(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】レーザ加工可能な農業用フィルム及び農業用フィルムのレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20220517BHJP
A01G 9/14 20060101ALI20220517BHJP
A01G 13/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
A01G13/02 D
A01G13/02 E
A01G9/14 S
A01G13/00 302A
(21)【出願番号】P 2018106171
(22)【出願日】2018-06-01
【審査請求日】2020-01-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000100458
【氏名又は名称】みかど化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101340
【氏名又は名称】丸山 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100205730
【氏名又は名称】丸山 重輝
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 和代
(72)【発明者】
【氏名】元吉 一浩
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晶英
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-149338(JP,A)
【文献】特開2014-217335(JP,A)
【文献】特開2007-300904(JP,A)
【文献】特開2012-196145(JP,A)
【文献】特開昭57-028693(JP,A)
【文献】特開2006-094784(JP,A)
【文献】特開2007-124986(JP,A)
【文献】特開2010-252691(JP,A)
【文献】特開2002-171845(JP,A)
【文献】国際公開第2010/018487(WO,A3)
【文献】欧州特許出願公開第03017688(EP,A3)
【文献】中国特許出願公開第104335850(CN,A)
【文献】特開2016-032464(JP,A)
【文献】特開2000-238201(JP,A)
【文献】特開2014-005372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/02
A01G 9/14
A01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長400~700nmの可視光波長域における光線透過率が
80%以上である光透過性の高い農業用フィルムであり、
前記農業用フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂に、レーザ焦点反応を生起する無機物質を、4wt%以上10wt%以下配合して農業用フィルムに、前記レーザ焦点反応を生起可能なレーザを照射する農業用フィルムのレーザ加工方法であり、
前記レーザ照射の際のスキャン速度が、900~1500mm/secの範囲でありあり、かつ前記レーザ照射の際のライン速度が、
20~50m/minの範囲であることを特徴とする農業用フィルムのレーザ加工方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂に、前記無機物質を、4wt%以上8wt%以下配合してなることを特徴とする請求項1記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
【請求項3】
前記無機物質が、珪酸塩鉱物、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩鉱物から選ばれる少なくとも1種であり、
前記珪酸塩鉱物が、カオリン、タルク、アルカリ長石、準長石から選ばれ、
前記金属酸化物が、アルミナ、シリカから選ばれ、
前記金属水酸化物が、消石灰であり、
前記炭酸塩鉱物が、ハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1又は2記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
【請求項4】
前記無機物質が、ネフェリン、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、タルク、アルミナ、消石灰の何れかから選ばれることを特徴とする請求項3記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工可能な農業用フィルム及び農業用フィルムのレーザ加工方法に関し、より詳しくは、透明性の高いフィルムにレーザ加工性を付与したレーザ加工可能な農業用フィルム及び農業用フィルムのレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用マルチフィルムには、定植孔、水抜き孔、ガス抜き孔等の孔が設けられているものがある。このような孔をフィルムに加工する孔開け加工の手法としては、加工する孔と同一形状の加工刃を用いて機械的に打ち抜き加工する手法が用いられてきた。
これに対して、本出願人は、レーザビームを照射することにより孔開けするレーザ加工の技術を開発している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、透明マルチフィルムをレーザ加工すると、孔開け加工スピードが極端に遅く、採算の取れるスピードまでは、ほど遠く、刃物での加工の方が有利であった。
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するものであり、光線透過率が高くても、レーザ加工可能な農業用フィルム及び農業用フィルムのレーザ加工方法を提供することを課題とする。
【0005】
また本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の各発明によって解決される。
(請求項1)
波長400~700nmの可視光波長域の光線透過率75%以上である光透過性の高い農業用フィルムであり、
前記農業用フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂に、レーザ焦点反応を生起する無機物質を、4wt%以上10wt%以下配合してなる農業用フィルムに、
前記レーザ焦点反応を生起可能なレーザを照射する農業用フィルムのレーザ加工方法であり、
前記レーザ照射の際のスキャン速度が、900~1500mm/secの範囲であり、
かつ、前記レーザ照射の際のライン速度が、12~50m/minの範囲であることを特徴とする農業用フィルムのレーザ加工方法。
(請求項2)
前記ポリオレフィン系樹脂に、前記無機物質を、4wt%以上8wt%以下配合してなることを特徴とする請求項1記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
(請求項3)
前記無機物質が、珪酸塩鉱物、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩鉱物から選ばれる少なくとも1種であり、
前記珪酸塩鉱物が、カオリン、タルク、アルカリ長石、準長石から選ばれ、
前記金属酸化物が、アルミナ、シリカから選ばれ、
前記金属水酸化物が、消石灰であり、
前記炭酸塩鉱物が、ハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1又は2記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
(請求項4)
前記無機物質が、ネフェリン、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、タルク、アルミナ、消石灰の何れかから選ばれることを特徴とする請求項3記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、光線透過率が高くても、レーザ加工可能な農業用フィルム及び農業用フィルムのレーザ加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】レーザによる孔開け加工の結果を示す図で、(a)本発明の実施例を示す図で、(b)は比較の場合の図を示す
【
図2】透過率90%農業用マルチフィルムに対するレーザによる孔開け加工の加工速度を示す実験結果を示す図
【
図3】透過率75%農業用マルチフィルムに対するレーザによる孔開け加工の加工速度を示す実験結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0010】
一般の透明マルチフィルムにおいては、レーザ加工すると、孔開け加工スピードが極端に遅く、採算の取れるスピードまでは、ほど遠く、刃物での加工の方が有利であった。本発明者は、ある無機物質をフィルムに含有させると、レーザ焦点反応が弱く、レーザ加工困難であった透明フィルムがレーザ加工可能範囲まで作業性が向上することを見出した。
本発明者は、酸化チタンを用いて反射処理されたフィルム表面に、レーザ焦点反応や発熱が起きないかを調べた。反射処理なしのフィルム、反射処理したフィルム裏面、反射処理したフィルム表面のそれぞれで、レーザ焦点反応や発熱が起きないかを調べたところ、それほどの変化は認められなかった。
またアルミニウムのような反射剤を用いた場合も、チタンと同様に、レーザ焦点反応や発熱が起きないことがわかった。
本発明者は、無機物質について、透明フィルムに含有させた場合に、レーザ焦点反応を生起する無機物質の選定を行い、好適な無機物質を見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の農業用フィルムは、光透過性の高い農業用マルチフィルム、光透過性の高い農業用ハウスフィルム又は光透過性の高い農業用トンネルフィルム何れかから選ぶことができる。
【0012】
本発明の農業用フィルムは、波長400~700nmの可視光波長域の光透過性の高い農業用フィルムであればよく、梨地面を有していても、有していなくてもよい。
【0013】
本発明において、光線透過率は、日立分光光度計を用いて測定される光線の透過率である。また、本明細書において、「光透過性の高い」とは、波長400~700nmの可視光波長域における光線透過率が75%以上であることをいう。好ましくは、波長400~700nmの可視光波長域における光線透過率が80%以上であることをいう。
【0014】
透明な農業用フィルムは、長尺状の1枚のフィルムが用いられる。長尺状の1枚のフィルムには、着色顔料は含有していないか、わずかな着色顔料を含有していてもよい。
本発明では、わずかな着色顔料を含有していてもよい。
ここで、わずかな着色顔料を含有するというのは、長尺状の1枚のフィルムのままであり、フィルムを重ねないときには、無色透明に目視できる程度にわずかに含有していることを意味し、また、長尺状の1枚のフィルムを折りたたんで重ねた場合や、ロール状に巻いたりして重ねた場合には、わずかに色味が目視できる程度にわずかに含有していることを意味する。
この場合のわずかな顔料は、色調に関係ない顔料である。またわずかな色味としては、わずかな青み、わずかな黄味などが挙げられる。
【0015】
本発明において、無機物質をフィルムに含有させた場合に、レーザ焦点反応を生起する無機物質の選定を行い、好適な無機物質を見出し、本発明に至った。
【0016】
レーザとして、CO2ガスレーザを用いる場合、レーザ波長は、10.6μmの赤外光であり、発振管内には、CO2ガス以外に、N2(窒素)やHe(ヘリウム)が規定量配合されており、完全密閉状態で封入されている。
【0017】
「レーザ焦点反応を生起する」というのは、エネルギーを集約するポイントの物質と反応し、照射、発熱を促し、開孔に至るまでのプロセスをいう。
【0018】
本発明において、無機物質としては、珪酸塩鉱物、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩鉱物が例示され、中でもレーザ焦点反応を生起する物質が少なくとも1種選択されることが好ましい。
【0019】
本発明において、無機物質は、以上に例示したものに限定されず、レーザ感応性を生起するものであれば好ましく用いることができ、これらを単独で、または2種以上混合した混合物をフィルム中に配合することができる。
【0020】
珪酸塩鉱物としては、例えばカオリン、タルク、アルカリ長石、準長石等が挙げられる。アルカリ長石としては、例えば、カリ長石、サニディン等が挙げられる。準長石としては、例えば、霞石(ネフェリン)等が挙げられる。市販品としては、ユニミン社製「ミネックス(MINEX)7」を用いることができる。
金属酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、消石灰等が挙げられる。
炭酸塩鉱物としては、例えば、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0021】
本発明において、前記無機物質は、ポリオレフィン系樹脂に、4wt%以上配合してなることを特徴とし、4wt%以上10wt%以下配合してなることが好ましく、4wt%以上8wt%以下配合してなることがより好ましい。配合濃度が、この範囲であれば、レーザ照射の際のスキャン速度が、900~1500mm/secの範囲を実現で、またレーザ照射の際のライン速度が、20~50m/minの範囲を実現でき、レーザ加工作業性が飛躍的に向上するので好ましい。
【0022】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などを好ましく用いることができる。
【0023】
低密度ポリエチレン(LDPE)としては、密度が0.910g/cc~0.930g/ccの範囲のものを用いることが好ましい。
【0024】
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)としては、メルトインデックス(MI)が0.05~5.0の範囲、密度が0.900g/cc~0.940g/ccの範囲のものを用いることが好ましい。
【0025】
高密度ポリエチレン(HDPE)としては、密度が0.940g/cc~0.970g/ccの範囲のものを用いることが好ましい。
【0026】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)としては、酢酸ビニルモノマーの含有量が、3重量%~5重量%程度の範囲のものが好適である。
【0027】
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は、レーザ照射による焦点反応に影響を与えないために、無極性のポリオレフィン系樹脂が選択使用されることが好ましい。
【0028】
本発明のフィルムには、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、耐侯安定剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、無滴剤等を適宜使用することができる。
【0029】
本発明の農業用マルチフィルムを製造するには、インフレーション成形法又はTダイ成形法等を好ましく用いることができる。
【0030】
本発明の農業用フィルムのレーザ加工方法は、上述した農業用フィルムに、レーザ焦点反応を生起可能なレーザを照射することを特徴とする。
【0031】
レーザ加工に用いるレーザビームは、CO2ガスレーザであることが好ましい。CO2ガスレーザは、レーザ出力を効率良く取り出すことができ、また、レーザビームの品質も高く、フィルムを効率良く加工することができるため好ましい。
【0032】
レーザビーム出力は格別限定されず、例えば、出力10~100Wとすることができる。出力が10W未満であると、フィルムの切れが悪くなる。出力が100Wを超えると、レーザビームによって切られたラインの断面が波打ち状となる等、動力コストに見合った効果が得られ難くなる。
【0033】
本発明において、レーザ照射の際のスキャン速度が、900~1500mm/secの範囲であり、レーザ照射の際のライン速度が、20~50m/minの範囲であることで、農業用フィルムのレーザ加工における作業性が大幅に向上する。
【0034】
レーザ加工に用いられる装置の構成は限定されない。装置は、フィルムを搬送するための搬送機構やレーザ加工によって切り取られたフィルム断片を回収する断片回収機構などを有してもよい。
搬送機構は、走行しているフィルムの表面に向けてレーザビームを照射すると共に、所定の孔形状となるようにレーザビームを走査し、フィルムの走行方向に沿って連続して加工を行なうように構成することができる。
断片回収機構は、レーザビームの走査位置の後段に設けられ、例えば、風力や重力を利用して、レーザビームによって切り取られたフィルム断片を回収できるように構成することができる。
【0035】
レーザビームの走査態様は、格別限定されず、所望の孔形状に応じて適宜変更することができる。
所望の孔形状としては、小孔形状、三角形状、矩形状、楕円形状、星型、その他の多角形状、スリット群などを例示することができ、孔形状の目的によって任意に選択することができる。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、以下に示す実施形態を採用することもできる。
例えば、農業用フィルムの層構成は、基層のみでもよいが、基層の少なくとも一方の面に、透明層や反射層を設けた態様でもよい。
透明層や反射層を形成する樹脂組成物におけるベース樹脂は、格別限定されず、ポリオレフィン系樹脂であってもよいし、その他の樹脂であってもよい。
基層と透明層や反射層とを、同種の樹脂で形成することが好ましい。透明層や反射層を構成するポリオレフィン系樹脂については、基層で例示したものを用いることができる。
【0037】
光反射層は、太陽光を反射するように構成されたものである。光反射層は太陽光を反射するが、レーザビームを吸収しないことが本発明者の実験によって確認されている。
【0038】
光反射層は、例えば、ベース樹脂に、アルミ微粒子、二酸化チタン(TiO2)などから選ばれる少なくとも1種を含有させて形成される。
【0039】
アルミ微粒子は、鱗片状粉末として含有することが好ましく、紫外線を効率よく乱反射させるため、アスペクト比は10~10000の範囲が好ましい。
【0040】
二酸化チタンは、粉末として含有することができ、平均粒径は0.1~1.0μmの範囲が好ましい。ここで平均粒径とは、電子顕微鏡写真に基づく算術的平均値である。
二酸化チタンの結晶型は、ルチルとアナタースの2型があるが、アナタースはフィルム耐候性を大きく低下させるので、通常はルチル型を用いる。
二酸化チタンは、紫外光を吸収し、活性酸素を発生する特性があり、このためフィルム耐候性を低下させるので、TiO2粒子表面をAl、Siなどの金属酸化膜でコート処理することが好ましい。
【0041】
基層と反射層の積層方法は、格別限定されない。例えば、予め、基層を形成し、これに反射層を押出ラミによって積層してもよく、予め、反射層を形成し、これに基層を押出ラミによって積層してもよい。また、インフレーション成形によって、両層の樹脂組成物を同時に押出し、ダイ内あるいはダイから押し出された直後に積層することもできる。
【0042】
上述した反射層には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の各種添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、耐侯安定剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、無滴剤等を適宜使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
【0044】
(実施例1)
1.農業用マルチフィルムの作製
下記の樹脂組成物を用いて、ダイラミ成形法により、基層のみからなる1層構成の農業用マルチフィルムを作製した。
【0045】
<基層の樹脂組成物>
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(メルトインデックス1.0、密度0.920g/cc、無極性)に、無機物質である霞石(ユニミン社製「ミネックス(MINEX)7」)を4wt%配合して基層の樹脂組成物を得た。
【0046】
得られた透明な農業用マルチフィルムについて、日立分光光度計を用いて波長550nmの光線透過率を測定したところ、90%であった。
【0047】
2.レーザ加工
得られた透明な農業用マルチフィルムを下記条件でレーザ加工に供し、定植孔を開口した。
【0048】
<条件>
レーザビーム:CO
2ガスレーザ
レーザ出力:平均30W、最大75W
孔形状:
図1(a)に示すような長孔楕円形状
【0049】
3.評価
レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を以下の基準で評価した。結果は、表1に示す。
【0050】
<評価基準>
○:良好:孔が開いて、花びらはついていない(
図1(a)参照)、フィルムの白濁がほぼ従来品(無機物質の配合がない透明フィルム)と変わらない
△:孔開け良
フィルム外観不良:フィルムの白濁、濁りが大きくなる
フィルム強度が弱くなる
△×:孔は開くが安定しない、
フィルム強度が弱くなる
×:孔開け不良:
孔が開かない、又は孔開け加工時に
図1(b)に示すように、花びらが付いたまま
【0051】
(実施例2)
実施例1において、無機物質の配合濃度を6wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)
実施例1において、無機物質の配合濃度を8wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0053】
(実施例4)
実施例1において、無機物質の配合濃度を10wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0054】
(比較例1)
実施例1において、無機物質を配合しなかった以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0055】
(比較例2)
実施例1において、無機物質の配合濃度を0.5wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0056】
(比較例3)
実施例1において、無機物質の配合濃度を1wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0057】
(比較例4)
実施例1において、無機物質の配合濃度を2wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
【0058】
【0059】
<結果>
表1より、無機物質を配合した実施例1~4のフィルムは、
図1(a)に示すように、農業用マルチフィルム1に定植孔2を開口し、その開口時に、定植孔2に花びら3が付いておらず、レーザ加工が可能であることがわかる。
これに対して、無機物質を配合しないフィルム(比較例1)、無機物質を0.5wt%配合したフィルム(比較例2)、1.0wt%配合したフィルム(比較例3)、2.0wt%配合したフィルム(比較例4)では、
図1(b)に示すように、定植孔2には花びら3が付いたままであり、レーザ加工ができないか不良であることがわかる。
【0060】
(実施例5)
実施例1において、波長550nmの光線透過率を75%に代えた農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0061】
(実施例6)
実施例5において、無機物質の配合濃度を6wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0062】
(実施例7)
実施例5において、無機物質の配合濃度を8wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0063】
(実施例8)
実施例5において、無機物質の配合濃度を10wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0064】
(比較例5)
実施例5において、無機物質を配合しなかった以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0065】
(比較例6)
実施例5において、無機物質の配合濃度を0.5wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0066】
(比較例7)
実施例5において、無機物質の配合濃度を1wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0067】
(比較例8)
実施例5において、無機物質の配合濃度を2wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
【0068】
【0069】
<結果>
表2より、無機物質を配合した実施例5~8のフィルムは、
図1(a)に示すように、農業用マルチフィルム1に定植孔2を開口し、その開口時に、定植孔2に花びら3が付いておらず、レーザ加工が可能であることがわかる。
これに対して、無機物質を配合しないフィルム(比較例5)、無機物質を0.5wt%配合したフィルム(比較例6)、1.0wt%配合したフィルム(比較例7)、2.0wt%配合したフィルム(比較例8)では、
図1(b)に示すように、定植孔2には花びら3が付いたままであり、レーザ加工ができないか不良であることがわかる。
【0070】
(実施例9及び比較例9)
従来の透明フィルムのレーザ加工速度と比較して、孔開け加工ができるようになった実施例1~4の場合に、レーザ加工の際のスキャン速度(m/sec)、及びライン速度(m/min)が、どこまで向上するかを実験によって確認した。
【0071】
(比較例9)
従来の透明フィルム(無機物質の配合がない場合)のレーザ加工速度は以下の通りである。
スキャン速度:300(m/sec)
ライン速度 :3(m/min)
【0072】
(実施例9)
無機物質の配合濃度を、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%とした場合に、実施例1~4でレーザ加工性が向上することは確認されたが、各々の場合に、レーザ加工速度が比較例5に比べ、向上するか否かを確認したところ、表3及び
図2のような結果が得られた。
【0073】
【0074】
<結果>
表3及び
図2より、無機物質の配合濃度を、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%としたフィルムは、レーザ加工速度が向上することが確認された。
【0075】
(実施例10及び比較例10)
従来の透明フィルムのレーザ加工速度と比較して、孔開け加工ができるようになった実施例5~8の場合に、レーザ加工の際のスキャン速度(m/sec)、及びライン速度(m/min)が、どこまで向上するかを実験によって確認した。
【0076】
(比較例10)
従来の透明フィルム(無機物質の配合がない場合)のレーザ加工速度は以下の通りである。
スキャン速度:300(m/sec)
ライン速度 :3(m/min)
【0077】
(実施例10)
無機物質の配合濃度を、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%とした場合に、実施例でレーザ加工性が向上することは確認されたが、各々の場合に、レーザ加工速度が比較例10に比べ、向上するか否かを確認したところ、表4及び
図3のような結果が得られた。
【0078】
【0079】
<結果>
表4及び
図3より、光線透過率75%の農業用マルチフィルムの場合でも、無機物質の配合濃度を、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%としたフィルムは、レーザ加工速度が向上することが確認された。
【0080】
(実施例11)
実施例1~8で用いた無機物質を、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、タルク、アルミナ、消石灰の各々に代えても、実施例1~8と同様の効果が得られた。
【符号の説明】
【0081】
1:農業用マルチフィルム
2:定植孔
3:花びら