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特許7074358外因性ミトコンドリアを含むナチュラルキラー細胞および同細胞を含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】外因性ミトコンドリアを含むナチュラルキラー細胞および同細胞を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220517BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220517BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
A61K35/17 A
A61K45/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P35/02
A61P31/14
A61P31/20
A61P31/16
A61P11/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019525738
(86)(22)【出願日】2017-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-28
(86)【国際出願番号】 KR2017012883
(87)【国際公開番号】W WO2018088875
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】10-2016-0151411
(32)【優先日】2016-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515191497
【氏名又は名称】パイアン バイオテクノロジ- インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ハン、キュボム
(72)【発明者】
【氏名】リ、ヨンジュン
【審査官】竹内 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-502756(JP,A)
【文献】国際公開第2016/135723(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/008937(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0034527(US,A1)
【文献】Scientific Reports,2015年,Vol.5:9073,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00-7/08
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離した外因性ミトコンドリアを含むナチュラルキラー細胞を有効成分として含む、がんまたは感染性疾患を治療するための医薬組成物
【請求項2】
前記単離した外因性ミトコンドリアが、筋細胞、肝細胞、線維芽細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、骨細胞、白血球、リンパ球、または粘膜細胞から得られたものである、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
前記単離した外因性ミトコンドリアが、ナチュラルキラー細胞1個当たり1~10 の量で含まれる、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記単離した外因性ミトコンドリアおよび前記ナチュラルキラー細胞が混合された組成物を遠心分離することにより、前記外因性ミトコンドリアが前記ナチュラルキラー細胞中に送達されている、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項5】
前記がんが、胃がん、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、およびリンパ腫からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記感染性疾患が、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性呼吸器疾患、およびインフルエンザからなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記組成物が、液体または冷凍の形態である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
がんまたは感染性疾患を予防または治療するための医薬組成物の製造のための請求項1に記載のナチュラルキラー細胞の使用。
【請求項9】
前記組成物が、静脈内、皮下、点眼、腹腔内、および筋内経路からなる群から選択される経路により投与される、請求項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物が、前記がんまたは感染性疾患を予防または治療する効果を有する別の薬物または生理活性物質と組み合わせて投与される、請求項に記載の使用。
【請求項11】
単離した外因性ミトコンドリアを含む末梢血単核細胞を有効成分として含む、がんまたは感染性疾患を治療するための医薬組成物
【請求項12】
前記単離した外因性ミトコンドリアが、筋細胞、肝細胞、線維芽細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、骨細胞、白血球、リンパ球、または粘膜細胞から得られたものである、請求項11に記載の医薬組成物
【請求項13】
前記単離した外因性ミトコンドリアが、末梢血単核細胞1個当たり1~10 の量で含まれる、請求項11に記載の医薬組成物
【請求項14】
前記がんが、胃がん、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、およびリンパ腫からなる群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物
【請求項15】
前記感染性疾患が、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性呼吸器疾患、およびインフルエンザからなる群から選択される、請求項11に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞療法製品に関し、より詳細には、外因性ミトコンドリアを含むナチュラルキラー(以下、NKと称する)細胞または末梢血単核細胞(以下、PBMCと称する)、および同細胞を有効成分として含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、バイオ医薬品が、種々の難病を治療するために開発されている。バイオ医薬品は、タンパク質薬物、抗体薬物および細胞療法製品を含む。ここで、細胞療法製品は、疾患の治療、診断、または予防を目的として使用する医薬を指し、細胞療法製品は、ex vivoで単離および増殖を実施すること、または他の方法を用いて細胞の生物学的特性を変更すること等による一連の操作を通じて得ることができる。細胞療法製品は、自家、同種、または異種細胞に由来し得る。細胞療法製品は、細胞型によって、体細胞療法製品および幹細胞療法製品に分類することができる。
【0003】
一方、患者の免疫機能を使用する免疫療法が、がん療法において注目されている。免疫療法では、多様な機能を有する免疫細胞の特性を利用し、免疫細胞の複合的相互作用によってがん細胞を除去する。ヒト血中のPBMCは、リンパ球または単球等の円形の核を有する血液細胞であり、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞(DC)、およびNK細胞を含む。これらの中でも、NKおよび細胞傷害性Tリンパ球(CTL)細胞は、がん細胞を直接的に除去する。抗原をこれらのエフェクター細胞に提示する抗原提示細胞は、樹状細胞またはB細胞を含む。さらに、種々のサイトカインを分泌するヘルパーT細胞および制御性T細胞等は、免疫応答に関与する。これらの中でも、NK細胞は、免疫細胞療法において新興かつ有望な免疫細胞である。
【0004】
特に、NK細胞は、非特異的にがん細胞を殺傷する能力を有することが示されており、NK細胞について多くの研究が行われている。このような研究に基づいて、がんにおけるNK細胞療法は、がん細胞の治療のための新興手段となっている。特に、宿主またはがんに感染した病原体に対するサイトカイン分泌により達成された自然および獲得免疫応答において、NK細胞が重要な役割を担うことが報告されている。
【0005】
したがって、本発明者らは、NK細胞およびPBMCの細胞傷害力を向上させる新規方法を見出すことに取り組んだ。結果として、本発明者らは、NKおよびPBMCの細胞傷害性を上昇させる方法を見出し、したがって、このような細胞傷害性を使用してがんを治療する方法を提供し、これにより本発明を完成させた。
【技術的課題】
【0006】
本発明の目的は、細胞傷害性が上昇しているNK細胞および同細胞を含む医薬組成物を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、細胞傷害性が上昇しているPBMCおよび同細胞を含む医薬組成物を提供することである。
【課題の解決】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、外因性ミトコンドリアを含むNK細胞、および同細胞を含む、がんまたは感染性疾患の予防または治療のための医薬組成物を提供する。
【0009】
さらに、本発明は、外因性ミトコンドリアを含むPBMC、および同細胞を含む、がんまたは感染性疾患を予防または治療するための医薬組成物を提供する。
【発明の有利な効果】
【0010】
外因性ミトコンドリアを導入した、NK細胞およびPBMCは、がん特異的殺傷効果の上昇をもたらす細胞傷害性の上昇を有するだけでなく、in vivoで存在する免疫細胞としての副作用を示すこともない。さらに、NK細胞およびPBMCでは、その細胞自体の能力に関して向上しており、そのため、NK細胞およびPBMCが関与する種々の疾患に広範に適用可能である。結果として、NK細胞およびPBMCを含む医薬組成物が、大いに商業的適用が可能であることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、ヒト正常肝細胞(WRL-68)由来ミトコンドリアがNK細胞中に送達されたかどうかを検討するために、PCR解析法により得られた結果を示す。
図2図2は、ヒト正常肝細胞由来ミトコンドリアがNK細胞中に送達されたかどうかを検討するために、FACS解析により得られた結果を示す。
図3図3は、NK細胞中に送達されたヒト正常肝細胞由来ミトコンドリアの位置を特定するために、蛍光顕微鏡観察により得られた結果を示す。
図4A図4Aは、CD107a脱顆粒アッセイによる、外因性ミトコンドリアが送達されたNK細胞の抗がん活性を示す結果を示す。
図4B図4Bは、CD107a脱顆粒アッセイによる、外因性ミトコンドリアが送達されたNK細胞の抗がん活性を示す結果を示す。
図5図5は、K562細胞傷害アッセイによる、外因性ミトコンドリアが送達されたNK細胞の細胞傷害効果を示す結果を示す。
図6図6は、臍帯間葉幹細胞(UC-MSC)由来のミトコンドリアがNK細胞中に送達されたかどうかを検討するために、FACS解析により得られた結果を示す。
図7図7は、K562細胞傷害アッセイを使用した、UC-MSC由来ミトコンドリアが送達されたNK細胞の細胞傷害効果を示す結果を示す。
図8A図8Aは、急性骨髄性白血病の動物モデルにおける、UC-MSC由来ミトコンドリアが送達されたNK細胞による、マウスの体重および生存率に関する治療効果を示す結果を示す。
図8B図8Bは、急性骨髄性白血病の動物モデルにおける、UC-MSC由来ミトコンドリアが送達されたNK細胞による、マウスの体重および生存率に関する治療効果を示す結果を示す。
図8C図8Cは、急性骨髄性白血病の動物モデルにおける、UC-MSC由来ミトコンドリアが送達されたNK細胞による、マウスの体重および生存率に関する治療効果を示す結果を示す。
図9図9は、UC-MSC由来ミトコンドリアが送達されたNK細胞を投与した急性骨髄性白血病の動物モデルにおける血中腫瘍マーカーの発現分布の結果を示す。
図10図10は、K562細胞傷害アッセイによる、外因性ミトコンドリアが送達されたPBMCの細胞傷害効果を示す結果を示す。
【発明の詳細な説明】
【0012】
以下、本発明を詳細に記載する。
【0013】
本発明の一側面では、外因性ミトコンドリアが富化されたNK細胞を提供する。
【0014】
ここで使用する場合、用語「外因性ミトコンドリア」は、NK細胞中に存在するミトコンドリアではなく、外因的に導入したミトコンドリアを指す。ここで、外因性ミトコンドリアは、NK細胞を得た対象と同一の対象から得てもよいが、別の対象から得てもよい。ここで、外因性ミトコンドリアは、哺乳動物から得てもよく、好ましくはヒトから得てもよい。例えば、外因性ミトコンドリアは、筋細胞、肝細胞、線維芽細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、骨細胞、白血球、リンパ球、または粘膜細胞から得てもよく、好ましくは良好なミトコンドリア活性を有する筋細胞から得てもよい。さらに、ミトコンドリアは、ex vivoで培養した細胞から得てもよい。
【0015】
一方、外因性ミトコンドリアは、細胞を破壊し、遠心分離を実施することにより、または細胞を培養し、細胞を破壊し、遠心分離を実施することにより得てもよい。ミトコンドリアを得る方法では、細胞小器官の採取に使用する従来の方法を使用することができる。
【0016】
ここで、外因性ミトコンドリアを含むNK細胞はNK細胞10個当たり0.01~500μg、0.1~450μg、0.5~300μg、1~100μg、または2~10μgの量のミトコンドリアを導入することにより得てもよい。ここで、NK細胞は1~10または10~10の外因性ミトコンドリアを含んでもよい。具体的には、外因性ミトコンドリアの数は、約1、10、100または500の外因性ミトコンドリアがNK細胞1個中に含まれるようであってもよい。ここで、NK細胞中に含まれる外因性ミトコンドリアの数は、外因性ミトコンドリアの量を制御してNK細胞中に導入することにより調節することができる。各対象NK細胞は、異なる数の外因性ミトコンドリアを含んでもよい。
【0017】
さらに、NK細胞は、哺乳動物またはヒトに由来してもよい。好ましくは、NK細胞は、NK細胞療法を受けようとする対象から得てもよい。ここで、NK細胞は、対象の血液から直接単離して使用してもよく、または対象から得た未熟なNK細胞または幹細胞を分化させることにより得て使用してもよい。
【0018】
一方、外因性ミトコンドリアをNK細胞中に導入するために、外因性ミトコンドリアおよびNK細胞を混合してもよく、次いで、混合物を遠心分離に供して、ミトコンドリアをNK細胞中に効率的に送達してもよい。遠心分離実施時の条件を適切に調節して、細胞を損傷することなく、ミトコンドリアを効率的に導入することができる。ここで、遠心分離は、室温で実施してもよく、温度条件は、細胞安定性のために適切に選択することができる。ここで、外因性ミトコンドリア導入時、NK細胞および外因性ミトコンドリアを、界面活性物質の存在下で混合して、外因性ミトコンドリアのNK細胞中への膜透過性を高め、これにより、外因性ミトコンドリアの導入効率を高めてもよい。
【0019】
ここで、遠心分離は100×g、300×g、500×g、800×g、1,000×g、1,200×g、1,500×g、1,800×g、2,000×g、2,400×g、3,000×g、5,000×g、または10,000×gで実施してもよい。さらに、遠心分離時間は0.1分~60分であってもよいが、これに限定されない。具体的には、遠心分離時間は1分、2分、3分、5分、10分、20分、または30分であってもよい。さらに、遠心分離は0℃~40℃、20℃~38℃、または30℃~37℃の温度で実施してもよい。
【0020】
このように、NK細胞と外因性ミトコンドリアの両方に遠心力を適用することにより、NK細胞に損傷をあまり与えずに、ミトコンドリアをNK細胞中に高効率で送達することができる。
【0021】
さらに、界面活性物質を使用して、外因性ミトコンドリアのNK細胞中への細胞膜透過性を促進することができる。界面活性物質を添加する時点は、NK細胞の外因性ミトコンドリアとの混合前、混合中、または混合後であってもよい。さらに、界面活性物質をNK細胞に添加した後、特定の期間、NK細胞をインキュベートして、外因性ミトコンドリアのNK細胞への細胞膜透過性を高めてもよい。インキュベーション時間は0.1~60分であってもよい。具体的には、インキュベーション時間は1分、5分、10分、20分、または30分であってもよいが、これに限定されない。
【0022】
具体的には、界面活性物質は、好ましくは非イオン性界面活性物質であり、ポロキサマーであってもよい。ここで、ポロキサマーは、ポリオキシエチレンの2つの親水性鎖と隣接するポリオキシプロピレンの中央の疎水性鎖からなるトリブロック共重合体である。さらに、混合物中の界面活性物質は、1~100mg/ml、3~80mg/ml、または5~40mg/mlの濃度であってもよく、好ましくは10~30mg/mlであってもよい。
【0023】
さらに、方法は、所定の時間および温度条件下で混合物をインキュベートする工程をさらに含んでもよい。インキュベーションは0℃~40℃、20℃~38℃、または30℃~37℃の温度で実施してもよい。さらに、インキュベーションは0.1~4時間、0.5~3.8時間、または0.8~3.5時間実施してもよい。さらに、インキュベーションは、遠心分離を実施した後に所定の時間実施して、外因性ミトコンドリアをNK細胞中に送達してもよい。さらに、インキュベーション時間は、細胞型およびミトコンドリアの量に応じて適切に選択することができる。
【0024】
本発明の別の側面では、外因性ミトコンドリアを含むNK細胞を有効成分として含む、がんまたは感染性疾患を治療するための医薬組成物を提供する。
【0025】
ここで、がんは、胃がん、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、およびリンパ腫からなる群から選択される何れか1つであってもよい。さらに、感染性疾患は、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性呼吸器疾患、およびインフルエンザからなる群から選択される何れか1つであってもよい。
【0026】
さらに、医薬組成物は、液体または冷凍の形態の調製物に生成してもよい。冷凍後に再び解凍する場合であっても、医薬組成物は、細胞機能障害を呈することなく、高い細胞生存率および細胞殺傷能力を維持することができる。したがって、医薬組成物は、追加処理なしで、液体または冷凍の保存形態に容易に保存および供給することができる。
【0027】
本発明のさらに別の側面では、外因性ミトコンドリアを含むNK細胞を有効成分として含む医薬組成物を対象に投与する工程を含む、疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0028】
このような方法は、疾患を有する対象または疾患を有する疑いのある対象に有効量の本発明のNK細胞を投与する工程を含む。例えば、外因性ミトコンドリアを導入した細胞は、対象、好ましくは哺乳動物に治療調製物として投与することができる。細胞は、静脈内、または皮下経路により投与することができる。本発明の組成物を、静脈内、皮下、点眼、腹腔内、または筋内経路等により非経口的に投与する場合、組成物は、好ましくは水性の形態であるか、または組成物が、生理学的に適用可能な体液、懸濁液、または溶液を含むことが好ましい。したがって、担体またはビヒクルは、生理学的に許容可能であり、そのため、組成物に添加して患者に送達することができる。このような担体またはビヒクルは、患者の電解液に悪影響を与えない。したがって、生理食塩水を調製物の担体として一般に使用することができる。
【0029】
本発明の細胞を使用して疾患を予防または治療する方法はまた、本発明の細胞と組み合わせて、疾患を予防または治療する効果を有する別の薬物または生理活性物質を投与することを含んでもよい。この併用投与の経路、時間、および用量は、病型、患者の病状、治療または予防の目的、および組み合わせて使用する他の薬物または生理活性物質に応じて決定することができる。
【0030】
さらに、疾患は、がんまたは感染性疾患であってもよい。ここで、がんは、胃がん、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、およびリンパ腫からなる群から選択されてもよい。感染性疾患は、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性呼吸器疾患、およびインフルエンザからなる群から選択される何れか1つであってもよい。
【0031】
本発明のよりさらなる別の側面では、外因性ミトコンドリアを含むPBMCを提供する。
【0032】
ここで使用する場合、用語「末梢血単核細胞」は、末梢血中に存在する球形の核を有する細胞を指し、これは、末梢血単球またはPBMCと称する。このようなPBMCは、B細胞、T細胞、マクロファージ、樹状細胞、およびNK細胞等の免疫細胞を含んでもよい。PBMCは、対象の血液より得ることができる。ここで、外因性ミトコンドリアは、上記のように対象の組織または細胞から得ることができる。
【0033】
ここで、外因性ミトコンドリアを含むPBMCは、PBMC10個当たり0.01~500μg、0.1~450μg、0.5~300μg、1~100μg、または2~10μgの量のミトコンドリアを導入することにより得てもよい。ここで、外因性ミトコンドリアは、PBMC1個当たり1~10または10~100の量で含んでいてもよい。さらに、外因性ミトコンドリアをPBMC中に導入する方法は、上記のように遠心分離により行うことができる。本発明のよりさらなる別の側面では、外因性ミトコンドリアを含むPBMCを有効成分として含む、がんまたは感染性疾患を治療するための医薬組成物を提供する。
【0034】
ここで、上記のように、がんは、胃がん、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、およびリンパ腫からなる群から選択されてもよい。さらに、感染性疾患は、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性呼吸器疾患、およびインフルエンザからなる群から選択される何れか1つであってもよい。
【0035】
これ以降、以下の例を参照して、本発明をより詳細に記載する。ただし、以下の例は、本発明の例示の目的のみに提供し、本発明の範囲は、これのみに限定されない。
【0036】
I.外因性ミトコンドリアを導入したNK細胞の生成、およびその機能の確認
例1.外因性ミトコンドリアを導入したNK細胞の生成
ヒト正常肝細胞(WRL-68)(CRL1458、ATCC)を、10%のウシ胎仔血清(FBS、Gibco製)、100μg/mlのストレプトマイシン、および100U/mlのアンピシリンを追加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に播種し、72時間培養した。培養完了後、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Gibco製)で細胞を2回洗浄した。洗浄した細胞を0.25%のトリプシン-EDTA(TE、Gibco製)で処理して細胞を得た。得られた細胞について、ミトコンドリアを抽出するために、血球計数器を使用して細胞数を測定し、細胞約3×10個/mlの量の細胞を採取した。
【0037】
その後、約4℃の温度で10分間、350×gの速度で細胞株を一次遠心分離に供した。得られたペレットを採取し、10~15分間、緩衝液に再懸濁および均質化した。約4℃の温度で3分間、1,100×gの速度でペレットを含む組成物を二次遠心分離に供して上清を得た。次いで、約4℃の温度で15分間、12,000×gの速度で上清を三次遠心分離に供してミトコンドリアを細胞株から単離した。
【0038】
1×10の量の単離したミトコンドリアを別個のヒトNK細胞(NK92mi)(CRL2408、ATCC)を含む試験管内に注入し、約4℃の温度で15分間、2,500×gの速度で遠心分離を実施した。上清の除去後、PBSによる洗浄を実施し、約4℃の温度で5分間、遠心分離を実施した。同条件下で2回、洗浄を実施した。ここで、単離したミトコンドリアを受容細胞1×10個当たり0.05、0.05、0.5および5μgの重量で送達した。
【0039】
例2.ヒト正常肝細胞(WRL68)由来ミトコンドリアのNK細胞中への送達の確認(PCR解析法)
DNA精製キット(NucleoSpin、MACHEREY-NAGEL GmbH&Co.KG製)を使用して、例1で採取したNK細胞から遺伝子全体を抽出した。抽出したDNAをWRL-68ミトコンドリア特異的同定プライマー(F:5’-CTA TTC TCT GTT CTT TCA TGG-3’(配列番号1)、R:5’-AAG TAT TTA TGG TAC CGT ACG-3’(配列番号2))とそれぞれ混合した。次いで、2X PCR Master Mix(Applied Biosystems製、Foster City、CA、USA)および三次蒸留水を添加して、得られた総量を10μlとし、Veriti96ウェル型サーマルサイクラー(Applied Biosystems製)を使用して所望のDNA部分を増幅した。
【0040】
PCR反応を実施して増幅したDNAを得た。増幅したDNAを同定するために、1.5%アガロースゲル上で電気泳動を実施し、次いで、Loading Star(DYNEBIO INC.製、Seongnam、Korea)による染色を実施した。UV分光計(Chemi-Doc XRS、Bio-Rad Laboratories,Inc.製、Hercules、CA、USA)を使用して増幅したDNAバンドを同定した。GAPDHをハウスキーピング遺伝子として選択した。このために、GADPHを増幅可能であるプライマー(F-5’-GGA AGG TGA AGG TCG GAG-3’(配列番号3)、R-5’-GGC AAC AAT ATC CAC TTT ACC-3’(配列番号4))を使用した。この結果を図1に示す。
【0041】
図1は、NK細胞中に送達された外因性ミトコンドリアの量が、NK細胞と混合するミトコンドリアの量(0.005、0.05、0.5および5μg)が増加するにつれて増加することを示した。
【0042】
例3.ヒト正常肝細胞(WRL-68)由来ミトコンドリアのNK細胞中への送達の確認(FACS解析法)
蛍光活性化セルソーター(FACS)解析を実施して、肝細胞由来ミトコンドリアがNK細胞中に送達されたかどうかを確認した。ヒト正常肝細胞から単離したミトコンドリアを500nMのGreen mitotracker(Thermo Fisher Scientific製、Waltham、USA)で処理した。5%COのインキュベーター内に37℃で10分間、得られたミトコンドリアを反応させ、洗浄した。肝細胞由来の蛍光標識したミトコンドリアを、遠心分離法を使用して免疫細胞中に送達し、次いで、免疫細胞を1mLのPBS中に再懸濁した。次いで、ミトコンドリア送達を確認し、FACS Caliburフローサイトメーター(BDBiosciences製、San Jose、CA、USA)を使用して解析した。結果を図2に示す。
【0043】
図2から、NK細胞中に送達されたミトコンドリアの量(0.005、0.05、0.5および5μg)に応じてNK細胞を識別することが可能であることが確認された。
【0044】
例4.ヒト正常肝細胞(WRL68)由来ミトコンドリアのNK細胞中への送達の確認(蛍光顕微鏡による観察)
正常肝細胞(WRL-68)由来ミトコンドリアがヒトNK細胞(NK92mi)中に送達されたかどうかを確認するために、NK細胞のミトコンドリアを500nMのGreen mitotracker(Thermo Fisher Scientific製、Waltham、USA)で処理し、5%COのインキュベーター内に37℃で10分間、反応させた。肝細胞の単離したミトコンドリアを500nMのred mitotrackerで処理した。5%COのインキュベーター内に37℃で10分間、得られたミトコンドリアを反応させ、次いで、NK細胞中に送達した。5μgのミトコンドリアを送達した後、得られた細胞を24ウェルプレートに播種し、5%COのインキュベーター内に37℃でインキュベートした。次いで、蛍光顕微鏡を使用して、24時間以内に細胞内送達を確認した。核染色用DAPI試薬を対照染色試薬として使用した。結果を図3に示す。
【0045】
図3から、外因性ミトコンドリアがNK細胞中に送達されたことが確認された。
【0046】
例5.ミトコンドリアが送達されたNK細胞の抗がん活性における変化の解析(CD107a脱顆粒アッセイ)
例1で採取した、外因性ミトコンドリアを導入したヒトNK細胞(NK92mi)では、NK細胞活性の指標である脱顆粒によりCD107aの発現を確認するために、ヒトNK細胞および標的細胞(K562)を10:1の比率で混合し、次いで、混合物を蛍光物質共役抗CD107aで処理した。得られた混合物を4時間、コインキュベートした。コインキュベートした後、表面染色のために、得られた混合物を抗CD56で処理し、30分間反応させた。次いで、蛍光活性化セルソーター(FACS)解析を実施した。結果を図4Aおよび4Bに示す。
【0047】
図4Aおよび4Bから、外因性ミトコンドリアの量(0.05、0.5および5μg)に伴ってNK細胞の抗がん活性が上昇することが確認された。
【0048】
例6.ミトコンドリアが送達されたNK細胞の抗がん活性における変化の確認(K562細胞傷害アッセイ)
例1で採取したNK細胞の抗がん活性を確認するために、採取したNK細胞を緑色蛍光染色(CFSE、Invitrogen製)で標識した標的細胞(K562)と10:1で混合し、次いで、5%CO、37℃の条件のインキュベーター内で4時間、混合物をコインキュベートした。コインキュベートした後、NK細胞により殺傷される標的細胞を解析するために、得られた混合物を赤色蛍光染色(7-AAD、Invitrogen製)で処理し、次いで、10分間反応させた。殺傷標的細胞の蛍光強度を、蛍光活性化セルソーター(FACS)により解析した。結果を図5に示す。
【0049】
図5から、送達された外因性ミトコンドリアの量(0.05、0.5および5μg)に伴ってK562に対する細胞傷害性が上昇することが確認された。
【0050】
例7.臍帯由来間葉幹細胞のミトコンドリアを導入したNK細胞の生成
胎盤(CHA bundang医療センターより提供、IRB No.1044308-201511-BR-022-02)由来間葉幹細胞を10%のウシ胎仔血清(FBS、Gibco製)、100μg/mlのストレプトマイシン、および100U/mlのアンピシリンを追加したアルファ最小必須培地(アルファMEM)に播種し、72時間培養した。
【0051】
培養完了後、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Gibco製)で細胞を2回洗浄した。洗浄した細胞を0.25%のトリプシン-EDTA(TE、Gibco製)で処理して細胞を得た。得られた細胞について、ミトコンドリアを抽出するために、血球計数器を使用して細胞数を測定し、細胞約2×10個/mlの量の細胞を採取した。
【0052】
その後、約4℃の温度で10分間、350×gの速度で細胞株を一次遠心分離に供した。得られたペレットを採取し、10~15分間、緩衝液に再懸濁および均質化した。約4℃の温度で3分間、1,100×gの速度でペレットを含む組成物を二次遠心分離に供して上清を得た。次いで、約4℃の温度で15分間、12,000×gの速度で上清を三次遠心分離に供してミトコンドリアを細胞株から単離した。
【0053】
1×10の量の単離したミトコンドリアを別個のヒトNK細胞(NK92mi)(CRL2408、ATCC)を含む試験管内に注入し、約4℃の温度で15分間、2,500×gの速度で遠心分離を実施した。上清の除去後、PBSによる洗浄を実施し、約4℃の温度で5分間、遠心分離を実施した。同条件下で2回、洗浄を実施した。ここで、単離したミトコンドリアを受容細胞1×10個当たり0.3、1、3、5および10μgの重量で送達した。
【0054】
例8.臍帯由来間葉幹細胞(UC-MSC)のミトコンドリアのNK細胞中への送達の確認(FACS解析法)
蛍光活性化セルソーター(FACS)解析を実施して、臍帯由来間葉幹細胞由来のミトコンドリアがNK細胞中に送達されたかどうかを確認した。臍帯由来間葉幹細胞から単離したミトコンドリアを500nMのRed mitotracker(Thermo Fisher Scientific製、Waltham、USA)で処理した。5%COのインキュベーター内に37℃で30分間、得られたミトコンドリアを反応させ、洗浄した。臍帯由来間葉幹細胞の蛍光標識したミトコンドリアを、遠心分離法を使用して免疫細胞中に送達し、次いで、細胞を1mLのPBS中に再懸濁した。次いで、ミトコンドリア送達を確認し、FACS Caliburフローサイトメーター(BDBiosciences製、San Jose、CA、USA)を使用して解析した。結果を図6に示す。
【0055】
図6から、NK細胞中に送達されたUC-MSC由来ミトコンドリアの量(0.3、1、3、5および10μg)に伴ってNK細胞を識別することが可能であることが確認された。
【0056】
例9.臍帯由来間葉幹細胞(UC-MSC)由来のミトコンドリアが送達されたNK細胞の抗がん活性における変化の確認(K562細胞傷害アッセイ)
例7で採取したNK細胞の抗がん活性を確認するために、採取したNK細胞を緑色蛍光染色(CFSE、Invitrogen製)で標識した標的細胞(K562)と10:1で混合し、次いで、5%CO、37℃の条件のインキュベーター内で4時間、混合物をコインキュベートした。コインキュベートした後、NK細胞により殺傷される標的細胞を解析するために、得られた混合物を赤色蛍光染色(7-AAD、Invitrogen製)で処理し、10分間反応させた。殺傷標的細胞の蛍光強度を、蛍光活性化セルソーター(FACS)により解析した。結果を図7に示す。
【0057】
図7から、送達された外因性ミトコンドリアの量(0.5、1、3、5および10μg)に伴ってK562に対する細胞傷害性が上昇することが確認された。
【0058】
例10.体重変化および生存率による急性骨髄性白血病に関する治療評価の確認
6~8週齢の雄のNOD.cg-Prkdcscid IL2rgtm1Sug/JicKoatマウスをKoatech Co.,Ltd.(Gyeonggi-do、Korea)から購入した。購入したマウスをCHA大学にある実験動物センターの清浄域において適応期間に供し、次いで、実験を行った。適応期間中、マウスを保持する環境は、12時間間隔で昼夜を有し、23±2℃の室温および40%~60%の湿度に維持した。マウスをこのような7日間の適応期間に供し、次いで、実験に投入した。このように準備したマウスに、尾静脈を介して(静脈内(i.v.)注射)K562細胞を細胞2×10個/100μlの量で投与して、急性骨髄性白血病モデルを作製した。
【0059】
ここで、急性骨髄性白血病を誘発したマウスに、尾静脈を介して(静脈内(i.v.)注射)例7に従って調製したNK細胞(NK92mi)を細胞2×10個/100μlの量で投与して、実験群を作製した。同様に、ミトコンドリアを送達しなかった正常NK細胞(NK92mi)を細胞2×10個/100μlの量で投与することにより対照群を作製した。実験群および対照群の体重変化および生存率を、急性骨髄性白血病細胞株(K562)を投与した時点から24日間分析した。結果を図8A~8Cに示す。
【0060】
図8A~8Cから、臍帯由来間葉幹細胞のミトコンドリアが送達されたNK細胞を投与した群が、臍帯由来間葉幹細胞のミトコンドリアを送達しなかった正常NK細胞を投与した群と比較して、体重において約5%の増加および生存率において約40%以上の増加を示すことが確認された。
【0061】
例11.腫瘍関連マーカーの解析による急性骨髄性白血病に関する治療評価の確認
腫瘍関連マーカーであるp53およびc-Mycの発現分布を確認するために、例10に従って実験が行われた、実験群および対照群の血液を採取し、次いで、12,000×gで15分間遠心分離して血清を単離した。ウエスタンブロットキット(WB、Bio-Rad Laboratories,Inc.製)を使用してp53およびc-Mycの発現分布について単離した血清を解析した。結果を図9に示す。
【0062】
図9から、臍帯由来間葉幹細胞由来のミトコンドリアが送達されたNK細胞を投与した群が、c-Mycの発現の減少およびp53の発現の増加を示すことが確認された。c-Mycおよびp53は、血中腫瘍マーカーである。
【0063】
II.外因性ミトコンドリアを導入したPBMCの生成およびその機能の確認
例12.外因性ミトコンドリアを導入したPBMCの生成
臨床医が採取しておいた発明者の末梢血を(CHA医療センターにおいて)ファルコン管内でFicoll-Paque(Amersham Biosciences製)により1:1で処理し、次いで、得られた物を400×gで35分間、遠心分離に供してPBMCペレットを採取した。採取したPBMCをPBSで2回洗浄した。次いで、例1に従って単離したヒト肝細胞(WRL-68)由来ミトコンドリアを受容細胞1×10個当たり0.05、0.05、0.5および5μgの重量でPBMC中に送達した。
【0064】
例13.ミトコンドリアが送達されたPBMCの抗がん活性における変化の確認(K562細胞傷害アッセイ)
例12で採取したPBMCの抗がん活性を確認するために、採取したPBMCを緑色蛍光染色(CFSE、Invitrogen製)で標識した標的細胞(K562)と10:1で混合し、次いで、5%CO、温度37℃の条件のインキュベーター内で4時間、混合物をコインキュベートした。コインキュベートした後、NK細胞により殺傷される標的細胞を解析するために、得られた混合物を赤色蛍光染色(7-AAD、Invitrogen製)で処理し、次いで、10分間反応させた。殺傷標的細胞の蛍光強度を、蛍光活性化セルソーター(FACS)により解析した。結果を図10に示す。
【0065】
図10から、K562に対する細胞傷害性が、送達された外因性ミトコンドリアの量(0.005、0.05および0.5μg)に伴って上昇することが確認された。
以下に、当初の特許請求の範囲に記載していた発明を付記する。
[1] 外因性ミトコンドリアを含むナチュラルキラー細胞。
[2] 前記外因性ミトコンドリアが、筋細胞、肝細胞、線維芽細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、骨細胞、白血球、リンパ球、または粘膜細胞から得られたものである、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[3] 前記外因性ミトコンドリアが、ナチュラルキラー細胞1個当たり1~103の量で含まれる、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[4] 前記外因性ミトコンドリアおよび前記ナチュラルキラー細胞が混合された組成物を遠心分離することにより、前記外因性ミトコンドリアが前記ナチュラルキラー細胞中に送達されている、[1]に記載のナチュラルキラー細胞。
[5] [1]に記載のナチュラルキラー細胞を有効成分として含む、がんまたは感染性疾患を治療するための医薬組成物。
[6] 前記がんが、胃がん、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、およびリンパ腫からなる群から選択される、[5]に記載の医薬組成物。
[7] 前記感染性疾患が、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性呼吸器疾患、およびインフルエンザからなる群から選択される、[5]に記載の医薬組成物。
[8] 前記組成物が、液体または冷凍の形態である、[5]に記載の医薬組成物。
[9] [1]に記載のナチュラルキラー細胞を有効成分として含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与する工程を含む、疾患を予防または治療する方法。
[10] 前記組成物が、静脈内、皮下、点眼、腹腔内、および筋内経路からなる群から選択される経路により投与される、[9]に記載の方法。
[11] 前記方法が、前記細胞と組み合わせて、前記疾患を予防または治療する効果を有する別の薬物または生理活性物質を投与することを含む、[9]に記載の方法。
[12] 外因性ミトコンドリアを含む末梢血単核細胞。
[13] 前記外因性ミトコンドリアが、筋細胞、肝細胞、線維芽細胞、上皮細胞、神経細胞、脂肪細胞、骨細胞、白血球、リンパ球、または粘膜細胞から得られたものである、[12]に記載の末梢血単核細胞。
[14] 前記外因性ミトコンドリアが、ナチュラルキラー細胞1個当たり1~103の量で含まれる、[12]に記載の末梢血単核細胞。
[15] [12]に記載の末梢血単核細胞を含む、がんまたは感染性疾患を治療するための医薬組成物。
[16] 前記がんが、胃がん、肝臓がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮頸がん、甲状腺がん、喉頭がん、急性骨髄性白血病、脳腫瘍、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、頭頸部がん、唾液腺がん、およびリンパ腫からなる群から選択される、[15]に記載の医薬組成物。
[17] 前記感染性疾患が、B型肝炎、C型肝炎、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、サイトメガロウイルス感染症、ウイルス性呼吸器疾患、およびインフルエンザからなる群から選択される、[15]に記載の医薬組成物。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
【配列表】
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