IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 倉敷紡績株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-一体押出成形体の組立体及び建築用部材 図1
  • 特許-一体押出成形体の組立体及び建築用部材 図2
  • 特許-一体押出成形体の組立体及び建築用部材 図3
  • 特許-一体押出成形体の組立体及び建築用部材 図4
  • 特許-一体押出成形体の組立体及び建築用部材 図5
  • 特許-一体押出成形体の組立体及び建築用部材 図6
  • 特許-一体押出成形体の組立体及び建築用部材 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】一体押出成形体の組立体及び建築用部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 7/18 20060101AFI20220517BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20220517BHJP
   F16B 35/04 20060101ALI20220517BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20220517BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20220517BHJP
【FI】
F16B7/18 Z
F16B5/02 U
F16B35/04 M
F16B5/02 A
E04B1/58 509E
B29C48/15
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018057609
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019168071
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】輪湖 潤一
【審査官】杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/103992(WO,A1)
【文献】特開2005-120585(JP,A)
【文献】特開平11-351213(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039369(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/006707(WO,A1)
【文献】特開平04-327007(JP,A)
【文献】実開昭62-059668(JP,U)
【文献】実開平02-143514(JP,U)
【文献】特開2002-120333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/18
F16B 5/02
B29C 48/15
F16B 35/04
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の芯材の表面の一部に木粉を含有する合成樹脂製の被覆層を有する一体押出成形体を互いの接合面同士を対向させて複数個組み合わせた一体押出成形体の組立体であって、
前記一体押出成形体は、前記接合面に隣接し前記組み立て時に外側に露出する露出面及び前記接合面の間に形成される縁端同士が密着し、前記組立て時に各一体押出成形体の露出面が前記縁端間で段差なく連続する形状をなし、
前記被覆層は、前記露出面から前記縁端を通って前記接合面に到達し、前記接合面の一部のみを被覆するように形成され、
前記少なくとも一方の一体押出成形体の接合面の前記被覆層が形成されていない部分に、前記接合面に開口し前記複数の一体押出成形体の固定用ボルトの脚部が挿通可能な前記押出方向に延びる固定具収納溝を有する前記固定機構を有し、
前記固定機構は、
前記一体押出成形体の少なくとも一方に前記固定具収納溝の両端側に、固定用ボルトの頭部をその軸回りに回転できない間隔をおいて前記押出方向に互いに平行に延び、前記固定用ボルトの頭部を両端から支持する、一対のボルト支持壁を有することを特徴とする、一体押出成形体の組立体。
【請求項2】
前記一体押出成形体は、前記被覆層と前記芯材との間に接着層を有することを特徴とする、請求項1に記載の一体押出成形体の組立体。
【請求項3】
前記固定機構は、
前記一対のボルト支持壁の端部同士を接続し、前記接合面に略平行に構成される中間壁を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の一体押出成形体の組立体。
【請求項4】
前記一体押出成型体のそれぞれは、前記ボルト支持壁と中間壁を有する同じ形状に構成され、少なくとも一方側の中間壁に前記固定用ボルトの脚部が貫通可能な貫通孔が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の一体押出成形体の組立体。
【請求項5】
前記固定具収納溝は、前記一体押出成形体の厚み方向中間部分に位置し、
前記一体押出成形体は、前記接合面の前記固定具収納溝の両側に、前記一体押出成形体の押し出し方向に延び互いに凹凸により嵌り合うずれ防止部を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の一体押出成形体の組立体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の一体押出成形体の組立体からなる建築用部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、金属製芯材入り一体押出成形体を組み合わせた複合体および建築用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製芯材入り一体押出成形体として、特許文献1など(特開2002-120333号公報)に、アルミニウムなどの金属からなる基材と基材に押出被覆される被覆層とを有し、該被覆層が少なくとも熱可塑性合成樹脂、特にポリエチレン、および木粉を含む構成の押出成形体が知られている。このような一体押出成形体は被覆層に木粉が含有されるため、上質な木質感が得られる。
【0003】
上記した一体押出成形体は、押し出し方向に直行する方向である幅方向が大きくなると押出成形のための金型の費用が増大する。そこで、所定の幅を超える一体押出成形体は、幅狭の一体押出成形体を複数組み合わせて幅広のものとする一体押出成形体が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-120333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、複数の一体押出成形体を組み合わせると、それぞれの一体押出成形体の境界部分が外部から目立ち、見栄えが悪くなるという問題があった。また、一体押出成形体の被覆層は木粉が含有した合成樹脂層で形成され、比較的柔らかく構成されているため、単に複数の一体押出成形体を組み合わせるだけでは、十分な強度を持って固定することは困難である。また、十分な強度による固定が実現できない場合、上記の一体押出成形体の境界がより目立つという問題があった。
【0006】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、金属製芯材の一部にのみ被覆層が設けられている一体押出成型品を用い、安価に且つ優れた外観を有する幅広の一体押出成型品の組立体、及び当該組立体を用いた建築用部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の一体押出成形体及び建築用部材を提供する。
【0008】
本発明の第1態様によれば、金属製の芯材の表面の一部に木粉を含有する合成樹脂製の被覆層と有する一体押出成形体を互いの接合面同士を対向させて複数個組み合わせた一体押出成形体の組立体であって、
前記一体押出成形体は、前記接合面に隣接し前記組み立て時に外側に露出する露出面及び前記接合面の間に形成される縁端同士が密着し、前記組立て時に各一体押出成形体の露出面が前記縁端間で段差なく連続する形状をなし、
前記被覆層は、前記露出面から前記縁端を通って前記接合面に到達し、前記接合面の一部のみを被覆するように形成され、
前記少なくとも一方の一体押出成形体の接合面の前記被覆層が形成されていない部分に、前記接合面に開口し前記複数の一体押出成形体の固定用ボルトの脚部が挿通可能な前記押出方向に延びる固定具収納溝を有する前記固定機構を有し、
前記固定機構は、
前記一体押出成形体の少なくとも一方に前記固定具収納溝の両端側に、固定用ボルトの頭部をその軸回りに回転できない間隔をおいて前記押出方向に互いに平行に延び、前記固定用ボルトの頭部を両端から支持する、一対のボルト支持壁を有することを特徴とする、一体押出成形体の組立体を提供する。
【0009】
本発明の第2態様によれば、前記一体押出成形体は、前記被覆層と前記芯材との間に接着層を有することを特徴とする、第1態様の一体押出成形体の組立体を提供する。
【0010】
本発明の第3態様によれば、前記固定機構は、
前記一対のボルト支持壁の端部同士を接続し、前記接合面に略平行に構成される中間壁を有することを特徴とする、第1又は第2態様の一体押出成形体の組立体を提供する。
【0011】
本発明の第4態様によれば、前記一体押出成型体のそれぞれは、前記ボルト支持壁と中間壁を有する同じ形状に構成され、少なくとも一方側の中間壁に前記固定用ボルトの脚部が貫通可能な貫通孔が設けられていることを特徴とする、第3態様の一体押出成形体を提供する。
【0012】
本発明の第5態様によれば、前記固定具収納溝は、前記一体押出成形体の厚み方向中間部分に位置し、
前記一体押出成形体は、前記接合面の前記固定具収納溝の両側に、前記一体押出成形体の押し出し方向に延び互いに凹凸により嵌り合うずれ防止部を有することを特徴とする第1から第4態様のいずれか1つの一体押出成形体を提供する。
【0013】
上記の一体押出成型体は、建築用化粧材、建築用手摺り、防犯用面格子、デッキ材、バルコニールーバー等の建築用部材として用いることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属製芯材の一部にのみ被覆層が設けられている一体押出成型品を複数組み合わせることで、幅広の一体押出成形体の組立体を得ることができる。したがって、幅広の一体押出成形体を製造するのに対して安価とすることができる。また、複数の押出成形体は、縁端同士が密着し、前記組立て時に各一体押出成形体の露出面が前記縁端間で段差なく連続する形状であり、且つ、接合面の一部のみに被覆層が配置されているため、金属製芯材の部分で互いの接合面が密着する。したがって、一体押出成形体を強固に固定することができる。
【0015】
また、接合面に取り付けられた固定機構は、固定用ボルトの頭部を支持し、押し出し方向に平行に伸びる支持壁を有するため、ボルトの位置を押し出し方向に調整することが可能である。したがって、2つの一体押出成形体の位置を押出方向に調整して固定することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態にかかる一体押出成形体の組立体の構成を模式的に示す斜視図である。
図2図1の一体押出成形体の組立体に使用される複数の一体押出成形体の接合部分の拡大断面図である。
図3図1の一体押出成形体の接合面に形成される固定機構の構成を示す拡大斜視図である。
図4図1の一体押出成形体の接合面に形成される固定機構の構成を示す他の角度から見た拡大斜視図である。
図5】本実施形態にかかる一体押出成型体の組立体をボルトとナットを用いて固定した状態を示す部分拡大断面図である。
図6】本発明の実施形態の一体押出成型体の組立体を構成する一体押出成形体を製造するための共押出式の一体押出成形機の構成を模式的に示す断面図である。
図7】本実施形態にかかる一体押出成型体の剥離防止構造の他の例を模式的に示す部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る一体押出成形体の組立体について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態にかかる一体押出成形体の組立体1は、2つの一体押出成形体2を互いの接合面10を密着させた状態に組み合わせて固定した構成である。
【0019】
本明細書中、一体押出成形とは、芯材を送り出しながら芯材の表面に付される被覆層の材料を押出成形すると同時に、被覆層を送り込まれた芯材に順次被覆して一体化することを意味する。また、一体押出成形で形成された成形体を一体押出成形体という。また、一体押出成形体は、製造の特性上、押出方向に直交する断面は、いずれも同形状となる。
【0020】
以下、本実施形態にかかる一体押出成形体の組立体の方向の説明において、一体押出成形体の押出方向M、押出方向Mに直行し接合面10に沿った方向を厚み方向、押出方向M及び厚み方向の双方に直行する方向を幅方向と定義する。
【0021】
本実施形態にかかる複数の一体押出成形体2は、複数の断面が略矩形の筒状を有し、いずれも同じ構造を有する。複数の一体押出成形体2は、外周面のうち、互いの接合面10を密着させた状態で組み合わせ、接合面10に開口する固定具収納溝12に挿入されたボルト3及びナット4により固定する。すなわち、一体押出成形体の組立体1を構成する面のうち、一体押出成形体2の接合面10以外の面が露出面11となる。
【0022】
露出面11は、接合面10に隣接し、断面形状において幅方向に延びる上下露出面11aと、接合面10に対向し、断面形状において厚み方向に延びる側部露出面11bとを備える。すなわち、一体押出成形体の組立体1は、全体として断面形状が矩形に構成され、幅方向中央部に厚み方向に延びる接合面10を有する構成である。
【0023】
一体押出成形体2は、上下露出面11aと接合面10の間に押し出し方向Mに沿って直線状に延びる縁端14を有する。一体押出成形体の組立体1において、2つの一体押出成形体2の縁端14が密着する境界9は、段差なく連続する。また、上下露出面11aの表面に付される、後述するサンディング加工部13(図2参照)により、境界9は外部から認識できない程度に加工されている。
【0024】
一体押出成形体2は、芯材5の外側に被覆層6を有し、該被覆層6と芯材5との間にさらに接着層7を有する。具体的には、図1及び図2に示すように、被覆層6および接着層7は、芯材5の表面に積層した状態に配置され、一体押出成形体2の押し出し方向Mにおいて連続的に形成される。接着層7は被覆層6と芯材5との間に位置する。被覆層6および接着層7は、芯材5の露出面11の全体及び接合面10の一部にのみ形成される。
【0025】
一体押出成形体2の芯材5は、アルミニウムまたはアルミニウム合金、ステンレス、亜鉛メッキ鋼、銅等の金属からなるものであり、建築用部材として必要な軽量性及び加工容易性の観点から好ましくアルミニウムまたはアルミニウム合金が好適である。なお、一例として、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる中空または中実の芯材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の押出成形により形成可能である。特に中空形状やコ字形状・L字形状等種々の異形状の断面を有する芯材の製造には、押出成形が有用である。なお、本発明において「アルミ製」とは、「アルミニウム合金製」もその範疇に含むものである。芯材の断面とは芯材の押出方向に対して垂直な方向の芯材断面である。
【0026】
アルミ製芯材が中空の形態を有する場合、平板形状を有する場合、および異形状断面を有する場合のアルミ部分の厚みは0.8~5.0mm、特に1.1~3.0mmであることが、アルミの剛性及び押出加工性の観点から好ましい。また芯材が中空または中実の形態を有する場合の全体寸法は特に制限されるものではなく、得られる一体押出成形体の用途に応じて適宜設定されればよい。なお、建築用部材としての剛性及び表面加飾性が求められることからすれば、前記厚みに加えて、芯材幅方向として20mm以上、好ましくは30mm以上の長さを有することが好ましい。
【0027】
芯材5は中空または中実に構成される。その断面形状は特に制限されない。また、例えば、図1に示すように、厚み方向に2つの上下露出面11aを有する断面形状が中空矩形に構成された形状の他に、断面において接合面10の一方側にのみ上下露出面11aを有するいわゆる断面コの字状などの形状であってもよい。
【0028】
芯材5の断面形状は、特に制限されるものではなく、例えば、三角形以上の多角形形状や、接合面以外が円弧状に形成された形状等であってよい。
【0029】
一体押出成形体を建築用部材として使用する場合において芯材5は、図1および図2に示すような各面が平坦に構成された形状だけに限定されない。例えば、一体押出成形体2の厚み方向又は幅方向において、露出面11の一部の厚みが異なる凹凸形状を有していてもよい。
【0030】
被覆層6及び接着層7は、芯材5の露出面11及び接合面10の一部分にのみ設けられている。ただし、後述するように被覆層6は木材のような外観を有し、一体押出成形体の表面装飾性の向上のために、露出する外表面以外の面、例えば、断面コの字状に構成された一体押出成形体の場合には、使用時において外部から視認可能な内側の面にも設けてもよい。
【0031】
本実施形態にかかる一体押出成形体2の接合面10に位置する被覆層6の端面は、後述するように、芯材5に形成された被覆層保護リブ15で覆われ、被覆層6の剥離が防止される。
【0032】
被覆層6は少なくともベース樹脂および木粉を含有する樹脂層である。ベース樹脂はポリオレフィン系樹脂が好適に使用できる。ポリオレフィン系樹脂は1種類または2種類以上のα-オレフィンをモノマーとして含有する単独重合体または共重合体である。α-オレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ヘキセンのような炭素原子数2~8、好ましくは2~6のα-オレフィンが挙げられる。好ましいα-オレフィンは、エチレン、プロピレンである。ポリオレフィン系樹脂はモノマーとしてα-オレフィン以外の他のモノマーを含有してもよい。そのような他のモノマーとして、例えば、酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが挙げられる。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂の具体例として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。好ましいポリオレフィン系樹脂はポリオレフィン、特にポリエチレン、ポリプロピレンである。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂は、従来から公知の方法、例えば、懸濁重合法、溶液重合法等によって製造できるし、または市販品として入手することもできる。特にポリオレフィン系樹脂としてのポリオレフィンは、廃棄されたポリオレフィン製品由来の再生品を利用することもできる。不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂の市販品として、例えば、ユーメックス1010(三洋化成工業社製)等が使用できる。
【0035】
本実施形態においては、ベース樹脂にポリオレフィン系樹脂以外の他の樹脂が含有されることを妨げるものではない。他の樹脂として、例えば、アクリルニトリルブタジエンスチレン樹脂が挙げられる。
【0036】
木粉は、スギ、ヒノキ、ベイツガ等の木材、ならびにそのような木材の端材および廃材を粉砕したもの、おが屑等が好適に用いられ、その粒径は10~500メッシュのものを用いることができるが、より好適なのは60~100メッシュ程度である。木粉として端材および廃材を粉砕したものを用いると、環境負荷が低減されるので好ましい。
【0037】
木粉の含有量はポリオレフィン系樹脂100重量部に対して5~50重量部、好ましくは10~40重量部である。
【0038】
被覆層6は単層であってもよいが、2層以上の多層に構成されていてもよい。多層の被覆層は、後述する被覆層6の形成工程において2層以上が同時に一体成形することにより設置することができる。
【0039】
被覆層6の厚みは、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、接着性、外観性、生産性の観点から好ましくは0.7~5mmである。触ったときの木質感および被覆層の接着性のさらなる向上の観点から、被覆層の厚みは1~3mm、特に1.5~2.5mmが好ましい。被覆層が多層型の場合、それらの合計厚みが上記範囲内であればよい。
【0040】
接着層7はエポキシを含有するポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂を用いることが好ましい。このようなエポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂は少なくともα-オレフィンとエポキシ基含有不飽和モノマーを重合させてなる共重合体である。エポキシ基含有ポリオレフィン系樹脂を用いることにより、接着層と被覆層との接着性および接着層と芯材との接着性が向上し、結果として被覆層の芯材に対する接着性が向上する。
【0041】
接着層の厚みは、本発明の目的が達成される限り特に制限されず、接着性、生産性の観点から好ましくは0.05~0.5mmであり、より好ましくは0.1~0.3mmである。
【0042】
本発明の一体押出成形体は、生産性、長尺物成形、製品特性の一定性という面から、被覆層6および接着層7の押出成形と同時に被覆層6および接着層7を芯材と一体化させる、いわゆる一体押出法によって製造される。例えば、図6に示す共押出式の一体化押出成形機において、それぞれ接着層及び被覆層を形成する材料を溶融・混練するための各押出機(図6中、6a,7b)より押し出された樹脂を1個のダイス8内で積層すると同時に、それらの層を、送り込まれた芯材5に順次被覆して一体化する。一体化された後は、通常、冷却され、所望の長さ寸法に切断される。図6では被覆層6及び接着層7用にそれぞれ1台の押出機が使用されているが、これに制限されず、被覆層6を多層化するときは、その数に応じて適宜設置することができる。
【0043】
このようにして構成された、芯材は、押出方向に沿って同形状の断面を有し、押出時において、ダイス8にしたがった形状に被覆層6,接着層7が形成される。
【0044】
図2から図5は、本実施形態にかかる一体押出成型体の組立体1及び組立体1を構成する一体押出成形体2の構造を示す部分拡大図である。一体押出成型体の組立体1を構成する一体押出成形体2は、接合面10に隣接し前記組み立て時に外側に露出する露出面11aと接合面10の間に形成される縁端14同士が密着し、組立て時に各一体押出成形体の前記露出面11aが縁端14間で段差なく連続する形状を有する。
【0045】
図2に示すように、一体押出成型体の組立体1は、露出面11のうち、少なくとも縁端14同士の境界9を含む上下露出面11aに被覆層6の表面に、連続する一体押出成型体に一体的に形成されたサンディング加工部13を備える。なお、サンディング加工部13の厚さ寸法は、特に限定されない。ただし、被覆層6には、サンディング加工部13が配置されない非加工部13aを残存させておくことが好ましい。
【0046】
サンディング加工部13は、被覆層6の表面を境界9に沿った方向、すなわち押し出し方向に沿って、やすりなどを用いて被覆層6の表面を荒く加工して形成される。サンディング加工を行うことによって、被覆層6の表面に凹凸が形成され、露出面11を木目調の外観とすることができる。また、サンディング加工は、露出面11を木目調の外観とする以外に、2つの一体押出成形体2の境界9を隠蔽し、外部から視認しにくくする。
【0047】
一体押出成型体2は、被覆層6を露出面11aから接合面10の一部にわたって形成しているため、露出面11aと接合面10の間に形成される縁端14に位置する被覆層6同士の密着を確保することができる。また、被覆層6を接合面10の一部にのみ合成樹脂で作られた被覆層6を配置することにより、接合面10は金属製の芯材5同士が密着することとなり、被覆層6の変形に伴う一体押出成型体2同士のがたつきを少なくすることができる。
【0048】
図2に示すように、一体押出成型体2は、被覆層6の端部での剥離を防止するための構成として、被覆層保護リブ15を接合面10に有する。被覆層保護リブ15は、接合面10に配置される被覆層6の端部を被覆することによって、当該被覆層の端部6からの剥離を防止する。
【0049】
一体押出成型体2にそれぞれ形成される被覆層保護リブ15は、露出面11aからの奥行き距離が異なり、一体押出成型体2の組み立て時に互いに干渉しない位置に設けられている。
【0050】
また、一体押出成型体2は、接合面10の被覆層保護リブ15の厚み方向奥側に、一体押出成型体2が厚み方向に位置ずれすることを防止するずれ防止部16,17が設けられている。ずれ防止部16は、ずれ防止突部16とずれ防止凹部17によって構成される。ずれ防止突部16とずれ防止凹部17は、接合面10に対して付された凹凸であり、互いに嵌り合うことで、一体押出成型体2の厚み方向へ位置ずれを防止する。
【0051】
一体押出成型体2は、図3及び図4に示すように、接合面10の厚み方向中央部に、隣接する一体押出成形体を密着した状態に固定する固定機構18を備える。固定機構18は、接合面10に開口する固定具収納溝12を囲うように付された断面コの字状に形成されている。
【0052】
具体的には、固定機構18は、固定具収納溝12の両端から幅方向に延びる一対のボルト支持壁19と、ボルト支持壁19の端部をつなぐ中間壁20とを備える。なお、固定具収納溝12の開口の厚み方向寸法Bは、ボルト3の脚部3bを通し、頭部3aが軸方向に通過できない大きさである。
【0053】
一対のボルト支持壁19は、固定具収納溝12に挿入されるボルト3の頭部3aを厚み方向挟んで支持する。すなわち、ボルト支持壁19間の距離Aは、ボルト3の頭部3aが、ボルトの軸回りに回転できない間隔となっている。
【0054】
中間壁20は、他方の一体押出成型体2に付されるナット4を支持する支持面として機能する。中間壁20には、所定の位置にボルト3の脚部3bが貫通可能な貫通孔21が設けられている。なお、貫通孔21は、他方の一体押出成型体2の中間壁20にのみ設けることもできる。すなわち、貫通孔は、少なくとも一方側の一体押出成型体2の中間壁20に形成されている。
【0055】
図5に示すように、一方の一体押出成型体2のボルト支持壁19の間に収納されたボルト3は、脚部3bが固定具収納溝12から密着面10の外側まで突出した状態となる。
【0056】
一方の一体押出成型体2に支持されたボルトの脚部3bは、他方の一体押出成形体の定具収納溝12を通り、中間壁20の貫通孔21を貫通する。中間壁20の貫通孔21を貫通したボルト3の脚部3bは、他方の一体押出成形体の中間壁20の表面に位置するナット4と螺号する。これにより、2つの一体押出成形体2がボルト3とナット4によって固定される。
【0057】
本実施形態にかかる一体押出成形体の組立体1は、次のようにして製造される。まず、上述した構成を有する複数の一体押出成形体2を押出成形により製造する。本実施形態では、複数の一体押出成形体2は、同じ構造を有する。また、この一体押出成形体2は、露出面11にサンディング加工部は形成されていない。
【0058】
次に、一方の一体押出成形体の固定機構18に固定用のボルトを挿入する。上記のように、一方の一体押出成型体2のボルト支持壁19の間に収納されたボルト3は、脚部3bが固定具収納溝12から密着面10の外側まで突出した状態となる。
【0059】
次いで、他方の一体押出成形体2の貫通孔21にボルト3の脚部を貫通させる。なお、この段階では、2つの一体押出成形体2の押し出し方向の位置がずれていてもよいが、ボルト3とナット4を固定する前に、2つの一体押出成形体2の押し出し方向の位置合わせをする。上記のように、密着面10に形成されたずれ防止部16,17は、押し出し方向に同じ断面形状を有するため、一体押出成形体2の押し出し方向の位置合わせを容易にすることができる。
【0060】
2つの一体押出成形体2の押し出し方向の位置合わせが終了すると、使用時に外側に露出する露出面11の縁端14同士が密着するように互いの接合面10同士を対向させて組み合わせる。次いで、他方の一体押出成形体2の貫通孔21を貫通したボルト3の脚部3bにナット4を取り付け、2つの一体押出成形体2を固定する。2つの一体押出成形体2を組み合わせることで、幅広の一体押出成形体の組立体を得ることができる。
【0061】
2つの一体押出成形体2を固定した後、露出面11にサンディング加工を施し、2つの一体押出成形体2の露出面に一体的にサンディング加工部13を形成する。上記のように、サンディング加工は、一体押出成形体2の押し出し方向に沿って行うことで、一体押出成形体2間の境界9を外部から視認しにくくすることができる。
【0062】
本実施形態の一体押出成形体の組立体は、建築用化粧材、建築用手摺り、防犯用面格子、デッキ材、バルコニールーバー等の建築用部材、および家具、什器、照明器具等の部材として有用である。特に幅広の建築用部材を複数の一体押出成形体2を組み合わせ、また、複数の一体押出成形体の露出面に一体的に形成されたサンディング加工部により、境界を隠蔽することができる。このため、本実施形態にかかる一体押出成形体の組立体は、安価な幅広の建築用素材として有用である。
【0063】
以上説明したように、本実施形態にかかる一体押出成形体によれば、金属製芯材の一部にのみ被覆層が設けられている一体押出成型品を複数組み合わせることで、幅広の一体押出成形体の組立体を得ることができる。したがって、幅広の一体押出成形体を製造するのに対して安価とすることができる。また、複数の押出成形体は、縁端同士が密着し、前記組立て時に各一体押出成形体の露出面が前記縁端間で段差なく連続する形状であり、且つ、接合面の一部のみに被覆層が配置されているため、金属製芯材の部分で互いの接合面が密着する。したがって、一体押出成形体を強固に固定することができる。
【0064】
また、接合面に取り付けられた固定機構は、固定用ボルトの頭部を支持し、押し出し方向に平行に伸びる支持壁を有するため、ボルトの位置を押し出し方向に調整することが可能である。したがって、2つの一体押出成形体の位置を押出方向に調整して固定することが容易である。
【0065】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。例えば、2つの一体押出成形体は、同じ構造を有する必要はなく、異なる固定機構を有することもできる。例えば、図7に示すように、ボルト3が固定される一方の一体押出成形体2のみに、支持壁19及び中間壁20を形成し、他方の一体押出成形体2には、固定具収納溝12又は押し出し方向に連続しない貫通孔のみを形成してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 一体押出成形体の組立体
2 一体押出成形体
3 ボルト
4 ナット
5 芯材
6 被覆層
7 接着層
6a,7a 押出機
8 ダイス
9 境界
10 接合面
11 露出面
11a 上下露出面
11b 側部露出面
12 固定具収納溝
13 サンディング加工部
13a 非加工部
14 縁端
15 被覆層保護リブ
16 ずれ防止突部
17 ずれ防止凹部
18 固定機構
19 ボルト支持壁
20 中間壁
21 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7