(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】サブマスクの張設方法及びマスク、パネル
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20220517BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220517BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2017565709
(86)(22)【出願日】2017-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2017087619
(87)【国際公開番号】W WO2018019032
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】201610590318.9
(32)【優先日】2016-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】511121702
【氏名又は名称】成都京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1188,Hezuo Rd.,(West Zone),Hi-tech Development Zone,Chengdu,Sichuan,611731,P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 建▲鵬▼
(72)【発明者】
【氏名】▲蘭▼ ▲蘭▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 忠英
(72)【発明者】
【氏名】梁 ▲逸▼南
(72)【発明者】
【氏名】▲ジ▼ ▲鳳▼▲麗▼
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0130735(US,A1)
【文献】特開2006-037128(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034011(WO,A1)
【文献】特開2012-233251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0199443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C23C 16/00-16/56
H01L 51/50-51/56
H01L 27/32
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
張設されるサブマスクの4つの角部に位置するクランプ領域を挟むステップと、
前記サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って、前記サブマスクを引っ張るステップと、
前記サブマスクの平坦度が第1の基準値に達した場合に、前記サブマスクを固定するステップと、
を含み、
引っ張り過程中で、前記第1の張力の前記サブマスクの短辺の延在方向における分力は、徐々に減少される、サブマスクの張設方法。
【請求項2】
前記第1の張力は、前記サブマスクの中心に対して対称になる請求項1に記載の張設方法。
【請求項3】
前記第1の張力のうちの少なくとも2つの張力は、前記サブマスクの中心が位置する軸線に対して対称になる請求項1に記載の張設方法。
【請求項4】
前記第1の張力の前記サブマスクの短辺の延在方向における分力は、前記サブマスクのサイズの比率が減少するにつれて減少され、
前記サブマスクのサイズの比率は、前記サブマスクの短辺と長辺との比率である
請求項1に記載の張設方法。
【請求項5】
前記サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って、前記サブマスクを引っ張るステップは、
徐々に減少される第1の張力で、
徐々に減少される第1の夾角の方向に沿って前記サブマスクを引っ張るステッ
プを、
含む請求項
1に記載の張設方法。
【請求項6】
前記サブマスクが位置してい
る平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って、前記サブマスクを引っ張るステップは、
一定の第1の張力で、徐々に減少される第1の夾角の方向に沿って前記サブマスクを引っ張るステップ、又は、
徐々に減少される第1の張力で、一定の第1の夾角の方向に沿って前記サブマスクを引っ張るステップを、
含む請求項1に記載の張設方法。
【請求項7】
前記第1の夾角の取り得る値の範囲は、0°より大きく90°より小さい範囲である請求項1~
6のいずれか1項に記載の張設方法。
【請求項8】
張設されるサブマスクの4つの角部に位置するクランプ領域を挟むクランプ機構と、
前記クランプ機構に接続され、前記サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角をなす方向に沿って前記サブマスクを引っ張るように、方向を変更させることができる回転軸と、
を備え、
引っ張り過程中で、前記第1の張力の前記サブマスクの短辺の延在方向における分力は、徐々に減少される、張設装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示技術分野に関し、特に、サブマスクの張設方法及びマスク、パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、蒸着工程において、超精細マスクを用いて有機発光材を基板の所定の位置に蒸着することが多いが、超精細マスクの平坦度は蒸着の効果に直接に影響を与える。パネルの解像度が高いほど、必要となる超精細マスクが精細であるので、超精細マスクの平坦度に対する要求が高くなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の実施例は、従来技術に存在している従来の張設方法によりサブマスクにしわが生じる問題点を解決するために、サブマスクの張設方法及びマスク、パネルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施例は、以下の技術手段を用いている。
サブマスクの張設方法であって、前記方法は、
張設されるサブマスクの4つの角部に位置するクランプ領域を挟むステップと、
前記サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って、前記サブマスクを引っ張るステップと、
前記サブマスクの平坦度が第1の基準値に達した場合に、前記サブマスクを固定するステップと、を含む。
【0005】
選択的に、前記第1の張力は、前記サブマスクの中心に対して対称になる。
【0006】
選択的に、前記第1の張力のうちの少なくとも2つの張力は、前記サブマスクの中心が位置する軸線に対して対称になる。
選択的に、前記第1の張力の前記サブマスクの短辺の延在方向における分力は、前記サブマスクのサイズの比率が減少するにつれて減少され、
ここで、前記サブマスクのサイズの比率は、前記サブマスクの短辺と長辺との比率である。
【0007】
選択的に、引っ張り過程中で、前記第1の張力の前記サブマスクの短辺の延在方向における分力は、一定である。
選択的に、前記サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って、前記サブマスクを引っ張るステップは、具体的に、変化する第1の張力で、変化する第1の夾角の方向に沿って前記サブマスクを引っ張るステップ、又は、
一定の第1の張力で、一定の第1の夾角の方向に沿って前記サブマスクを引っ張るステップを含む。
【0008】
選択的に、引っ張り過程中で、前記第1の張力の前記サブマスクの短辺の延在方向における分力は、徐々に減少される。
【0009】
選択的に、前記サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って、前記サブマスクを引っ張るステップは、
【0010】
具体的に、
一定の第1の張力で、徐々に減少される第1の夾角の方向に沿って前記サブマスクを引っ張るステップ、又は、
徐々に減少される第1の張力で、一定の第1の夾角の方向に沿って前記サブマスクを引っ張るステップを含む。
【0011】
選択的に、前記第1の夾角の取り得る値の範囲は、0°より大きく90°より小さい範囲である。
【0012】
マスクであって、マスクフレームと、前記マスクフレームに固定された複数のサブマスクと、を備え、ここで、前記サブマスクは、前記張設方法によって張設される。
【0013】
選択的に、前記サブマスクの材質は、金属である。
【0014】
基板であって、前記マスクにより作製される。
表示装置であって、前記基板を備える。
【0015】
張設装置であって、
張設されるサブマスクの4つの角部に位置するクランプ領域を挟むクランプ機構と、
前記クランプ機構に接続され、前記サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って前記サブマスクを引っ張るように、方向を変更させることができる回転軸と、を備える。
【0016】
以下、本発明の実施例の技術手段をより明確に説明するために、実施例の説明において用いられる図面を簡単に説明する。下記の説明における図面は単なる本発明の実施例の一つにすぎず、当業者にとって、創造的な努力を払わずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】張設方法を用いてサブマスクを引っ張る原理を示す模式図である。
【
図3】本発明に係るサブマスクの張設方法のフローチャートである。
【
図4(a)】本発明に係る張設方法を用いてサブマスクを引っ張る原理を示す模式図である。
【
図4(b)】本発明に係る張設方法を用いてサブマスクを引っ張る原理を示す模式図である。
【
図5】本発明においていずれかのクランプ領域における力の分析を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の目的、技術手段及び利点をより明確するために、図面を参照しながら本発明をさらに詳細に説明する。説明する実施例は本発明の単なる実施例の一部にすぎず、実施例の全部ではないことは勿論である。本発明の実施例に基づき、当業者にとって創造的な努力を払わずに得られる他の実施例の全部は、いずれも本発明の保護しようとする範囲に含まれる。
【0019】
以下、具体的な実施例を通じて本発明に係る技術手段を詳細に説明し、本発明は、以下の実施例を含むが、これらに限定されるものではない。
【0020】
図1は、超精細マスクの構造を示す模式図である。
図1に示すように、超精細マスクは、いずれも複数のサブマスク11により突き付けられ、それぞれはマスクフレーム12に固定されている。しかしながら、各サブマスクの平坦度が高くなるようにしようとする場合、張設方法を用いて各サブマスクに対して引っ張り処理を行う必要がある。具体的に、従来のサブマスクの張設方法において、張設装置がサブマスクの4つのクランプ領域を挟み、且つ張設装置による水平張力によってサブマスクを引っ張り、サブマスクをレーザーでマスクフレームに溶接する。
図2は、張設方法を用いてサブマスクを引っ張る原理を示す模式図である。
図2に示すように、張設装置がサブマスク21の4つの角部のクランプ領域Aに接触され、当該接触領域Aはサブマスク21の力を受ける領域である。サブマスク21に対する力の分析から分かるように、このとき、サブマスク21は主に張設装置による水平張力F1及び水平張力F1と反対である水平張力F2を受けており、張力は、サブマスク21内で誘電体材料の伝達によって拡散されることで、サブマスク21が受けた力をテンションさせる。
図2から分かるように、サブマスクの長辺の左右両側において受ける力が大きいので、大きく変形され、中央において受ける力が小さいので、小さく変形される。長辺の延在方向において力を受けているので、短辺はその延在方向において変形され、ひいては、サブマスクの全体を貫通するしわが生じる。従って、サブマスクの平坦度に厳しく影響を与えるので、その後の蒸着プロセスに影響を与え、製品の歩留まりを低下させる。
【0021】
図3に示すように、
図3は、本発明に係るサブマスクの張設方法のフローチャートであり、この方法は、主に下記のステップを含む。
【0022】
ステップ31:張設装置は張設されるサブマスクの4つの角部に位置するクランプ領域を挟み、前記サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で前記サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って前記サブマスクを引っ張る。
【0023】
ステップ32:前記サブマスクの平坦度が第1の基準値に達した場合に、前記サブマスクを前記マスクフレームに固定し、この時前記張設装置は引っ張りを停止する。
【0024】
ここで、平坦度の第1の基準値は経験値に基づいて設定でき、リアルタイムでサブマスクの平坦度を監視することができる。即ち、力の印加過程において、センサーによってリアルタイムで力の印加によるサブマスクの表面の平坦度を取得することで、第1の基準値に達したか否かを分析して比較し、第1の基準値に達すると、サブマスクの平坦度は既に飽和に達し、且つ垂れ及びしわの現象は既に最低に減少されていることを説明するので、レーザーでサブマスクをマスクフレームに溶接し固定することができる。その後、従来の方法によりクランプ領域を切断し、トリミングを行う。また、第1の基準値に達していない場合に、平坦度が第1の基準値の位置に達されるまで、力の印加操作をさらに実行する必要がある。
【0025】
なお、本発明に係る張設装置は、従来の張設装置であってもよい。張設装置は、サブマスクの4つのクランプ領域を挟むためのクランプ機構であり、第1の張力の方向を変更させるように、方向を変更させることができる回転軸により制御されてもよい。
【0026】
図4(a)に示すように、張設装置は、張設されるサブマスク41の4つの角部に位置するクランプ領域Aを挟み、且つ、当該サブマスク41が位置している平面内で、第1の張力Fで当該サブマスク41の長辺の延在方向(X方向)と第1の夾角θを成す方向に沿って当該サブマスク41を引っ張り、これによって、サブマスク41の短辺の延在方向(Y方向)においても分力を生じるように確保することで、サブマスク41が当該サブマスク41の長辺の延在方向において引っ張られるだけでなく、当該サブマスク41の短辺の延在方向においても引っ張られるようにさせる。従って、サブマスク41のしわの現象を減少し、サブマスクの平坦度を向上させることができる。
【0027】
上記の張設方法では、各クランプ領域の力の印加状況が異なってもよいが、張設後の平坦度を向上させるためには、選択的に、ステップ31では、具体的に、サブマスクが位置している平面内で、第1の張力でサブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って、サブマスクの中心に対して対称的にサブマスクを引っ張るように実行される。ここで、対称的に引っ張るということは、各クランプ領域における第1の張力がいずれも同じであり、第1の夾角も同じであることである。実際には、精細マスクの種類を考慮すると、その厚さが比較的に薄いため、引っ張り過程中には、対称的な引っ張りは張設の実現をより良く確保でき、且つ不均一的な引っ張りにより破断される等の問題を回避することができる。
【0028】
また、ステップ31は、さらに、少なくとも2つのクランプ領域に対して、サブマスクが位置している平面内で、第1の張力でサブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って、サブマスクの中心が位置する軸線に対して対称的にサブマスクを引っ張るように実行されることができる。例えば、
図4(b)に示すように、サブマスクの左側の2つのクランプ領域のみに対して第1の夾角を有する引っ張り操作を行い、且つ、サブマスクの中心が位置している軸線Mに対して対称的に引っ張るが、右側の2つのクランプ領域に対しては、従来技術により引っ張る。或いは、サブマスクの上側の2つのクランプ領域のみに対して第1の夾角を有する引っ張り操作を行い、且つ、サブマスクの中心が位置している軸線(Y方向における軸線)に対して対称的に引っ張り、これによって下側の2つのクランプ領域に対しては、従来技術により引っ張りを行う。サブマスクの厚さが比較的に薄いことを考えれて、サブマスクが引っ張り過程中で破断されることを回避するように、第1の張力の大きさを合理的に設定することができる。
【0029】
また、異なる精細マスクは、そのサイズが異なり、それに含まれているサブマスクのサイズも異なる。これをを考えて、選択的に、サブマスクのサイズの比の値が減少することにつれて、第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力は減少される。ここで、サブマスクのサイズの比率とは、サブマスクの短辺と長辺との比率である。一例を挙げて説明すると、短辺と長辺との比が1/5であるサブマスクに対して、クランプ領域に印加される適切な第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力はf1であり、短辺と長辺との比が1/6であるサブマスクに対して、クランプ領域に印加される適切な第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力はf1*4/5である。或いは、短辺と長辺との比が1/5であるサブマスクに対して、クランプ領域に印加される適切な第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力はf1であり、短辺と長辺との比が1/6であるサブマスクに対して、クランプ領域に印加される適切な第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力はf1*5/6である。ここで、上記で挙げられた数値は単なる例示的なものであり、その具体的な比例関係は、サブマスクの実際のサイズ及び材質に応じて決定される必要がある。
【0030】
本発明の実施例では、上記の方法から分かるように、少なくとも1つのクランプ領域における第1の張力は、サブマスクの短辺の延在方向において分力を有すれば、サブマスクの張設過程中で生じるしわの問題を改善することができる。好ましくは、4つのクランプ領域における第1の張力がいずれもサブマスクの短辺の延在方向において分力を有するようにさせることができ、このようにして、改善効果をより効果的に向上させることができる。具体的に、実現する方法は柔軟であり、下記のとおりであってもよい。張設装置は、不変の第1の張力で変化する第1の夾角に沿ってサブマスクを引っ張り;或いは、張設装置は、変化する第1の張力で不変の第1の夾角に沿ってサブマスクを引っ張り;或いは、張設装置は、変化する第1の張力で変化する第1の夾角に沿ってサブマスクを引っ張り;或いは、張設装置は、不変の第1の張力で不変の第1の夾角に沿ってサブマスクを引っ張る。ここで、第1の張力の不変又は変化とは、いずれも第1の張力の大きさを指している。また、張設装置の第1の張力は、予め1つの開始値を設定しておくことができ、変化する第1の張力は、当該開始値から増加又は減少されるものとする。第1の夾角も類似しており、予め1つの開始値を設定しておくことができ。
【0031】
一つの好ましい実現手段において、非対称的な引っ張りであるか対称的な引っ張りであるにかかわらず、引っ張り過程中で、第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力は一定である。したがって、引っ張りの安定性を確保することができる。
【0032】
具体的に、第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力を一定にしようとする場合、以下の2つの方法によって実現できる。
【0033】
方法1:張設装置は、変化する第1の張力で変化する第1の夾角の方向に沿ってサブマスクを引っ張る。
【0034】
具体的に、
図5に示すいずれかのクランプ領域における力の分析を示す模式図を参照すると、張設装置は、その印加する第1の張力Fの大きさを制御し、その変化の傾向は徐々に増加したり、徐々に減少したり、或いは、不規則に変化してもよい。これに対して、第1の張力Fのサブマスクの短辺の延在方向における分力fyが一定になるように、第1の張力Fとサブマスクの長辺の延在方向とが成す第1の夾角θを、第1の張力Fに互いに合わせる必要がある。実際には、次の式が挙げられる。
【0035】
第1の張力Fのサブマスクの短辺の延在方向における分力:fy=F*sinθであり、
第1の張力Fのサブマスクの長辺の延在方向における分力:fx=F*cosθである。
【0036】
本発明において、分力fxは、その大きさが一定であってもよいし、一定でなくてもいが、これは短辺の延在方向において生じるしわの現象の改善に影響を与えないので、重要な要素ではない。したがって、fy=F*sinθにおいて、fyが一定になるようにする場合、Fとsinθとを反比例にし、方法1では、第1の張力と第1の夾角とはいずれも変化するものであり、そして、両者の間の反比例の関係を考慮して、Fとsinθとを常に互いに合わせて変化させる。例えば、第1の張力がFからF/2に変化すると、第1の夾角の正弦値は2sinθに変化する。また、第1の張力及び第1の夾角は、ランダムに初期値を定義することができるので、この場合は、1つの基準パラーメータを確定すべきである。例えば、先に第1の張力をある初期値に設定することができ、この時、第1の夾角の初期値は、第1の張力の選択された初期値に応じて選択できる。
【0037】
当該方法1によれば、様々な張設の力の印加方法を実現することができるので、張設手段の柔軟性を向上させるとともに、張設の実施後のサブマスクのしわの問題を減少して、サブマスクの平坦度を向上させることができる。
【0038】
方法2:張設装置は、一定の第1の張力で一定の第1の夾角の方向に沿ってサブマスクを引っ張る。
【0039】
図5に示すように、fy=F*sinθにおいて、fyが一定になるようにする場合、Fとsinθとを反比例にし、方法2では、第1の張力と第1の夾角とはいずれも一定であるものであり、そして、両者の間の反比例の関係を考慮して、Fとsinθとは常に互いに合わせて変化させる。例えば、第1の張力をF/2にすると、第1の夾角の正弦値は2sinθに選択し、且つ、張設過程中の全体にわたって、第1の張力の大きさ及び方向を変更させない。しかしながら、異なるサブマスクに対して張設を行う際に印加する第1の張力は異なってもよいが、一旦張設過程中で行われる引っ張り操作が開始すると、第1の張力及び第1の夾角は変化しない。
【0040】
当該方法2に係る張設方法は、簡単で、張設によるサブマスクの張設量産化を実現し易いとともに、張設実施後のサブマスクのしわの問題を減少して、サブマスクの平坦度を向上させることができる。
【0041】
その他のより好ましい実現手段において、引っ張り過程中では、第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力が徐々に減少される。実際には、引っ張り過程が徐々に完成されるプロセスであることを考えて、引っ張りに必要となる第1の張力は当該プロセスにおいて徐々に減少されることこそ、引っ張りの規則にぴったりに合う。そして、サブマスクはだんだん薄くなるので、その後の引っ張りに必要となる第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力は、平坦度の向上に応じて徐々に減少されることができる。したがって、引っ張りすぎてサブマスクが破断されることを回避できる。
【0042】
具体的に、式fy=F*sinθを参照し続けて、第1の張力のサブマスクの短辺の延在方向における分力が徐々に減少されるようにしようとする場合、下記の2つの方法によって実現できる。
【0043】
方法3:張設装置は、一定の第1の張力で徐々に減少される第1の夾角の方向に沿ってサブマスクを引っ張る。
【0044】
図5に示すように、継続して張設装置が印加する第1の張力の大きさを変化させず、第1の張力の大きさがFであることを一例とする場合、初期の第1の夾角は、取り得る値の範囲内で任意で設定できる。例えば、初期の第1の夾角θを60°にし、当該第1の夾角が同じステップ又は異なるステップで徐々に減少されるように設定することができる。したがって、第1の夾角とサブマスクとの間の関係を発見することで、操作及び機器構造を簡略化し、張設のコストを低減させることに有利である。また、この方法によれば、サブマスクの短辺方向における引っ張りが無くなるまで均一に減少されるように確保して、サブマスクの破断を回避することができる。
【0045】
方法4:張設装置は、徐々に減少される第1の張力で一定の第1の夾角の方向に沿ってサブマスクを引っ張る。
【0046】
図5に示すように、張設装置が印加する第1の張力の大きさは、同じステップの幅又は異なるステップの幅で徐々に減少される場合、第1の夾角は変化しない。例えば、経験値によって、又は、第1の夾角をランダムで一定の角度θに設定することによって、第1の張力はFから減少し始めることができる。当該方法4によれば、サブマスクの長辺及び短辺の2つの方向における引っ張りは、いずれも無くなるまで均一に減少されるように確保することで、引っ張りがもう十分である状況下で、張力を増大し続けて、サブマスクが破断されることを回避することができる。
【0047】
選択的に、サブマスクの短辺の延在方向において分力を生じる必要があることを考えると、第1の夾角の取り得る値の範囲は0°より大きく90°より小さい範囲である。なお、ここの第1の夾角は、いずれも鋭角を指し、長辺の延在する左右2つの方向を考慮せずに、長辺と鋭角をなす第1の夾角のみを考慮している。
【0048】
また、本発明の実施例は、さらにマスクを提供する。当該マスクは、主に、マスクフレームと、マスクフレームに固定されている複数のサブマスクと、を備え、サブマスクは、上記のいずれかの張設方法を用いて得られる。
【0049】
選択的に、蒸着に必要となる精細マスクに延性の良好な金属を用いられること多いことを考えて、本発明に係るサブマスクの材質は金属である。
【0050】
また、本発明は、さらにパネルを提供する。当該パネルは、上記の提供されるマスクにより作製されるものである。選択的に、当該パネルは、OLEDパネルである。
【0051】
上記のマスクの張設過程中では、第1の夾角の張設方法を用いているので、サブマスクの短辺の延在方向においても分力が生じるので、サブマスクのしわの現象を減少し、マスクの平坦度を向上させることができ、さらに、当該マスクを用いて作製されるパネルの各マスク層の蒸着品質を確保することができる。
【0052】
本発明の効果は、下記のとおりである。
【0053】
上記手段によれば、張設装置は、張設されるサブマスクの4つの角部に位置するクランプ領域を挟み、且つ、当該サブマスクが位置している平面内で、第1の張力で当該サブマスクの長辺の延在方向と第1の夾角を成す方向に沿って当該サブマスクを引っ張ることによって、サブマスクの短辺の延在方向においても分力が生じるように確保することで、サブマスクが当該サブマスクの長辺の延在方向において引っ張られるだけでなく、当該サブマスクの短辺の延在方向においても引っ張られるようにさせ、従って、サブマスクのしわ現象を減少し、サブマスクの平坦度を向上させる、且つ、実現し易くすることができる。
【0054】
以上、本発明の好ましい実施例を説明してきたが、当業者であれば、本発明の基本的な創造性概念を獲得した後、これらの実施例に対して他の変更及び修正を行うことができる。したがって、添付した請求の範囲は、好ましい実施例及び本発明の範囲内に入るすべての変更及び修正を含むと解釈されることが意図される。明らかに、当業者は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく、本発明に対して様々な変更及び変形を行うことができる。このように、本発明のこれらの変更及び変形が本発明の請求の範囲及び均等の技術範囲内に含まれる場合に、本発明はこれらの変更及び変形を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0055】
11 サブマスク
12 マスクフレーム
21 サブマスク
41 サブマスク