(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム、通信制御システム、中継衛星、及び衛星システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20220517BHJP
H04B 10/118 20130101ALI20220517BHJP
【FI】
H04B7/185
H04B10/118
(21)【出願番号】P 2021190596
(22)【出願日】2021-11-24
(62)【分割の表示】P 2021121038の分割
【原出願日】2021-07-21
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2020189818
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518236960
【氏名又は名称】株式会社ワープスペース
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常間地 悟
(72)【発明者】
【氏名】永田 晃大
(72)【発明者】
【氏名】東 宏充
【審査官】鴨川 学
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-276934(JP,A)
【文献】特開2013-132045(JP,A)
【文献】特表2004-510392(JP,A)
【文献】特開2014-204177(JP,A)
【文献】特開平02-084827(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095267(WO,A1)
【文献】特開2005-229448(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0207684(US,A1)
【文献】米国特許第05722042(US,A)
【文献】米国特許第08913894(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
H04B 10/118
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する中継衛星であって、
前記複数の衛星と並列して光通信をすることができる複数の光通信部と、
前記他の機器との間の通信をする機器通信部と、
前記複数の衛星と前記複数の光通信部との間の単位時間当たりのデータ通信量の総和である第1のデータレート及び前記機器通信部と前記他の機器との間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値である第2のデータレートを設定する設定部と、
前記複数の光通信部が前記複数の衛星から前記第1のデータレートで受信したデータを前記他の機器に前記第2のデータレート以下で中継するように前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御する制御部と、を備え、
前記機器通信部は、前記複数の光通信部と前記複数の衛星の光通信のスケジューリングに基づく制御情報を予め受信し、
前記スケジューリング
は前記複数の衛星の位置情報に基づいて決定され、
前記制御部は、前記制御情報に基づいて、最大でN
op台の前記光通信部を用いて前記複数の衛星との間で並列して光通信をするように前記光通信部を制御し、
前記複数の衛星と並列して光通信をすることができる前記光通信部の最大数N
opは、前記第2のデータレートの制限値R
Gを前記衛星と前記光通信部との間のデータレートの制限値R
Uで除した除算結果を超えない最大の整数であり、
前記制限値R
Gは前記制限値R
U以上である、
中継衛星。
【請求項2】
前記他の機器と前記機器通信部との間の通信は無線通信又は光通信であり、
前記他の機器は、地上局、地球局、及び他の中継衛星の少なくとも1つである、
請求項1に記載の中継衛星。
【請求項3】
前記複数の衛星は低高度軌道を周回し、
前記中継衛星は中高度軌道を周回し、
前記他の機器と前記機器通信部との間の通信は無線通信又は光通信であり、
前記中高度軌道は前記低高度軌道よりも地表からの高度が高く、かつ対地同期軌道よりも地表からの高度が低く、
前記他の機器は、地上局、地球局、及び他の中継衛星の少なくとも1つである、
請求項1に記載の中継衛星。
【請求項4】
前記設定部は、前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御するための制御情報を前記他の機器より受信して、前記第1のデータレート及び前記第2のデータレートを設定する、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の中継衛星。
【請求項5】
前記制御情報は、前記衛星の運用者から入手した前記衛星の位置情報に基づいて、前記中継衛星の運用者が決定した前記中継衛星と前記衛星との光通信のタイミングを制御する情報である、
請求項4に記載の中継衛星。
【請求項6】
前記中継衛星と前記衛星との光通信のタイミングの基準となる時刻情報は、前記中継衛星と前記衛星が測位衛星から取得した時刻情報に基づいて決定される、
請求項5に記載の中継衛星。
【請求項7】
複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する中継衛星により実行される通信制御方法であって、
複数の光通信部と前記複数の衛星との間の光通信のスケジューリングに基づく制御情報を予め受信し、
前記複数の衛星と前記複数の光通信部との間の単位時間当たりのデータ通信量の総和である第1のデータレートを設定し、
前記他の機器と機器通信部との間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値である第2のデータレートを設定し、
前記制御情報に基づいて、最大でN
op台の前記光通信部を用いて前記複数の衛星と並列して光通信を行い、
前記複数の衛星から前記第1のデータレートで受信したデータを前記他の機器に前記第2のデータレート以下で中継するように前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御し、
前記スケジューリング
は前記複数の衛星の位置情報に基づいて決定され、
前記最大数N
opは、前記第2のデータレートの制限値R
Gを前記衛星と前記光通信部との間のデータレートの制限値R
Uで除した除算結果を超えない最大の整数であり、
前記制限値R
Gは前記制限値R
U以上である、
通信制御方法。
【請求項8】
前記他の機器と前記機器通信部との間の通信は無線通信又は光通信であり、
前記他の機器は、地上局、地球局、及び他の中継衛星の少なくとも1つである、
請求項7に記載の通信制御方法。
【請求項9】
前記複数の衛星は低高度軌道を周回し、
前記中継衛星は中高度軌道を周回し、
前記他の機器と前記機器通信部との間の通信は無線通信又は光通信であり、
前記中高度軌道は前記低高度軌道よりも地表からの高度が高く、かつ対地同期軌道よりも地表からの高度が低く、
前記他の機器は、地上局、地球局、及び他の中継衛星の少なくとも1つである、
請求項7に記載の通信制御方法。
【請求項10】
前記他の機器より前記中継衛星に送信された前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御するための制御情報に基づいて、前記第1のデータレート及び前記第2のデータレートを設定する、
請求項7~請求項9の何れか1項に記載の通信制御方法。
【請求項11】
前記制御情報は、前記衛星の運用者から入手した前記衛星の位置情報に基づいて、前記中継衛星の運用者が決定した前記中継衛星と前記衛星との光通信のタイミングを制御するスケジューリング情報である、
請求項10に記載の通信制御方法。
【請求項12】
前記中継衛星と前記衛星との光通信のタイミングの基準となる時刻情報は、前記中継衛星と前記衛星が測位衛星から取得した時刻情報に基づいて決定される、
請求項11に記載の通信制御方法。
【請求項13】
複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する中継衛星により実行される制御プログラムであって、
複数の光通信部と前記複数の衛星との間の光通信のスケジューリングに基づく制御情報を予め受信し、
前記複数の衛星と前記複数の光通信部との間の単位時間当たりのデータ通信量の総和である第1のデータレートを設定し、
前記他の機器と機器通信部との間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値である第2のデータレートを設定し、
前記制御情報に基づいて、最大でN
op台の前記光通信部を用いて前記複数の衛星と並列して光通信を行い、
前記複数の衛星から前記第1のデータレートで受信したデータを前記他の機器に前記第2のデータレート以下で中継するように前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御し、
前記スケジューリング
は前記複数の衛星の位置情報に基づいて決定され、
前記最大数N
opは、前記第2のデータレートの制限値R
Gを前記衛星と前記光通信部との間のデータレートの制限値R
Uで除した除算結果を超えない最大の整数であり、
前記制限値R
Gは前記制限値R
U以上である、
制御プログラム。
【請求項14】
前記複数の衛星は低高度軌道を周回し、
前記中継衛星は中高度軌道を周回し、
前記他の機器と前記機器通信部との間の通信は無線通信又は光通信であり、
前記中高度軌道は前記低高度軌道よりも地表からの高度が高く、かつ対地同期軌道よりも地表からの高度が低く、
前記他の機器は、地上局、地球局、及び他の中継衛星の少なくとも1つである、
請求項13に記載の制御プログラム。
【請求項15】
前記他の機器より前記中継衛星に送信された前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御するための制御情報に基づいて、前記第1のデータレート及び前記第2のデータレートを設定する、
請求項13又は請求項14に記載の制御プログラム。
【請求項16】
前記制御情報は、前記衛星の運用者から入手した前記衛星の位置情報に基づいて、前記中継衛星の運用者が決定した前記中継衛星と前記衛星との光通信のタイミングを制御するスケジューリング情報である、
請求項15に記載の制御プログラム。
【請求項17】
前記中継衛星と前記衛星との光通信のタイミングの基準となる時刻情報は、前記中継衛星と前記衛星が測位衛星から取得した時刻情報に基づいて決定される、
請求項15に記載の制御プログラム。
【請求項18】
複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する中継衛星を備える衛星通信中継システムであって、
前記中継衛星と
前記中継衛星と前記複数の衛星との間の光通信及び前記中継衛星と前記他の機器との間
の通信を制御する制御情報を決定する地上装置と備え、
前記地上装置は前記他の機器を介して前記中継衛星に前記制御情報を送信し、
前記中継衛星は、
前記複数の衛星と並列して光通信をすることができる複数の光通信部と、
前記他の機器との間の通信をする機器通信部と、
前記複数の衛星と前記複数の光通信部との間の単位時間当たりのデータ通信量の総和である第1のデータレート、及び前記機器通信部と前記他の機器との間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値である第2のデータレートを設定する設定部と、
前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御する制御部と、
を備え、
前記機器通信部は、前記複数の光通信部と前記複数の衛星の光通信のスケジューリングに基づく制御情報を予め受信し、
前記スケジューリング
は前記複数の衛星の位置情報に基づいて決定され、
前記制御情報は、最大でN
op台の前記光通信部を用いて前記複数の衛星と前記中継衛星との間で並列して光通信をするように前記光通信部を制御するための情報を含み、
前記制御部は、前記制御情報に基づいて、前記複数の光通信部が前記複数の衛星から前記第1のデータレートで受信したデータを前記他の機器に前記第2のデータレート以下で中継するように前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御し、
前記複数の衛星と並列して光通信をすることができる前記光通信部の最大数N
opは、前記第2のデータレートの制限値R
Gを前記衛星と前記光通信部との間のデータレートの制限値R
Uで除した除算結果を超えない最大の整数であり、
前記制限値R
Gは前記制限値R
U以上である、
衛星通信中継システム。
【請求項19】
前記複数の衛星は低高度軌道を周回し、
前記中継衛星は中高度軌道を周回し、
前記他の機器と前記機器通信部との間の通信は無線通信又は光通信であり、
前記中高度軌道は前記低高度軌道よりも地表からの高度が高く、かつ対地同期軌道よりも地表からの高度が低く、
前記他の機器は、地上局、地球局、及び他の中継衛星の少なくとも1つである、
請求項18に記載の衛星通信中継システム。
【請求項20】
前記制御情報に基づいて制御される前記中継衛星と前記衛星との間の光通信のタイミングの基準となる時刻情報は、前記中継衛星と前記衛星が測位衛星から取得した時刻情報に基づいて決定される、
請求項18に記載の衛星通信中継システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム、通信制御システム、中継衛星、及び衛星システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、n個の数の光通信端末(OT1-OTn)を有した遠隔端末と、n個の光ダウンリンクチャンネル(DL1-DLn)もしくはn個の光アップリンクチャンネル(UC1-UCn)それぞれによって接続されたn個のクラスタの光地上基地局(OGS1-OGSn)を備えた地上端末との間の光ダウンリンクシステムが知られている(例えば、特許文献1)。この光ダウンリンクシステムは、n個の光ダウンリンクチャンネル相互に特定の距離だけ離れて位置する光地上基地局(OGS1-OGSn)によって相互に空間的に分離され、光アップリンクチャンネル(UC1-UCn)が時間的分離によって時間的分離が保証されることにより、光アップリンクチャンネル(UC1-UCn)間のオーバーラップを回避できるように、上記n個の光地上基地局(OGS1-OGSn)を同期させるように構成されている(例えば、特許文献1の[請求項1,8])。
【0003】
また、いくつかの衛星のコンステレーションを含む空間伝搬光通信システムが知られている(例えば、特許文献2)。この空間伝搬光通信システムは、複数の地上サイトとの光通信のための複数のアップリンク/ダウンリンク光学望遠鏡を備える衛星コンステレーションを備え、衛星の各々が所定の地上サイトを通過するときに、所定の衛星のアップ/ダウンリンク望遠鏡の1つ以上は、所定の地上サイトのそれぞれの地上光学望遠鏡の少なくとも2つを追跡し、且つ所定の衛星に対する最も明瞭な見通し線により、地上光学望遠鏡に対してデータを送信するように構成されている(例えば、特許文献2の[請求項1])。
【0004】
また、一時的な通信需要の急増等に柔軟に対応できる移動体衛星通信システムが知られている(例えば、特許文献3)。この移動体衛星通信システムにおいては、低軌道通信衛星とその通信エリアとの間における地上数キロ~数十キロの上空を飛翔し、低軌道通信衛星と地上もしくは水上の携帯通信端末との間の通信を中継する飛翔中継局が設けられている。飛翔中継局は、電波による携帯通信端末との通信機能と、レーザ光による低軌道通信衛星との通信機能を備えている。この移動体衛星通信システムは、同一通信エリア内の複数の携帯通信端末からの通信容量の増大に対して、1つの飛翔中継局で対応できない場合には、同一通信エリア内の上空へ複数の飛翔中継局を配置することで、低軌道通信衛星と携帯通信端末との間の通信を複数の飛翔中継局により分担して中継する。
【0005】
なお、特許文献3には、低軌道通信衛星は複数の飛翔中継局との光通信を同時並行的に行えるよう、対応可能な飛翔中継局の数に応じて、予め複数の中継局通信用光アンテナを備えるようにしても良い点が開示されている(例えば、特許文献3の段落[0034])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-132045号公報
【文献】特表2015-524629号公報
【文献】特開2007-13513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、複数の人工衛星(以下、単に「衛星」と称する。)が宇宙空間に存在している状況を想定した場合、それら複数の衛星の各々が地上局と独立して通信することは現実的ではない。このため、
図17に示されるように、衛星S
Uと地球E上の地上局Gとの間の通信を中継する中継衛星S
Rが設けられ、複数の衛星S
U1,S
U2,S
U3の各々は、中継衛星S
Rを介して地上局Gと通信することが想定される。
図17に示されるように、中継衛星S
Rは、複数の衛星S
U1,S
U2,S
U3の各々から送信されたデータD1,D2,D3を受け付け、そのデータD
Rを地上局Gへ送信する。
【0008】
この場合、中継衛星SRと地上局Gとの間の通信回線における単位時間当たりのデータの通信量(以下、単に「データレート」と称する。)は物理的に制限される。このため、中継衛星SRと地上局Gとの間の通信回線のデータレートは所定値以下である必要がある。そのため、例えば、中継衛星SRが複数の衛星SU1,SU2,SU3の各々からデータを受け付けたとしても、それらのデータを地上局Gへ一度に送信することはできない場合がある。
【0009】
一方、中継衛星SRと地上局Gとの間の通信回線のデータレートが高く、多くのデータを中継衛星SRから地上局Gへ同時に送信可能な場合もある。このような場合、中継衛星SRは、2つ以上の衛星から受け付けたデータを一度に地上局Gへ送信することが可能なときもある。この場合に、地上局Gと通信する対象の衛星を1つの衛星SU1に限定してしまっては、その期間、他の衛星SU2,SU3は地上局Gと通信することができない。この結果、中継衛星SRと地上局Gとの間の通信回線は余裕があるにもかかわらず、その通信回線の稼働率は低い状態となってしまう。
【0010】
なお、上記の問題は、中継衛星SRからのデータの送信先が地上局Gである場合に限られるものではない。例えば、中継衛星SRが、成層圏又は対流圏に存在する飛翔体等の他の機器へデータを送信する場合にも同様の問題が生じ得る。
【0011】
上記特許文献1~3の技術では、中継衛星と地上局等の他の機器との間のデータレートの制限値に関しては考慮されていない。例えば、特許文献3には、低軌道通信衛星は複数の飛翔中継局との光通信を同時並行的に行う点が開示されているものの、中継衛星と他の機器との間のデータレートの制限値に関しては考慮されていない。
【0012】
このため、従来技術は、中継衛星が複数の衛星と地上局等の他の機器との間の通信を中継する際に、中継衛星と他の機器との間のデータレートの制限値を満たしつつ、より多くの衛星のデータを他の機器へ送信することができない、という課題がある。
【0013】
本開示は、上記の事情を鑑みてなされたもので、中継衛星が複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する際に、中継衛星と他の機器との間のデータレートの制限値を満たしつつ、より多くの衛星のデータを他の機器へ送信することができる、通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム、通信制御システム、中継衛星、及び衛星システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の第1態様の通信制御装置は、複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する通信制御装置であって、前記複数の衛星と並列して光通信をすることができる複数の光通信部と、前記他の機器との間の通信をする機器通信部と、前記複数の衛星と前記複数の光通信部との間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値の総和である第1のデータレート及び前記通信制御装置と前記他の機器との間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値であ
る第2のデータレートを設定する設定部と、前記複数の光通信部が前記複数の衛星から前記第1のデータレートで受信したデータを前記他の機器に第2のデータレートで並列して中継伝送するように前記複数の光通信部及び前記機器通信部を制御する制御部と、を備える通信制御装置である。
【0015】
本開示の第2態様の通信制御装置は、中継衛星が複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する際に、複数の衛星と中継衛星との間の単位時間当たりの通信量を表すデータレートの総和が、中継衛星と他の機器との間のデータレートの制限値以下となるように、中継衛星と複数の衛星との間の通信を制御する制御部を備える、通信制御装置である。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、中継衛星が複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する際に、中継衛星と他の機器との間のデータレートの制限値を満たしつつ、より多くの衛星のデータを他の機器へ送信することができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態の衛星システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】第1及び第2実施形態の通信制御システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図8A】中継用通信機が光通信機である場合の通信制御システムの構成例を示す図である。
【
図8B】複数の光通信機14のうちの光通信機14Cが中継用通信機である場合の通信制御システムの構成例を示す図である。
【
図9】通信制御装置として機能するコンピュータの概略ブロック図である。
【
図10】通信制御装置によって実行される処理を説明するための図である。
【
図15】通信制御装置によって実行される処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施形態を詳細に説明する。
【0019】
<第1実施形態の衛星システム>
【0020】
図1は、本実施形態の衛星システム1を示す図である。
図1に示されるように、本実施形態の衛星システム1は、中継衛星2と、中継衛星2とは異なる他の衛星3A,3B,3C(以下、単に「ユーザ衛星」と称する。)と、地球上の無線局である地上局4と、を備える。中継衛星2及びユーザ衛星3A,3B,3Cは、人工衛星である。地上局4は、他の機器の一例である。地上に設置される地上局4は、無線通信又は光通信を行う地球局の一例であり、また地上局4が複数設置されている場合はそれらの総称であっても良い。
【0021】
なお、ユーザ衛星3A,3B,3Cの各々は、宇宙空間における第1の軌道を周回する。また、中継衛星2は、宇宙空間における第2の軌道を周回する。第1の軌道及び第2の軌道の地表からの高度は、対地同期軌道の地表からの高度(高度約36,000km)よりも低い。なお、静止軌道(GEO: Geostationary Orbit)は対地同期軌道の一例である。さらに、第2の軌道の地表からの高度は、第1の軌道の地表からの高度よりも高い。第1の軌道は、例えば地球低軌道(LEO: Low Earth Orbit)である。地球低軌道の遠地点の地表からの高度は、例えば地表から20km~2,000kmの高度である。第2の軌道は、例えば中高度軌道(MEO: Medium Earth Orbit)である。中高度軌道の遠地点の地表からの高度は、例えば、地表から1,000km~約36,0000kmの高度である。
【0022】
複数のユーザ衛星3A,3B,3Cの各々は、中継衛星2と無線通信を行い、中継衛星2を介して地上局4とデータ通信を行う。中継衛星2は、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cとデータ通信を行うと同時に、並列して地上局4とデータ通信を行うことにより複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと地上局4との間のデータ通信をリアルタイムで中継する。地上局4とサーバ6とは、例えばインターネット等のネットワーク5によって接続されており、サーバ6は地上局4を介してユーザ衛星3A,3B,3Cによって取得されたデータを受信する。これにより、サーバ6は地上に居ながらにしてユーザ衛星3A,3B,3Cにより取得されたデータを得ることができると共に、
図1の衛星システムを運用するために必要な機能を備える。なお、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cのうちの何れか1つのユーザ衛星を称呼する場合には、単に「ユーザ衛星3」と称呼する。
【0023】
図2は、実施形態の通信制御システム12の詳細な構成例を示す図である。
図2に示されるように、通信制御システム12は、複数の光通信機14A,14B,14Cと、通信制御装置16と、信号切替回路18と、データ多重化回路19Aと、多重化データ分離回路19Bと、高周波無線機20とを備えている。通信制御システム12は、中継衛星2に搭載される。なお、複数の光通信機14A,14B,14Cのうちの何れか1つの光通信機を称呼する場合には、単に「光通信機14」と称呼する。なお、ユーザ衛星3の数は、
図2に例示した3つに限定されず、3つを超えても良い。さらにユーザ衛星3の数は、光通信機14の台数と同じ台数である必要もなく、光通信機14の台数を超えても良い。ユーザ衛星3は複数の衛星を連携させて一つの機能やサービスを達成する衛星コンステレーションの一部でも良い。
【0024】
(光通信機)
【0025】
複数の光通信機14A,14B,14Cの各々は、
図2の光通信機14Aに示されるように、光望遠鏡140Aと、光受信機142Aと、光送信機144Aとを備えている。
図2に示す光通信機14B,14Cの構成は、光通信機14Aと同様である。このため、以下では、光通信機14Aの構成についてのみ説明する。なお、光通信機は本開示の光通信部の一例である。
【0026】
光望遠鏡140Aは、ユーザ衛星3A,3B,3Cとの間においてレーザ光の送受信を行う。なお、光通信機14Aが光通信するユーザ衛星は、ユーザ衛星3Aに限られるものではない。光通信機14Aは、ユーザ衛星3B及びユーザ衛星3Cとも光通信をし得る。光望遠鏡140Aは、レーザ光の出入口となる窓(図示省略)を有する。また、光望遠鏡140Aは、ビームステアリングミラー(図示省略)を有している。ビームステアリングミラーによって光路が調整される。
【0027】
光望遠鏡140Aは、ビームステアリングミラーを介して、後述する光受信機142Aに対して他の衛星から受信したレーザ光を出力する。また、光望遠鏡140Aは、ビームステアリングミラーを介して、後述する光送信機144Aから出力されたレーザ光を他の衛星へ出力する。
【0028】
光受信機142Aは、光望遠鏡140Aから出力されたレーザ光を光復調することにより、光望遠鏡140Aが受信したレーザ光に対応するデジタル電気信号を得る。そして、光受信機142Aは、デジタル電気信号を後述する高周波無線機20へ出力する。
【0029】
光送信機144Aは、後述する高周波無線機20から出力されたデジタル電気信号に対して光変調をすることにより、デジタル電気信号に対応するレーザ光を得る。そして、光送信機144Aは、レーザ光を光望遠鏡140Aに出力する。
【0030】
(通信制御装置)
【0031】
通信制御装置16は、
図2に示されるように、設定部160と、制御部162とを備えている。
【0032】
中継衛星2が地上局4へデータを伝送する際のデータレートは物理的に制限される。具体的には、中継衛星2が地上局4へデータを伝送する際のデータレートは所定の制限値以下であることが要求される。そのため、中継衛星2が複数のユーザ衛星3A,3B,3Cの各々から並列してデータを受け付けたとしても、それらのデータを地上局4へ一度に伝送することはできない場合がある。
【0033】
一方、中継衛星2と地上局4との間の通信回線のデータレートの制限値に余裕がある場合には、2つ以上のユーザ衛星3から送信されたデータを一度に地上局4へ伝送することが可能なときもある。この場合に、中継衛星2から地上局4へデータを中継して送信する対象となるユーザ衛星3との光通信機14を1つに限定してしまっては、中継衛星2と地上局4との間の通信回線の稼働率が低い状態となり適切ではない。
【0034】
また、地上局4へデータを中継して伝送する光通信機14を、例えばユーザ衛星3Aと通信をする1台に限定した場合には、ユーザ衛星3Aと中継衛星2との間の通信が終了するまでの期間、他のユーザ衛星3B,3Cは地上局4にデータを送信することができなくなってしまう。
【0035】
そこで、本実施形態の通信制御装置16は、中継衛星2が複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと地上局4との間の通信を中継する際に、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと複数の光通信機14A,14B,14Cとの間のデータレートの総和が、高周波無線機20と地上局4との間のデータレートの制限値以下となるように、複数の光通信機14A,14B,14Cと複数のユーザ衛星3A,3B,3Cとの間の通信を制御する。具体的には、本実施形態の通信制御装置16は、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cから送信されたデータを複数の光通信機14A,14B,14Cが受信する際の、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと複数の光通信機14A,14B,14Cとの間のデータレートの総和が、高周波無線機20と地上局4との間のデータレートの制限値以下となるように通信を制御する。
【0036】
より詳細には、まず、通信制御装置16は、中継衛星2と地上局4との間のデータレートの制限値以下となるように、中継衛星2と同時に、並列して光通信をするユーザ衛星3の数を設定する。そして、通信制御装置16は、光通信対象のユーザ衛星3から光通信機14がデータを受け付けている最中に、受け付けたデータを中継衛星2から地上局4へ送信するように各機器を制御する。
【0037】
以下、具体的に説明する。
【0038】
中継衛星2に搭載される光通信機の総台数をNU[台]、1つのユーザ衛星3と1つの光通信機14との間のデータ通信回線のデータレートの制限値をRU[bit/sec]、1つの光通信機14が1つのユーザ衛星3との間のデータ通信のために通信回線の確立に要する時間をXaq[sec]、中継衛星2から地上局4へデータが送信される際のデータ通信におけるデータレートの制限値をRG[bit/sec]とする。この場合、RGとRUとの間の条件は、以下の式(1)によって表される。なお、ここでデータレートの制限値とは、光通信機14の設計仕様上のデータレートの制限値のみならず、運用上のデータレートの制限値であっても良い。光通信機14それぞれのデータレートの制限値が同一でない場合、それらのうちの最大値以下の固定値をRGとして設定しても良い。
【0039】
【0040】
また、同時に光通信を行う光通信機の最大台数Nopは、以下の式(2)によって設定される。
【0041】
【0042】
この場合、Nop<NUが成立するときには、1つのユーザ衛星3と1つの光通信機14との間の通信回線においてデータ通信を行う時間を表す通信時間Tco[sec]が以下の式(3)に従って設定される。これにより、より多くのユーザ衛星3のデータを地上局4へ送信することができる。
【0043】
【0044】
例えば、上記式(2)によって同時に光通信を行う光通信機の最大台数がNop=1と算出された場合を考える。この場合、例えば、通信制御装置16は、ユーザ衛星3Aと光通信機14Aとの間において通信時間Tco[sec]の光通信が行われた後に、ユーザ衛星3Bと光通信機14Bとの間において通信時間Tco[sec]の光通信が行われるように、複数の光通信機14A,14B,14Cを制御する。
【0045】
また、例えば、上記式(2)によって同時に光通信を行う光通信機の最大台数がNop=2と算出された場合を考える。この場合、例えば、通信制御装置16は、ユーザ衛星3Aと光通信機14Aとの間において通信時間Tco[sec]の光通信が行われている最中にも、ユーザ衛星3Bと光通信機14Bとの間において通信時間Tco[sec]の光通信が行われるように、複数の光通信機14A,14B,14Cを制御する。
【0046】
同時に光通信を行う光通信機の最大台数Nopは、上記式(2)に従って算出されるため、結果として、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと複数の光通信機14A,14B,14Cとの間のデータレートの総和が、中継衛星2と地上局4との間のデータレートの制限値以下となる。これにより、中継衛星2と地上局4との間のデータレートの制限値を満たしつつ、より多くのユーザ衛星3のデータを地上局4へ一度に送信することが可能となる。また、中継衛星2と地上局4との間の通信回線の稼働率を向上させることが可能となる。なお、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと複数の光通信機14A,14B,14Cとの間のデータレートの総和は、本開示の第1のデータレートの一例である。また、通信制御装置16と地上局4との間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値RG[bit/sec]は、本開示の第2のデータレートの一例である。
【0047】
なお、通信制御装置16は、1つの光通信機14と1つのユーザ衛星3との間において光通信を開始するタイミングを、以下の式(4)に従って算出される時間Tdif[sec]ずらすように制御する。これにより、各光通信機14に対して通信時間Tco[sec]が配分される。
【0048】
【0049】
図3は、中継衛星2に搭載される光通信機の台数が3(すなわち、N
U=3)の場合であって、同時に光通信を行う光通信機の最大台数N
op=1と算出された場合の制御シーケンスの一例である。
図3に示される例では、光通信を行う光通信機の台数N
op=1であるためT
dif=T
coとなる。このため、
図3に示されるように、例えば光通信機14Bの通信開始のタイミングは、光通信機14Aの光通信が終了した後になる。
【0050】
図3に示されるように、中継衛星2の高周波無線機20は、光通信機14がユーザ衛星3から受信したデータを地上局4へ並列して伝送し、リアルタイムに中継する。すなわち、中継衛星2の光通信機14がユーザ衛星3からデータを受信する通信時間T
co[sec]の光通信が行われている間に、高周波無線機20は、受信した当該データの地上局4への伝送を開始する。
【0051】
例えば、
図3に示されるように、時刻t0から時刻t1の間に光通信機14Aがユーザ衛星3から受信したデータは、時刻t0から時刻t1の間に高周波無線機20によって地上局4へ伝送が開始される。また、時刻t1から時刻t2の間に光通信機14Bがユーザ衛星3から受信したデータは、時刻t1から時刻t2の間に高周波無線機20によって地上局4へ伝送が開始される。また、時刻t2から時刻t3の間に光通信機14Cがユーザ衛星3から受信したデータは、時刻t2から時刻t3の間に高周波無線機20によって地上局4へ伝送が開始される。なお、光通信機14がデータを受信する時間帯と、高周波無線機20がデータを地上局4へ伝送を開始する時刻においては、若干のずれが生じる。また、ユーザ衛星3と光通信をする光通信機14は固定されるものではない。例えば、光通信機14Aと光通信をするユーザ衛星3はユーザ衛星3Aに固定されるものではない。例えば、光通信機14Aは、ユーザ衛星3B又はユーザ衛星3Cとも光通信をし得る。光通信機14Aは、例えば、時刻t0から時刻t1の間は第1のユーザ衛星、時刻t3から時刻t4の間は第2のユーザ衛星と光通信をし得る。
【0052】
一方、
図4は、同時に光通信を行う光通信機の最大台数N
op=2と算出された場合の制御シーケンスの一例である。
図4に示される例では、光通信を行う光通信機の台数N
op=2であるためT
dif=T
co/2となる。このため、例えば、光通信機14Bの通信開始のタイミングは、光通信機14Aの光通信が開始されてからT
dif=T
co/2経過した後になる。
【0053】
例えば、
図4に示されるように、時刻t0から時刻t1の間に光通信機14Aがユーザ衛星3から受信したデータと、時刻t0から時刻t1の間に光通信機14Cがユーザ衛星3から受信したデータとが、時刻t0から時刻t1の間に高周波無線機20によって地上局4へ伝送される。また、時刻t1から時刻t2の間に光通信機14Aがユーザ衛星3から受信したデータと、時刻t1から時刻t2の間に光通信機14Bがユーザ衛星3から受信したデータとが、時刻t1から時刻t2の間に高周波無線機20によって地上局4へ伝送される。また、時刻t2から時刻t3の間に光通信機14Bがユーザ衛星3から受信したデータと、時刻t2から時刻t3の間に光通信機14Cがユーザ衛星3から受信したデータとが、時刻t2から時刻t3の間に高周波無線機20によって地上局4へ伝送される。
【0054】
なお、同時に光通信を行う光通信機の最大台数Nop=3と算出された場合には、NU=Nop=3となり、上記式(3)は成立しない。この場合には、後述する制御部162は、通信制御システム12に搭載されている全ての光通信機14A,14B,14Cが同時又は任意のタイミングで光通信を行うように制御することができる。
【0055】
設定部160は、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと複数の光通信機14A,14B,14Cとの間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値RUの総和である第1のデータレートを設定する。また、設定部160は、中継衛星2と地上局4との間の単位時間当たりのデータ通信量の制限値RGである第2のデータレートを設定する。次に、設定部160は、これらの各データレートに基づいて、各種の制御情報を設定する。
【0056】
まず、設定部160は、光通信機14のデータレートの制限値RUと、中継衛星2から地上局4への通信回線におけるデータレートの制限値RGとに基づいて、上記式(2)に従って、同時に光通信を行う光通信機の最大台数Nopを設定する。
【0057】
次に、設定部160は、光通信機14がユーザ衛星3との間の通信回線の確立に要する時間Xaqと、光通信機の総数NUと、同時に光通信を行う光通信機の最大台数Nopとに基づいて、上記式(3)に従って、通信時間Tcoを設定する。なお、光通信機14がユーザ衛星3との間の通信回線の確立に要する時間Xaqは、予め設定される。または、光通信機14がユーザ衛星3との間の通信回線の確立に要する時間Xaqは、中継衛星2がユーザ衛星3の捕捉をする際に要する時間として計算される。なお、光通信機14がユーザ衛星3との間の通信回線の確立に要する時間が、複数のユーザ衛星3毎に異なる場合は、それらの中の最大値(時間)をXaqとして設定することができる。
【0058】
次に、設定部160は、通信時間Tcoと、同時に光通信を行う光通信機の最大台数Nopとに基づいて、上記式(4)に従って、通信の開始タイミングを制御する制御時間Tdifを設定する。なお、衛星システム1において基準となる時刻情報は、GPS等の測位衛星から取得される。具体的には、衛星システム1の中継衛星2及びユーザ衛星3は、GPS等の測位衛星から取得した時刻情報を基準となる時刻情報として、各種の制御を実行する。
【0059】
制御部162は、複数の光通信機14A,14B,14Cが複数のユーザ衛星3A,3B,3Cから第1のデータレートで受信したデータを、地上局4に第2のデータレートで並列して中継伝送するように複数の光通信機14A,14B,14C及び後述する高周波無線機20を制御する。これにより、Nop台の光通信機14と複数のユーザ衛星3との間において並列して光通信が行われるようにNop台の光通信機14が制御される。具体的には、制御部162は、設定部160によって設定された、通信時間Tcoと制御時間Tdifとに基づいて、複数の光通信機14A,14B,14Cを制御する。より具体的には、制御部162は、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cのうちの1つのユーザ衛星3と、複数の光通信機14A,14B,14Cのうちの1つの光通信機14との間の通信時間が通信時間Tcoとなるように制御する。また、制御部162は、ユーザ衛星3と光通信機14との間において通信が開始されてから制御時間Tdifが経過したときに、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cのうちの1つのユーザ衛星3と、複数の光通信機14A,14B,14Cのうちの1つの光通信機14との間の通信が開始されるように制御する。
【0060】
なお、同時に光通信を行う光通信機の最大台数Nop=3と算出された場合には、制御部162は、通信制御システム12に搭載されている全ての光通信機14A,14B,14Cが複数のユーザ衛星3と同時又は任意のタイミングで光通信を行うように制御することができる。
【0061】
制御部162は、複数の光通信機14A,14B,14C及び後述する信号切替回路18に対して上述の制御処理が実現されるような制御信号を出力することにより、複数の光通信機14A,14B,14Cの光通信を制御する。
【0062】
(信号切替回路)
【0063】
信号切替回路18は、通信制御装置16から出力される制御信号に応じて、複数の光通信機14A,14B,14Cの間の信号経路及び複数の光通信機14A,14B,14Cと後述する高周波無線機20との間の信号経路を切り替える。
【0064】
図5~
図8に、信号切替回路18を説明するための図を示す。信号切替回路18は、通信制御装置16から出力される制御信号に応じて内部の回路経路を変更することにより、電気信号の経路を切り替える。これにより、複数の光通信機14A,14B,14Cと後述する高周波無線機20との間の信号経路が切り替わる。例えば、信号切替回路18は、
図5に示されるように、あるときは光通信機14A及び光通信機14Bと高周波無線機20とが電気的に接続されるように内部の回路経路を設定して、信号経路を切り替える。なお、
図5に示される例では、光通信機14A及び光通信機14Bが同時に並列して通信可能なように、データ多重化回路19Aによりデータが多重化され、または多重化データ分離回路19Bにより多重化されたデータが分離される。
【0065】
また、信号切替回路18は、
図6に示されるように、あるときは光通信機14A及び光通信機14Cと高周波無線機20とが電気的に接続されるように、信号経路を切り替える。なお、
図6に示される例では、光通信機14A及び光通信機14Cが同時に並列して通信可能なように、データ多重化回路19Aによりデータが多重化され、多重化データ分離回路19Bにより多重化されたデータが分離される。
【0066】
また、信号切替回路18は、
図7に示されるように、あるときは光通信機14A、光通信機14B、及び光通信機14Cと高周波無線機20とが電気的に接続されるように、信号経路を切り替える。なお、
図7に示される例では、光通信機14A、光通信機14B、及び光通信機14Cが同時に並列して通信可能なように、データ多重化回路19Aによりデータが多重化され、多重化データ分離回路19Bにより多重化されたデータが分離される。
【0067】
また、信号切替回路18は、
図8に示されるように、光通信機14Aと光通信機14Bとが電気的に接続されるように信号経路を切り替える。なお、
図8の例は、中継衛星2が、ユーザ衛星間のデータ通信を中継するような場合の例である。例えば、光通信機14Aとユーザ衛星3Aとの間において光通信が行われ、光通信機14Bとユーザ衛星3Bとの間において光通信が行われている場合を考える。この場合、
図8に示されるように、光通信機14Aがユーザ衛星3Aからデータを受信し、そのデータが光通信機14Bを介してユーザ衛星3Bへ伝送される。また、光通信機14Bがユーザ衛星3Bからデータを受信し、そのデータが光通信機14Aを介してユーザ衛星3Aへ伝送される。このようにして、中継衛星2はユーザ衛星間のデータ通信を中継することもできる。
【0068】
(データ多重化回路及び多重化データ分離回路)
【0069】
データ多重化回路19Aは、上記
図5~
図8に示されるように、複数の光通信機による光通信が可能なようにデータを多重化する。また、多重化データ分離回路19Bは、上記
図5~
図8に示されるように、複数の光通信機による光通信が可能なように、多重化されたデータを分離する。
【0070】
(高周波無線機)
【0071】
図5~
図8における高周波無線機20は、中継衛星2が地上局4等と通信を行うための中継用通信機の一例である。なお、中継用通信機は本開示の機器通信部の一例である。高周波無線機20は、高周波変調回路200と、高周波送信アンテナ201(
図2参照。
図5~
図8では省略)と、高周波送信機202と、高周波受信アンテナ203(
図2参照。
図5~
図8では省略)と、高周波受信機204と、高周波復調回路206とを備えている。高周波無線機20は、複数の光通信機14A,14B,14Cによって取得されたデータを変調し、地上局4へ送信する。また、高周波無線機20は、地上局4から送信されたデータを復調し、複数の光通信機14A,14B,14Cへ受け渡す。
【0072】
高周波変調回路200は、光通信機14から出力されたデジタル電気信号を変調し、高周波送信機202へ出力する。
【0073】
高周波送信機202は、高周波変調回路200によって変調された信号を高周波信号に変換し、その信号を増幅する。
【0074】
高周波送信アンテナ201は、高周波送信機202から出力された高周波を地上局4に向けて放射する。
【0075】
高周波受信アンテナ203は、地上局4から送信された高周波を受信する。
【0076】
高周波受信機204は、高周波受信アンテナ203によって受信された高周波から変調信号を取り出し、その変調信号を出力する。
【0077】
高周波復調回路206は、高周波受信機204から出力された変調信号を復調し、デジタル電気信号へ変換する。
【0078】
なお、本実施形態では、中継用通信機の一例として高周波無線機20を用いる場合を例に説明するが、地上局4と無線通信を行う中継用通信機は光通信機であってもよい。中継用通信機が光通信機である場合には、中継衛星2と地上局4との間においては光通信が行われる。この場合には、複数のユーザ衛星3と複数の光通信機14との間においてデータ通信が並列して行われ、複数の光通信機14の各々が受信したデータが多重化され、中継用通信機である光通信機と地上局4との間において光通信が行われる。
【0079】
図8Aに、中継用通信機が光通信機である場合の通信制御システムの構成例を示す。
図8Aの場合には、例えば、光通信機14Aがユーザ衛星3Aから受信したデータと、光通信機14Bがユーザ衛星3Bから受信したデータとがデータ多重化回路19Aによって多重化される。そして、中継用光通信機21の光送信機201及び光望遠鏡203は、データ多重化回路19Aによって多重化されたデータを地上局4へ光通信を用いて伝送する。
【0080】
また、中継用光通信機21の光望遠鏡205及び光送信機207は、地上局4から光通信を用いて伝送されたデータを受信する。多重化データ分離回路19Bは、地上局4から伝送されたデータを分離する。そして、光通信機14A及び光通信機14Bの各々は、多重化データ分離回路19Bにより分離されたデータを、例えば、ユーザ衛星3A及びユーザ衛星3Bの各々へ伝送する。
【0081】
なお、複数の光通信機14のうちの少なくとも1つ以上の光通信機を、地上局4とデータ通信を行う中継用通信機としてもよい。
図8Bに、複数の光通信機14のうちの光通信機14Cが中継用通信機である場合の通信制御システムの構成例を示す。
図8Bの場合には、光通信機14Cが中継用通信機として機能し、中継用通信機である光通信機14Cと地上局4との間において光通信が行われる。なお、
図8Bの場合には、複数の光通信機14A,14B,14Cのうちの光通信機14Cが中継用通信機となるため、ユーザ衛星3との間においてデータ通信を行う光通信機の数は1つ減ることになる。このため、
図8Bのような場合において、複数のユーザ衛星3と複数の光通信機14との間においてデータ通信を並列して行う場合には、上記式(3)のN
Uは光通信機の総数から1を減じた数とする必要がある。
【0082】
通信制御システム12の通信制御装置16は、例えば、
図9に示すコンピュータ70で実現することができる。コンピュータ70はCentral Processing Unit(CPU)71、一時記憶領域としてのメモリ72、及び不揮発性の記憶部73を備える。また、コンピュータ70は、入出力装置等(図示省略)が接続される入出力interface(I/F)74、及び記録媒体に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するread/write(R/W)部75を備える。また、コンピュータ70は、通信制御システム12がインターネット等の地上の通信システムに接続可能なネットワークinterface(I/F)76を備える。CP
U71、メモリ72、記憶部73、入出力I/F74、R/W部75、及びネットワークI/F76は、バス77を介して互いに接続される。
【0083】
記憶部73は、Hard Disk Drive(HDD)、solid state drive(SSD)、フラッシュメモリ等によって実現できる。記憶媒体としての記憶部73には、コンピュータ70を
機能させるためのプログラムが記憶されている。CPU71は、プログラムを記憶部73から読み出してメモリ72に展開し、プログラムが有するプロセスを順次実行する。
【0084】
なお、プログラムにより実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはApplication Specific Integrated Circuit(ASIC)等で実現することも可能である。
【0085】
また、通信制御システム12が備える各機器も、
図9に示すコンピュータ70によって実現される場合がある。
【0086】
<通信制御システム12の作用>
【0087】
次に、実施形態の通信制御システム12の作用について説明する。通信制御システム12が動作し、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと中継衛星2との間において光通信の開始を指示する指示信号を受信すると、通信制御装置16は
図10に示す通信制御処理ルーチンを実行する。
【0088】
ステップS100において、設定部160は、光通信機14のデータレートの制限値RUと、中継衛星2から地上局4への通信回線におけるデータレートの制限値RGとに基づいて、上記式(2)に従って、同時に光通信を行う光通信機の最大台数Nopを設定する。なお、設定部160は、データレートの制限値RUとデータレートの制限値RGとを、通信制御装置16内の所定の記憶部又はメモリ72から読み出すことにより、これらのデータを取得する。
【0089】
ステップS102において、設定部160は、光通信機14がユーザ衛星3との間の通信回線の確立に要する時間Xaqと、光通信機の総数NUと、上記ステップS100で設定された光通信機の最大台数Nopとに基づいて、上記式(3)に従って、通信時間Tcoを設定する。なお、設定部160は、Xaqを通信制御装置16内の所定の記憶部又はメモリ72から取得することができる。
【0090】
ステップS104において、設定部160は、上記ステップS102で設定された通信時間Tcoと、上記ステップS100で設定された光通信機の最大台数Nopとに基づいて、上記式(4)に従って、通信の開始タイミングを制御する制御時間Tdifを設定する。
【0091】
ステップS106において、制御部162は、上記ステップS102で設定された通信時間Tcoと、上記ステップS104で設定された制御時間Tdifとに基づいて、複数の光通信機14A,14B,14Cを制御する。
【0092】
具体的には、制御部162は、第1衛星の一例であるユーザ衛星3Aと、第1光通信機の一例である光通信機14Aとの間の通信時間が通信時間Tcoとなるように制御する。また、制御部162は、ユーザ衛星3Aと光通信機14Aとの間において通信が開始されてから制御時間Tdifが経過したときに、第2衛星の一例であるユーザ衛星3Bと、第2光通信機の一例である光通信機14Bとの間の通信が開始されるように制御する。
【0093】
これにより、中継衛星2が複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと地上局4との間の通信を中継する際に、中継衛星2と地上局4との間のデータレートの制限値を満たしつつ、より多くのユーザ衛星3のデータを地上局4へ送信することができる。
【0094】
以上説明したように、第1実施形態に係る通信制御システム12の通信制御装置16は、中継衛星が複数の衛星と地上局との間の通信を中継する際に、複数のユーザ衛星と中継衛星との間の単位時間当たりの通信量を表すデータレートの総和が、中継衛星と地上局との間のデータレートの制限値以下となるように、中継衛星と複数の衛星との間の通信を制御する。これにより、中継衛星が複数のユーザ衛星と地上局との間の通信を中継する際に、中継衛星と地上局との間のデータレートの制限値を満たしつつ、より多くのユーザ衛星のデータを地上局へ送信することができる。
【0095】
また、同時に通信を行うユーザ衛星の数をより多くすることにより、中継衛星と地上局との間の通信回線の稼働率を向上させることができる。
【0096】
<第2実施形態の衛星システム>
【0097】
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の衛星システム及び通信制御システムの構成は、第1実施形態と同様の構成となるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0098】
第2実施形態の通信制御システムは、中継衛星2がユーザ衛星3を捕捉する際に要する時間を表す捕捉時間Xに基づいてXaqを算出し、ユーザ衛星3と光通信機14との間の通信時間Tcoを設定する点が第1実施形態と異なる。
【0099】
上記式(3)に示されるように、ユーザ衛星3と光通信機14との間の通信時間Tcoは、ユーザ衛星3と光通信機14との間の通信回線の確立に要する時間Xaqに基づいて算出される。
【0100】
第2実施形態の通信制御システムは、ユーザ衛星3と光通信機14との間の通信回線の確立に要する時間Xaqに含まれる、光通信機14がユーザ衛星3を捕捉する際に要する時間を表す捕捉時間Xを計算する。そして、第2実施形態の通信制御システムは、捕捉時間Xを含む時間Xaqに応じて通信時間Tcoを設定する。
【0101】
ユーザ衛星3と光通信機14との間の通信回線を確立させる場合、その大部分の時間は光通信機14がユーザ衛星3を捕捉する際の捕捉時間Xに要される。そこで、第2実施形態の通信制御システムは捕捉時間Xを計算し、捕捉時間Xに応じて通信時間Tcoを設定する。
【0102】
以下、具体的に説明する。
【0103】
なお、第2実施形態においては、捕捉用信号光を照射する衛星が中継衛星2であり、捕捉用信号光を受光する衛星がユーザ衛星3である場合を例に説明する。そのため、以下では、中継衛星2が通信相手となるユーザ衛星3を捕捉する場合を例に説明する。
【0104】
まず、中継衛星2の通信制御装置16の設定部160は、光通信機14の通信対象であるユーザ衛星3が存在し得る候補領域を計算する。具体的には、設定部160は、ユーザ衛星3の軌道計算、ユーザ衛星3の軌道の予測誤差、ユーザ衛星3の姿勢決定精度、及び姿勢制御精度等に基づいて、既存の手法を用いて、ユーザ衛星3が存在し得る候補領域を計算する。なお、ユーザ衛星3が存在し得る位置は、ユーザ衛星3の軌道計算、ユーザ衛星3の軌道の予測誤差、ユーザ衛星3の姿勢決定精度、及び姿勢制御精度等に基づき予測される。
【0105】
図11~13に、中継衛星2によるユーザ衛星3の捕捉を説明するための図を示す。中継衛星2によるユーザ衛星3の捕捉は、以下に示されるように、衛星追尾ステップ、中継衛星2によるユーザ衛星3の粗捕捉ステップ、ユーザ衛星3による中継衛星2の粗捕捉ステップ、及び精捕捉ステップから構成される。なお、
図11~13に示されている捕捉方法はスパイラルスキャン方式である。第2実施形態では、衛星の捕捉方法がスパイラルスキャン方式である場合を例に説明する。
【0106】
(衛星追尾ステップ)
【0107】
まず、設定部160は、ユーザ衛星3の軌道計算結果、ユーザ衛星3の軌道の予測誤差、ユーザ衛星3の姿勢決定精度、及び姿勢制御精度等に基づいて、既存の手法を用いて、
図11に示されるようなユーザ衛星3が存在し得る候補領域Fを計算する。
【0108】
(中継衛星2によるユーザ衛星3の粗捕捉ステップ)
【0109】
次に、制御部162は、設定部160により設定された候補領域Fに沿った方向に対して光通信機14の光望遠鏡を指向させる制御を行い、光通信機14から捕捉用信号光L1のビームが出力されるように制御する。なお、捕捉用信号光L1のビームの発散角は、通常、候補領域Fより小さい。このため、中継衛星2の通信制御装置16の制御部162は、捕捉用信号光L1を候補領域F内において走査し、候補領域F全域をスキャンするように光通信機14を制御する。
【0110】
次に、
図12に示されるように、ユーザ衛星3に搭載されている受光センサ(図示省略)は、捕捉用信号光L
1を受光する。受光センサ(図示省略)は、既知の四分割センサ又はCCD等のセンサによって実現される。そして、ユーザ衛星3の制御装置(図示省略)は、受光センサの出力値から中継衛星2の方向を特定する。
【0111】
(ユーザ衛星3による中継衛星2の粗捕捉ステップ)
【0112】
次に、
図13に示されるように、ユーザ衛星3は、特定した中継衛星2の方向に対して捕捉用信号光L
2を照射する。中継衛星2の光通信機14は、ユーザ衛星3から出力された捕捉用信号光L
2を受光する。なお、この際の受光センサ(図示省略)も、同様に四分割センサ又はCCD等のセンサによって実現される。中継衛星2の通信制御装置16の制御部162は、受光センサの出力値からユーザ衛星3の方向を特定する。
【0113】
(精捕捉ステップ)
【0114】
次に、中継衛星2の通信制御装置16の制御部162は、光通信機14から照射されている捕捉用信号光L
1を停止させるように制御する。そして、
図13に示されるように、通信制御装置16の制御部162は、特定されたユーザ衛星3の方向に捕捉用信号光L
3を照射する。ユーザ衛星3は、捕捉用信号光L
3を受光する。これにより、中継衛星2によるユーザ衛星3の捕捉が完了する。
【0115】
そして、中継衛星2とユーザ衛星3とは、既存の技術を用いて、衛星の追尾機構及び衛星の追尾ミラー等のポインティング機構(図示省略)を調整することにより、衛星自体の振動及び衛星間の光通信回線に影響を与える外乱を抑制し安定した追尾を実現する。
【0116】
次に、スパイラルスキャン方式を使用した場合の捕捉時間Xの計算方法の一例について説明する。
【0117】
スパイラルスキャン方式では、上記
図11に示されるように、候補領域F内において捕捉用信号光L
1がスパイラル状に走査される。スパイラルスキャンの捕捉用の極座標は、以下の式(5)によって表される。なお、以下の式(5)におけるρは極座標における原点からの距離rに相当する。また、以下の式(5)におけるθは極座標における角度に相当する。
【0118】
【0119】
また、
図11の信号光L
1をM方向から見た様子を
図14に示す。ここで、上記式(5)のI
θは、
図14に示されるように、ある時刻を表す第1時刻に照射された捕捉用信号光と次の時刻を表す第2時刻に照射された捕捉用信号光との間の距離を表す。
【0120】
捕捉用信号光のビームの軌跡が候補領域Fの全域をカバーするためには、以下の式(6)が満たされる必要がある。なお、以下の式のθbは捕捉用信号光のビームの発散角を表す。
【0121】
【0122】
図11に示されるように、候補領域Fの大きさがθ
μ(なお、θ
μは捕捉用信号光の時系列によって形成されるスパイラルの視野角θ
μでもある。)の場合、隣接する2つの捕捉用信号光のビームを走査する間隔を表す間隔時間がΔtであると仮定すると、候補領域F全域の走査を完了するのに必要な時間t
μは、以下の式(7)によって表される。
【0123】
【0124】
間隔時間Δtの設定方法の一例として次の式(8)が挙げられる。ここで、Lは中継衛星2とユーザ衛星3との間の通信距離を表し、cは光速を表し、tsは中継衛星2が備える受光センサの応答時間を表し、Fは信号光を走査するためのステアリングミラーの帯域幅を表す。中継衛星2とユーザ衛星3との間の通信距離Lは、候補領域Fの計算に応じて求められる。
【0125】
【0126】
なお、上記のスパイラルスキャン方式における計算式(5)~(8)は、以下の参考文献に開示されている。
【0127】
(参考文献)
Weiqi Chen, Qi Zhang, Xiangjun Xin, Qinghua Tian, Ying Tao, Yufei Shen, Guixing Cao, Rui Ding, and Yifan Zhang, "Beaconless acquisition tracking and pointing scheme of satellite optical communication in multi-layer satellite networks", Proc. SPIE 11023, Fifth Symposium on Novel Optoelectronic Detection Technology and Application, 110231E (12 March 2019); https://doi.org/10.1117/12.2521600
【0128】
このため、第2実施形態の設定部160は、中継衛星2から出力される第1捕捉用信号光の一例である捕捉用信号光L1が、ユーザ衛星3により受光されるまでに要する第1時間を計算する。
【0129】
また、第2実施形態の設定部160は、ユーザ衛星3による捕捉用信号光L1の受光に応答してユーザ衛星3から出力される捕捉用信号光L2が、中継衛星2により受光されるまでに要する第2時間を計算する。
【0130】
また、第2実施形態の設定部160は、中継衛星2による捕捉用信号光L2の受光に応答して中継衛星2から出力される捕捉用信号光L3が、ユーザ衛星3により受光されるまでに要する第3時間を計算する。
【0131】
そして、第2実施形態の設定部160は、第1時間と第2時間と第3時間との和に応じて、捕捉時間Xを計算する。
【0132】
なお、第2実施形態における第1時間は、上記式(7)によって求められる走査時間tμに相当する。
【0133】
そのため、第2実施形態の設定部160は、まず、光速cと、中継衛星2とユーザ衛星3との間の通信距離Lと、捕捉用信号光を走査するためのステアリングミラーの帯域幅Fと、中継衛星2が備える受光センサの応答時間tsとに基づいて、上記式(8)に従って、間隔時間Δtを計算する。
【0134】
次に、第2実施形態の設定部160は、計算された間隔時間Δtと、照射される捕捉用信号光の時系列によって形成されるスパイラルの視野角θμと、第1時刻に照射される捕捉用信号光と第2時刻に照射される捕捉用信号光との間の距離Iθとに基づいて、上記式(7)に従って、第1時間の一例である走査時間tμを計算する。
【0135】
また、第2実施形態の設定部160は、ユーザ衛星3が存在し得る位置等に基づいて、第2時間及び第3時間を計算する。なお、ある時刻においてユーザ衛星3が存在し得る位置等の情報は、予め地上局4等より中継衛星2に送信しておくことが考えられる。
【0136】
第2実施形態の設定部160は、計算された第1時間の一例である走査時間tμと第2時間と第3時間との和を表す捕捉時間Xを、光通信機14がユーザ衛星3との間の通信回線の確立に要する時間Xaqとして設定する。なお、設定部160は、走査時間tμと第2時間と第3時間との和に対して、さらに所定の時間を加算するなどして時間Xaqを設定するようにしてもよい。
【0137】
<通信制御システム12の作用>
【0138】
次に、第2実施形態の通信制御システム12の作用について説明する。通信制御システム12が動作し、複数のユーザ衛星3A,3B,3Cと中継衛星2との間において光通信の開始を指示する指示信号を受信すると、通信制御装置16は
図15に示す捕捉時間設定処理ルーチンを実行する。
【0139】
ステップS200において、設定部160は、光通信機14の通信対象であるユーザ衛星3が存在し得る候補領域Fを特定する。
【0140】
ステップS202において、設定部160は、ユーザ衛星3を捕捉するためのスパイラルスキャン方式の捕捉用信号光を候補領域F内において走査する際の、捕捉用信号光の照射の間隔時間を表す間隔時間Δtを計算する。具体的には、設定部160は、光速cと、中継衛星2とユーザ衛星3との間の通信距離Lと、捕捉用信号光を走査するためのステアリングミラーの帯域幅Fと、中継衛星2が備える受光センサの応答時間tsとに基づいて、上記式(8)に従って、間隔時間Δtを計算する。
【0141】
ステップS204において、設定部160は、上記ステップS202で計算された間隔時間Δtと、照射される捕捉用信号光の時系列によって形成されるスパイラルの視野角θμと、第1時刻に照射される捕捉用信号光と第2時刻に照射される捕捉用信号光との間の距離Iθとに基づいて、上記式(7)に従って、走査時間tμを計算する。
【0142】
ステップS205において、設定部160は、ユーザ衛星3が存在し得る位置等に基づいて、第2時間及び第3時間を計算する。
【0143】
ステップS206において、設定部160は、上記ステップS204で計算された走査時間tμと上記ステップS205で計算された第2時間及び第3時間との和を、光通信機14がユーザ衛星3との間の通信回線の確立に要する時間Xaqとして設定する。
【0144】
通信制御装置16は
図15に示す捕捉時間設定処理ルーチンの実行が終了すると、上記
図10に示す通信制御処理ルーチンを実行する。このとき、上記式(3)に従って通信時間T
coを計算する際には、第2実施形態の設定部160により設定された時間X
aqを用いて、通信時間T
coを計算する。これにより、ユーザ衛星3の捕捉時間に応じた通信時間T
coが設定される。
【0145】
第2実施形態の衛星システム及び通信制御システムの他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0146】
以上説明したように、第2実施形態に係る通信制御システム12の通信制御装置16は、中継衛星2から出力される第1捕捉用信号光の一例である捕捉用信号光L1が、ユーザ衛星3により受光されるまでに要する第1時間を計算する。また、通信制御装置16は、ユーザ衛星3による捕捉用信号光L1の受光に応答してユーザ衛星3から出力される捕捉用信号光L2が、中継衛星2により受光されるまでに要する第2時間を計算する。通信制御装置16は、中継衛星2による捕捉用信号光L2の受光に応答して中継衛星2から出力される捕捉用信号光L3が、ユーザ衛星3により受光されるまでに要する第3時間を計算する。通信制御装置16は、第1時間と第2時間と第3時間との和に応じて、捕捉時間Xを計算する。そして、通信制御装置16は、捕捉時間Xを、光通信機14がユーザ衛星3との間の通信回線の確立に要する時間Xaqとして設定する。これにより、ユーザ衛星3の捕捉時間に応じた通信時間Tcoを設定することができる。
【0147】
なお、通信制御装置16は、光通信機の通信対象であるユーザ衛星3が存在し得る候補領域を特定し、ユーザ衛星を捕捉するためのスパイラルスキャン方式の捕捉用信号光を候補領域内において走査する際の、捕捉用信号光の照射の間隔時間を表す間隔時間Δtと、照射される捕捉用信号光の時系列によって形成されるスパイラルの視野角θμと、第1時刻に照射される捕捉用信号光と第2時刻に照射される捕捉用信号光との間の距離Iθとに基づいて、ユーザ衛星を捕捉するための捕捉用信号光の走査に要する時間を表す走査時間tμを計算する。そして、通信制御装置16は、中継衛星2から出力される第1捕捉用信号光の一例である捕捉用信号光L1が、ユーザ衛星3により受光されるまでに要する第1時間として、走査時間tμを採用する。これにより、スパイラルスキャン方式によってユーザ衛星3を補足する際の時間Xaqを算出することができる。
【0148】
候補領域Fの大きさは、ある時点でのユーザ衛星3の存在し得る範囲であり、光通信を行うユーザ衛星3の軌道予測精度、姿勢制御精度、及び光通信機の特性等を考慮して決定される。候補領域Fの実際の精度は全体のシステムに依存するため、ユーザ衛星3によっても異なる。このため、実際の運用の初期時点では、精度が悪いケース又は誤差等を考慮し、候補領域Fを大きめに設定するようにしてもよい。また、運用を重ねるうちに、光通信機14の特性及びユーザ衛星3の捕捉の精度が向上することが予想されるため、その際には候補領域Fの大きさを縮小することも可能となる。
【0149】
また、中継衛星2は、光通信を行うユーザ衛星3の捕捉時間Xを逐次記録し、次の通信を計画する際に、過去にユーザ衛星3が存在し捕捉した位置とユーザ衛星3の予測位置との差分を加味してユーザ衛星3が存在し得る候補領域Fを更新することにより、予測される捕捉時間Xを短縮することもできる。この場合には、単位時間当たりにユーザ衛星3と通信を行う回数を多くするようにしてもよい。
【0150】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0151】
例えば、上記各実施形態では、通信制御装置16は、光通信対象のユーザ衛星3から光通信機14がデータを受け付けている最中に、受け付けたデータを中継衛星2から地上局4へ並列して送信するように複数の光通信機14A,14B,14Cを制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、通信制御装置16は、ユーザ衛星3から受け付けたデータを一時的に記憶部に格納するようにしてもよい。例えば、通信制御装置16は、複数のユーザ衛星3から受け付けるデータレートの総量が、中継衛星2と地上局4との間の通信回線のデータレートの制限値を超えるような場合に、複数のユーザ衛星3から受け付けたデータを一時的に記憶部に格納する。または、例えば、通信制御装置16は、上記式(1)が満たされない場合には、ユーザ衛星3から受け付けたデータを一時的に記憶部に格納する。そして、通信制御装置16は、中継衛星2と地上局4との間の通信回線に余裕があるときに、記憶部に格納したデータを地上局4へ送信するようにしてもよい。
【0152】
また、上記実施形態では、ユーザ衛星3と光通信機14との間の通信回線のデータレートの制限値が一律RUである場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。例えば、光通信機14毎にデータレートの制限値RUが異なる値であってもよい。
【0153】
なお、上記実施形態では、中継用通信機の一例である高周波無線機が1台である場合を例に説明したがこれに限定されるものではない。中継用通信機の一例である高周波無線機は複数あってもよい。さらに、前述のように、中継用通信機は光通信機であっても良い。
【0154】
また、上記実施形態では、通信制御装置16の設定部160が各種データ等を設定し、制御部162が設定部160により設定されたデータに基づいて、光通信機14による通信の制御シーケンスを実行するための各種制御を行う場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、地上にあるサーバ6にて決定された光通信機14及び中継用通信機の制御シーケンス情報が地上局4または地上局4に接続されたサーバ6を介して中継衛星2及びユーザ衛星3の運用者に予め送信され、中継衛星2の通信制御装置16は、その制御シーケンス情報に基づいて、
図10又は
図15にある各種の設定および制御を実行するようにしてもよい。この場合、制御シーケンス情報は、ユーザ衛星3の運用者から入手したユーザ衛星3の位置情報等に基づいて、中継衛星2の運用者が算出した中継衛星2とユーザ衛星3との光通信のタイミング等を規定するスケジューリング情報に基づいて決定されても良い。
【0155】
また、上記実施形態では、上記式(3)に従って通信時間T
coを算出し、通信時間T
coに従って複数の光通信機14A,14B,14Cを制御する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、ユーザの要望に応じて通信時間T
coに対して、所定の時間T
urを付加するようにしてもよい。この場合には、例えば、
図16に示されるように、光通信機14Aの通信時間T
coに対してユーザの要望に応じた時間T
urが付加され、光通信機14B及び光通信機14Cの通信は時間T
ur分だけずれることになる。
【0156】
なお、上記第2実施形態では、衛星を捕捉する方式がスパイラルスキャン方式である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。衛星を捕捉する方式は、他の方式であってもよい。なお、この場合には、上記第2実施形態において計算される各時間のうち、少なくとも第1時間と第2時間とを計算することにより、中継衛星2(又は光通信機14)がユーザ衛星3を捕捉する際に要する時間を表す捕捉時間Xを計算することは可能である。
【0157】
このため、例えば、通信制御装置16は、中継衛星2から出力された第1捕捉用信号光L1がユーザ衛星3により受光されるまでに要する第1時間と、ユーザ衛星3による第1捕捉用信号光L1の受光に応答してユーザ衛星3から出力される第2捕捉用信号光L2が中継衛星2により受光されるまでに要する第2時間とに応じて、捕捉時間Xを計算するようにしてもよい。例えば、通信制御装置16は、第1時間と第2時間との和に応じて、捕捉時間Xを計算するようにしてもよい。
【0158】
または、例えば、通信制御装置16は、ユーザ衛星3から出力された第1捕捉用信号光L1が中継衛星2により受光されるまでに要する第1時間と、中継衛星2による第1捕捉用信号光L1の受光に応答して中継衛星2から出力される第2捕捉用信号光L2がユーザ衛星3により受光されるまでに要する第2時間とに応じて、捕捉時間Xを計算するようにしてもよい。例えば、通信制御装置16は、第1時間と第2時間との和に応じて、捕捉時間Xを計算するようにしてもよい。
【0159】
なお、上記実施形態では、複数の衛星はユーザ衛星である場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、複数の衛星のうちの少なくとも1以上の衛星は、他の中継衛星であってもよい。
【0160】
また、上記実施形態では、中継衛星2が複数のユーザ衛星3と地上局4との間の通信を中継する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。地上局4に替えて、中継衛星と無線通信を行う他の地球局(例えば、地表又は地球の大気圏に開設する無線局であって、移動体でも良い)が採用されてもよい。この場合には、中継衛星2は、複数のユーザ衛星3と地球局との間の通信を中継する。例えば、成層圏に開設した地球局を用いることで、気候等による地上の通信環境の影響を受けずに、中継衛星2から地球局までの光通信の時間を安定的に確保できる等のメリットがある。また、地上局4に替えて、他のユーザ衛星又は他の中継衛星が採用されてもよい。この場合には、中継衛星2は、複数のユーザ衛星3と他のユーザ衛星又は他の中継衛星との間の通信を中継する。なお、その際には、光通信によって通信がされてもよく、その場合には中継用通信機は光通信機となる。
【0161】
また、本願明細書中において、コンピュータ70の記憶部73にプログラムが予めインストールされている実施形態として説明したが、当該プログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。例えば、プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0162】
なお、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。または、プロセッサとしては、GPGPU(General-purpose graphics processing UNIT)を用いてもよい。また、各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0163】
また、本実施形態の各処理を、汎用演算処理装置及び記憶装置等を備えたコンピュータ又はサーバ等により構成して、各処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。もちろん、その他いかなる構成要素についても、単一のコンピュータやサーバによって実現しなければならないものではなく、ネットワークによって接続された複数のコンピュータに分散して実現してもよい。
【0164】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【0165】
なお、上記実施形態においては、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」ことを必ずしも意味しない。
【0166】
また、何らかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、開示の技術の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本開示の技術の各態様の範囲外とするものではない。
【0167】
なお、以下に付記を開示する。
【0168】
(付記1)
中継衛星が複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する際に、前記複数の衛星と前記中継衛星との間の単位時間当たりの通信量を表すデータレートの総和が、前記中継衛星と前記他の機器との間のデータレートの制限値以下となるように、前記中継衛星と前記複数の衛星との間の通信を制御する制御部を備える、
通信制御装置。
【0169】
(付記2)
前記中継衛星は、前記複数の衛星と光通信を行う複数の光通信機と、前記他の機器との間の通信を行う機器用通信機とを備えており、
前記制御部は、前記複数の衛星と前記複数の光通信機との間の前記データレートの総和が、前記機器用通信機と前記他の機器との間のデータレートの制限値以下となるように、前記複数の光通信機と前記複数の衛星との間の通信を制御する、
付記1に記載の通信制御装置。
【0170】
(付記3)
前記衛星と前記光通信機との間の通信回線の前記データレートの制限値R
Uと、前記機器用通信機と前記他の機器との間の通信回線におけるデータレートの制限値R
Gとに基づいて、以下の式(1)に従って、前記複数の光通信機のうち同時に光通信をする光通信機の数N
opを設定する設定部を更に備え、
前記制御部は、N
op台の光通信機と複数の衛星との間において通信が行われるように、N
op台の光通信機を制御する、
付記2に記載の通信制御装置。
【数9】
(1)
【0171】
(付記4)
前記設定部は、前記光通信機の数N
opが前記光通信機の総数N
U未満の場合、前記光通信機の数N
opと、前記衛星と前記光通信機との間の通信回線の確立に要する時間X
aqと、前記光通信機の総数N
Uとに基づいて、以下の式(2)に従って、前記衛星と前記光通信機との間において通信を行う時間を表す通信時間T
coをさらに設定し、
前記通信時間T
coと前記光通信機の数N
opとに基づいて、以下の式(3)に従って、通信の開始タイミングを制御する制御時間T
difをさらに設定し、
前記制御部は、前記通信時間T
coと前記制御時間T
difとに基づいて、前記複数の衛星のうちの第1衛星と、前記複数の光通信機のうちの第1光通信機との間の通信時間が前記通信時間T
coとなるように制御し、前記第1衛星と前記第1光通信機との間において通信が開始されてから前記制御時間T
difが経過したときに、前記複数の衛星のうちの第2衛星と、前記複数の光通信機のうちの第2光通信機との間の通信が開始されるように制御する、
付記3に記載の通信制御装置。
【数10】
(2)
(3)
【0172】
(付記5)
前記衛星と前記光通信機との間の通信回線の確立に要する時間Xaqには、前記光通信機が前記衛星を捕捉する際に要する時間を表す捕捉時間Xが含まれ、
前記設定部は、前記捕捉時間Xを含む前記時間Xaqに応じて、前記通信時間Tcoを設定する、
付記4に記載の通信制御装置。
【0173】
(付記6)
前記設定部は、
前記中継衛星から出力された第1捕捉用信号光が前記衛星により受光されるまでに要する第1時間と、前記衛星による前記第1捕捉用信号光の受光に応答して前記衛星から出力される第2捕捉用信号光が前記中継衛星により受光されるまでに要する第2時間とに応じて、前記捕捉時間Xを計算し、
前記捕捉時間Xを含む前記時間Xaqに応じて、前記通信時間Tcoを設定する、
付記5に記載の通信制御装置。
【0174】
(付記7)
前記設定部は、
前記衛星から出力された第1捕捉用信号光が前記中継衛星により受光されるまでに要する第1時間と、前記中継衛星による前記第1捕捉用信号光の受光に応答して前記中継衛星から出力される第2捕捉用信号光が前記衛星により受光されるまでに要する第2時間とに応じて、前記捕捉時間Xを計算し、
前記捕捉時間Xを含む前記時間Xaqに応じて、前記通信時間Tcoを設定する、
付記5に記載の通信制御装置。
【0175】
(付記8)
前記複数の衛星のうちの少なくとも1以上の衛星は、他の中継衛星である、
付記1~付記7の何れか1項に記載の通信制御装置。
【0176】
(付記9)
前記他の機器は、前記中継衛星と無線通信を行う、地球局、及び地上局の少なくとも1つである、
付記2~付記8の何れか1項に記載の通信制御装置。
【0177】
(付記10)
前記他の機器との間の通信を行う機器用通信機は、光通信機であり、
前記他の機器は、前記中継衛星と光通信を行う、地球局、地上局、衛星、及び他の中継衛星の少なくとも1つである、
付記2~付記8の何れか1項に記載の通信制御装置。
【0178】
(付記11)
付記1~付記10の何れか1項に記載の通信制御装置が実行する各処理を含む通信制御方法。
【0179】
(付記12)
コンピュータを、付記1~付記10の何れか1項に記載の通信制御装置の各部として機能させるための通信制御プログラム。
【0180】
(付記13)
複数の衛星と光通信を行う複数の光通信機と、
地上局との間の通信を行う地上用通信機と、
付記1~付記10の何れか1項に記載の通信制御装置と、
を含む通信制御システム。
【0181】
(付記14)
付記13に記載の通信制御システムを搭載した中継衛星。
【0182】
(付記15)
複数の衛星と、
中継衛星と、
地上局と、
付記1~付記10の何れか1項に記載の通信制御装置と、
を含む衛星システム。
【符号の説明】
【0183】
1 衛星システム
2 中継衛星
3A,3B,3C ユーザ衛星
4 地上局
12 通信制御システム
14A,14B,14C 光通信機
16 通信制御装置
18 信号切替回路
20 高周波無線機
70 コンピュータ
【要約】 (修正有)
【課題】光通信を用いた中継衛星が複数の衛星と他の機器との間の通信を中継する際に、中継衛星と他の機器との間のデータレートの制限値を満たしつつ、より多くの衛星のデータを中継衛星から他の機器へ送信する通信制御装置、方法、制御プログラム及び衛星通信中継システムを提供する。
【解決手段】衛星システム1において、通信制御装置は、中継衛星2が複数のユーザ衛星3A、3B、3Cと他の機器4との間の通信を中継する際に、複数のユーザ衛星3A、3B、3Cと中継衛星2との間の単位時間当たりの通信量を表すデータレートの総和が、中継衛星2と他の機器4との間のデータレートの制限値以下となるように、中継衛星2と複数のユーザ衛星3A、3B、3Cとの間の光通信を制御する。
【選択図】
図1