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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】高純度シリカの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
C01B33/18 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019229815
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021098613
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-10-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504237175
【氏名又は名称】SEAVAC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090158
【弁理士】
【氏名又は名称】藤巻 正憲
(72)【発明者】
【氏名】清水 博之
(72)【発明者】
【氏名】清水 政義
(72)【発明者】
【氏名】清水 義文
(72)【発明者】
【氏名】ビニョブ ラビ
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153044(JP,A)
【文献】特開2011-132076(JP,A)
【文献】特表2012-504103(JP,A)
【文献】特表2009-530218(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105016344(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪藻土原料を酸により浸出処理し、純水で洗浄することにより、アルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属又はポスト遷移金属を含む不純物を除去し、洗浄後の残渣から水溶性シリカを得る工程と、
この水溶性シリカと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選択された1種以上のアルカリ金属の水酸化物からなるアルカリ水溶液を反応させることにより、そのケイ酸塩水溶液を得る工程と、
前記ケイ酸塩水溶液を、イオンキレート特定剤を収納した第1コラム内に通して、前記ケイ酸塩水溶液中のボロンを除去するボロン除去工程と、
前記ボロンを除去したケイ酸塩水溶液を、アニオンキレート特定剤を収納した第2コラムに通して、前記ケイ酸塩水溶液中のリンを除去するリン除去工程と、
前記リンを除去したケイ酸塩水溶液を、遠心分離して濾過することにより、シリカを回収する工程と、
を有することを特徴とする高純度シリカの製造方法。
【請求項2】
珪藻土原料を酸により浸出処理し、純水で洗浄することにより、アルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属又はポスト遷移金属を含む不純物を除去し、洗浄後の残渣から水溶性シリカを得る工程と、
前記水溶性シリカと水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを反応させることにより、ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液を得る工程と、
前記ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液を、イオンキレート特定剤を収納した第1コラム内に通して、前記ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液中のボロンを除去するボロン除去工程と、
前記ボロンを除去したケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液を、アニオンキレート特定剤を収納した第2コラムに通して、前記ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液中のリンを除去するリン除去工程と、
前記リンを除去したケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液を、遠心分離して濾過することにより、シリカを回収する工程と、
を有することを特徴とする高純度シリカの製造方法。
【請求項3】
前記第1コラム内を通過した水溶液の一部を第1キレート再生タンクに供給して前記第1キレート再生タンク内で前記キレートを再生し、前記第1コラムに供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の高純度シリカの製造方法。
【請求項4】
前記第2コラム内を通過した水溶液の一部を第2キレート再生タンクに供給して前記第2キレート再生タンク内で前記キレートを再生し、前記第2コラムに供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の高純度シリカの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度シリカ(例えば、不純物濃度が0.01ppm以下)の調整方法に関し、更に詳述すれば、光起電性の太陽電池産業において使用するのに好適の珪藻土原料の高純度化に関する。本願発明の要旨は、低コストの珪藻土原料から高純度シリカ(例えば、8N)を抽出して、低コストで高純度シリカを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に置き換わるクリーンな太陽エネルギに対する全世界的な関心は、太陽熱エネルギを低コスト電力へ変換するときの変換効率にある。シリコン太陽電池の主要なコストは、PV(光電変換)セルに使用される高純度シリコン(Si)にある。高純度シリコンの製造コストを大きく低下させることが、太陽電池の価格を低下させ、その用途を拡張させることになり、太陽電池が従来の伝統的な電力源と競争可能となる応用分野を拡大させる。高純度シリコンのコストに占める重要な因子は、原材料源であるシリカの製造工程における固有のコストである。この製造工程の固有のコストとは、原材料を分離し、高純度化して、太陽電池に使用される高純度シリコン用の高純度シリカを製造する方法に固有のコストである。
【0003】
高純度シリコン製造に使用される原料としての高純度シリカの需要は、近い将来に供給の限界に到達する。このため、これにとって代わる太陽電池製造に適した材料の供給方法、濾過工程、及び電子コンポーネントにおける絶縁物が要望されている。
【0004】
シリコン光起電性電池への応用のための原材料を製造するための効率的な方法の調査は、この30年間以上で進歩してきている。これらの方法のための原材料源は、第1に、結晶質のシリカと、シリコンの揮発性化合物に限定されている。これは、米殻及び珪藻土のような他の材料源に対する研究が限られていたからである。
【0005】
機能材料、光学材料、又は電子材料としてのシリカに対する要求は、急速に増大しており、天然シリカを、純度、形状又は性質がそのままで、使用することをますます難しくしている。特に、太陽電池グレードのシリコンの製造のために提供される原材料としては、天然シリカは使用することが困難である。
【0006】
なお、高純度シリカの製造方法として、特許文献1乃至7が提案されており、高純度シリコンの製造方法として、特許文献8乃至14が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭63-291808号公報
【文献】特開平3-218914号公報
【文献】特開平5-36366号公報
【文献】特開平5-35086号公報
【文献】特開平5-35087号公報
【文献】特公平7-106890号公報
【文献】特公平7-57685号公報
【文献】特開昭55-67519号公報
【文献】特開昭56-32319号公報
【文献】特公昭61-27323号公報
【文献】特開平10-265214号公報
【文献】特開平10-324514号公報
【文献】特開平10-324515号公報
【文献】特許第4436904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
シリコン太陽電池に基づく光起電性電力生成の更なる発展は、大量のハイグレードなクォーツ鉱石を必要とする。これは、通常、十分に天然乾燥したクォーツ鉱脈及び表層堆積物における「がま」又は「ポケット」において生じる。地殻における鉱石堆積物の埋蔵量は、物理的に制限されている。光起電性電力生成の事業においては、他の確実な供給源を考える必要がある。
【0009】
従来、シリカは、砂岩石英の高純度化により製造されている。この高純度化工程においては、シリカ粒子の大きさをマイクロメータスケール以下に最小化して、高純度化工程の間の化学処理の効率を改善するために、石の研削工程のような複数のサブ工程を有する。更に、その後、99%(2N)に近い純度の最終シリカに酸を添加することにより、シリカゲルを生成して、ケイ酸溶液を形成する工程が続く。
【0010】
しかしながら、このシリカの純度レベルは、高変換効率の太陽電池をターゲットとする高純度シリコンの製造のためには、低すぎる。今日まで、太陽電池用途の高純度シリカを得る方法は開発されていない。従来の砂岩石英の高純度化方法の最も不具合な部分は、砂岩の研削工程である。この工程は、時間及びエネルギを消費し、好ましくない。
【0011】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、太陽電池用の高純度シリコンの製造に好適の高純度シリカを高効率で且つ低コストで製造することができる高純度シリカの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る高純度シリカの製造方法は、
珪藻土原料を酸により浸出処理し、純水で洗浄することにより、アルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属又はポスト遷移金属を含む不純物を除去し、洗浄後の残渣から水溶性シリカを得る工程と、
この水溶性シリカと、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選択された1種以上のアルカリ金属の水酸化物からなるアルカリ水溶液を反応させることにより、そのケイ酸塩水溶液を得る工程と、
前記ケイ酸塩水溶液を、イオンキレート特定剤を収納した第1コラム内に通して、前記ケイ酸塩水溶液中のボロンを除去するボロン除去工程と、
前記ボロンを除去したケイ酸塩水溶液を、アニオンキレート特定剤を収納した第2コラムに通して、前記ケイ酸塩水溶液中のリンを除去するリン除去工程と、
前記リンを除去したケイ酸塩水溶液を、遠心分離して濾過することにより、シリカを回収する工程と、
を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る他の高純度シリコンの製造方法は、
珪藻土原料を酸により浸出処理し、純水で洗浄することにより、アルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属又はポスト遷移金属を含む不純物を除去し、洗浄後の残渣から水溶性シリカを得る工程と、
前記水溶性シリカと水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを反応させることにより、ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液を得る工程と、
前記ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液を、イオンキレート特定剤を収納した第1コラム内に通して、前記ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液中のボロンを除去するボロン除去工程と、
前記ボロンを除去したケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液を、アニオンキレート特定剤を収納した第2コラムに通して、前記ケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液中のリンを除去するリン除去工程と、
前記リンを除去したケイ酸ナトリウム水溶液又はケイ酸カリウム水溶液を、遠心分離して濾過することにより、シリカを回収する工程と、
を有することを特徴とする。
【0015】
これらの高純度シリカの製造方法において、
前記第1コラム内を通過した水溶液の一部を第1キレート再生タンクに供給して前記第1キレート再生タンク内で前記キレートを再生し、前記第1コラムに供給するように構成することができる。
【0016】
また、
前記第2コラム内を通過した水溶液の一部を第2キレート再生タンクに供給して前記第2キレート再生タンク内で前記キレートを再生し、前記第2コラムに供給するように構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低廉で世界中に広く存在する珪藻土を原料として、低廉な処理コストの湿式処理により、高純度のシリカを製造することができるので、高価で枯渇が予想される太陽電池グレードの高純度シリコンを製造するのに適した高純度シリカを、低コストで安定的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は本発明の実施形態の方法の第1工程を示す図である。この第1工程は、珪藻土からシリカを抽出し、ケイ酸ナトリウム水溶液を生成する。
図2図2は本発明の実施形態の方法の第2工程を示す図である。この第2工程は、特定イオン交換キレート樹脂CRB03/05を使用して水ガラス水溶液からボロンを除去する。
図3図3は本発明の実施形態の方法の第3工程を示す図である。この第3工程は、アニオン交換キレート樹脂WA20/21Jを使用して水ガラス水溶液からリンを除去する。
図4図4は本発明の実施形態の方法の最終第4工程を示す図である。この第4工程は、本発明を使用して濾過及び乾燥することにより、水ガラス水溶液からシリカを回収する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図1乃至図4を参照して具体的に説明する。本発明は、珪藻土の精製により高純度シリカを製造する方法である。この方法は、酸処理、水ガラス生成、ボロン及びリンの除去並びに精製シリカの回収の各工程を有する。
【0020】
本発明は、太陽電池応用のための高純度シリコンの製造のために有効な約8N以上の高純度なシリカを製造することを目的とする。先ず、シリカは、予備高純度化工程を介して、珪藻土から水溶液中へ抽出される。このときの目標とするボロン濃度は、ppbレベル、好ましくは5ppb以下、より好ましくは1ppb以下、更に好ましくは0.3ppb以下の低濃度である。この予備高純度化シリカは、好ましくは珪藻土を酸で溶出する処理により、水溶性シリカとして、水溶液内に溶解したシリカの形態で得られる。
【0021】
珪藻土は全世界で広範囲に分布し、主に珪藻土珪殻として存在する。これは、少量の粘土及び低コストのオープンピット採鉱から茎を取り除いた砕岩質の岩に関連する珪藻土殻(非晶質シリカ)からなる。軽く色が付いた軟らかく砕けやすい岩は、高吸収性の多孔質で、相対的に良好な化学安定性を有し、それ故、濾過材、吸収材、充填材及び絶縁材のために主として使用される。
【0022】
このように、珪藻殻は腐食性アルカリ溶液に容易に溶解するという特徴をもつ。このことは、高純度シリカは、水溶性化学工程を使用して、珪藻土から製造できることを示唆している。しかしながら、この珪藻土を原料として使用して高純度シリカを得る高純度シリカの製造方法は、未だ、開発されていない。本発明は、この珪藻土を原料として高純度シリカを製造する低コストの方法を提供するものである。
【0023】
水溶性シリカは、好ましくは、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムであるが、この水溶性シリカは、次順の工程でボロン除去剤と接触させる。このボロン除去剤は、N-メチルグルカミンの官能基をもつイオン交換樹脂である。水溶性シリカを含む水溶液は、次に、リン除去剤により処理される。このリン除去剤は、好ましくは、ポリアミンの官能基を有するアニオン交換樹脂である。
【0024】
本発明は、8N純度レベルの高純度シリカを製造するための方法であり、先ず、酸浸出により珪藻土からシリカ水溶液を作り、水溶液の濾過により金属不純物成分が除去された水溶性シリカの水溶液を抽出する。更に、濾過後の水溶液を、ボロン特定イオン樹脂コラム及びアニオンリン特定アニオン樹脂コラムに接触させ、シリカゲルを沈殿させ、ケイ酸塩を、ボロン及びリンの不純物が低濃度レベルに低減したシリカに変換する。
【0025】
換言すれば、本発明は、低B量及び低P量の高純度シリカを製造する方法に関する。この本発明方法は、第1に珪藻土を酸で浸出して珪藻土からケイ酸塩の水溶液を得ると共に、水溶液を濾過して金属ベースの不純物を除去する工程と、濾過後の溶液をボロン及びリンの特定イオン及びアニオン樹脂コラムに接触させる工程と、水を蒸発させる工程とを含む複数の工程を有する。更に、得られたシリカゲルをシリカに変換する。
【0026】
本発明の目的は、8N以上のシリカを製造する方法を提供することにある。そして、本発明は、低廉な珪藻土資源を原材料として、高純度化されたシリカを得る方法であり、この高純度シリカにより、光起電性の用途に使用できる高純度のシリコンの製造を可能とする。この方法は、好ましくは、以下の工程を有する。
【0027】
(1)シリカの予備高純度化工程
(a)シリカが豊富な珪藻土材料を選択する。
(b)珪藻土から湿式化学処理によりシリカを抽出する工程、
この工程においては、酸浸出により、アルカリ土類金属(Mg,Ca,Sr及びBa)、アルカリ金属(Na,Li,K及びCs)、遷移金属(Fe,Ti,Co,Ni,Cu,V,Mn及びCr)及びポスト遷移金属(Al,Bi,In,Ga及びZn)といった不純物を除去する。
(2)シリカの高純度化工程
(a)水ガラス(ケイ酸ナトリウム)の水溶液を得た後、その溶液を濾過する。
(b)濾過後の水ガラスの溶液をボロン及びリンの特定イオン及びアニオン樹脂コラムに接触させ、その後、水分を乾燥させる。
(3)シリカの回収
得られたシリカゲルをシリカに変換する。このシリカは、好ましくは、ボロン(B)が0.3質量ppb未満、リン(P)が0.3質量ppb未満であり、金属不純物が0.3質量ppb以下である最終シリカ製品である。
【0028】
次に、本発明の実施形態について具体的に説明する。先ず、図1に示す本実施形態の第1工程においては、珪藻土原料を酸により浸出処理し、純水で洗浄することにより、アルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属又はポスト遷移金属を含む不純物を除去し、洗浄後の残渣からケイ酸ナトリウム水溶液を得る。本実施形態においては、珪藻土を原料として使用する。珪藻土は、従来、濾過材、吸収材、充填材及び絶縁材として、主として使用されているが、この珪藻土は世界中に大量に存在すると共に、水溶性化学工程を経て高純度シリカの製造に使用することができるため、低コストで高純度シリカの製造を可能とする。即ち、低コストで、純粋なシリカを抽出し、その構造の故に時間がかからず、主に、天然のコロイド状構造と、珪藻類の藻(珪藻)の化石珪殻(外層の硬く多孔質のセル壁)から生じる高比表面積を持つ。
【0029】
本実施形態の方法は、原材料資源である珪藻土を処理することにより、高効率及び高速度変換効率をもつ光起電性電池を直接的に製造することができる高純度グレードのシリコンの製造のために使用される高純度原材料としての高純度シリカを製造することを可能とするものである。
【0030】
原材料の珪藻土内に存在する不純物は、アルカリ水溶液中におけるシリカの溶解を阻止することが知られている。このため、浸出プロセスは、アルカリ溶液中へのシリカの効率的な溶解のために重要な工程である。シリカに関連する不純物は、独立の鉱物として存在し、3分野に再編成される。(1)緊密に結合している鉱物に見られるシリカの構造といかなる化学結合もなしに、(2)シリカの構造に対して表面結合、化学結合及び物理結合を有し、鉱物の破断部として見ることができ、(3)シリカ粒子又は相互に結合して円環状に凝塊形成したシリカ粒子内に含まれる鉱物、(4)SiO三次元格子内で、Si+4を置換するAl+3、Fe+3のように、シリカ粒子自体内の置換型格子間イオンとして、再編成される。これが生じると、シリカの電気的中立性を維持するために、Li+4、K+1、Na+1,又はH+1等の他のイオンの存在が要求される。
【0031】
これらの不純物は、種々の方法を使用してシリカから除去することができる。従来の方法は、粉砕、研削、及び洗浄のような機械的処理で始まり、湿式化学処理のような化学処理が必要である。しかしながら、珪藻土の場合は、その高多孔度のために、珪藻土におけるシリカ粒子の大きさとして、機械的処理は何ら必要ではない。このシリカ粒子の大きさは、平均15μmであり、これは、化学処理において、高い反応効率を得るのに十分に小さなものである。
【0032】
図1に示す本発明の第1工程によれば、珪藻土からシリカを抽出する予備高純度化工程が示されている。珪藻土の天然構造は、保持される。最初に、シリカの抽出のための珪藻土の湿式化学処理について述べる。タンク1内には、珪藻土が収納されており、タンク2内には、無機酸又は有機酸が貯留されている。この酸は、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)又は硝酸(HNO)などの無機鉱物酸であるか、又は有機酸である。酸浸出タンク2の下部には、撹拌プロペラ4が設置されている。この撹拌プロペラ4はタンク外部の磁気駆動装置(図示せず)に磁気的に連結されており、この磁気駆動装置により、タンク2内で磁気的に回転駆動される。このプロペラ4の回転により、タンク2内の珪藻土及び無機酸又は有機酸が撹拌混合される。また、この磁気攪拌において、タンク2内の被撹拌物は、加熱装置5により加熱される。よって、タンク2内の珪藻土及び無機酸又は有機酸は、加熱装置5により所定の温度に加熱された状態で撹拌混合される。
【0033】
そして、タンク1内の珪藻土を酸浸出タンク2内に投入する。この珪藻土粉末は、ICP-OES(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)分析において、90質量%以上のシリカを含み、他は金属不純物であるものを使用することが好ましい。次いで、タンク2内の原材料の珪藻土の粉末は、タンク3から無機酸又は有機酸の添加を受けて熱酸処理される。好ましくは、この処理の酸は、塩酸、硫酸及び硝酸などの強無機酸である。ほとんどの場合、酸は、濃酸又は水溶液として使用することができる。それ故、強い無機酸を使用する場合は、その酸が塩酸の場合はHCl:35乃至37質量%、硫酸の場合は、HSO:95乃至99質量%、硝酸の場合は、HNO:65乃至75質量%であるときに、処理効率が高い。好ましくは、濃縮された無機酸溶液を、少なくとも3倍の体積の水で薄めた溶液を使用する。他の溶媒からの不純物汚染を回避するために、脱イオン化された水、即ち純水を、酸の希釈に使用することが好ましい。なお、珪藻土の溶解度は、500g/dm未満であり、酸と混和性を有する。
【0034】
酸処理の間、珪藻土の酸可溶性不純物が酸溶液中に溶解する。この酸浸出工程においては、内容物は、酸可溶性不純物の溶解温度と、酸又は希釈酸の沸点との間の温度に加熱される。そして、プロペラ4により内容物が撹拌される。このようにして、大気圧下で、珪藻土と酸とが不純物の溶解温度と酸又は希釈酸の沸点との間の温度にて、酸浸出処理を受ける。好ましくは、酸浸出の温度は、酸試薬の沸点に近いものである。特に、酸試薬混合物の沸点において、酸処理を実行することが、好ましい。
【0035】
より好ましくは、図1に示す磁気回転プロペラ4及び加熱装置5によりタンク2内の内容物を加熱・撹拌しつつ原材料を酸浸出する間に、内容物に超音波を放射する。この超音波放射は、40乃至50rpmの適宜の周波数範囲である。また、連続的な又はパルス状の超音波パワーは、60乃至70Wであり、熱酸処理の期間は、ICP-OES(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)分析により予想された不純物除去の効率に依存して最適化される。
【0036】
珪藻土の浸出工程のために使用される無機酸の選択は、下記3つのキー要素に依存する。(1)原料の珪藻土内に存在するアルミナ及び鉄酸化物のような主要な金属酸化物に与える酸反応効果、(2)金属酸化物による浸出後に生成したアニオンの水中への溶解度、(3)無機酸又はその希釈溶液の最適量及び珪藻土構造的特性を維持するための添加量である。注意深く酸浸出工程を適用して、珪藻土原材料から、アルカリ土類金属、アルカリ金属、遷移金属及びポスト遷移金属に関連する金属由来不純物を除去することが重要である。
【0037】
その後、タンク2内の酸浸出溶液は、水ガラス生成タンク8内に移送される。この移送の間に、酸浸出溶液は濾過され、金属不純物を含む水溶液は、排出路7から排出される。一方、濾過後のシリカは、タンク6内に収納した純水をシリカの移送経路に供給することにより、この移送経路で純水によって数回洗浄される。その後、この洗浄後のシリカは、水ガラス生成タンク8に送出される。つまり、タンク2から排出される酸水溶液中に、金属不純物が溶け込んでおり、シリカはこの水溶液中に固体として存在して、タンク8に供給される。そして、その途中で、水溶液が濾過されることで、濾過後の固体のシリカは、タンク8に供給され、金属不純物が溶け込んだ水溶液は、排出路7から廃棄される。シリカは水溶性ではあるが、固体の状態でタンク8に装入される。そして、このタンク8内でシリカに水酸化ナトリウムが添加されて、化学式1によりケイ酸ナトリウム(水ガラス)の水溶液が生成する。
【0038】
図1に示す第1工程の後半の部分は、水溶液である水ガラスから高純度シリカを得るためのキーとなる工程である。珪藻土から抽出されたシリカは、水ガラス生成タンク8内に装入される。そして、このタンク8内のシリカには、タンク9から、水酸化ナトリウム溶液が2乃至5モル濃度だけ添加され、水酸化ナトリウムとシリカとの間に、下記反応(化学式1)が生じて、ケイ酸ナトリウム又は水ガラスとして知られているNaSiOが得られる。
【0039】
【化1】
【0040】
この反応において、タンク8内の収容物は、加熱装置11により所定の温度65乃至85℃に加熱しつつ磁気回転プロペラ10により撹拌される。また、超音波発振器(図示せず)により、超音波がタンク8内の収容物に照射される。この超音波照射は、シリカと水酸化ナトリウムとの完全な反応を達成するために極めて有効である。水の沸点に近い温度で連続的に撹拌すること及び水酸化ナトリウムをゆっくりと添加することは、水ガラス(NaSiO)を生成する反応にとって、極めて有効である。
【0041】
水ガラス溶液のpHは、約11.2であると考えられる。よって、鉄、マグネシウム、コバルト、亜鉛、及びニッケルのように、高レベルのpH溶液中では低溶解度であるために、酸浸出工程では除去されない金属を、濾過工程でほとんど除去する。水ガラス溶液は、A+3及びFe+3のようなイオンの金属を抑制するために、例えば、三菱ケミカルにより開発された金属イオン除去キレート樹脂(タイプDIAION CR11(三菱ケミカル製のイオン交換樹脂)等)を含む精製コラムを使用して、付加的な高純度化処理を行うことができる。水ガラス生成タンク8内で生成された水ガラスは、pH調整タンク13に向けて移送される。この移送の過程で、水ガラスは、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)12により、ボロン及びリンの最終的な不純物レベルが検出される。このICP-MSは、高純度の物質の純度を測定するものである。このボロン及びリンは、シリコン材料の電子的な機能性に影響する2つの主要な不純物であり、これらの不純物レベルを知ることが、次順の精製工程の前に必要である。
【0042】
タンク14内には、硫酸が貯留されており、タンク14内の硫酸をpH調整タンク13内に供給することができるようになっている。このタンク13内には撹拌用プロペラ15が設置されており、pH調整タンク13内に供給された水ガラスに対し、タンク14から硫酸を供給することにより、水ガラスのpHが調整される。このタンク13内で、水ガラスは硫酸を添加されて磁気結合回転プロペラ15により撹拌され、pHが調整される。そして、pHが調整された水ガラスは、pHメータ16により、pHが測定された後、次工程に供給される。
【0043】
pHが11以上の水ガラス溶液中のボロンは、ホウ酸塩の形で存在する。この形態では、ボロンはボロン選択キレートイオン交換樹脂の使用により除去することができる。この樹脂は、ホウ酸塩の特定除去キレート樹脂であって、三菱化学により販売されているCRB03/05のようなN-メチルグルカミンの官能基を含む。溶液のpHは、キレート樹脂によるホウ酸塩の除去効率の決定に極めて重要な役割を果たしている。それ故、溶液をイオン交換精製工程に供する前に、水ガラス溶液のpHの最適化が必要である。そこで、水ガラス溶液のpHを調整するために、pH調整タンク13内にタンク14から硫酸を供給し、溶液のpHを、キレート樹脂の最も効率的な実行のために適正な範囲に徐々にコントロールする。このため、pHメータ16でタンク13内の内容物のpHを検出しつつ、このpHが最適なpH値になるように、硫酸の添加量を調整する。最終的に最適なpH値をもつ水ガラスを、次工程の精製工程に供給する。なお、この水ガラスは、図1のpH調整タンク13から図2に示す次順の工程に送られる(ラベルA)。
【0044】
次に、図2に示す本実施形態の第2工程においては、前記ケイ酸ナトリウム水溶液を、イオンキレート特定剤を収納した第1コラム(脱ボロンコラム18)内に通して、前記ケイ酸ナトリウム水溶液中のボロンを除去する。本実施形態の第2工程によれば、金属成分が除去された水ガラス溶液は、図2に示すイオン交換精製工程に供される。この第2工程においては、脱ボロンコラム18と、pH調整タンク25と、キレート再生タンク31とが配置されている。また、脱ボロンコラム18には、タンク19からCRB03/05イオン交換キレート特定剤が供給されるようになっており、脱ボロンコラム18内の収容物がイオン交換キレート剤を通過することにより、脱ボロン処理される。pH調整タンク25内には水ガラスが供給され、このタンク25内には、タンク26から硫酸が添加されるようになっている。タンク25内には、外部駆動装置に磁気的に連結されて回転駆動される撹拌用プロペラ27が配置されており、タンク25内の収容物が撹拌用プロペラ27により撹拌され、そのpHがpHメータ28により検出されるようになっている。
【0045】
第1工程からの水ガラスは、ポンプ17により脱ボロンコラム18にくみ上げられ、脱ボロンコラム18から出た水ガラスは、ポンプ21によりpH調整タンク25に供給される。脱ボロンコラム18内の水ガラスの一部は、ポンプ30によりキレート再生タンク31に供給され、タンク32から塩酸がキレート再生タンク31内の収容物に添加され、塩酸によりキレートが再生される。この再生されたキレート剤は濾過後、イオン交換キレート特定剤のタンク19に供給されて、再使用され、不純物は廃路33から除去される。
【0046】
ポンプ21からpH調整タンク25までの経路には、この経路を通過する水ガラス内のボロン及びリンの濃度を検出するICP-MS(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)22が設置されている。そして、このICP-MS22からタンク25までの経路の途中から、ポンプ17から脱ボロンコラム18までの経路の途中に至る返戻経路24が設けられており、この返戻経路24に設けられたポンプ23により、pH調整タンク25に供給される水ガラスの一部が脱ボロンコラム18に供給される経路に返戻される。
【0047】
この第2工程においては、先ず、水ガラス水溶液は、ポンプ17により脱ボロンコラム18にくみ上げられる。タンク19からCRB03/05イオン交換キレート特定剤が、キレート樹脂の最適効果レベルを示すラベル20に到達するまで、コラム18内に投入される。このキレート樹脂は、シリカ構造及び特性に対して何らの影響を与えることなく、ホウ酸塩除去に対して高い親和力を有する。脱ボロン後の水ガラス水溶液の試料のボロン濃度が、ICP-OES(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)22により測定され、その純度が分析される。このICP-OESは、中程度の純度の物質の純度を測定するものである。ICP-OES22の分析結果がボロンの所望の純度レベル以下を示す場合は、脱ボロン水ガラス水溶液はポンプ21を使用して、pH調整タンク25に向けて、くみ出される。脱ボロンコラム18におけるイオン交換精製が、ボロンの所望の規制レベルに到達しない場合は、水ガラス水溶液は、ポンプ23により、脱ボロンコラム18に向けて返戻され、再び、イオン交換キレート剤により脱ボロン処理される。そして、このイオン交換によるボロン除去サイクルが、pH調整タンク25に供給される水ガラス水溶液内のボロン濃度が所望の低値に到達するまで、繰り返される。
【0048】
CRB03/05イオン交換キレート特定剤による脱ボロン精製後に水ガラス溶液中に存在するホウ酸塩は、ホウ酸として規制される。精製水ガラス溶液は、約10ppb以下の低ボロン量とすべきであり、より好ましくは約5ppb以下であり、更に好ましくは約1ppb以下であり、更に好ましくは0.3ppb以下である。
【0049】
そのような低ボロン量を達成するためには、返戻経路24を介して、CRB03/05イオン交換キレート特定剤による複数回の濾過処理を行うことが好ましい。
【0050】
イオン交換濾過工程は、ボロン浸出を抑制するように設計された特定のコラム18内で実行される。このとき、第1工程から供給された水ガラスは、ポンプ17により脱ボロンコラム18に供給されるが、ポンプ17による水ガラスの流量及び流速は、精製工程における極めて重要な要素である。コラム18は、イオン交換樹脂のメーカにより供給され、容易に入手できる。
【0051】
所望のボロン量を達成した後、後述する第3工程で、アニオン交換キレート樹脂によりリンの所望の量を達成することになる。しかしながら、アニオン交換樹脂を使用してリンを高効率で除去するためには、水ガラス精製溶液のpHは、低減しておく必要がある。このため、タンク26内の硫酸をpH調整タンク25内に添加して、タンク25内の水ガラスを低pHにする。このとき、第3工程のアニオン交換樹脂でリンを高効率で除去するために適した最適化されたpHにするために、水ガラス溶液のpHをpHメータ28により監視しながら、タンク26からの硫酸を水ガラスに添加する。このようにして、第3工程の脱リンに最適な低pHで、最終的にボロンを含まない水ガラス溶液を、図3に示す次順のアニオン交換による精製工程に供給する。
【0052】
CRB03/05イオン交換キレート特定剤は、ホウ酸塩の除去に対して高親和度をもち、シリカの構造に何らの変化又は修正をもたらすことなく、ホウ酸塩を除去することができる。他方、キレート特定剤は、再利用可能である。脱ボロンコラム18から排出された水溶液は、キレート再生タンク31に供給され、このキレート再生タンク31内で、酸浸出/洗浄処理を受けて容易に再生することができる。この場合に、イオン交換キレート樹脂は、ポンプ30によりキレート再生タンク31に向けて送出され、その後、タンク32内で、イオン交換キレート樹脂が浸出及び洗浄処理される。再生されたキレート樹脂は、次いで、イオン交換キレート特定剤を収納したタンク19に供給され、イオン交換樹脂として、脱ボロンコラム18に再度供給される。図2のラベルBは、図3のラベルBに連結され、なお、脱ボロン後の水ガラスは、図2のpH調整タンク25から図3に示す次順の工程に送られる(ラベルB)。
【0053】
次に、図3に示す本実施形態の第3工程においては、前記ボロンを除去した水溶液を、アニオンキレート特定剤を収納した第2コラム(脱リンコラム35)に通して、前記水溶液中のリンを除去する。本実施形態の第3工程によれば、金属及びボロンを含まない水ガラス溶液が、図3に示すように、アニオン交換精製工程を受ける。図3に示すアニオン交換精製工程においては、脱リンコラム35と、pH調整タンク42と、キレート再生タンク48とが配置されている。また、脱リンコラム35には、タンク36からWA20/21Jアニオン交換キレート特定剤が供給されるようになっており、脱リンコラム35内の収容物がアニオン交換キレート剤を通過することにより、脱リン処理される。pH調整タンク42内には水ガラスが供給され、このタンク42内には、タンク43から硫酸が添加されるようになっている。タンク42内には、磁気的に連結された駆動装置により回転駆動される撹拌用プロペラ44が配置されており、タンク42内の収容物がプロペラ44により撹拌され、タンク42内の収容物のpHがpHメータ45により検出されるようになっている。
【0054】
第2工程からの水ガラスは、ポンプ34により脱リンコラム35にくみ上げられ、脱リンコラム35から出た水ガラスは、ポンプ38によりpH調整タンク42に供給される。脱リンコラム35内の水ガラスの一部は、ポンプ47によりキレート再生タンク48に供給され、タンク49から水酸化ナトリウムがキレート再生タンク48内の収容物に添加され、水酸化ナトリウムによりキレートが再生される。この再生されたキレート剤は濾過後、イオン交換キレート特定剤のタンク36に供給されて、再使用され、不純物は廃路50から除去される。
【0055】
ポンプ38からpH調整タンク42までの経路には、この経路を通過する水ガラス内のリンの濃度を検出するICP-OES(Inductively Coupled Plasma-Optical Emission Spectrometry)39が設置されている。そして、このICP-OES39からタンク42までの経路の途中から、ポンプ34から脱リンコラム35までの経路の途中に至る返戻経路41が設けられており、この返戻経路41に設けられたポンプ40により、pH調整タンク42に供給される水ガラスの一部が脱リンコラム35に対する供給経路に返戻される。
【0056】
この第3工程においては、先ず、脱ボロン後の水ガラス水溶液は、ポンプ34を使用して脱リン化合物生成コラム(脱リンコラム)35内にくみ上げられる。WA20/21Jアニオン交換キレート特定剤が、キレート樹脂の最適効果レベルを示すラベル37に到達するまで、タンク36から脱リンコラム35に添加される。このアニオン交換キレート樹脂は、シリカの構造及び特性に何らの影響を与えることなく、リン除去に対して高い親和性を有する。脱リン後の水ガラス水溶性溶液の試料のリン濃度が、ICP-OES39により測定され、その純度が分析される。ICP-OES39の分析結果が、リンの所望の純度レベルを示している場合は、脱リン水ガラス水溶液はポンプ38を使用して、pH調整タンク42に向けて、くみ出される。脱リンコラム35におけるアニオン交換精製が、リンの所望の規制レベルに到達しない場合は、水ガラス水溶液は、ポンプ40により、脱リンコラム35に向けて返戻され、再び、アニオン交換キレート剤により脱リン処理される。そして、このアニオン交換によるリン除去サイクルが、pH調整タンク42に供給される水ガラス水溶液内のリン濃度が所望の低値に到達するまで、繰り返される。
【0057】
WA20/21Jアニオン交換キレート特定剤による脱リン精製後に水ガラス溶液内に存在するリンは、リン酸として規制される。精製後の水ガラス溶液は、約10ppb以下の低ボロン量とすべきであり、より好ましくは、約5ppb以下であり、更に好ましくは、約1ppb以下であり、更に好ましくは0.3ppb以下である。リンについては、リン量は、約10ppb以下の低リン量とすべきであり、より好ましくは、約5ppb以下であり、更に好ましくは、約1ppb以下であり、更に好ましくは、0.3ppb以下である。
【0058】
そのような低リン量を達成するためには、返戻経路41を介して、WA20/21Jアニオン交換キレート特定剤による複数回の濾過処理を行うことが好ましい。
【0059】
イオン交換濾過工程は、リン浸出を抑制するように設計された特定のコラム35内で実行される。このとき、第2工程から供給された水ガラスは、ポンプ34により脱リンコラム35に供給されるが、ポンプ34による水ガラスの流量及び流速は、精製工程における極めて重要な要素である。コラム35は、イオン交換樹脂のメーカにより供給され、容易に入手できる。
【0060】
WA20/21Jアニオン交換キレート特定剤は、リン酸に対して高い親和性を有し、シリカの構造に対して何らの変化又は修正をもたらすことなくリン酸を除去することができる。他方、アニオン交換キレート特定剤は、再利用可能である。脱リンコラム35から排出された水溶液は、キレート再生タンク48に供給され、このキレート再生タンク48内で、アルカリ浸出/洗浄処理を受けて容易に再生することができる。この場合に、アニオン交換キレート樹脂は、ポンプ47によりキレート再生タンク48に向けて送出され、その後、タンク48内で、アニオン交換キレート樹脂が浸出及び洗浄処理される。再生されたキレート樹脂は、次いで、アニオン交換キレート特定剤を収納したタンク36に供給され、アニオン交換樹脂として、脱リンコラム35に再度供給される。
【0061】
pH調整タンク42においては、水ガラス溶液に、タンク43から2乃至5Mの硫酸が添加されて滴定される。この場合には、純粋なシリカ粒子をシリカゲル(HSiO)として析出させるために、硫酸が使用される。その後、室温における凝集を回避するために、連続的に撹拌しながら下記反応2を進行させる。
【0062】
【化2】
【0063】
高純度化された水ガラス溶液を得るために、更なる処理をすることが可能である。この処理は、NaOH又は他の酸材料を介して処理する間に発生する不純物を除去するために、HClを使用した第2の酸浸出をするものである。
【0064】
酸滴定及び連続撹拌の最終製品として、シリカゲル[Si(OH)]が得られ、ラベルCを経由して、図4に示す第4工程に送出される。
【0065】
次に、図4に示す本実施形態の第4工程においては、前記リンを除去した水溶液を、遠心分離して濾過することにより、シリカを回収する。本実施形態の第4工程においては、遠心分離機51、脱イオン水による洗浄機52,及び圧搾濾過器53のような従来の装置を使用して、金属、ボロン及びリンを含まないシリカが洗浄され、乾燥される。そして、図4に示すように、シリカは、90乃至120℃の加熱炉54内で、4乃至6時間保持することにより、乾燥される。回収され乾燥されたシリカは、ICP-MS(Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)55により、ボロン及びリン含有量が検出され、この検出結果が10ppb(8N)以下であるという所望の不純物レベルであることを最終的に確認した後、シリカの還元工程に供給される(ラベルD)。
【実施例
【0066】
次に、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例について説明する。アルジェリア又は日本産の10~30gの珪藻土原料を、2~2.5M無機酸HCl、HSO、又はHNO溶液内で、浸出処理する。この浸出工程では、珪藻土原料の体積は200~500mlであり、70~80℃で3~4時間、周波数が1000~1200rpmの条件で連続的に撹拌する。酸溶液は、完全な分散及び金属汚染の浸出を可能とするために徐々に添加される。
【0067】
その後、溶液は、ラム開口フィルタ(699/470)で濾過され、珪藻土残留物が、金属不純物の分離に際して酸浸出の影響を除去するために、脱イオン水で4~5回洗浄される。8~25gのシリカが洗浄後の残渣から抽出され、体積が100~300mlで2.2~2.7MのNaOH溶剤を含むプレキシガラスのべーカー内に装入され、150~200℃で、2~3時間、1000~1200rpmの周波数で連続的に撹拌する。これにより、脱イオン水内でシリカ及び水酸化ナトリウムを完全に溶解し、ナトリウムケイ酸塩(水ガラス)を生成することができる。
【0068】
製造された水ガラス溶液のpHは、約11である。試料のpHは、硫酸で10~10.5に調整される。金属を含まない溶液は、誘導結合プラズマ質量計(ICP-MS)を使用してボロン及びリンが分析される。初期のボロン及びリン量は、5ppb以下である。金属を含まない最適されたpHの水ガラス溶液は、CRB03/05キレート樹脂を含む50~150mlの樹脂コラム内を通した。この樹脂は、そのグルカミン官能基を介してボロンに対して極めて親和的であり、シリカ又はナトリウムイオンに影響を与えず、吸収もしない。体積が30mlの試料について、ボロン量を分析した。
【0069】
このボロン量は、100ppmから10ppb以下まで減少した。更に、試料のpHは、続くアニオン交換精製のために、硫酸で6~7に調整された。金属及びボロンを含まない最適化されたpHの水ガラス溶液を、50~150mlのWA20/21Jキレート樹脂を含む樹脂コラムに通した。この樹脂は、ポリアミン官能基によりリン酸に対して高い親和性を有し、シリカ又はナトリウムイオンに影響を与えず、吸収することがない。体積が30mlの試料について、リン量を分析した。リン量は、1000ppmから10ppb以下に低下した。コラムからの溶液は、その規格値であるpH=7になるまで硫酸添加による処理がされる。水ガラス溶液の規格化後、シリカゲルが精製され、その後、濾過され、1200℃で乾燥される。乾燥工程後、シリカ粉末が回収され、最終的なICP-MSチェックが実施される。
【0070】
このようにして得られたシリカ粉末は、8Nの純度を有する。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、湿式処理により、低廉な珪藻土から、高純度のシリカを製造することができるので、この高純度シリカを還元することにより、高純度シリコンを容易に製造することが可能となり、太陽電池等の高純度シリコンの用途分野にとって、極めて有益である。
【符号の説明】
【0072】
1、3、6,9,14、26、32、43,49:タンク
2:酸浸出タンク
4,10,15,27,44:プロペラ
8:水ガラス生成タンク
12,32,39,55:ICP-MS
13、25、42:pH調整タンク
16,28、45:pHメータ
17,21,23,30,34,38,40,47
18:脱ボロンコラム
19:CRB03/05イオン交換キレート特定剤
31、48:キレート再生タンク
35:脱リンコラム
51:遠心機
52:洗浄機
54:加熱炉
図1
図2
図3
図4