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特許7074293システムモデル評価システム、運用管理システム、システムモデル評価方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】システムモデル評価システム、運用管理システム、システムモデル評価方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/34 20060101AFI20220517BHJP
   G06F 11/30 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G06F11/34 147
G06F11/30 189
G06F11/30 140A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018519614
(86)(22)【出願日】2017-05-25
(86)【国際出願番号】 JP2017019600
(87)【国際公開番号】W WO2017204307
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2016106077
(32)【優先日】2016-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(74)【代理人】
【識別番号】100168310
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 幹夫
(73)【特許権者】
【識別番号】515177088
【氏名又は名称】株式会社JERA
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 潔人
(74)【代理人】
【識別番号】100119415
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 充
(74)【代理人】
【識別番号】100168310
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】市場 元浩
(72)【発明者】
【氏名】石上 秀之
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 敬喜
(72)【発明者】
【氏名】相馬 知也
(72)【発明者】
【氏名】高城 真弓
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179440(JP,A)
【文献】国際公開第2014/091952(WO,A1)
【文献】特開2013-073414(JP,A)
【文献】棗田 昌尚 外3名,「インバリアント分析技術の大規模物理システムへの適用」,情報処理学会 デジタルプラクティス,情報処理学会,2015年07月15日,第6巻, 第3号,p.207-214,[2016年11月8日検索], インターネット:<URL:https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/ej/?action=repository_uri&item_id=142693&file_id=1&file_no=1>,ISSN 2188-4390
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 11/30
G06F 11/34
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を選択するパターンを変えることで、システムモデルの候補を1つ以上作成するシステムモデル候補作成手段と、
前記作成したシステムモデルの候補に対して、所定の評価データを入力して、前記システムモデルの候補を評価するシステムモデル評価手段と、
を備え、
前記システムモデル候補作成手段は、前記システムに含まれる選択された一の対象機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係と、当該対象機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値と当該対象機器に関連する関連機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値とを用いて作成されたセンサ値間の関係と、を用いて前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成する、システムモデル評価システム。
【請求項2】
前記システムモデル候補作成手段は、さらに、前記関連機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を用いて、前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成する請求項1のシステムモデル評価システム。
【請求項3】
システムモデルの対象となるシステムに含まれる冗長構成の機器を記憶する手段をさらに備え、
前記システムモデル評価手段は、前記冗長構成の機器のシステムモデルの候補を作成するときに、他の冗長構成機器を含まないよう、前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成する請求項1または2のシステムモデル評価システム。
【請求項4】
前記システムモデル候補作成手段は、前記作成したシステムモデルの候補から、前記システムに含まれる機器の関係に基づいて、センサ値間の関係を削除する処理を実施する請求項1から3いずれか一のシステムモデル評価システム。
【請求項5】
前記システムモデル候補作成手段は、前記システムに含まれる選択された一の機器に配置されたセンサを少なくとも1つ含み、かつ、センサ間を接続するリンクを少なくとも1つ有する前記システムモデルの候補を網羅的に作成する請求項1から4いずれか一のシステムモデル評価システム。
【請求項6】
前記システムモデル評価手段は、前記所定の評価データを前記システムモデルの候補に入力して得られた出力と、所定のしきい値を比較することで、前記システムモデルの候補が前記システムの異常状態又は正常状態を判定できるか否かを確認する請求項1から5いずれか一のシステムモデル評価システム。
【請求項7】
前記システムモデル評価手段は、前記システムモデルの候補に正常データを入力して得られた出力と、前記システムモデルの候補に異常データを入力して得られた出力との差分を用いてシステムモデルの候補を評価する請求項1から6いずれか一のシステムモデル評価システム。
【請求項8】
前記システムモデル評価手段は、前記所定の評価データを前記システムモデルの候補に入力して得られた出力に含まれるノイズを算出することで、前記システムモデルの候補の評価値を計算する請求項1から7いずれか一のシステムモデル評価システム。
【請求項9】
前記システムモデル評価手段は、前記所定の評価データを前記システムモデルの候補に入力して得られた異常判定タイミングの正確度を算出することで、前記システムモデルの候補の評価値を計算する請求項1から8いずれか一のシステムモデル評価システム。
【請求項10】
請求項1から9いずれか一のシステムモデル評価システムによって評価されたシステムモデルを用いて対象システムの運用管理を行う運用管理システム。
【請求項11】
コンピュータが、
システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を選択するパターンを変えることで、システムモデルの候補を1つ以上作成し、
前記作成したシステムモデルの候補に対して、所定の評価データを入力して、前記システムモデルの候補を評価し、
前記システムに含まれる選択された一の対象機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係と、当該対象機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値と当該対象機器に関連する関連機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値とを用いて作成されたセンサ値間の関係と、を用いて前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成する、
システムモデル評価方法。
【請求項12】
コンピュータが、
さらに、前記関連機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を用いて、前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成する請求項11のシステムモデル評価方法。
【請求項13】
コンピュータが、
システムモデルの対象となるシステムに含まれる冗長構成の機器を記憶する手段を参照し、
前記冗長構成の機器のシステムモデルの候補を作成するときに、他の冗長構成機器を含まないよう、前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成する請求項11または12のシステムモデル評価方法。
【請求項14】
コンピュータが、
前記システムモデルの候補に正常データを入力して得られた出力と、前記システムモデルの候補に異常データを入力して得られた出力との差分を用いてシステムモデルの候補を評価する請求項11から13いずれか一のシステムモデル評価方法。
【請求項15】
システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係によって構成されたシステムモデルを記憶するシステムモデル記憶手段を備えたコンピュータに、
システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を選択するパターンを変えることで、システムモデルの候補を1つ以上作成する処理と、
前記作成したシステムモデルの候補に対して、所定の評価データを入力して、前記システムモデルの候補を評価する処理と、
前記システムに含まれる選択された一の対象機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係と、当該対象機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値と当該対象機器に関連する関連機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値とを用いて作成されたセンサ値間の関係と、を用いて前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願についての記載)
本発明は、日本国特許出願:特願2016-106077号(2016年5月27日出願)の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。
本発明は、システムモデル評価システム、運用管理システム、システムモデル評価方法及びプログラムに関し、特に、システムの故障分析や障害の予兆検知等に用いるシステムモデルの構築を行うシステムモデル評価システム、運用管理システム、システムモデル評価方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、システムを構成する被管理装置の障害の予兆を検出し、発生場所の特定ができるという運用管理装置が開示されている。具体的には、この運用管理装置は、性能種目又は被管理装置を要素とし、少なくとも第1の要素に関する性能情報の時系列変化を示す第1の性能系列情報と、第2の要素に関する性能情報の時系列変化を示す第2の性能系列情報との相関関数を導出し、この相関関数に基づいて相関モデルを生成し、この相関モデルを各要素間の組み合わせについて求める相関モデル生成部123と、被管理装置から新たに検出し取得される性能情報に基づいて、相関モデルの変化を分析する相関変化分析部124を含む、とされている。
【0003】
特許文献2に、上記した相関モデルを平日や休日といった暦上の属性と対応付けて作成し、異常検出を行う方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、上記したモデルを用いて、発電所内のポンプの異常を検知する各種の異常検知システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-199533号公報
【文献】特開2013-229064号公報
【文献】特開2016-4298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下の分析は、本発明によって与えられたものである。上記特許文献1~3に記載されているシステムでは稼動データを示すセンサ値(特許文献1、2では「性能情報」と呼んでいる)を用いてシステムモデルを作成するアプローチを採用している。このため、対象システムを構成する要素の劣化や磨耗の程度なども加味したより正確なシステムモデルを作成できるといわれている。
【0007】
重要なシステムの監視には、高い精度の分析が求められることは言うまでもない。高い精度の分析を実現するために、異常検出を精度高く行うことができるモデル(システムモデル)の構築が求められる。
【0008】
本発明は、精度の高いシステムモデルの構築の容易化に貢献できるシステムモデル評価システム、運用管理システム、システムモデル評価方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の視点によれば、システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を選択するパターンを変えることで、システムモデルの候補を1つ以上作成するシステムモデル候補作成手段を備えるシステムモデル評価システムが提供される。このシステムモデル評価システムは、さらに、前記作成したシステムモデルの候補に対して、所定の評価データを入力して、前記システムモデルの候補を評価するシステムモデル評価手段と、を備える。
【0010】
第2の視点によれば、上記したシステムモデル評価システムによって評価されたシステムモデルを用いて対象システムの運用管理を行う運用管理システムが提供される。
【0011】
第3の視点によれば、システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を選択するパターンを変えることで、システムモデルの候補を1つ以上作成し、前記作成したシステムモデルの候補に対して、所定の評価データを入力して、前記システムモデルの候補を評価する、システムモデル評価方法が提供される。本方法は、上記したシステムモデルの作成手段と評価手段とを備えるコンピュータという、特定の機械に結びつけられている。
【0012】
第4の視点によれば、システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたデータを用いて作成されたセンサ値間の関係によって構成されたシステムモデルを記憶するシステムモデル記憶手段を備えたコンピュータに、システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を選択するパターンを変えることで、システムモデルの候補を1つ以上作成する処理と、前記作成したシステムモデルの候補に対して、所定の評価データを入力して、前記システムモデルの候補を評価する処理と、を実行させるプログラムが提供される。なお、このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な(非トランジエントな)記憶媒体に記録することができる。即ち、本発明は、コンピュータプログラム製品として具現することも可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、システムの運用管理に用いられるシステムモデルの精度向上に貢献することが可能となる。即ち、本発明は、背景技術に示したシステムモデル評価システムを、その予測精度等を飛躍的に向上させたシステムモデル評価システムへと変換するものとなっている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態の構成を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態の運用管理システムの構成を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態の運用管理システムで用いるセンサ値間の関係を説明するための図である。
図4】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムが保持するシステム情報の一例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムが保持する機器情報の一例を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムが保持する候補生成ルールの一例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムによって生成されるシステムモデル候補の例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムの動作を表した図である。
図9】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムによるシステムモデル候補の評価手法の一例を説明するための図である。
図10】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムによるシステムモデル候補の評価手法の一例を説明するための図である。
図11】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムによるシステムモデル候補の評価手法の一例を説明するための図である。
図12】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムによるシステムモデル候補の評価手法の一例を説明するための図である。
図13】本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムによるシステムモデル候補の評価手法の別の一例を説明するための図である。
図14】本発明の第2の実施形態のシステムモデル評価システムに含まれる冗長構成の機器と、生成されるシステムモデル候補の例を示す図である。
図15】本発明の第2の実施形態のシステムモデル評価システムが保持する機器情報の一例を示す図である。
図16】本発明の第3の実施形態のシステムモデル評価システムによって生成されるシステムモデル候補の例を示す図である。
図17】本発明の第3の実施形態のシステムモデル評価システムによって生成されるシステムモデル候補の例を示す図である。
図18】本発明の第4の実施形態の運用管理システムの構成を示す図である。
図19】本発明の第4の実施形態のシステムモデル評価システムによって生成されるシステムモデル候補の例を示す図である。
図20図8のシステムモデル候補評価の処理フローの一例を示す図である。
図21】本発明の第5の実施形態のシステムモデル評価システムにおけるシステムモデル候補評価の処理フローの一例を示す図である。
図22】本発明の第5の実施形態のシステムモデル評価システムによるシステムモデル候補の評価手法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
はじめに本発明の一実施形態の概要について図面を参照して説明する。なお、この概要に付記した図面参照符号は、理解を助けるための一例として各要素に便宜上付記したものであり、本発明を図示の態様に限定することを意図するものではない。また、以下の説明で用いる図面中のブロック間の接続線は、双方向及び単方向の双方を含む。一方向矢印については、主たる信号(データ)の流れを模式的に示すものであり、双方向性を排除するものではない。
【0016】
本発明は、その一実施形態において、図1に示すように、システムモデルの対象となるシステムに配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係によって構成された第1のシステムモデル(マスタモデル)を記憶するシステムモデル記憶手段11と、システムモデル候補作成手段12と、システムモデル候補評価手段13と、を備えるシステムモデル評価システム10にて実現できる。
【0017】
より具体的には、前記システムモデル候補作成手段12は、前記第1のシステムモデルを構成するセンサ値間の関係を選択するパターンを変えることで、第2のシステムモデルの候補を1つ以上作成する(図1の吹き出し内参照)。例えば、図1の例では、吹き出し内に示すように、第2のシステムモデルの候補として、システムモデル候補21、22が作成されている。
【0018】
前記システムモデル候補評価手段13は、前記作成した第2のシステムモデルの候補に対して、所定の評価データを入力して、前記第2のシステムモデルの候補を評価する。例えば、評価データとして、実際に異常が発生した際のセンサ値の時系列データを入力する。その結果、第2のシステムモデルから得られる値が所定のしきい値を超えているか否か、即ち、「異常」を検出できているかどうかという観点で、第2のシステムモデルが評価される。また反対に、評価データとして、異常が発生しない状態のセンサ値の時系列データを入力することもできる。その結果、第2のシステムモデルから得られる値が所定のしきい値を超えているか否か、即ち、「正常」を誤って「異常」と検出していないかどうかという観点での第2のシステムモデルを評価することができる。
【0019】
以上のように構成されたシステムモデル評価システムによれば、ノイズ等の影響を受けにくいシステムモデル(第2のシステムモデルのうち評価が高いもの)を得ることが可能となる。その理由は、システムモデル候補作成手段12が、センサ値間の関係を選択するパターンを変えることで、(第2の)システムモデルの候補を1つ以上作成し、評価する構成を採用したことにある。即ち、本発明は、その一側面において、対象システムのセンサから取得されたデータを用いて作成された網羅的な第1のシステムモデルから、ノイズの原因となっているセンサ値間の関係を取り除き、特性が改善されたシステムモデルの候補を作成するものとも言える。
【0020】
[第1の実施形態]
続いて、本発明の第1の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図2は、本発明の第1の実施形態の運用管理システムの構成を示す図である。図2を参照すると、システムモデル評価システム110を含んだ運用管理システム100が示されている。
【0021】
運用管理システム100は、センサデータ収集部101と、センサデータ蓄積部102と、システムモデル評価システム110側にシステムモデルを提供するシステムモデル生成部103と、システムモデル評価システム110にて評価されたシステムモデル(第2のシステムモデル)を用いて管理対象のシステムの運用管理を行う運用管理部120とを備える。
【0022】
センサデータ収集部101は、管理対象のシステムに含まれる各種のセンサからセンサデータを収集し、センサデータ蓄積部102に蓄積する。なお、センサデータ収集部101が各種のセンサからデータを収集する形態としては、センサデータ収集部101がセンサやセンサに接続されたIoT(Internet of Things)端末等からセンサデータを直接受信する形態のほか、センサデータ収集部101がクラウドシステム等に配置されたサーバ等から必要なセンサデータを取得する形態も含まれる。
【0023】
センサデータ蓄積部102は、センサデータ収集部101にて収集されたデータをそれぞれ時系列データとして保持するデータベース等によって構成される。
【0024】
システムモデル生成部103は、センサデータ蓄積部102に蓄積されたセンサデータを用いて、システムモデルを生成する。例えば、図3に示すように、あるセンサs10の時系列データを入力とし、別の第2のセンサs11の時系列データを出力とした場合の変換関数fを導出することで、センサs10、s11間の関係が求められる。また、必要に応じて変換関数fによって求められた値と実施の時系列データに差がある場合には、図3に示すような重み情報又は信頼度情報を算出して、それを変換関数と共に記憶してもよい。システムモデル生成部103には、上記の処理をモデル化に用いるセンサの組み合わせについて繰り返すことで、管理対象のシステムのふるまいをモデル化したシステムモデル(以下、「第1のシステムモデル」乃至「マスタモデル」ともいう)を生成する。生成されたシステムモデルは、システムモデル記憶部111に保存される。なお、システムモデル生成部103におけるシステムモデルの生成方法としては、特許文献1~3に記載の方法を適宜採用することもできる。
【0025】
運用管理部120は、システムモデル評価システム110にて評価されたシステムモデルを用いて管理対象のシステムの運用管理を行い、必要に応じて運用管理者に対し、障害の予兆を知らせたり、障害の発生が予想される部位を通知する等の動作を行う。
【0026】
続いて、図2の破線内に示したシステムモデル評価システムの細部について説明する。システムモデル評価システム110は、システムモデル記憶部111と、システムモデル候補作成部112と、システムモデル候補評価部113と、システムモデル候補記憶部114と、システム構成記憶部115と、候補生成ルール記憶部116と、評価済システムモデル記憶部117とを備えている。
【0027】
システム構成記憶部115は、管理対象のシステムの構成情報を記憶する。図4は、各システムに含まれる機器の情報を格納したテーブルの例である。図5は、各機器に備えられているセンサの情報を格納したテーブルの例である。図4図5のテーブルを参照することで、あるシステムに、どのような機器が含まれ、各機器にどのようなセンサが配置されているかを把握することが可能となる。なお、図4図5の例では省略しているが、各機器や各センサの接続関係をシステムの構成情報として保持するようにしてもよい。また、図4図5の例では、システムと機器の構成の2段階の構成を想定したが、例えば、1以上の機器が設備を構成し、1以上の設備が系統を構成し、1以上の系統がシステム全体を構成する、というような構成情報でもよい。
【0028】
候補生成ルール記憶部116は、システムモデル記憶部111に保持されたシステムモデルから、運用管理に使用する第2のシステムモデルの候補を作成するためのルール(候補生成ルール)を記憶する。図6は、候補生成ルールの一例を示す図である。
【0029】
システムモデル候補作成部112は、システムモデル記憶部111に保持されたシステムモデルと、システム構成記憶部115に保持されたシステムの構成情報と、候補生成ルール記憶部116に保持されたルール(候補生成ルール)とを用いて、評価の対象となるシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)を作成する。システムモデル候補作成部112にて作成されたシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)は、システムモデル候補記憶部114に格納される。
【0030】
図6は、候補生成ルール記憶部116に保持されるシステムモデルの候補作成ルールの一例を示す図である。図6の例では、段階的にシステムモデルの候補に含めるセンサや機器を増やしていく内容を定めたルール(1)~(X)が設定されている。例えば、図6に示すルールの場合、システムモデル候補作成部112は、次のようにバリエーションを持つシステムモデルの候補を作成する。
(1)システムモデル候補作成部112は、あるシステム中の機器を選択し、選択した機器に配置されているセンサのみの間の関係を用いてシステムモデルの候補を作成する(図7の(1)参照)。
(2)システムモデル候補作成部112は、(1)で選択した機器のセンサと関係のあるセンサを選択し、これらセンサ間の関係を用いてシステムモデルの候補を作成する(図7の(2)参照)。なお、センサ間の関係の有無は、センサが配置されている機器同士が接続され、注目するセンサがそれぞれ監視する値が入出力の関係にあるかどうかや、直接入出力の関係になくとも、監視する項目間にある程度の一定の相関が認められるか否かによって決定することができる。
(3)システムモデル候補作成部112は、(1)及び(2)で選択したセンサ間の関係に加え、(2)で選択した機器に備えられたセンサ間の関係を用いてシステムモデルの候補を作成する(図7の(3)参照)。
(4)システムモデル候補作成部112は、(1)~(3)で選択したセンサ間の関係に加え、(3)で選択した機器のセンサとさらに関係のあるセンサを選択し、これらセンサ間の関係を用いてシステムモデルの候補を作成する(図7の(4)参照)。同様にして、システムモデル候補作成部112は、(1)~(4)で選択したセンサ間の関係に加え、(1)で選択した機器以外の機器に備えられたセンサ間の関係を用いてシステムモデルの候補を作成する。
(X)最終的に、システムモデル候補作成部112は、対象機器と直接又は間接的に関係のある機器間の構成要素全部を含むシステムモデルの候補を作成してもよい(図7の(X)参照)。もちろん、対象機器と直接又は間接的に関係のある機器間の構成要素全部を含むシステムモデルではなく、例えば、(4)で選択した機器のセンサとさらに関係のあるセンサを選択し、これらセンサ間の関係を用いてシステムモデルの候補を作成したところで、一連のシステムモデルの候補の作成を止めてしまってもよい。
【0031】
以上の処理を注目する機器について繰り返すことで、評価をすべき第2のシステムモデルの候補の組み合わせが得られることになる。なお、第2のシステムモデルの候補を作成するためのルール(候補生成ルール)は上記の例に限られない。これらについては、後に、第3、第4の実施形態として、その一例を説明する。
【0032】
システムモデル候補評価部113は、システムモデル候補記憶部114から、システムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)を取り出して、所定の評価データを入力し、その出力の妥当性を表す評価値を計算することで、システムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)を評価する。システムモデル候補評価部113にて評価されたシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)は、評価済みのシステムモデル候補として、評価済システムモデル記憶部117に保存される。
【0033】
なお、図2の例では、運用管理システム100内にシステムモデル評価システム110を設けた構成を用いているが、運用管理システム100と、システムモデル評価システム110とは、物理的又は論理的に分離された機器で構成されていてもよい、また、これらシステムモデル評価システム及び運用管理システムの各部(処理手段)は、これらのシステムを構成するコンピュータに、そのハードウェアを用いて、上記した各処理を実行させるコンピュータプログラムにより実現することができる。
【0034】
続いて、上記したシステムモデル評価システム110の動作について図面を参照して詳細に説明する。図8は、本発明の第1の実施形態のシステムモデル評価システムの動作を表した図である。図8を参照すると、システムモデル評価システム110は、所定の契機で、システムモデル記憶部111に保持されたシステムモデル、システム構成及び前述のルール(候補生成ルール)を用いて、評価の対象となるシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)を作成する(ステップS001)。
【0035】
次に、システムモデル評価システム110は、ステップS001で生成したシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)を評価する(ステップS002)。
【0036】
最後に、システムモデル評価システム110は、ステップS002で評価したシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)から、運用管理に用いるシステムモデル(第2のシステムモデル)を選択する(ステップS003)。ここで、選択したシステムモデル(第2のシステムモデル)は、運用管理部120における対象システムの運用管理に用いられる。
【0037】
ここで、上述のステップS002における評価方法について説明する。図20は、図8のシステムモデル候補評価の処理フローの一例を示す図である。図20に示すとおり、図8のステップS002は、評価手法A-1(ステップS101;基本機能確認)、評価手法A-2(ステップS102;ノイズ評価)、評価手法B-1(ステップS103;異常検出機能確認)、評価手法B-2(ステップS104;異常検出精度評価)の4ステップから構成される。各ステップは任意に省略されても構わない。各ステップは任意の拡張概念に置換されても構わない。なお、正常データとは、システムにおいて異常が発生していないときのデータを用いて作られた評価データである。異常データとは、システムにおいて異常が発生していたときのデータを用いて作られた評価データである。
【0038】
評価手法A-1(ステップS101;基本機能確認)は、第2のシステムモデルの候補に正常データを入力し、得られた異常スコアが第1のしきい値を超えるか否かに基づき、正常データを正常と判定できる等の基本的な機能を有しているか否かを確認するステップである。
評価手法A-2(ステップS102;ノイズ評価)は、第2のシステムモデルの候補に正常データを入力し、得られた異常スコアのノイズの大きさを判定するステップである。
評価手法B-1(ステップS103;異常検出機能確認)は、第2のシステムモデルの候補に異常データを入力し、得られた異常スコアが第2のしきい値を超えるか否かに基づき、異常検出機能を有しているか否かを確認するステップである。
評価手法B-2(ステップS104;異常検出精度評価)は、第2のシステムモデルの候補に異常データを入力し、異常が検出された場合、その異常が検出された時刻と、異常が実際に発生していた時刻との差を用いて異常検出の精度を評価するステップである。
【0039】
ここで、上述のステップS002における評価方法について具体例を挙げて説明する。以下、システムモデル評価システム110が、システムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)として、6つの第2のシステムモデルの候補(それぞれ第2のシステムモデル21~26と記す)を作成したものとして説明する。
【0040】
まず、システムモデル候補評価部113が、各システムモデルの候補について正常なデータを入力して、正しく「正常」と判定できるか否かを確認する必要がある。図9は、評価手法A-1の実施の具体例として、第2のシステムモデル21、22に正常データを入力し、所定の監視項目を用いて得られた異常スコアの変化を表した図である。図9の例では、第2のシステムモデル21は、正常データが入力されたにも拘わらず、異常スコアが第1のしきい値を超えてしまっている。このため、第2のシステムモデル21は不合格(誤判定)と判定される。一方、第2のシステムモデル22の異常スコアは第1のしきい値を超えていないので、第2のシステムモデル22は適切と判断される。なお、第2のシステムモデル23~26については省略しているが、第2のシステムモデル23~26についても同様の評価を行うことになる。
【0041】
次に、システムモデル候補評価部113は、上記正常データについて誤判定を行わなかった第2のシステムモデルのうち、いずれが優れているかを示す評価値を計算する。図10は、評価手法A-2の実施の具体例として、第2のシステムモデル22、23に正常データを入力し、所定の監視項目を用いて得られた異常スコアの変化を表した図であり、各図下段の網掛け部分がノイズを表している。ノイズが小さいほど第2のシステムモデルとして優れている。なぜなら、マージンが大きいからである。マージンが大きいということは、正常データを正常と判定できる可能性が大きいということである。図10の例では、第2のシステムモデル22、23を比較すると、第2のシステムモデル22の方が網掛け部分の面積が大きくなっている。この場合、第2のシステムモデル22よりも第2のシステムモデル23の方がノイズが少ないシステムモデルになっていると言える。同様にシステムモデル24~26について、ノイズを示す網掛け部分の面積の大きさを計算し、システムモデル候補の評価値とすることができる(網掛け部分の面積が小さい方が優れていることを示す)。なお、面積以外にも、異常度の平均を算出して比較してもよいし、異常度の最大値を算出して比較してもよい。
【0042】
次に、システムモデル候補評価部113は、システムモデルの候補に、異常が発生した際に異常データを入力して、適切なタイミングで「異常」と判定できるか否かを確認する手法を説明する。図11は、評価手法B-1の実施の具体例として、第2のシステムモデル24、25に異常データを入力し、所定の監視項目を用いて得られた異常スコアの変化を表した図である。図11の例では、第2のシステムモデル25は、異常データが入力されたにも拘わらず、異常スコアが第2のしきい値を超えていない。このため、第2のシステムモデル25は、異常を検出できない不適切なシステムモデルと判定される。一方、第2のシステムモデル24は、異常スコアが第2のしきい値を超えているので適切と判断される。なお、第2のシステムモデル22、23、26については省略しているが、これらの第2のシステムモデルについても同様の評価を行うことになる。
【0043】
次に、システムモデル候補評価部113は、上記異常を正しく検出できたシステムモデルのうち、いずれが優れているかを示す評価値を計算する。図12は、評価手法B-2の実施の具体例として、第2のシステムモデル24、26に異常データを入力し、所定の監視項目を用いて得られた異常判定タイミングを表した図である。図12の例では、第2のシステムモデル24は、時刻t2に異常発生を検出している。一方、第2のシステムモデル26は、時刻t3に異常発生を検出している。この場合、元々の異常発生時のデータで検出された異常発生時刻t1とt2/t3との差を、システムモデル候補の評価値とすることができる(図12の両矢線の長さが短い方が優れたシステムモデルと言える。)。なお、第2のシステムモデル22、23については省略しているが、第2のシステムモデル22、23についても同様の評価を行うことになる。
【0044】
最終的に、システムモデル候補評価部113に、図9図12に示す評価を総合した評価値を算出させることもできる。例えば、図10に示すノイズの多寡という観点での評価値と、図12に示す異常検出の正確さ(正確度)という観点での評価値とを、それぞれ正規化し、加算した評価値を算出させることもできる。また、異常データは必ずある訳ではないので、異常データが無い場合は、図10に示すノイズの多寡という観点での評価値を用いて採用するシステムモデルを決定してもよい。
【0045】
また、上記した評価の方法はあくまで一例を示したものであって、種々の変形を施すことができる。例えば、図10に示す、ノイズを示す領域の面積により評価を行う方法に代えて、図13に示すように、ノイズの最大値の多寡より評価を行うこともできる。同様に、図12の方法においても、異常検出タイミングが実際の異常発生時より早い場合と、実際の異常発生時より検出が遅れている場合がある。この場合、異常検出タイミングからのズレ量を示すスコアが同値であっても、検出遅れの方の評価値を下げる等の変更を加えることができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、複数のシステムモデル候補の中から、より精度の高いシステムモデルを採用することが可能となる。これにより、運用管理システムの、障害の予兆の検出精度や、発生場所の特定能力の向上を見込むことが可能となる。
【0047】
[第2の実施形態]
続いて、管理対象のシステムに冗長構成の機器が含まれることを想定した第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は第1の実施形態と基本的な構成及び動作は共通するので、以下、相違点を中心に説明する。
【0048】
図14の左側の図に示すように、管理対象のシステムの機器のうち、機器A1~A4が冗長構成を取っている場合がある。この場合、システムモデルを作成、評価するには、冗長構成であることを考慮に入れる必要がある。例えば、機器A1のシステムモデルを構築する場合、A1と冗長構成である機器A2~A4については、システムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)には含めず、評価することになる。
【0049】
図15は、第2の実施形態のシステムモデル評価システムのシステム構成記憶部115に保持されるシステムの構成情報の例を示している。図5に示した機器情報を格納したテーブルと相違するのは、冗長構成を取る機器について、冗長構成機器の情報を格納可能となっている点である。例えば、図15の場合、機器A1は、機器A2~機器A4ともに冗長構成を取っていることになる。
【0050】
この場合、システムモデル評価システムのシステムモデル候補作成部112は、ある機器のシステムモデルを作成する際には、それと冗長構成を取る機器のセンサは含めずにシステムモデルを作成する。例えば、機器A1のシステムモデル候補を作成する場合、機器A2~機器A4のセンサは除いて、システムモデルを作成することになる。
【0051】
以上、説明したように、本実施形態によれば、管理対象のシステムの機器に冗長構成が含まれる場合においても、冗長構成された機器によるノイズを低減したシステムモデルを構築することができる。
【0052】
[第3の実施形態]
続いて、システムモデル候補作成部112が用いる候補生成ルールに変更を加えた第3の実施形態について説明する。第3の実施形態も第1の実施形態と基本的な構成及び動作は共通するので、以下、相違点を中心に説明する。
【0053】
図16の左側のマスタモデルは、第1の実施形態のシステムモデル記憶部に記憶される第1のシステムモデルに相当し、機器A~機器Eによって構成されるシステムモデルを表している。
【0054】
本実施形態において、まず、システムモデル候補作成部112は、第1の実施形態と同様に、例えば、機器Aを選択して、第2のシステムモデルの候補を作成する。例えば、図16の(A1)は、機器Aに配置されているセンサ間の関係を用いて作成されたシステムモデルの候補を示している。同様に、図16の(A2)は、機器Aに配置されているセンサと、これらのセンサと関係のあるセンサを用いて作成されたシステムモデルの候補を示している。同様に、図16の(A3)は、機器Aに配置されているセンサと、機器Aのセンサと関係のあるセンサを持つ機器のセンサとを用いて作成されたシステムモデルの候補を示している。同様に、図16の(A4)は、機器Aに配置されているセンサと、機器Aのセンサと関係のあるセンサを持つ機器B、Cのセンサと、さらに機器Cのセンサと関係のある機器Dのセンサとを用いて作成されたシステムモデルの候補を示している。図16の(AX)は、対象機器と直接又は間接的に関係のある機器間の構成要素全部を含むシステムモデルを示している。ここまでの動作は、図6に示した候補生成ルールを用いる第1の実施形態と同様である。
【0055】
本実施形態では、上記のように、第2のシステムモデルの候補を作成した後、システムモデル候補作成部112が、機器間の関係に着目して、システムモデル内のリンク(関係)の枝刈り処理を実施する。機器間の関係の一例は、機器間の物理的な接続関係である。すなわち、例えば機器の出力が他の機器の入力であるような関係である。図17は、本実施形態のシステムモデル候補作成部112による枝刈り処理の一例を示す図である。例えば、図17の左下に示すように、機器A、機器B、機器C、機器D、機器Eの順に、機器A~機器Eが直列に接続されているものとする。この場合、システムモデル候補作成部112は、図17の(A2)~(AX)に示すように、システムモデルから、機器Aに接続されていない機器C、Dとのリンクを削除する動作を行う。なお、図17の例では、システムモデル候補(A3)から機器Aと機器C間のリンク及び機器C内の全リンクが削除され、システムモデル候補(A4)から上記に加え、機器Cと機器D間のリンクが削除され、システムモデル候補(AX)からは上記に加え、機器Bと機器C間のリンクが削除されている。この結果、システムモデル候補(A3)~(AX)は同型となっている。もちろん、システムモデル候補(A4)、(AX)は削除してしまって差し支えない。
【0056】
以上説明したように、機器間の関係に着目して、第2のシステムモデルの候補を作成することも可能である。このようにすることで、直感的に理解しやすい関係性のみからシステムモデルが構成されるため、システムモデル候補評価部の評価結果だけでなく、システムモデルそのものの関係性を人間が見て評価を行うこともできる。
【0057】
[第4の実施形態]
続いて、システムモデル候補作成部112が用いる候補生成ルールに変更を加えた第4の実施形態について説明する。第4の実施形態も第1の実施形態と基本的な構成及び動作は共通するので、以下、相違点を中心に説明する。
【0058】
図18は、本発明の第4の実施形態の運用管理システムの構成を示す図である。図2に示した第1の実施形態の運用管理システムとの相違点は、システムモデル評価システム内の候補生成ルール記憶部116が省略されている点である。
【0059】
図19の左上のマスタモデルは、図18のシステムモデル記憶部111に記憶される第1のシステムモデルに相当し、機器A、機器Bによって構成されるシステムモデルを表している。そして、本実施形態において、システムモデル候補作成部112aは、機器Aセンサをノードとして、少なくとも1つ含み、かつ、ノード間を接続するリンクを1つ以上持つ、すべてのパターンを作成し、これらを第2のシステムモデル候補とする。システムモデル候補作成部112aが、すべての機器について以上の動作を繰り返すことで注目するシステムに内在するすべての第2のシステムモデル候補を抽出することができる。
【0060】
このように、第2のシステムモデルの候補は、図6に示すようなルールを用いずに、任意の機器とその中のノード(センサ)を選択した上で、1つずつリンク数を増やしながら、取りうるリンクを網羅的に探索するアルゴリズムを用いて作成することもできる。
【0061】
[第5の実施形態]
続いて、システムモデル候補評価部113による評価手法に変更を加えた第5の実施形態について説明する。第5の実施形態も第1の実施形態と基本的な構成及び動作は共通するので、以下、相違点を中心に説明する。
【0062】
図21は、本発明の第5の実施形態のシステムモデル評価システムにおけるシステムモデル候補評価の処理フローの一例を示す図である。図8のS002に示す第1の実施形態のシステムモデル候補評価において、第5の実施形態では次のような処理が行われる。まず、システムモデル候補評価部113はシステムモデル候補記憶部114から評価を行うシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)を選択する(ステップS201)。
【0063】
次に、システムモデル候補評価部113は、選択したシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)に正常データを入力して異常スコアを計算する(ステップS202)。
【0064】
次に、システムモデル候補評価部113は、選択したシステムモデルの候補(第2のシステムモデルの候補)に異常データを入力して異常スコアを計算する(ステップS203)。
【0065】
次に、システムモデル候補評価部113は、前記正常データを入力して得られた異常スコアと、前記異常データを入力して得られた異常スコアとの差分を計算する(ステップS204)。この差分の計算方法としては、異常スコアの最大値(ピーク値)の差を計算する方法(これを「差分計算方法1」と呼ぶ)や、異常スコアの平均値の差を計算する方法(これを「差分計算方法2」と呼ぶ)、これらを組み合わせた差分値を計算する方法等が考えられる。他にも、前記正常データを入力して得られた異常スコアの最大値と、前記異常データを入力して得られた異常スコアの最小値の差を計算する方法(これを「差分計算方法3」と呼ぶ)を採用することも考えられる。
【0066】
図22は、差分計算方法1を採用したときの、上記手順による第2のシステムモデルの候補の評価手法を説明するための図である。図22では、第2のシステムモデルの候補31、32に対し、同一の正常データと異常データのそれぞれを入力して得られた異常スコアの波形を表している。図22の上段の第2のシステムモデルの候補31は、異常スコアの最大値(ピーク値)の差d1が大きく出ている。一方、図22の下段の第2のシステムモデルの候補32は、異常スコアの最大値(ピーク値)の差d2がd1と比較して小さくなっている。即ち、第2のシステムモデルの候補31は、第2のシステムモデルの候補32と比較して、正常データを正常であると判定し、異常データを異常であると判定する検出性能が優れていることを示している。一方、第2のシステムモデルの候補32は、正常データ、異常データをそれぞれ入力した際に明確に正常又は異常であることを判定できないことを示している。なお、図22の例では、異常スコアの最大値(ピーク値)の差により評価を行っているが、異常スコアの平均値の比較を行うほか、正常データと異常データによる異常スコアの乖離の度合いを示す各種の方法を用いて評価を行うことができる。
【0067】
このように本実施形態によれば、第2のシステムモデル候補の評価を簡便に実施することが可能となる。なお、第5の実施形態においても図9図12に示した第1の実施形態の評価手法を実施し、第2のシステムモデルの候補の総合的な評価を行うこととしてもよい。
【0068】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で、更なる変形・置換・調整を加えることができる。例えば、各図面に示したネットワーク構成、各要素の構成、メッセージの表現形態は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。例えば、本発明は、プラント、データセンター、通信システム等の各種のシステムのシステムモデルの構築に適用可能である。
【0069】
最後に、本発明の好ましい形態を要約する。
[第1の形態]
(上記第1の視点によるシステムモデル評価システム参照)
[第2の形態]
第1の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
前記システムモデル候補作成手段は、前記システムに含まれる選択された一の対象機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係と、当該対象機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値と当該対象機器に関連する関連機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値とを用いて作成されたセンサ値間の関係と、を用いて前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成するシステムモデル評価システム。
[第3の形態]
第2の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
前記システムモデル候補作成手段は、さらに、前記関連機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関係を用いて、前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成するシステムモデル評価システム。
[第4の形態]
第1から第3いずれか一の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
システムモデルの対象となるシステムに含まれる冗長構成の機器を記憶する手段をさらに備え、
前記システムモデル評価手段は、前記冗長構成の機器のシステムモデルの候補を作成するときに、他の冗長構成機器を含まないよう、前記システムモデルの少なくとも一の候補を作成するシステムモデル評価システム。
[第5の形態]
第1から第4いずれか一の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
前記システムモデル候補作成手段は、前記生成したシステムモデルの候補から、前記システムに含まれる機器の関係に基づいて、センサ値間の関係を削除する処理を実施するシステムモデル評価システム。
[第6の形態]
第1から第5いずれか一の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
前記システムモデル候補作成手段は、前記システムに含まれる選択された一の機器に配置されたセンサから取得されたセンサ値を用いて作成されたセンサ値間の関連を少なくとも1つ有する前記システムモデルの候補を網羅的に作成するシステムモデル評価システム。
[第7の形態]
第1から第6いずれか一の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
前記システムモデル評価手段は、前記所定の評価データを前記システムモデルの候補に入力して得られた出力と、所定のしきい値を比較することで、前記システムモデルの候補が前記システムの異常状態又は正常状態を判定できるか否かを確認するシステムモデル評価システム。
[第8の形態]
第1から第7いずれか一の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
前記システムモデル評価手段は、前記システムモデルの候補に正常データを入力して得られた出力と、前記システムモデルの候補に異常データを入力して得られた出力との差分を用いて前記システムモデルの候補を評価するシステムモデル評価システム。
[第9の形態]
第1から第8いずれか一の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
前記システムモデル評価手段は、前記所定の評価データを前記システムモデルの候補に入力して得られた出力に含まれるノイズを算出することで、前記システムモデルの候補の評価値を計算するシステムモデル評価システム。
[第10の形態]
第1から第9いずれか一の形態のシステムモデル評価システムにおいて、
前記システムモデル評価手段は、前記所定の評価データを前記システムモデルの候補に入力して得られた異常判定タイミングの正確度を算出することで、前記システムモデルの候補の評価値を計算するシステムモデル評価システム。
[第11の形態]
(上記第2の視点による運用管理システム参照)
[第12の形態]
(上記第3の視点によるシステムモデル評価方法参照)
[第13の形態]
(上記第4の視点によるプログラム参照)
なお、上記第11~第13の形態は、第1の形態と同様に、第2~第10の形態に展開することが可能である。
【0070】
なお、上記の特許文献の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の開示の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態ないし実施例の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に、本書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が、別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0071】
10、110、110a システムモデル評価システム
11 システムモデル記憶手段
12 システムモデル候補作成手段
13 システムモデル候補評価手段
21~26、31、32 (第2の)システムモデル候補
100、100a 運用管理システム
101 センサデータ収集部
102 センサデータ蓄積部
103 システムモデル生成部
120 運用管理部
111 システムモデル記憶部
112、112a システムモデル候補作成部
113 システムモデル候補評価部
114 システムモデル候補記憶部
115 システム構成記憶部
116 候補生成ルール記憶部
117 評価済システムモデル記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図17
図18
図19
図20
図21
図22