(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
C09J 7/20 20180101AFI20220517BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C09J7/20
C09J201/00
(21)【出願番号】P 2017073260
(22)【出願日】2017-03-31
【審査請求日】2020-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100158481
【氏名又は名称】石原 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】上村 和恵
(72)【発明者】
【氏名】三浦 迪
(72)【発明者】
【氏名】辰野 智子
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-189847(JP,A)
【文献】特開2006-210228(JP,A)
【文献】特開2004-346302(JP,A)
【文献】国際公開第2015/098965(WO,A1)
【文献】特開2004-269024(JP,A)
【文献】特開2015-172111(JP,A)
【文献】特開平08-325532(JP,A)
【文献】特開平05-186744(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0058829(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 5/00,7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材と、前記基材の表面(α)に直接積層し、前記複数の繊維と一体化した粘着剤層を有し、
前記複数の繊維が、前記粘着剤層の内部にて、所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維(β)を含む、粘着シート。
【請求項2】
前記複数の繊維と一体化した粘着剤層の被着体に貼付される貼付表面を平面視した際、複数の繊維(β)の存在割合が、前記基材の表面(α)に存在する前記複数の繊維の総数100%に対して、50%超である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
表面(α)に存在する前記複数の繊維の平均長さが、1~5000μmである、請求項1~2のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記基材が、繊維状物から構成され、起毛繊維が存在する表面(α)を有する起毛基材である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
表面(α)に存在する前記起毛繊維の密度が、1~1000本/mm
2である、請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記基材が、植毛繊維が存在する表面(α)を有する植毛基材である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
表面(α)に存在する前記植毛繊維の密度が、1~6000本/mm
2である、請求項6に記載の粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に粘着剤層を有する粘着シートは、ラベル用や仮固定用等の様々な用途に使用されている。このような粘着シートは、用途や状況に応じて、要求性能が異なる場合が多い。
例えば、部品の一時的な固定に使用される仮固定テープや、貼付後に一定期間経過後に貼り替えを前提とした装飾用テープ等においては、被着体との貼付時には優れた粘着力が求められる一方で、剥離時には小さな力で容易に剥離可能な良好な再剥離性が要求される。
そのため、貼付時には優れた粘着力が発揮される一方で、剥離時には容易に剥離し得る優れた再剥離性を有する粘着シートの開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2層の粘着剤層を有する粘着剤が開示されている。当該粘着剤は、一方の粘着剤層には、粘着材料と共に、粘着力を低下させ得る離型剤を内包し、所定の温度で溶融する第1のマイクロカプセルを有し、他方の粘着剤層には、粘着材料と、粘着力を低下させ得る離型剤を内包し、所定の温度で溶融する第2のマイクロカプセルと、粘着材料を硬化させる硬化剤を内包し、所定の温度で溶融する第3のマイクロカプセルを有する。
特許文献1によれば、このような離型剤を内包するマイクロカプセルを有する2層の粘着剤層を設けた粘着剤とすることで、剥離する際には、所定の温度で加熱処理するだけで、被着体から容易に、しかも被着体に残渣を残さずに剥離できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の粘着剤は、粘着力を低下させる離型剤を内包するマイクロカプセルが一定の温度以上で溶融して粘着力が低下するため、製造時や保管時、被着体に貼付時の温度環境を管理する必要が生じ、また、高温環境下での使用には適さない。そのため、特許文献1に記載の粘着剤は、使用環境が限定される。
【0006】
本発明は、使用環境に依らず、被着体と貼付時には優れた粘着力が発現されると共に、被着体から剥離する際には、容易に剥離可能な優れた再剥離性を有する粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、複数の繊維が存在する表面を有する基材と、当該複数の繊維と一体化するように基材の当該表面上に直接積層した粘着剤層とを有し、前記複数の繊維のうち、前記粘着剤層の内部にて、所定の一方向に沿って配向している繊維を含むように作製した粘着シートが、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔10〕に関する。
〔1〕複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材と、前記基材の表面(α)に直接積層し、前記複数の繊維と一体化した粘着剤層を有し、
前記複数の繊維が、前記粘着剤層の内部にて、所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維(β)を含む、粘着シート。
〔2〕前記複数の繊維と一体化した粘着剤層の被着体に貼付される貼付表面を平面視した際、複数の繊維(β)の存在割合が、前記基材の表面(α)に存在する前記複数の繊維の総数100%に対して、50%超である、上記〔1〕に記載の粘着シート。
〔3〕前記粘着剤層が、前記基材の表面(α)上に、粘着剤を所定の一方向(x)に沿って塗布して形成された層である、上記〔1〕又は〔2〕に記載の粘着シート。
〔4〕表面(α)に存在する前記複数の繊維の平均長さが、1~5000μmである、上記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の粘着シート。
〔5〕前記基材が、繊維状物から構成され、起毛繊維が存在する表面(α)を有する起毛基材である、上記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の粘着シート。
〔6〕表面(α)に存在する前記起毛繊維の密度が、1~1000本/mm2である、上記〔5〕に記載の粘着シート。
〔7〕前記基材が、植毛繊維が存在する表面(α)を有する植毛基材である、上記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の粘着シート。
〔8〕表面(α)に存在する前記植毛繊維の密度が、1~6000本/mm2である、上記〔7〕に記載の粘着シート。
〔9〕下記工程(1)及び(2)を有する、粘着シートの製造方法。
工程(1):複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材を用い、当該基材の表面(α)上に、粘着剤を塗布し、塗布膜を形成する工程。
工程(2):工程(1)で形成した塗布膜から、粘着剤層を形成する工程。
〔10〕工程(1)が、前記基材の表面(α)上に、粘着剤を所定の一方向(x)に沿って塗布し、塗布膜を形成する工程である、上記〔9〕に記載の粘着シートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着シートは、剥離する方向によって粘着力が異なるように設計されているため、使用環境に依らず、被着体と貼付時には優れた粘着力が発現されると共に、剥離する際には、所定の方向に沿って剥離すれば容易に剥離可能であり再剥離性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一態様の粘着シートの構成を示した、当該粘着シートの斜視模式図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す粘着シート1が有する複数の繊維と一体化した粘着剤層の被着体に貼付される貼付表面を平面視した場合の平面模式図の一例であり、(b)は、(a)に示された複数の繊維のうち、2本の繊維のみに着目した際の平面模式図である本発明の粘着シートの別の構成の一例を示す断面模式図の一例である。
【
図3】
図2(a)の直線P-Qにて、粘着シート1を粘着剤層20の被着体に貼付される貼付表面に対して垂直に切断した際の断面模式図の一例である。
【
図4】
図3に示した複数の繊維(β)のうち、2本の繊維に着目した際の断面模式図の一例である。
【
図5】本発明の一態様の粘着シートの層構成を示す、当該粘着シートの断面模式図である。
【
図6】粘着力(Nx)及び(Ny)の測定方法を示す、断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔粘着シートの構成〕
図1は、本発明の一態様の粘着シートの構成を示した、当該粘着シートの斜視模式図である。
本発明の粘着シートは、
図1に示す粘着シート1のように、複数の繊維12が存在する表面(α)10aを有する基材10と、基材10の表面(α)10a上に直接積層し、前記複数の繊維12と一体化した粘着剤層20とを有する。
本発明において、「複数の繊維と一体化した粘着剤層」とは、
図1に示すように、複数の繊維12の表面が粘着剤層20と接触し、複数の繊維12の隙間に粘着剤層20が充填され、複数の繊維12が粘着剤層20によって封止された状態を意味する。
なお、複数の繊維12の間の空間の一部(例えば、基材10の支持体に近い繊維12の根元付近の空間の一部)は、粘着剤層が充填されずに、空隙として存在していてもよい。
つまり、粘着剤層20の内部には、複数の繊維12が取り込まれるが、上記の空隙が存在していてもよい。
【0012】
そして、本発明の粘着シートは、下記要件(I)を満たす。
・要件(I):粘着剤層と一体化した複数の繊維は、粘着剤層の内部にて、所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維(β)を含む。
【0013】
本発明の粘着シートは、上記要件(I)を満たすように設計されているため、剥離する方向によって剥離するために必要な力(粘着力)が異なる。
つまり、本発明の粘着シートは被着体に貼付後に剥離する際には、複数の繊維(β)が配向している一方向(x)に沿って剥離しようとする場合、容易に剥離可能である。一方で、一方向(x)とは逆の方向に沿って剥離しようとした場合、一方向(x)に沿って剥離する場合に比べて、剥離し難くなる。
そのため、本発明の粘着シートは、被着体と貼付時には優れた粘着力が発現されると共に、剥離する際には、所定の方向に沿って剥離すれば、容易に剥離可能であり、粘着力と再剥離性とのバランスに優れたものとなる。
【0014】
本発明において、要件(I)で規定する「複数の繊維(β)」に該当するか否かの判断は、複数の繊維と一体化した粘着剤層の被着体に貼付される貼付表面(以下、単に「粘着剤層の貼付表面」ともいう)を観察することによって判断することができる。
図2(a)は、
図1に示す粘着シート1が有する複数の繊維と一体化した粘着剤層の貼付表面を平面視した場合の平面模式図の一例であり、(b)は、(a)に示された複数の繊維のうち、2本の繊維のみに着目した際の平面模式図の一例である。
本発明において、上記要件(I)で規定する「所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維(β)」とは、それぞれの繊維について、表面(α)と接する端部から当該繊維の他方の端部へと伸びる「繊維の中心線」が一方向(x)と略平行であるか、もしくは、当該中心線の一方向(x)に対するなす角が45°以下(好ましくは30°以下、更に好ましくは20°以下、より更に好ましくは10°以下)である繊維群を指す。
なお、本明細書において、「略平行」とは、平行方向から±10°未満の状態を指す。
【0015】
例えば、
図2(b)の繊維12aの「繊維の中心線」は、基材10の表面(α)10aと接する固定端部121aから、繊維12aの他方の端部122aへと伸びる直線13aが該当する。また、同様に、
図2(b)の繊維12bの「繊維の中心線」は、固定端部121bから、繊維12bの他方の端部122bへと伸びる直線13bが該当する。
なお、直線13aが伸びる方向が、繊維12aの配向している方向であり、同様に、直線13bが伸びる方向が、繊維12bの配向している方向である。
ここで、直線13aと直線13bとは、略平行であり、所定の一方向(x)に沿って伸びている。つまり、繊維12a及び繊維12bは、それぞれの中心線が一方向(x)と略平行であるため、「所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維(β)」に該当する。
【0016】
本発明の一態様において、粘着剤層と一体化した複数の繊維のうち、このような「繊維の中心線」が略平行である複数の繊維が存在することが好ましい。
中心線が略平行である複数の繊維に着目することで、当該複数の繊維の中心線の伸びる方向を「所定の一方向(x)」と特定することができる。
その上で、所定の一方向(x)と略平行である中心線を有する繊維と共に、この一方向(x)に対するなす角が45°以内となる中心線を有する繊維も「繊維(β)」に含まれると判断することができる。
このようにして、粘着剤層と一体化した複数の繊維から、所定の一方向(x)に沿って伸びている繊維群である「複数の繊維(β)」を特定することができる。
【0017】
なお、表面(α)に存在する複数の繊維の中心線を特定する際における、粘着剤層の貼付表面の観察は、目視で行ってもよく、光学顕微鏡やデジタル顕微鏡等を用いて行ってもよい。
また、上記の貼付表面の観察を行う際に、中心線の特定が可能な繊維を対象とすればよく、例えば、粘着剤層の貼付表面を平面視することでは存在が確認され難く、粘着剤層の内部に存在する繊維については、観察対象から除外してもよい。
【0018】
なお、粘着剤層の貼付表面の面積が大きい場合等において、要件(I)を満たす複数の繊維(β)が存在するか否かは、当該貼付表面のうち任意に選択した所定の領域(例えば、一辺4mmの正方形)内に存在する複数の繊維を観察対象として判断してもよい。つまり、当該領域内に存在する複数の繊維が、要件(I)で規定する繊維(β)を含むものであれば、対象としている粘着シートは要件(I)を満たすものであるとみなすこともできる。
【0019】
なお、粘着剤層の被着体に貼付される貼付表面を目視で観察した際に、観察される複数の繊維が、
図2(a)に示すような状態である場合、各々の繊維を厳密に着目せずとも、要件(I)を満たすか否かの判断をしてもよい。
つまり、
図2(a)に示すように、目視で確認される複数の繊維のうち、少なくとも50%超の複数の繊維について、繊維の中心線が互いに略平行であり、所定の一方向(x)に向かって伸びていると、目視で判断可能である場合には、対象としている粘着シートは、要件(I)を満たすものとみなすこともできる。
【0020】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、複数の繊維と一体化した粘着剤層の被着体に貼付される貼付表面を平面視した際、複数の繊維(β)の存在割合が、表面(α)に存在する前記複数の繊維の総数100%に対して、好ましくは50%超、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、より更に好ましくは90%以上である。
複数の繊維(β)の存在割合が50%超であれば、被着体と貼付時には優れた粘着力が発現しつつも、剥離する際には、一方向(x)に沿って剥離すれば、容易に剥離可能であり、粘着力と再剥離性とのバランスに優れた粘着シートとすることができる。
なお、上記の「複数の繊維(β)の存在割合」は、「表面(α)において任意に選択した所定の領域(例えば、一辺4mmの正方形)内に存在する複数の繊維の総数100%に対する、当該領域内に存在する複数の繊維(β)の存在割合」とみなすこともできる。
【0021】
ここで、粘着剤層の貼付表面を平面視して判断する方法と共に、より正確性な判断をするために、貼付表面の任意に選択した位置から、目視で判断した複数の繊維(β)が配向している「所定の一方向(x)」に沿って、貼付表面に対して垂直に切断した断面を取得し、その断面における複数の繊維(β)の状態を観察してもよい。
【0022】
図3は、
図2の直線P-Qにて、粘着シート1を粘着剤層20の被着体に貼付される貼付表面に対して垂直に切断した際の断面の模式図の一例である。
図3に示すように、当該断面において繊維(β)と判断された繊維12は、表面(α)10aに対する正射影の方向が、所定の一方向(x)と同じであることが判る。
この知見を基にすれば、粘着剤層20の被着体に貼付される貼付表面を目視で観察して特定した「所定の一方向(x)」の適否を確認することが可能である。
【0023】
ここで、「表面(α)に対する繊維の正射影の方向」は、以下のようにして特定することができる。
図4は、
図3に示した複数の繊維(β)のうち、2本の繊維に着目した際の断面模式図の一例である。
「繊維の正射影」は、対象となる繊維の表面(α)に固定された固定端部(以下、単に「固定端部」ともいう)と、当該繊維の固定端部から最も離れた点である最遠部から表面(α)に対して下ろした垂線の足(以下、単似「最遠部の垂線の足」ともいう)とによって特定される。そして、固定端部から最遠部の垂線の足へ伸びる方向が「繊維の正射影の方向」となる。
【0024】
例えば、
図4(a)の繊維12aでは、固定端部121aから最も離れた点は、繊維12aの他方の端部122aであり「最遠部」となる。
そして、繊維12aの正射影14aは、固定端部121aと、最遠部である端部122aの表面(α)に対して下ろした垂線の足141aとによって特定される。
また、「繊維12aの正射影の方向」は、固定端部121aから垂線の足141aへ伸びる方向であって、一方向(x)と一致する。
【0025】
なお、
図4(a)の繊維12bのように、固定端部121bから最も離れた点である最遠部123bが、繊維12bの他方の端部122bとは一致しない場合もある。
この繊維12bの正射影14bは、固定端部121bと、最遠部123bの表面(α)に対して下ろした垂線の足141bとによって特定される。
また、「繊維12bの正射影の方向」は、固定端部121bから垂線の足141bへ伸びる方向であって、一方向(x)と一致する。
【0026】
繊維(β)の「固定端部と最遠部との直線距離の平均値」としては、好ましくは1~5000μm、より好ましくは50~1000μm、更に好ましくは100~800μm、より更に好ましくは150~600μmである。
本明細書において、繊維(β)の「固定端部と最遠部との直線距離」とは、固定端部と最遠部とを結ぶ直線の長さを指し、例えば、
図4(a)の繊維12aでは固定端部121aと最遠部である端部122aとを結ぶ直線Laの長さが該当し、繊維12bでは固定端部121bと最遠部123bとを結ぶ直線Lbの長さが該当する。
また、任意に選択した10本の繊維(β)の固定端部と最遠部との直線距離の平均値を、上述の「繊維(β)の固定端部と最遠部との直線距離の平均値」とみなすこともできる。
【0027】
また、繊維(β)の粘着剤層の厚さに対する、固定端部と最遠部との直線距離の平均値の比〔直線距離の平均値/粘着剤層の厚さ〕としては、所定の一方向(x)に沿って剥離すれば、容易に剥離可能である粘着シートとする観点から、好ましくは0.5超、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.8以上、より更に好ましくは1.0以上、特に好ましくは1.2以上であり、また、粘着剤層の粘着表面を平坦にすると共に、良好な粘着力を発現させる観点から、好ましくは15.0以下、より好ましくは10.0以下、更に好ましくは8.0以下である。
【0028】
粘着剤層の厚さに対する表面(α)を基準とした際の繊維(β)の平均高さの比〔繊維(β)の平均高さ/粘着剤層の厚さ〕としては、所定の一方向(x)に沿って剥離すれば、容易に剥離可能である粘着シートとする観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.6以上、より更に好ましくは0.7以上であり、また、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.99以下である。
【0029】
なお、本明細書において、任意に選択した10本の繊維(β)の平均高さを、上述の「繊維(β)の平均高さ」とみなすこともできる。
また、本明細書において、「表面(α)を基準とした際の繊維の高さ」とは、繊維の最頂部から表面(α)に下ろした垂線の長さを指す。
例えば、
図4(b)に示す、繊維12aにおいては、繊維の端部122aが最頂部と一致するため、最頂部である端部122aから表面(α)に下ろした垂線h
aの長さが「繊維12aの高さ」に相当する。
また、繊維12bのような湾曲している繊維においては、最頂部124bから表面(α)に下ろした垂線h
bの長さが「繊維12bの高さ」に相当する。繊維12bでは、最頂部124bと端部122bは一致しない。つまり、繊維12bのように、「繊維の端部」が「繊維の最頂部」とはならない場合もある。
【0030】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、複数の繊維(β)が、粘着剤層の厚さに対する、表面(α)を基準とした際の繊維の高さの比〔繊維の高さ/粘着剤層の厚さ〕が0.5以上である繊維(β1)を含むことが好ましい。
このような繊維(β1)が存在することで、剥離する際に、所定の一方向(x)に沿って剥離すれば、容易に剥離可能であり、粘着力と再剥離性とのバランスに優れた粘着シートとすることができる。
【0031】
また、繊維(β1)の存在割合が、表面(α)に存在する前記複数の繊維の総数100%に対して、好ましくは50%超、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、より更に好ましくは90%以上である。
【0032】
なお、上記の「繊維の正射影」の特定や、「繊維の固定端部と最遠部との直線距離」や「繊維の高さ」の測定は、粘着シートの粘着剤層の被着体に貼付される貼付表面の一方向(x)に沿った任意の位置において、当該貼付表面に対して垂直に切断した粘着シートの断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡等を用いて観察することで算出することができる。
なお、光学顕微鏡や電子顕微鏡等を用いて取得した粘着シートの断面の画像を基に、これらの値を算出してもよい。
【0033】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、上記要件(I)で規定する複数の繊維(β)を形成する方法としては、特に制限は無く、例えば、以下の方法が挙げられる。
・粘着剤層を形成する前に、すでに所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材を使用する。
・粘着剤層を形成する前に、基材の表面(α)に存在する複数の繊維を、ブラシや刷毛を用いて、所定の一方向(x)に沿って、ブラッシングする。
・粘着剤層を、基材の表面(α)上に、粘着剤を所定の一方向(x)に沿って塗布して形成する。
【0034】
本発明の粘着シートの層構成としては、基材及び粘着剤層を有するものであればよい。
図5は、本発明の一態様の粘着シートの層構成を示す、当該粘着シートの断面模式図である。なお、
図5においては、基材の表面(α)に存在する複数の繊維の記載は省略している。
例えば、本発明の一態様の粘着シートとしては、
図5(a)に示すような、基材10の表面(α)上に形成された粘着剤層20に更に剥離材30を積層した粘着シート2が挙げられる。
【0035】
また、本発明の一態様の粘着シートとしては、
図5(b)に示すような、基材10の一方の表面に粘着剤層20及び剥離材30が積層し、他方の表面に粘着剤層20’及び剥離材30’が積層した粘着シート3としてもよい。
この粘着シート3は、両面粘着シートとしての機能を有する。
なお、
図5(b)に示す粘着シート3が有する基材10の少なくとも一方の表面は、複数の繊維が存在する表面(α)に該当するものであるが、基材10の両面が、複数の繊維が存在する表面(α)に該当するものであってもよい。
なお、粘着シート3においても、上述のとおり、表面(α)に存在する複数の繊維は、粘着剤層と一体化しており、当該粘着剤層の内部にて、所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維(β)を含むものである。
両面において複数の繊維が存在する基材を用いる場合、各面における複数の基材(β)が配向する方向は、両面において同じであってもよく、各面で互いに異なっていてもよい。
以下、本発明の一態様の粘着シートを構成する各層について説明する。
【0036】
<基材>
本発明の粘着シートは、複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材を有する。
本発明で用いる基材は、少なくとも一方の表面に複数の繊維が存在するものであればよく、両面に複数の繊維が存在するものであってもよい。
本発明において、「繊維」とは、アスペクト比が3以上の細長い固体を指し、天然繊維(植物繊維、動物繊維等)であってもよく、化学繊維(合成繊維、半合成繊維、再生繊維、無機繊維等)であってもよい。
【0037】
本明細書において、繊維(後述の「起毛繊維」や「植毛繊維」も含む)のアスペクト比は、対象となる繊維の「長さ」/「太さ」から算出された値を意味する。
なお、繊維のアスペクト比は、粘着剤層と一体化する前の基材に存在する繊維を光学顕微鏡や電子顕微鏡等を用いた観察により測定するができる。
また、対象となる繊維の一部分が、他の繊維と絡み合い「長さ」の測定が難しい場合には、対象となる繊維のうち、太さの測定が可能な部分のみの長さを測定し、当該部分のアスペクト比が上記範囲であればよい。
【0038】
具体的な繊維としては、例えば、木綿、麻等の植物繊維;絹、羊毛等の動物繊維;ポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維やポリエチレン系繊維等のポリオレフィン系繊維、ビニロン系繊維、アクリル系繊維、ウレタン系繊維、ナイロン系繊維等のポリアミド系繊維、塩化ビニル系繊維、アクリロニトリル系繊維等の熱可塑性樹脂から形成された合成繊維;アセテート等の半合成繊維;レーヨン等の再生繊維;カーボン系繊維、グラスファイバー等の無機繊維;等が挙げられる。
【0039】
本発明の一態様で用いる基材としては、前記複数の繊維が表面(α)から突出している基材が好ましい。
このような基材を用いることで、剥離する際に、所定の方向に沿って剥離すれば、容易に剥離可能であり、粘着力と再剥離性とのバランスに優れた粘着シートとすることができる。
なお、上記の「複数の繊維が表面(α)から突出している」状態とは、対象となる繊維について、基材の表面(α)に固定された固定端部から、他方の端部までで、アスペクト比が3以上の繊維としての形状が確認可能な状態を意味する。
また、「複数の繊維が表面(α)から突出している」状態か否かは、対象となる基材を表面(α)に対して垂直に切断した断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡等で観察することで確認することができる。
この断面は、粘着剤層と積層した状態で切断して取得してもよく、粘着剤層の積層前の基材のみを切断して取得してもよい。
【0040】
表面(α)に存在する複数の繊維の平均長さとしては、好ましくは1~5000μm、より好ましくは50~1000μm、更に好ましくは100~800μm、より更に好ましくは150~650μmである。
表面(α)に存在する複数の繊維の平均太さとしては、好ましくは1~70μm、より好ましくは3~60μm、更に好ましくは5~50μm、より更に好ましくは10~30μmである。
表面(α)に存在する複数の繊維の平均アスペクト比としては、好ましくは3以上、より好ましくは5~1000、より好ましくは10~700、更に好ましくは20~500、より更に好ましくは30~200である。
【0041】
なお、上記の「繊維の長さ」は、対象となる繊維を直線状に伸ばした際の長手方向の長さを指す。
なお、本明細書において、表面(α)に存在する複数の繊維から、任意に選択した10~100本の繊維の「長さ」、「太さ」及び「アスペクト比」を測定し、これらの平均値を、それぞれ、「複数の繊維の平均長さ」、「複数の繊維の平均太さ」及び「複数の繊維の平均アスペクト比」とみなしてもよい。
また、繊維の長さ、太さ、及びアスペクト値の測定は、対象となる基材を表面(α)に対して垂直に切断した断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡等で観察することで測定することができる。
そして、この断面は、粘着剤層と積層した状態で切断して取得してもよく、粘着剤層の積層前の基材のみを切断して取得してもよい。
【0042】
本発明の一態様で用いる基材としては、複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材であればよく、例えば、繊維状物から構成され、複数の繊維が表面(α)から突出している繊維基材が挙げられる。
繊維基材を構成する繊維状物の形成材料としては、上述の複数の繊維を構成するものと同じ天然繊維や化学繊維が挙げられる。
なお、繊維基材について、表面(α)に存在する複数の繊維と、繊維基材から当該複数の繊維を除いた部分である支持体部とは、互いに同一の繊維から構成されていてもよく、互いに異なる繊維から構成されていてもよい。
剥離する際に、所定の一方向(x)に沿って剥離すれば、容易に剥離可能とする粘着シートとする観点から、繊維基材を構成する繊維状物は、後述の粘着剤よりも引張弾性率が大きい材料から形成されたものであることが好ましい。
【0043】
このような繊維基材の中でも、本発明の一態様で用いる基材としては、繊維状物から構成され、起毛繊維が存在する表面(α)を有する起毛基材であることが好ましい。
当該起毛基材を用いることで、剥離する際に、所定の一方向(x)に沿って剥離すれば、容易に剥離可能であり、粘着力と再剥離性とのバランスに優れた粘着シートを作製し易くなる。
また、上記観点から、本発明の一態様で用いる基材としては、植毛繊維が存在する表面(α)を有する植毛基材であることも好ましい。
以下、本発明の一態様で用いる基材として好適な「起毛基材」及び「植毛基材」に特有の要件等について説明する。
【0044】
(起毛基材)
起毛基材の表面(α)に存在する起毛繊維は、繊維状物の表面に起毛処理を施して形成された繊維であって、少なくとも一方の端部が表面(α)と固定されている繊維を指す。
【0045】
原則として、起毛基材について、表面(α)に存在する複数の繊維と、起毛基材から当該複数の繊維を除いた部分である支持体部(以下、「起毛基材の支持体部」ともいう)とは、互いに同一の繊維から構成されたものである。
起毛基材を構成する繊維状物としては、上述の複数の繊維を構成するものと同じ天然繊維や化学繊維から形成された繊維状物が挙げられ、織布であってもよく、不織布であってもよい。
【0046】
起毛基材の支持体部の厚さとしては、好ましくは100~50000μm、より好ましくは200~10000μm、更に好ましくは350~5000μm、より更に好ましくは500~1000μmである。
【0047】
起毛繊維の長さの平均は、好ましくは1~5000μm、より好ましくは50~1000μm、更に好ましくは100~800μm、より更に好ましくは150~600μmである。
なお、上記の「起毛繊維の長さ」は、対象となる起毛繊維を直線状に伸ばした際の長手方向の長さを指す。
【0048】
起毛繊維の平均太さは、好ましくは1~70μm、より好ましくは3~60μm、更に好ましくは5~50μm、より更に好ましくは10~30μmである。
【0049】
起毛繊維の平均アスペクト比は、好ましくは5~1000、より好ましくは10~200、更に好ましくは20~100、より更に好ましくは30~70である。
本明細書において、「起毛繊維の平均アスペクト比」は、[起毛繊維の平均長さ]/[起毛繊維の平均太さ]から算出された値を意味する。
【0050】
なお、本明細書において、起毛基材の表面(α)に存在する起毛繊維から、任意に選択した10~100本の起毛繊維の「長さ」、「太さ」及び「アスペクト比」を測定し、これらの平均値を、それぞれ、「起毛繊維の平均長さ」、「起毛繊維の平均太さ」及び「起毛繊維の平均アスペクト比」とみなしてもよい。
また、起毛繊維の長さ、太さ、及びアスペクト値の測定は、対象となる起毛基材を表面(α)に対して垂直に切断した断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡等で観察することで測定することができる。
そして、この断面は、粘着剤層と積層した状態で切断して取得してもよく、粘着剤層の積層前の起毛基材のみを切断して取得してもよい。
【0051】
起毛基材の表面(α)に存在する起毛繊維の密度としては、好ましくは1~1000本/mm2、より好ましくは10~500本/mm2、更に好ましくは50~300本/mm2、より更に好ましくは100~250本/mm2である。
なお、本発明において、起毛基材の表面(α)において任意に選択した所定の領域(例えば、一辺4mmの正方形)内での起毛繊維の密度を、上記「起毛基材の密度」とみなしてもよい。
【0052】
起毛繊維を形成するための起毛処理としては、例えば、繊維状物の少なくとも一方の表面から、繊維状物を構成する繊維の一部を起立させる処理であって、具体的には、繊維状物を構成する繊維のループ(輪)を剪毛する処理、針布ロール、サンドロール、サンドベルト等により、支持体部を構成する繊維の一部を積極的に引き出す処理、長さの異なる糸状物を複数撚ることによりはみ出させる処理等が挙げられる。
【0053】
(植毛基材)
本発明の一態様で用いる植毛基材は、支持体部の表面に植毛繊維を固着する植毛処理が施されて形成された植毛繊維が存在する基材を指す。
【0054】
植毛基材の支持体部としては、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、グラシン紙等の紙材;織布、不織布等の布帛;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、等のポリエステル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂から形成された樹脂フィルム又はシート;アルミニウム、銅、銀、金等の金属材等が挙げられる。
なお、上記紙材に対して、樹脂フィルムの形成材料である上述の熱可塑性樹脂を用いてラミネートしたラミネート紙を支持体部として用いてもよい。
また、上記金属材に対して、上述の熱可塑性樹脂を用いてラミネートしたフィルム又はシート、並びに、上述の樹脂フィルム又はシートの表面に対して、アルミニウム、銅、銀、金等の金属の蒸着処理を行ったフィルム又はシートを支持体部として用いてもよい。
【0055】
植毛繊維としては、上述の複数の繊維を構成するものと同じ天然繊維や化学繊維が挙げられる。
なお、植毛繊維としては、1種からなるものであってもよく、2種以上の繊維を用いた混紡品を用いてもよい。
【0056】
植毛基材の支持体部の厚さとしては、好ましくは2~1000μm、より好ましくは10~500μm、更に好ましくは20~200μm、より更に好ましくは50~100μmである。
【0057】
植毛繊維の平均長さは、好ましくは5~1200μm、より好ましくは10~1000μm、更に好ましくは100~800μm、より更に好ましくは200~600μmである。
なお、上記の「植毛繊維の長さ」は、対象となる植毛繊維を直線状に伸ばした際の長手方向の長さを指す。
【0058】
植毛繊維の平均太さは、好ましくは1~70μm、より好ましくは3~60μm、更に好ましくは5~50μm、より更に好ましくは10~30μmである。
【0059】
植毛繊維の平均アスペクト比は、好ましくは5~1200、より好ましくは8~400、更に好ましくは12~100、より更に好ましくは15~30である。
本明細書において、「植毛繊維の平均アスペクト比」は、[植毛基材の平均長さ]/[植毛繊維の平均太さ]から算出された値を意味する。
【0060】
なお、本明細書において、植毛基材の表面(α)に存在する植毛繊維から、任意に選択した10~100本の植毛繊維の「長さ」、「太さ」及び「アスペクト比」を測定し、これらの平均値を、それぞれ、「植毛繊維の平均長さ」、「植毛繊維の平均太さ」及び「植毛繊維の平均アスペクト比」とみなしてもよい。
また、植毛繊維の長さ、太さ、及びアスペクト値の測定は、対象となる植毛基材を表面(α)に対して垂直に切断した断面を光学顕微鏡や電子顕微鏡等で観察することで測定することができる。
そして、この断面は、粘着剤層と積層した状態で切断して取得してもよく、粘着剤層の積層前の植毛基材のみを切断して取得してもよい。
【0061】
植毛基材の表面(α)に存在する植毛繊維が密度としては、好ましくは1~6000本/mm2、より好ましくは5~4000本/mm2、更に好ましくは10~2000本/mm2、より更に好ましくは100~1000本/mm2である。
なお、本発明において、植毛基材の表面(α)において任意に選択した所定の領域(例えば、一辺1mmの正方形)内での植毛繊維の密度を、上記「植毛基材の密度」とみなしてもよい。
【0062】
支持体部の表面に植毛繊維を形成するための植毛処理としては、一般的な方法を用いることができ、例えば、以下の方法が挙げられる。
・静電植毛方式による方法。
・支持体部として、織布、不織布等の布帛を用いる場合、布帛上に植毛繊維を縫い付ける方法。
・植毛繊維が挿入される穴を有する支持体部を用いる場合、平線と呼ばれる抜き止め具を挟んで、植毛繊維を支持体部上の穴に打ち込む方法、もしくは支持体部上の穴に植毛繊維を挿入後に熱溶着して固着する方法。
【0063】
これらの中でも、支持体部の種類に依らずに植毛繊維の形成が可能であるとの観点から、静電植毛方式による方法が好ましい。
静電植毛方式による方法としては、例えば、静電植毛機の電極に電圧を印加することにより電界を形成し、この電界内に、上述の植毛繊維からなる表面を電着処理したフロックを供給する。また、当該電界内に別途設置した支持体部上に、帯電させた接着剤をスプレー法、ディップ法等によって塗布し、帯電させた接着剤層を形成する。そして、当該フロックを飛翔させて、支持体部上に接着剤を塗布して形成した接着剤層に向けて、当該フロック突き刺した後、接着剤層を乾燥し固化させることで、支持体部上に植毛繊維を植毛することができる。
なお、当該静電植毛方式としては、ダウン式、アップ式、滞留式、及び吹き付け式(ファイバーコート)のいずれの方式であってもよい。
また、植毛後に、支持体部上に存在する余分な植毛繊維を、エアーブローやブラッシングにより除去してもよい。
【0064】
静電植毛方式で使用する植毛繊維としては、適度に帯電可能な繊維が好ましく、具体的には、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、及びアクリルの1種以上から構成された繊維が好ましい。
【0065】
静電植毛方式で使用する接着剤としては、溶剤系接着剤でもよく、エマルション系接着剤であってもよい。
溶剤系接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂溶剤系接着剤、エポキシ樹脂溶剤系接着剤、酢酸ビニル樹脂溶剤系接着剤等が挙げられる。
エマルション系接着剤としては、例えば、アクリル樹脂系エマルジョン接着剤、アクリル酸エステル-酢酸ビニル共重合体系エマルジョン接着剤、酢酸ビニル系エマルジョン接着剤、ウレタン樹脂系エマルジョン接着剤、エポキシ樹脂系エマルジョン接着剤、ポリエステル系エマルジョン接着剤等が挙げられる。
これらの接着剤は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0066】
<粘着剤層>
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限は無く、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルエーテル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤等が挙げられる。
これらの粘着剤は、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0067】
また、当該粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに粘着剤用添加剤を含有してもよい。
このような粘着剤用添加剤としては、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、架橋剤、粘着付与樹脂、軟化剤(可塑剤)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0068】
当該粘着剤は、形成される粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、架橋剤を含有してもよい。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
【0069】
また、当該粘着剤は、使用する粘着性樹脂の種類に応じて、形成される粘着剤層の粘着力を向上させる観点から、粘着付与樹脂を含有してもよい。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3-ペンタジエン等のC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン等のC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂、及びこれらの水素化樹脂等が挙げられる。
【0070】
本発明の一態様の粘着シートにおいて、粘着剤層の厚さは、好ましくは20~1000μm、より好ましくは30~600μm、更に好ましくは50~400μmである。
【0071】
なお、本発明の一態様の粘着シートにおいて、上記要件(I)を満たすように調整し易くする観点から、粘着剤層が、基材の表面(α)上に粘着剤を所定の一方向(x)に沿って塗布して形成された層であることが好ましい。
さらに、粘着剤層が、所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維が存在する基材の表面(α)上に、粘着剤層を当該一方向(x)に沿って塗布して形成された層であることがより好ましい。このように、粘着剤を塗布する前の段階で、すでに所定の一方向(x)に沿って配向している複数の繊維が存在する基材を用いて、その複数の繊維が配向している一方向(x)と同じ方向に沿って粘着剤を塗布して粘着剤層を形成することで、容易に剥離可能であり、粘着力と再剥離性とのバランスに優れた粘着シートとすることができる。
【0072】
<剥離材>
本発明で用いる剥離材としては、両面剥離処理をされた剥離シートや、片面剥離処理された剥離シート等が用いられ、剥離材用基材の表面上に剥離剤を塗布したもの等が挙げられる。
【0073】
剥離材用基材としては、例えば、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又はポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂等のポリエステル樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム等が挙げられる。
剥離剤に含まれる剥離性成分としては、例えば、シリコーン系樹脂、オレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂等のゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0074】
剥離材の厚さは、特に制限ないが、好ましくは10~300μm、より好ましくは25~200μm、更に好ましくは35~150μmである。
【0075】
〔粘着シートの製造方法〕
本発明の粘着シートの製造方法としては、特に制限は無く、例えば、基材の表面(α)上に、上述の粘着剤を塗布して塗布膜を形成し、当該塗布膜から粘着剤層を形成する方法や、基材の表面(α)上の複数の基材を所定の一方向(x)に配向させた上で、当該表面(α)と、予め剥離材の剥離処理面上に形成した粘着剤層とを貼り合わせて製造する方法等が挙げられる。
【0076】
ただし、上記要件(I)を満たす粘着シートを容易に製造する観点から、本発明の粘着シートの製造方法としては、下記工程(1)及び(2)を有することが好ましい。
・工程(1):複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材を用い、当該基材の表面(α)上に、粘着剤を塗布し、塗布膜を形成する工程。
・工程(2):工程(1)で形成した塗布膜から、粘着剤層を形成する工程。
【0077】
工程(1)は、複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材を用い、当該基材の表面(α)上に、粘着剤を塗布し、塗布膜を形成する工程である。
本工程で用いる基材は、上述の通りであるが、上記要件(I)を満たす粘着シートを製造し易くする観点から、粘着剤を塗布する前においても、所定の一方向に沿って配向している複数の繊維が存在する表面(α)を有する基材が好ましい。
【0078】
また、工程(1)において、基材の表面(α)上に、粘着剤を所定の一方向に沿って塗布し、塗布膜を形成することが好ましい。
このように粘着剤を所定の一方向に沿って塗布することで、表面(α)に存在する複数の繊維が、塗布する方向と同じ方向に配向した状態で粘着剤層が形成され易くなる。その結果、この塗布する方向が要件(I)で規定する「所定の一方向(x)」となり、上記要件(I)を満たす粘着シートを製造し易くなる。
なお、粘着剤を塗布する方向である「所定の一方向」については、塗布性と配向のし易さの観点、並びに、容易に剥離可能であり、粘着力と再剥離性とのバランスに優れた粘着シートとする観点から、用いる基材の表面(α)上の繊維に配向が見られる場合は、その繊維の配向に沿って塗布することが好ましい。
【0079】
使用する粘着剤は、固形分濃度100%の粘着剤を用いてもよく、塗布性を向上させる観点から、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の有機溶媒や水を加えて希釈してもよい。
粘着剤の固形分濃度としては、好ましくは10~100質量%、より好ましくは25~80質量%、更に好ましくは45~65質量%である。
【0080】
粘着剤の塗布方法としては、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等が挙げられる。
なお、形成される粘着剤層中に溶媒や低沸点成分が残留することを防ぐために、形成した塗膜に対して、乾燥処理をし、溶媒や低沸点成分を除去することが好ましい。
【0081】
工程(2)は、工程(1)で形成した塗布膜から、粘着剤層を形成する工程である。
工程(1)で粘着剤の溶液を用いている場合は、塗布膜中に残存する溶媒を除去するために、塗布膜を加熱乾燥させて、粘着剤層を形成することが好ましい。
【0082】
〔粘着シートの特性〕
本発明の粘着シートは、剥離する方向によって粘着力が異なるように設計されているため、使用環境に依らず、被着体と貼付時には優れた粘着力が発現されると共に、剥離する際には、所定の方向に沿って剥離すれば、容易に剥離可能であり再剥離性に優れる。
【0083】
本発明の一態様の粘着シートとしては、下記要件(II)を満たすものであることが好ましい。
・要件(II):前記粘着シートを被着体に貼付した後、JIS Z0237:2000の準拠して、剥離角度180°にて、所定の一方向(x)に沿って剥離し測定した当該粘着シートの粘着力(Nx)[N/25mm]とし、所定の一方向(x)とは180°逆の方向に沿って剥離し測定した当該粘着シートの粘着力(Ny)[N/25mm]とした際、下記式(F1)から算出される、粘着力(Nx)及び(Ny)の平均値に対する粘着力変化度が10以上である。
式(F1):粘着力変化度=|Ny-Nx|/((Ny+Nx)/2)×100
【0084】
図6は、粘着力(Nx)及び(Ny)の測定方法を示す、断面模式図である。
図6に示すように、本発明の一態様の粘着シート1の粘着剤層20の貼付表面を被着体100に貼付した場合を考える。
粘着力(Nx)は、
図6(a)に示すように、剥離角度180°にて、繊維(β)が配向している一方向(x)と同じ向きである剥離方向(X)に沿って剥離して測定した粘着力である。
一方、粘着力(Ny)は、
図6(b)に示すように、剥離角度180°にて、繊維(β)が配向している一方向(x)とは180°逆の方向である剥離方向(Y)に沿って剥離して測定した粘着力である。
なお、上記要件(II)で規定の「所定の一方向(x)とは180°逆の方向」とは、
図6(b)の方向(x)と方向(Y)との関係のように、一方向(x)に対するなす角が180°である方向を意味する。
【0085】
本発明の一態様の粘着シートは、一方向(x)に沿って剥離する際の粘着力(Nx)が最小粘着力となる場合がほとんどであり、一方向(x)とは180°逆の方向(y)に沿って剥離する際の粘着力(Ny)が最大粘着力となる場合がほとんどである。
そのため、上記式(F1)から算出される粘着力変化度が大きい程、粘着力が異なるように設計された粘着シートであるといえ、粘着力と再剥離性とのバランスに優れたものといえる。
【0086】
本発明の一態様において、上記式(F1)から算出される粘着力変化度としては、10以上であるが、好ましくは15以上、より好ましくは20以上、更に好ましくは25以上、より更に好ましくは30以上である。
また、被着体と貼付時の粘着力と剥離時の再剥離性とのバランスの観点から、上記式(F1)から算出される粘着力変化度としては、好ましくは200以下、より好ましくは180以下、更に好ましくは150以下、より更に好ましくは130以下である。
【実施例】
【0087】
次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
基材に関する各種物性値の測定方法は以下のとおりである。
【0088】
<基材の支持体部の厚さ、粘着剤層の厚さ>
「基材の支持体部の厚さ」は、JIS K7130に準拠して、定圧厚さ測定器(株式会社テクロック製、製品名「PG-02」)を用いて測定した。
粘着剤層の厚さについては、上記の方法で測定した、粘着シートの厚さ(基材の支持体部と粘着剤層との合計厚さ)と、基材の支持体部の厚さとの差分を、対象となる粘着剤層の厚さとした。
【0089】
<基材の表面(α)に存在する繊維の平均長さ、平均太さ、平均アスペクト比>
走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名「S-4700」)を用いて、粘着剤を塗布する前の各種基材の表面(α)に存在する複数の繊維のうち、無作為に抽出した10本の繊維を観察して、それぞれの「長さ」、「太さ」、「アスペクト比(=長さ/太さ)」を測定した。
そして、10本の繊維の長さ、太さ、及びアスペクト値のそれぞれの平均値を、対象となる複数の繊維の「平均長さ」、「平均太さ」及び「平均アスペクト比」とした。
【0090】
<基材の表面(α)に存在する繊維の密度>
デジタル顕微鏡(キーエンス社製、製品名「デジタルマイクロスコープVHX-5000」、高解像度ズームレンズVHX-ZST100倍)を用いて、粘着剤を塗布する前の各種基材の表面(α)の任意に選択した一辺4mmの正方形で囲まれた領域を、上記デジタル顕微鏡を観察し、深度合成機能によって当該領域のデジタル画像を取得した。
そして、取得したデジタル画像から、領域内に存在する繊維の本数を計数した。
当該領域は5領域選択して、各領域内に確認された繊維の本数の平均値を、対象となる基材の繊維の密度(単位:本/mm2)とした。
【0091】
<粘着剤層の内部にて存在している複数の繊維の観察>
粘着剤層の被着体に貼付する貼付表面から任意に選択した一辺4mmの正方形で囲まれた領域を、デジタル顕微鏡(キーエンス社製、製品名「デジタルマイクロスコープVHX-5000」、高解像度ズームレンズVHX-ZST100倍)を用いて観察した。
【0092】
<繊維(β)の固定端部と最遠部との直線距離、繊維(β)の平均高さ>
一方向(x)に沿って配向している繊維(β)の存在が確認された場合には、貼付表面の一方向(x)に沿った任意の位置において、当該貼付表面に対して垂直に切断した粘着シートの断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、製品名「S-4700」)を用いて観察した際の画像を取得した。
そして、取得した画像から、確認できる無作為に抽出した10本の繊維(β)について、「固定端部と最遠部との直線距離」及び「繊維の高さ」を測定し、その平均値を算出した。
【0093】
実施例及び比較例において使用した基材の詳細は以下のとおりである。
(1)起毛基材
起毛処理が施され、複数の起毛繊維(ポリエステル繊維)が存在する表面(α)を有するポリエステル布(84dtx/48f)。
ポリエステル布の厚さ(起毛基材の支持体部の厚さ)=650μm。
起毛繊維の平均アスペクト比=42、起毛繊維の平均長さ=588μm、起毛繊維の平均太さ=14μm。
起毛繊維の密度=185本/mm2
【0094】
(2)植毛基材
支持体部であるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの一方の表面上に、植毛処理が施され、レーヨン繊維から構成された複数の植毛繊維が存在する表面(α)を有する植毛基材。
PETフィルムの厚さ(植毛基材の支持体部の厚さ)=75μm。
植毛繊維の平均アスペクト比=21.4、植毛基材の平均長さ=300μm、植毛基材の平均太さ=14μm。
植毛繊維の密度=728本/mm2。
【0095】
(3)平坦基材
平坦な表面を有するPETフィルム(東レ株式会社製、商品名「ルミラーT60」)。
PETフィルムの厚さ=50μm。
【0096】
実施例1
上記起毛基材の複数の起毛繊維が存在する表面(α)上に、アプリケータ―を用いて、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名「PAT1」)を、50%以上の起毛繊維が傾斜している一方向(x)(作製する粘着シートの横方向)に沿って塗布し塗布膜を形成し、当該塗布膜を乾燥して、厚さ190μmの粘着剤層を形成した。
なお、形成した粘着剤層の表出している表面を平面視した際に、起毛基材の表面(α)に存在する複数の起毛繊維のうちの90%以上は、一方向(x)に沿って配向している繊維(β)に該当することが確認された。
また、一方向(x)に沿った任意の位置において、貼付表面に対して垂直に切断した粘着シートの断面を観察した際に、確認された繊維(β)の各種測定値は以下のとおりである。
【0097】
・繊維(β)の固定端部と最遠部との直線距離の平均値=380μm
・繊維(β)の固定端部と最遠部との直線距離の平均値と粘着剤層の厚さとの比〔直線距離の平均値/粘着剤層の厚さ〕=2.0
・表面(α)を基準とした繊維(β)の平均高さ=185μm
・繊維(β)の平均高さ/粘着剤層の厚さの比=0.97
・粘着剤層の厚さに対する、表面(α)を基準とした際の繊維の高さの比が0.5以上である繊維(β1)の割合=表面(α)に存在する繊維の総数(100%)に対して、90%以上。
【0098】
そして、形成した粘着剤層の表出している表面と、剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP-PET381031」)の剥離処理面とを貼着して、粘着シート(a)を作製した。
【0099】
実施例2
上記植毛基材の複数の植毛繊維が存在する表面(α)上に、アプリケータ―を用いて、アクリル系エマルション型粘着剤(リンテック株式会社製、商品名「PC-N」)を、50%以上の植毛繊維が傾斜している一方向(x)(作製する粘着シートの横方向)に沿って塗布し塗布膜を形成し、当該塗布膜を乾燥して、厚さ60μmの粘着剤層を形成した。
なお、形成した粘着剤層の表出している表面を平面視した際に、植毛基材の表面(α)に存在する複数の植毛繊維のうちの90%以上は、一方向(x)に沿って配向している繊維(β)に該当することが確認された。
また、一方向(x)に沿った任意の位置において、貼付表面に対して垂直に切断した粘着シートの断面を観察した際に、確認された繊維(β)の各種測定値は以下のとおりである。
【0100】
・繊維(β)の固定端部と最遠部との直線距離の平均値=280μm
・繊維(β)の固定端部と最遠部との直線距離の平均値と粘着剤層の厚さとの比〔直線距離の平均値/粘着剤層の厚さ〕=4.7
・表面(α)を基準とした繊維(β)の平均高さ=58μm
・繊維(β)の平均高さ/粘着剤層の厚さの比=0.97
・粘着剤層の厚さに対する表面(α)を基準とした際の繊維の高さの比が0.5以上である繊維(β1)の割合=表面(α)に存在する繊維の総数(100%)に対して、90%以上。
【0101】
そして、形成した粘着剤層の表出している表面と、剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP-PET381031」)の剥離処理面とを貼着して、粘着シート(b)を作製した。
【0102】
比較例1
上記の平坦基材の凹凸が無く、平坦な表面上に、粘着剤として、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名「PAT1」)を用いて、一方向(x)(作製する粘着シートの横方向)に塗布し塗布膜を形成し、当該塗布膜を乾燥して、厚さ60μmの粘着剤層を形成した。
そして、形成した粘着剤層の表出している表面と、剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP-PET381031」)の剥離処理面とを貼着して、粘着シート(c)を作製した。
【0103】
比較例2
粘着剤として、アクリル系エマルション型粘着剤(リンテック株式会社製、商品名「PC-N」)を用いた以外は、比較例1と同様にして、粘着シート(d)を作製した。
【0104】
比較例3
剥離シート(リンテック株式会社製、商品名「SP-PET381031」)の剥離処理面上に、粘着剤として、アクリル系粘着剤(リンテック株式会社製、商品名「PK」)を用いて、一方向(x)(作製する粘着シートの横方向)に塗布し塗布膜を形成し、当該塗布膜を乾燥して、厚さ20μmの粘着剤層を形成した。
そして、形成した粘着剤層の表出している表面と、上記の平坦基材の凹凸が無く、平坦な表面とを貼着して、粘着シート(e)を作製した。
【0105】
実施例及び比較例で作製した粘着シート(a)~(e)について、以下の手順で粘着力(Nx)及び(Ny)を測定した。測定した粘着力の結果を表1に示す。
【0106】
(1)粘着力(Nx)の測定
実施例及び比較例で作製した粘着シート(a)~(e)を、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で、SUS304(#600研磨面)に、粘着シートの横方向に沿って、2kgゴムローラーを一往復させて貼付し、20分間静置した。
そして、万能型引張試験機(株式会社オリエンテック製、商品名「TENSILON / UTM-4-100」)を用いて、JIS Z0237:2000に準拠し、
図6(a)に示すように、剥離角度180°、剥離速度300mm/分にて、一方向(x)と同じ方向の剥離方向(X)に沿って被着体から剥離した際の粘着力(Nx)(N/25mm)を測定した。
なお、当該粘着力(Nx)の測定は3回行い、それらの平均値を対象となる粘着シートの「粘着力(Nx)」とし、表1には、その値を記載している。
【0107】
(2)粘着力(Ny)の測定
実施例及び比較例で作製した粘着シート(a)~(e)を、23℃、50%RH(相対湿度)の雰囲気下で、SUS304(#600研磨面)に、粘着シートの横方向に沿って、2kgゴムローラーを往復させて貼付し、20分間静置した。
そして、万能型引張試験機(株式会社オリエンテック製、商品名「TENSILON / UTM-4-100」)を用いて、JIS Z0237:2000に準拠し、
図6(b)に示すように、剥離角度180°、剥離速度300mm/分にて、一方向(x)とは180°逆の方向である剥離方向(Y)に沿って被着体から剥離した際の粘着力(Ny)(N/25mm)を測定した。
なお、当該粘着力(Ny)の測定は3回行い、それらの平均値を対象となる粘着シートの「粘着力(Ny)」とし、表1には、その値を記載している。
【0108】
(3)粘着力変化度
上記(1)及び(2)で測定した、粘着力(Nx)及び(Ny)の値に基づき、下記式(F1)から、粘着力(Nx)及び(Ny)の平均値に対する粘着力変化度を算出した。結果を表1に示す。
式(F1):粘着力変化度=|Ny-Nx|/((Ny+Nx)/2)×100
【0109】
【0110】
表1より、実施例1~2で作製した粘着シート(a)~(b)は、剥離する方向によって、粘着力が異なる結果となった。
一方、比較例1~3で作製した粘着シート(c)~(e)は、粘着シート(a)~(b)のように、剥離する方向によって粘着力が大きく変化するような現象は見られなかった。
【符号の説明】
【0111】
1、2、3 粘着シート
10 基材
10a 表面(α)
12、12a、12b 繊維
121a、121b 固定端部
122a、122b 端部
123b 最遠部
124b 最頂部
13a、13b 直線
14a、14b 正射影
141a、141b 垂線の足
20、20’ 粘着剤層
30、30’ 剥離材
100 被着体
(X)、(Y) 剥離方向