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<図1>
  • 特許-端子圧着方法 図1
  • 特許-端子圧着方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】端子圧着方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20220517BHJP
   H01R 4/18 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H01R43/048 Z
H01R4/18 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018088894
(22)【出願日】2018-05-02
(65)【公開番号】P2019194961
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591236301
【氏名又は名称】住鉱テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】原 優介
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-199456(JP,U)
【文献】特開2009-152054(JP,A)
【文献】実開昭59-020569(JP,U)
【文献】特開2000-223168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の圧着端子を用意する準備工程と、
前記複数種類の圧着端子のいずれかを選択して電線に圧着する圧着工程と、を備え、
前記複数種類の圧着端子は、少なくとも、
前記電線の芯線に圧着されるワイヤバレル部と、前記電線の絶縁被覆部に圧着されるインシュレーションバレル部と、前記ワイヤバレル部のバレル底面と前記インシュレーションバレル部のバレル底面とが段差を有する状態で前記ワイヤバレル部と前記インシュレーションバレル部とを連結する連結部と、を有する突出無圧着端子と、
前記ワイヤバレル部、前記インシュレーションバレル部および前記連結部に加えて、前記インシュレーションバレル部のバレル底面から前記絶縁被覆部の側に向けて突出するように形成された突出部を有する突出有圧着端子と、
を含み、
前記突出無圧着端子と前記突出有圧着端子とは、前記連結部における前記段差の大きさが同じに構成されており、
前記圧着工程では、前記絶縁被覆部の厚さと前記連結部における前記段差の大きさとを基に、前記突出無圧着端子と前記突出有圧着端子とについての選択を行い、前記突出無圧着端子を選択した場合と前記突出有圧着端子を選択した場合とで同じ型を用いて前記電線への圧着を行う
端子圧着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子、コネクタおよび端子圧着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の端縁に取り付けられる圧着端子としては、例えば、電線の芯線に圧着されるワイヤバレル部と、電線の絶縁被覆部に圧着されるインシュレーションバレル部とを備え、絶縁被覆部の厚さの分、ワイヤバレル部がインシュレーションバレル部に対して底上げされた形状となっているものがある(例えば、特許文献1参照)。このような圧着端子の電線への取り付けは、各バレル部をかしめる専用の型(アンビル、クリンパ等)を備えた圧着アプリケータや端子圧着機等を用いて行われることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-99676号公報(0016、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された圧着端子では、絶縁被覆部の厚さが異なる電線への取り付けを行う必要が生じた場合に、これに適切に対応できないおそれがある。具体的には、絶縁被覆部の厚さがワイヤバレル部とインシュレーションバレル部との段差の大きさと相違していると、芯線の中心と絶縁被覆部の中心とにずれが生じてしまう。これを解消するためには、段差の大きさを絶縁被覆部の厚さに合致させた圧着端子を用意することが考えられる。ところが、その場合には、圧着端子の変更前後で圧着アプリケータや端子圧着機等をそのまま用いることができず、型の交換等を行わなければならないため、設備投資に伴うコスト上昇を招いてしまうことになる。
【0005】
本発明は、絶縁被覆部の厚さが異なる電線への取り付けを行う必要が生じた場合であっても、これに適切に対応することができる圧着端子、コネクタおよび端子圧着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、
電線の芯線に圧着されるワイヤバレル部と、
前記電線の絶縁被覆部に圧着されるインシュレーションバレル部と、
前記ワイヤバレル部のバレル底面と前記インシュレーションバレル部のバレル底面とが段差を有する状態で前記ワイヤバレル部と前記インシュレーションバレル部とを連結する連結部と、
前記インシュレーションバレル部のバレル底面から前記絶縁被覆部の側に向けて突出するように形成された突出部と、
を備える圧着端子が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、絶縁被覆部の厚さが異なる電線への取り付けを行う必要が生じた場合であっても、これに適切に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る圧着端子の概略構成の一例を模式的に示す説明図であり、(a)は端子全体の側面図、(b)はA-A断面図、(c)はB矢視図、(d)はC-C断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る端子圧着方法の具体的な手順の一例を示す説明図であり、(a)は絶縁被覆部の厚さが大きい電線に圧着端子を圧着する場合の例を示す図、(b)は絶縁被覆部の厚さが小さい電線に圧着端子を圧着する場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る圧着端子、コネクタおよび端子圧着方法について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(1)圧着端子の構成
本実施形態で説明する圧着端子は、銅合金等の導電性を有した金属材料からなる薄板部材にプレス抜き加工を行って成形されたもので、電線の端縁に取り付けられて用いられるものである。なお、圧着端子には、錫メッキ等の表面処理が施されていてもよい。
【0011】
圧着端子が取り付けられる電線は、金属撚り線等の芯線と、芯線の外周を覆う樹脂被膜等の絶縁被覆部と、を備えて構成されたものである。
【0012】
本実施形態で説明する圧着端子は、例えば、後述する第一構成例のように構成されている。ただし、後述する第二構成例のように構成されたものであってもよい。以下、第一構成例および第二構成例について順に説明する。
【0013】
(第一構成例)
先ず、第一構成例について説明する。
図1は、本実施形態に係る圧着端子の概略構成の一例を模式的に示す説明図である。
【0014】
図1(a)に示すように、第一構成例に係る圧着端子10は、少なくとも、接続部11と、ワイヤバレル部12と、インシュレーションバレル部13と、連結部としてのステップ部14と、突出部としてのビード部15と、ランス部16と、を備えて構成されている。
【0015】
接続部11は、例えば角筒状に形成されており、その筒内に接続相手となる圧着端子の接続部(ただし不図示)が嵌合し得るように構成されたものである。なお、接続部11は、接続相手が嵌合し得るものであれば、角筒状に限定されることはなく、他の形状に形成されたものであってもよい。また、ここでは、接続部11が角筒状に形成されている場合、すなわち雌型端子を構成する場合を例に挙げているが、これに限定されることはなく、接続部11は雄型端子を構成するものであってもよい。
【0016】
ワイヤバレル部12は、接続部11の一端側(接続相手の嵌合側とは反対側)に位置するように配されており、電線の端縁近傍で露出する芯線に圧着され得るように構成された、いわゆるオープンバレル形式のものである。
【0017】
インシュレーションバレル部13は、ワイヤバレル部12よりもさらに接続部11から離れた側に位置するように配されており、電線の絶縁被覆部に圧着され得るように構成されたオープンバレル形式のものである。
【0018】
ステップ部14は、ワイヤバレル部12とインシュレーションバレル部13との間に配されて、これらを連結するように構成されたものである。つまり、ステップ部14は、ワイヤバレル部12とインシュレーションバレル部13とを連結する「連結部」として機能するものである。ただし、ステップ部14は、ワイヤバレル部12のバレル底面12aとインシュレーションバレル部13のバレル底面13aとが段差を有する状態(具体的には、バレル底面12aのほうがバレル底面13aよりも図中上方側に位置する状態)で、これらを連結するようになっている。
【0019】
上述のように、圧着端子10においては、接続相手の嵌合側から接続部11、ワイヤバレル部12、ステップ部14およびインシュレーションバレル部13が順に並ぶように配されている。
【0020】
ビード部15は、インシュレーションバレル部13のバレル底面13aに位置するように配されており、バレル底面13aから絶縁被覆部の側に向けて突出するように形成されたものである。つまり、ビード部15は、バレル底面13aから突出するように形成された「突出部」の一例として機能するものである。
【0021】
ビード部15は、詳細を後述するように、圧着端子10が取り付けられる電線の絶縁被覆部の厚さと、ステップ部14におけるバレル底面12aとバレル底面13aとの段差の大きさとを基に、バレル底面13aからの突出量が設定されているものとする。さらに詳しくは、絶縁被覆部の厚さとステップ部14の段差の大きさとの差分に合致するように、ビード部15の突出量が設定されているものとする。
【0022】
また、ビード部15は、図1(b)および(c)に示すように、平面視したときに短手方向と長手方向とを有するように形成されており、接続相手の嵌合方向(すなわち、ワイヤバレル部12、ステップ部14およびインシュレーションバレル部13が並ぶ方向)に沿って短手方向が配され、当該嵌合方向との直交方向に沿って長手方向が配されている。ただし、ビード部15の配置および形状は、これに限定されることはなく、短手方向と長手方向とが逆であってもよく、また短手方向と長手方向との別を有していなくてもよい。
【0023】
このようなビード部15は、図1(d)に示すように、例えば、金属薄板部材に対するプレス抜き加工を行う際のビード加工(ひも出し加工)によって形成することが考えられる。ただし、ビード加工に限定されることはなく、突出部として機能するものを形成できれば、絞り加工や切り起こし加工等といった他の加工手法を利用して形成したものであってもよい。つまり、突出部は、ビード部15に限られることはなく、いわゆる絞り部や切り起こし部等によって構成されたものであってもよい。
【0024】
ランス部16は、例えば接続部11の周壁部分に位置するように配されており、後述するコネクタのハウジング部に圧着端子10が装着された際に、その圧着端子10の位置を固定(抜け防止)するように構成されたものである。なお、ランス部16については、公知技術を利用したものであればよく、ここではその詳細な説明を省略する。
【0025】
(第二構成例)
次に、第二構成例について説明する。
【0026】
第二構成例に係る圧着端子は、ビード部15が設けられていない点で、上述した第一構成例に係る圧着端子10とは異なる。その他の点は、第一構成例に係る圧着端子10と同様に構成されている。つまり、第二構成例に係る圧着端子は、ビード部15を除けば、第一構成例に係る圧着端子10と同じ型を用いたプレス抜き加工によって成形することが可能である。
【0027】
第一構成例に係る圧着端子10と同じ型を用いて成形した場合、第二構成例に係る圧着端子は、インシュレーションバレル部13がビード部15を形成可能な展開長を有して構成されることになる。したがって、第二構成例に係る圧着端子におけるインシュレーションバレル部13は、ビード部15の形成による展開長不足を回避すべく、通常のバレル設計(すなわち、ビード部15を考慮しない設計)の場合に比べると、展開長が長く構成されている。具体的には、第二構成例に係る圧着端子では、例えば、通常のバレル設計による展開長が3.5mmである場合であっても、これよりも長い3.8mmの展開長でインシュレーションバレル部13が構成されている。この点で、第二構成例に係る圧着端子は、通常のバレル設計による圧着端子とは異なる。
【0028】
(2)端子圧着方法
次に、本実施形態に係る圧着端子を電線の端縁に取り付ける場合の具体的な手順について説明する。
図2は、本実施形態に係る端子圧着方法の具体的な手順の一例を示す説明図である。
【0029】
ここでは、図2(a)に示す絶縁被覆部22aの厚さt1が大きい電線20aと、図2(b)に示す絶縁被覆部22bの厚さt2が小さい電線20bとのそれぞれに対して、圧着端子を圧着する場合を例に挙げる。つまり、厚さt1,t2(ただし、t1>t2)が異なる絶縁被覆部22a,22bを有した電線20a,20bのそれぞれに対して、圧着端子の取り付けを行う必要が生じた場合を例に挙げる。なお、いずれの電線20a,20bにおいても、芯線21は、同じ径で構成されているものとする。
【0030】
(手順の概要)
本実施形態に係る端子圧着方法は、大別すると、複数種類の圧着端子を用意する準備工程と、用意した複数種類の圧着端子のいずれかを選択して電線に圧着する圧着工程と、を備える。
【0031】
(準備工程)
準備工程では、複数種類の圧着端子を用意する。具体的には、少なくとも、上述した第二構成例のようにビード部15が設けられていない種類の圧着端子と、上述した第一構成例のようにビード部15を備えて構成された種類の圧着端子とを用意する。以下、ビード部15が設けられていない種類の圧着端子を「突出無圧着端子」と称し、ビード部15を備えて構成された種類の圧着端子を「突出有圧着端子」と称する。
【0032】
つまり、準備工程では、少なくとも、図2(a)に示すような突出無圧着端子10aと、図2(b)に示すような突出有圧着端子10bとを用意する。なお、突出無圧着端子10aとしては、ワイヤバレル部12のバレル底面12aとインシュレーションバレル部13のバレル底面13aとの段差の大きさG1が、電線20aにおける絶縁被覆部22aの厚さt1に合致するものを用意する。また、突出有圧着端子10bとしては、ワイヤバレル部12のバレル底面12aとビード部15の頂点との間の大きさG2が、電線20bにおける絶縁被覆部22bの厚さt2に合致するように、インシュレーションバレル部13のバレル底面13aからのビード部15の突出量が設定されているものを用意する。つまり、突出有圧着端子10bにおいて、ビード部15の突出量G1-G2は、絶縁被覆部22bの厚さt2とステップ部14の段差の大きさG1との差分に合致することになる。
【0033】
(圧着工程)
圧着工程では、圧着対象となる電線20a,20bに応じて、用意した突出無圧着端子10aまたは突出有圧着端子10bのいずれかを選択する。さらに詳しくは、圧着工程では、圧着対象となる電線20a,20bの絶縁被覆部22a,22bの厚さt1,t2と、ステップ部14におけるバレル底面12a,13a間の段差の大きさG1とを基に、突出無圧着端子10aと突出有圧着端子10bとについての選択を行う。そして、選択した突出無圧着端子10aまたは突出有圧着端子10bを、圧着対象となる電線20aまたは電線20bに圧着する。圧着は、ワイヤバレル部12とインシュレーションバレル部13とのそれぞれについて、例えば、各バレル部12,13をかしめる専用の型(アンビル、クリンパ等)を備えた圧着アプリケータや端子圧着機等を用いて行うことが考えられる。これにより、突出無圧着端子10aまたは突出有圧着端子10bは、電線20aまたは電線20bの端縁に取り付けられることになる。
【0034】
具体的には、例えば、図2(a)に示すように、絶縁被覆部22aの厚さt1が大きい電線20aが圧着対象となる場合であれば、バレル底面12a,13a間の段差の大きさG1が厚さt1に合致する突出無圧着端子10aを選択する。そして、突出無圧着端子10aにおけるワイヤバレル部12のバレル内に電線20aの芯線21が位置し、かつ、インシュレーションバレル部13のバレル内に電線20aの絶縁被覆部22aが位置する状態で、圧着アプリケータや端子圧着機等を用いてワイヤバレル部12およびインシュレーションバレル部13をそれぞれかしめて圧着させる。これにより、突出無圧着端子10aは、電線20aの端縁に取り付けられる。
【0035】
ここで、電線20aではなく、例えば、図2(b)に示すように、絶縁被覆部22bの厚さt2が小さい電線20bが圧着対象となった場合を考える。このような電線20bに対して、電線20aのときと同様に突出無圧着端子10aを取り付けようとすると、絶縁被覆部22bの厚さt2と突出無圧着端子10aにおける段差の大きさG1とが合致しないことから、取り付け後において、芯線21の中心と絶縁被覆部22bの中心とにずれが生じてしまうおそれがある。
【0036】
これを解消するためには、段差の大きさを絶縁被覆部22bの厚さt2に合致させた突出無圧着端子を別途用意することが考えられる。ところが、その場合には、突出無圧着端子10aのときに用いていた圧着アプリケータや端子圧着機等をそのまま用いることができず、型の交換等を行わなければならないため、設備投資に伴うコスト上昇を招いてしまうことになる。
【0037】
そこで、本実施形態に係る端子圧着方法では、ビード部15を備えて構成された突出有圧着端子10bを用意しておき、絶縁被覆部22bの厚さt2が小さい電線20bが圧着対象となった場合には、突出有圧着端子10bを選択して電線20bに圧着するようにする。
【0038】
具体的には、例えば、図2(b)に示すように、絶縁被覆部22bの厚さt2が小さい電線20bが圧着対象となる場合であれば、バレル底面12aとビード部15頂点の間の大きさG2が厚さt2に合致するように、バレル底面13aからのビード部15の突出量(=G1-G2)が設定されている突出有圧着端子10bを選択する。そして、突出有圧着端子10bにおけるワイヤバレル部12のバレル内に電線20bの芯線21が位置し、かつ、インシュレーションバレル部13のバレル内に電線20bの絶縁被覆部22bが位置する状態で、ワイヤバレル部12およびインシュレーションバレル部13をそれぞれかしめて圧着させる。これにより、突出有圧着端子10bは、電線20bの端縁に取り付けられる。
【0039】
このとき、突出有圧着端子10bにおけるバレル底面12a,13a間の段差の大きさG1は、上述した突出無圧着端子10aの場合と同様なので、その突出無圧着端子10aのときに用いていた圧着アプリケータや端子圧着機等をそのまま用いることができる。したがって、型の交換等を行う必要が生じてしまうことがないので、設備投資に伴うコスト上昇を招いてしまうことがない。
しかも、突出有圧着端子10bにはビード部15が設けられているので、絶縁被覆部22bの厚さt2とバレル底面12a,13a間の段差の大きさG1とが合致していなくても、その相違量をビード部15の突出量によって是正することができる。したがって、電線20bへの突出有圧着端子10bの取り付け後において、芯線21の中心と絶縁被覆部22bの中心とにずれが生じてしまうことがない。
つまり、ビード部15を備えた突出有圧着端子10bを用いることで、絶縁被覆部22bの厚さt2が異なる電線20bへの取り付けを行う必要が生じた場合であっても、これに適切に対応することができるようになる。
【0040】
(3)コネクタの概略構成
上述した突出無圧着端子10aおよび突出有圧着端子10bは、いずれも、コネクタの構成部品として用いられる。
ここで、突出無圧着端子10aまたは突出有圧着端子10b(以下、これらを単に「圧着端子」と総称する。)を用いて構成されたコネクタについて、簡単に説明する。
【0041】
コネクタは、圧着端子と、その圧着端子が装着されるハウジング部と、を備えて構成されている。
【0042】
ハウジング部は、例えば、絶縁性を有する樹脂材料の一体成型加工によって形成されたもので、圧着端子が挿入される装着孔を有している。そして、装着孔に圧着端子が挿入された状態で、圧着端子のランス部が装着孔内の係止孔、係止溝または係止突起等と係合することで、圧着端子が装着孔内に固定されるように構成されている。なお、ハウジング部への圧着端子の装着数は、特に限定されるものではなく、単数であっても複数であってもよい。
【0043】
また、ハウジング部は、例えば、他のハウジング部と嵌合可能に形成されている。そして、ハウジング部は、他のハウジング部と嵌合した状態で、ハウジング部に装着された圧着端子の接続部が、他のハウジング部に装着された圧着端子(すなわち、接続相手となる圧着端子)と嵌合して接触するように構成されている。これにより、圧着端子が取り付けられた電線は、接続相手となる圧着端子が取り付けられた電線と、電気的に接続されることになる。
【0044】
(4)本実施形態により得られる効果
本実施形態によれば、以下に示す一つまたは複数の効果が得られる。
【0045】
(a)本実施形態において、第一構成例に係る圧着端子10、すなわち突出有圧着端子10bは、インシュレーションバレル部13のバレル底面13aから絶縁被覆部の側に向けて突出するビード部15を備えて構成されている。したがって、絶縁被覆部の厚さが異なる電線への取り付けを行う必要が生じた場合であっても、これに適切に対応することができる。
具体的には、例えば、絶縁被覆部22bの厚さt2とバレル底面12a,13a間の段差の大きさG1とが合致していなくても、バレル底面13aにビード部15が設けられていれば、当該厚さt2と当該段差の大きさG1との相違量をビード部15の突出量によって是正することができる。したがって、電線20bへの圧着端子10の取り付け後において、芯線21の中心と絶縁被覆部22bの中心とにずれが生じてしまうことがない。つまり、圧着の信頼性を十分に確保しつつ、絶縁被覆部の厚さが異なる電線に対応することが可能となる。
しかも、バレル底面13aにビード部15を設けても、バレル底面12a,13a間の段差の大きさG1は、上述した突出無圧着端子10aの場合と同様なので、その突出無圧着端子10aのときに用いていた圧着アプリケータや端子圧着機等をそのまま用いることができる。したがって、型の交換等を行う必要が生じてしまうことがなく、設備投資に伴うコスト上昇を招いてしまうことがない。つまり、絶縁被覆部の厚さが異なる電線に対して、コスト上昇等を招くことなく、柔軟かつ容易に対応することが可能となる。
【0046】
(b)本実施形態において、ビード部15は、プレス抜き加工を行う際のビード加工によって形成することが可能である。したがって、非常に容易かつ確実に形成することができる。しかも、例えば突出部を別ピースとして設ける場合とは異なり、取り扱いが煩雑になってしまうこともない。したがって、電線に圧着して取り付けるための構成として、非常に優れたものとなる。このことは、ビード加工による場合のみならず、絞り加工や切り起こし加工等といった他の加工手法を利用して形成した場合についても同様である。
【0047】
(c)本実施形態において、ビード部15は、絶縁被覆部22bの厚さt2と、ステップ部14におけるバレル底面12a,13a間の段差の大きさG1とを基に、バレル底面13aからの突出量が設定されている。したがって、芯線21の中心と絶縁被覆部22bの中心とにずれが生じてしまうのを確実に回避することができる。
このことは、ビード部15の突出量の設定次第で、様々な種類の電線に対応し得ることを意味する。つまり、ビード部15の突出量を適切に設定すれば、様々な種類の電線に対応することが可能となり、優れた汎用性を確保し得るようになる。
【0048】
(d)本実施形態においては、複数種類の圧着端子として少なくとも突出無圧着端子10aと突出有圧着端子10bとを用意する。そして、圧着対象となる電線20a,20bの絶縁被覆部22a,22bの厚さt1,t2と、ステップ部14におけるバレル底面12a,13a間の段差の大きさG1とを基に、突出無圧着端子10aと突出有圧着端子10bとのいずれかを選択して、圧着対象となる電線20a,20bに圧着する。したがって、本実施形態によれば、絶縁被覆部22a,22bの厚さt1,t2が異なる電線20a,20bのそれぞれについて、適切に対応することができる。
つまり、各電線20a,20bのそれぞれに対応する場合であっても、芯線21の中心と絶縁被覆部22a,22bの中心とにずれが生じてしまうことがなく、圧着の信頼性を十分に確保することができる。しかも、突出無圧着端子10aと突出有圧着端子10bとのいずれについても、同じ圧着アプリケータや端子圧着機等をそのまま用いることができるので、設備投資に伴うコスト上昇を招いてしまうことがない。
【0049】
(e)本実施形態においては、第二構成例に係る圧着端子、すなわち突出無圧着端子10aであっても、インシュレーションバレル部13がビード部15を形成可能な展開長を有して構成されている。つまり、ビード部15の有無を除けば、突出無圧着端子10aと突出有圧着端子10bとは、同じ型を用いたプレス抜き加工によって成形することが可能である。したがって、突出無圧着端子10aと突出有圧着端子10bとを用意する場合であっても、それぞれの製造工程の共通化が可能となり、このことによってもコスト上昇を抑制することが実現可能となる。
【0050】
(5)変形例等
以上、本発明の一実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0051】
上述の実施形態では、突出無圧着端子10aと突出有圧着端子10bとを用意した上で、これらのいずれかを選択する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、突出有圧着端子10bとして、ビード部15の突出量が異なるものを複数用意しておくことも考えられる。また、突出無圧着端子10aまたは突出有圧着端子10bのいずれかのみを用意して電線への圧着を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0052】
10…圧着端子、10a…突出無圧着端子(圧着端子)、10b…突出有圧着端子(圧着端子)、11…接続部、12…ワイヤバレル部、12a…バレル底面、13…インシュレーションバレル部、13a…バレル底面、14…ステップ部(連結部)、15…ビード部(突出部)、16…ランス部、20a,20b…電線、21…芯線、22a,22b…絶縁被覆部
図1
図2