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特許7074408複数のドライブユニットを備えるラウドスピーカユニット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】複数のドライブユニットを備えるラウドスピーカユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/02 20060101AFI20220517BHJP
   H04R 9/04 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H04R9/02 103Z
H04R9/04 104Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019516497
(86)(22)【出願日】2017-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 NL2017050627
(87)【国際公開番号】W WO2018056814
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】2017514
(32)【優先日】2016-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】519100170
【氏名又は名称】メイト ホールディング ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】チーク, マティアス ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】チーク, ティモシー ルーベン
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-279797(JP,A)
【文献】特開平10-327486(JP,A)
【文献】特表2005-517306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0141926(US,A1)
【文献】特開平10-290492(JP,A)
【文献】特開2005-197950(JP,A)
【文献】特開2010-246087(JP,A)
【文献】特開2000-299897(JP,A)
【文献】特開平09-322294(JP,A)
【文献】実開昭54-084932(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/02
H04R 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動膜(2)と、前記振動膜(2)を駆動する複数のドライブユニット(5)とを備えるラウドスピーカユニットであって、
前記複数のドライブユニット(5)がそれぞれ、n個のボイスコイル(3)と、少なくともn+1個の磁石(4)とを有し、nが以上の整数であり、
前記少なくともn+1個の磁石(4)が、軸線方向に磁化された磁石であって、前記少なくともn+1個の磁石(4)の内の隣接するものが、同様の極部が互いに対向するように軸線方向に積層されており、前記少なくともn+1個の磁石(4)が、前記積層で、磁石離間距離(d)を空けて離間されており、前記磁石離間距離(d)が、前記n個のボイスコイル(3)の前記積層の方向の幅(w)と実質的に等しく、
前記少なくともn+1個の磁石(4)が、スペーサ(7)により、前記磁石離間距離(d)で固定されており、前記スペーサ(7)が非磁性材料からな
前記n個のボイスコイル(3)が、軸線方向に、コイル離間距離(d )を空けて離間されており、前記コイル離間距離(d )は、前記磁石(4)の前記積層の方向の幅(w )と実質的に等しく、前記n個のボイスコイル(3)の、互いに対向するものが、巻き回し方向が逆である、ラウドスピーカユニット。
【請求項2】
前記n個のボイスコイル(3)が、前記振動膜(2)に機械的に固定されている、請求項1に記載のラウドスピーカユニット。
【請求項3】
前記n個のボイスコイル(3)が、円筒形の支持部材(6)に取り付けられている、請求項1または2に記載のラウドスピーカユニット。
【請求項4】
前記複数のドライブユニット(5)は並列構成に配置されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のラウドスピーカユニット。
【請求項5】
前記少なくともn+1個の磁石(4)がネオジム磁石である、請求項1~4のいずれか一項に記載のラウドスピーカユニット。
【請求項6】
前記少なくともn+1個の磁石(4)が円筒形磁石である、請求項1~5のいずれか一項に記載のラウドスピーカユニット。
【請求項7】
前記少なくともn+1個の磁石(4)が、スペーサ(7)により、前記磁石離間距離(d)で固定されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のラウドスピーカユニット。
【請求項8】
前記少なくともn+1個の磁石(4)が、ラウドスピーカベースフレーム(8)に固定的に取り付けられている、請求項1~7のいずれか一項に記載のラウドスピーカユニット。
【請求項9】
前記複数のドライブユニット(5)それぞれの、前記n個のボイスコイル(3)が、並列回路接続で、互いに電気的に接続されている、請求項1~のいずれか1項に記載のラウドスピーカユニット。
【請求項10】
前記複数のドライブユニット(5)それぞれの、前記n個のボイスコイル(3)が、並列および直列の合成回路接続で、互いに電気的に接続されている、請求項1~のいずれか1項に記載のラウドスピーカユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動膜と、振動膜を駆動する複数のドライブユニットとを備えるラウドスピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許公開公報WO2013/047792は、複数のドライブユニットが振動板に並列に接続された、軽量、肉薄設計のスピーカを開示する。ドライブユニットにはそれぞれ、スピーカのフレームに接続されて、並列で互いに近傍に配置された複数のコイル部材と、振動板に取り付けられた磁石を有する複数の磁石部材とが設けられている。本開示では、コイル部材は複数の直列接続巻線を有する。
【0003】
米国特許公開公報US2006/222200は、磁気回路と、振動子とを有する動電型ラウドスピーカユニットを開示する。振動子は、コイルボビンの一部に巻き回されて固定された2つのボイスコイルを有する、単一のコイルボビンを備える。2つのボイスコイルは、磁石の両極に対向する。磁石部材は、ボイスコイルから離間した位置で、コイルボビンにさらに固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、効率と出力の点で性能が改善された、改良ラウドスピーカユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、上述のように定義されたラウドスピーカユニットが提供される。複数のドライブユニットがそれぞれ、n個のボイスコイルと、少なくともn+1個の磁石とを備え、nが1以上の整数であり、少なくともn+1個の磁石が、軸線方向に磁化された磁石であって、少なくともn+1個の磁石の内の隣接するものが、同様の極部が互いに対向するように軸線方向に積層され、少なくともn+1個の磁石が、積層で、磁石離間距離を空けて離間され、磁石離間距離は、n個のボイスコイルの積層の方向の幅と実質的に等しい。
【0006】
本発明の構造と、要素の相互配向により、より効率的かつ費用効果の高いラウドスピーカユニットが実現可能となる。
【0007】
本発明を、下記添付の図面を参照して、より詳細に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明ラウドスピーカユニットの例示的実施形態を示す斜視図である。
図1B図1Aのラウドスピーカユニット1の上部の側面図である。
図1C図1Aのラウドスピーカユニット1の底部の、対応する側面図である。
図2A】本発明ラウドスピーカユニット1の更なる実施形態の側面図を示す。
図2B図2Aの線IIB-IIBに沿った、ラウドスピーカユニットの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、構造および電気的設計がシンプルであり、したがって従来技術のラウドスピーカユニットを技術面およびコスト効率で凌駕する、改良したラウドスピーカユニットを提供する。従来技術の動電型ラウドスピーカユニットは、磁石と、磁気ギャップに磁場を導くポールピース(バックプレートとトッププレート)の磁気回路とを有する。音波を生成するコーンに機械的に結合されたボイスコイルが、磁気ギャップ内に配置される。静電型および平面型ラウドスピーカユニットでは、別の原理が利用される。動電型ラウドスピーカユニットでは、ラウドスピーカユニットの出力を上げると、インダクタンスが増加し、感度が比較的制限され、出力可能な最大音量を考慮すると、構造上大きくならざるをえない。静電型および平面型ラウドスピーカユニットは、ダイナミックレンジが制限され、周波数応答が低くて悪いという欠点がある。
【0010】
本発明の実施形態では、インダクタンスが高くなりすぎない、より高出力で効率的なラウドスピーカユニットが提供される。即ち、インダクタンスを(大幅に)増加させずに出力を上げることができる。さらに、感度も上がり、閉磁気回路が存在しないため、ラウドスピーカユニットの寸法が比較的小さくできる。複数のドライブユニットが利用されるので、音を生成する振動膜の支持がより均等に分布する。これは、振動膜の寿命と、求められる剛性に良い影響がある(振動膜の移動質量を非効率に上げる必要なく、振動膜共振が抑えられる)。これにより、振動膜、延いてはラウドスピーカユニット全体の寿命および効率向上が図られる。
【0011】
図1Aは、本発明のラウドスピーカユニット1の例示的実施形態を示す斜視図である。図中、見易さのため、ドライブユニット5の対応するボイスコイル3が設けられた(平面型)振動膜2が、ラウドスピーカユニット1のその他部位から離間している。図1Bは、図1Aのラウドスピーカユニット1の上部の側面図である。図1Cは、図1Aのラウドスピーカユニット1の底部の、対応する側面図である。なお、振動膜2は、図1Aから図1Cに示す実施形態の、平坦な振動膜2とは異なる形状を有してもよい。
【0012】
本発明の実施形態のラウドスピーカユニット1は、振動膜2と、振動膜2を駆動する複数のドライブユニット(図1Cでは矢印5で示される)。複数のドライブユニット5はそれぞれ、少なくとも1つのボイスコイル3と、少なくとも2つの磁石4とを備える。一実施形態において、さらにより一般的にも、ボイスコイル(3)の数はnで、磁石(4)の数は少なくともn+1である(nは1以上の整数)。少なくとも2つの(n+1、n≧1)磁石4は、軸線方向に磁化され、軸線方向に積層された磁石4であって、少なくとも2つの磁石4のうちの隣接するものは、同様の磁極部(N/S)が互いに対向している(即ち、逆極性で配置されている)。積層において、少なくとも2つの磁石4が、磁石離間距離dを空けて離間している。磁石離間距離dは、少なくとも1つの(n、n≧1)ボイスコイル3の積層方向の幅wと実質的に等しい。この構成ではトッププレート、ボトムプレート、ポールピース、またはその他磁場誘導要素が不要であるため、簡単、簡潔、経済的な構造が実現できる。さらに、2つの磁石4の間のボイスコイル3の構造的配置は、ラウドスピーカユニット1の性能を大幅に向上するように、可動範囲を倍にできる可能性を開く。
【0013】
図1Bの側面図に示すように、少なくとも1つのボイスコイル3は振動膜2に機械的に固定される。したがって、振動膜2は、少なくとも1つのボイスコイル3と同様に動く。ボイスコイル3は、磁石4よりも軽量に設計できる。これにより、ラウドスピーカユニット1のダイナミック応答の向上が図られる。
【0014】
例示的実施形態では、少なくとも1つのボイスコイル3は円筒形の支持部材6に取り付けられ、例えば円筒形の支持部材6の外面に巻き回されたコイルとして提供される。円筒形の支持部材6は、例えばその内径を適切に選択することで、少なくとも2つの磁石4に対して移動可能である。
【0015】
図1Aの斜視図に最も良く示すように、複数のドライブユニット5(その磁石4が明確に見えるようになっている)が、並列構成で配置されている。ドライブユニット5は、例えば格子または円形状に、(振動膜2の表面領域全体で)均一に分布してもよい。さらに別の実施形態では、ドライブユニット5をグループ化してもよいし、非均一に分布してもよい。これにより、本ラウドスピーカユニット1により特定の音響特性が実現し得る。
【0016】
ドライブユニット5の磁石4は、例えば、磁石4の体積に対して高磁場を実現する、ネオジム磁石で実現されてもよい。さらなる実施形態では、少なくとも2つの磁石4は、対応するボイスコイル3と良好に相互作用する、円筒形磁石である。より一般的には、少なくとも2つの磁石4は、円形、楕円形、正方形、長方形、または多角形断面を有する軸線方向磁石である(この場合、少なくとも1つのボイスコイル3の形状は、少なくとも2つの磁石4の形状に一致するように選択される)。
【0017】
図1Cの側面図に最も良く示すように、少なくとも2つの磁石4は、スペーサ7により、磁石離間距離dを空けて固定される。本発明の実施形態では、特に磁気回路が不要であり、例えばプラスチック材料のようなスペーサ7は非磁性材料であってもよい。これにより、ラウドスピーカユニット1はコスト効率よく組立、製造できる。さらなる実施形態では、スペーサ7は、隣接する磁石4の互いに対向する同極(N/S)により磁力を利用した、実体のないスペーサであってもよい。その場合、ラウドスピーカユニット内に小さな構造要素を配置して、各ドライブユニット5の少なくとも2つの磁石4を定位置に配置してもよい。
【0018】
図1Cにさらに、少なくとも2つの磁石4がラウドスピーカベースフレーム8に固定的に取り付けられる実施形態を示す。ラウドスピーカベースフレーム8は、プラスチックのような非磁性材料であってもよいが、構造的理由で、金属(さらには磁性)材料製であってもよい。
【0019】
さらに、ラウドスピーカユニット1の構造的剛性を向上するために、第1リング要素9と、上部リング要素10とを含む追加構造要素9から11が設けられてもよい。第1リング要素9と、上部リング要素10とを、ラウドスピーカベースフレーム8に機械的に相互結合するように、垂直柱11が設けられてもよい。上部リング要素10は、振動膜2の固定リング部を支持するように設けられてもよい。
【0020】
図2Aは、本発明ラウドスピーカユニット1の更なる実施形態の側面図を示し、図2Bは、図2Aの線IIB-IIBに沿った、ラウドスピーカユニット1の断面図を示す。この実施形態では、各ドライブユニット5に、より多くのボイスコイル3、したがってより多くの磁石4が設けられてもよい。具体的には、4つのドライブユニット5のそれぞれに、3つのボイスコイル3と、4つの磁石4が設けられてもよい。この実施形態を成すさらなる要素は、図1Aから図1Cの実施形態で説明した要素と同様であって、同じ参照符号で示される。
【0021】
本実施形態群の説明において、一般的内容として、少なくとも1つのボイスコイル3は、n個のボイスコイル3と、n+1個の磁石4を含み、nが2以上の整数であり得る。図2Aおよび2Bの実施形態では、n=3である。n個のボイスコイル3が、コイル離間距離dにおいて、軸線方向に配置される。コイル離間距離dは磁石4の積層方向の幅wと実質的に等しい。本明細書の記載で使用される寸法(d、d、w、w)は、図2Aおよび2Bの側面図および断面図に明確に示されている。
【0022】
さらなる実施形態では、互いに隣接するnボイスコイル3は、巻き回し方向が逆となる。各ドライブユニット5の積層体の磁石4の極性の向き(即ち、N/S磁極が互いに対向する)と合わせて、振動膜2の動きを増大させることができ、ラウドスピーカユニット1の性能が向上することが明らかである。
【0023】
上記図を参照して上述した実施形態の全てについて、さらなる実施形態も考えられる。さらなる実施形態の1つとして、複数のドライブユニット5のそれぞれの少なくとも1つのボイスコイル3は互いに並列回路接続で、互いに電気的に接続される。これにより、並列配置された全てのドライブユニット5が適切かつ同様に動作することが保証される。或いは、複数のドライブユニット5のそれぞれの少なくとも1つのボイスコイル3は、並列および直列の合成回路接続で、互いに電気的に接続される。この実施形態では、特定の需要または仕様に合わせて、ラウドスピーカユニット1の特性を変形可能となる。
【0024】
本発明を、図に示す複数の例示的実施形態を参照に上述した。部位または要素の一部を変形や別の形態が可能であり、添付の請求項に定義の保護の範囲に含まれる.
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B