(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】庇
(51)【国際特許分類】
E04F 10/08 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
E04F10/08
(21)【出願番号】P 2018104847
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591181562
【氏名又は名称】アルフィン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 実
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-068178(JP,A)
【文献】特開2005-314923(JP,A)
【文献】実開昭61-067325(JP,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2013-0005039(KR,U)
【文献】特開2015-042842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 10/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
庇板と、建物の外壁に固定され
る背板部及び前記背板部の前面より突出し前記庇板の後端部を全長にわたり上下から挟んで保持する一対の保持板部を有する保持具と、前記保持具の上側の保持板部と前記庇板の後端部との間に介在させる帯板状のシール材とを含み、
前記各保持板部は、複数の対向する位置を貫通するボルト通し孔を有し、各ボルト通し孔と前記庇板の後端部に設けられたボルト貫通孔とに通されたボルトにより庇板の後端部と上下の保持板部との間が締め付けられ
ることにより上下の保持板部間の溝が閉じる方向へ撓むことが可能な可撓性を有しており、前記シール材は、前記ボルト通し孔の前側に位置し、上側の保持板部が撓むことで上側の保持板部の下面と庇板の後端部の上面とに密接して上側の保持板部と庇板の後端部との間
を前記ボルト通し孔の前側の位置で止水する庇。
【請求項2】
前記シール材は、前記上側の保持板部の下面に設けられた凹溝内に位置する請求項
1に記載の庇。
【請求項3】
前記シール材は、前記凹溝の溝底に接着されている請求項
2に記載の庇。
【請求項4】
前記ボルトは、ボルトの頭部が上側の保持板部の上面に支持され、ボルトの軸部が下側の保持板部のボルト通し孔より下方へ突出してナットがねじ込まれる請求項1に記載の庇。
【請求項5】
前記保持具は、前記背板部の前面に前記一対の保持板部が一体形成されたものである請求項1に記載の庇。
【請求項6】
前記保持具は、前記庇板より上方に位置する第1の背板部と、前記第1の背板部から独立し前記庇板より下方に位置する第2の背板部とを有し、前記第1の背板部は、前面より突出する上側の保持板部を一体に備え、前記第2の背板部は、前面より突出し上側の保持板部と対向する下側の保持板部を一体に備える請求項1に記載の庇。
【請求項7】
前記保持具は、前記庇板より上方に位置する第1の背板部と、前記第1の背板部より独立し前記庇板より下方に位置する第2の背板部とを有し、前記第1の背板部は、前面より突出する上側の保持板部を一体に備え、前記第2の背板部は、前面より突出し上側の保持板部と対向する下側の保持板部を一体に備え、第1の背板部と第2の背板部の少なくとも一方は、上側の保持板部と下側の保持板部との間へ突出する突板部を一体に備える請求項1に記載の庇。
【請求項8】
前記保持具上に被せられる上部カバーをさらに含み、前記上部カバーは、前端部に前記庇板の後端部の上面に突き当てられ複数箇所がねじ止めされる固定部を有し、前記固定部と庇板の後端部の上面との間が帯板状の第2のシール材により止水される請求項1~
7のいずれかに記載の庇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、庇板が前方へ張り出すように建物の外壁に設置される防水構造を備えた庇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、その種の庇として、
図9に示すように、建物の外壁に取り付けられた保持具100により庇板101の後端部が全幅にわたって保持された構造のものがある(例えば特許文献1参照)。建物の外壁は、外装パネルのような外壁材により覆われている。保持具100は外壁材の表面uに取り付け固定される。庇板101は、複数の板材を側端面が互いに突き合わされるようにして幅方向に連結されている。
【0003】
保持具100は、建物の外壁に複数本のボルト102によって固定される背板部103と、背板部103の前面に一体形成される上下一対の保持板部104,105とを有する。上側の保持板部104と下側の保持板部105との間には庇板101の後端部が差し込まれる。庇板101の後端面は背板部103の前面に突き当たっており、この状態で庇板101の後端部が上下の保持板部104,105間に挟まれた状態でボルト106およびナット107により締め付け固定される。
【0004】
保持具100には、上部カバー108と下部カバー111とが上下から被せられている。上部カバー108の前端部は庇板101の上面に突き当たり、後端部は背板部103の上端部にねじ止めされる。上部カバー108の前端部と庇板101との間および上部カバー108の後端部と外壁材の表面uとの間にコーキング材109,110がそれぞれ充填される。
【0005】
庇を建物の外壁に設置するには、保持具100を複数のボルト102により建物の外壁に取り付けた後、保持具100の上下の保持板部104,105間に庇板101の後端部を差し込み、ボルト106およびナット107により締め付け固定する。その後、保持具100の上下に上部カバー108および下部カバー111を装着する。
上記の組立作業が完了した後、上部カバー108の前端部と庇板101の後端部との間および上部カバー108の後端部と外壁材の表面uとの間にコーキング材109,110をそれぞれ充填する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コーキング材109,110の充填作業は、高所での作業であるため、作業効率が悪く、この作業に多くの時間が費やされる。また、充填されたコーキング材109,110は、直接雨水に晒されるため、劣化が早く、頻繁に補修する必要があり、保守、管理に手数を要する。
【0008】
この発明は、上記の問題に着目してなされたもので、庇設置作業を効率化し、庇設置後は保守、管理に手数を要しない庇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による庇は、庇板と、建物の外壁に固定される背板部及び背板部の前面より突出し庇板の後端部を全長にわたり上下から挟んで保持する一対の保持板部を有する保持具と、保持具の上側の保持板部と庇板の後端部との間に介在させる帯板状のシール材とを含む。各保持板部は、複数の対向する位置を貫通するボルト通し孔を有し、各ボルト通し孔と庇板の後端部に設けられたボルト貫通孔とに通されたボルトにより庇板の後端部と上下の保持板部との間が締め付けられることにより上下の保持板部間の溝が閉じる方向へ撓むことが可能な可撓性を有する。シール材は、ボルト通し孔の前側に位置し、上側の保持板部が撓むことで上側の保持板部の下面と庇板の後端部の上面とに密接して上側の保持板部と庇板の後端部との間をボルト通し孔の前側の位置で止水する。
【0010】
上記した構成の庇は、建物の外壁に保持具を取り付けた後、保持具の上下の保持板部間に庇板の後端部を差し込み、ボルトにより締め付け固定する。
この締め付けによって、帯板状のシール材は上側の保持板部と庇板の後端部との対向する各面に密接するので、上側の保持板部と庇板の後端部との間がシール材により全幅にわたり止水され、雨水が保持具内に浸入して流下するのが阻止される。シール材はその上面に上側の保持板部が被さるので、雨水に直接晒されず、劣化が抑えられる。
【0011】
シール材は、ボルト通し孔の前側の位置で、上側の保持板部と庇板の後端部との間を止水するのが望ましく、ボルト通し孔の前側と後側の両方の位置で止水するようにしてもよい。
【0012】
シール材は、位置ずれ防止のために、上側の保持板部の下面に設けられた凹溝内に位置させるのが望ましく、さらに、凹溝の溝底に接着されるのが望ましい。
【0013】
この発明の一実施態様においては、ボルトは、ボルトの頭部が上側の保持板部の上面に支持され、ボルトの軸部が下側の保持板部のボルト通し孔より下方へ突出してナットがねじ込まれる。
【0014】
保持具は種々の態様のものが考えられるが、その一実施態様は、背板部の前面に一対の保持板部が一体形成されたものである。
【0015】
他の実施態様の保持具は、庇板より上方に位置する第1の背板部と、第1の背板部から独立し庇板より下方に位置する第2の背板部とを有する。第1の背板部は、前面より突出する上側の保持板部を一体に備える。第2の背板部は、前面より突出し上側の保持板部と上下に対向する下側の保持板部を一体に備える。
【0016】
さらに他の実施態様の保持具は、庇板より上方に位置する第1の背板部と、前記第1の背板部より独立し庇板より下方に位置する第2の背板部とを有する。第1の背板部は、前面より突出する上側の保持板部を一体に備える。第2の背板部は、前面より突出し上側の保持板部と上下に対向する下側の保持板部を一体に備える。第1の背板部と第2の背板部の少なくとも一方は、上側の保持板部と下側の保持板部との間へ突出する突板部を一体に備える。
【0017】
この発明による庇は、庇板と保持具とシール材に加えて、保持具上に被せられる上部カバーをさらに含むものである。
上部カバーは種々の態様のものが考えられるが、その一実施態様は、前端部に庇板の後端部の上面に突き当てられ複数箇所がねじ止めされる固定部を有し、固定部と庇板の後端部の上面との間が帯板状の第2のシール材により止水される。
【発明の効果】
【0018】
この発明によると、高所でのコーキング材の充填作業が減少するうえに、庇板の後端部を保持具に固定する作業によってシール材も設置されるので、庇設置作業が効率化される。また、シール材は直接雨水に晒されないので、劣化が進みにくく、保守、管理に手数を要しない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1の実施態様の庇の構成を示す断面図である。
【
図4】保持具に庇板が組み付けられる状態を示す斜視図である。
【
図5】保持具に庇板が組み付けられる状態を示す断面図である。
【
図6】他の実施態様の庇の構成を示す断面図である。
【
図7】他の実施態様の庇の構成を示す断面図である。
【
図8】他の実施態様の庇の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は一実施態様の庇の外観を、
図2はその庇の構造を、それぞれ示す。
図示の庇1は、建物の外壁から張り出すように設置されるもので、庇板2と、建物の外壁に固定され庇板2の後端部を全幅にわたって保持する保持具3と、庇板2の前端縁に全幅にわたって装着される前縁板4と、保持具3上に被せられる上部カバー5と、保持具3に下方より被せられる下部カバー6とを含む。庇板2、保持具3、前縁板4、上部カバー5、および下部カバー6を構成する材料にはアルミニウムの押出型材が用いられる。
図1において、10は保持具3の両端の開放部分を塞ぐ端板である。なお、以下の説明において、庇板2が建物の外壁から張り出す方向を「前後方向」、前後方向および上下方向と直交する方向を「幅方向」という。
【0021】
庇1は、庇板2がわずかに前側へ低く傾いた前下がり状態で保持具3により庇板2の後端部が保持される。なお、建物の外壁からの張出し量や幅が大きな庇については、必要に応じて、庇板2の少なくとも1箇所をサポートポールにより支持するのが望ましい。また、庇板2は後側へ低く傾いた後下がり状態で後端部を保持するようにしてもよい。
【0022】
建物の外壁は、外装パネルのような外壁材Xにより表面が覆われている。以下の説明において、建物の外壁は、外壁材Xにより覆われる面を「下地面w」といい、外壁材Xの表面uと区別する。
【0023】
庇板2は、
図1および
図3に示すように、側端面を互いに付き合わせて幅方向に連結される複数の中間板材21と、両側位置の中間板材21の外側端面にそれぞれ連結される側板材22,22とで構成される。各中間板材21は両側端面に第1、第2の各係合片23,24を備える。各側板材22は内側端面に中間板材21の第1の係合片23と係合する第2の係合片24、または中間板材21の第2の係合片24と係合する第1の係合片23のいずれかを備える。第1、第2の各係合片23,24は、隣合う板材の一方を他方に対して前後方向へ摺動させることにより係合するもので、
図4には中間板材21を矢印qで示す前後方向へ摺動させて組み付けている状態が示されている。
【0024】
各中間板材21の内部には、補強のためのリブ26が一体形成され、さらに、各リブ26の位置に補強板25が設けられている。なお、庇板2は、種々の態様のものがあり、複数の中空の板材を連結した
図3に示す構成態様のものに限らず、例えば全体が一枚構成のものであってもよい。
【0025】
保持具3は、建物の下地面wに背面を密接させて複数のアンカーボルト8により固定される背板部31と、背板部31の前面より突出し庇板2の後端部を上下から挟んで保持する一対の保持板部32,33とを有する。上側の保持板部32と下側の保持板部33とは互いに平行であり、上下に対向している。上側の保持板部32と下側の保持板部33との間は、庇板2を構成する各中間板材21および各側板材22の後端部が挿入される溝34を構成する。上下の保持板部32,33は背板部31の前面に一体に形成されており、上下方向へわずかな可撓性を有し、後述するボルト9およびナット92により上下方向へ締め付けられたとき、溝34が閉じる方向へわずかに撓む。
【0026】
溝34は、
図4に示すように、庇板2を構成する各板材21,22の後端部を前方より差し込むことが可能な溝幅を有し、前面が全長にわたって開放されている。上側の保持板部32は、
図5に示すように、わずかに上開きであり、下側の保持板部33はわずかに下開きである。溝34の溝底での溝幅d
2は各板材21,22の後端部の厚みとほぼ一致しており、溝34の溝開口部での溝幅d
1は、d
1>d
2である。
【0027】
背板部31および上下の保持板部32,33は、庇板2の全幅に対応する長さを有する。背板部31には、上下の保持板部32,33間の位置に、アンカーボルト8が挿入されるボルト挿通孔35が一定間隔毎に横一列に設けられている。
図2において、82はアンカーボルト8の頭部80と背板部31との間に介在させる座金である。
【0028】
上下の保持板部32,33の複数の対向する位置には、
図2および
図4に示されるように、貫通するボルト通し孔36,37がそれぞれ設けられる。庇板2の後端部の各ボルト通し孔36,37に対応する位置にはボルト貫通孔27が設けられる。各ボルト通し孔36,37とボルト貫通孔27とは上下に連通し、これらの孔に一連に通されたボルト9の軸部91にナット92がねじ込まれることにより庇板2の後端部は上下の保持板部32,33間に挟着されて固定される。
【0029】
ボルト9は、上側の保持板部32の上方より軸部91がボルト通し孔36へ挿入され、中間板材21または側板材22のボルト貫通孔27および下側の保持板部33のボルト通し孔37を一連に貫通する。ボルト9の頭部90は上側の保持板部32の上面に支持される。ボルトの軸部91は下側の保持板部33のボルト通し孔37より下方へ突出し、ナット92がねじ込まれる。
図2において、93はボルトの頭部90と上側の保持板部32との間に介在させる座金、94はナット92と下側の保持板部33との間に介在させる座金である。
【0030】
なお、ボルト9は、下側の保持板部33の下方より軸部91をボルト通し孔37へ挿入してもよい。この場合、ボルト9の頭部90は下側の保持板部33の下面に支持され、軸部91は上側の保持板部32のボルト通し孔36より上方へ突出し、ナット92がねじ込まれる。
【0031】
上側の保持板部32と庇板2の後端部との間には、帯板状のシール材7が庇板2の全幅にわたって設けられる。シール材7は、ボルト9に対するナット92の締め付けによって上側の保持板部32が下方に撓むので、上側の保持板部32の下面と庇板2の後端部の上面とに密接する。これによって、シール材7は、ボルト通し孔36の前側の位置で、上側の保持板部32と庇板2の後端部との間を止水する。
【0032】
シール材7は、全長にわたって同一幅、同一厚みを有しており、上側の保持板部32の下面に形成された一定深さの凹溝38内に嵌まった状態で定位する。凹溝38は庇板2の全幅にわたり、前端面および両側端面が開放されているが、このような開放された形態に限られるものではない。シール材7は、凹溝38の溝底に接着剤により貼設されるが、接着は必ずしも必要ではない。なお、シール材7を凹溝38の溝底に接着するのに、表裏両面に粘着層を有する粘着テープを用いるとよい。
【0033】
シール材7として、天然ゴム、シリコンゴムのような合成ゴムなど、弾性を有するものが好適であるが、止水が可能であれば、弾性を有するものに限定されず、例えば植物繊維や皮革などを用いてもよい。シール材7が弾性を有する場合、シール材7の厚みを凹溝38の溝深さよりわずかに大きく設定することにより、ボルト9に対するナット92の締め付けによりシール材7が溝深さに対応する厚みにまで圧縮変形するので、水密性が高められる。
【0034】
保持具3の背板部31の上端部には、斜め上方へ突出する第1の係合突起32aが、下側の保持板部33の下面には下方へ突出する第2の係合突起32bが、それぞれ全幅にわたり一体に形成されている。第1の係合突起32aには上部カバー5の下面に下向きに突設された突片50が係合する。第2の係合突起32bには下部カバー6の後端縁が係合する。下部カバー6の前端縁は下側の保持板部33の前端縁に係合する。
【0035】
上部カバー5の前端部には、庇板2の後端部の上面に全幅にわたって突き当てられ複数箇所がねじ止めされる第1の固定部51が設けられる。上部カバー5の後端部には建物の外壁の下地面wに突き当てられ複数箇所がねじ止めされる第2の固定部52が設けられる。
【0036】
第1の固定部51は、上部カバー5の前端部に屈曲させて形成された帯板状の前縁部53を有し、前縁部53に複数個の孔53aが幅方向へ一定間隔で形成されたものである。各孔53aにねじ54が通され、庇板2の後端部にねじ込まれることにより上部カバー5の前端部が庇板2の後端部の上面に固定される。前縁部53の下面には、前端面および両側端面が開放された凹溝55が全幅にわたって形成され、凹溝55に帯板状の第2のシール材56が嵌め込まれて止水される。
【0037】
第2の固定部52は、上部カバー5の後端部に屈曲させて形成された帯板状の後縁部57を有し、後縁部57に複数個の孔57aが幅方向へ一定間隔で形成されたものである。後縁部57は建物の外壁の下地面w上であって外壁材Xの背後に位置している。各孔57aに皿状のねじ58が通され、外壁の下地面wにねじ込まれることにより上部カバー5の後端部が外壁の下地面wに固定される。
【0038】
上部カバー5は、第1の固定部51と第2の固定部52との間が前側へ低く傾斜し湾曲する傾斜部50aとなっている。傾斜部50aの緩やかに傾斜する後部と外壁材Xの下端部との間に隙間sがある。隙間sには後部側に緩衝材としての弾性材59aが嵌められ、前部側にコーキング材59bが充填されている。コーキング材59bは、隙間sを埋めて防水性を得るためのもので、その機能に加えて、地震の揺れ等に対して緩衝材としても機能する。
【0039】
図6~
図8は、他の実施態様の庇をそれぞれ示している。各実施態様における保持具3は、庇板2の上方に位置する第1の背板部31Aと、第1の背板部31Aから独立し庇板2の下方に位置する第2の背板部31Bとを有する。第1の背板部31Aは、前面より突出する上側の保持板部32を一体に備える。第2の背板部31Bは、前面より突出し上側の保持板部32と対向する下側の保持板部33を一体に備える。
【0040】
図6に示す実施態様は、第1の背板部31Aと第2の背板部31Bとが完全に分離し独立した態様のものである。第1、第2の各背板部31A,31Bは、アンカーボルト8により建物の外壁の下地面wにそれぞれ固定される。庇板2の後端面は下地面wに突き当たっている。
【0041】
図7,8に示す実施態様は、第1の背板部31Aと第2の背板部31Bとを互いに係合して連結させた態様のものである。第1、第2の各背板部31A,31Bは、それぞれ複数のアンカーボルト8により建物の外壁の下地面wに固定されている。
図7に示す実施態様では、第2の背板部31Bに第1の背板部31Aに向けて突出する突板部31Cを一体に備えている。突板部31Cの先端部と第1の背板部31Aの下端部との間には、互いに係合する係合凸部39aと係合凹部39bとがそれぞれ形成されている。庇板2の後端面は突板部31Cの前面に突き当たる。
【0042】
図8に示す実施態様では、第1、第2の各背板部31A,31Bは、下側の保持板部33と上側の保持板部32との間へ突出する突板部31C,31Dをそれぞれ一体に備えたものである。各突板部31C,31Dの先端部間には互いに係合する係合凹部39bと係合凸部39aとがそれぞれ形成されている。庇板2の後端面は両方の突板部31C,31Dの前面に突き当たる。
【0043】
図6~
図8の各実施態様においても、上側の保持板部32と庇板2の後端部との間に帯板状のシール材7が庇板2の全幅にわたって設けられている。シール材7は、ボルト9に対するナット92の締め付けによって上側の保持板部32と庇板2の後端部との対向する各面に密接する。なお、シール材7の上側の保持板部32への取付構造は、
図2に示す実施態様と同様であり、ここでは対応する構成に同一の符号を付することで説明を省略する。
【0044】
上記の各実施態様においては、上部カバー5の前端部は上側の保持板部32の前端部に、後端部は第1の背板部31Aの上端部に、それぞれ係合させているだけであり、
図2の実施態様のようにねじ止めされていない。
【0045】
上記した構成の庇1を建物の外壁に設置するには、まず、建物の外壁の下地面wに複数本のアンカーボルト8により保持具3を水平に取り付ける。つぎに、
図4に示されるように、保持具3の上下の保持板部32,33間の溝34内へ庇板2を構成する側板材22および中間板材21の後端部を順次差し込み、上側の保持板部32のボルト通し孔36よりボルト9を挿入して庇板2のボルト貫通孔27および下側の保持板部33のボルト通し孔37を通し、ボルト9に対してナット92を締め付け固定する。
【0046】
庇板2の後端部を保持具3に固定するためのボルト9、ナット92の締め付けによって、帯板状のシール材7が上側の保持板部32の凹溝38の溝底と庇板2の後端部の上面とに密接し、上側の保持板部32と庇板2の後端部との間がシール材7により庇板2の全幅にわたり止水され、保持具3の内部への雨水の浸入が阻止される。
【0047】
その後、保持具3上に上部カバー5を被せ、また、保持具3の下方から下部カバー6を被せる。下部カバー6は前端部および後端部を保持具3に係合させて取り付けられる。上部カバー5は、第1の固定部51の前縁部53を庇板2の後端部の上面に突き当ててねじ54によりねじ止めし、第2の固定部52の後縁部57を建物の外壁の下地面wに当ててねじ58によりねじ止めする。その後、建物の外壁の下地面wを外壁材Xで覆った後、外壁材Xの下端と上部カバー5の後端部との隙間sに弾性材59aを嵌め、コーキング材59bをコーキングガンなどで充填する。
【0048】
シール材7はその上面に上側の保持板部32が被さり、上方が上部カバー5によりさらに覆われるので、雨水に直接晒されず、劣化が抑えられる。
【符号の説明】
【0049】
1 庇
2 庇板
3 保持具
5 上部カバー
7 シール材
9 ボルト
27 ボルト貫通孔
31 背板部
31A 第1の背板部
31B 第2の背板部
31C,31D 突板部
32,33 保持板部
36,37 ボルト通し孔
38 凹溝
51 第1の固定部
52 第2の固定部
56 第2のシール材
92 ナット