(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】クランプシステムおよびクランプ方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/154 20060101AFI20220517BHJP
B23Q 3/06 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B23Q3/154 B
B23Q3/06 301K
B23Q3/06 304D
(21)【出願番号】P 2018053530
(22)【出願日】2018-03-20
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 穣
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】山崎 賢治
(72)【発明者】
【氏名】林 宏樹
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-009171(JP,A)
【文献】特表平09-503448(JP,A)
【文献】登録実用新案第3173058(JP,U)
【文献】特開2006-116612(JP,A)
【文献】特開平07-124835(JP,A)
【文献】特開平07-040169(JP,A)
【文献】特開2016-097468(JP,A)
【文献】特開2011-218549(JP,A)
【文献】特開昭59-182039(JP,A)
【文献】特開昭59-182040(JP,A)
【文献】特開昭59-182041(JP,A)
【文献】特開昭59-182042(JP,A)
【文献】特開昭59-182043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/154
B23Q 3/06
B23Q 3/02
B25J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートと、
ワークを保持するクランプ装置と、
前記クランプ装置を前記プレートの表面に吸着させる吸着部と、
ロボットアームと、を備え
、
前記クランプ装置は、
前記ワークが載置される載置面が形成された支持部と、
前記支持部に連結され、前記載置面に対峙した爪部と、を備え、
前記爪部は、前記載置面に対して進退自在であるとともに、前記載置面に対して移設可能であり、
前記ロボットアームは、前記爪部に着脱自在であり、
前記ロボットアームを前記爪部に連結した状態で、前記ロボットアームによって、前記爪部を前記載置面に対して進退および移設させて、前記爪部と前記載置面との間に前記ワークを挟み込むことを特徴とするクランプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプシステムであって、
前記吸着部は、電気によって吸着状態と非吸着状態とを切り換え可能な永電磁式磁石であることを特徴とするクランプシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のクランプシステムであって、
前記クランプ装置に前記吸着部が設けられていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のクランプシステムであって、
前記プレートに前記吸着部が設けられていることを特徴とするクランプシステム。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクランプシステムであって、
前記爪部には、前記支持部のねじ穴に螺合されるボルトが連結され、
前記ロボットアームは、前記ボルトに着脱自在であり、
前記ボルトを前記ねじ穴に出入することで、前記ボルトに連動して前記爪部が前記載置面に対して進退することを特徴とするクランプシステム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のクランプシステムを用いたクランプ方法であって、
前記プレートの表面に前記クランプ装置を載置する段階と、
前記吸着部によって前記クランプ装置を前記プレートの表面に吸着させる段階と、
前記載置面に前記ワークを載置する段階と、
前記ロボットアームによって前記爪部を移動させて、前記爪部と前記載置面との間に前記ワークを挟み込む段階と、を備えていることを特徴とするクランプ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプシステムおよびクランプ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械でワークを加工する場合には、治具にワークを取り付けて、治具とともにワークを加工室内に供給している。従来の治具は、プレートと、プレートの上面に固定されたクランプ装置と、を備え、クランプ装置によってワークを保持している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の治具では、ワークの形状に合わせてプレートの上面にクランプ装置が配置されている。従来の治具では、クランプ装置がプレートに対してボルトやピンによって固定されているため、プレートからクランプ装置を手作業で脱着している。したがって、ワークの種類を変えるときに、クランプ装置の位置を変える作業が煩雑で作業時間が長くなるという問題がある。
なお、各種形状のワークに対応した複数の治具を用意しておき、ワークの種類を変更するときに、治具全体を交換する場合には、ワークよりも大きな複数の治具を保管しておくスペースが必要になる。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、クランプ装置をワークの形状に合わせて速やかにプレートに取り付けることができるクランプシステムおよびクランプ方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、クランプシステムであって、プレートと、ワークを保持するクランプ装置と、前記クランプ装置を前記プレートの表面に吸着させる吸着部と、ロボットアームと、を備えている。前記クランプ装置は、前記ワークが載置される載置面が形成された支持部と、前記支持部に連結され、前記載置面に対峙した爪部と、を備えている。前記爪部は、前記載置面に対して進退自在であるとともに、前記載置面に対して移設可能である。前記ロボットアームは、前記爪部に着脱自在であり、前記ロボットアームを前記爪部に連結した状態で、前記ロボットアームによって、前記爪部を前記載置面に対して進退および移設させて、前記爪部と前記載置面との間に前記ワークを挟み込むように構成されている。
【0007】
また、本発明は、前記したクランプシステムを用いたクランプ方法であって、前記プレートの表面に前記クランプ装置を載置する段階と、前記吸着部によって前記クランプ装置を前記プレートの表面に吸着させる段階と、を備えている。さらに、前記載置面に前記ワークを載置する段階と、前記ロボットアームによって前記爪部を移動させて、前記爪部と前記載置面との間に前記ワークを挟み込む段階と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクランプシステムでは、吸着部によってクランプ装置をプレートの表面に吸着させることで、クランプ装置をプレートの表面に位置決めすることができるため、クランプ装置をワークの形状に合わせて速やかにプレートに取り付けることができる。また、本発明のクランプシステムでは、プレートに対してクランプ装置のレイアウトの自由度が高いため、各種形状のワークを確実に保持することができる。
【0010】
本発明のクランプ方法では、クランプ装置をワークの形状に合わせて速やかにプレートに取り付けることができるとともに、ロボットアームによってクランプ装置にワークを保持させることができるため、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る治具を前方左上から見た斜視図である。
【
図2】本発明の第一実施形態に係るクランプシステムを示した側断面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係るクランプ方法において、プレートにクランプ装置を載置した段階を示した側断面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るクランプ方法において、爪部を上昇させる段階を示した側断面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係るクランプ方法において、爪部を前方に向けて移動させる段階を示した側断面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係るクランプ方法において、爪部を下降させる段階を示した側断面図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係るクランプ方法において、ワークの加工後に爪部を上昇させる段階を示した側断面図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係るクランプシステムを示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のクランプシステム、クランプ方法およびクランプ装置は、ワークに対して切削や研磨などの各種加工を行う工作機械に適用可能である。
なお、各実施形態の説明において、同一の構成要素に関しては同一の符号を付し、重複した説明は省略するものとする。
【0014】
[第一実施形態]
第一実施形態のクランプシステム1Aは、
図2に示すように、ワークWを保持するための治具2と、ロボットアームRと、を備えている。クランプシステム1Aは、ワークWの製造ラインに設けられており、工作機械(図示せず)の加工室の側方に配置されている。
【0015】
治具2は、
図1に示すように、金属製の平板であるプレート50と、プレート50の上面(表面)に取り付けられたクランプ装置10と、クランプ装置10をプレート50の上面に吸着させる吸着部20と、を備えている。
第一実施形態の治具2では、プレート50の上面に複数のクランプ装置10が取り付けられている。そして、各クランプ装置10によってワークW(
図2参照)を保持することで、プレート50にワークWを固定することができる。
第一実施形態の治具2において、プレート50に取り付けられる複数のクランプ装置10は同じ構成であるため、以下の説明では一つのクランプ装置10について説明する。
【0016】
クランプ装置10は、
図2に示すように、ワークWが載置される支持部30と、支持部30に連結された爪部40と、を備えている。また、第一実施形態では、クランプ装置10に吸着部20が設けられている。
【0017】
吸着部20は、プレート50の上面に吸着する公知の永電磁式磁石であり、コネクタ21を通じて電気を供給することで、金属への吸着状態と非吸着状態とを切り換えることができる。
第一実施形態では、吸着部20の下面に磁気が生じていない非吸着状態から、吸着部20のコネクタ21に電源ケーブルを接続して、吸着部20内のコイルに電気を供給すると、吸着部20内の磁石の磁性が変化する。これにより、吸着部20の下面に磁気が生じてプレート50に対して吸着状態となる。その後、コネクタ21から電源ケーブルを外しても吸着部20は吸着状態を維持する。再度、コネクタ21に電源ケーブルを接続して、吸着部20内のコイルに電気を供給すると、吸着部20内の磁石の磁性が変化して、吸着部20の下面に磁気が生じていない非吸着状態となる。
【0018】
支持部30は、吸着部20の上面に重ねられている。支持部30の前部には、上方に向けて突出した載置部32が形成されている。載置部32の上端面は、ワークWの側部に形成されたフランジ部W1が載置される載置面32aである。
【0019】
支持部30の前端部には、下方に向けて突出した当接部33が形成されている。当接部33は、吸着部20の前面に重ねられている。当接部33の下面は、クランプ装置10をプレート50の上面に載置したときに、プレート50の上面に密着する当接面33aである。
【0020】
支持部30の後部の上面34には、前後方向に間隔を空けて二つのねじ穴35,35が形成されている。ねじ穴35には、後記するボルト43が螺合される。
【0021】
支持部30内には、圧縮空気を流通させるための第一通気路38および第二通気路39が形成されている。
第一通気路38の一端は、当接部33の当接面33aに開口している。また、第一通気路38の他端は、支持部30の後端面に突設された第一プラグ38aに接続されている。
第二通気路39の一端は、載置部32の載置面32aに開口している。また、第二通気路39の他端は、支持部30の後端面に突設された第二プラグ39aに接続されている。
【0022】
支持部30の後部の上面34には、レール部材(図示せず)を介してスライド部37が連結されている。スライド部37は、支持部30の後部の上面34に対して前後方向に移動自在である。
【0023】
スライド部37には、上下方向に延びている収容穴37aが形成されている。収容穴37aは、上端部が開口している有底筒状の穴である。また、収容穴37aの底部には、挿通穴37bが上下方向に貫通している。
【0024】
爪部40は、上下方向に延びている軸部41と、軸部41の上端部から前方に向けて突出した挟持部42と、を備えている。
【0025】
軸部41は、上下方向に延びている部材であり、上端面から下端面に亘って挿通穴41aが貫通している。
軸部41の下部は、スライド部37の収容穴37aに挿入されている。軸部41は、収容穴37aに対して上下方向に移動自在である。
このように、爪部40は、支持部30のスライド部37に対して昇降自在に連結されている。また、爪部40は、スライド部37に連動して、支持部30に対して前後方向に移動可能である。
【0026】
軸部41の外周面には、軸方向に延びている係合溝41bが形成されている。係合溝41bには、スライド部37の収容穴37aの周壁部に取り付けられた係合ボルト37cの先端部が挿入されている。これにより、軸部41が軸回りに回転するのを防止しているとともに、軸部41が収容穴37aから抜けるのを防止している。
【0027】
軸部41の下端面と収容穴37aの底面との間には、弾性部材45が収容されている。弾性部材45は、軸部41が下降したときに、軸部41に対して上向きの押圧力を付与するものである。第一実施形態の弾性部材45はコイルばねである。
【0028】
挟持部42は、軸部41の上端部から前方に向けて突出している。スライド部37を前側に配置した
図2の状態では、挟持部42の前端部は、載置面32aの直上に配置されている。この状態では、挟持部42の前端部と載置面32aとが上下方向に対峙している。
爪部40は支持部30に対して昇降自在に連結されていることから、爪部40の挟持部42は、載置面32aに対して上下方向に進退自在である。
【0029】
爪部40の軸部41の挿通穴41aにはボルト43が挿通されている。ボルト43は、公知の六角穴付きボルトである。ボルト43の下部は、軸部41の下面から突出している。また、ボルト43の下部は、スライド部37の収容穴37aの底部の挿通穴37bに挿通されており、スライド部37の下面から突出している。
【0030】
ボルト43の下端部は、支持部30の前後のねじ穴35,35のいずれかに螺合される。スライド部37を前側に配置した
図2の状態では、ボルト43の下端部は前側のねじ穴35に螺合される。また、スライド部37を後側に配置した
図3の状態では、ボルト43の下端部は後側のねじ穴35に螺合される。
【0031】
ボルト43の頭部43aは、爪部40の軸部41の上面に係合している。このように、爪部40にボルト43が連結されている。
【0032】
図6に示すように、ボルト43を正回転させて前側のねじ穴35に入り込ませると、ボルト43とともに爪部40が支持部30に対して下降する。
これにより、挟持部42が載置面32aに対して下降し、挟持部42と載置面32aとの上下方向の間隔が狭くなる。このとき、爪部40の軸部41と収容穴37aの底面との間の弾性部材45は圧縮された状態となる。
【0033】
また、
図7に示すように、ボルト43を逆回転させてねじ穴35から抜き出すと、弾性部材45によって爪部40が押し上げられ、ボルト43とともに爪部40が支持部30に対して上昇する。
これにより、挟持部42が載置面32aに対して上昇し、挟持部42と載置面32aとの上下方向の間隔が広くなる。
【0034】
ロボットアームRは、
図2に示すように、多関節アームR1を有する公知の産業用ロボットである。多関節アームR1の先端部には、各種の工具を着脱可能である。また、ロボットアームRは、図示しない制御部が各種のプログラムを実行することで制御される。
【0035】
図2に示す多関節アームR1の先端部には、ボルト43の頭部43aの六角穴に嵌合可能なレンチR2を取り付けることができる。
ロボットアームRは、ボルト43の頭部43aの六角穴にレンチR2を連結させた状態で、レンチR2を正回転および逆回転させることで、ボルト43を正回転および逆回転させることができる。
【0036】
また、ロボットアームRは、
図5に示すように、ボルト43の頭部43aの六角穴にレンチR2を連結させた状態で、レンチR2を前後方向に移動させることで、爪部40およびスライド部37を前後方向に移動させることができる。
【0037】
次に、前記したクランプシステム1Aを用いたクランプ方法について説明する。
図3に示すように、プレート50に取り付けられる前のクランプ装置10では、スライド部37が後側に配置されており、ボルト43の下端部は後側のねじ穴35に螺合されている。これにより、スライド部37は、支持部30の後部に固定されている。なお、吸着部20は非吸着状態である。
また、プレート50は、オートパレットチェンジャー(APC)のパレットに設けられており、工作機械の加工室の外側に配置されている。
【0038】
ロボットアームRの多関節アームR1の先端部に把持具R3を取り付け、保管されているクランプ装置10を把持具R3によって把持する。
そして、ロボットアームRによってクランプ装置10をプレート50の上面に搬送し、プレート50の上面の所定位置にクランプ装置10を載置する。
なお、クランプ装置10をプレート50の上面に載置する位置は、ロボットアームRの制御部に予め入力されており、クランプ装置10によってワークWを保持するのに適した位置に設定されている。
【0039】
クランプ装置10をプレートの上面に配置した後に、吸着部20のコネクタ21に電源ケーブル(図示せず)を接続して吸着部20に電気を供給すると、吸着部20が吸着状態となる。これにより、吸着部20の下面がプレート50の上面に吸着され、プレート50の上面にクランプ装置10が位置決めされる。その後、コネクタ21から電源ケーブルを取り外す。
【0040】
吸着部20をプレート50に吸着させた後に、コンプレッサ(図示せず)の配管を支持部30の第一プラグ38aに接続する。そして、コンプレッサから第一通気路38に圧縮空気を供給して第一通気路38内の圧力を測定する。その測定値が予め設定された基準値以上である場合には、第一通気路38の当接面33a側の開口部がプレート50の上面によって塞がれていることになる。つまり、クランプ装置10の下面がプレート50の上面に密着して、クランプ装置10がプレート50の上面に安定して位置決めされている。
【0041】
続いて、ロボットハンドなどの搬送手段(図示せず)によって、ワークWをプレート50の上方に搬送し、ワークWのフランジ部W1を載置面32aに載置する。
【0042】
図4に示すように、ロボットアームRの多関節アームR1の先端部にレンチR2を取り付け、レンチR2をボルト43の頭部43aの六角穴に嵌合させる。そして、ロボットアームRによってレンチR2を逆回転させ、ボルト43を逆回転させることで、ボルト43を後側のねじ穴35から抜き出す。
ボルト43を後側のねじ穴35から抜き出していくと、弾性部材45によって爪部40が押し上げられ、爪部40が支持部30に対して上昇する。
【0043】
ボルト43の下端部を後側のねじ穴35から抜き出して、ボルト43の下端部が支持部30の上面34よりも上方に配置された状態になると、ロボットアームRはレンチR2の回転を停止する。これにより、支持部30に対してスライド部37が前後方向に移動可能となる。
そして、ロボットアームRは、
図5に示すように、ボルト43の頭部43aの六角穴にレンチR2を連結させた状態で、レンチR2を前方に向けて移動させる。これにより、爪部40およびスライド部37が前方に向けて移動する。
【0044】
スライド部37の挿通穴37bと支持部30の前側のねじ穴35とが連通する位置までスライド部37を移動させると、ロボットアームRはレンチR2の移動を停止する。このようにして、爪部40を前側に移動させると、挟持部42の前端部が載置面32aの直上に配置される。これにより、載置面32aに載置されたフランジ部W1の直上に挟持部42の前端部が配置される。
【0045】
続いて、
図6に示すように、ロボットアームRによってレンチR2を正回転させ、ボルト43を正回転させることで、ボルト43の下端部を前側のねじ穴35に入り込ませる。
ボルト43の頭部43aは、爪部40の上面に係合しているため、ボルト43がねじ穴35に入り込んでいくと、ボルト43とともに爪部40が支持部30に対して下降する。
これにより、挟持部42が載置面32aに対して下降し、挟持部42と載置面32aとの間にワークWのフランジ部W1が挟み込まれる。
【0046】
挟持部42と載置面32aとの間にワークWを挟み込んだ後に、コンプレッサ(図示せず)の配管を支持部30の第二プラグ39aに接続する。そして、コンプレッサから第二通気路39に圧縮空気を供給して第二通気路39内の圧力を測定する。その測定値が予め設定された基準値以上である場合には、第二通気路39の載置面32a側の開口部がワークWによって塞がれていることになる。つまり、ワークWが載置面32aに密着して、ワークWが載置面32aに安定して載置されている。
【0047】
続いて、クランプ装置10がワークWを保持した状態で、オートパレットチェンジャーのパレットを移動させて、治具2を工作機械の加工室内に供給する。
加工室内の各種センサやカメラによってワークWの位置を把握した後に、加工室内の加工手段によってワークWを加工する。
【0048】
ワークWの加工後は、オートパレットチェンジャーのパレットを移動させて、治具2を加工室から取り出し、
図7に示すように、ロボットアームRのレンチR2をボルト43の頭部43aの六角穴に連結する。そして、ロボットアームRによってボルト43を逆回転させて、ボルト43を前側のねじ穴35から抜き出す。
【0049】
ボルト43を前側のねじ穴35から抜き出していくと、弾性部材45によって爪部40が押し上げられ、爪部40が支持部30に対して上昇する。これにより、挟持部42と載置面32aとの間隔が広くなり、挟持部42がワークWのフランジ部W1から離れる。
このようにして、クランプ装置10がワークWを保持している状態を解除することで、加工済みのワークWを治具2から取り出すことができる。
【0050】
以上のような第一実施形態のクランプシステム1Aは、
図2に示すように、プレート50と、ワークWを保持するクランプ装置10と、クランプ装置10をプレート50の上面に吸着させる吸着部20と、を備えている。
【0051】
第一実施形態のクランプシステム1Aでは、吸着部20によってクランプ装置10をプレート50の上面に吸着させることで、クランプ装置10をプレート50の上面に位置決めすることができる。そのため、クランプ装置10をワークの形状に合わせて速やかにプレート50に取り付けることができる。
また、第一実施形態のクランプシステム1Aでは、プレート50の上面に対してクランプ装置10のレイアウトの自由度が高いため、各種形状のワークWを確実に保持することができる。
【0052】
第一実施形態のクランプ装置10の吸着部20は、電気によって吸着状態と非吸着状態とを切り換え可能な永電磁式磁石であるため、クランプ装置10をプレート50の上面に対して簡単に着脱することができる。
【0053】
第一実施形態のクランプシステム1Aのように、クランプ装置10に吸着部20を設けた場合には、プレート50の上面に対してクランプ装置10のレイアウトの自由度を高めることができる。
【0054】
第一実施形態のクランプシステム1Aは、クランプ装置10に着脱自在なロボットアームRを備えており、ロボットアームRを用いてクランプ装置10を搬送したり、クランプ装置10にワークWを保持させたりすることで、治具2にワークWを固定するときの作業効率を高めることができる。
【0055】
第一実施形態のクランプ装置10は、ワークWが載置される載置面32aが形成された載置部32と、載置部32に連結され、載置面32aに対峙した爪部40と、を備えている。爪部40は、載置面32aに対して進退自在である。ロボットアームRは、爪部40に着脱自在である。
この構成では、ロボットアームRによってクランプ装置10にワークWを保持させることができるため、ワークWの種類を変えるときの作業効率を高めることができる。
【0056】
第一実施形態のクランプ装置10の爪部40には、支持部30のねじ穴35に螺合されるボルト43が連結されている。ロボットアームRは、ボルト43に着脱自在である。そして、ボルト43をねじ穴35に出入することで、ボルト43に連動して爪部40が載置面32aに対して進退するように構成されている。
このように、ロボットアームRを爪部40に連結し易くするとともに、ロボットアームRによって爪部40を移動させ易くすることが好ましい。
【0057】
第一実施形態のクランプ装置10は、プレート50の上面に載置されるものであって、ワークWが載置される載置面32aが形成された支持部30と、支持部30に連結され、載置面32aに対峙した爪部40と、を備えている。支持部30には、プレート50の上面に当接する当接面33aを有する当接部33が形成されている。支持部30内には、当接面33aに開口している第一通気路38が形成されている。
【0058】
この構成では、プレート50の上面に載置した状態で、コンプレッサから第一通気路38に圧縮空気を供給し、第一通気路38内の圧力を測定することで、クランプ装置10とプレート50の上面との接合状態を把握することができる。これにより、クランプ装置10をプレート50の上面に速やかに安定して位置決めすることができる。
【0059】
第一実施形態のクランプ方法は、プレート50の上面にクランプ装置10を載置する段階と、吸着部20によってクランプ装置10をプレート50の上面に吸着させる段階と、載置面32aにワークWを載置する段階と、を備えている。さらに、ロボットアームRによって爪部40を移動させて、爪部40と載置面32aとの間にワークWを挟み込む段階を備えている。
この構成では、クランプ装置10をワークWの形状に合わせて速やかにプレート50に取り付けることができるとともに、ロボットアームRによってクランプ装置10にワークWを保持させることができる。
したがって、ワークWの種類を変えるときの作業効率を高めることができる。これにより、オートパレットチェンジャーの一方のパレットに設けられた治具2に固定したワークWを加工している間に、オートパレットチェンジャーの他方のパレットに設けられたプレート50にクランプ装置10を取り付けることができる。
【0060】
以上、本発明の第一実施形態について説明したが、本発明は前記第一実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
第一実施形態の吸着部20は、
図2に示すように、電気によって吸着状態と非吸着状態とを切り換える永電磁式磁石であるが、吸着部20の構成は限定されるものではない。
例えば、電気によって吸着状態と非吸着状態とを切り換える静電チャックや電磁石によって吸着部20を構成してもよい。また、吸着部20の下面に開口部を形成し、吸着部20の内部を真空にすることで、吸着部20の下面をプレート50の上面に吸着させてもよい。
【0061】
第一実施形態では、プレート50の表面の法線が上方に向けて延びており、プレート50の上面にクランプ装置10が取り付けられているが、プレート50の向きは限定されるものではない。例えば、プレート50の表面の法線が鉛直方向に対して傾くようにプレート50を傾斜させてもよい。
【0062】
第一実施形態では、吸着部20をプレート50の表面に吸着させた後に、クランプ装置10にワークWを保持させているが、ワークWにクランプ装置10を取り付けた後に、プレート50の表面にクランプ装置10およびワークWを吸着させてもよい。
【0063】
[第二実施形態]
次に、第二実施形態のクランプシステム1Bについて説明する。
第二実施形態のクランプシステム1Bは、
図8に示すように、前記した第一実施形態のクランプシステム1A(
図2参照)と略同様な構成であり、プレート50に吸着部20が設けられている点が異なっている。
第二実施形態のクランプシステム1Bでは、プレート50の上面の所定の領域に永電磁式磁石である吸着部20が設けられている。
なお、第二実施形態のクランプ装置10において、支持部30の下面は、プレート50の上面に当接する当接面であり、この当接面に第一吸気路38の一端が開口している。
【0064】
第二実施形態のクランプシステム1Bを用いたクランプ方法では、クランプ装置10をプレート50の上面に配置した後に、吸着部20に電気を供給すると、吸着部20が吸着状態となる。これにより、吸着部20の上面にクランプ装置10の支持部30の下面(当接面)が吸着され、プレート50の上面にクランプ装置10が位置決めされる。
【0065】
第二実施形態のクランプシステム1Bのように、プレート50に吸着部20を設けた場合には、吸着部の吸着状態と非吸着状態とを切り換える構造を設けるスペースを確保し易くなる。
【0066】
以上、本発明の第二実施形態について説明したが、本発明は前記第二実施形態に限定されることなく、前記第一実施形態と同様に、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
【符号の説明】
【0067】
1A クランプシステム(第一実施形態)
1B クランプシステム(第二実施形態)
2 治具
10 クランプ装置
20 吸着部
21 コネクタ
30 支持部
32 載置部
32a 載置面
33 当接部
33a 当接面
35 ねじ穴
36 通気路
37 スライド部
37a 収容穴
37b 挿通穴
40 爪部
41 軸部
41a 挿通穴
42 挟持部
43 ボルト
43a 頭部
45 弾性部材
50 プレート
R ロボットアーム
R1 多関節アーム
R2 レンチ
R3 把持具
W ワーク
W1 フランジ部