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特許7074471電気機械的動力伝達チェーン用の電気システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】電気機械的動力伝達チェーン用の電気システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220517BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
H02J7/00 303C
H02J7/34 B
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017243702
(22)【出願日】2017-12-20
(65)【公開番号】P2018102121
(43)【公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】16205805.1
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517446016
【氏名又は名称】ダンフォス モバイル エレクトリフィケーション オサケユイチア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100180806
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】アンティ タルキアイネン
(72)【発明者】
【氏名】アンティ スンマネン
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/073100(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0195085(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0321630(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1静電容量性回路(101、201)と、前記第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置(102、202)と、を有する電気システム(100、200)であって、前記コンバータ装置は、前記第1静電容量性回路の第1直流電圧(UDC1)を前記1つ又は複数の電気機械に適した1つ又は複数の電圧に変換するように構成されている、電気システムにおいて、
前記電気システムは、
・第2静電容量性回路(103、203)と、
・前記第1及び第2静電容量性回路の間において電気エネルギーを転送する直流電圧コンバータ(104、204)と、
・前記第1直流電圧の変化に応答して前記直流電圧コンバータを制御して、前記第1直流電圧をその基準値(U DC1 REF )に接近させる第1コントローラ(112)、及び前記第2静電容量性回路の第2直流電圧(UDC2)の変化に応答して前記コンバータ装置を制御して、前記第2直流電圧をその基準値(U DC2 REF )に接近させる第2コントローラ(113)を含む制御システム(105、205)と、
を更に有し、
前記第1コントローラは、前記第1直流電圧を第1既定電圧範囲において維持するように、且つ、前記第2直流電圧が、前記第1静電容量性回路と前記1つ又は複数の電気機械の間において転送される電力の変動に応答して変動することを許容するように、前記第2コントローラが、前記第2直流電圧の前記変化に反応するよりも、より高速で、前記第1直流電圧の前記変化に反応することを特徴とする、電気システム。
【請求項2】
前記制御システムは、前記第2直流電圧が第2既定電圧範囲外である際よりも、前記第2直流電圧が前記第2既定電圧範囲にある際に、より低速で、前記第2直流電圧の前記変化に反応するように構成されている、請求項1に記載の電気システム。
【請求項3】
前記制御システムは、少なくとも部分的に、前記第2直流電圧(U DC2 その基準値(U DC2 REF からの逸脱(U DC2 -U DC2 REF に基づいて前記コンバータ装置を制御するように構成されており、且つ、前記制御システムは、前記逸脱が正である際には、第1利得係数(G 1 により、且つ、前記逸脱が負である際には、前記第1利得係数とは異なる第2利得係数(G 2 により、前記逸脱を重み付けするように構成され、前記第2直流電圧の前記変化に反応する前記第2コントローラの速さは、前記逸脱が正である際には前記第1利得係数に、前記逸脱が負である際には前記第2利得係数に依存する、請求項1又は2に記載の電気システム。
【請求項4】
前記制御システムは、前記第1直流電圧が既定の過電圧限度を超過している状況に応答して、前記第1静電容量性回路への電気エネルギーの転送を低減するように前記コンバータ装置を制御するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項5】
前記制御システムは、前記第1直流電圧が既定の不足電圧限度未満に降下した状況に応答して、前記第1静電容量性回路からの電気エネルギーの転送を低減するように前記コンバータ装置を制御するように構成されている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項6】
前記第2静電容量性回路の静電容量は、前記第1静電容量性回路の静電容量を上回っている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項7】
前記第2静電容量回路は、少なくとも1つの電気二重層コンデンサを有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項8】
前記コンバータ装置は、発電機として機能する前記電気機械のうちの第1のものからの電気エネルギーを前記第1静電容量性回路に転送する第1コンバータ段(106)と、電気モーターとして機能する前記電気機械のうちの第2のものに前記第1静電容量回路からの電気エネルギーを転送する第2コンバータ段(107)と、を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項9】
前記制御システム(105)は、少なくとも部分的に前記第2直流電圧に基づいて前記電気機械のうちの前記第1のもの用のパワー基準を判定するように、且つ、前記パワー基準と、前記パワー基準に実質的に等しい機械的動力を生成する内燃機関のトルク-速度動作点を表現する予め保存されたデータと、に基づいて前記電気機械の前記第1のもの用のトルク及び速度基準を判定するように構成されている、請求項8に記載の電気システム。
【請求項10】
前記コンバータ装置は、前記電気機械が発電機として機能する際に、前記電気機械から前記第1静電容量性回路に電気エネルギーを転送すると共に、前記電気機械が電気モーターとして機能する際には、前記第1静電容量性回路から前記電気機械に電気エネルギーを転送するコンバータ段(206)を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電気システム。
【請求項11】
前記制御システム(205)は、少なくとも部分的に、前記第2直流電圧、前記電気機械に機械的に接続された内燃機関のパワー制御信号、及び前記電気機械の支配的な回転速度に基づいて電気機械用のトルク基準を判定するように構成されている、請求項10に記載の電気システム。
【請求項12】
電気機械的動力伝達チェーンであって、
・1つ又は複数の内燃機関から機械的動力を受け取ると共に、機械的動力を1つ又は複数のアクチュエータに供給する1つ又は複数の電気機械(108、109、208)と、
・対象の電気機械が電気モーターとして機能する際に、電力を前記1つ又は複数の電気機械のそれぞれに供給すると共に、前記対象の電気機械が発電機として機能する際に、前記1つ又は複数の電気機械のそれぞれから電力を受け取る請求項1乃至11のいずれか1項に記載の電気システム(100、200)と、
を有する、電気機械的動力伝達チェーン。
【請求項13】
第1静電容量性回路と、1つ又は複数の電気機械と、前記第1静電容量性回路と前記1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置と、を有する電気機械的動力伝達チェーンを制御する方法であって、前記コンバータ装置は、前記第1静電容量性回路の第1直流電圧(UDC1)を前記1つ又は複数の電気機械に適した1つ又は複数の電圧に変換している、方法において、
第1コントローラにおいて、前記第1直流電圧をその基準値(U DC1 REF )に接近させるために、前記第1直流電圧の変化に応答して前記第1静電容量性回路と第2静電容量性回路の間において電気エネルギーを転送するように直流電圧コンバータを制御するステップ(301)と、
第2コントローラにおいて、第2直流電圧をその基準値(U DC2 REF )に接近させるために、前記第2静電容量性回路の前記第2直流電圧(UDC2)の変化に応答して前記コンバータ装置を制御するステップ(302)と、
を有し、
前記第1コントローラは、前記第1直流電圧を既定の電圧範囲において維持するように、且つ、前記第2直流電圧が、前記第1静電容量性回路と前記1つ又は複数の電気機械の間において転送される電力の変動に応答して変動することを許容するように、前記第2コントローラが、前記第2直流電圧の前記変化に対して反応するよりも、より高速で、前記第1直流電圧の前記変化に反応することを特徴とする、方法。
【請求項14】
第1静電容量性回路と、1つ又は複数の電気機械と、前記第1静電容量性回路と前記1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置と、を有する電気機械的動力伝達チェーンを制御するコンピュータプログラムであって、前記コンバータ装置は、前記第1静電容量性回路の第1直流電圧(UDC1)を前記1つ又は複数の電気機械に適した1つ又は複数の電圧に変換するように構成されている、コンピュータプログラムにおいて、
前記コンピュータプログラムは、
・前記第1直流電圧の変化に応答して前記第1静電容量性回路と第2静電容量性回路の間において電気エネルギーを転送するように直流電圧コンバータを制御して、前記第1直流電圧をその基準値(U DC1 REF )に接近させるための第1コントローラとして動作し、且つ、
・前記第2静電容量性回路の第2直流電圧(UDC2)の変化に応答して前記コンバータ装置を制御して、前記第2直流電圧をその基準値(U DC2 REF )に接近させるための第2コントローラとして動作する
ように、プログラム可能なプロセッサを制御するコンピュータ実行可能な命令を有し、
前記第1コントローラは、前記第1直流電圧を既定の電圧範囲において維持するように、且つ、前記第2直流電圧が、前記第1静電容量性回路と前記1つ又は複数の電気機械の間において転送される電力の変動に応答して変動することを許容するように、前記第2コントローラが、前記第2直流電圧の前記変化に対して反応するよりも、より高速で、前記第1直流電圧の前記変化に反応することを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムを記録する一時的ではないコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気機械的動力伝達チェーンの一部分を構成するのに適した電気システムに関する。更には、本開示は、電気機械的動力伝達チェーンを制御する方法及びコンピュータプログラムにも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車輪やチェーントラックなどのアクチュエータを駆動する電気機械的動力伝達チェーンは、通常、静電容量性回路と、1つ又は複数の電気機械と、静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置と、を有する。電気機械的動力伝達チェーンは、直列型の伝達チェーンであってもよく、この場合には、電気機械のうちの少なくとも1つは、発電機として動作し、且つ、コンバータ装置は、電気エネルギーをそれぞれの発電機から静電容量性回路に転送する1つ又は複数のコンバータ段と、静電容量性回路から、アクチュエータを駆動する電気モーターとして機能するそれぞれの電気機械に電気エネルギーを転送する1つ又は複数のその他のコンバータ段と、を有する。それぞれの発電機は、例えば、電気励起型同期発電機又は永久磁石同期発電機であってもよく、且つ、発電機と静電容量性回路の間のコンバータ段は、例えば、パルス幅変調「PWM(Pulse Width Modulation)」コンバータ段であってもよい。それぞれの電気モーターは、例えば、永久磁石又は誘導モーターであってもよく、且つ、静電容量性回路と電気モーターの間のコンバータ段は、例えば、PWMコンバータ段であってもよい。それぞれの発電機は、内燃機関によって駆動することが可能であり、内燃機関は、例えば、ディーゼル機関、オットーサイクル機関、又はタービン機関であってもよい。
【0003】
又、電気機械的動力伝達チェーンは、電気機械が、内燃機関に、且つ、更には、アクチュエータに、機械的に接続される並列型の伝達チェーンであってもよい。電気機械は、しばしば、静電容量性回路及び/又は電気機械的動力伝達チェーンの別のエネルギーストレージを充電する発電機として動作し、且つ、しばしば、高機械出力パワーが必要とされる際に静電容量性回路及び/又はその他のエネルギーストレージから電気エネルギーを受け取ると共に内燃機関を支援する電気モーターとして動作する。又、電気機械的動力伝達チェーンは、組合せ型の直列-並列伝達チェーンであってもよく、この場合には、1つ又は複数の電気機械は、内燃機関及びアクチュエータの両方に機械的に接続され、且つ、1つ又は複数のその他の電気機械は、直列伝達チェーンと同一の方式により、1つ又は複数のその他のアクチュエータを駆動するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の種類の電気機械的動力伝達チェーンは、従来の機械的動力伝達チェーンとの比較において利点を提供し、その理由は、例えば、内燃機関の回転速度-トルク動作点を内燃機関の動作効率の観点において相対的に自由に選択することができると共に、これにより、燃料費用の節約を実現することができるからである。多くのケースにおいて、この利点は、上述の静電容量性回路が、低機械出力パワーのみが必要とされる際には充電され、且つ、高機械出力パワーが必要とされる際には放電されるように、実現されている。換言すれば、静電容量性回路は、エネルギーバッファとして使用されている。但し、静電容量性回路のエネルギーバッファとしての使用には課題が伴っている。静電容量性回路によって保存される電気エネルギーは、静電容量性回路の電圧の二乗に正比例しており、且つ、従って、静電容量性回路の直流電圧は、静電容量性回路がエネルギーバッファとして機能する際に変化する。この直流電圧の変動が、電気機械的動力伝達チェーンの電気機械の制御を複雑化させる。更には、上述の直流電圧が低い状況においては、電気機械内の磁束が、電気機械の動作効率及び最大トルクが減少するほどに小さくなる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下は、様々な本発明の実施形態のいくつかの態様の基本的な理解を提供するべく、単純化された概要を提示している。この概要は、本発明の広範な大要ではない。これは、本発明の主要な又は重要な要素を識別することを意図してはおらず、且つ、本発明の範囲を線引きすることを意図してもいない。以下の概要は、本発明の例示用の実施形態の更に詳細な説明に対する前置きとして、本発明のいくつかの概念を単純化された形態において提示するものに過ぎない。
【0006】
本発明によれば、電気機械的動力伝達チェーンの一部分を構成するのに適した新しい電気システムが提供され、この場合に、電気機械的動力伝達チェーンは、直列型伝達チェーン、並列型伝達チェーン、又は組合せ型の直列-並列伝達チェーンであってもよい。
【0007】
本発明による電気システムは、
・第1静電容量性回路と、
・第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置であって、第1静電容量性回路の第1直流電圧を1つ又は複数の電気機械に適した1つ又は複数の電圧に変換するように構成されたコンバータ装置と、
・第2静電容量性回路と、
・第1及び第2静電容量性回路の間において電気エネルギーを転送する直流電圧コンバータと、
・第1直流電圧の変化に応答して直流電圧コンバータを制御すると共に第2静電容量回路の第2直流電圧の変化に応答してコンバータ装置を制御する制御システムと、
を有する。
【0008】
制御システムは、第1直流電圧を既定の電圧範囲において維持するように、且つ、第2直流電圧が、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において転送される電力の変動に応答して変動することを許容するように、第2直流電圧の変化に対してよりも、より高速で、第1直流電圧の変化に反応する。
【0009】
上述の電気システムを有する電気機械的動力伝達チェーンにおいては、第2静電容量性回路は、ピークパワーニーズに応答するエネルギーバッファとして使用することが可能であり、この場合には、第1静電容量性回路の直流電圧を実質的に一定に維持することができる。第1静電容量性回路の実質的に一定の直流電圧は、電気機械の制御を促進する。更には、第1静電容量性回路の直流電圧の大幅な減少を回避できることから、対応した電気機械の動作効率及び最大トルクの減少を回避することもできる。
【0010】
又、本発明によれば、新しい電気機械的動力伝達チェーンも提供され、この電気機械的動力伝達チェーンは、直列型の伝達チェーン、並列型の伝達チェーン、又は組合せ型の直列-並列伝達チェーンであってもよい。本発明による電気機械的動力伝達チェーンは、
・1つ又は複数の内燃機関から機械的動力を受け取り、且つ、この機械的動力を、例えば、1つ又は複数の車輪及び/又は1つ又は複数のチェーントラックなどの、1つ又は複数のアクチュエータに供給する1つ又は複数の電気機械と、
・対象の電気機械が電気モーターとして機能する際に、電力を1つ又は複数の電気機械のそれぞれに提供し、且つ、対象の電気機械が発電機として機能する際には、1つ又は複数の電気機械のそれぞれから電力を受け取る本発明による電気システムと、
を有する。
【0011】
又、本発明によれば、第1静電容量性回路と、1つ又は複数の電気機械と、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置と、を有する電気機械的動力伝達チェーンを制御する新しい方法も提供され、この場合に、コンバータ装置は、第1静電容量性回路の第1直流電圧を1つ又複数の電気機械に適した1つ又は複数の電圧に変換している。本発明による方法は、
・第1直流電圧の変化に応答して第1静電容量性回路と第2静電容量性回路の間において電気エネルギーを転送するように、直流電圧コンバータを制御するステップと、
・第1直流電圧を既定の電圧範囲において維持するように、且つ、第2直流電圧が、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において転送される電力の変動に応答して変動することを許容するように、直流電圧コンバータの制御が、コンバータ装置の制御が第2直流電圧の変化に対して反応するよりも高速で第1直流電圧の変化に反応するように、第2静電容量性回路の第2直流電圧の変化に応答してコンバータ装置を制御するステップと、
を有する。
【0012】
又、本発明によれば、第1静電容量性回路と、1つ又は複数の電気機械と、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置と、を有する電気機械的動力伝達チェーンを制御する新しいコンピュータシステムも提供され、この場合に、コンバータ装置は、第1静電容量性回路の第1直流電圧を1つ又は複数の電気機械に適した1つ又は複数の電圧に変換するように構成されている。本発明によるコンピュータプログラムは、
・第1直流電圧の変化に応答して第1静電容量性回路と第2静電容量性回路の間において電気エネルギーを転送するように、直流電圧コンバータを制御し、且つ、
・第1直流電圧を既定の電圧範囲において維持するように、且つ、第2直流電圧が、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において転送される電力の変動に応答して変動することを許容するように、直流電圧コンバータの制御が、コンバータ装置の制御が第2直流電圧の変化に反応するよりも高速で第1直流電圧の変化に反応するように、第2静電容量性回路の第2直流電圧の変化に応答してコンバータ装置を制御する、
ように、プログラム可能なプロセッサを制御するコンピュータ実行可能命令を有する。
【0013】
本発明によるコンピュータプログラムプロダクトは、本発明によるコンピュータプログラムによってエンコーディングされた、例えば、コンパクトディスク「CD(compact Disk)」などの、不揮発性コンピュータ可読媒体を有する。
【0014】
本発明のいくつかの例示用の且つ非限定的な実施形態については、添付の従属請求項において記述されている。
【0015】
構造及び動作方法の両方に関する本発明の様々な例示用の且つ非限定的な実施形態については、その更なる目的及び利点と共に、添付図面との関連において参照された際に、特定の例示用の且つ非限定的な実施形態に関する以下の説明から、十分に理解することができよう。
【0016】
「有する(to comprise)」及び「含む(to include)」という動詞は、本明細書においては、記述されていない特徴の存在を排除しないと共に必要ともしない開かれた限定(open limitations)として使用されている。従属請求項において記述されている特徴は、そうではない旨が明示的に記述されていない限り、相互に自由に組み合わせることができる。更には、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の、即ち、単数形の、使用は、本明細書の全体を通じて、複数形を排除するものではないことを理解されたい。
【0017】
以下、例の意味において、且つ、以下の添付図面を参照し、本発明の例示用の且つ非限定的な実施形態及びその利点について更に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による電気システムを有する電気機械的動力伝達チェーンの概略図を示す。
図2】本発明の例示用の且つ非限定的な別の実施形態による電気システムを有する電気機械的動力伝達チェーンの概略図を示す。
図3】電気機械的動力伝達チェーンを制御する本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下において付与される説明において提供されている特定の例は、添付の請求項の範囲及び/又は適用可能性を限定するものとして解釈してはならない。以下において付与される説明において提供されている例のリスト及び群は、そうではない旨が明示的に記述されていない限り、すべてを網羅したものではない。
【0020】
図1は、本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による、電気機械108及び109と、電気システム100と、を有する電気機械的動力伝達チェーンの概略図を示している。この例示用のケースにおいては、電気機械的動力伝達チェーンは、直列型の伝達チェーンであり、この場合に、電気機械108は、内燃機関110によって駆動される発電機として機能しており、且つ、電気機械108は、アクチュエータ111を駆動する電気モーターとして主に機能している。アクチュエータ111は、例えば、車両又は可動式作業機械、油圧ポンプ、或いは、機械的動力によって駆動されるなんらかのその他の装置の、例えば、車輪又はチェーントラックであってもよい。電気機械109は、制動動作においては、一時的に発電機として機能することができる。電気システム100は、第1静電容量性回路101と、第1静電容量性回路101と電気機械108及び109の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置102と、を有する。コンバータ装置102は、静電容量性回路101の直流電圧UDC1を電気機械108及び109に適した電圧に変換するように構成されている。電気機械108は、例えば、電気励起型同期機械、永久磁石同期機械、非同期機械、又はリラクタンス機械であってもよい。電気機械108は、コンバータ装置102が、電気機械108に無効電力を供給する能力を有しているか、或いは、無効電力を電気機械108に供給するその他の手段が存在している、ケースにおいては、非同期機械又はリラクタンス機械であってもよい。電気機械109は、例えば、電気励起型同期機械、永久磁石同期機械、非同期機械、又はリラクタンス機械であってもよい。又、本発明の一実施形態による電気システムを有する電気機械的動力伝達チェーンは、1つ又は複数の直流「DC」機械を有することも可能である。
【0021】
電気システム100は、第2静電容量性回路103と、静電容量性回路101及び103の間において電気エネルギーを転送する直流電圧コンバータ104と、を有する。電気システム100は、静電容量性回路101の直流電圧UDC1の変化に応答して直流電圧コンバータ104を制御する第1コントローラ112を有する制御システム105を有する。制御システム105は、静電容量性回路103の直流電圧UDC2の変化に応答してコンバータ装置102を制御する第2コントローラ113を更に有する。コントローラ112は、例えば、直流電圧UDC1の計測値を受け取ると共に直流電圧コントローラ104の動作を制御することによって直流電圧UDC1をその基準値UDC1 REFにおいて維持するべく試みる比例及び統合型「PI(Proportional and Integrative)」コントローラを有することができる。対応する方式により、コントローラ113も、例えば、直流電圧UDC2の計測値を受け取ると共にコンバータ装置102の動作を制御することによって直流電圧UDC2をその基準値UDC2 REFにおいて維持するべく試みる比例及び積分型「PI」コントローラを有することができる。コントローラ112及び113は、直流電圧UDC1を既定の電圧範囲において、即ち、基準値UDC1 REFの近傍において、維持するように、且つ、直流電圧UDC2が、第1静電容量性回路101と電気機械108及び109の間において転送される電力の変動に応答して変動することを同時に許容するように、コントローラ112が、コントローラ113が直流電圧UDC2の変化に反応するよりも高速で直流電圧UDC1の変化に反応するように、構成されている。
【0022】
図1において、静電容量性回路101と電気機械108及び109の間の電力転送は、電気エネルギーがコンバータ装置102に向かって流れる際には正であるP1によって表記されている。静電容量性回路101及び103の間の電力転送は、電気エネルギーが静電容量性回路103から離れるように流れる際には正であるP2によって表記されている。静電容量性回路101の直流電圧UDC1は、P2が実質的にP1である際に、即ち、d((1/2)C2DC2 2)/dt=C2DC2dUDC2/dt=P1である際に、実質的に一定に留まり、この場合に、(1/2)C2DC2 2は、静電容量性回路103によって保存された電気エネルギーであり、且つ、C2は、静電容量性回路103の静電容量である。直流電圧コンバータ104が、直流電圧UDC1を実質的一定に維持するように制御されている際には、P2、即ち、d((1/2)C2DC2 2)/dtは、実質的にP1であり、且つ、従って、静電容量性回路103は、アクチュエータ111のピークパワーニーズに応答するエネルギーバッファとして使用される。実質的に一定の直流電圧UDC1は、電気機械108及び109の制御を促進する。更には、直流電圧UDC1の大幅な減少を回避できることから、電気機械108及び109の動作効率及び最大トルクの対応した減少を回避することもできる。
【0023】
エネルギーバッファとして使用されうる静電容量性回路103の静電容量C2は、有利には、その電圧UDC1が好ましくは実質的に一定に維持されている静電容量性経路101の静電容量を上回っている。静電容量性回路103は、例えば、1つ又は複数の電気二重層コンデンサ「EDLC(Electric Double-Layer Capacitor)」を有することができる。多くの環境において、電気二重層コンデンサは、「スーパーコンデンサ」と呼称されている。直流電圧コンバータ104は、静電容量性回路103との間において電気エネルギーを転送する能力を有する双方向コンバータである。直流電圧UDC1が直流電圧UDC2よりも大きいケースにおいては、直流電圧コンバータ104は、例えば、それぞれのインバータブランチの直流電圧の極が静電容量性回路101に接続され、それぞれのインバータブランチの交流電圧の極が、インダクタコイルを介して静電容量性回路104の正の極に接続され、且つ、静電容量性回路103の負の極が、それぞれのインバータブランチの負の直流電圧の極に接続されるように、インバータブリッジの1つ又は複数のインバータブランチと、1つ又は複数のインダクタコイルと、により、実装することができる。但し、直流電圧コンバータ104は、多くの異なる方式によって実装することができることに留意されたい。
【0024】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による電気システムにおいては、制御システム105のコントローラ113は、直流電圧UDC2が既定の電圧範囲外にある際よりも、直流電圧UDC2が既定の電圧範囲にある際に、より低速で、直流電圧UDC2の変化に反応するように構成されている。コントローラ113は、直流電圧UDC2が既定の電圧範囲にある際には、より低速となるように構成されていることから、静電容量性回路103によって保存された電気エネルギー(1/2)C2DC2 2は、事実上、直流電圧UDC2が既定の電圧範囲にある際のアクチュエータ111のピークパワーニーズに応答している。その一方において、直流電圧UDC2は、既定の電圧範囲において十分良好に維持することが可能であり、その理由は、コントローラ113が、直流電圧UDC2が既定の電圧範囲を離脱する傾向を有する際に、より高速で応答するからである。コントローラ113は、例えば、コントローラ113の制御利得が、直流電圧UDC2が既定の電圧範囲外にある際よりも、直流電圧UDC2が既定の電圧範囲にある際に、より小さくなるように、直流電圧UDC2が既定の電圧範囲にある際に、より低速となるように構成することができる。
【0025】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による電気システムにおいては、制御システム105のコントローラ113は、少なくとも部分的に、基準UDC2 REFからの直流電圧UDC2の逸脱、即ち、UDC2-UDC2 REF、に基づいて、コンバータ装置113を制御するように構成されている。コントローラ113は、逸脱が正である際には、第1利得係数G1により、且つ、逸脱が負である際には、第1利得係数とは異なる第2利得係数G2により、逸脱UDC2-UDC2 REFを重み付けするように構成されている。第1利得係数G1は、第1利得係数G2のものとは異なる値を有しており、その理由は、基準UDC2 REFが、通常は、直流電圧UDC2の許容された変動範囲の中央に位置していないからである。基準UDC2 REFが直流電圧UDC2の許容された変動範囲の中央に位置していない状況は、エネルギーの基準レベル(1/2)C2DC2 REF 2が、エネルギーの許容された変動範囲の中央に位置している際に、存在する。多くのケースにおいては、エネルギーが、エネルギーの基準レベルの下方又は上方において類似の安全性マージンを有していることが、即ち、エネルギーの基準レベルが、エネルギーの許容された変動範囲の中央に位置していることが、有利である。これらのケースにおいては、基準UDC2 REFの上方の直流電圧UDC2の安全性マージンは、基準UDC2 REFの下方の直流電圧UDC2の安全性マージンよりも狭い。これは、エネルギーが、直流電圧UDC2に正比例しておらず、その代わりに、直流電圧UDC2の二乗に正比例しているという事実の結果である。UDC2の相対的に狭い安全性マージンにおいて、即ち、逸脱UDC2-UDC2 REFが正である際に、使用される第1利得係数G1は、好ましくは、UDC2の相対的に広い安全性マージンにおいて、即ち、逸脱UDC2-UDC2 REFが負である際に、使用される第2利得係数G2よりも、大きな値を有する。従って、この例示用のケースにおいては、コントローラ113は、UDC2UDC2 REFを下回っており、且つ、UDC2の変化が、エネルギー(1/2)C2DC2 2の相対的に小さな変化に対応している際よりも、UDC2がUDC2 REFを上回っており、且つ、これにより、UDC2の変化が、エネルギー(1/2)C2DC2 2の相対的に強力な変化に対応している際に、より高速で、UDC2の変化に反応する。
【0026】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による電気システムにおいては、制御システム105のコントローラ112は、過電圧保護を提供するように構成されている。コントローラ112は、直流電圧UDC1が既定の過電圧限度を超過した状況に応答して静電容量性回路101に対する電力転送を低減するように、コンバータ装置102を制御するように構成されている。図1に示されている表記を使用すれば、第1静電容量性回路101に対する電力転送は、P2-P1である。従って、第1静電容量性回路101に対する電力転送は、電力転送P1を増大させるようにコンバータ装置102を制御することにより、低減することができる。電力転送P1は、発電機として機能する電気機械108から取得される電力が減少し、且つ/又は、電気モーターとして機能する電気機械109に供給される電力が増大した際に、増大する。電気機械108から取得される電力は、電気機械108のトルク基準を減少させることにより、減少させることができる。
【0027】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による電気システムにおいては、制御システム105のコントローラ102は、不足電圧保護を提供するように構成されている。コントローラ112は、直流電圧UDC1が既定の不足電圧限度未満に降下した状況に応答して、静電容量性回路101からの電力転送を低減するように、コンバータ装置102を制御するように構成されている。図1に示されている表記法を使用すれば、第1静電容量性回路101からの電力転送は、P1-P2である。従って、第1静電容量性回路101からの電力転送は、電力転送P1を減少させるようにコンバータ装置102を制御することにより、低減することができる。電力転送P1は、発電機として機能する電気機械108から取得される電力が増大し、且つ/又は、電気モーターとして機能する電気機械109に供給される電力が減少した際に、減少する。電気機械108から取得される電力は、電気機械108のトルク基準を増大させることにより、増大させることができる。
【0028】
図1に示されている例示用の電気機械的動力伝達チェーンにおいては、コンバータ装置102は、発電機として機能する電気機械108から容量性回路101に電気エネルギーを転送する第1コンバータ段106と、電気モーターとして機能する電気機械109に静電容量性回路101から電気エネルギーを転送する第2コンバータ段107と、を有する。コンバータ段106及び107は、例えば、パルス幅変調「PWM」コンバータ段であってもよい。図1に示されている例示用のケースにおいては、アクチュエータ111は、外部的に付与されたトルク基準Ref_Torq_Aに従って駆動されるものと仮定されている。コンバータ段107は、外部的に付与されたトルク基準Ref_Torq_Aに従って、電気機械109のトルクを制御するように構成されている。必要とされる制御精度に応じて、電気機械109の制御は、回転速度及び/又は位置計測を伴う又は伴わないスカラー制御であってもよく、或いは、回転速度及び/又は位置計測を伴う又は伴わないベクトル制御であってもよい。図1に示されている例示用のケースにおいては、電気機械109の制御は、回転速度及び/又は位置信号ω/θ_Aを生成する回転速度及び/又は位置センサ116によって実装された回転速度及び/又は位置計測を有する。又、アクチュエータ111は、外部的に付与された回転速度又は位置基準に従って駆動することも可能である。
【0029】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による電気システムにおいては、制御システム105のコントローラ113は、パワー基準が、通常は、直流電圧UDC2がその基準UDC2 REF未満である際には増大し、且つ、パワー基準が、通常は、直流電圧UDC2がその基準UDC2 REF超である際には、減少するように、少なくとも部分的に直流電圧UDC2に基づいて電気機械108用のパワー基準を判定するように構成されている。更には、電気機械108のパワー基準は、電気機械109に供給される電力に依存した状態にすることもできる。コントローラ113は、上述のパワー基準と、内燃機関110がパワー基準に実質的に等しい機械的動力を生成する状況における内燃機関110の有利なトルク-速度動作点を表現する予め保存されたデータと、に基づいて、電気機械108用のトルク及び回転速度基準Ref-Torq及びRef_Speedを判定するように、更に構成することができる。予め保存されたデータは、例えば、内燃機関110が、最大効率により、即ち、最小損失により、必要とされる機械的動力を生成しうるトルク-速度動作点を表現しうる。別の例のおいては、予め保存されたデータは、内燃機関110が、ほぼ最大効率により、即ち、ほぼ最小損失により、必要とされる機械的動力を生成しうると共に、内燃機関110が、変化に応答するための十分な能力を有する、トルク-速度動作点を表現することができる。
【0030】
図1に示されている例示用のケースにおいては、内燃機関110は、速度コントローラ114の支援を伴う回転速度制御モードにおいて駆動されている。速度コントローラ114は、例えば、上述の回転速度基準Ref_Speed並びに回転速度及び/又は位置センサ115によって生成される回転速度及び/又は位置信号ω/θに基づいて、内燃機関110の燃料及び空気供給を制御することができる。コンバータ段106は、上述のトルク基準Ref_Torqに従って電気機械108のトルクを制御するように構成されている。必要とされる制御精度に応じて、電気機械108の制御は、回転速度及び/又は位置計測を伴う又は伴わないスカラー制御であってもよく、或いは、回転速度及び/又は位置計測を伴う又は伴わないベクトル制御であってもよい。図1に示されている例示用のケースにおいては、回転速度及び/又は位置信号ω/θは、電気機械108の制御において利用されている。又、電気機械108を回転速度制御モードにおいて駆動すると共に、内燃機関をトルク制御モードにおいて駆動することも可能である。
【0031】
図2は、本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による、電気機械208と、電気システム200と、を有する電気機械的動力伝達チェーンの概略図を示している。この例示用のケースにおいては、電気機械的動力伝達チェーンは、並列型の伝達チェーンであり、この場合には、電気機械208及び内燃機関210が互いに機械的に接続され、且つ、電気機械208及び内燃機関210の両方が機械的動力をアクチュエータ211に供給するように構成されている。電気機械208は、しばしば、電気エネルギーを生成する発電機として動作し、且つ、しばしば、高機械的出力パワーが必要とされる際に、電気エネルギーを消費すると共に内燃機関210を支援する電気モーターとして動作する。電気システム200は、第1静電容量性回路201と、第1静電容量性回路201と電気機械208の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置202と、を有する。コンバータ装置202は、静電容量性回路201の直流電圧UDC1を電気機械208に適した電圧に変換するように構成されている。電気システム200は、第2静電容量性回路203と、電気エネルギーを静電容量性回路201及び203の間において転送する直流電圧コンバータ204と、を有する。電気機械208は、例えば、電気励起型同期機械、永久磁石同期機械、非同期機械、又はリラクタンス機械であってもよい。電気機械208は、コンバータ装置202が無効電力を電気機械208に供給する能力を有するか、或いは、無効電力を電気機械208に供給するその他の手段が存在している、ケースにおいては、非同期機械又はリラクタンス機械であってもよい。電気システム200は、電池要素218と、電池要素218を充電及び放電する直流電圧コンバータ217と、を更に有することができる。
【0032】
電気システム200は、静電容量性回路201の直流電圧UDC1の変化に応答して直流電圧コンバータ204を制御する第1コントローラ212を有する制御システム205を有する。制御システム205は、静電容量性回路203の直流電圧UDC2の変化に応答してコンバータ装置202を制御する第2コントローラ213を更に有する。コントローラ212及び213は、直流電圧UDC1を既定の電圧範囲において、即ち、基準値UDC1 REFの近傍において、維持するように、且つ、直流電圧UDC2が、静電容量性回路201と電気機械208の間において転送される電力の変動に応答して変動することを同時に許容するように、コントローラ212が、コントローラ213が直流電圧UDC2の変化に反応するよりも、より高速で、直流電圧UDC1の変化に反応するように、構成されている。
【0033】
図2に示されている例示用の電気機械的動力伝達チェーンにおいては、コンバータ装置202は、電気機械が発電機として機能する際に、電気機械208から静電容量性回路201に電気エネルギーを転送すると共に、電気機械が電気モーターとして機能する際には、電気エネルギーを静電容量性回路201から電気機械208に転送するコンバータ段206を有する。コンバータ段206は、例えば、パルス幅変調「PWM」コンバータ段であってもよい。
【0034】
図2に示されている例示用のケースにおいては、内燃機関210は、外部的に付与されたパワー制御信号により、制御されている。パワー制御信号は、例えば、内燃機関210の燃料及び空気供給を決定することができる。コントローラ213は、少なくとも部分的に、直流電圧UDC2、内燃機関210のパワー制御信号、及び電気機械208の支配的な又は推定された回転速度に基づいて、電気機械208用のトルク基準Ref_Torqを判定するように構成することができる。図2に示されている例示用のケースにおいては、支配的な回転速度ωは、回転速度センサ215によって計測されている。基準トルクRef_Torqは、例えば、以下の例示用の方式により、判定することができる。
【0035】
電気機械208のモーターパワーMP及び発電機パワーGPは、
・UDC2≦モーター限度電圧UMである際には、モーターパワーMP(UDC2)がゼロとなり、
・UDC2>UMである際には、モーターパワーMP(UDC2)がUDC2の増大する関数となり、
・UDC2≧発電機限度電圧UGである際には、発電機パワーGP(UDC2)がゼロとなり、且つ、
・UDC2<UGである際には、発電機パワーGP(UDS2)がUDC2の減少する関数となる、
ように、直流電圧UDC2の関数として判定され、ここで、UG>UMであり、即ち、電気機械208の許容されたモーター動作の電圧エリアと電気機械208の許容された発電機動作の電圧エリアは、部分的にオーバーラップしている。
【0036】
内燃機関210の上述のパワー制御信号の増大の後に、電気機械208は、Ref_Torqが、実質的に、支配的な回転速度ωによって除算されたモーターパワーMP(UDC2)となるように、トルク制御モードにおいて電気モーターとして稼働する。従って、UDC2がモーター限度電圧UM超であるケースにおいては、パワー制御信号の増大は、直流電圧UDC2に応じて、内燃機関210によってのみならず、電気機械208によっても、応答される。上述のパワー制御信号の減少の後に、電気機械208は、Ref_Torqが、実質的に、支配的な回転速度ωによって除算された発電機パワーGP(UDC2)となるように、トルク制御モードにおいて発電機として稼働する。従って、UDC2が発電機限度電圧UG未満であるケースにおいては、パワー制御信号の減少は、直流電圧UDC2に応じて、内燃機関210によってのみならず、電気機械209によっても、応答される。
【0037】
図3は、第1静電容量性回路と、1つ又は複数の電気機械と、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置と、を有する電気機械的動力伝達チェーンを制御する、本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法のフローチャートを示しており、この場合に、コンバータ装置は、第1静電容量性回路の第1直流電圧を1つ又は複数の電気機械に適した1つ又は複数の電圧に変換している。
【0038】
方法は、
・第1直流電圧の変化に応答して、第1静電容量性回路と第2静電容量性回路の間において電気エネルギーを転送するように、直流電圧コンバータを制御する動作301と、
・第1直流電圧を第1既定電圧範囲において維持するように、且つ、第2直流電圧が、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において転送される電力の変動に応答して変動することを許容するように、直流電圧コンバータの制御が、コンバータ装置の制御が第2直流電圧の変化に反応するよりも、より高速で、第1直流電圧の変化に反応するように、第2静電容量性回路の第2直流電圧の変化に応答してコンバータ装置を制御する動作302と、
を有する。
【0039】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、コンバータ装置の制御は、第2直流電圧が第2既定電圧範囲外にある際よりも、第2直流電圧が第2既定電圧範囲にある際に、より低速で、第2直流電圧の変化に反応している。
【0040】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、コンバータ装置の制御は、少なくとも部分的に、基準からの第2直流電圧の逸脱に基づいており、且つ、逸脱は、逸脱が正である際には、第1利得係数により、且つ、逸脱が負である際には、第1利得係数とは異なる第2利得係数により、重み付けされている。
【0041】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法において、コンバータ装置は、第1直流電圧が既定の過電圧限度を超過した状況に応答して、第1静電容量性回路への電気エネルギーの転送を低減するように構成されている。
【0042】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、コンバータ装置は、第1直流電圧が既定の不足電圧限度未満に降下した状況に応答して、第1静電容量性回路からの電気エネルギーの転送を低減するように制御されている。
【0043】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、第2静電容量性回路の静電容量は、第1静電容量性回路の静電容量を上回っている。
【0044】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、第2静電容量性回路は、少なくとも1つの電気二重層コンデンサを有する。
【0045】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、電気機械的動力伝達チェーンは、直列型の伝達チェーンであり、且つ、コンバータ装置は、発電機として機能する第1電気機械から第1静電容量性回路に電気エネルギーを転送する第1コンバータ段と、電気モーターとして機能する第2電気機械に第1静電容量性回路から電気エネルギーを転送する第2コンバータ段と、を有する。
【0046】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、パワー基準は、少なくとも部分的に第2直流電圧に基づいて、第1電気機械について判定され、且つ、トルク及び速度基準は、パワー基準と、パワー基準に実質的に等しい機械的動力を生成する内燃機関のトルク-速度動作点を表現する予め保存されたデータと、に基づいて、第1電気機械について判定されている。
【0047】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、電気機械的動力伝達チェーンは、並列型の伝達チェーンであり、且つ、コンバータ装置は、電気機械が発電機として機能する際に、電気機械から第1静電容量性回路に電気エネルギーを転送すると共に、電気機械が電気モーターとして機能する際には、第1静電容量性回路から電気機械に電気エネルギーを転送するコンバータ段を有する。
【0048】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による方法においては、トルク基準は、少なくとも部分的に、第2直流電圧、電気機械に機械的に接続された内燃機関のパワー制御信号、及び電気機械の支配的な回転速度に基づいて、並列型の伝達チェーンの電気機械について判定されている。
【0049】
電気機械的動力伝達チェーンを制御する本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態によるコンピュータプログラムは、本発明の上述の例示用の且つ非限定的な実施形態のいずれかによる方法を実行するように、プログラム可能なプロセッサを制御するコンピュータ実行可能命令を有する。
【0050】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態によるコンピュータプログラムは、第1静電容量性回路と、1つ又は複数の電気機械と、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において電気エネルギーを転送するコンバータ装置と、を有する電気機械的動力伝達チェーンを制御するソフトウェアモジュールを有し、この場合に、コンバータ装置は、第1静電容量性回路の第1直流電圧を1つ又は複数の電気機械に適した1つ又は複数の電圧に変換するように構成されている。
【0051】
ソフトウェアは、
・第1直流電圧の変化に応答して、第1静電容量性回路と第2静電容量性回路の間において電気エネルギーを転送するように、直流電圧コンバータを制御し、且つ、
・第1直流電圧を既定の電圧範囲において維持するように、且つ、第2直流電圧が、第1静電容量性回路と1つ又は複数の電気機械の間において転送される電力の変動に応答して変動することを許容するように、直流電圧コンバータの制御が、コンバータ装置の制御が第2直流電圧の変化に対して反応するよりも、より高速で、第1直流電圧の変化に反応するように、第2静電容量性回路の第2直流電圧の変化に応答してコンバータ装置を制御する、
ように、プログラム可能なプロセッサを制御するコンピュータ実行可能命令を有する。
【0052】
ソフトウェアモジュールは、例えば、適切なプログラミング言語によって生成されたサブルーチン及び/又は関数であってもよい。
【0053】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態によるコンピュータプログラムプロダクトは、上述のソフトウェアモジュールによってエンコーディングされた、例えば、コンパクトディスク「CD」などの、不揮発性コンピュータ可読媒体を有する。
【0054】
本発明の例示用の且つ非限定的な一実施形態による信号は、本発明の一実施形態によるコンピュータプログラムを定義する情報を搬送するようにエンコーディングされている。
【0055】
以上において付与された説明において提供されている特定の例は、添付の請求項の適用可能性及び/又は解釈を限定するものと解釈してはならない。以上において付与された説明において提供されている例のリスト及び群は、そうではない旨が明示的に記述されていない限り、すべてを網羅するものではない。
図1
図2
図3