対する押圧を解除して、上記縁ずれを解消するようにしている。
【0048】
ただし、上記画像寸法分の期間(印字ヘッド4eの発熱期間)が終了した直後に上記ヘッドソレノイド405をオフにして上記印字ヘッド4eを離間動作させると、上記画像寸法分の最後の印字部分と最後以外の印字部分とで、上記包装用連続シートSと上記インクリボンRとの接触状態(例えば、接触時間)に差異が生じ、印字品質(インクの熱転写品質)に不均一が生じる。
【0049】
そこで、この画像寸法分の期間の終了後、第2期間α2が経過した後に、上記ヘッドソレノイド405をオフする。これにより、上記画像寸法分の最後の印字部分と最後以外の印字部分とで、上記包装用連続シートSと上記インクリボンRとの接触状態に差異がなくなり、印字品質を一定にすることができる。上記第2期間α2は、例えば、上記インクリボンRが4mm送られる期間に相当し、画像寸法分の期間が終了してからの上記ロータリエンコーダ4fの出力パルス数をカウントすることにより判定することができる。また、画像寸法分の期間についてもそれに相当する上記ロータリエンコーダ4fの出力パルス数は既知であるので、当該パルス数をカウントしたときに画像寸法分の期間が終了したと判断することができる。
【0050】
また、上記ヘッドソレノイド405をオフして直ぐに上記巻取りモーター401をオフすると、上記インクリボンRの巻取り不足が生じるおそれがある。このため、上記ヘッドソレノイド405をオフした後、第3期間α3が経過してから上記巻取りモーター401をオフするようにしている。すなわち、上記ヘッドソレノイド405をオフした後に上記インクリボンRを少し走行させ、上記インクリボンRの巻取り不足が生じるのを防止している。また、上記第3期間α3が存在することにより、上記インクリボンRが上記包装用連続シートSから適切に剥離することになる。上記第3期間α3は、例えば、40ミリ秒に設定され、上記ヘッドソレノイド405をオフにしてからタイマーをスタートさせることで計測している。
【0051】
図9は上記コントローラ5が行う印字処理の概要を示したフローチャートである。上記コントローラ5は、患者名や服用日時等が記される上記画像のビットマップ化の処理を行う(ステップS1)。そして、上記コントローラ5は、上記ヒータローラ45d,45eよって分包紙(包装用連続シートS)を走行させながら1包ずつ熱融着するための処理を開始するとともに(ステップS2)、分包紙が規定の位置に送られたか、すなわち分包紙の印字の範囲(第1期間α1+画像寸法分+第2期間α2)の先頭位置が上記印字ヘッド4eの位置に達したかを例えば上記ヒータローラ45d,45e動作に基づいて判断し(ステップS3)、分包紙が上記先頭の位置に送られたと判断したときに、上記ヘッドソレノイド405をオンにする(ステップS4)。上記ヘッドソレノイド405がオンすると、上記印字ヘッド4eによって上記インクリボンRが分包紙に押し当てられ、上記インクリボンRは上記速度V
2で走行することになる。
【0052】
さらに、上記コントローラ5は、上記印字ヘッド4eに上記ビットマップ化により得られた印字データを転送し、上記印字ヘッド4eを発熱させる(ステップS5)が、この実施形態では上記のように、上記第1期間α1の経過を待って上記印字ヘッド4eを発熱させている。そして、上記コントローラ5は、分包紙が印字の範囲分送られたかを判断し(ステップS6)、未だであると判断したときにはステップS5に処理を進める一方、送りが完了したと判断したときには上記ヘッドソレノイド405をオフにする(ステップS7)。上記コントローラ5は、次の印字があるときにはステップS1に処理を進める。
【0053】
図10は上記印字処理に際して行われるインクリボンRの走行制御の概要を示したフローチャートである。上記コントローラ5は、ICタグ100からインクリボンRの使用長を示す情報を読み出し(ステップS10)、この情報に基づいて、上記速度V
1が得られるように、上記巻取り側支持軸42の回転速度を計算する(ステップS11)。そして、上記コントローラ5は、
図9の印字処理で上記ヘッドソレノイド405がオンされたと同時に、上記巻取り側支持軸42を上記の計算した回転速度ωで回転させて、上記インクリボンRを巻き取る(ステップS12)。
【0054】
上記コントローラ5は、上記バックアップローラ4bにおける上記ロータリエンコーダ4fの出力パルス数をカウントし(ステップS13)、上記インクリボンRが上記印字の範囲分巻き取られたと判断した後、さらに第3期間α3が経過したかを判断する(ステップS14)。上記ステップS14でノーとされたときには上記判断処理を継続し、イエスとされたときには上記巻取りモーター401をオフし、上記巻取り側支持軸42の駆動を停止して上記インクリボンRの巻取りを終了する(ステップS15)。そして、上記コントローラ5は、新たに巻き取られたインクリボンRの長さにより新たに算出した使用長をICタグ100に書き込む(ステップS16)。
【0055】
このように、上記インクリボンカセット3に着脱可能に装着されるインクリボンロール30の供給芯31に設けられたICタグ100からインクリボンRの使用長を示す情報が読み取られる。そして、この情報に基づいて、上記送り速度V2よりも速い速度V1を得るための回転速度ωが上記巻取り側支持軸42に生じるように、上記巻取りモーター401が制御される。これにより、テンションバーを用いなくても、上記インクリボンRを弛ませることなく巻き取ることができる。したがって、薬剤包装装置1にテンションバーを配置する必要がなくなり、上記インクリボンRを上記テンションバーに掛け渡す作業が不要になる。また、上記インクリボンRを間欠的に巻取るのではなく、一定速度で巻き取ることができるので、印字の品質が向上する。
【0056】
そして、上記の回転速度ωが上記巻取り側支持軸42に生じるように上記巻取りモーター401が制御されるとしても、上記トルクリミッタ403を設けているので、印刷時に上記インクリボンRに過度な張力が加わるのを防止しつつ、上記インクリボンRを上記包装用連続シートSの送り速度V2で走行させることができる。
【0057】
また、インクリボンRと一体となった供給芯31のICタグ100に使用長が記憶されることになるので、使用途中のインクリボンカセット3に入れ替えた場合であっても、その使用途中のインクリボンカセット3の供給芯31のICタグ100の使用長に応じて、インクリボンRの送り速度を適切に制御できる。なお、上記インクリボンRの使用長ではなく、上記インクリボンRの残存長を示す情報をICタグ100に記録し、この残量長を示す情報に基づいて、上記インクリボンRを一定の速度で巻き取ることも可能である。また、上記インクリボンRのロール径の情報を使用量または残存量としてICタグ100に記録するようにしてもよい。さらに、上記インクリボンRの巻き数(周回数)情報を使用量または残存量としてICタグ100に記録するようにしてもよい。
【0058】
なお、上記速度V1と上記包装用連続シートSの送り速度V2との関係において、V1>V2であっても、V1とV2の差が小さすぎると、薬剤包装装置の機器毎に上記包装用連続シートSの搬送速度が若干異なり、また、上記巻取り側支持軸42の回転速度に多少の変動があるなどの理由で、実際速度において速度V1が送り速度V2よりも小さくなることがある。このようなことが生じると、上記インクリボンRに弛みが発生する。このため、例えばV1>V2×105%としておくのが望ましい。
【0059】
一方、上記インクリボンRは、
図8に示した第3期間α3の開始前では送り速度V
2で走行し、第3期間α3の開始後に速度V
1で走行するため、速度V
1と送り速度V
2の差が大きすぎると、上記印字ヘッド4eによって上記インクリボンRのインクが上記包装用連続シートSに熱転写されてから上記インクリボンRが剥離するまでの時間が短過ぎてしまい、インクが十分に上記包装用連続シートSに転写されず、印字がかすれるおそれがある。また、第3期間α3において上記インクリボンRは速度V
1で実際に巻き取られることになるため、上記インクリボンRに第3期間α3に対応した未使用領域が発生し、速度V
1が速すぎると、上記未使用領域が長くなる。このため、例えばV
1<V
2×150%としておくのが望ましい。
【0060】
ところで、薬剤包装装置の機器毎に上記包装用連続シートSの搬送速度が相違すること、および上記巻取り側支持軸42の回転速度に変動が生じることは、上記薬剤包装装置1が一層高精度になることで解消可能である。このため、上記速度V1と上記包装用連続シートSの送り速度V2との関係において、V1=V2とする制御を行うようにしてもよいものである。或いは、上記速度V1と上記包装用連続シートSの送り速度V2との関係において、V1をV2に近似させる(例えばV1=V2×99%)制御を行うようにしてもよい。このような制御を行う場合には、上記駆動力伝達経路402にトルクリミッタ(トルク伝達制御部)403を設けない構成を採用することができる。
【0061】
図11は上記インクリボンカセット3を示した斜視図である。また、
図12は
図11において上記インクリボンカセット3の収容空間を塞ぐ蓋3a及びカバー部3bを取り外す一方で、上記蓋3aに設けられた蓋ロック部33は取り外さずに示した斜視図である。また、
図15は上記蓋ロック部33を下側から見た斜視図である。
【0062】
上記蓋ロック部33は、一対の可動に設けられたロック動作部33a,33aから成る。各上記ロック動作部33aは上記蓋3a上に形成されたガイドレールにより案内され、互いに近づく方向及び遠ざかる方向に移動することができる。また、上記一対のロック動作部33a間にはギヤ33bが配置されており、このギヤ33bは上記蓋3aに設けられた軸により支持されている。上記ギヤ33bには、これを両側から挟み込むように上記一対のロック動作部33aのラック部33cが向かい合って歯合している。また、上記一対のロック動作部33a間には、2本のコイルバネ33dが縮装されている。
【0063】
上記一対のロック動作部33aが上記コイルバネ33dの付勢に抗して互いに近づくと、各ロック動作部33aに形成されている突起部33eが上記インクリボンカセット3の本体の係止穴から外れるため、上記蓋3aを取り外すことができる。
【0064】
ただし、上記カバー部3bは、
図12に示したように、上記一対のロック動作部33aにおける1つのロック動作部33aだけを露呈させるように上記蓋ロック部33上に設けられているので、上記一対のロック動作部33aの両方に指を掛けることはできない。このため、ユーザが上記インクリボンカセット3を薬剤包装装置1から取り出すときに上記一対のロック動作部33aを同時に摘むことができず、上記インクリボンカセット3の上記蓋3aだけが外れてしまうのを軽減することができる。一方、上記インクリボンカセット3の上記蓋3aを外す際には上記露呈されている1つのロック動作部33aをしっかりと操作して上記蓋3aを外すことができる。
【0065】
図13は、上記インクリボンカセット3内の収容空間及びこの収容空間に装着された上記インクリボンロール30を示した斜視図である。また、
図14は、上記インクリボンロール30を示した斜視図である。上記インクリボンロール30は、上記供給芯31と上記インクリボンRとこのインクリボンRの両端に設けられたフック部30aとから成り、消耗品として供給される。上記フック部30aは上記供給芯31及び上記巻取り芯32に着脱自在に係合する。上記薬剤包装装置1に装着されていた上記インクリボンロール30のインクリボンRを使い切ると、この使用済みインクリボンRの上記フック部30aを上記供給芯31から取り外し、上記使用済みインクリボンRを上記巻取り芯32と一緒に処分する。一方、上記フック部30aが外された上記供給芯31は、上記巻取り側支持軸42に移され、巻取り芯32として再利用される。ユーザは、新たなインクリボンロール30の供給芯31を上記供給側支持軸41に装着し、インクリボンRの先端のフック部30aを上記再利用される巻取り芯32に係止する。
【0066】
このように、上記インクリボンRの両端に上記供給芯31に着脱自在に係合できるフック部30aを有した構成であれば、上記インクリボンRを使い切った供給芯31を巻取り芯32として再利用し、新たに装着されるインクリボンロール30の上記フック部30aを上記再利用される巻取り芯(インクリボンを使い切った後の供給芯)に係合することができるので、廃棄される芯の数を少なくすることができる。
【0067】
また、上記
図13に示したように、上記インクリボンカセット3には、上記インクリボンRの表面に接触する金属等からなる導電部35が設けられている。そして、上記薬剤包装装置1には、上記インクリボンカセット3が装着されたときに上記導電部35に接触するアース部が設けられている。このため、上記インクリボンRに生じた静電気は上記導電部35及び上記アース部を経て上記薬剤包装装置1において除去される。また、上記インクリボンカセット3は、ガイド部材36を備えていてもよい。このガイド部材36は、上記インクリボンRが掛け渡される上記供給芯31と上記巻取り芯32の両側に跨がるように位置し、上記インクリボンRの走行時の蛇行を防止する。なお、このガイド部材36は、上記供給芯31と上記巻取り芯32の一方の側に位置するものでもよい。また、上記ガイド部材36を装着することができる位置(インクリボンRの幅方向の位置)を複数設けておくと、インクリボンRの幅に応じて上記ガイド部材36の装着位置を変更することが可能になり、様々な幅のインクリボンRの蛇行を防止できる。
【0068】
図16は、上記供給芯31における内側筒31aと外側筒31bを示した斜視図である。上記供給芯31は、上記内側筒31aが上記外側筒31bに圧入(係合でもよい)される構造を有する。この圧入状態において、上記内側筒31aの外側表面と上記外側筒31bの内側表面との間には隙間が形成される。上記ICタグ100は、上記隙間に設けられており、この実施形態では上記内側筒31aの外側表面に接着されているが、上記外側筒31bの内側表面に接着してもよい。このような構造であると、上記供給芯31の組み立て後に上記ICタグ100の不良が判明しても、上記供給芯100を31aと外側筒31bに分解して不良のICタグを剥がし、新たなICタグを接着して上記供給芯31を組み直すことができる。また、上記ICタグ100が供給芯31の表面に露呈されないので、上記ICタグ100が損傷しにくいという利点がある。
【0069】
なお、上記インクリボンロール30に捲回されている上記インクリボンRの後端の所定長領域には光反射領域が形成されている。上記薬剤包装装置1は、光センサによって上記光反射領域を検出すると、上記インクリボンRの終了を判定する。上記光反射領域は、非金属の反射テープ(白色樹脂テープ等)からなっているので、上記光反射領域が金属からなる場合に比べ、上記リーダライタ54と上記ICタグ100との間で送受される電波の減衰を抑制できることになる。
【0070】
また、上記供給芯31を支持し回転する供給側支持軸41の全部または一部は、電波を吸収しにくい非金属(樹脂や木)により形成されている。このよう非金属を採用した構成であれば、供給側支持軸41が金属で形成された構造に比べ、上記リーダライタ54と上記ICタグ100との間で送受される電波の減衰を抑制できることになる。
【0071】
また、ICタグ100のアンテナを上記供給芯31の軸方向に長くして面積を増やすと通信可能距離を長くすることができる。また、上記ICタグ100として、そのアンテナが上記供給芯31の上記内側筒31aのほぼ全周に渡る大きさを有するものを採用する場合には、上記アンテナ43、44のうちの一つのアンテナだけを配置する構成を採用することも可能である。また、上記内側筒31aの外周に沿うループ状のアンテナを設ける場合には、このループ状のアンテナに対面する一つのアンテナだけを配置する構成を採用することも可能である。
【0072】
また、上記ICタグ100の記憶領域には、上記インクリボンRの使用長が記録されるが、上記使用長の記憶エリアを複数設けることができる。この実施形態では、10個の記憶エリアを上記ICタグ100に設けており、且つ、上記記憶エリアは、上記コントローラ5の制御でロック処理(書き換え不能化処理)が行えるようになっている。1つの記憶エリアは、上記インクリボンロール30を1巻(本)使った場合の巻取り側支持軸42のロータリエンコーダ404の総パルス数の1/10(上記インクリボンロール30の全周回数aの1/10の周回数)に対応している。なお、
図18に示しているように、上記インクリボンロール30の内側の1/10と外側の1/10では、リボン長が異なることになる。
【0073】
上記の場合、薬剤包装装置1は、上記ロータリエンコーダ404の総パルス数の1/10以内の使用長を算出して第1の記憶エリアに記憶する間は、第1の記憶エリアに記録されている使用長を、新たに算出した使用長を用いて書き換えていくことになる。そして、上記ロータリエンコーダ404の総パルス数の1/10を超える使用長を算出すると、上記第1の記憶エリアをロックする処理を行い、第2の記憶エリアに使用長を記録していく。以後同様に、使用長が増加して該当の記憶エリアから外れると、その記憶エリアはロックされ、次の記憶エリアに使用長が記録されていく。
【0074】
すなわち、上記ICタグ100には、使用長を記録する複数の記憶エリアが設けられており、使用長の増加に応じて段階的に記憶エリアがロックされ、新たな記憶エリアへの記録が行われていくようになっている。このため、仮に、上記第2の記憶エリアに使用長が記録されている段階で、新たに算出した使用長が上記第1の記憶エリアに記録するような値となった場合でも、このような値の使用長は上記第2の記憶エリアに記録されず、しかも上記第1の記憶エリアはロックされているので、上記第1の記憶エリアへの記録も行われないことになる。このような場合、薬剤包装装置1は、警告を出す。
【0075】
ここで、上記包装用連続シートSに対して印字処理がなされても印字量が僅かである場合(例えば、ビットマップの印字データの中で、実際の印字領域が僅かである場合)、インクリボンRがもったいないという理由で、ユーザが手で上記インクリボンRを巻き戻し、再度使用することが考えられる。しかしながら、既に使用したインクリボンの領域を巻き戻して印字を行うと、インクが既に消失している箇所において例えば「8」の字がかすれて「3」に見えるなど、適正な印字が行われないおそれがある。
【0076】
そこで、薬剤包装装置1は、上記インクリボンカセット3(途中まで使用したものも含む)がセットされたことを検知した後、上記巻取り側支持軸42を例えば3回転させて、その間の供給側支持軸41の回転量Zに基づいて、上記インクリボンカセット3の上記インクリボンロール30の使用長を算出する。供給側と巻取側の回転量の関係は下記の式2の通りとなる。
【0077】
[式2]
2π×巻取り側ロール半径×3回転=2π×供給側ロール半径×回転量Z
【0078】
上記回転量Zは、供給側のロータリエンコーダ410のパルス数から判断できるので、巻取り側と供給側の径の比を算出することができる。そして、上記径の比と使用長とが予め登録されているデータテーブルを薬剤包装装置1の例えばメモリ55に格納しておけば、上記データテーブルと上記算出した径の比とから使用長を導出することができる。薬剤包装装置1は、導出した使用長と上記ICタグ100に書き込まれている使用長との間に所定量以上の差異が存在すれば、上記導出した使用長を優先採用し、この導出した使用長を用いて上記ICタグ100に記録されている使用長を書き換える。すなわち、薬剤包装装置1は、セットされているインクリボンカセット3の巻取り芯32を所定の数だけ回転させて上記インクリボンロール30の使用長を判断する処理と、上記インクリボンカセット3の上記ICタグ100から上記インクリボンロール30の使用長を読み出す処理と、両使用長を比較する処理と、比較結果に基づいて上記ICタグ100に記録されている使用長を用いるか或いは書き換える処理と、を行う。
【0079】
ここで、薬剤包装装置1は、使用長が減少してしまう方向に変更される場合でも、この変更される使用長の値が該当の記憶エリアから外れていない値ならば、この変更された使用長を上書きすることになる。しかしながら、使用長の値が該当の記憶エリアから外れる値である場合は、以前の記憶エリアはロックされているので、上記変更する使用長を記録することはできない。したがって、過度に上記インクリボンRが巻き戻されたような場合には、この巻き戻しによって変更(減少)された使用長は上記ICタグ100に記録できない。薬剤包装装置1は、このように記録が実行できない場合には、上記インクリボンカセット3が不正であることを示す警告処理を実行する。これにより、適正な印字が行われない事態を防止できるようになる。
【0080】
なお、上記の例では、薬剤包装装置1は、上記インクリボンカセット3がセットされたことを検知したときに、上記回転量Zから使用長を算出する処理を実行したが、この算出処理の実行タイミングは、上記インクリボンカセット3がセットされたタイミングに限定されるものではない。
【0081】
また、薬剤包装装置1は、上記インクリボンカセット3が正しくセットされたことをセンサで検知できたことを条件に、上記ICタグ100に対する通信を行うようにしている。
【0082】
また、上記の例では、薬剤包装装置1は、上記インクリボンRの走行制御において上記供給芯31に設けられたICタグ100から情報を読み取るとともに上記ICタグ100に情報を書き込むようにしたが、これに限らない。薬剤包装装置1は、上記インクリボンRの走行制御において上記巻取り芯32に設けられたICタグ100から情報を読み取るとともにこのICタグ100に情報を書き込むようにしてもよい。
【0083】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 薬剤包装装置
11 薬剤払出ユニット
2 包装用連続シートドラム
3 インクリボンカセット
3a 蓋
3b カバー部
30 インクリボンロール
30a フック部
31 供給芯
31a 内側筒
31b 外側筒
32 巻取り芯
33 蓋ロック部
33a ロック動作部
4 印字包装ユニット
4e 印字ヘッド
4b バックアップローラ
4c ロータリエンコーダ
41 供給側支持軸
42 巻取り側支持軸
43 アンテナ
44 アンテナ
401 巻取りモーター
402 駆動力伝達経路
403 トルクリミッタ(トルク伝達制御部)
404 ロータリエンコーダ
405 ヘッドソレノイド
410 ロータリエンコーダ
5 コントローラ
52 回転速度制御部
53 書込情報出力部
54 リーダライタ
55 メモリ
55a テーブル
56 モーター制御部
100 ICタグ(記録媒体)
R インクリボン
S 包装用連続シート