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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】電子通貨管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 40/04 20120101AFI20220517BHJP
【FI】
G06Q40/04
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018075153
(22)【出願日】2018-04-10
(65)【公開番号】P2019185370
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】512255550
【氏名又は名称】株式会社エプセム
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(72)【発明者】
【氏名】東 日出市
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-031630(JP,A)
【文献】特開2017-059164(JP,A)
【文献】特開2004-038812(JP,A)
【文献】国際公開第2016/103373(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0206515(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機によって電子通貨を管理する電子通貨管理システムであって、
前記電子通貨を意味する電子通貨データを生成する通貨生成処理部と、
前記電子通貨を取引する取引市場を管理する取引市場処理部と、を備え、
前記通貨生成処理部は、
前記電子通貨データに対して、前記電子通貨の発行責任者を識別するための発行責任者識別情報を付与する発行責任者識別情報付与部と、
前記電子通貨データに対して、前記発行責任者、又は該発行責任者に債務を有する債務者の債権を識別するための債権識別情報を付与する債権識別情報付与部と、を備え、
前記取引市場処理部は、
前記電子通貨データの売希望者の取引者用計算機から送信される売注文データを受信すると共に、前記電子通貨データの買希望者の前記取引者用計算機から送信される買注文データを受信し、前記売注文データと前記買注文データを提示する板情報を生成する板処理部と、
前記売注文データと前記買注文データを約定させる約定処理部と、を備えることを特徴とする、
電子通貨管理システム。
【請求項2】
前記板処理部は、前記買希望者の前記取引者用計算機に対して、前記売注文データに含まれる前記電子通貨データの前記発行責任者識別情報を送信することを特徴とする、
請求項1に記載の電子通貨管理システム。
【請求項3】
前記板処理部は、前記買希望者の前記取引者用計算機に対して、前記売注文データに含まれる前記電子通貨データの前記債権識別情報を送信することを特徴とする、
請求項1又は2に記載の電子通貨管理システム。
【請求項4】
前記発行責任者による承認を受け付ける承認処理部を備え、
前記約定処理部は、前記売注文データの売買を約定させる際、前記承認処理部から、前記売注文データに含まれる前記電子通貨データの前記発行責任者の承認情報を受け付けてから、前記約定を確定させることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電子通貨管理システム。
【請求項5】
前記債権は、再生可能エネルギー発電事業者の売電債権であり、
前記発行責任者は、前記売電債権を譲り受けた、又は前記売電債権を担保に前記再生可能エネルギー発電事業者に融資した金融機関であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれかに記載の電子通貨管理システム。
【請求項6】
前記発行責任者識別情報は、前記金融機関のSWIFTコードであり、
前記債権識別情報は、前記再生可能エネルギー発電事業者の設備認定ID又は事業計画承認IDであることを特徴とする、
請求項5に記載の電子通貨管理システム。
【請求項7】
前記取引市場処理部は、
前記約定の売買価格に基づいて、前記発行責任者に対する積立金額を算出する積立処理部を有することを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれかに記載の電子通貨管理システム。
【請求項8】
前記電子通貨データは、前記発行責任者が換金を約束する換金額を意味する換金額情報を含み、
前記換金額情報は、前記積立金額に基づいて更新されることを特徴とする、
請求項7に記載の電子通貨管理システム。
【請求項9】
計算機によって電子通貨を管理する電子通貨管理システムであって、
前記電子通貨を意味する電子通貨データを生成する通貨生成処理部と、
電子通貨を取引する取引市場を管理する取引市場処理部と、を備え、
前記通貨生成処理部は、
前記電子通貨データに対して、前記電子通貨の発行責任者を識別するための発行責任者識別情報を付与する発行責任者識別情報付与部と、
前記電子通貨データに対して、前記発行責任者が換金を約束する換金額を意味する換金額情報を付与する換金額情報付与部と、を備え、
前記取引市場処理部は、
前記電子通貨データの売希望者の取引者用計算機から送信される売注文データを受信すると共に、前記電子通貨データの買希望者の前記取引者用計算機から送信される買注文データを受信し、前記売注文データと前記買注文データを提示する板情報を生成する板処理部と、
前記売注文データと前記買注文データを約定させる約定処理部と、
前記約定の売買価格に基づいて、発行責任者に対する積立金額を算出する積立処理部と、を有することを特徴とする、
電子通貨管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子通貨を管理する電子通貨管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、円やドル等の貨幣ではなく、電子マネー等のいわゆる電子的な通貨を利用した取引が普及してきている。電子的な通貨の中には、Suica(登録商標)のように、円やドル等の貨幣と直接的に結びついてクローズ環境のネットワークで集中管理されるいわゆる「電子マネーサービス」や、ビットコイン(登録商標)のように、貨幣から独立してオープン環境のネットワークで分散管理されるいわゆる「仮想通貨サービス」等が存在する。
【0003】
電子マネーサービスは、所定の電子口座に円等の貨幣を前払いすることで財布のようにストックし、その電子口座を利用して、電子的に出金できる仕組みとなる。
【0004】
一方、仮想通貨サービスは、マイナーによるマイニング処理によって、貨幣とは無関係に新規の電子通貨(仮想通貨)が発行される。通貨の取引は、取引情報をシステム内の全ての計算機にブロードキャストすることで、分散台帳として記録される。なお、取引情報は、ハッシュ値と、このハッシュ値からマイニング処理によって生成されるナンス値によってブロック化されて仮想通貨データ(分散台帳)に付加される。従って、仮想通貨データの構造は、取引毎にブロックが付加されていくので、ブロックチェーンと称される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-207860
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の電子マネーサービスは、利用者自身の貨幣の前払いによって電子マネーに交換される仕組みとなっており、仮想通貨サービスのような独立した通貨としての意味合いを持たせることが出来ない。
【0007】
一方、仮想通貨サービスの場合、仮想通貨の発行は、マイニング処理に限定されるため、まとまった価値の仮想通貨をまとめて発行することが難しい。
【0008】
本発明は、斯かる実情に鑑み、新たな電子通貨管理システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明は、計算機によって電子通貨を管理する電子通貨管理システムであって、前記電子通貨を意味する電子通貨データを生成する通貨生成処理部と、前記電子通貨を取引する取引市場を管理する取引市場処理部と、を備え、前記通貨生成処理部は、前記電子通貨データに対して、前記電子通貨の発行責任者を識別するための発行責任者識別情報を付与する発行責任者識別情報付与部と、前記電子通貨データに対して、前記発行責任者、又は該発行責任者に債務を有する債務者の債権を識別するための債権識別情報を付与する債権識別情報付与部と、を備え、前記取引市場処理部は、前記電子通貨データの売希望者の取引者用計算機から送信される売注文データを受信すると共に、前記電子通貨データの買希望者の前記取引者用計算機から送信される買注文データを受信し、前記売注文データと前記買注文データを提示する板情報を生成する板処理部と、前記売注文データと前記買注文データを約定させる約定処理部と、を備えることを特徴とする、電子通貨管理システムである。
【0010】
上記電子通貨管理システムに関連して、前記板処理部は、前記買希望者の前記取引者用計算機に対して、前記売注文データに含まれる前記電子通貨データの前記発行責任者識別情報を送信することを特徴とする。
【0011】
上記電子通貨管理システムに関連して、前記板処理部は、前記買希望者の前記取引者用計算機に対して、前記売注文データに含まれる前記電子通貨データの前記債権識別情報を送信することを特徴とする。
【0012】
上記電子通貨管理システムに関連して、前記発行責任者による承認を受け付ける承認処理部を備え、前記約定処理部は、前記売注文データの売買を約定させる際、前記承認処理部から、前記売注文データに含まれる前記電子通貨データの前記発行責任者の承認情報を受け付けてから、前記約定を確定させることを特徴とする。
【0013】
上記電子通貨管理システムに関連して、前記債権は、再生可能エネルギー発電事業者の売電債権であり、前記発行責任者は、前記売電債権を譲り受けた、又は前記売電債権を担保に前記再生可能エネルギー発電事業者に融資した金融機関であることを特徴とする。
【0014】
上記電子通貨管理システムに関連して、前記発行責任者識別情報は、前記金融機関のSWIFTコードであり、前記債権識別情報は、前記再生可能エネルギー発電事業者の設備認定ID又は事業計画承認IDであることを特徴とする。
【0015】
上記電子通貨管理システムに関連して、前記取引市場処理部は、前記約定の売買価格に基づいて、前記発行責任者に対する積立金額を算出する積立処理部を有することを特徴とする。
【0016】
上記電子通貨管理システムに関連して、前記電子通貨データは、前記発行責任者が換金を約束する換金額を意味する換金額情報を含み、前記換金額情報は、前記積立金額に基づいて更新されることを特徴とする。
【0017】
上記目的を達成する本発明は、計算機によって電子通貨を管理する電子通貨管理システムであって、前記電子通貨を意味する電子通貨データを生成する通貨生成処理部と、電子通貨を取引する取引市場を管理する取引市場処理部と、を備え、前記通貨生成処理部は、前記電子通貨データに対して、前記電子通貨の発行責任者を識別するための発行責任者識別情報を付与する発行責任者識別情報付与部と、前記電子通貨データに対して、前記発行責任者が換金を約束する換金額を意味する換金額情報を付与する換金額情報付与部と、を備え、前記取引市場処理部は、前記電子通貨データの売希望者の取引者用計算機から送信される売注文データを受信すると共に、前記電子通貨データの買希望者の前記取引者用計算機から送信される買注文データを受信し、前記売注文データと前記買注文データを提示する板情報を生成する板処理部と、前記売注文データと前記買注文データを約定させる約定処理部と、前記約定の売買価格に基づいて、発行責任者に対する積立金額を算出する積立処理部と、を有することを特徴とする、電子通貨管理システムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、信頼性の高い電子通貨を発行・管理できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る電子通貨管理システムの全体構成を示すネットワーク図である。
図2】同電子通貨管理システムの通貨生成サーバ、承認サーバ、確定サーバ、台帳サーバ、回収サーバのプログラム構成を示すブロック図である。
図3】同電子通貨管理システムの取引者用計算機のプログラム構成を示すブロック図である。
図4】同電子通貨管理システムの取引市場サーバのプログラム構成を示すブロック図である。
図5】同電子通貨管理システムの移転サーバ、換金サーバ、統合管理サーバのプログラム構成を示すブロック図である。
図6】同電子通貨管理システムにおける電子通貨データの債権の根拠を説明するブロック図である。
図7】同電子通貨データのデータ構造を示すブロック図である。
図8】同取引市場サーバによって運用される取引構造を示すブロック図である。
図9】同取引市場サーバで生成される取引売買データの構造を示すブロック図である。
図10】(A)及び(B)は同取引市場サーバで生成される板情報を示す図であり、(C)及び(D)は、通貨束のデータ構造を示す図である。
図11】同取引市場サーバで生成される板情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る電子通貨管理システムについて添付図面を参照して説明する。
【0021】
図1には、電子通貨管理システム1の全体構成が示されている。電子通貨管理システム1は、複数の計算機がインターネット等の通信ネットワークNで接続されて構成される。なお、本実施形態では、電子通貨の単位として、便宜上「CAF」という記号を用いる。
【0022】
各計算機は、パーソナルコンピュータやサーバ装置の汎用計算機であり、電源、中央処理装置(CPU)、中央処理装置で処理される情報が展開されるメモリ、ハードディスクや不揮発性メモリ等によって構成される記憶媒体、通信ネットワークに接続される通信インタフェース、これらを接続する通信バス、情報を入力するための入力装置、情報が表示されるディスプレイ等を備える。なお、パーソナルコンピュータやサーバ装置の名称は便宜上のものであり、計算機として差異はなく、タブレットやスマートフォン等の携帯型の情報通信端末であってもよい。
【0023】
電子通貨管理システム1は、統合管理サーバ10と、通貨生成サーバ20と、承認サーバ27と、確定サーバ30と、台帳サーバ35と、回収サーバ38と、取引者用計算機40と、取引市場サーバ60と、移転サーバ80と、換金サーバ90を有する。
【0024】
<電子通貨の債権>
【0025】
まず、本実施形態の電子通貨に紐づけられる債権について説明する。本実施形態の債権は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく売電債権を想定している。再生可能エネルギーとは「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」と定義され、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマスなどが規定される。再生可能エネルギーは、資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しない優れたエネルギーである。この再生可能エネルギーの導入を促進するために、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(固定価格買取制度)」が整備されており、再生可能エネルギーで発電された電気を、電力会社が一定の価格で一定の期間買い取ることを、国が約束している。
【0026】
図6に、再生可能エネルギー電気事業者の事業構造を示す。例えば、20年の固定価格買取が約束される場合、再生可能エネルギー電気事業者は、電力会社に対して、20年間の売電債権を有していることになる。再生可能エネルギー電気事業者は、太陽光パネルや、風車等の発電設備を最初に準備しなければならず、その設備投資の金額は莫大となる。従って、再生可能エネルギー電気事業者は、売電債権の中の例えば初年度から15年間分の売電債権を、金融機関に譲渡担保又は質権設定することで、この金融機関から融資又は投資によって資金を調達し、この資金によって発電設備を準備する。従って、初年度から15年間に亘って、再生可能エネルギー電気事業者が得られる売電金銭は、その少なくとも一部(例えば50%)が強制的に融資の返済に充当される。しかも、15年間分の売電債権の全体は、譲渡担保又は質権に設定されるので、自由に処分することは許されない。
【0027】
一方、15年以降から20年までの5年間の売電債権は、依然として、再生可能エネルギー電気事業者が所有している。しかし、この売電債権は、時間的にしばらく先の将来収入となるため、その将来収入を、前もって、新規発電設備等に投資することができない。そこで、本実施形態では、例えば2.0億円が想定される売電債権を、リスクファクターを考慮して現在価値1.8億円に換算して金融機関が買い取ることで、金融機関が売電債権者となり、この売電債権に紐づけて金融機関が電子通貨を発行する。この結果、再生可能エネルギー電気事業者は、将来収入を事前に受け取ることが可能となり、次の新規設備投資に回すことができる。また、金融機関は、取得した売電債権による将来収入に紐づけて、電子通貨を発行することで、電子通貨の所有者(購入者)から、資金調達が可能となる。電子通貨の所有者(購入者)にとっても、金融機関によって発行され、なおかつ、売電債権が紐づけられている電子通貨であれば、安定性が高いと判断でき、安心して保有し続けたり、商取引に活用したりできる。また、電子通貨によって商取引を行う際に、取引者が、紐づけられている売電債権に関する情報を参照できるようにすれば、電子通貨の客観的な与信を行うこともできる。さらに、金融機関が、自らが発行した電子通貨を、法定通貨(円)に換金する旨を保証することで、より安定性の高い電子通貨となる。
【0028】
<電子通貨データ>
【0029】
単位CAFとなる電子通貨データ101は、図7(A)に示すように、この電子通貨の発行責任者(ここでは金融機関)を意味する発行責任者識別情報102と、この電子通貨と紐づいている債権(ここでは再生可能エネルギー電気事業者の売電債権)を意味する債権識別情報104と、この電子通貨を他の通貨(例えば、フィアット通過(法定通貨)、電子マネー、CAF以外の他の電子通貨を意味し、以下、第二通貨と称する)に交換することを保証する金額を意味する初期換金情報106Aと、この仮想通貨を売買する際に第二通貨として積み立てられるルールを示す積立ルール情報106Bを有する。なお、これまでの情報ブロックを、電子通貨データ101の初期ブロック101Sと定義する。なお、初期ブロック101Sの改ざんを防ぐために、ハッシュ値を生成するとともに、発行責任者の秘密鍵で、この初期ブロック101に署名を付すことが好ましく、更には、後述する確定サーバ30で確定処理を行ってもよい。
【0030】
更に、電子通貨データ101は、所有者の移転を意味する移転情報108と、発行責任者による移転承認を意味する承認情報109と、移転時の取引価格を意味する取引価格情報110と、積立ルール情報106B及び取引価格110に基づいて算出される積立金額を意味する積立金額情報112と、これまでのデータの少なくとも一部を暗号化するための情報である暗号化情報114と、通貨の移転(トランザクション)が確定したことを意味する確定情報116を有する。なお、これまでの情報ブロックを、電子通貨データ101の取引ブロック101Tと定義する。この取引ブロック101Tは、取引が行われる毎に生成され、T1、T2、T3・・・のように仮想通貨データ101に付加される。従って、いわゆるブロックチェーン方式のデータとなっている。
【0031】
図7(B)に、電子通貨データ101の具体例を示す。発行責任者識別情報102は金融機関コード(SWIFTコード)であり、債権識別情報104は、再生可能エネルギー事業者の設備認定ID又は事業計画承認IDであり、初期換金情報106Aは100円であり、積立ルール情報106Bは、「最終換金金額と取引価格の差額の50%」となる。
【0032】
また、第一の取引ブロック101T1に関して、移転情報108は、A氏からB氏への移転であり、承認情報109は金融機関による秘密鍵を用いた署名であり、取引価格情報110は130円であり、積立金額情報112は、今回の積立金額として(130円-100円)×0.5=15円であり、累計積立金額として15円となり、暗号化情報114は、A氏の公開鍵、ハッシュ値及びA氏の秘密鍵によって生成した署名であり、確定情報116はハッシュ値から算出されるナンス値となる。なお、取引終了時点の電子通貨データ101の現在換金金額は、初期換金金額と累計積立金額の和の115円となる。
【0033】
第二の取引ブロック101T2に関して、移転情報108は、B氏からC氏への移転であり、承認情報109は金融機関による署名であり、取引価格情報110は140円であり、積立金額情報112は、今回の積立金額として(140円-115円)×0.5=12.5円であり、累計積立金額として27.5円となり、暗号化情報114は公開鍵、ハッシュ値及びB氏の秘密鍵によって生成した署名であり、確定情報116はハッシュ値から算出されるナンス値となる。なお、取引終了時点の電子通貨データ101の現在換金金額は、初期換金金額と累計積立金額の和の127.5円となる。
【0034】
<通貨生成サーバ>
【0035】
図1に戻って、通貨生成サーバ20は、電子通貨の発行処理を行う計算機となる。この通貨生成サーバ20は、後述する各承認サーバ27等と同一計算機内にそれぞれ設けられても良い。通貨生成サーバ20は、図2に示すように、電子通貨データ101に発行責任者識別情報102を付与する発行責任者識別情報付与部22と、電子通貨データ101に債権識別情報104を付与する債権識別情報付与部23と、電子通貨データ101に対して、初期換金情報106Aを付与する換金情報付与部24を有する。なお、この換金情報付与部24は、電子通貨データ101に積立ルール情報106Bを付与しても良い。従って、この通貨生成サーバ20は、電子通貨の初期発行を担う機能となる。なお、発行時の初期換金情報の第二通貨の金額は、同じ電子通貨単位(本実施形態ではCAF)である限り、共通値(本実施形態では100円)を用いることが好ましい。例えば、1.8億円に相当する電子通貨(初期換金情報100円)を発行する場合、その量は180万CAFとなる。
【0036】
<承認サーバ>
【0037】
承認サーバ27は、発行責任者によって運営され、電子通貨データ101の取引、即ち所有者の移転を承認する承認処理を行う計算機となる。本実施形態において、発行責任者は金融機関となる。従って、承認サーバ27は、金融機関ごとに設けられているが、複数の金融機関で承認サーバ27を共有しても良く、承認機能として金融機関ごとに分割されていれば良い。具体的には、図2に示すように、承認サーバ27は移転承認処理部28を有しており、この移転承認処理部28が、後述する取引市場サーバ60や移転サーバ80からの、電子通貨データ101の移転承認要求を受け付けて、その移転が正しい内容か否かを判定し、承認情報109を返信する。従って、取引市場サーバ60や移転サーバ80は、まとめて取引される複数の電子通貨データ101に関して、これらの各電子通貨データ101の発行責任者識別情報102を参照して、対応する承認サーバ27に分散して承認情報109を収集する。
【0038】
なお、この移転承認処理部28は、金融機関(発行責任者)としての秘密鍵と公開鍵を有しており、この電子通貨データ101に公開鍵を付与するとともに、秘密鍵で暗号化(署名)して承認完了とすることもできる。
【0039】
<確定サーバ>
【0040】
確定サーバ30は、電子通貨データ101における所有者の移転(トランザクション)を最終確定させる確定処理を行う計算機となる。具体的に確定サーバ30は、図2に示すように、確定処理部32を有しており、所有者の移転(トランザクション)を意味する移転情報108に紐づいた暗号化情報114(ハッシュ値)に基づいて、所定のマイニング計算を行い、確定情報(例えばナンス値)116を生成して、電子通貨データ101に付与する。なお、ここでは、オープン環境のピア・トゥ・ピアネットワークで電子通貨データ101を管理するため、この確定サーバ30を利用したブロックチェーン方式で電子通貨データ101を管理しているが、第三者による改ざんの確率が低いクローズ環境の場合は、この確定サーバ30を省略することも可能である。
【0041】
<台帳サーバ>
【0042】
台帳サーバ35は、電子通貨データ101の移転履歴を保存する計算機である。本実施形態では、オープン環境のピア・トゥ・ピアネットワークで電子通貨データ101を管理するため、複数の台帳サーバ35に分散させて移転履歴を保存する。全ての台帳サーバ35は、図2に示すように台帳記録部36(データベース)を有しており、発行されている全電子通貨データ101が記録される。なお、ネットワークがクローズ環境の場合やサーバ・クライアント環境の場合は、単一の台帳サーバ35で管理してもよい。
【0043】
なお図1では、承認サーバ27、確定サーバ30、台帳サーバ35、後述する回収サーバ38が、発行責任者となる金融機関で運用される一台の計算機で同時に実現される場合を例示しているが、本発明はこれに限定されず、複数の計算機で実現されていてもよい。さらに、確定サーバ30や台帳サーバ35は、発行責任者以外の第三者によって運用されてもよい。
【0044】
<回収サーバ>
【0045】
回収サーバ38は、発行責任者である金融機関によって運用される計算機であり、移転依頼部38Aと換金処理部38Bとによって、自ら発行した電子通貨を、所有者からの換金要求に基づいて換金・回収処理を行う。この回収サーバ38は、発行責任者が取引者となる取引者用計算機40の一種となるが、後述するように、電子通貨データ101ごとに設定される換金金額によって、強制的に換金しなければならない義務を有する。従って、回収サーバ38は、電子通貨データ101を保有する取引者用計算機40から、自身が発行責任者となる電子通貨データ101の換金要求を受け付けた場合、移転依頼部38Aによって、移転サーバ80に対して、その所有者から自分への移転処理を依頼する。移転サーバ80による移転処理の完了と同時に、換金処理部38Bによって、その所有者の第二通貨の電子口座に対して、現在換金金額相当分の第二通貨を送金する。
【0046】
更に回収サーバ38は、積立金受領部39を有する。この積立金受領部39は、後述する取引市場サーバ60の積立処理部68から送金される積立金を受け取る。
【0047】
なお、回収した電子通貨データ101は、紐づいている債権が存続している限り、売り注文を取引市場に送信することで、再発行することもできる。この際、積立金額をリセットしても良い。
【0048】
<取引者用計算機>
【0049】
取引者用計算機40は、電子通貨データ101の所有者が利用する計算機である。この取引者用計算機40は、図3に示すように、移転依頼部42、入金処理部43、暗号化処理部44、売り注文処理部46、買い注文処理部48、債権確認部49を有する。
【0050】
移転依頼部42は、取引市場サーバ60や移転サーバ80に対して、送金相手への移転依頼を行う。なお、「移転依頼」には、送金元となる取引者を識別するためのアドレス情報と、送金先となる取引者を識別するためのアドレス情報と、移転を行う電子通貨データ101(又は移転確定依頼データ)を含む。これらの情報を移転依頼データとして送信する。なお、この「移転依頼」は、取引者用計算機40以外の取引市場サーバ60や換金サーバ90が行う移転依頼も同様である。移転依頼を受信した移転サーバ80は、承認サーバ27への移転の承認依頼を行い、その後、確定サーバ30に確定依頼を行うことで、移転を完了させる。なお、移転依頼部42が、移転サーバ80に直接的に移転依頼を行う場合以外にも、取引市場サーバ60や換金サーバ90を介して、移転依頼を行う場合もある。
【0051】
入金処理部43は、電子通貨データ101を第三者から受け取る処理を行う。具体的には、取引市場サーバ60や移転サーバ80にアクセスして、他人から自分への移転が完了した電子通貨データ101を受信し、電子財布に保管する処理を行う。
【0052】
暗号化処理部44は、移転依頼部42によって移転依頼を行う際に、自分の電子通貨データ101に暗号化情報114を付与する。この暗号化情報114は、自分の公開鍵と、それを付与した後のデータのハッシュ値と、これらのデータに基づいて秘密鍵で生成した署名データとなる。
【0053】
売り注文処理部46は、後述する取引市場サーバ60に対して売り注文データを送信する。買い注文処理部48は、取引市場サーバ60に対して買い注文データを送信する。
【0054】
債権確認部49は、自分が保有する電子通貨データ101の債権識別情報に基づいて、債権情報をディスプレイに表示する。従って、取引者は、再生可能エネルギー事業者の債権情報を閲覧可能となる。この債権情報は、発行責任者によって運営される承認サーバ27や通貨生成サーバ20、専用の債権情報配信サーバ(図示省略)等から配信されるようにしても良い。
【0055】
<移転サーバ>
【0056】
移転サーバ80は、電子通貨データ101の所有者の移転処理を行う計算機である。この移転サーバ80は、図5に示すように、移転受付処理部82、承認依頼部83、確定依頼部84、記帳依頼部85を有する。移転受付処理部82は、取引者用計算機40の移転依頼部42、取引市場サーバ60、回収サーバ38、換金サーバ90等からの移転依頼を受け付ける。承認依頼部83は、移転依頼を受け付けた電子通貨データ101に基づいて、承認サーバ27に承認依頼を行う。複数種類の金融機関が発行した複数の電子通貨データ101の束(通貨束)の移転依頼の場合は、これに対応する複数の承認サーバ27にそれぞれ承認依頼を行う。その結果、各電子通貨データ101には、承認情報109が付与される。確定依頼部84は、承認情報109が付与された各電子通貨データ101に基づいて、複数の確定サーバ30に確定依頼を行う。つまり、この確定依頼部84は、トランザクションプールとなって、確定サーバ30による確定待ちとなる。確定サーバ30から確定情報116は、各電子通貨データ101に付与される。記帳依頼部85は、確定情報116が付与された電子通貨データ101を、台帳サーバ35に対してブロードキャスト送信し、分散記帳して移転を終了させる。移転が終了したら、移転依頼主の計算機に移転完了データを送信する。
【0057】
<取引市場サーバ>
【0058】
取引市場サーバ60は、本電子通貨と異なる通貨を利用して、電子通貨データ101を売買する取引市場処理を行う計算機である。なお、この取引通貨は、本実施形態では、発行時の換金金額と同じ第二通貨、即ち法定通貨となる円による取引を例示するが、他の通貨で取引しても良い。この取引市場処理の基本構造を説明する。図8(A)に示すように、電子通貨1CAF(現在換金金額100円)を所有する取引者A氏は、取引市場に対して120円で売り注文を出す。ちなみに、この電子通貨は、現在換金金額100円が、金融機関の回収サーバ38によって保証されている。取引者A氏は、取引市場において、第二通貨(円)の入出金を行う電子口座を開設しておく必要がある。なお、将来、売買が成立した場合、電子通貨データに付与されている積立金ルールによって、売価格と現在換金金額の差額の50%となる10円は、金融機関の回収サーバ38に積立金として送金されることから、取引者A氏に実際に入金される金額(実入金)が110円になることは、取引者A氏も承知済みとなる。
【0059】
次いで、取引者A氏の売り注文に対して、取引者B氏が買い注文を取引市場に出す。取引者B氏は、第二通貨(円)の入出金を行う電子口座を開設しておき、さらにそこに120円を入金しておく必要がある。
【0060】
その結果、図8(B)に示すように、取引市場が、金融機関の承認サーバ27の承認に基づいて、取引者Aの売り注文と取引者Bの買い注文を約定し、売買を成立させる。その結果、電子通貨データ101は、A氏からB氏に移転される。これと同時に、B氏の電子口座の120円の内、110円を取引者A氏の電子口座に移動し、積立金10円を金融機関の電子口座に移動する。この結果、移動した電子通貨データ101の現在換金金額が110円となる。この現在換金金額110円は、初期換金金額と総(累積)積立金額の総和となる。
【0061】
このように、本実施形態の取引市場は、電子通貨データ110の換金金額を増大させながら取引が進展するので、自然に電子通貨データ101の価値が高まる。
【0062】
図4に示すように、取引市場サーバ60は、板処理部62、約定処理部64、換金処理部66、積立処理部68、移転依頼部70を有する。板処理部62は、電子通貨データ101の売希望者の取引者用計算機40から送信される売注文データを受信すると共に、電子通貨データ101の買希望者の取引者用計算機40から送信される買注文データを受信し、この売注文データと買注文データを提示する板情報を生成する。
【0063】
<板処理>
【0064】
具体的に板処理部62は、板表示部62A、売り注文受付部62B、買い注文受付部62C、積立金算出部62Dを有する。
【0065】
売り注文受付部62Bは、取引者計算機40からの売り注文データを受け付けて、板表示用のデータに変換する。図9の板表示用の単位通貨当たりの売り注文データ101Xは、通貨量、初期換金金額、総(累積)積立金額、その和となる現在価値(現在換金金額)、売値、積立比率(積立ルール)、実入金、今回の取引による積立額の増加額(積立増)となる。買い注文受付部62Cは、取引者計算機40からの買い注文データを受け付けて、板表示用のデータに変換する。図9の単位通貨当たりの買い注文データ101Yは、通貨量、初期換金金額、買取後の総(累積)積立金額、買取後の想定現在価値(現在換金金額)、買値、積立比率(積立ルール)、実払金となる。
約定処理部64は、これらの売り注文と買い注文が一致するか否かを判定して、一致したら仮約定とし、電子通貨データの移転と、第二通貨の移転・積立を意味する約定データ101Zを仮生成する。なお、約定処理部64による仮約定の最終確定(本約定)は、移転依頼部70及び移転サーバ80を介して、承認サーバ27からの承認データを受け付けた後となる。所定時間経過しても承認サーバ27で承認されない場合は、仮約定を破棄して、約定前の状態に戻す。
【0066】
なお、図9では、同じ電子通貨データ101について、A氏からB氏への移転(約定)、B氏からC氏への移転(約定)、C氏からD氏への移転(約定)、C氏から発行元となる金融機関への移転(回収)の流れを示している。B氏のように、A氏からの購入金額よりも高い実入金額でC氏に売却できれば利益となる。一方、C氏のように、在換金金額と同じ又はそれに近い金額で売却したとしても、B氏からの購入金額を下回れば、損益となる場合もある。ただし、現在換金金額による金融機関での回収が保証されているので、現在換金金額より安い売値で、金融機関以外の第三者に売ることは、本取引市場では想定されない。ただし、万が一、現在換金金額よりも安い売値で売買が成立した場合は、積立金の一部を取り崩して、売却者に補填することもできる。いずれにしろ、積立ルールが継続的に維持されていれば問題ない。
【0067】
<通貨束>
【0068】
実際の売り注文や買い注文は、単位通貨(1CAF)ではなく、複数通貨(複数CAF)がまとまったものになる。しかも、発行責任者が互いに異なる複数通貨の束として、売り注文を出す場合もある。更に、現在換金金額が互いに異なる複数通貨を通貨束として売り注文を出す場合もある。
【0069】
図10(C)及び(D)に、ステータスが互いに異なる複数の通貨によって構成される通貨束101Mによって、仮に売り注文を出す場合の売り注文データ101Xの表示方法を示す。これらのデータは、売り注文受付部62Bが算出する。
【0070】
図10(C)に示す売り注文データ101Xでは、ステータスが完全に一致する複数の通貨が束ねられた2グループの個別束101M1、101M2を有する。例えば、個別束101M1は、発行責任者Pによって発行された、現在換金価格が100円のCAFが1CAFの束となる。個別束101M2は、発行責任者Qによって発行された、現在換金価格が130円のCAFが3CAFの束となる。なお、各個別束101M1、101M2には、売り値(140円と170円)と、この売り値と現在換金価格の差である単位差(+40円、+40円)と、この単位差を通貨量(1CAF、3CAF)で積算した個別束差(+40円、+120円)が算出される。
【0071】
更に、これらを個別束101M1、101M2を更に束ねた総通貨束のデータ101Nとして、総量(4CAF)、保証されている換金総額(490円)、総売り値(650円)、単位通貨当たりの差(+40円)、総差(+160円)が算出される。従って、この総通貨束データ101Nを見れば、現在価値となる換金総額が490円となる通貨束を、売主が、650円で売ることを希望しており、取引が約定されると、積立金(換金総額)が80円増加することが分かる。
【0072】
図10(D)に示す売り注文データ101Xでは、ステータスが完全に一致する複数の通貨が束ねられた2グループの個別束101M1、101M2を有する。例えば、個別束101M1は、発行責任者Rによって発行された、現在換金価格が100円のCAFが8CAFの束となる。個別束101M2は、発行責任者Sによって発行された、現在換金価格が130円のCAFが24CAFの束となる。なお、各個別束101M1、101M2には、売り値(105円と135円)と、この売り値と現在換金価格の差である単位差(+5円、+5円)と、この単位差を通貨量(8CAF、24CAF)で積算した個別束差(+40円、+120円)が算出される。なお、個別束差だけを見れば、図10(C)と同じであることが分かる。
【0073】
更に、これらを個別束101M1、101M2を更に束ねた総通貨束のデータ101Nとして、総量(32CAF)、保証されている換金総額(3920円)、総売り値(4080円)、単位通貨当たりの差(+4円)、総差(+160円)が算出される。従って、この総通貨束データ101Nを見れば、現在価値となる換金総額が3920円となる通貨束を、売主が、4080円で売ることを希望しており、取引が約定されると、積立金(換金総額)が80円増加することが分かる。
【0074】
なお、本実施形態では、売り注文に関して、単位差を全て共通に設定しなければならないルールが適用される。このようにすると、売主は、通貨束と単位差を指定するだけで良く、売り注文受付部62Bによって、全ての売り注文データ101Xを自動算出できる。なお、買い注文受付部62Cも、この売り注文受付部62Bと全く同様であるので、説明を省略する。
【0075】
ちなみに、売主側から視れば、できる限り高く売りたいので、単位差が大きい方が望ましい。一方、買主側から視れば、できる限り安く買いたいので、単位差が小さい方が望ましい。従って、図10(C)と(D)を比較すると、買主にとっては、図10(D)の通貨束の方が、単位差が小さいので望ましいことになる。
【0076】
<板情報の表示>
【0077】
板表示部62Aは、未約定となる売注文データと買注文データが蓄積される板情報を生成し、取引者計算機40によって閲覧可能にする。図10(A)及び(B)に示すように、板情報180は、約定前の複数の売注文データ101Xのリストと、複数の買い注文データ101Yのリストが表示される情報となる。
【0078】
図10(A)の板情報180は、主として、各売注文データ101Xと買注文データ101Yにおいて、総通貨束のデータ101Nの原換金総額と総売値と総差を表示し、総差の大小関係で並べた場合を示す。
【0079】
一方、図10(B)の板情報180は、主として、各売注文データ101Xと買注文データ101Yにおいて、総通貨束のデータ101Nの原換金総額と単位差を表示し、単位差の大小関係で並べた場合を示す。売主や買主は、この板情報を閲覧しながら、相手側の売り注文/買い注文データと合致する売り注文又は買い注文を市場に発注することで、約定が成立していく。いずれにしろ、取引者は、この板情報180における、各売注文データ101Xと買注文データ101Yの開き(スプレッド)を確認することで、いわゆる相場を把握できる。図10(A)では、総差のスプレッドを確認でき、図10(B)では、単位差のスプレッドを確認できる。
【0080】
更に板表示部62Aは、買希望者の取引者用計算機40からの要求に基づいて、図11に示すように、売注文データ101Xに含まれる電子通貨データの発行責任者識別情報に基づく発行責任者や債権識別情報に基づく債権情報を送信する。このようにすることで、発行責任者や債権に関して、与信判断を行いながら、売買を発注する事が可能となる。
【0081】
<約定による移転>
【0082】
既に述べたように、約定処理部64は、売注文データ101Xと買注文データ101Yが一致した場合に、仮約定したことを意味する約定データ101Zを生成する。約定データ101Zが生成されると、換金処理部66と積立処理部68と移転依頼部70が起動する。換金処理部55は、買主の第二通貨口座から買値相当金を取得し、その一部となる売却金額相当を売主の第二通貨口座に送金する。積立処理部68は、買値相当金の一部となる積立金を、発行責任者の第二通貨口座に送金して積み立てる。通貨束となる場合は、各発行責任者の第二通貨口座にそれぞれ送金する。移転依頼部70は、移転サーバ80に対して、約定データ101Zに含まれる取引者の移転処理を依頼する。なお、換金処理部66と積立処理部68による換金処理は、移転サーバ80から送金完了データ(これには承認サーバによる承認を含む)を受信してから行うことになる。
【0083】
<換金サーバ>
【0084】
換金サーバ90は、取引者が、複数の通貨束をまとめて第二通貨に換金する処理を担う計算機となる。図5に示すように、換金サーバ90は、換金受付部92と、分散回収依頼部94を有する。換金受付部92は、取引者用計算機40から、複数の通貨束について、換金依頼を受け付ける。分散回収依頼部94は、取引者に代わって、この通貨束に含まれる複数の発行責任者の各回収サーバ38に対して、各電子通貨データ101の換金(回収)を要求する。取引者に代わって換金した第二通貨は、取引者の電子口座にまとめて入金される。これにより、取引者が、各金融機関の回収サーバ38のそれぞれに、換金依頼する手間を省略できる。
【0085】
<統合管理サーバ>
【0086】
図5に示すように、統合管理サーバ10は、総価値算出部12と、平均価値算出部14を有する。総積立金算出部12は、発行済みで市場に出回っている電子通貨データ101、即ち、台帳サーバ35に記録が残存している電子通貨データ101の情報を収集して総通貨束とし、総量、総換金価格情報、総積立金情報等を算出する。平均価値算出部14は、この総通貨束の集計情報に基づいて、単位通貨束の平均値を算出する。これらの情報は、あらゆる市場参加者の計算機で閲覧できるようにする。
【0087】
以上、本実施形態の電子通貨管理システム1によれば、電子通貨データ101に発行責任者識別情報や債権識別情報が付与されている。従って、発行責任者と、その価値の根拠となる債権の所在が明確化されるので、電子通貨の安全性を高めることができる。例えば、債権識別情報として、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく売電債権の情報を付与することで、電子通貨の利用者に対して、再生可能エネルギーや環境問題への関心を高める効果も得られる。更に、売電債権のように、将来の収入が約束されている債権保有者は、この債権を、金融機関等の発行責任者に譲渡、譲渡担保、質権設定等を行うことで、その債権の現在価値に換算した分だけ、金融機関から資金を調達したり、電子通貨として先に受け取ったりすることができる。仮に電子通貨として受け取った場合は、取引市場を通じて第二通貨(現金)化できるので、結果として、資金調達と同じことになる。なお、債権には、売電債権以外にも、不動産における賃貸収入等の賃料債権や、融資等によって生じる利息収入の債権等も含めることが出来る。
【0088】
更に本実施形態では、図11に示すように、電子通貨データ101の取引市場において、発行責任者や債権情報を確認しながら取引することも可能となっている。従って、電子通貨データ101を選別しながら売買することも可能となり、安全な電子通貨であれば、取引回数が増えて、積立金額が上昇する傾向となる。
【0089】
また更に、本電子通貨管理システム1では、発行責任者による承認サーバ27(移転承認処理部)によって、電子通貨データ101の移転を承認する仕組みとなっているので、不正取引等を監視することも可能となる。特に、取引市場における取引においても、承認サーバ27の承認が要求されるので、安全な取引が担保される。
【0090】
また、本電子通貨管理システム1では、取引市場サーバ60での取引の際に、積立処理部66によって、約定の売買価格に基づいて、発行責任者に対する積立金額を算出して、第二通貨による積立が行われる。この結果、電子通貨データ101の換金金額が、取引に連動して増加するので、取引金額(売買金額)と換金金額の乖離を抑制できる。また、電池通貨市場における積立金額の増加は、客観性を伴った電子通貨自体の価値増加となるので、結果として、取引市場のボリュームの増大につながる。例えば、積立金額の増大に伴って、最初は1CAFを基準としていた取引が、やがて0.5CAFを基準とした取引となり、更に0.1CAFを基準とした取引に変化する。これは実質的な電子通貨の流通量の増大となる。
【0091】
なお、本実施形態では特に例示していないが、電子通貨データ101には、換金期限を設定することが好ましい。この換金期限は、例えば、債権の終了期日に設定できる。換金期限を設定することで、適切に電子通貨を回収して、安全に収束させることが可能となる。勿論、債権の種類は特に限定されるものではないため、同じCAF市場の中でも、様々な債権に紐づけられた電子通貨が発行されて、回収されていく。このような債権を、電子通貨に紐づけておくことで、確かな根拠に基づいた通貨市場を創出できると共に、債権保有者は、この電子通貨市場を介して、事前に、資金調達できることになる。
【0092】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
1 電子通貨管理システム
10 統合管理サーバ
20 通貨生成サーバ
27 承認サーバ
30 確定サーバ
35 台帳サーバ
38 回収サーバ
40 取引者用計算機
60 取引市場サーバ
80 移転サーバ
90 換金サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11