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特許7074440クラッタ除去装置及びクラッタ除去プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】クラッタ除去装置及びクラッタ除去プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/34 20060101AFI20220517BHJP
   G01S 7/32 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
G01S7/34 200
G01S7/32 210
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017177141
(22)【出願日】2017-09-14
(65)【公開番号】P2019052937
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2020-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】田村 英樹
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-155728(JP,A)
【文献】特開平07-055925(JP,A)
【文献】特開2006-275899(JP,A)
【文献】特開2000-346936(JP,A)
【文献】特開2012-108075(JP,A)
【文献】特開平06-214007(JP,A)
【文献】特開2003-107147(JP,A)
【文献】米国特許第05311184(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置が搭載された移動体の傾斜角度に基づいて、海面及び/又は地面に対する前記レーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得部と、
前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰部と、
前記レーダ装置が搭載された前記移動体の高度に基づいて、海面及び/又は地面からの前記レーダ装置の送受信アンテナの高度に関するレーダ高度情報を取得するレーダ高度情報取得部と、を備え、
前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いていると判断したときに、前記レーダ高度情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が海面及び/又は地面から低いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を速やかにする一方、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が海面及び/又は地面から高いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を緩やかにする
ことを特徴とするクラッタ除去装置。
【請求項2】
海面及び/又は地面に対する前記レーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度と、海面及び/又は地面からの前記レーダ装置の送受信アンテナの高度と、前記レーダ装置から反射物体までの距離と前記レーダ装置の受信強度の減衰量との関係と、を対応付ける減衰量テーブルを格納する減衰量テーブル格納部、をさらに備え、
前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報及び前記減衰量テーブルに基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくし、
前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いていると判断したときに、前記レーダ高度情報及び前記減衰量テーブルに基づいて、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が海面及び/又は地面から低いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を速やかにする一方、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が海面及び/又は地面から高いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を緩やかにする
ことを特徴とする、請求項に記載のクラッタ除去装置。
【請求項3】
レーダ装置が搭載された移動体の傾斜角度に基づいて、海面及び/又は地面に対する前記レーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得ステップと、
前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰ステップと、
前記レーダ装置が搭載された前記移動体の高度に基づいて、海面及び/又は地面からの前記レーダ装置の送受信アンテナの高度に関するレーダ高度情報を取得するレーダ高度情報取得ステップと、をコンピュータに実行させ、
前記レーダ受信強度減衰ステップは、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いていると判断したときに、前記レーダ高度情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が海面及び/又は地面から低いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を速やかにする一方、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が海面及び/又は地面から高いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を緩やかにする
ことを特徴とするクラッタ除去プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クラッタによる信号を除去し目標による信号を抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
クラッタによる信号を除去し目標による信号を抽出する技術が従来から存在する(例えば、特許文献1等を参照。)。ここで、レーダ装置からの距離が近いほど、背景反射による受信強度が高くなり、そこで、レーダ装置からの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。すると、背景反射による受信強度が除去され、さらに、クラッタによる受信強度が除去され、よって、目標による受信強度が抽出される。
【0003】
従来技術の受信強度の減衰方法を図1に示す。図1の上段に示したように、全体の受信強度の減衰前では、クラッタ及び目標による受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び目標による受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び目標がレーダ表示装置に表示される。図1の中段に示したように、レーダ装置からの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。図1の下段に示したように、全体の受信強度の減衰後では、クラッタ及び目標による受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置に表示されず、目標による受信強度は表示閾値より大きく、目標はレーダ表示装置に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6061588号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術の左舷及び右舷での受信強度の減衰方法を図2に示す。図2の第1段に示したように、レーダシステムRが搭載された船舶Sが、右舷方向に角度θだけ傾斜すると、左舷側の送受信ビームBLの指向方向は、海面及び/又は地面Lから離れるが、右舷側の送受信ビームBRの指向方向は、海面及び/又は地面Lに向く。
【0006】
図2の第2段を用いて、全体の受信強度の減衰前について説明する。左舷では、クラッタ及び船舶SLによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び船舶SLによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び船舶SLがレーダ表示装置に表示される。右舷では、クラッタ及び船舶SRによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び船舶SRによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び船舶SRがレーダ表示装置に表示される。ここで、船舶Sが右舷方向に角度θだけ傾斜しているため、右舷での背景反射及びクラッタによる受信強度は、左舷での背景反射及びクラッタによる受信強度より高い。
【0007】
図2の第3段を用いて、全体の受信強度の減衰量について説明する。左舷及び右舷でも、レーダシステムRからの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。
【0008】
図2の第4段を用いて、全体の受信強度の減衰後について説明する。左舷では、クラッタ及び船舶SLによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置に表示されず、船舶SLによる受信強度は表示閾値より大きく、船舶SLはレーダ表示装置に表示される。右舷では、クラッタ及び船舶SRによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、船舶SRによる受信強度は表示閾値より大きく、船舶SRはレーダ表示装置に表示され、クラッタによる受信強度も表示閾値より大きく、クラッタもレーダ表示装置に表示される。これは、船舶Sが右舷方向に角度θだけ傾斜しているが、全体の受信強度の減衰量が左舷及び右舷でも同様であるためである。
【0009】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、レーダ装置が海面及び/又は地面に対して傾斜したとしても、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向くほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする一方、送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れるほど、全体の受信強度の減衰量を小さくすることとした。
【0011】
具体的には、本開示は、海面及び/又は地面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得部と、前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰部と、を備えることを特徴とするクラッタ除去装置である。
【0012】
また、本開示は、海面及び/又は地面に対するレーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度に関するレーダ傾斜情報を取得するレーダ傾斜情報取得ステップと、前記レーダ装置からの距離が近い反射物体による前記レーダ装置の受信強度ほど大きく減衰させるにあたり、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくするレーダ受信強度減衰ステップと、を順にコンピュータに実行させるためのクラッタ除去プログラムである。
【0013】
この構成によれば、レーダ装置が海面及び/又は地面に対して傾斜したとしても、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することができる。
【0014】
また、本開示は、海面及び/又は地面からの前記レーダ装置の送受信アンテナの高度に関するレーダ高度情報を取得するレーダ高度情報取得部、をさらに備え、前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いていると判断したときに、前記レーダ高度情報に基づいて、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が海面及び/又は地面から低いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を速やかにする一方、前記レーダ装置の送受信アンテナの高度が海面及び/又は地面から高いほど、前記レーダ装置から反射物体までの距離の増加に対する前記レーダ装置の受信強度の減衰量の減少を緩やかにすることを特徴とするクラッタ除去装置である。
【0015】
この構成によれば、レーダ装置が海面及び/又は地面から任意の高度にあっても、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することができる。
【0016】
また、本開示は、海面及び/又は地面に対する前記レーダ装置の送受信アンテナの傾斜角度と、前記レーダ装置から反射物体までの距離と前記レーダ装置の受信強度の減衰量との関係と、を対応付ける減衰量テーブルを格納する減衰量テーブル格納部、をさらに備え、前記レーダ受信強度減衰部は、前記レーダ傾斜情報及び前記減衰量テーブルに基づいて、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向くほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を大きくする一方、前記レーダ装置の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れるほど、前記レーダ装置の受信強度の減衰量を小さくすることを特徴とするクラッタ除去装置である。
【0017】
この構成によれば、レーダ装置の運用前に減衰量テーブルを予め格納することにより、レーダ装置の傾斜時に全体の受信強度の減衰量を即時に設定することができる。
【発明の効果】
【0018】
このように、本開示は、レーダ装置が海面及び/又は地面に対して傾斜したとしても、レーダ装置から見た全ての方向でほぼ同様に背景反射及びクラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来技術の受信強度の減衰方法を示す図である。
図2】従来技術の左舷及び右舷での受信強度の減衰方法を示す図である。
図3】第1実施形態のレーダシステムの構成を示す図である。
図4】第1実施形態の減衰量テーブルの内容を示す図である。
図5】第1実施形態のクラッタ除去の手順を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態の左舷及び右舷での受信強度の減衰方法を示す図である。
図7】第1実施形態の左舷及び右舷での受信強度の減衰方法を示す図である。
図8】第2実施形態のレーダシステムの構成を示す図である。
図9】第2実施形態の減衰量テーブルの内容を示す図である。
図10】第2実施形態のクラッタ除去の手順を示すフローチャートである。
図11】第2実施形態の低高度及び高高度での受信強度の減衰方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0021】
(第1実施形態)
第1実施形態のレーダシステムの構成を図3に示す。レーダシステムRは、レーダ送受信装置1、クラッタ除去装置2、レーダ表示装置3及び傾斜検出装置4から構成される。レーダ送受信装置1は、レーダ送信部11、送信アンテナ12、受信アンテナ13、レーダ減衰器14及びレーダ受信部15から構成される。クラッタ除去装置2は、傾斜情報取得部21、減衰量テーブル格納部22、受信強度減衰部23、クラッタ除去部24及び受信信号処理部25から構成される。クラッタ除去装置2は、クラッタ除去プログラムをコンピュータにインストールすることにより、実現することができる。
【0022】
レーダ送信部11は、送信アンテナ12を使用し、目標及びクラッタへの照射信号を送信する。レーダ受信部15は、受信アンテナ13を使用し、目標及びクラッタからの反射信号を受信する。レーダ減衰器14は、レーダ送受信装置1からの距離が近い反射物体によるレーダ送受信装置1の受信強度ほど大きく減衰させる。
【0023】
クラッタ除去部24は、クラッタによる受信強度を除去したうえで、目標による受信強度を抽出する。受信信号処理部25は、クラッタ除去以外の受信信号処理を実行する。レーダ表示装置3は、クラッタを表示せず、目標のみを表示する。
【0024】
傾斜検出装置4は、海面及び/又は地面に対するレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の傾斜角度に関する傾斜情報を生成する。傾斜検出装置4として、ロール方向及びピッチ方向の傾斜角度を検出するジャイロ装置などが挙げられる。
【0025】
傾斜情報取得部21は、海面及び/又は地面に対するレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の傾斜角度に関する傾斜情報を取得する。減衰量テーブル格納部22は、海面及び/又は地面に対するレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の傾斜角度と、レーダ送受信装置1から反射物体までの距離とレーダ送受信装置1の受信強度の減衰量との関係と、を対応付ける減衰量テーブルを格納する。
【0026】
受信強度減衰部23は、傾斜情報及び減衰量テーブルに基づいて、レーダ送受信装置1の受信強度の減衰量を設定したうえで、レーダ減衰器14を制御する。具体的には、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向くほど、レーダ送受信装置1の受信強度の減衰量を大きくする。その一方で、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れるほど、レーダ送受信装置1の受信強度の減衰量を小さくする。
【0027】
まず、レーダ送受信装置1の運用前に、減衰量テーブルを予め格納する段階について説明する。第1実施形態の減衰量テーブルの内容を図4に示す。原則として、レーダ送受信装置1からの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。
【0028】
送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に平行であり、送受信ビームの傾斜角度がθ=0であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性及び送受信ビームの傾斜角度θ=0に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をAに設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をRに設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)に設定する。ここで、指数dは、レーダ方程式を考慮して4程度であってもよく、海面及び/又は地面での面内反射を考慮して2程度であってもよい。
【0029】
送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いており、送受信ビームの傾斜角度がθ<0であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性及び送受信ビームの傾斜角度θ<0に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をAに設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をRに設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d-δに設定する。ここで、減衰量Aは、減衰量Aより大きく、最大距離Rは、最大距離Rより長く、指数d-δは、指数dより小さい。
【0030】
送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面から離れており、送受信ビームの傾斜角度がθ>0であるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性及び送受信ビームの傾斜角度θ>0に基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をAに設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をRに設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d+δに設定する。ここで、減衰量Aは、減衰量Aより小さく、最大距離Rは、最大距離Rより短く、指数d+δは、指数dより大きい。
【0031】
次に、レーダ送受信装置1の傾斜時に、全体の受信強度の減衰量を即時に設定する段階について説明する。第1実施形態のクラッタ除去の手順を図5に示す。第1実施形態の左舷及び右舷での受信強度の減衰方法を図6及び図7に示す。
【0032】
図6の第1段に示したように、レーダシステムRが搭載された船舶Sが、右舷方向に角度θだけ傾斜すると、左舷側の送受信ビームBLの指向方向は、海面及び/又は地面Lから離れるが、右舷側の送受信ビームBRの指向方向は、海面及び/又は地面Lに向く。
【0033】
図6の第2段を用いて、全体の受信強度の減衰前について説明する。左舷では、クラッタ及び船舶SLによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び船舶SLによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び船舶SLがレーダ表示装置3に表示される。右舷では、クラッタ及び船舶SRによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び船舶SRによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び船舶SRがレーダ表示装置3に表示される。ここで、船舶Sが右舷方向に角度θだけ傾斜しているため、右舷での背景反射及びクラッタによる受信強度は、左舷での背景反射及びクラッタによる受信強度より高い。
【0034】
図6の第3段を用いて、全体の受信強度の減衰量について説明する。傾斜情報取得部21は、傾斜角度θに関する傾斜情報を取得する(ステップS1)。受信強度減衰部23は、図4に示した減衰量テーブルを参照し(ステップS2)、傾斜情報及び減衰量テーブルに基づいて、全体の受信強度の減衰量を設定する(ステップS3)。
【0035】
左舷では、送受信ビームBLの傾斜角度が+θである。よって、図4に示した減衰量テーブルのうちの、送受信ビームの傾斜角度がθ(=+θ)であるときの、全体の受信強度の減衰量が参照される。そして、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量がA(=A)に設定され、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離がR(=R)に設定され、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d+δに設定される。
【0036】
右舷では、送受信ビームBRの傾斜角度が-θである。よって、図4に示した減衰量テーブルのうちの、送受信ビームの傾斜角度がθ(=-θ)であるときの、全体の受信強度の減衰量が参照される。そして、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量がA(=A)に設定され、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離がR(=R)に設定され、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d-δに設定される。
【0037】
図6の第4段を用いて、全体の受信強度の減衰後について説明する。クラッタ除去部24は、クラッタによる受信強度を除去する(ステップS4)。受信信号処理部25は、クラッタ除去以外の受信信号処理を実行する(ステップS5)。
【0038】
左舷では、クラッタ及び船舶SLによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置3に表示されず、船舶SLによる受信強度は表示閾値より大きく、船舶SLはレーダ表示装置3に表示される。右舷でも、クラッタ及び船舶SRによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置3に表示されず、船舶SRによる受信強度は表示閾値より大きく、船舶SRはレーダ表示装置3に表示される。
【0039】
船舶Sの傾斜角度θは、刻々と変化する。そこで、クラッタ除去処理を続行するときには(ステップS6でNO)、ステップS1~S6を繰り返す。一方で、クラッタ除去処理を終了するときには(ステップS6でYES)、クラッタ除去プログラムを終了する。
【0040】
ここで、船舶Sの傾斜角度θの変化周波数は、送受信アンテナ12、13の回転周波数(数Hz程度)と比較して小さいと考えられる。よって、送受信アンテナ12、13の1回転周期において、ステップS1~S6を何回も実行する必要はない。
【0041】
送受信アンテナ12、13の回転周期P1では、船舶Sの傾斜角度θが正の方向に小さく、全体の受信強度の減衰量を右舷では左舷より若干大きく設定する。送受信アンテナ12、13の回転周期P2では、船舶Sの傾斜角度θが正の方向に大きく、全体の受信強度の減衰量を右舷では左舷より十分大きく設定する。送受信アンテナ12、13の回転周期P3では、船舶Sの傾斜角度θが0であり、全体の受信強度の減衰量を右舷と左舷とで等しく設定する。送受信アンテナ12、13の回転周期P4では、船舶Sの傾斜角度θが負の方向に大きく、全体の受信強度の減衰量を左舷では右舷より十分大きく設定する。送受信アンテナ12、13の回転周期P5では、船舶Sの傾斜角度θが負の方向に小さく、全体の受信強度の減衰量を左舷では右舷より若干大きく設定する。
【0042】
第1実施形態では、レーダ送受信装置1の運用前に、減衰量テーブルを予め格納する。ここで、第1の変形例として、レーダ送受信装置1の運用時に、クラッタ及び背景反射による受信強度の減衰程度がレーダ送受信装置1から見た全ての方向でほぼ同様になるように、全体の受信強度の減衰量をフィードバック制御してもよい。或いは、第2の変形例として、レーダ送受信装置1の運用時に、海面及び/又は地面Lの状態(例えば、海面での波高、波長及び波速など)に応じて、全体の受信強度の減衰量を機械学習してもよい。
【0043】
(第2実施形態)
第2実施形態のレーダシステムの構成を図8に示す。レーダシステムRは、傾斜検出装置4に代えて傾斜・高度検出装置4’を備える。クラッタ除去装置2は、傾斜情報取得部21に代えて傾斜・高度情報取得部21’を備える。クラッタ除去装置2は、クラッタ除去プログラムをコンピュータにインストールすることにより、実現することができる。
【0044】
傾斜・高度検出装置4’は、海面及び/又は地面に対するレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の傾斜角度に関する傾斜情報と、海面及び/又は地面からのレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の高度に関する高度情報と、を生成する。傾斜・高度検出装置4’として、ロール方向及びピッチ方向の傾斜角度を検出するジャイロ装置と、レーダを用いた高度計測装置と、の組み合わせなどが挙げられる。
【0045】
傾斜・高度情報取得部21’は、海面及び/又は地面に対するレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の傾斜角度に関する傾斜情報と、海面及び/又は地面からのレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の高度に関する高度情報と、を取得する。実施形態2の減衰量テーブル格納部22は、実施形態1の減衰量テーブル格納部22に加えて、海面及び/又は地面に対するレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の傾斜角度と、海面及び/又は地面からのレーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の高度と、レーダ送受信装置1から反射物体までの距離とレーダ送受信装置1の受信強度の減衰量との関係と、を対応付ける減衰量テーブルを格納する。
【0046】
実施形態2の受信強度減衰部23は、実施形態1の受信強度減衰部23に加えて、傾斜情報、高度情報及び減衰量テーブルに基づいて、レーダ送受信装置1の受信強度の減衰量を設定したうえで、レーダ減衰器14を制御する。具体的には、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1の送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いていると判断したとする。そのときに、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の高度が海面及び/又は地面から低いほど、レーダ送受信装置1から反射物体までの距離の増加に対するレーダ送受信装置1の受信強度の減衰量の減少を速やかにする。その一方で、受信強度減衰部23は、レーダ送受信装置1の送受信アンテナ12、13の高度が海面及び/又は地面から高いほど、レーダ送受信装置1から反射物体までの距離の増加に対するレーダ送受信装置1の受信強度の減衰量の減少を緩やかにする。
【0047】
まず、レーダ送受信装置1の運用前に、減衰量テーブルを予め格納する段階について説明する。第2実施形態の減衰量テーブルの内容を図9に示す。原則として、レーダ送受信装置1からの距離が近いほど、全体の受信強度の減衰量を大きくする。
【0048】
送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いており、送受信ビームの傾斜角度がθ<0であるとともに、送受信アンテナ12、13の高度が海面及び/又は地面にほぼ等しいHであるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性、送受信ビームの傾斜角度θ<0及び送受信アンテナ12、13の高度Hに基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をAに設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をRに設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d-δに設定する。ここで、図9の左欄に示した減衰量Aは、図4の左欄に示した減衰量Aと同様である。
【0049】
送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いており、送受信ビームの傾斜角度がθ<0であるとともに、送受信アンテナ12、13の高度が海面及び/又は地面から低いHであるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性、送受信ビームの傾斜角度θ<0及び送受信アンテナ12、13の高度Hに基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をA’に設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をR’に設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d-δLに設定する。ここで、減衰量A’は、減衰量Aより小さく、最大距離R’は、最大距離Rより長く、指数d-δLは、指数d-δより小さい。その理由については、図11を用いて後述する。
【0050】
送受信ビームの指向方向が海面及び/又は地面に向いており、送受信ビームの傾斜角度がθ<0であるとともに、送受信アンテナ12、13の高度が海面及び/又は地面から高いHであるときについて説明する。送受信ビームのゲインの方向依存性、送受信ビームの傾斜角度θ<0及び送受信アンテナ12、13の高度Hに基づいて、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量をA”に設定し、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離をR”に設定し、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d-δHに設定する。ここで、減衰量A”は、減衰量A’より小さく、最大距離R”は、最大距離R’より長く、指数d-δHは、指数d-δLより小さい。その理由については、図11を用いて後述する。
【0051】
次に、レーダ送受信装置1の傾斜時に、全体の受信強度の減衰量を即時に設定する段階について説明する。第2実施形態のクラッタ除去の手順を図10に示す。第2実施形態の低高度及び高高度での受信強度の減衰方法を図11に示す。
【0052】
図11の第1段に示したように、レーダシステムRが搭載された飛行体Fが、右翼方向に角度θだけ傾斜すると、右翼側の送受信ビームBDの指向方向は、海面及び/又は地面Lに向く。そして、レーダシステムRが搭載された飛行体Fが、低高度H(高高度H)を飛行するときに、右翼側の送受信ビームBDの指向性は、レーダシステムRから水平方向に近距離(遠距離)で海面及び/又は地面Lに交差する。
【0053】
図11の第2段を用いて、全体の受信強度の減衰前について説明する。低高度では、クラッタ及び目標Tによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び目標Tによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び目標Tがレーダ表示装置3に表示される。高高度でも、クラッタ及び目標Tによる受信強度が背景反射による受信強度に重畳され、背景反射による受信強度に重畳されたクラッタ及び目標Tによる受信強度が表示閾値より大きく、クラッタ及び目標Tがレーダ表示装置3に表示される。ここで、低高度での背景反射による受信信号は、高高度での背景反射による受信信号より、強度が高い。そして、低高度での海面及び/又は地面クラッタによる受信信号は、高高度での海面及び/又は地面クラッタによる受信信号より、強度が高いが距離が短い。
【0054】
図11の第3段を用いて、全体の受信強度の減衰量について説明する。傾斜・高度情報取得部21’は、傾斜角度θに関する傾斜情報と、高度Hに関する高度情報と、を取得する(ステップS1’)。受信強度減衰部23は、図9に示した減衰量テーブルを参照し(ステップS2)、傾斜情報、高度情報及び減衰量テーブルに基づいて、全体の受信強度の減衰量を設定する(ステップS3’)。
【0055】
低高度では、送受信ビームBDの傾斜角度が-θであり、送受信アンテナ12、13の高度がHである。よって、図9に示した減衰量テーブルのうちの、送受信ビームの傾斜角度がθ(=-θ)であり、送受信アンテナの高度がH(=H)であるときの、全体の受信強度の減衰量が参照される。そして、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量がA(=A’)に設定され、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離がR(=R’)に設定され、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d-δLに設定される。
【0056】
高高度では、送受信ビームBDの傾斜角度が-θであり、送受信アンテナ12、13の高度がHである。よって、図9に示した減衰量テーブルのうちの、送受信ビームの傾斜角度がθ(=-θ)であり、送受信アンテナの高度がH(=H)であるときの、全体の受信強度の減衰量が参照される。そして、(1)レーダ送受信装置1の近傍での全体の受信強度の減衰量がA(=A”)に設定され、(2)全体の受信強度の減衰を行うレーダ送受信装置1からの最大距離がR(=R”)に設定され、(3)(全体の受信強度の減衰量A)∝1/(レーダ送受信装置1からの距離R)d-δHに設定される。
【0057】
図11の第4段を用いて、全体の受信強度の減衰後について説明する。クラッタ除去部24は、クラッタによる受信強度を除去する(ステップS4)。受信信号処理部25は、クラッタ除去以外の受信信号処理を実行する(ステップS5)。
【0058】
低高度では、クラッタ及び目標Tによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置3に表示されず、目標Tによる受信強度は表示閾値より大きく、目標Tはレーダ表示装置3に表示される。高高度でも、クラッタ及び目標Tによる受信強度が背景反射による受信強度から分離され、クラッタによる受信強度は表示閾値より小さく、クラッタはレーダ表示装置3に表示されず、目標Tによる受信強度は表示閾値より大きく、目標Tはレーダ表示装置3に表示される。
【0059】
飛行体Fの傾斜角度θ及び高度Hは、刻々と変化する。そこで、クラッタ除去処理を続行するときには(ステップS6でNO)、ステップS1’~S6を繰り返す。一方で、クラッタ除去処理を終了するときには(ステップS6でYES)、クラッタ除去プログラムを終了する。
【0060】
ここで、飛行体Fの傾斜角度θ及び高度Hの変化周波数は、送受信アンテナ12、13の回転周波数(数Hz程度)と比較して小さいと考えられる。よって、送受信アンテナ12、13の1回転周期において、図7と同様にしてステップS1’~S6を何回も実行する必要はない。
【0061】
第2実施形態では、レーダ送受信装置1の運用前に、減衰量テーブルを予め格納する。ここで、第1の変形例として、レーダ送受信装置1の運用時に、クラッタ及び背景反射による受信強度の減衰程度がレーダ送受信装置1から見た全ての方向でほぼ同様になるように、全体の受信強度の減衰量をフィードバック制御してもよい。或いは、第2の変形例として、レーダ送受信装置1の運用時に、海面及び/又は地面Lの状態(例えば、海面での波高、波長及び波速など)に応じて、全体の受信強度の減衰量を機械学習してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本開示のクラッタ除去装置及びクラッタ除去プログラムは、揺れの激しい船舶及び飛行体などに搭載されるレーダ装置に対して、特に有用に適用することができる。
【符号の説明】
【0063】
R:レーダシステム
S、SL、SR:船舶
F:飛行体
T:目標
BL、BR、BD:送受信ビーム
L:海面及び/又は地面
1:レーダ送受信装置
2:クラッタ除去装置
3:レーダ表示装置
4:傾斜検出装置
4’:傾斜・高度検出装置
11:レーダ送信部
12:送信アンテナ
13:受信アンテナ
14:レーダ減衰器
15:レーダ受信部
21:傾斜情報取得部
21’:傾斜・高度情報取得部
22:減衰量テーブル格納部
23:受信強度減衰部
24:クラッタ除去部
25:受信信号処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11