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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】誘導加熱用の出力変成器
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20220517BHJP
   H01F 27/16 20060101ALI20220517BHJP
   H05B 6/04 20060101ALI20220517BHJP
   H05B 6/42 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H01F30/10 N
H01F27/16
H01F30/10 S
H05B6/04 301
H05B6/42
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018008495
(22)【出願日】2018-01-23
(65)【公開番号】P2019129192
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591195994
【氏名又は名称】株式会社ミヤデン
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英司
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-347018(JP,A)
【文献】特開平11-243020(JP,A)
【文献】実開昭53-141318(JP,U)
【文献】特開2008-210972(JP,A)
【文献】特開2007-027216(JP,A)
【文献】特開2002-334808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H05B 6/04
H05B 6/42
H01F 27/16
H01F 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部分に開口を有し略板状に形成されて被加熱物に応じた形態の加熱コイルが接続される二次導体と、該二次導体の開口に貫通状態で配設されたコアと、該コアの前記二次導体からの突出部側に所定回数巻回配設された一次導体と、前記二次導体、コア及び一次導体の外側を覆う筒状ケースと、該筒状ケースの一次導体側の開口端部及び二次導体側の開口端部を閉塞する一対の蓋体と、を備え、
前記一次導体側の開口端部を閉塞する蓋体に、前記筒状ケース内に冷却水を循環供給可能な供給部と排出部が配設されて密閉状態の前記筒状ケース内に冷却水を循環供給することで、当該筒状ケース内に配設された前記一次導体が冷却可能に構成されると共に、前記供給部と排出部が前記一次導体に高周波電流を供給可能な機能を有することを特徴とする誘導加熱用の出力変成器。
【請求項2】
前記コアの外側で前記筒状ケースの内側にリングコアが配設され、該リングコアの内側に前記一次導体が配設されていることを特徴とする請求項1に記載の誘導加熱用の出力変成器。
【請求項3】
前記供給部と排出部は、前記二次導体で二分割状態とされた前記筒状ケース内の各空間に対応して配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の誘導加熱用の出力変成器。
【請求項4】
前記供給部を介して前記空間に供給される冷却水の水量や水圧は、前記筒状ケース内の状態に応じて当該筒状ケース内の一方の空間から他方の空間に循環流通するように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の誘導加熱用の出力変成器。
【請求項5】
前記筒状ケースの二次導体側の開口端部を閉塞する蓋体を介して、前記加熱コイルのパイプ状の二次導体に電気的に接続されると共に、該加熱コイルのパイプ内部に、前記供給部から前記筒状ケース内に供給された冷却水が循環供給されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の誘導加熱用の出力変成器。
【請求項6】
前記一次導体は、板状、棒状、扁平状の中実導体を所定の間隔を有して巻回することで形成されるか、外周面を絶縁材で覆った導体を巻回することで形成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の誘導加熱用の出力変成器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波加熱装置、高周波焼入れ装置等の誘導加熱装置に使用して好適な誘導加熱用の出力変成器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の出力変成器は、例えば特許文献1に開示されている。この出力変成器は、角銅パイプにより略板状でコ字状凹部を有する二次コイルと、この二次コイルのコ字状凹部内に配設された略直方体形状のコアと、このコアの外側に配設されたリングコアと、前記コアの二次コイルの上下面から突出する突出部と前記リングコアとの間に巻回されると共に丸銅パイプの外周面が絶縁材で被覆された一次コイル等を有して、二次コイルに角銅パイプからなる加熱コイルを接続するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3644238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような出力変成器にあっては、一次コイルと二次コイル及び加熱コイルが高周波電流の通電により発熱し易いことから、これらを冷却するために、各コイルを丸銅パイプや角銅パイプで形成して各パイプの内部に冷却水を循環供給するようにしている。そのため、特に変成器本体内に配設される導体としての巻き数の多い一次コイルや二次コイルに銅パイプを使用する必要がある。
【0005】
その結果、各コイルを銅パイプ以外の他の形態の導体を使用することができず、各パイプのより効果的な冷却(特に巻き数の多い一次コイルの冷却)が困難であると共に、例えば被加熱物の形態に応じた効率的な誘導加熱状態が得られる導体を使用することも困難で、変成器自体の効率を十分に高めることが難しい。また同時に、銅パイプ内に高圧の冷却水を循環供給する必要があることから、その構成が複雑となったり冷却水自体の使用量が多くなったり水圧を高める必要がある等、変成器自体がコスト高になり易くまた省エネの面でも好ましくない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、各種形態の一次導体や二次導体の使用を可能とし、各導体を効果的に冷却しつつ効率的な誘導加熱状態が容易に得られる等、変成器自体の効率を十分に高め得ると共に省エネやコストの面等でも優れた誘導加熱用の出力変成器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成すべく、本発明のうち請求項1に記載の発明は、中央部分に開口を有し略板状に形成されて被加熱物に応じた形態の加熱コイルが接続される二次導体と、該二次導体の開口に貫通状態で配設されたコアと、該コアの前記二次導体からの突出部側に所定回数巻回配設された一次導体と、前記二次導体、コア及び一次導体の外側を覆う筒状ケースと、該筒状ケースの一次導体側の開口端部及び二次導体側の開口端部を閉塞する一対の蓋体と、を備え、前記一次導体側の開口端部を閉塞する蓋体に、前記筒状ケース内に冷却水を循環供給可能な供給部と排出部が配設されて密閉状態の前記筒状ケース内に冷却水を循環供給することで、当該筒状ケース内に配設された前記一次導体が冷却可能に構成されると共に、前記供給部と排出部が前記一次導体に高周波電流を供給可能な機能を有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、前記コアの外側で前記筒状ケースの内側にリングコアが配設され、該リングコアの内側に前記一次導体が配設されていることを特徴とする。また、請求項3に記載の発明は、前記供給部と排出部が、前記二次導体で二分割状態とされた前記筒状ケース内の各空間に対応して配設されていることを特徴とする。
【0009】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記供給部を介して前記空間に供給される冷却水の水量や水圧が、前記筒状ケース内の状態に応じて当該筒状ケース内の一方の空間から他方の空間に循環流通するように設定されていることを特徴とする
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、前記筒状ケースの二次導体側の開口端部を閉塞する蓋体を介して、前記加熱コイルのパイプ状の二次導体に電気的に接続されると共に、該加熱コイルのパイプ内部に、前記供給部から前記筒状ケース内に供給された冷却水が循環供給されることを特徴とする。また、請求項6に記載の発明は、前記一次導体が、板状、棒状、扁平状の中実導体を所定の間隔を有して巻回することで形成されるか、外周面を絶縁材で覆った導体を巻回することで形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のうち請求項1に記載の発明によれば、二次導体中央の開口に貫通状態で配設されたコア、このコアの二次導体からの突出部外側に巻回配設された一次導体、及び筒状ケースと蓋体等を備え、筒状ケースの一次導体側の開口端部を閉塞する蓋体を介して、密閉状態の筒状ケース内に冷却水を循環供給することで、筒状ケース内に配設された一次導体が冷却可能に構成されているため、巻き数の多い一次導体を筒状ケース内で冷却水に浸漬状態で冷却できて各種形態の導体の使用を可能にし、導体の効果的な冷却が可能で効率的な誘導加熱状態が容易に得られる等、変成器自体の効率を十分に高めることができる。また、冷却水を供給するための構成を簡略化して変成器自体を安価に形成できると共に、低圧の冷却水を使用できて省エネの面でも優れた変成器を得ることができる。
【0012】
また、一次導体側の蓋体に、筒状ケース内に冷却水を循環供給可能な供給部と排出部が配設され、この供給部と排出部が一次導体に高周波電流を供給可能な機能を有するため、冷却水の供給部と排出部に冷却水の供給排出機能と高周波電流の供給機能の両機能を持たせることができて、変成器自体の機構をより簡略化して安価に構成することができる
【0013】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、コアの外側で筒状ケースの内側にリングコアが配設され、このリングコアの内側に一次導体が配設されているため、リングコアで各導体から放射される磁力線の筒状ケース外への漏洩が防止され、変成器自体の効率を一層高めることができると共に、筒状ケースを円筒形状とすることができて、使い勝手に優れた変成器を得ることができる
【0014】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加え、供給部と排出部が、二次導体で二分割状態とされた筒状ケース内の各空間に対応して配設されているため、筒状ケースの一方の空間を冷却水の供給空間とし他方の空間を排出空間として、筒状ケース内に冷却水を良好に循環流通(循環供給)させることができ、各導体の冷却効率を一層高めることができる。
【0015】
さらに、請求項4に記載の発明によれば、請求項3に記載の発明の効果に加え、供給部と排出部を介して空間に供給される冷却水の水量や水圧等が、筒状ケース内の状態に応じて冷却水が当該筒状ケース内の一方の空間から他方の空間に循環流通するように設定されているため、筒状ケース内に冷却水を一層良好に循環流通させることができて、各導体やコア等の冷却効果をより一層高めることができる。
【0016】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし4に記載の発明の効果に加え、筒状ケースの二次導体側の開口端部を閉塞する蓋体を介して、パイプ状の加熱コイルが二次導体に電気的に接続され、この加熱コイルのパイプ内部に、筒状ケース内に供給された冷却水が二次導体側の蓋体等から循環供給されるため、筒状ケース内に供給された冷却水を有効利用しつつ、加熱コイルを効率的に冷却することができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明によれば、請求項1ないし5に記載の発明の効果に加え、一次導体が、板状、棒状、扁平状の中実導体を所定の間隔を有して巻回することで形成されるか、外周面を絶縁材で覆った導体を巻回することで形成されているため、導体として板状等の中実導体を使用することで、巻き数を最適最小に設定して加熱効率を一層高めることができ、また、被覆銅線のように外周面を絶縁材が覆った導体を使用することで、巻き数(巻き数比)を最大とし得て変成器自体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係わる誘導加熱用の出力変成器の一実施形態を示す概略断面図
図2】同図1のA-A線矢視断面図
図3】同図1のB-B線矢視断面図
図4】同図1のC-C線矢視図
図5】同その高周波電流と冷却水の流れを示す概念図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1図5は、本発明に係わる誘導加熱用の出力変成器の一実施形態を示している。図1図4に示すように、出力変成器1は、二次導体としての二次コイル2、一次導体としての一次コイル3、直方体形状のコア4、円環状のリングコア5、筒状ケース6及び加熱コイル7等を備えている。
【0020】
前記二次コイル2は、例えば中実状銅板により中央部分に開口2aを有する1ターンの略平板状に形成されると共に、その加熱コイル7側(図1の左側)の端部間には間隙2bが形成されて、平面視で略コ字状を呈している。この二次コイル2の開口2aには、前記直方体形状のコア4が上下(図1の表裏)方向に貫通状態で配設され、コア4の上下両端部は、二次コイル2の上下面から所定寸法突出している。このコア4の二次導体2からの上下の各突出部4aの外側に、例えば外周面が絶縁皮膜で覆われた銅線で形成された前記一次コイル3が略密着状態で所定回数巻回されている。
【0021】
また、一次コイル3の外側には、複数のリング状のコア単体5aを軸方向に連接することで形成された前記リングコア5が配設され、このリングコア5の外周面には、例えば樹脂製で断面円形の前記筒状ケース6(筒状パイプ)が嵌挿状態で配設されている。そして、筒状ケース6の両端部の開口6a、6bには、蓋体8、9がそれぞれ密閉(気密)状態で嵌装配設されており、これにより、図2に示すように、筒状ケース6内が平板状の二次コイル2を挟んで上部空間10(一方の空間)と下部空間11(他方の空間)とに二分割状態とされている。
【0022】
また、前記一対の蓋体8、9のうち、反加熱コイル7側(一次コイル側という)の蓋体8は、筒状ケース6の一次側の開口6aに気密状態で嵌装され、この蓋体8には、図1及び図4に示すように、冷却媒体としての冷却水を筒状ケース6内に循環供給(循環流通)するための、導体で形成された供給部としてのホースジョイント12と排出部としてのホースジョイント13が気密状態で配設されている。
【0023】
このホースジョイント12、13は、冷却水の供給用と排出用として使用されると共に、図1及び図5に示すように、両ホースジョイント12、13にトランジスタインバータ15からなる高周波発信機の出力端子が可撓性を有する銅網線等からなる出力ケーブル16を介してそれぞれ接続されている。なお、一対の出力ケーブル16は、図5に示す1本の可撓性チューブ17内に嵌挿状態で配設され、この可撓性チューブ17内には冷却水が流通して、可撓性チューブ17内の一対の出力ケーブル16が冷却されるようになっている。
【0024】
これにより、図1の2点鎖線で示すように、一対のホースジョイント12、13がトランジスタインバータ15と電気的に接続されて、高周波電流がホースジョイント12、13に供給(給電)可能に構成されると共に、同図の破線で示すように、一対のホースジョイント12、13と冷却水供給器18とが可撓性チューブ17を介して接続されて、冷却水供給器18の冷却水が可撓性チューブ17内に流通可能となっている。
【0025】
一方、筒状ケース6の加熱コイル7側(二次コイル側という)の蓋体9には、図1及び図3に示すように、接続板20を介して前記加熱コイル7が配設されている。この加熱コイル7は、角銅パイプ(もしくは丸銅パイプ)で形成され、絶縁板19を介して圧接固定された平面視略L字形状のホルダー部7aと、このホルダー部7aの先端に設けられた例えば平面視円形のコイル部7bとで形成されている。
【0026】
前記ホルダー部7aの接続板20を含む蓋体9(以下、蓋体9等という)への一対の固定部7a1は、蓋体9等の外面に密着状態にされると共に、図3に示すように、各固定部7a1の基部7a2が、蓋体9等に設けた開口9aを介して、筒状ケース6内に位置する前記二次コイル2の間隙2b端部にロー付け固着されている。これにより、二次コイル2と加熱コイル7が略ループ状に電気的に直列接続されている。
【0027】
また、各固定部7aの基端部7a3は、それぞれ上下逆方向に延設されてその先端に開口7cが設けられ、この開口7cが蓋体9等に設けた例えば縦長の前記開口9aと介して筒状ケース6内に連通することで、両開口7cが筒状ケース6の上部空間10及び下部空間11にそれぞれ連通している。これにより、筒状ケース6と加熱コイル7のパイプ空間とに冷却水の流路が形成されている。
【0028】
なお、加熱コイル7と二次コイル2及び内部空間10、11との接続は、気密状態とされることは言うまでもない。また、加熱コイル7の基端部7a3の開口7cに連通する蓋体9の開口9cは、加熱コイル7への冷却水の供給及び加熱コイル7からの冷却水の排出を良好にするために、例えば断面角錐(もしくは断面円錐)形状として、蓋体9の上部空間10及び下部空間11側の面積を大きく設定することが好ましい。
【0029】
さらに、二次コイル2と加熱コイル7の電気的な接続も、板体からなる二次コイル2の加熱コイル7側の両端部に円柱状の突起を設け、この突起を蓋体9等の開口に貫通させて加熱コイル7と接続するようにしても良い。また、加熱コイル7は、メンテナンス等のために出力変成器本体(筒状ケース6の蓋体9等)に対して着脱可能に接続することが好ましいため、蓋体9と加熱コイル7の固定部7a1との間に、前述した接続板20が配設されて、蓋体9と加熱コイル7が電気的及び機械的に着脱可能に接続固定されるようになっている。この接続板20の構成は、図示した例に限定されず、例えば適宜形状及び構成の接続板20を採用できる。
【0030】
図5は、高周波電流の流れと冷却水の流通経路を模式的に示している。すなわち、高周波電流は、実線イで示すように一次コイル3を流れ、二次コイル2に誘起された電流が加熱コイル7に供給される。また、破線ロで示すように、蓋体8のホースジョイント12から上部空間10内に供給された冷却水は、その多くが二次コイル2の前記間隙2bや二次コイル2とコア4やリングコア5との隙間(図示せず)等を介して下部空間11内に流入する。
【0031】
また、冷却水の一部は、前記蓋体9等の一方の開口及び加熱コイル7の一方の基端部7a3の開口7cを介して加熱コイル7の銅パイプ内の流通し、加熱コイル7内に流通した冷却水は、加熱コイル6の他方の基端部7a3の開口7c、蓋体9等の他方の開口から筒状ケース6の下部空間11内に戻される。つまり、冷却水が加熱コイル内7に循環供給されることになる。
【0032】
ところで、加熱コイル7の銅パイプ内への冷却水の循環供給は、蓋体9等に開口を設けて各内部空間10、11と加熱コイル7の固定部7a1(基端部7a3)とを連通させる構成に限らず、例えば次のように構成することもできる。すなわち、蓋体8のホースジョイント12、13の蓋体8内側に図示しない分岐部を設け、この分岐部の一方(他方は各空間10、11に連通)に冷却水パイプ(図示せず)を接続し、この冷却水パイプの他端を蓋体9等の開口を介して加熱コイル7の基端部7a3の開口7cに直接接続することで、冷却水をホースジョイント12、13と冷却水パイプを介して加熱コイル7に循環供給するようにしても良い。
【0033】
次に、このように構成された出力変成器1の使用方法及び動作について説明する。先ず、出力変成器1は、トランジスタインバータ15や冷却水供給器18が組み込まれた高周波誘導加熱装置に前記可撓性チューブ17で接続されて使用される。このとき、可撓性チュブ17内の出力ケーブル16がトランジスタインバータ15の出力端子に電気的に接続され、この一対の出力ケーブル16が内蔵された可撓性チューブ17を、冷却水供給器18に気密状態で接続することで可撓性チューブ17内に冷却水が循環流通可能に設定される。
【0034】
なお、冷却水供給器18の循環ポンプから可撓性チューブ17内に供給される冷却水の水量、水圧等は、出力変成器1の前記上部空間10と下部空間11の形態としての、一次コイル3の巻数や巻き状態、コア4の大きさ、二次コイル2の厚さ、筒状ケース6の内径等(すなわち各空間10、11の隙間状態)に応じて、各空間10、11内に良好な冷却水の流れが生成されるように予め設定される。
【0035】
この状態で、出力変成器1の加熱コイル7のコイル部7b内に、例えば焼入れするワークとしての被加熱物を位置させて、トランジスタインバータ15と冷却水供給器18を作動させる。トランジスタインバータ15が作動すると、高周波電流が出力ケーブル16、ホースジョイント12、13を介して一次コイル3に供給され、この一次コイル3への通電(給電)により、コア4を介して結合されている二次コイル2に巻き数比に応じた大電流が誘起される。この大電流は、二次コイル2に接続されている加熱コイル7のコイル部7bに供給され、このコイル部7bへの通電により、被加熱物に渦電流が誘起されて、該被加熱物が誘導加熱される。
【0036】
また、トランジスタインバータ15の作動と同時に冷却水供給器18を作動させることで、冷却水が可撓性チューブ17から、一方のホースジョイント12、上部空間10、蓋体9等の開口及び加熱コイル7の一方の固定部7a1(基端部7a3)の開口7c、コイル部7b、加熱コイル7の他方の固定部7a1(基端部7a3)の開口7c及び蓋体9等の他方の開口、下部空間11、他方のホースジョイント13、可撓性チューブ17と流通、すなわち冷却水が出力変成器1に循環供給される。これにより、高周波電流の通電により発熱し易い一次コイル3、二次コイル2及び加熱コイル7等が冷却されて、発熱による誘導加熱効率の低下が抑制されることになる。
【0037】
つまり、前記出力変成器1の場合、円筒状の筒状ケース6内に一次コイル3、二次コイル2、コア4、リングコア5等を密閉内蔵状態とし、筒状ケース6内の上部空間10及び下部空間11内に冷却水を循環流通させることで、各コイル2、3や各コア4、5を冷却水中に浸漬状態として冷却するようにしている。特に、筒状ケース6を平板状の二次コイル2で二分割状態として上部空間10と下部空間11を形成し、上部空間を10を冷却水供給用とし下部空間11を冷却水排出用として使用したり、冷却水の水量や水圧等を筒状ケース6の内部構造に対応した所定値に設定することで、各コイル2、3やコア4、5等が内蔵された筒状ケース6内に冷却水を良好(スムーズ)に循環流通できるようにしている。
【0038】
このように、前記出力変成器1によれば、二次コイル2中央部の開口2aに貫通状態で配設されたコア4、このコア4の二次コイル2からの突出部4a外側に巻回配設された一次コイル3、及び筒状ケース6と蓋体8、9、加熱コイル7等を備え、筒状ケース6の一方の開口端部を閉塞する蓋体8を介して、密閉状態の筒状ケース6内に冷却水を循環流通することで、筒状ケース6内に配設された二次コイル2や一次コイル3等が冷却可能に構成されているため、各コイル2、3等を筒状ケース6内の冷却水に浸漬状態として冷却できて、コイル2、3として銅パイプ以外の各種形態の導体の使用が可能となる。
【0039】
その結果、特に巻き数の多い一次コイル3の効果的な冷却が可能であると共に、各コイル2、3に効率的な誘導加熱状態が容易に得られ、出力変成器1自体の効率を十分に高めること等ができる。また、冷却水を従来のように例えば巻き数が多く流路の長い細いパイプ内に流通させる必要がないことから、冷却水を循環流通させるための構成が簡略化されて、出力変成器1を安価に形成し得ると共に、低圧の冷却水を使用できて省エネ的にも優れた出力変成器1を得ることができる。
【0040】
また、コア4の外側で円筒状の筒状ケース6の内側にリングコア5が配設され、このリングコア5の内側に一次コイル3が配設されているため、リングコア5で各コイル2、3から放射される磁力線の筒状ケース6外への漏洩が防止され、出力変成器1自体の効率を一層高めることができると共に、筒状ケース6を円筒形状とすることができて、冷却水が低圧の場合でも、冷却水の筒状ケース6内での滞留を防止できて循環流通が良好となり、かつ使い勝手に優れた出力変成器1を容易に得ることができる。
【0041】
また、一次コイル3側の蓋体8に、筒状ケース6内に冷却水を循環供給可能なホースジョイント12とホースジョイント13が配設され、このホースジョイント12、13が一次コイル3に高周波電流を供給可能な機能を有するため、ホースジョイント12、13に、冷却水の供給排出機能と高周波電流の供給機能の両機能を持たせることができて、出力変成器1の機構を簡略化してより安価に構成することができる。
【0042】
さらに、ホースジョイント12、13が、略板状の二次コイル2で二分割状態とされた筒状ケース6内の上部空間10と下部空間11にそれぞれ対応して配設されているため、筒状ケース6の上部空間10を冷却水の供給空間とし下部空間11を排出空間とし得て、筒状ケース6内に冷却水を良好に循環流通させることができる。特に、ホースジョイント12、13を介して各空間10、11に供給される冷却水の水量や水圧を、筒状ケース6内の状態に応じて冷却水が当該筒状ケース6内の上部空間10から下部空間11に循環流通(循環供給)するように設定されていることから、筒状ケース6内に冷却水を一層良好に循環流通させることができて、各コイル2、3やコア4、5等の冷却効果をより十分に高めることができる。
【0043】
また、筒状ケース6の開口端部を閉塞する蓋体9の開口を介して、パイプ状の加熱コイル7が二次コイル2に電気的に接続され、この加熱コイル7のパイプ内部に、筒状ケース6内に供給された冷却水が循環流通するため、筒状ケース6内に供給された冷却水を有効利用しつつ加熱コイル7を効果的に冷却することができる。また、筒状ケース6の一次コイル側の蓋体8のホースジョイント12、13から専用のパイプを介して加熱コイル7のパイプ内部に直接循環供給するようにすれば、加熱コイル7の冷却効果をより一層高めることができる。また、一次コイル3が、被覆銅線のように外周面を絶縁材が覆った導体を使用することで、巻き数を最大とし得て出力変成器1自体の小型化を図ることができる。
【0044】
なお、本発明に係わる前記一次コイル3や二次コイル2の形態は、絶縁被覆された銅線(電線)の使用に限らず、例えば一次コイル3を、銅の板状、棒状、扁平状の中実導体として、所定の間隔を有して巻回することで形成することもできる。この場合は、巻き数を必要最小最適に設定することができたり、導体の表面を流れる電流を増大させたり表面の冷却効率を向上させて、出力変成器1による加熱効率を一層高めることが等ができる。
【0045】
また、加熱コイル7のコイル部7bの形態も図示した例に限定されず、被加熱物の形態に応じて適宜の構造を採用することができる。さらに、前記コア4も、直方体形状のコア4を一つ使用する構成に限らず、直方体形状あるいは薄板形状のコア4を複数個筒状ケース6の軸方向に連設するようにしても良く、この場合は、例えば筒状ケース6の外径を小さくかつ長さを長くすることができて、より使い勝手に優れた出力変成器1を得ることができる。
【0046】
また、本発明に係わる出力変成器1においては、筒状ケース6内に内蔵される各コイル2、3やコア4、5の形態によっては、筒状ケース6内に適宜形状の遮蔽板やフィン等(図示せず)を配設して冷却水の循環流通を促進させるようにしても良い。この場合、筒状ケース6内に比較的大きな空間がある場合は、空間内に渦巻き状の流れを生成し得るように遮蔽板やフィンを配設することが好ましい。
【0047】
さらに、前記実施形態においては、リングコア5の外周側に筒状ケース6を密着状態で嵌挿したが、例えばリングコア5の外周面と筒状ケースの内面間に所定の隙間を確保し、この隙間内にも冷却水を流通可能に構成しても良い。このようにすれば、リングコア5の外周面側も冷却水で冷却できると共に、冷却水に筒状ケース6に衝撃が加わった場合の緩衝材としての機能を持たせることもできる。
【0048】
また、前記実施形態における、ホースジョイント12、13の位置や個数、筒状ケース6の形態、各蓋体8、9の形態、一次コイル3や二次コイル2の巻き数等は一例であって、例えばホースジョイントの個数を増やしたり、筒状ケース6を角筒状としたり、蓋体8、9を二重構造として筒状ケース6内の気密性を一層高める等、本発明に係わる各発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、各種形状の被加熱物の外面や内面等を誘導加熱する際に使用される可搬型の出力変成器に好適に使用可能であるが、誘導加熱装置内に固定的に配設される出力変成器にも利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・出力変成器、2・・・二次コイル、2a・・・開口、2b・・・間隙、3・・・一次コイル、4・・・コア、4a・・・突出部、5・・・リングコア、5a・・・コア単体、6・・・筒状ケース、6a、6b・・・開口、7・・・加熱コイル、7a・・・ホルダー部、7a1・・・固定部、7a2・・・基部、7a3・・・基端部、7b・・・コイル部、7c・・・開口、8、9・・・蓋体、9a・・・開口、10・・・上部空間、11・・・下部空間、12、13・・・ホースジョイント、15・・・トランジスタインバータ、16・・・出力ケーブル、17・・・可撓性チューブ、18・・・冷却水供給器、19・・・絶縁板、20・・・接続板。
図1
図2
図3
図4
図5