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特許7074373リハビリテーション支援システム、リハビリテーション支援方法およびリハビリテーション支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】リハビリテーション支援システム、リハビリテーション支援方法およびリハビリテーション支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09B 19/00 20060101AFI20220517BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
G06F3/01 570
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020123630
(22)【出願日】2020-07-20
(62)【分割の表示】P 2017162731の分割
【原出願日】2017-04-25
(65)【公開番号】P2020197723
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2020-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】517147593
【氏名又は名称】株式会社mediVR
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】原 正彦
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-110215(JP,A)
【文献】米国特許第08764532(US,B1)
【文献】国際公開第2015/192117(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00-19/00
G06F 3/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出手段と、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御手段と、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置とを比較して、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価手段と、
前記評価手段による評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新手段と、
を備えたリハビリテーション支援システムであって、
前記表示制御手段は、前記アバター画像および目標画像に対して、背景画像を重畳表示させ、
前記背景画像に関する質問を音声により出力する音声出力手段をさらに備え、
前記評価手段は、さらに、前記質問に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記音声出力手段は、前記評価手段が前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記背景画像に関する質問を音声により出力するリハビリテーション支援システム。
【請求項2】
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出手段と、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御手段と、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置とを比較して、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価手段と、
前記評価手段による評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新手段と、
を備えたリハビリテーション支援システムであって、
前記表示制御手段は、前記アバター画像および目標画像に対して、質問画像を重畳表示させ、
前記評価手段は、さらに、前記質問画像に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記表示制御手段は、前記評価手段が前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記質問画像を重畳表示するリハビリテーション支援システム。
【請求項3】
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出ステップと、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御ステップと、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新ステップと、
を含むリハビリテーション支援方法であって、
前記表示制御ステップは、前記アバター画像および目標画像に対して、背景画像を重畳表示させ、
前記背景画像に関する質問を音声により出力する音声出力ステップをさらに備え、
前記評価ステップは、さらに、前記質問に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記音声出力ステップは、前記評価ステップにおいて前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記背景画像に関する質問を音声により出力するリハビリテーション支援方法
【請求項4】
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出ステップと、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御ステップと、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新ステップと、
を含むリハビリテーション支援方法であって、
前記表示制御ステップは、前記アバター画像および目標画像に対して、質問画像を重畳表示させ、
前記評価ステップは、さらに、前記質問画像に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記表示制御ステップは、前記評価ステップが前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記質問画像を重畳表示するリハビリテーション支援方法。
【請求項5】
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出ステップと、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御ステップと、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新ステップと、
をコンピュータに実行させるリハビリテーション支援プログラムであって、
前記表示制御ステップは、前記アバター画像および目標画像に対して、背景画像を重畳表示させ、
前記背景画像に関する質問を音声により出力する音声出力ステップをさらに備え、
前記評価ステップは、さらに、前記質問に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記音声出力ステップは、前記評価ステップにおいて前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記背景画像に関する質問を音声により出力するリハビリテーション支援プログラム
【請求項6】
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出ステップと、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御ステップと、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新ステップと、
をコンピュータに実行させるリハビリテーション支援プログラムであって、
前記表示制御ステップは、前記アバター画像および目標画像に対して、質問画像を重畳表示させ、
前記評価ステップは、さらに、前記質問画像に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記表示制御ステップは、前記評価ステップが前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記質問画像を重畳表示するリハビリテーション支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリテーション支援システム、リハビリテーション支援方法およびリハビリテーション支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、脳卒中等による片麻痺患者に対して行なわれるリハビリテーションを支援するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-228957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、ユーザの動作に応じた、能動的な目標の更新を行なうことができず、どのようなユーザに対しても同じ負荷の繰り返しを行なうしかなかった。
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係るシステムは、
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出手段と、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御手段と、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置とを比較して、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価手段と、
前記評価手段による評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新手段と、
を備えたリハビリテーション支援システムであって、
前記表示制御手段は、前記アバター画像および目標画像に対して、背景画像を重畳表示させ、
前記背景画像に関する質問を音声により出力する音声出力手段をさらに備え、
前記評価手段は、さらに、前記質問に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記音声出力手段は、前記評価手段が前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記背景画像に関する質問を音声により出力するリハビリテーション支援システムである。
上記目的を達成するため、本発明に係る他のシステムは、
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出手段と、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御手段と、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置とを比較して、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価手段と、
前記評価手段による評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新手段と、
を備えたリハビリテーション支援システムであって、
前記表示制御手段は、前記アバター画像および目標画像に対して、質問画像を重畳表示させ、
前記評価手段は、さらに、前記質問画像に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記表示制御手段は、前記評価手段が前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記質問画像を重畳表示するリハビリテーション支援システムである。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出ステップと、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御ステップと、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新ステップと、
を含むリハビリテーション支援方法であって、
前記表示制御ステップは、前記アバター画像および目標画像に対して、背景画像を重畳表示させ、
前記背景画像に関する質問を音声により出力する音声出力ステップをさらに備え、
前記評価ステップは、さらに、前記質問に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記音声出力ステップは、前記評価ステップにおいて前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記背景画像に関する質問を音声により出力するリハビリテーション支援方法である
上記目的を達成するため、本発明に係る他の方法は、
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出ステップと、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御ステップと、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新ステップと、
を含むリハビリテーション支援方法であって、
前記表示制御ステップは、前記アバター画像および目標画像に対して、質問画像を重畳表示させ、
前記評価ステップは、さらに、前記質問画像に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記表示制御ステップは、前記評価ステップが前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記質問画像を重畳表示するリハビリテーション支援方法である。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出ステップと、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御ステップと、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新ステップと、
をコンピュータに実行させるリハビリテーション支援プログラムであって、
前記表示制御ステップは、前記アバター画像および目標画像に対して、背景画像を重畳表示させ、
前記背景画像に関する質問を音声により出力する音声出力ステップをさらに備え、
前記評価ステップは、さらに、前記質問に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記音声出力ステップは、前記評価ステップにおいて前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記背景画像に関する質問を音声により出力するリハビリテーション支援プログラムである
上記目的を達成するため、本発明に係るプログラムは、
ユーザの第1リハビリテーション動作を検出する動作検出ステップと、
検出した前記第1リハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、前記第1リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる表示制御ステップと、
前記第1リハビリテーション動作と、前記目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価する評価ステップと、
前記評価ステップでの評価結果に応じて、前記目標位置を更新する更新ステップと、
をコンピュータに実行させるリハビリテーション支援プログラムであって、
前記表示制御ステップは、前記アバター画像および目標画像に対して、質問画像を重畳表示させ、
前記評価ステップは、さらに、前記質問画像に対する回答に応じて、前記ユーザのリハビリテーション能力を評価し、
前記表示制御ステップは、前記評価ステップが前記第1リハビリテーション動作について、所定以上の評価をした場合に、前記質問画像を重畳表示するリハビリテーション支援プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザのリハビリテーション動作に応じた、能動的な目標の更新を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るリハビリテーション支援システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの表示画面例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの表示画面例を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの表示画面例を示す図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの表示画面例を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの表示画面例を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの他のプログラム例を示す図である。
図10】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムのデータベースの構成を示す図である。
図11】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの表示画面例を示す図である。
図12】本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システムの表示画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのリハビリテーション支援システム100について、図1を用いて説明する。
【0012】
図1に示すように、リハビリテーション支援システム100は、動作検出部101と、表示制御部102と評価部103と更新部104とを含む。
【0013】
動作検出部101は、ユーザ110のリハビリテーション動作を検出する。表示制御部102は、検出したリハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、を表示させる。
【0014】
評価部103は、リハビリテーション動作と、目標画像が表わす目標位置との相違に応じて、ユーザのリハビリテーション能力を評価する。更新部104は、評価部103による評価結果に応じて、目標位置を更新する。
【0015】
本実施形態によれば、リハビリテーションの進み具合に応じた負荷をユーザに与えることができる。
【0016】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るリハビリテーション支援システム200について、図2を用いて説明する。図2は、本実施形態に係るリハビリテーション支援システムの構成を説明するための図である。
【0017】
図2に示すように、リハビリテーション支援システム200は、リハビリテーション支援サーバ210と、2つのベースステーション231、232と、ヘッドマウントディスプレイ233と、2つのコントローラ234、235とを備える。なお、ヘッドマウントディスプレイ233としては、非透過タイプでも、ビデオシースルータイプでも、オプティカルシースルータイプでも構わない。
【0018】
また、リハビリテーション支援サーバ210は、動作検出部211と表示制御部212と評価部213と更新部214と音声入出力部215と、目標データベース216および背景画像+質問/回答データベース217を備える。
【0019】
動作検出部211は、ユーザ220が手に持つコントローラ234、235の位置およびヘッドマウントディスプレイ233の位置をベースステーション231、232を介して取得し、その位置の変化によりユーザ220のリハビリテーション動作を検出する。
【0020】
表示制御部212は、検出したリハビリテーション動作に応じて動くアバター画像と、リハビリテーション動作の目標を示す目標画像と、をヘッドマウントディスプレイ233に表示させる。図3は、ヘッドマウントディスプレイ233に表示された画面301におけるアバター画像311、312の一例を示す図である。アバター画像311、312は、背景画像313に重畳表示される。この例ではアバター画像311、312は、コントローラ234、235と同じ形状をしており、コントローラ234、235の動きに合わせて画面301中を動く。また、ヘッドマウントディスプレイ233の位置や向きに応じて背景画像313は変化する。アバター画像311、312に表示されている通り、コントローラ234、235にはボタンが用意されており、各種設定操作など可能に構成されている。背景画像313として、ここでは、実際の風景を撮像して得た風景映像(例えばニューヨークの町並みを撮影した動画)を表示する。風景映像としては、リハビリ施設の周囲の道路の映像を用いても良く、異国を散歩している気分にさせたり、身近な場所を散歩している気分にさせたりすることができる。風景映像を重畳することで、患者を楽しませつつ、情報量が多い中でのトレーニングを実現することができる。
【0021】
また、表示制御部212は、例えば、図4に示すように、ヘッドマウントディスプレイ233の画面401~403において、背景画像313に重畳して、オブジェクト411を表示する。オブジェクト411は、ユーザ220の頭上方向から下方に向けて降下してきているように表示位置および大きさを徐々に変えて表示する。ユーザ220は、コントローラ234、235を動かして、画面中のアバター画像311を、オブジェクト411に近づける。アバター画像311がオブジェクト411にぶつかると、オブジェクト411は消滅する。
【0022】
評価部213は、動作検出部211が検出したリハビリテーション動作と、表示制御部212によって表示された目標画像が表わす目標位置とを比較して、ユーザのリハビリテーション能力を評価する。具体的には、動作検出部211が検出したリハビリテーション動作に対応して移動したアバター画像311と目標画像としてのオブジェクト411とが重なったか否かを、3次元仮想空間中の位置の比較により決定する。結果的に、これらが重なれば、一つのリハビリテーション動作をクリアしたものと評価し、ポイントを加算する。オブジェクト411の奥行き方向の位置については様々な段階(例えば3段階)のものが用意され、それぞれ、異なるポイント(遠いオブジェクトには高いポイント、近いオブジェクトには低いポイント)が設定される。
【0023】
更新部214は、積算されたポイントに応じて、目標課題を更新する。例えば、課題達成率(目標達成数/課題数)などを用いて目標課題を更新してもよい。
【0024】
図5は、リハビリテーション支援サーバ210における処理の流れを示すフローチャートである。ステップS501において、キャリブレーション処理として、リハビリテーション動作の目標をユーザに合わせて初期化する。具体的には、各患者に最初にキャリブレーションとして行動可能範囲の作業を行ってもらい、それを初期値に設定した上で目標をユーザーに合わせて初期化する。
【0025】
また、目標データベース216を参照して、ユーザの属性情報(例えば、運動選手なのか、パーキンソン病なのかなど)に応じた目標に設定する。例えば、怪我をしたスポーツ選手の場合には、怪我が悪化しない程度の初期値を設定し、パーキンソン病に罹患したユーザの場合には、病状の進行を緩やかにする程度の運動を初期値として設定する。さらに、各患者に最初に行動可能範囲の作業を行ってもらい、それを初期値に設定した上で目標をユーザーに合わせて初期化する。
【0026】
次に、ステップS503において、動作検出部211で検出したコントローラ234、235の位置に応じて、アバター画像311、312を表示する。さらに、ステップS505において、設定された課題に応じた位置およびスピードでオブジェクト411を表示する。
【0027】
ステップS507において、アバター画像311、312の動きと、オブジェクト411の動きを比較して、課題をクリアしたか判定する。課題がクリアされていない場合には、そのままステップS505に戻って、課題の難易度を変えることなく次のオブジェクトを表示する。
【0028】
課題がクリアされた場合にはステップS509に進み、累積ポイントや課題達成確率等を算出する。さらにステップS511に進み、累積ポイントや課題達成確率等を閾値Tと比較し、累積ポイントや課題達成確率等が所定の閾値Tを超えた場合にはステップS513に進んで課題の運動強度を更新する。累積ポイントや課題達成確率等が閾値Tに達しなかった場合にはステップS505に戻って、課題の難易度を変えることなく次のオブジェクトを表示する。
【0029】
例えば、近距離の達成度が80%(または10回等の回数でも可)を超えた場合、中距離のオブジェクトの表示頻度を高くする。中距離のオブジェクトの達成度が80%(または10回等の回数でも可)を超えた場合、遠距離のオブジェクトの表示頻度を高くする。
【0030】
ここでの課題の更新についても、ユーザの属性(怪我をしたスポーツ選手なのか、パーキンソン病患者なのかなど)に応じて変更する。課題の更新方法としては、背景画像を切り替えるといった方法も考えられる。
【0031】
課題を更新した後、ステップS515に進み、ユーザの疲労度を算出して、閾値Nと比較する。疲労度が所定の閾値を超えれば、「停止条件」として処理を終了する。例えば、(疲労度=1-最も近位のオブジェクトの回収率)と算出できる。あるいは(疲労度=1/目の動き)と算出してもよい。明らかに集中していない(全くオブジェクトを探していない、首を振らない等)場合には、それ以上リハビリテーションを継続しても意味がないので休憩することになる。さらには、腕を伸ばすときのスピードが落ちるのを検出(加速度)して、疲労度を算出してもよい。
【0032】
また、例えば、累積ポイントが所定の閾値を超えれば、図6の文字画像601に示すように、2つのコントローラ234、235のうち、左右いずれのコントローラでオブジェクト411にタッチすべきか(ここでは右)を指示する。これにより、文字を認識する認知機能が必要になる上に、動作の難易度も上がり、より高い運動機能が必要になる。つまり、認知機能と運動機能のデュアルタスク(Dual Task:二重課題)が要求される。
【0033】
なお、図6では、文字で指示を行なっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、矢印や色、あるいは声で指示を行なってもよい。このように、本実施形態では、リハビリテーション動作の評価に応じて、その負荷を更新する。
【0034】
(デュアルタスクについて)
健常者は、普段の日常で「話をしながら歩く」など2つ以上のことを同時に行っている。この様な「2つのことを同時に行う能力」は加齢とともに衰えてくる。例えば「歩行中に話しかけられると、足を止めてしまう」などといったことが起こる。高齢者が転倒する原因は、「運動機能が低下していること」だけではなく、この様な「2つのことを同時に行う能力の低下」が関与していると考えられる。実際に、リハビリテーションにより十分に運動機能が回復したと判断されても、帰宅後に転倒してしまう高齢者は大勢いる。これは、リハビリテーション動作に集中できる環境・条件を整えた状態でリハビリテーションを行なっていることが一つの要因である。つまり、生活環境では、そのように動作に集中できない要因、例えば見晴らしが悪い、障害物が存在する、会話に意識が向いている、といった条件下での動作であることが多いからである。
【0035】
そこで、注意を分散させるようなリハビリテーションを行なうことが重要と考えられ、具体的にデュアルタスクを与えてトレーニングすることが望ましい。このようなデュアルタスクトレーニングは、高齢者の転倒のみならず、認知症の予防にも有効なプログラムである。
【0036】
デュアルタスクトレーニングには、認知課題と運動課題を組み合わせたトレーニングの他、2種類の運動課題を組み合わせたトレーニングも含まれる。
【0037】
認知課題+運動課題としては、100から1ずつ引き算をしながら歩くなどのトレーニングが、運動課題+運動課題としては、コップに入った水を溢さないように歩くなどのトレーニングが挙げられる。
【0038】
評価部213は、単純な歩行に比べてデュアルタスク歩行検査で歩行速度が20%程度遅延するような場合は、転倒リスクが高いと評価し、デュアルタスクを繰り返すように表示制御部212に通知する。
【0039】
なお、「比較的移動能力が高い人」の方がよりデュアルタスクが有効となりやすい。例えば、屋内移動でも杖が手放せない高齢者となると、デュアルタスク能力よりもバランス能力(筋力・平衡感覚など)の強化のほうが、優先順位が高くなる。大まかな判断としては、要支援者はデュアルタスク能力が重要、要介護者はデュアルタスク能力以外のバランス能力が重要と表現できる。キャリブレーションの時系列変化を表示し、自分の運動範囲の改善を視覚的に表示する。
【0040】
(ユーザ属性による設定変更)
通常の改善が見込める患者(骨折等の整形外科的疾患が対象で完全な改善が前提)に対しては、最もハードなリハビリテーション動作を設定し、改善を早める。
【0041】
個々に応じて改善の程度が異なる患者(脳梗塞等では病変部位によって異なる形の麻痺が生じている患者)に対しては、ある程度まで課題の負荷を向上させるがあるレベルでその負荷の向上をストップする。
【0042】
パーキンソン病等、原則的に機能が低下していく患者の場合は、常に現在の運動可能な状態の評価を定期的に評価することが有用である。
【0043】
(他のデュアルタスクトレーニング例)
図7は、他のデュアルタスクトレーニング用の画像例を示す図である。オブジェクトにハズレ(爆弾)を仕込むことにより、認知機能を要求する。または、図8に示すように、背景画面に質問画像(ここでは例としてかけ算)を重畳表示し、答えが表示されたオブジェクトの取得のみを評価してもよい。背景画面にグー・チョキ・パーのいずれかを表示し、それに勝つマークが表示されたオブジェクトの回収を要求してもよい。
【0044】
さらには、単にオブジェクトに数字を表示させ、数字の大きいオブジェクトの取得のみを評価してもよい。その他、背景画像313内に信号を表示させ、赤信号の時にオブジェクトを取ると評価部213は、ポイントをマイナスにしてもよい。
【0045】
本実施形態によれば、リハビリテーション動作の達成度(達成確率など)に応じて課題を更新するので、リハビリテーションの進み具合に応じた負荷をユーザに与えることができる。また、背景画像313を表示することにより、患者が楽しめるだけではなく、周囲に意識を向ける状況の中でリハビリテーションを行なわせることができ、現実世界に戻った際により安全な生活を実現できる。
【0046】
図9は、他のデュアルタスクトレーニング例を示す図である。音声入出力部215は、図9のように、背景画像に関する質問音声をヘッドホン901に対して出力し、ヘッドマウントディスプレイ233に設けられたマイク902を介して、質問に対する回答を取得する。評価部213は、音声情報として取得した回答に対して、音声認識処理を施して、あらかじめ用意された回答と比較し、その比較結果に応じて、ユーザのリハビリテーション能力を評価する。
【0047】
図10は、背景画像・質問/回答データベース217の内容の一例を示す図である。背景動画に対して、質問音声と解答とポイントとが、対応付けられて記憶されている。
【0048】
ユーザの反応として、デュアルタスクではオブジェクトの回収率が下がるという結果が予想される。デュアルタスクを表示してもオブジェクトの回収達成率が異ならない、という結果をゴールとして期待する。シングルタスク(single task)時とデュアルタスク時とで、オブジェクトの回収率、またはオブジェクトへのリーチ率を比較し、一定の範囲に入るまで繰り返しトレーニングを行なう。
【0049】
以上は運動機能と認知機能を同時に要求するデュアルタスクトレーニングだが、本発明はこれに限定されるものではなく、2つの運動機能を同時に要求するデュアルタスクトレーニングでもよい。
【0050】
例えば、図11に示すように、飛んでくる物体1111をよけながらオブジェクト411を拾うことを要求してもよい。ヘッドマウントディスプレイ233に設けられたセンサの位置を検出することにより、物体1111をうまくよけたか否かを判定できる。2つのリハビリテーション動作の両方の達成ポイント(例えば達成率など)に基づいて、評価および課題の更新を行なえばよい。
【0051】
また、例えば、図12の画像1201に示すように、コントローラ234、235の動作に応じて動くアバター画像として、水の入ったコップ画像1211、1212を表示し、これらのコップ画像1211、1212を移動させて、オブジェクト411を回収してもよい。ただし、画像1202に示すようにコップ画像1221を傾けて水がこぼれた場合には、コップ画像1222でオブジェクト411を回収してもポイントを得ることはできない。画像1203のように、コップ画像1231、1232内の水をこぼすことなくオブジェクト411を回収したときのみ、ポイントを加算する。
【0052】
他にも、オブジェクトを回収する側のアバター画像とは逆側のアバター画像を常に指定された場所に触れさせることを要求するといったことが考えられる。コントローラ234、235にもうけられたボタンのうち、指定されたボタンを所定回数押しながらオブジェクトを回収することを要求してもよい。また、ユーザの足の動きを取得するセンサを設けた場合には、指定した足の動きを要求してもよい。
【0053】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば表示装置はヘッドマウントに限定されるものではなく、大型画面でもよい。コントローラも、グリップタイプに限定されるものではなく、ウェアラブルセンサでもよい。
【0054】
本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
【0055】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に直接あるいは遠隔から供給される場合にも適用可能である。したがって、本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるWWW(World Wide Web)サーバも、本発明の範疇に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の範疇に含まれる。
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図12