(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極構造
(51)【国際特許分類】
H05H 1/24 20060101AFI20220517BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H05H1/24
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2019505236
(86)(22)【出願日】2017-07-21
(86)【国際出願番号】 DE2017100612
(87)【国際公開番号】W WO2018059612
(87)【国際公開日】2018-04-05
【審査請求日】2020-07-14
(31)【優先権主張番号】102016118569.8
(32)【優先日】2016-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512158435
【氏名又は名称】シノギー・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】CINOGY GmbH
【住所又は居所原語表記】Max-Naeder-Str. 15, 37115 Duderstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】バンドケ、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ハーンル、ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】トルトビグ、レオンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ストーク、カール-オット
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-212839(JP,A)
【文献】特表2017-504404(JP,A)
【文献】特開2006-092813(JP,A)
【文献】特開2010-050106(JP,A)
【文献】国際公開第2011/157424(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/119349(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/24
A61N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置(20)により交流高圧の供給を受ける電極(1)と、アース電極としての役目を果たす導電性の物体(22)の処理されるべき表面(21)との間に誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極構造であって、処理されるべき表面(21)に向かって誘電体(8)が前記電極(1)を全面的に覆い、前記表面(21)のための当接面を形成する、そのような電極構造において、
前記電極(1)が、前記当接面に対して同じ間隔(6)で相並んで配置されて前記誘電体(8)により互いに絶縁された少なくとも2つの部分電極(2,3)からなり、隣接する前記部分電極は前記制御装置により波形
と電圧レベルに関して反転した互いに補い合う部分交流高圧の供給を受けることを特徴とする電極構造。
【請求項2】
隣接する前記部分電極(2,3)に供給される部分交流高圧の合計はアース電極の電位に相当する時間的に一定の値を形成することを特徴とする、請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
前記部分電極(2,3)とこれを覆う前記誘電体(8)は平面状の表面(21)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の電極構造。
【請求項4】
前記部分電極(2,3)と前記誘電体(8)は柔軟であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の電極構造。
【請求項5】
処理されるべき表面(21)のほうを向く前記誘電体(8)の当接面は、前記電極構造が処理されるべき表面(21)に当接したときに中間スペースを構成する構造を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の電極構造。
【請求項6】
前記誘電体(8)と前記部分電極(2,3)は、高さ方向に前記電極構造を通って延びる、前記部分電極(2,3)を取り囲む前記誘電体(8)により連続して区切られる貫通孔(14)を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の電極構造。
【請求項7】
前記部分電極(2,3)は同じ大きさを有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の電極構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置により交流高圧の供給を受ける電極と、アース電極としての役目を果たす導電性の物体の処理されるべき表面との間に誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極構造に関し、処理されるべき表面に向かって誘電体が電極を全面的に覆い、表面のための当接面を形成する。
【背景技術】
【0002】
柔軟に構成されていてよいこのような種類の電極構造は、特許文献1により公知となっている。その場合、平坦な電極が誘電体下面と誘電体上面との間に埋設され、これらがそれぞれ面積に関して電極を超えて延び、そのようにして電極の短辺も覆い、それにより、高圧を通す電極の接触が排除される。さらに、火花を飛ばすことになりかねない電極への接近も排除される。むしろ誘電体は、電極から、アース電極としての役目を果たす処理されるべき表面へのガルバニック電流を防止する。このように、この電極構造は独自のアース電極を有していない。処理されるべき表面と誘電体との間の空気層でのプラズマの形成を保証するために、処理されるべき平滑な表面で、処理されるべき表面のほうを向いている電極構造の下面が突出する結節部を有するように構成されていてよく、これらの結節部がその上面をもって処理されるべき表面の上に載置され、連続する中間スペースを有しており、電極に交流高圧が印加されたときに、これらの中間スペースの中でプラズマを形成することができる。
【0003】
このような種類の電極構造を処理されるべき表面の上に載置することができ、処理されるべき表面は、特に人間や動物の身体の皮膚であってよい。その場合、プラズマ処理は皮膚の孔の深さの殺菌をもたらし、処理された皮膚に塗布されるケア物質に対する皮膚の吸収能力を改善する。
【0004】
プラズマ処理が創傷治癒にとって好ましい場合があることも知られている。特許文献2によれば、処理ガスによって貫流されるピン類似の器具の中でプラズマが生成され、このプラズマがノズル類似に成形された器具の端面で外に出て、処理されるべき皮膚ないし創傷へと誘導することができる。
【0005】
特許文献3は、相互に織り合わされて絶縁された電気導体によって2つの平面電極が形成される、平坦で柔軟な創傷処理装置を開示している。これらの導体の間に、空気中間スペースでプラズマを発生させるための高圧が形成される。そのためには、電極構造の全体がガス透過性であることが必要である。
【0006】
さらに、誘電体バリア表面プラズマを生成可能である電極構造が知られている。特許文献4は、第1の平面状の電極と第2の格子類似の電極とが電極構造の高さ方向で互いに間隔をおいて誘電体の中に埋設され、それによりプラズマを形成するために適した電界が、格子類似の電極の近傍に配置された誘電体表面で形成される、このような種類の構造を記載している。格子類似の電極には交流高圧が印加されるのに対して、その下にある平面状の電極はアース電位にある。このような種類の構造は高いエネルギー消費量と、表面プラズマの形成に関わる低い効率とを有している。
【0007】
このような観点からして、平面状の電極と、アース電極としての処理されるべき表面との間で、理想的には均等な定義されたプラズマをもたらす、ほぼ均一な電界推移が生じるように電極が構成されている電極構造が好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】ドイツ特許第102009060627B4号明細書
【文献】ドイツ特許出願公開第102009047220A1号明細書
【文献】ドイツ特許出願公開第10201101416A1号明細書
【文献】国際公開第2009098662A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した種類の-特に柔軟な-電極構造を載せることで、比較的広い面をも処理するという需要がますます高まっている。しかし処理面が増えるにつれて、誘電体の当接面と処理されるべき表面との間で均等なプラズマを形成するために通常の技術で必要となる電界強さを構成するのが難しくなる。したがって本発明の課題は、一方ではできる限り均等なプラズマが効率的な仕方で形成され、他方では、少ないエネルギー消費量によって比較的広い面でも相応に大型の電極構造で処理することができるように、上述した種類の電極構造を構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明によると冒頭に述べた種類の電極構造は、電極が、当接面に対して同じ間隔で相並んで配置されて誘電体により互いに絶縁された少なくとも2つの部分電極からなり、隣接する部分電極は制御装置により波形と電圧レベルに関して反転した互いに補い合う部分交流高圧の供給を受けることを特徴とする。
【0011】
このように本発明による電極構造は、導電性の物体の処理されるべき表面をアース電極として利用するという周知の原理に依拠しており、それにより、原則としてプラズマ場の形成のために、プラズマの形成のためのアース電極としての処理されるべき表面と協同作用するただ1つの電極しか必要とされない。このとき電極の面にわたってほぼ理想的に均一な電界が発生し、したがってその中では力線が互いに平行に延びる。電極の縁部のところでのみ、周知の通り湾曲した、もしくは斜めに延びる力線が生じ得る。本発明による電極構造では、部分電極は、電界および理想的には平行な力線の広がりが、部分電極の面の50%超、好ましくは65%超、さらに好ましくは80%超であるような面積で構成されるのが好ましい。本発明による電極は平面的に広がっており、誘電体の当接面に対して平行に位置決めされる。本発明によると、制御装置により別々に交流高圧の供給を受ける少なくとも2つの部分電極が存在する。このとき交流高圧は、アース電位を中心として振動するのが好ましい。理想的な場合、交流高圧は正弦波形に進行することができるはずである。制御装置に存在するキャパシタンスとインダクタンスに基づいて振動性回路構造が存在していてもよく、これによって励起パルスがそのつど高周波の振動プロセスをトリガする。
【0012】
仮に、相並んで配置される部分電極が同位相で制御されれば、該当する部分電極と処理されるべき表面との間の均一な場の領域で、理想的な場合には均一なプラズマが形成されることになるはずである。しかし、相並んで配置された部分電極の間の結合領域では、電圧が互いに加算されて望ましくない電圧ピークをもたらし、これが均等なプラズマ場を乱すことになる。それに加えて、処理されるべき表面がある導電性の物体の内部で著しい電位差が形成されることになり、それが物体内部での望ましくない通電につながりかねない。このことは、生体において不快かつ場合により危険な現象につながる。
【0013】
したがって本発明では、相並んで位置する部分電極が反転した交流高圧によって制御されることが意図され、それにより、隣接する部分電極の間に位置する部分電極の縁部領域で、実質的に場のない分離領域が生じる。この分離領域は細く線状であり得るので、プラズマで形成される殺菌性の生成物、たとえば空気中のプラズマで形成されるOHラジカルやオゾン分子などが、分離領域でも有効となる。これらはその非常に短い寿命の中でも、分離領域にある表面の領域まで達することができるからである。
【0014】
したがって、少なくとも2つの部分電極を有する本発明による電極構造は、部分電極がほぼ面全体にわたって、処理されるべき表面とともに理想的には実質的に均一な場-およびそれに伴って理想的には均等なプラズマ-を形成し、隣接する部分電極に向かって原則として場のない細い分離領域を生じさせるように設計される。したがって2つの隣接する部分電極について、一方の部分電極は交流高圧の正の半波により制御されるのに対して、他方の部分電極は負の半波によって制御され、それにより分離領域では両方の電圧が互いに補い合う。好ましい実施形態では、それぞれの半波は大きさと形に関して同一であり、それにより部分領域では、交流高圧の周期にわたって変化しない一定の電位が生じ、この電位はアース電極のアース電位に相当する。現実には、反転した半波の同一性は近似的にしか成立し得ないので、部分領域での一定の合計電位は、たとえばピーク電圧の5パーセントよりも小さい合計電位のわずかな変動が生じている場合であっても成立する。理想的な場合には均等であるプラズマは、現実にはわずかなフィラメント放電によって、このようなフィラメント放電を回避する尽力がなされているとしても、重畳ないし擾乱されている場合がある。
【0015】
適用される交流高圧のピーク電圧は±10kVから±100kVの間であり得るのが好都合である。交流高圧の交番周波数は数百Hzからおよそ100MHzの間であるのが好都合である。
【0016】
不均等な表面に合わせた適合化のために、部分電極と誘電体が柔軟であると好都合である。それによって電極構造全体が不規則な表面に追随し、それにより、理想的な場合には均等なプラズマ場でこれを処理することができる。
【0017】
それ自体公知の方式により、処理されるべき表面のほうを向く誘電体の当接面は、好ましくは格子や結節部の形態の構造を有することができ、これらの構造の間で、誘電体がネップまたはその他の突出する構造の上面をもって処理されるべき表面に当接したときにプラズマを形成することができる。
【0018】
本発明による電極構造は、誘電体が創傷適合的な材料、たとえば適当なシリコンなどで形成されるか、または誘電体の当接面に創傷適合的な材料、たとえばガーゼからなる層が載置されれば、創傷被覆として構成することができる。
【0019】
本発明による電極構造は、誘電体と部分電極とが、電極構造を通って高さ方向に延びる、部分電極を取り囲む誘電体によって連続して区切られる貫通孔を有していれば、創傷液の排出のためや、創傷治癒ないし創傷治癒促進をする液体の供給のためにも好適である。
【0020】
本発明による電極構造は、部分電極に関して高い対称性を有するのが好ましい。そのために、電極構造がそれぞれ同じ大きさを有していると好都合であり、それにより、プラズマの形成のために有効な面が複数の部分電極に均等に配分される。
【0021】
部分電極は、好ましくは両側で誘電体により覆われる平坦な金属材料からなることができる。あるいは、同じくたとえばシリコンなどのプラスチックから構成された誘電体と形状接合式に結合することもできる導電性プラスチックによって、電極を具体化することも可能である。電極は、たとえば導電性の添加物を金属粒子、炭素粒子などの形態で有するシリコンからなることができる。
【0022】
次に、図面に示されている実施例を参照しながら本発明について詳しく説明する。図面は次のものを示す:
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】完成した
図1の電極構造を示す平面図である。
【
図3】本発明に基づく構成原理の機能を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1では、相互に結合されておらず、互いに定義された間隔を有する2つの部分電極2,3によって電極1が構成されている。部分電極2,3は、それぞれ平面状の形成物5へと移行する細い平坦な引込配線4からなる。両方の部分電極2,3の平面状の形成物5はほぼ正方形の電極面を共同で形成し、図示した実施例では、間隔6は、引込配線4によって定義される長手方向でそれぞれの平面状の形成物5の間にある。
【0025】
部分電極3の平面状の形成物5は複数の貫通孔7を有しており、その機能についてはあとで詳しく説明する。部分電極の材料は、前述した通り、金属フィルム、薄い金属板、または導電性粒子の添加によって導電性にされたプラスチック層、特にシリコン層であってよい。
【0026】
図1からわかる通り、間隔6に向かって部分電極2,3の両方の平面状の形成物5にほぼ半円形の貫通孔があり、これらの貫通孔は、間隔6を充填する誘電体と部分電極との確実な噛合いを惹起する。
【0027】
電極1は、
図1では上側の誘電体層9および下側の誘電体層10からなるように図示されている誘電体8で全面的に覆われる。上側の誘電体層9はその面をもって両方の部分電極2,3の共通の面から全面で突出しており、部分電極2,3の貫通孔7と一直線上に並ぶように配置された貫通孔11を同じく備えている。部分電極2,3の間の間隔6の領域では上側の誘電体層は、電極2,3の間の確実な電気絶縁を惹起するために、中実に構成されている。上側の誘電体層9と下側の誘電体層10はいずれも付加部12,13を有しており、これによって引込配線4が周囲から遮蔽される。
【0028】
上側の誘電体層9の貫通孔11は貫通孔7と同心的に構成されているが、これよりも小さい直径を有しており、それにより、貫通孔7の領域でも誘電体の層が部分電極2,3の材料を遮蔽する。したがって液体を通じても、部分電極2,3への直接的な電気接続は成立可能でない。
【0029】
下側の誘電体層10は、上側の誘電体層9と同じく、1つの連続するつながった層を構成する。上側の誘電体層9は貫通孔14によって貫通されていてよい。貫通孔14も、部分電極の貫通孔7および上側の誘電体層の貫通孔11と同心的に構成される。下側の誘電体層10でも、貫通孔14の直径は部分電極2,3の貫通孔7の直径よりも小さく、かつ、上側の誘電体層9の貫通孔11の直径と同じ大きさである。
【0030】
部分電極2,3と反対を向くほうの側で、下側の誘電体層10は互いに交差するウェブ状の壁部を有する格子構造15を構成し、その自由エッジ16が当接面を定義し、この当接面をもって電極構造を処理されるべき表面に載置することができる。
【0031】
さらに
図1にみられる通り、連続する下側の誘電体層10は側方の帯状部17,18をもって上側の誘電体層9の輪郭から側方へ突き出し、それにより付加部を構成し、この付加部をもって電極構造を処理されるべき表面の上に取付可能である。そのために側方の帯状部はその下面で粘着剤によりコーティングされ、または付着性の材料で構成されていてよい。
【0032】
図2は、
図1の電極構造の下面すなわち当接面の平面図を示す。この図面にみられる通り、格子構造は正方形のチャンバを構成し、その中心に、部分電極2,3の(大きいほうの)貫通孔7と同心的に配置された下側の誘電体層の貫通孔14がある。このようにして、互いに一直線上に並ぶ貫通孔7,14によって連続する通路が形成され、これらの通路は誘電体8の材料によって全面で区切られるとともに、特に、部分電極2,3の材料を貫通孔7の領域でも遮蔽する。
【0033】
図2からさらにわかるように、部分電極2,3の間の間隔6の領域では誘電体材料が中実に構成されている。格子構造15は部分電極2,3の領域の範囲外で、フレーム状に配置された小さなチャンバからなる縁部構造19によって補強されている。
【0034】
図2に示唆する通り、引込配線4は模式的に図示する制御装置20の接触構造によって接触される。その際には当然ながら、高圧を通す引込配線4に対する接触防護が確保されるように留意する。そのために引込配線4の接触は、たとえば導通をする引込配線4まで誘電体8の材料へ自動的に切り込んで、その際に絶縁性のハウジングを閉止する圧接コンタクトによって行うことができる。このような種類の圧接コンタクトは市販されており、ここで詳しく説明する必要をみない。ただし模式的に図示するように引込配線は、合計として理想的な場合にはゼロになるように互いに補い合うように周期に関して相互にシフトした交流高圧の供給を受ける。
【0035】
誘電体8の材料による部分電極2,3およびその引込配線4の包囲は通常の仕方で行うことができる。
図1に示す構造では、上側の誘電体層9と下側の誘電体層10は、熱可塑性の材料として互いに溶着することができるように、あるいは単に互いに接着できるように構成されている。当然ながら、誘電体全体を挿入された部分電極2,3とともに注型プロセスで一体的に製作することも同様に可能である。
【0036】
図3は、誘電体8に埋設されて間隔6を介して相互に絶縁された部分電極2,3が、スペーサとして機能する格子構造15の領域でプラズマの形成を惹起し、プラズマを誘発する電界が部分電極2,3と表面21の間で均一に延びることによって、このプラズマが均一であることを模式的に図示しており、ここではそれが互いに平行にアライメントされた力線によって図示されている。さらに、間隔6の領域ではプラズマが形成されないことが明らかとなる。この領域は事実上、場がないからである。その理由は、
図3の部分電極2,3の上方に模式的に図示されているように、両方の部分電極2,3が、波形と大きさに関して反転した交流高圧によって制御されることに帰せられる。同じく図示されている合計曲線Σが示す通り、結果として生じる場は間隔6の領域ではゼロである。両方の高圧電圧が、理想的な場合にはゼロとなって消滅するからである。それにより、部分電極2,3の間の領域でプラズマ形成を歪ませる電界現象が発生することが防止される。特に電圧ピークが回避される。
【0037】
2つの部分電極2,3を有する電極1の構成が好ましい理由は、それがもっとも単純に具体化できるからである。しかしながら比較的広い処理されるべき表面については、たとえば4つの部分電極を有する構造を設けることも考えられ、これらがたとえば4つの正方形の平面状の形成物5をもって1つの共通の正方形の電極面を構成する。その場合には、部分電極の制御は対角線上で同じ波形によって、かつ隣接するところで反転する波形によって行うことになる。
【0038】
当然ながら、たとえば三角形、菱形、六角形、あるいは円形面の形態における、部分電極の上記以外のジオメトリーも考えられる。
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[C1]
制御装置(20)により交流高圧の供給を受ける電極(1)と、アース電極としての役目を果たす導電性の物体(22)の処理されるべき表面(21)との間に誘電体バリアプラズマ放電を形成するための電極構造であって、処理されるべき表面(21)に向かって前記誘電体(8)が前記電極(1)を全面的に覆い、前記表面(21)のための当接面を形成する、そのような電極構造において、
前記電極(1)が、前記当接面に対して同じ間隔(6)で相並んで配置されて前記誘電体(8)により互いに絶縁された少なくとも2つの部分電極(2,3)からなり、隣接する前記部分電極は前記制御装置により波形電圧レベルに関して反転した互いに補い合う部分交流高圧の供給を受けることを特徴とする電極構造。
[C2]
隣接する前記部分電極(2,3)に供給される部分交流高圧の合計はアース電極の電位に相当する時間的に一定の値を形成することを特徴とする、C1に記載の電極構造。
[C3]
前記部分電極(2,3)とこれを覆う前記誘電体(8)は平面状の表面(21)を有することを特徴とする、C1および2に記載の電極構造。
[C4]
前記部分電極(2,3)と前記誘電体(8)は柔軟であることを特徴とする、C1から3のいずれか1項に記載の電極構造。
[C5]
処理されるべき表面(21)のほうを向く前記誘電体(8)の当接面は、前記電極構造が処理されるべき表面(21)に当接したときに中間スペースを構成する構造を有することを特徴とする、C1から4のいずれか1項に記載の電極構造。
[C6]
前記誘電体(8)と前記部分電極(2,3)は、高さ方向に前記電極構造を通って延びる、前記部分電極(2,3)を取り囲む前記誘電体(8)により連続して区切られる貫通孔(14)を有することを特徴とする、C1から5のいずれか1項に記載の電極構造。
[C7]
前記部分電極(2,3)は同じ大きさを有することを特徴とする、C1から6のいずれか1項に記載の電極構造。