(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ストレート型流量計センサ
(51)【国際特許分類】
G01F 1/66 20220101AFI20220517BHJP
【FI】
G01F1/66 101
(21)【出願番号】P 2022517387
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021047142
【審査請求日】2022-04-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】村井 勇気
(72)【発明者】
【氏名】松下 尚孝
(72)【発明者】
【氏名】外村 啓真
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 克幸
(72)【発明者】
【氏名】石黒 裕也
【審査官】羽飼 知佳
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-089761(JP,U)
【文献】特開2002-303542(JP,A)
【文献】特開2018-077081(JP,A)
【文献】特開2018-077080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00- 9/02
G01F 15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れるストレートの配管に対して超音波を斜めに入射させるべく超音波振動子を支持し、前記配管の軸線方向にオフセットして配置される一対のシューと、
前記一対のシューを収容して位置決め固定する内側ケースと、
前記内側ケースを収容する外側ケースと
を備えるストレート型流量計センサであって、
前記外側ケースは、前記配管の第1端側部位が挿通される第1の挿通孔を第1の側壁部に有する第1のケース分割片と、前記配管の第2端側部位が挿通される第2の挿通孔を第2の側壁部に有する第2のケース分割片とからなり、
前記第1のケース分割片と前記第2のケース分割片との分割面の少なくとも一部が、前記配管の軸線方向に対して傾斜している
ことを特徴とするストレート型流量計センサ。
【請求項2】
前記分割面全体が、前記配管の軸線方向に対して傾斜しており、
前記外側ケースの底面に対する前記分割面の傾斜角度は45°以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のストレート型流量計センサ。
【請求項3】
前記分割面全体に、防水用のパッキンが取り付けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のストレート型流量計センサ。
【請求項4】
前記分割面の傾斜角度は一定であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のストレート型流量計センサ。
【請求項5】
前記第1の側壁部及び前記第2の側壁部が、前記外側ケースにおいて対向配置され、
前記分割面が、前記第1の側壁部及び前記第2の側壁部を含んで分割している
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のストレート型流量計センサ。
【請求項6】
前記一対のシューに、同一方向に延びて前記配管を挟む複数の脚部がそれぞれ突設され、
前記一対のシューが、前記脚部同士が前記配管の軸線方向に互い違いにずらして配置された状態で、前記内側ケース内に位置決め固定されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のストレート型流量計センサ。
【請求項7】
前記複数の脚部は、異なる前記シューの前記脚部に接触しないように配置されていることを特徴とする請求項6に記載のストレート型流量計センサ。
【請求項8】
前記複数の脚部は、前記超音波振動子から照射された超音波ビームの中心を避けて配置されていることを特徴とする請求項6または7に記載のストレート型流量計センサ。
【請求項9】
前記一対のシューは、互いに同じ大きさであって、互いに同形状をなしていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のストレート型流量計センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレート型流量計センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を用いた計測装置として、液体の流量計測を行う超音波流量計が種々提案されている。この超音波流量計では、液体が流れる配管の途中に流量計測管が設けられ、その流量計測管の上流側位置及び下流側位置にそれぞれ超音波センサが設置されている。そして、これらの超音波センサを用いて超音波を送受信し、上流側から下流側に伝播する超音波の伝播時間と下流側から上流側に伝播する超音波の伝播時間との時間差に基づいて、液体の流量が算出されるようになっている。
【0003】
この種の超音波流量計としては従来各種のものが提案されているが、例えばストレート形状の配管に対して取り付け可能なクランプオン式の超音波流量計センサが従来存在している(例えば特許文献1を参照)。
【0004】
そして、この種のストレート型流量計センサとしては、超音波振動子を支持する一対のシューを配管の軸線方向にオフセットして配置するとともに、上下一対の分割片からなるケース内に一対のシューを収容したものが従来提案されている(例えば特許文献2を参照)。
【0005】
また、一対のシューを内側ケースの中に収容し、さらにその内側ケースを外側ケースに収容した構造のものも従来提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5927394号公報
【文献】特許第6789766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来のストレート型流量計センサを組み立てる場合、まず配管の途中において内側ケース内に一対のシューを収容した構造のモジュールを組み付け、次にそのモジュールを上下一対のケース分割片からなる外側ケース内に収容する必要がある。またその際には、外側ケースの両側壁部に設けた配管挿通孔に、配管の両端側をそれぞれ挿通させてケース外方へそれらを突出させる必要がある。
【0008】
しかしながら、配管挿通孔が設けられた外側ケースの両側壁部の間隔は不変であるため、その間隔が狭いと配管の挿通作業を行うことができない。そこで、組立性を優先して配管の挿通作業を容易に行うためには、ある程度外側ケースを大きくして前記間隔を広くする必要があるが、その場合には装置全体の小型化が図れなくなってしまう。逆に、装置全体の小型化を優先しようとすると、配管挿通孔に配管の両端を挿通させることが困難になり、組立性が悪化してしまう。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、小型であって組立性のよいストレート型流量計センサを提供することにある。また、本発明の別の目的は、防水性に優れたストレート型流量計センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、流体が流れるストレートの配管に対して超音波を斜めに入射させるべく超音波振動子を支持し、前記配管の軸線方向にオフセットして配置される一対のシューと、前記一対のシューを収容して位置決め固定する内側ケースと、前記内側ケースを収容する外側ケースとを備えるストレート型流量計センサであって、前記外側ケースは、前記配管の第1端側部位が挿通される第1の挿通孔を第1の側壁部に有する第1のケース分割片と、前記配管の第2端側部位が挿通される第2の挿通孔を第2の側壁部に有する第2のケース分割片とからなり、前記第1のケース分割片と前記第2のケース分割片との分割面の少なくとも一部が、前記配管の軸線方向に対して傾斜していることを特徴とするストレート型流量計センサをその要旨とする。
【0011】
従って、請求項1に記載の発明によると、外側ケースを構成する第1及び第2のケース分割片は、挿通孔を各々1つ備えている。また、第1及び第2のケース分割片は、配管の軸線方向に沿ってスライド可能となっている。よって、両ケース分割片を離間させることにより、外側ケースを分割面にて開口させることができるとともに、第1及び第2の側壁部の間隔を広げることができる。逆に、両ケース分割片を近接させることにより、分割面同士を互いに接合させて外側ケースを閉口させることができるとともに、第1及び第2の側壁部の間隔を狭めることができる。以上のことから、外側ケースを特に大きくしなくても、配管の途中に内側ケース内に一対のシューを収容したモジュールを組み付けた状態で、各々の挿通孔に配管の第1及び第2端側部位を容易に挿通させることが可能となる。ゆえに、小型であって組立性のよいストレート型流量計センサとすることができる。また、一対のシューが内側ケース内に収容されることにより、配管に対して正しい位置に固定される結果、測定精度の向上が達成されやすくなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記分割面全体が、前記配管の軸線方向に対して傾斜しており、前記外側ケースの底面に対する前記分割面の傾斜角度は45°以下であることをその要旨とする。
【0013】
従って、請求項2に記載の発明によると、外側ケースの底面に対する分割面の傾斜角度が45°超である場合に比べて、組立性が向上しやすくなる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記分割面全体に、防水用のパッキンが取り付けられていることをその要旨とする。
【0015】
従って、請求項3に記載の発明によると、第1のケース分割片と第2のケース分割片との分割面にパッキンが配置されることで界面のシール性が良くなり、外側ケースの防水性が向上する。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記分割面の傾斜角度は一定であることをその要旨とする。
【0017】
従って、請求項4に記載の発明によると、第1のケース分割片と第2のケース分割片との分割面にパッキンを容易かつ安定的に配置しやすくなるとともに、パッキンと分割面との間に隙間ができにくく高い密着性が得られるので、好適な防水性を付与することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項において、前記第1の側壁部及び前記第2の側壁部が、前記外側ケースにおいて対向配置され、前記分割面が、前記第1の側壁部及び前記第2の側壁部を含んで分割していることをその要旨とする。
【0019】
従って、請求項5に記載の発明によると、側壁部を含んで分割された外側ケースであるため、分割面の傾斜角度を好適な角度である45°以下の角度に設定しやすくなる。また、外側ケースを構成する第1のケース分割片及び第2のケース分割片がほぼ上下方向に分割された状態となるため、第1のケース分割片及び第2のケース分割片を金型成型しやすい形状(ケース分割片の内面に複雑な凸状構造物などを成形しやすい形状)とすることができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項において、前記一対のシューに、同一方向に延びて前記配管を挟む複数の脚部がそれぞれ突設され、前記一対のシューが、前記脚部同士が前記配管の軸線方向に互い違いにずらして配置された状態で、前記内側ケース内に位置決め固定されていることをその要旨とする。
【0021】
従って、請求項6に記載の発明によると、シューの有する複数の脚部が配管を両側から挟み込むことにより、シューが配管に対する正しい位置に確実に固定され、ひいては測定精度の向上に貢献する。また、各々のシューにおける複数の脚部は配管の軸線方向に互い違いにずらして配置されているので、配管を介してシューを対向配置しても脚部同士が干渉しない。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6において、前記複数の脚部は、異なる前記シューの前記脚部に接触しないように配置されていることをその要旨とする。
【0023】
一方のシューの脚部が他方のシューの脚部に接触していると、一方のシューに属する超音波振動子の発した超音波の振動が配管を介さずに直接他方に伝達してしまい、測定精度や感度が低下するおそれがある。その点、請求項7に記載の発明によると、一方のシューに属する超音波振動子の発した超音波の振動が直接他方に伝達しないので、測定精度や感度の低下を回避することができる。
【0024】
請求項8に記載の発明は、請求項6または7において、前記複数の脚部は、前記超音波振動子から照射された超音波ビームの中心を避けて配置されていることをその要旨とする。
【0025】
従って、請求項8に記載の発明によると、複数の脚部に超音波ビームが伝達されることによるロスが低減されるため、測定精度や感度の低下を回避することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記一対のシューは、互いに同じ大きさであって、互いに同形状をなしていることをその要旨とする。
【0027】
従って、請求項9に記載の発明によると、組み付け時に間違いが起こりにくく、また部品の共通化が可能になるため低コスト化にも貢献する。
【発明の効果】
【0028】
以上詳述したように、請求項1~9に記載の発明によると、小型であって組立性のよいストレート型流量計センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明を具体化した第1実施形態のストレート型流量計センサを示す斜視図。
【
図2】第1実施形態のストレート型流量計センサを別の角度から見た斜視図。
【
図3】第1実施形態のストレート型流量計センサを示す分解斜視図。
【
図4】第1実施形態のストレート型流量計センサを別の角度から見た分解斜視図。
【
図5】第1実施形態のストレート型流量計センサにおいて外側ケースを配管の軸線方向にスライドさせて分解した状態を示す斜視図。
【
図6】
図5においてさらに内側ケースを分解した状態を示す斜視図。
【
図7】第1実施形態のストレート型流量計センサを示す分解側面図。
【
図8】
図7において一対のシューよりも下側の部材を示す平面図。
【
図9】一対のシューの配置状態を説明するための斜視図。
【
図10】(a)、(b)は一対のシューの配置状態を説明するための側面図。
【
図11】第1実施形態のストレート型流量計センサを示す分解正面図。
【
図12】(a)~(e)は、第1実施形態のストレート型流量計センサを組み立てるときの手順を説明するための概略図。
【
図13】別の実施形態のストレート型流量計センサを示す側面図。
【
図14】別の実施形態のストレート型流量計センサを示す側面図。
【
図15】別の実施形態のストレート型流量計センサを示す側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を具体化した一実施の形態の第1実施形態のストレート型流量計センサ11を
図1~
図12に基づき詳細に説明する。
【0031】
図1~
図7等に示されるように、本実施形態のストレート型流量計センサ11は、ストレート形状の配管1に対して取り付け可能なクランプオン式の超音波流量計センサである。
【0032】
このストレート型流量計センサ11が取り付けられるストレート形状の配管1としては特に限定されないが、例えば耐薬品性や耐熱性に優れた樹脂材料によって形成されたチューブが好ましい。具体的にいうと、ここではPFA等からなる直径数mm程度のフッ素樹脂製チューブを配管1として用いている。
【0033】
図3等に示されるように、このストレート型流量計センサ11は、一対のシュー61、内側ケース22、外側ケース21等を備えている。
【0034】
一対のシュー61は、振動子支持体として機能する部材であって、超音波の送受信が可能な超音波振動子64を有している(
図8~
図10等を参照)。一対のシュー61は、透過型のストレート型流量計センサ11を構成するために、配管1の外周面においてほぼ対向する位置関係で配置されている。また、一対のシュー61は、流体が流れるストレートの配管1に対して、超音波を斜めに入射させうる状態で超音波振動子64を支持しているとともに、配管1の軸線方向d1にオフセットして配置されている。
【0035】
図8~
図10等に示されるように、本実施形態における一対のシュー61は、互いに同じ大きさであって、互いに同形状をなしている。より具体的にいうと、これらのシュー61は、前後方向(
図8では左右方向)に長いブロック形状を呈しており、例えば超音波を効率よく伝達しうる樹脂材料を用いて形成されている。シュー61の前面側に存在する斜面上には、セラミックス焼結体からなる円板状の超音波振動子64が接着支持されている。本実施形態では例えば2MHzの超音波を発生する超音波振動子64を用いているが、これ以外の周波数を発生するものであっても勿論よい。これらの超音波振動子64の超音波放射面は、ストレートの配管1の方向に傾いた状態で配置されている。
【0036】
これらのシュー61の底面(即ち配管1の側を向いている面)には、複数本の脚部66が一体的に突設されている。これらの脚部66は、同一方向に延びるとともに、配管1を両側から挟んで保持固定している。本実施形態における脚部66は、左右2対の合計4本であって、各々等しい形状及び大きさを有したものとなっている。なお、脚部66の本数は4本に限定されず、3本以下あるいは5本以上であっても勿論よい。各々の脚部66は、配管1の直径よりも若干短い寸法となるように形成されている。前面側における1対の脚部66と、後面側における1対の脚部66とは、脚部66の幅よりも大きい間隔を隔てて配置されている。その理由は、一方のシュー61に属する脚部66の間の領域に、他方の一方のシュー61に属する脚部66を、余裕のある寸法をもって配置するためである。
【0037】
そして一対のシュー61は、脚部66同士を配管1の軸線方向d1に互い違いにずらした状態で配置されるとともに、異なるシュー61(即ち相手側のシュー61)の脚部66に接触しないように配置されている。このように脚部66同士の接触を避けたのは、一方のシュー61に属する超音波振動子64の発した超音波の振動を直接他方に伝達させないためである。また、複数の脚部66は、超音波振動子64から照射された超音波ビームB1の中心を避けるようにして配置されている。その理由は、脚部66に超音波ビームB1が伝達されることによる超音波振動のロスを低減し、測定精度や感度の低下を回避するためである。
【0038】
図3~
図7に示されるように、内側ケース22は、矩形箱状の容器であって、一対のシュー61を自身の内部に収容してそれらを配管1に対する正しい位置に保持固定するための役割を果たしている。なお、内側ケース22は、内部に収容した超音波振動子64を磁気の影響から守る電磁シールドとしての役割を担っていてもよい。内側ケース22の形成材料は特に限定されず、例えばPPSやフッ素樹脂等が使用可能であるが、電磁シールドとしての機能を付与する場合には磁気遮蔽性を有する金属材料を使用することが好ましい。この内側ケース22は、上蓋部材51と下蓋部材52とによって構成されている。上蓋部材51の両端面における中央部、下蓋部材52の両端面における中央部には、それぞれ略U字状の切欠部54が形成されている。上蓋部材51に下蓋部材52を被せたときには、これら切欠部54によって円形状の配管挿通孔が形成されるようになっている。
【0039】
内側ケース22の内部空間には、配管1を両側から挟み込んで固定した状態の一対のシュー61が収容されている。シュー61において底面を除く各面は、いずれも内側ケース22の内壁面にほぼ接した状態となっている。また、内側ケース22は図示しない止めねじ等の締結部材を有している。そして、この止めねじを締め付けることによって、一対のシュー61が内側ケース22及び配管1に対して位置ずれ不能に保持固定されている。つまり本実施形態では、超音波振動子64を有する一対のシュー61と内側ケース22とによって、配管1の途中に1つのセンサモジュールが構成されている。
【0040】
図1~
図7に示されるように、外側ケース21は内側ケース22よりもやや大きい矩形箱状の容器であって、センサモジュールである内側ケース22等を収容して保護する役割を果たしている。外側ケース21の形成材料は特に限定されないが、例えばPPSやフッ素樹脂等が使用される。この外側ケース21は、下側ケース分割片31(第1のケース分割片)と、上側ケース分割片41(第2のケース分割片)とによって構成されている。
【0041】
下側ケース分割片31は、全体的に上面側に開口を有しており、その開口縁が外側ケース21の分割面P1を構成している。下側ケース分割片31は片側のみに第1の側壁部31aを備えている。第1の側壁部31aの外面の中央部には、第1の挿通孔32を有する配管挿通部33が突設されており、その第1の挿通孔32には配管1の第1端側部位T1が挿通されている。また、第1の側壁部31aの外面において配管挿通部33の脇には、ケーブル接続のためのコネクタ部34が突設されている。
図8等に示されるように、下側ケース分割片31の内底面の中央部には、矩形枠状の壁部36が設けられている。この壁部36がなす凹部に内側ケース22が嵌合されることで、内側ケース22が下側ケース分割片31に位置決め固定されるようになっている。下側ケース分割片31の内底面における四隅には、上側ケース分割片41をねじ止め固定するときに用いる円柱状のボス部35が突設されている。各々のボス部35には雌ねじが形成されている。
【0042】
一方、上側ケース分割片41は、全体的に下面側に開口を有しており、その開口縁が外側ケース21の分割面P1を構成している。上側ケース分割片41は片側のみに第2の側壁部41aを備えている。第2の側壁部41aは、外側ケース21において第1の側壁部31aと対向する位置関係にある。第2の側壁部41aの外面の中央部には、第2の挿通孔42を有する配管挿通部43が突設されており、その第2の挿通孔42には配管1の第2端側部位T2が挿通されている。この上側ケース分割片41は、コネクタ部34、ボス部35及び壁部36を備えていない点で、下側ケース分割片31とは異なっている。また、この上側ケース分割片41の底面における四隅には、下側ケース分割片31のボス部35に対向して、それぞれねじ挿通部45が形成されている。各々のねじ挿通部45にはねじ71が挿通されるとともに、そのねじ71を隠すねじ蓋72が設けられる。
【0043】
そして、
図1~
図6、
図11に示されるように、本実施形態の下側ケース分割片31及び上側ケース分割片41は、それぞれ分割面P1が全体的に配管1の軸線方向d1(及び外側ケース21の内底面)に対して傾斜している。別の言い方をすると、下側ケース分割片31については、開口縁が第1の側壁部31aから遠ざかる方向に下り勾配となる傾斜を有している。上側ケース分割片41については、開口縁が第2の側壁部41aから遠ざかる方向に下り勾配となる傾斜を有している。
【0044】
本実施形態の下側ケース分割片31及び上側ケース分割片41では、配管1の軸線方向d1に対する分割面P1の傾斜角度θは45°以下かつ一定の値に設定されている。この分割面P1は、第1の側壁部31a及び第2の側壁部41aを含むような態様、つまり比較的緩い傾斜角度θで外側ケース21を2つに分割している。例えば本実施形態では、傾斜角度θを最適角度である5°~25°の範囲内で設定している。
【0045】
下側ケース分割片31と上側ケース分割片41とを分割面P1同士で接合したときの界面には、防水用のパッキン23が取り付けられている。本実施形態のパッキン23は開口縁の形状と同じ矩形状であって、例えばFPM等のフッ素樹脂を用いて形成されている。この防水用のパッキン23は、下側ケース分割片31と上側ケース分割片41との間に配置された状態で、上下方向からねじ71を締め付けることにより圧縮される。その結果、下側ケース分割片31と上側ケース分割片41との界面に隙間ができず、シール性が良くなる結果、外側ケース21の防水が図られる。
【0046】
次に、
図12に基づいて、このストレート型流量計センサ11を組み立てるときの手順を説明する。まず、ストレートの配管1を用意するとともに、その配管1の所定箇所における外周面にて、一対のシュー61をオフセットさせた状態で配置する。このとき、シュー61の底面と配管1との間に図示しないゴムシートを配置し、そのゴムシートを介してシュー61の底面と配管1とを密着させる(
図12(a)参照)。続いて、配管1を両側から挟み込んで固定した状態の一対のシュー61を内側ケース22内に収容し、配管1の途中にセンサモジュールを組み付ける(
図12(b)参照)。次に、内側ケース22を外側ケース21内に収容する作業を行う。まず、分割面P1同士が接合されておらず開口した状態の下側ケース分割片31と上側ケース分割片41とを用意する。そして、下側ケース分割片31の第1の挿通孔32に対し、配管1の第1端側部位T1を第1の側壁部31aの内面側から挿通させる(
図12(c)参照)。そして、下側ケース分割片31をセンサモジュールの組み付け位置までスライド移動させ、壁部36の内側にある凹部に内側ケース22を嵌合させる。次に、上側ケース分割片41の第2の挿通孔42に対し、パッキン23を挿通させたうえで、配管1の第2端側部位T2を第2の側壁部41aの内面側から挿通させる(
図12(d)参照)。そして、上側ケース分割片41をセンサモジュールの組み付け位置までスライド移動させる。つまり、下側ケース分割片31と上側ケース分割片41とを近接させることにより、パッキン23を介して分割面P1同士を互いに接合させて、外側ケース21を閉口させる。この状態で、上側ケース分割片41側からねじ71を挿通して締め付けて、下側ケース分割片31と上側ケース分割片41とを固定することにより、ストレート型流量計センサ11の組み立てが完了する(
図12(e)参照)。
【0047】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0048】
(1)本実施形態のストレート型流量計センサ11の場合、外側ケース21を構成する下側ケース分割片31及び上側ケース分割片41が、挿通孔32、42を各々1つ備えている。また、下側ケース分割片31及び上側ケース分割片41が、配管1の軸線方向d1に沿ってスライド可能となっている。よって、両ケース分割片31、41を離間させることにより、外側ケース21を分割面P1にて開口させることができる。これに加え、両者の離間によって、第1の側壁部31a及び第2の側壁部41aの間隔を広げることができる。逆に、両ケース分割片31、41を近接させることにより、分割面P1同士を互いに接合させて、外側ケース21を閉口させることができる。これに加え、両者の近接により、第1の側壁部31a及び第2の側壁部41aの間隔を狭めることができる。以上のことから、外側ケース21を特に大きくしなくても、配管1の途中にセンサモジュールを組み付けた状態で、各々の挿通孔32、42に配管1の第1端側部位T1及び第2端側部位T2を容易に挿通させることが可能となる。ゆえに、小型であって組立性のよいストレート型流量計センサ11とすることができる。また、一対のシュー61が内側ケース22内に収容されることにより、配管1に対して正しい位置に固定される結果、測定精度の向上が達成されやすくなる。以上のように、本実施形態によれば、小型であって組立性のよいストレート型流量計センサ11を実現することができる。
【0049】
(2)本実施形態のストレート型流量計センサ11では、分割面P1全体が配管1の軸線方向d1に対して45°よりもかなり小さい一定の角度(即ち、本実施形態ではθ=5°~25°の範囲内の一定の角度)で傾斜している。また、その分割面P1全体には、防水用のパッキン23が取り付けられている。このように分割面P1にパッキンが配置されることで界面のシール性が良くなり、外側ケース21の防水性が向上する。また、分割面P1の傾斜角度θが一定になることで、分割面P1にパッキン23を容易かつ安定的に配置しやすくなる。それとともに、パッキン23と分割面P1との間に隙間ができにくく、高い密着性が得られるので、好適な防水性を付与することができる。さらに、この外側ケース21は第1の側壁部31a及び第2の側壁部41aを含んで分割されている。このため、分割面P1の傾斜角度θを好適な角度である45°以下の角度よりもかなり小さい値(θ=5°~25°)に設定しやすくなっている。また、外側ケース21を構成する第1のケース分割片31及び第2のケース分割片41が、ほぼ上下方向に分割された状態となる。そのため、第1のケース分割片31及び第2のケース分割片41を金型成型しやすい形状(ケース分割片の内面にボス部35や壁部36などを成形しやすい形状)とすることができる。
【0050】
(3)本実施形態のストレート型流量計センサ11の場合、4本の脚部66が配管1を両側から挟み込むことにより、シュー61が配管1に対する正しい位置に確実に固定され、ひいては測定精度の向上に貢献する。また、4本の脚部66は配管1の軸線方向d1に互い違いにずらして配置されているので、配管1を介してシュー61を対向配置しても脚部66同士が干渉しない。さらに、4本の脚部66は異なるシュー61の脚部66に非接触状態で配置されているので、一方のシュー61に属する超音波振動子64の発した超音波の振動が直接他方に伝達しない。よって、測定精度や感度の低下を回避することができる。また、4本の脚部66は超音波振動子64から照射された超音波ビームB1の中心を避けて配置されているので、脚部66に超音波ビームB1が伝達されることによるロスが低減される。ゆえに、このことによっても測定精度や感度の低下を回避することができる。加えて、一対のシュー61は、互いに同じ大きさであって、互いに同形状をなしている。このため、組み付け時に間違いが起こりにくく、また部品の共通化が可能になるため低コスト化にも貢献する。
【0051】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0052】
・上記実施形態では、分割面P1が第1の側壁部31a及び第2の側壁部41aを含んで外側ケース21を分割していたが、これに限定されない。例えば
図13に示す別の実施形態のストレート型流量計センサ11Aのように、分割面P1が第1の側壁部31aも第2の側壁部41aも含まずに外側ケース21を分割していてもよい。なお、このストレート型流量計センサ11Aでは、実施形態のストレート型流量計センサ11よりも傾斜角度θが若干大きくなっている。
【0053】
・上記実施形態では、分割面P1の傾斜角度θは一定であったが、これに限定されない。例えば
図14、
図15に示す別の実施形態のストレート型流量計センサ11B、11Cのようにしてもよい。ストレート型流量計センサ11Bでは、外側ケース21の側面方向から見たときに、分割面P1における両端部が水平(即ち傾斜角度θ=0°)であって、それらの間に位置する領域が傾斜している。ストレート型流量計センサ11Cでは、外側ケース21の側面方向から見たときに、分割面P1における両端部が傾斜しており、それらの間に位置する領域が水平(即ち傾斜角度θ=0°)になっている。
【符号の説明】
【0054】
1…配管
11、11A、11B、11C…ストレート型流量計センサ
21…外側ケース
22…内側ケース
23…パッキン
31…第1のケース分割片としての下側ケース分割片
31a…第1の側壁部
32…第1の挿通孔
41…第2のケース分割片としての上側ケース分割片
41a…第2の側壁部
42…第2の挿通孔
61…シュー
64…超音波振動子
66…脚部
d1…軸線方向
B1…超音波ビーム
P1…分割面
T1…第1端側部位
T2…第2端側部位
θ…傾斜角度
【要約】
小型であって組立性のよいストレート型流量計センサを提供する。このストレート型流量計センサ11は、一対のシュー61と内側ケース22と外側ケース21とを備える。内側ケース22は、一対のシュー61を収容して位置決め固定する。外側ケース21は、内側ケース22を収容する。外側ケース21は、第1のケース分割片31と第2のケース分割片41とからなる。第1のケース分割片31は、配管1の第1端側部位T1が挿通される第1の挿通孔32を第1の側壁部31aに有する。第2のケース分割片41は、配管1の第2端側部位T2が挿通される第2の挿通孔42を第2の側壁部41aに有する。第1のケース分割片31と第2のケース分割片41との分割面P1の少なくとも一部が、配管1の軸線方向d1に対して傾斜している。選択図:
図3