IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東海理化電機製作所の特許一覧

<>
  • 特許-半導体装置 図1
  • 特許-半導体装置 図2
  • 特許-半導体装置 図3
  • 特許-半導体装置 図4
  • 特許-半導体装置 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20220517BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220517BHJP
   H01L 27/06 20060101ALI20220517BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20220517BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20220517BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20220517BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H01L27/04 H
H01L27/06 311B
H01L29/91 D
H01L29/06 301F
H01L27/088 331E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018135261
(22)【出願日】2018-07-18
(65)【公開番号】P2020013900
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良一
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068650(JP,A)
【文献】特開2007-053314(JP,A)
【文献】特開2010-199164(JP,A)
【文献】国際公開第2017/056355(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/06
H01L 29/861
H01L 29/06
H01L 27/088
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する支持基板上に絶縁層を介在して活性層が形成された基板の前記活性層に配設され、アノード領域とカソード領域とのpn接合ダイオードを含んで構成される保護素子と、
前記pn接合ダイオードの周囲を取り囲み前記活性層の表面から前記絶縁層に至るトレンチと、当該トレンチ側壁に配設された絶縁体と、前記トレンチ内部に前記絶縁体を介して埋設された導電体とを含んで構成される素子分離領域と、
前記カソード領域と前記導電体とを電気的に接続する第1接続手段と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第1接続手段は、前記カソード領域上及び前記導電体上に配設された配線である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記カソード領域と前記支持基板とを電気的に接続する第2接続手段を更に備えた請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記活性層の前記保護素子とは別の領域に、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗、又は金属-絶縁体-半導体型容量のいずれかの半導体素子が配設されている請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記基板上に配設され、前記カソード領域に電気的に接続された外部端子と、
前記支持基板と電気的に接続され、前記基板を搭載するダイパッド又は配線基板と、
前記外部端子にワイヤを介して電気的に接続されたリードと、を備え、
前記第2接続手段は、前記リードと前記ダイパッド又は前記配線基板とを電気的に接続する経路を含んで構成されている請求項3又は請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2接続手段は、
前記トレンチの前記絶縁層側に連結され、前記絶縁層の表面から前記支持基板に至る貫通部と、
当該貫通部内に埋設され、一端部が前記導電体に電気的に接続され、かつ、他端部が前記支持基板に電気的に接続される貫通導体と、を備え、
前記貫通導体を有する経路を含んで構成されている請求項3又は請求項4に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、特に保護素子を備えた半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、SOI(Silicon On Insulator)基板を採用した半導体装置が開示されている。SOI基板は、シリコン基板と、シリコン基板上の埋込み酸化膜と、埋込み酸化膜上のp型活性層とを積層して形成されている。p型活性層にはMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が形成されている。
ここで、一般的に、SOI基板のシリコン基板は電位が印加されていないフローティング状態とされているか、又はシリコン基板にはグランド電位が印加されている。
【0003】
ところで、SOI基板のp型活性層に保護素子として高耐圧構造のpn接合ダイオードを形成する場合、pn接合ダイオードの周囲を取り囲む素子分離領域が配置され、pn接合ダイオードはそれ以外の素子に対して電気的に分離されている。素子分離領域として、pn接合ダイオードと他の素子との間の分離が確実なトレンチアイソレーション構造の採用が好適である。この素子分離領域は、p型活性層の表面から埋込み酸化膜に至るトレンチと、トレンチ側壁に形成されたシリコン酸化膜と、トレンチ内部にシリコン酸化膜を介して埋設されたシリコン多結晶膜とを含んで構成されている。
【0004】
しかしながら、このような素子分離領域に囲まれたpn接合ダイオードでは、p型活性層において素子分離領域のトレンチに沿った領域は、素子分離領域側からp型活性層へ空乏層が広がらない領域となる。このため、カソード領域に正のサージ電圧が印加されたとき、カソード領域からp型活性層に流れ込んだサージ電流が空乏層の広がらない領域を電流パス経路としてアノード領域に流れ込むので、pn接合ダイオードの耐圧を向上させるには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4354876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、保護素子の耐圧を簡易に向上させることができる半導体装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1実施態様に係る半導体装置は、導電性を有する支持基板上に絶縁層を介在して活性層が形成された基板の活性層に配設され、アノード領域とカソード領域とのpn接合ダイオードを含んで構成される保護素子と、pn接合ダイオードの周囲を取り囲み活性層の表面から絶縁層に至るトレンチと、トレンチ側壁に配設された絶縁体と、トレンチ内部に絶縁体を介して埋設された導電体とを含んで構成される素子分離領域と、カソード領域と導電体とを電気的に接続する第1接続手段と、を備えている。
【0008】
第1実施態様に係る半導体装置は、基板に保護素子及び素子分離領域を備える。
基板は、導電性を有する支持基板と、この支持基板上の絶縁層と、絶縁層上の活性層とを有する。保護素子は、活性層に配設され、アノード領域とカソード領域とのpn接合ダイオードを含んで構成される。
素子分離領域は、トレンチ、絶縁体及び導電体を含んで構成される。トレンチは、pn接合ダイオードの周囲を取り囲み、活性層の表面から絶縁層に至る。絶縁体は、トレンチ側壁に配設される。導電体は、トレンチ内部に絶縁体を介して埋設される。
【0009】
ここで、半導体装置は更に第1接続手段を備える。第1接続手段は、pn接合ダイオードのカソード領域と素子分離領域の導電体とを電気的に接続する。
仮に、カソード領域に正のサージ電圧が印加されると、素子分離領域の導電体にもサージ電圧が印加される。基板の活性層、素子分離領域の絶縁体及び導電体はフィールドプレート構造を構築する。サージ電圧が印加されると、フィールドプレート効果により活性層とトレンチ側壁の絶縁体との界面から活性層側へ空乏層が広がるので、アノード領域と素子分離領域との間であってトレンチに沿った電流パス経路を無くすことができる。このため、カソード領域から電流パス経路を通ってアノード領域に流れ込むサージ電流を効果的に抑制することができ、かつ、空乏層の広がりによりカソード領域とアノード領域とのpn接合部に生じる電界を効果的に緩和することができる。
従って、pn接合ダイオードのカソード領域と素子分離領域の導電体とを電気的に接続する簡易な構成により、pn接合ダイオードの接合耐圧を向上させることができる。
【0010】
本発明の第2実施態様に係る半導体装置では、第1実施態様に係る半導体装置において、第1接続手段は、カソード領域上及び導電体上に配設された配線である。
【0011】
第2実施態様に係る半導体装置によれば、第1接続手段は配線とされる。配線は、pn接合ダイオードのカソード領域上及び素子分離領域の導電体上に配設され、pn接合ダイオードとそれ以外の素子とを電気的に接続する配線の一部を利用して形成される。
このため、半導体装置又は半導体装置の製造プロセスにおいて、新たに配線層を組み込む必要がなく、既存の配線層を利用してカソード領域と導電体とを電気的に接続することができるので、簡易な構成により第1接続手段を実現することができる。
【0012】
本発明の第3実施態様に係る半導体装置は、第1実施態様又は第2実施態様に係る半導体装置において、カソード領域と支持基板とを電気的に接続する第2接続手段を更に備えている。
【0013】
第3実施態様に係る半導体装置は、更に第2接続手段を備える。第2接続手段は、pn接合ダイオードのカソード領域と基板の支持基板との間を電気的に接続する。
仮に、カソード領域に正のサージ電圧が印加されると、このサージ電圧は支持基板にも印加される。基板は支持基板、絶縁層及び活性層によるフィールドプレート構造を構築する。支持基板にサージ電圧が印加されると、フィールドプレート効果によりアノード領域とカソード領域とのpn接合部に形成される空乏層を広げてpn接合部に生じる電界が緩和される。このため、活性層の不純物密度を低く設定することなく、pn接合ダイオードの接合耐圧を向上させることができる。
【0014】
本発明の第4実施態様に係る半導体装置では、第3実施態様に係る半導体装置において、活性層の保護素子とは別の領域に、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗、又は金属-絶縁体-半導体型容量のいずれかの半導体素子が配設されている。
【0015】
第4実施態様に係る半導体装置によれば、活性層の保護素子とは別の領域に、半導体素子が配設される。半導体素子は、絶縁ゲート型電界効果トランジスタ、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗、又は金属-絶縁体-半導体型容量の少なくともいずれかである。そして、活性層の不純物密度を低く設定することなく、pn接合ダイオードの接合耐圧を向上させることができるので、半導体素子の特性を変動させることがなくなる。
【0016】
本発明の第5実施態様に係る半導体装置では、第3実施態様又は第4実施態様に係る半導体装置において、基板上に配設され、カソード領域に電気的に接続された外部端子と、支持基板と電気的に接続され、基板を搭載するダイパッド又は配線基板と、外部端子にワイヤを介して電気的に接続されたリードと、を備え、第2接続手段は、リードとダイパッド又は配線基板とを電気的に接続する経路を含んで構成されている。
【0017】
第5実施態様に係る半導体装置は、外部端子と、ダイパッド又は配線基板と、リードとを更に備える。外部端子は、基板上に配設され、カソード領域に電気的に接続される。ダイパッド又は配線基板は、基板を搭載し、基板の支持基板に電気的に接続される。リードはワイヤを介して外部端子に電気的に接続される。ここで、第2接続手段は、リードとダイパッド又は配線基板とを電気的に接続する経路を含んで構成される。
このため、仮に、サージ電圧がリードからワイヤ及び外部端子を介してカソード領域に印加されると、リードからダイパッド又は配線基板を介して支持基板にサージ電圧を印加させることができる。従って、pn接合ダイオードのフィールドプレート効果による接合耐圧の向上を簡易に実現することができる。
【0018】
本発明の第6実施態様に係る半導体装置では、第3実施態様又は第4実施態様に係る半導体装置において、第2接続手段は、トレンチの絶縁層側に連結され、絶縁層の表面から支持基板に至る貫通部と、貫通部内に埋設され、一端部が導電体に電気的に接続され、かつ、他端部が支持基板に電気的に接続される貫通導体と、を備え、貫通導体を有する経路を含んで構成されている。
【0019】
第6実施態様に係る半導体装置によれば、第2接続手段は、貫通部と、貫通導体とを備える。貫通部は、トレンチの絶縁層側に連結され、絶縁層の表面から支持基板に至る。貫通導体は貫通部内に埋設される。貫通導体の一端部はトレンチの導電体に電気的に接続され、貫通導体の他端部は支持基板に電気的に接続される。第2接続手段は、貫通導体を有する経路を含んで構成される。
このため、仮に、サージ電圧がカソード領域に印加されると、素子分離領域のトレンチ内部に埋設された導電体にもサージ電圧が印加され、更にサージ電圧は貫通部に埋設された貫通導体を介して基板の支持基板にも印加される。従って、pn接合ダイオードのフィールドプレート効果による接合耐圧の向上を簡易に実現させることができる。
加えて、pn接合ダイオードの周囲を取り囲んで配設された素子分離領域の導電体を利用して、pn接合ダイオードの近傍において短い経路によりサージ電圧を支持基板に即座に印加することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、保護素子の耐圧を簡易に向上させることができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施の形態に係る半導体装置の要部を拡大して概略的に示す縦断面構造図である。
図2】比較例に係る半導体装置の図1に対応する縦断面構造図である。
図3】本発明の第2実施の形態に係る半導体装置の要部を拡大して概略的に示す図1に対応する縦断面構造図である。
図4】第2実施の形態に係る半導体装置のパッケージング構造を示す断面図である。
図5】本発明の第3実施の形態に係る半導体装置の要部を拡大して概略的に示す図1に対応する縦断面構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施の形態]
以下、図1及び図2を用いて、本発明の第1実施の形態に係る半導体装置について説明する。
【0023】
(半導体装置1の基板断面構造)
図1に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1は基板(半導体ペレット又は半導体チップ)2を主体に構成されている。基板2の主面部には保護素子としてのpn接合ダイオードD(以下、単に「ダイオードD」という。)が配設され、ダイオードDは逆方向接続において外部端子BPに電気的に接続されている。
【0024】
基板2にはSOI基板が使用されている。すなわち、基板2は、導電性を有する支持基板20と、支持基板20上に形成された絶縁層21と、絶縁層21上に形成された活性層22とを順次積層した構造とされている。
【0025】
支持基板20は、ここでは、シリコン単結晶基板により形成され、低不純物密度のp型に設定されている。なお、支持基板20は、中不純物密度又は高不純物密度のp型に設定されてもよく、又はn型に設定されてもよい。
絶縁層21は、埋込み酸化膜(BOX:Buried Oxide)として形成され、具体的にはシリコン酸化膜により形成されている。絶縁層21は、例えば、イオン注入法を用いて、支持基板20の内部に酸素を注入し、支持基板20内部のシリコンを部分的に酸化させることにより形成されている。
活性層22は、ここでは支持基板20と同様にシリコン単結晶層により形成され、低不純物密度のp型に設定されている。活性層22は、支持基板20の表面層の一部を用いて形成され、絶縁層21が形成されることによってこの絶縁層21を境として支持基板20と区画(電気的に分離)されている。活性層22には、ダイオードDが配設されると共に、ダイオードD以外であって回路を構築する半導体素子が配設されている。なお、半導体素子の構成は、後述する第2実施の形態において説明する。
【0026】
(素子分離領域3の構造)
ダイオードDの周囲を取り囲む領域であって、活性層22には素子分離領域3が配設されている。素子分離領域3は、ダイオードDと、ダイオードD以外の半導体素子との間等、素子間を電気的に分離する構成とされている。本実施の形態において、素子分離領域3は、トレンチ30と、絶縁体31と、導電体32とを含んで構成され、所謂、トレンチアイソレーション構造として構成されている。
【0027】
トレンチ30は、ダイオードDの周囲を取り囲み、活性層22の表面から絶縁層21の少なくとも表面に至る構成とされている。トレンチ30では、溝深さ寸法に対して、溝開口幅寸法が小さく(アスペクト比が大きく)設定されている。すなわち、トレンチ30を有する素子分離領域3が採用されると、活性層22の表面上での素子分離領域3の占有面積が小さくなるので、半導体装置1の集積度を向上させることができる。トレンチ30は、半導体装置1の製造プロセスにおいて、例えばリアクティブイオンエッチング(RIE)等の異方性エッチングを用いて形成されている。
【0028】
絶縁体31は、トレンチ30の側壁に配設され、例えばシリコン酸化膜により形成されている。このシリコン酸化膜は、例えば化学的気相析出(CVD)法を用いて形成されている。
【0029】
導電体32は、トレンチ30内部に絶縁体31を介して埋設されている。導電体32として、例えば不純物が導入されて低抵抗値に調整されたシリコン多結晶膜が使用されている。製造プロセスにおいて、シリコン多結晶膜は、例えばCVD法を用いて、トレンチ30内部を埋設しつつ、活性層22上が平坦になるまで堆積される。そして、トレンチ30内部が完全に埋設されつつ、活性層22上のシリコン多結晶膜が除去される。このシリコン多結晶の除去には、エッチング法又はケミカルメカニカルポリシング(CMP)法を使用することができる。
【0030】
(ダイオードDの構造)
ダイオードDは、アノード領域としてのp型活性層22と、カソード領域としてのn型半導体領域4とのpn接合部に構成されている。n型半導体領域4は、活性層22の表面から内部へn型不純物をイオン注入法又は固相拡散法を用いて導入し、n型不純物を活性化することにより形成されている。n型半導体領域4の不純物密度は活性層22の不純物密度よりも高く設定されている。
アノード領域としての活性層22の主面部には、活性層22と同一導電型のp型半導体領域5が配設されている。p型半導体領域5はn型半導体領域4の不純物密度よりも高い不純物密度に設定されている。p型半導体領域5が配設されることにより、アノード領域としての活性層22とそれに電気的に接続される配線(図1に示される配線12)との接触抵抗を小さくすることができる。
【0031】
ダイオードD上及び素子分離領域3上を含む基板2上の全面にパッシベーション膜10が配設されている。パッシベーション膜10は、例えばシリコン酸化膜若しくはシリコン窒化膜の単層、又はそれらを積層した複合膜により形成されている。
パッシベーション膜10上には配線12が配設されている。配線12は、ここでは単層配線構造を示しているが、2層以上の配線構造であってもよい。配線12には、例えば、銅(Cu)、シリコン(Si)が添加されたアルミニウム合金膜が使用されている。1つの配線12の一端部はパッシベーション膜10に膜厚方向に貫通して形成された接続孔11を通してカソード領域としてのn型半導体領域4に電気的に接続されている。この配線12の他端部は外部端子BPに接続されている。また、他の1つの配線12の一端部は、p型半導体領域5を介してアノード領域としてのp型活性層22に電気的に接続されている。この配線12の他端部は図示省略の内部回路に接続されている。
【0032】
(第1接続手段50の構造)
このように構成される半導体装置1では、カソード領域としてのn型半導体領域4と素子分離領域3の導電体32とを電気的に接続する第1接続手段(第1接続構造)50が配設されている。詳しく説明すると、n型半導体領域4には前述の通り配線12が電気的に接続され、この配線12の一部が素子分離領域3上まで引き出されて第1接続手段50を構築している。この配線12の一部は、素子分離領域3のトレンチ30上部において、パッシベーション膜10に形成された接続孔11を通して電気的に接続されている。従って、ここでは、ダイオードDの周囲を取り囲む素子分離領域3のすべての導電体32がn型半導体領域4に電気的に短絡されている。
【0033】
なお、第1接続手段50は、ここではダイオードDの周囲を取り囲む全域において素子分離領域3の導電体32に電気的に接続されているが、p型半導体領域5の周囲に沿って配設された素子分離領域3の導電体32に少なくとも電気的に接続されていればよい。
また、第1接続手段50と導電体32との接続箇所は、1カ所以上であっても、トレンチ30の長さ方向に沿って所定の間隔において複数箇所であってもよい。
【0034】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る半導体装置1は、図1に示されるように、基板2に保護素子及び素子分離領域3を備える。
基板2は、導電性を有する支持基板20と、この支持基板20上の絶縁層21と、絶縁層21上の活性層22とを有する。保護素子は、活性層22に配設され、アノード領域とカソード領域とのダイオードDを含んで構成される。
素子分離領域3は、トレンチ30、絶縁体31及び導電体32を含んで構成される。トレンチ30は、ダイオードDの周囲を取り囲み、活性層22の表面から絶縁層21に至る。絶縁体31は、トレンチ30側壁に配設される。導電体32は、トレンチ30内部に絶縁体31を介して埋設される。
【0035】
ここで、半導体装置1は更に第1接続手段50を備える。第1接続手段50は、ダイオードDのn型半導体領域4(カソード領域)と素子分離領域3の導電体32とを電気的に接続する。
仮に、外部端子BPからカソード領域に正のサージ電圧が印加されると、第1接続手段50を通して素子分離領域3の導電体32にもサージ電圧が印加される。基板2の活性層22、素子分離領域3の絶縁体31及び導電体32はフィールドプレート構造を構築する。サージ電圧が印加されると、カソード領域(n型半導体領域4)とアノード領域(p型活性層22)とのpn接合部からカソード領域側へ空乏層Inが広がる。一方、pn接合部からアノード領域側へも空乏層Ipが広がる。そして、カソード領域に印加されるサージ電圧は更に素子分離領域3の導電体32にも印加されるので、フィールドプレート効果により、活性層22とトレンチ30側面の絶縁体31との界面から活性層22側へも空乏層Ipが広がる。つまり、アノード領域、特にp型半導体領域5と素子分離領域3との中間部まで空乏層Ipが広がるので、活性層22のトレンチ30に沿ったサージ電流iの電流パス経路(図2参照)を無くすことができる。
【0036】
図2には、本実施の形態における第1接続手段50が配設されていない、比較例に係る半導体装置60が示されている。この比較例に係る半導体装置60では、同様に、外部端子BPからカソード領域に正のサージ電圧が印加されると、カソード領域とアノード領域とのpn接合部からカソード領域側へ空乏層Inが広がる。一方、pn接合部からアノード領域側へも空乏層Ipが広がる。
ところが、アノード領域、特にp型半導体領域5と素子分離領域3との間には空乏層Ipが広がらない領域が発生する。このため、カソード領域から活性層22へ流れ込んだサージ電流iは、活性層22と絶縁層21との界面に沿って、更に活性層22と絶縁体31との界面であって活性層22のトレンチ30に沿って、これらを電流パス経路として流れる。結果的に、サージ電流iはp型半導体領域5へ流れ込むので、ダイオードDの接合耐圧を向上させることができない。
【0037】
図1に示される本実施の形態に係る半導体装置1では、上記の通り、サージ電流iの電流パス経路を無くすことができるので、カソード領域から電流パス経路を通ってアノード領域に流れ込むサージ電流iを効果的に抑制することができる。加えて、空乏層Ipの広がりによりカソード領域とアノード領域とのpn接合部に生じる電界を効果的に緩和することができる。
従って、ダイオードDのカソード領域と素子分離領域3の導電体32とを電気的に接続する簡易な構成により、ダイオードDの接合耐圧を向上させることができる。
表現を代えると、素子分離領域3を利用して、ダイオードDのカソード領域と素子分離領域3の導電体32とを電気的に短絡させる簡易な構成により、フィールドプレート構造を簡単に構築することができる。すなわち、あえて、半導体装置1の製造プロセスを増加して、フィールドプレート構造を構築せずに、素子分離領域3を利用してフィールドプレート構造を簡単に構築することができ、結果としてダイオードDの耐圧を向上させることができる。
【0038】
また、本実施の形態に係る半導体装置1では、図1に示されるように、第1接続手段50は配線12とされる。配線12は、ダイオードDのカソード領域(n型半導体領域4)上及び素子分離領域3の導電体32上に配設され、ダイオードDとそれ以外の素子とを電気的に接続する配線12の一部を利用して形成される。
このため、半導体装置1又は半導体装置1の製造プロセスにおいて、新たに配線層を組み込む必要がなく、既存の配線層を利用してカソード領域と導電体32とを電気的に接続することができるので、簡易な構成により第1接続手段50を実現することができる。
【0039】
[第2実施の形態]
次に、図3及び図4を用いて、本発明の第2実施の形態に係る半導体装置1について説明する。なお、第2実施の形態並びに後述する第3実施の形態において、第1実施の形態の構成要素と同一構成要素又は実質的に同一構成要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0040】
(半導体装置1の基板断面構造)
本実施の形態に係る半導体装置1は、図3に示されるように、基板2の活性層22に保護素子としてのダイオードD以外に半導体素子を備え、更に第2接続手段52を備えている。
【0041】
半導体素子は、ダイオードDとは別の領域において、基板2の活性層22に配設されている。ここで、素子分離領域3の構成は第1実施の形態に係る素子分離領域3の構成と同一である。
特に限定されるものではないが、ここでは、半導体素子として、絶縁ゲート型電界効果トランジスタTr(IGFET:Insulated Gate Field Effect Transistor。以下、単に「トランジスタTr」という。)が配設されている。ここで、IGFETとは、MOSFET、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)のいずれも含む意味において使用されている。
【0042】
(トランジスタTrの構造)
トランジスタTrは、素子分離領域3に周囲を囲まれた領域内において、活性層22の主面部に配設されている。トランジスタTrは、チャネル形成領域として使用される活性層22と、ソース領域及びドレイン領域としての一対の主電極を形成するn型半導体領域8と、ゲート絶縁膜6と、ゲート電極7とを含んで構成されている。
一対のn型半導体領域8は、活性層22の主面部においてゲート幅方向へ離間して配設されている。n型半導体領域8は、p型半導体領域5とは反対導電型であるが、p型半導体領域5と同程度の不純物密度に設定されている。活性層22において一対のn型半導体領域8間はチャネル形成領域として使用されている。
ゲート絶縁膜6は活性層22の主面上において一対のn型半導体領域8間に少なくとも形成されている。ゲート絶縁膜6として、シリコン酸化膜の単層膜、又はシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを積層した複合膜を使用することができる。
ゲート電極7はゲート絶縁膜6上に配設されている。ゲート電極7には、例えば、不純物が導入されて低抵抗値に調整されたシリコン多結晶膜の単層膜、又はシリコン多結晶膜上に高融点金属膜や高融点金属シリサイド膜を積層した複合膜を使用することができる。
このように構成されるトランジスタTrはnチャネル導電型に設定されている。なお、本実施の形態では、活性層22に図示省略のpチャネル導電型トランジスタが配設されており、相補型トランジスタ(complementary transistor)が構築されている。
【0043】
トランジスタTrのn型半導体領域8には配線12が電気的に接続されている。配線12はパッシベーション膜10上に配設されている。ダイオードDのn型半導体領域4、p型半導体領域5のそれぞれと配線12との接続構造と同様に、配線12はパッシベーション膜10に形成された接続孔11を通してn型半導体領域8に電気的に接続されている。
【0044】
(半導体装置1のパッケージング構造)
図4に示されるように、基板2上には、第1層目のパッシベーション膜10、第1層目の配線12、図3では省略されているが、第2層目のパッシベーション膜13、第2層目の配線15、第3層目のパッシベーション膜16のそれぞれが順次配設されている。本実施の形態において、半導体装置1は配線12及び配線15を含む2層配線構造を採用しているが、単層配線構造又は3層以上の配線構造が採用されてもよい。
【0045】
第1層目のパッシベーション膜10は、ダイオードD上、図3に示されるトランジスタTr上、素子分離領域3上のそれぞれを含む基板2上の全面に形成されている。パッシベーション膜10は、第1実施の形態において説明したパッシベーション膜10と同一の材料により形成されている。パッシベーション膜10は、ダイオードD、トランジスタTr等と第1層目の配線12との電気的な分離を主目的として形成されている。
第1層目の配線12は、第1実施の形態において説明した配線12と同一の材料により形成されている。
【0046】
第2層目のパッシベーション膜13は、配線12上を含んでパッシベーション膜10上に形成されている。パッシベーション膜13は例えばパッシベーション膜10と同様の材料により形成されている。
【0047】
第2層目の配線15は、パッシベーション膜13上に所定の配線パターンを持って配設されている。配線15の一端部は、パッシベーション膜13に膜厚方向へ貫通して形成された接続孔14を通してn型半導体領域4及び素子分離領域3の導電体32に接続された配線12の他端部に接続されている。配線15の他端部は外部端子BPとして構成されている。この外部端子BPの上面は、配線15上を含むパッシベーション膜13上に配設された第3層目のパッシベーション膜(ファイナルパッシベーション膜)16に膜厚方向へ貫通して形成されたボンディング開口17内において露出されている。
パッシベーション膜13、パッシベーション膜16のそれぞれは例えばパッシベーション膜10と同様の材料により形成されている。また、配線15は配線12と同様の材料により形成されている。
【0048】
ここで、半導体装置1は、図4に示されるように、リード40と、基板2と、ボンディングワイヤ46と、樹脂封止体38とを更に備えている。詳しく説明すると、リード40は、ダイパッド(タブ)31と、インナーリード42と、アウターリード33とを含んで構成されている。
【0049】
ダイパッド41上には接合材45を介して基板2が接合されている。基板2の支持基板20の裏面はダイパッド41の上面に対向して配置されている。接合材45には例えば銀(Ag)ペーストが使用されている。つまり、ダイパッド41は支持基板20に電気的に接続されている。
インナーリード42は、ダイパッド41の板面方向であって、このダイパッド41の周囲に配列されている。インナーリード42は樹脂封止体38の内部に配設されている。インナーリード42のダイパッド41側の一端部は、ボンディングワイヤ46を介して、基板2の外部端子BP(配線15)に電気的に接続されている。
そして、アウターリード33は、インナーリード42の他端部に一体に形成され、樹脂封止体38の外部に導出されている。図示を省略するが、アウターリード33は、半導体装置1を実装基板へ実装する構造に対応させて、端子挿入型や表面実装型のリード形状に成形されている。
【0050】
ダイパッド41、インナーリード42及びアウターリード33は、図示省略のリードフレームから成形され、かつ、切断されて形成されている。リード40として、例えば鉄-ニッケル(Fe-Ni)合金、銅(Cu)合金等の板材が使用されている。さらに、リード40の接合領域やボンディング領域となる表面上には金(Au)めっきやニッケル(Ni)めっきが施され、ボンダビリティが向上されている。
また、ボンディングワイヤ46には例えばAuワイヤが使用されている。
【0051】
樹脂封止体38は、エポキシ系樹脂材料を用いて、レジンモールド法により成形されている。
【0052】
(第2接続手段52の構造)
図3に概略的に示されるように、半導体装置1は、第1接続手段50に加えて、更に保護素子としてのダイオードDのカソード領域であるn型半導体領域4と基板2の支持基板20とを電気的に接続する第2接続手段(接続構造)52を備えている。
【0053】
図4を用いて詳しく説明すると、本実施の形態における第2接続手段52は、配線12と、配線15と、ボンディングワイヤ46と、接合材45と、ダイパッド41と、ボンディングワイヤ47とを含んで構成されている。すなわち、第2接続手段52は、インナーリード42からボンディングワイヤ46、外部端子BP、配線15及び配線12を通してn型半導体領域4へ信号を流す信号経路と、インナーリード42をボンディングワイヤ47、ダイパッド41及び接合材45を介して支持基板20に短絡させる短絡経路とを備えている。ボンディングワイヤ47は、インナーリード42とダイパッド41との間を電気的に接続し、ボンディングワイヤ46と同様の材料により形成されている。
このような第2接続手段52を備えることにより、アウターリード33から外部端子BPを通してダイオードDのカソード領域へ正のサージ電圧が印加される(入力される)と、同様の正のサージ電圧がダイパッド41を通して支持基板20へ印加される。
【0054】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る半導体装置1では、第1実施の形態に係る半導体装置1により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0055】
さらに、本実施の形態に係る半導体装置1は、更に第2接続手段52を備える。第2接続手段52は、ダイオードDのカソード領域(n型半導体領域4)と基板2の支持基板20との間を電気的に接続する。
仮に、ダイオードDのカソード領域に正のサージ電圧が印加されると、このサージ電圧は支持基板20にも印加される。基板2は支持基板20、絶縁層21及び活性層22によるフィールドプレート構造を構築する。支持基板20にサージ電圧が印加されると、フィールドプレート効果により活性層22に電界効果が発生し、アノード領域とカソード領域とのpn接合部に形成される空乏層Ipを広げてpn接合部に生じる電界が緩和される。このため、活性層22の不純物密度を低く設定することなく、ダイオードDの接合耐圧を向上させることができる。
【0056】
従って、トランジスタTrにおいて、活性層22の不純物密度を低く設定する必要がないので、閾値電圧の変動、寄生容量の変動等、特性に影響を及ぼすことなく、保護素子のサージ電圧に対する耐圧を向上させることができる。
表現を代えると、SOI構造を有する基板2を利用して、ダイオードDのカソード領域と支持基板20とを電気的に短絡させる簡易な構成により、フィールドプレート構造を簡単に構築することができる。すなわち、あえて、半導体装置1の製造プロセスを増加して、活性層22の表面側にフィールドプレート構造を構築せずに、ダイオードDの耐圧を向上させることができる。
【0057】
また、本実施の形態に係る半導体装置1では、図4に示されるように、第2接続手段52は、カソード領域(n型半導体領域4)と、支持基板20のダイオードDに対向する領域とを電気的に接続する構成とされる。
表現を代えれば、ダイオードDの特にアノード領域とカソード領域とのpn接合部に対向する領域において、少なくとも支持基板20がカソード領域と短絡されていればよい。特に、支持基板20が低不純物密度に設定されている場合には、支持基板20のシート抵抗値が高くなるので、ダイオードDに近い領域において支持基板20にサージ電圧が印加されることが好ましい。
このように構成される半導体装置1によれば、ダイオードDのカソード領域に例えば正のサージ電圧が印加されると、支持基板20のダイオードDに対向する領域に即座にサージ電圧が印加される。このため、ダイオードDのpn接合部に生じる電界を即座に緩和してダイオードDの接合耐圧を向上させることができる。
【0058】
さらに、本実施の形態に係る半導体装置1では、図3に示されるように、基板2の活性層22のダイオードDとは別の領域にトランジスタTrが配設される。そして、活性層22の不純物密度を低く設定することなく、ダイオードDの接合耐圧を向上させることができるので、トランジスタTrの特性を変動させることがなくなる。
なお、トランジスタTr以外の半導体素子として、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗、又は金属-絶縁体-半導体(MIS:Metal Insulator Semiconductor)型容量の少なくとも1つが配設される場合にも、半導体素子の特性の変動を抑制することができる。
例えば、バイポーラトランジスタでは、活性層22の不純物密度を低く設定する必要がないので、動作領域に付加される寄生容量の変動がない。また、拡散抵抗は例えばn型半導体領域により形成され、拡散抵抗と活性層22とのpn接合部に発生する空乏層の広がりを抑制することができるので、拡散抵抗に付加される寄生容量の変動がない。さらに、MIS型容量では、空乏層の広がりを抑制することができるので、容量に付加される寄生容量の変動がない。
【0059】
また、本実施の形態に係る半導体装置1は、図4に示されるように、外部端子BP(配線15)と、ダイパッド41と、リード40とを更に備える。外部端子BPは、基板2上に配設され、ダイオードDのカソード領域(n型半導体領域4)に電気的に接続される。ダイパッド41は、基板2を搭載し、基板2の支持基板20に電気的に接続される。リード40はボンディングワイヤ46を介して外部端子BPに電気的に接続される。ここで、第2接続手段52は、リード40とダイパッド41とを電気的に接続する構成とされる。
このため、仮に、正のサージ電圧がリード40からボンディングワイヤ46及び外部端子BPを介して(信号経路を通して)カソード領域に印加されると、リード40からダイパッド41を介して(短絡経路を通して)支持基板20に簡易に正のサージ電圧を印加させることができる。従って、ダイオードDのフィールドプレート効果による接合耐圧の向上を簡易に実現することができる。
【0060】
なお、図4に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1では、リード40のダイパッド41上に基板2が接合されているが、ダイパッド41に代えて配線基板が使用され、配線基板上に基板2が接合されてもよい。勿論、配線基板の少なくともダイオードDに対向する領域には、支持基板20に電気的に接続される配線が配設されている。
【0061】
[第3実施の形態]
図5を用いて、本発明の第3実施の形態に係る半導体装置について説明する。本実施の形態に係る半導体装置1は、第2実施の形態に係る半導体装置1の第2接続手段52の構造を変えた例を説明するものである。
【0062】
図5に示されるように、本実施の形態に係る半導体装置1は、第2実施の形態に係る半導体装置1の第2接続手段52の構造とは異なる構造の第2接続手段52を備えている。この第2接続手段52は、貫通部53と、貫通導体55とを備えている。そして、第2接続手段52は、ダイオードDのカソード領域と基板2の支持基板20とを電気的に接続する経路に貫通導体55を含んで構成されている。
【0063】
貫通部53は、基板2の絶縁層21側において素子分離領域3のトレンチ30に連結され、絶縁層21の表面から支持基板20の少なくとも表面に至る貫通穴又は貫通溝として構成されている。つまり、貫通部53は、トレンチ30の延設方向において所定の間隔を持って配設された複数個の貫通穴であってもよいし、トレンチ30と同様にダイオードDの周囲を取り囲んで延設された貫通溝であってもよい。
ここでは、貫通部53は、トレンチ30の平面形状と同一の平面形状に形成された貫通溝として構成されている。半導体装置1の製造プロセスにおいては、トレンチ30の形成と同時に貫通部53を形成することができる。
また、貫通部53の内壁には、素子分離領域3の絶縁体31と同様の絶縁体54が配設されている。製造プロセスとしては、同一製造工程において、絶縁体31と絶縁体54とを形成することができる。
【0064】
貫通導体55は貫通部53内に埋設されている。貫通導体55の一端部は素子分離領域3の導電体32に電気的に接続され、貫通導体55の他端部は支持基板20の表面に電気的に接続されている。貫通導体55は、ここでは、トレンチ30内に埋設された導電体32と同一材料により一体に形成されている。
【0065】
表現を代えれば、第2接続手段52の貫通部53は素子分離領域3のトレンチ30をそのまま支持基板20の表面まで延設して構成され、貫通導体55は素子分離領域3の導電体32を貫通部53内まで埋設して構成している。つまり、第2接続手段52の製造プロセスは素子分離領域3の製造プロセスを利用し、第2接続手段52の実現のために新たな製造プロセスが必要とされない。
第2接続手段52は、素子分離領域3と同様にダイオードDの周囲を取り囲んで配設されているので、ダイオードDの近傍に配設されている。
【0066】
(本実施の形態の作用及び効果)
本実施の形態に係る半導体装置1では、第2実施の形態に係る半導体装置1により得られる作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
さらに、本実施の形態に係る半導体装置1は、図5に示されるように、第2接続手段52を備える。第2接続手段52は、貫通部53と、貫通導体55とを備える。貫通部53は、素子分離領域3のトレンチ30の絶縁層21側に連結され、絶縁層21の表面から支持基板20に至る。貫通導体55は貫通部53内に埋設される。貫通導体55の一端部はトレンチ30の導電体32に電気的に接続され、貫通導体55の他端部は支持基板20に電気的に接続される。第2接続手段52は、貫通導体55を有する経路を含んで構成される。
【0068】
このため、仮に、正のサージ電圧がダイオードDのカソード領域(n型半導体領域4)に印加されると、素子分離領域3のトレンチ30内部に埋設された導電体32にサージ電圧が印加される。更に、サージ電圧は、第2接続手段52の貫通部53に埋設された貫通導体55を介して基板2の支持基板にも印加される。従って、ダイオードDのフィールドプレート効果による接合耐圧の向上を簡易に実現させることができる。
加えて、ダイオードDの周囲を取り囲んで配設された素子分離領域3の直下であって、ダイオードDの近傍において短い経路によりサージ電圧を支持基板20に即座に印加することができる。
【0069】
[上記実施の形態の補足説明]
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、例えば下記の通り変形可能である。
本発明は、半導体装置の基板において、支持基板はシリコン単結晶基板に限定されるものではなく、導電性を有していればよいので、例えば金属基板や化合物半導体基板を使用してもよい。
また、本発明は、保護素子として、pn接合ダイオードを含む、IGFET、バイポーラトランジスタ、拡散抵抗のいずれかであってもよい。具体的には、IGFETの一方の主電極と活性層とのpn接合部にダイオードが形成されている。バイポーラトランジスタでは、エミッタ領域又はコレクタ領域とベース領域(活性層)とのpn接合部にダイオードが形成されている。拡散抵抗では、拡散抵抗と活性層とのpn接合部にダイオードが形成されている。
さらに、本発明は、2以上の素子、例えばダイオードとIGFETとを組み合わせて、又は拡散抵抗とIGFETとを組み合わせて保護素子を構築してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…半導体装置、2…基板、20…支持基板、21…絶縁層、22…活性層、3…素子分離領域、30…トレンチ、31…絶縁体、32…導電体、4、8…n型半導体領域、5…p型半導体領域、6…ゲート絶縁膜、7…ゲート電極、12、15…配線、40…リード、41…ダイパッド、42…インナーリード、45…接合材、46、47…ボンディングワイヤ、38…樹脂封止体、50…第1接続手段、52…第2接続手段、53…貫通部、55…貫通導体、BP…外部端子、D…ダイオード(pn接合ダイオード)、Tr…トランジスタ(半導体素子)。
図1
図2
図3
図4
図5