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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】シール除去装置及びシール除去方法
(51)【国際特許分類】
   B25B 27/073 20060101AFI20220517BHJP
   F16J 15/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B25B27/073 A
F16J15/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018058256
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019166618
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-01-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 貝谷印刷株式会社が平成30年1月22日に発行した販売カタログ「2018新春Honda汎用サービス機器キャンペーン」
(73)【特許権者】
【識別番号】517237746
【氏名又は名称】興和精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】刑部 功
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-047776(JP,U)
【文献】特開平08-118252(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 27/073
F16J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(53)が貫通するハウジング(51)の軸穴部(52a)に嵌着された軸封シール(54)を前記軸穴部から除去するシール除去装置(1)であって、
基端が閉塞され先端が開口する円筒体形状をなし、前記回転軸を導入する空間(11)を形成する装置本体(10)と、
前記装置本体の基端側に把持可能に設けられたグリップ部(14)と、
前記装置本体の先端側に設けられ前記軸穴部に挿入される略円筒状の噛み込み部(15)と、を備え、
前記グリップ部(14)に、滑り止め加工が施されるとともに、
前記噛み込み部は、前記軸穴部の内周壁面に向って突出するねじ山部分(17)と、該ねじ山部分と交差する縦方向の切欠き溝(18a、18b、18c、18d)に沿って形成された複数のねじ切り刃部分(19)と、を有しており、
前記装置本体には、閉塞された前記基端から前記空間に達する中心軸方向の雌ねじ孔部(12)が形成される一方、
該雌ねじ孔部にねじ結合する突起部(22)を有する回転操作部材(20)が、前記装置本体の前記基端側の端面上に着脱可能に装着されており、
前記回転操作部材が前記装置本体に装着されているときには、前記回転軸を前記空間内に導入した前記装置本体を、前記回転操作部材により前記噛み込み部のねじ込み方向に回転操作することで、前記噛み込み部を前記軸封シールに抜け止め状態に噛み込ませ、
前記回転操作部材が前記装置本体から離脱しているときには、前記噛み込み部が前記軸封シールに抜け止め状態に噛み込んだ前記装置本体の前記雌ねじ孔部に、前記軸封シールの取り出しを補助するためのボルト状の取出し補助部材(30)をねじ結合させて、前記回転軸に突き当たるようにねじ込み操作することで、前記軸封シールを前記軸穴部から除去させるようにしたことを特徴とするシール除去装置。
【請求項2】
前記噛み込み部の前記ねじ山部分は、前記グリップ部から離隔する先端側になるに従って漸次縮径する外面テーパー形状を有することを特徴とする請求項1に記載のシール除去装置。
【請求項3】
前記軸封シールが、前記軸穴部への嵌着用の金属環(54d)を有しており、前記噛み込み部の前記ねじ山部分が、前記金属環の内周部にねじ切り状態で噛み込み可能であることを特徴とする請求項1または2に記載のシール除去装置。
【請求項4】
回転軸(53)が貫通するハウジング(51)の軸穴部(52a)に嵌着された軸封シール(54)を前記軸穴部から除去するシール除去方法であって、
前記回転軸を導入する空間(11)を形成する円筒体形状の閉塞された基端側に、滑り止め加工されたグリップ部(14)と前記基端から前記空間に達する中心軸方向の雌ねじ孔部(12)とが形成され、前記軸穴部に挿入される先端側には、前記軸穴部の内周壁面に向って突出するねじ山部分(17)と、該ねじ山部分と交差する縦方向の切欠き溝(18a、18b、18c、18d)に沿って形成された複数のねじ切り刃部分(19)とを有する略円筒状の噛み込み部(15)が形成された装置本体(10)を準備するとともに、
前記雌ねじ孔部にねじ結合する突起部(22)を有する回転操作部材(20)と前記雌ねじ孔部にねじ結合可能なボルト状の取出し補助部材(30)とを準備しておき、
前記回転軸を前記装置本体の前記空間内に導入した後、
前記装置本体を前記回転操作部材により前記噛み込み部のねじ込み方向に回転操作することで、前記噛み込み部を前記軸封シールに抜け止め状態に噛み込ませ、
該抜け止め状態下で、前記回転操作部材を前記装置本体の前記雌ねじ孔部から離脱させて、前記雌ねじ孔部に前記ボルト状の取出し補助部材(30)をねじ結合させ、
該取出し補助部材を前記回転軸に突き当てながら前記ねじ込み方向に回転させることで、前記軸封シールを前記軸穴部から除去させることを特徴とするシール除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール除去装置及びシール除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、固着物を除去するものとして特許文献1に開示されたものが知られている。この特許文献1に開示された固着物除去用工具は、対象物の表面に固着した異物を除去するようになっており、回転工具に取り付ける基体2と、基体2に対して所定範囲内で回動可能に支持されている腕部3と、腕部3と基体2との間に配位される衝撃吸収手段4と、を有し、腕部3の先端には打撃部が形成された構成となっている。
【0003】
このような構成を有する固着物除去用工具は、高速回転した打撃部が、固着物へ強く衝突することにより、固着物を確実に、かつ効率よく除去することができる。しかも、その際に生じる反動は、衝撃吸収手段4によって吸収されるので、対象物自体を傷めることはない。又、作業者へ伝わる振動が小さくなり、負担も大幅に軽減され、加えて騒音も軽減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-216460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来、例えば、回転軸が貫通するハウジングの軸穴部に嵌着されたオイルシール、いわゆる軸封シールを備えている車両や農機具などにあっては、過酷な使用環境に置かれることから、軸封シールの劣化等に起因して固着してしまうといった問題があった。このため、回転軸と軸穴部の間に介在する軸封シールを除去することが困難な作業となっていた。
【0006】
例えば、軸穴部から軸封シールを除去する場合には、例えば、駆動源との間に設けられたギヤ機構や当該ギヤ機構に連結された回転軸を除去する必要がある。更に当該回転軸を除去したのちに、先端のとがった工具などで、軸封シールの内周側から当該先端を押し当てて、こじりながら除去するといった単純な方法で通常行われていた。このため、圧入された軸封シールに対して相当な力を加える必要があることから、当該工具が壊れてしまうという問題があった。しかも、簡単には軸封シールを除去できないため、作業性が悪いといった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、回転軸を取り外すことなく、回転軸が貫通するハウジングの軸穴部に嵌着された軸封シールを容易に除去できる作業性に優れたシール除去装置及びシール除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシール除去装置は、上記目的を達成するために、回転軸(53)が貫通するハウジング(51)の軸穴部(52a)に嵌着された軸封シール(54)を前記軸穴部から除去するシール除去装置(1)であって、基端が閉塞され先端が開口する円筒体形状をなし、前記回転軸を導入する空間(11)を形成する装置本体(10)と、前記装置本体の基端側に把持可能に設けられたグリップ部(14)と、前記装置本体の先端側に設けられ前記軸穴部に挿入される略円筒状の噛み込み部(15)と、を備え、前記グリップ部(14)に、滑り止め加工が施されるとともに、前記噛み込み部は、前記軸穴部の内周壁面に向って突出するねじ山部分(17)と、該ねじ山部分と交差する縦方向の切欠き溝(18a、18b、18c、18d)に沿って形成された複数のねじ切り刃部分(19)と、を有することを特徴としている。また、前記装置本体には、閉塞された前記基端から前記空間に達する中心軸方向の雌ねじ孔部(12)が形成される一方、該雌ねじ孔部にねじ結合する突起部(22)を有する回転操作部材(20)が、前記装置本体の前記基端側の端面上に着脱可能に装着されている。
【0009】
この構成により、本発明に係るシール除去装置では、噛み込み部が軸封シールの内周壁面にねじ切り状態で噛み込んだ装置本体を、その状態のまま引き抜き方向の力で取り出すことにより、回転軸が貫通するハウジングの軸穴部に嵌着された軸封シールを容易に除去することができる。
【0010】
その際の軸封シールの除去作業は、装置本体をその内方に回転軸を収容した状態で軸穴部に挿入且つ回転させ、その後、取り出す操作で対応可能であり、作業性に優れる。
【0011】
また、装置本体の挿入、回転、取出し作業は、当該装置本体の内方に回転軸を収容した状態で行うのが前提であり、上記作業の前に回転軸を除去する必要がない。
【0012】
また、本発明に係るシール除去装置において、前記噛み込み部の前記ねじ山部分は、前記グリップ部から離隔する先端側になるに従って漸次縮径する外面テーパー形状を有する構成としてもよい。
【0013】
この構成により、本発明に係るシール除去装置は、噛み込み部の先端部分を回転軸の外周面と軸封シールの内周壁面との間により簡単かつ小さい力で挿入することができ、軸封シールの除去に関する作業性をより高めることができる。
【0014】
また、本発明に係るシール除去装置は、前記装置本体にねじ結合するとともに前記回転軸の端面部(53a)に突き当たる取出し補助部材(30)が設けられており、前記軸封シールに前記噛み込み部が噛み込んだとき、該軸封シールを、前記取出し補助部材のねじ込み方向の回転操作に伴なって前記軸穴部から除去するように構成している
【0015】
この構成により、本発明に係るシール除去装置は、取出し補助部材をねじ込み方向に回転させることにより装置本体を取り出す力の補助作用が得られ、このような補助作用が期待できないものに比べて軸封シールをより容易に取り出すことができる。
【0016】
また、本発明に係るシール除去装置は、前記軸封シールが、前記軸穴部への嵌着用の金属環(54d)を有しており、前記噛み込み部の前記ねじ山部分が、前記金属環の内周部にねじ切り状態で噛み込み可能である構成であってもよい。
【0017】
この構成により、本発明に係るシール除去装置は、噛み込み部のねじ山部分を金属環の内周部に噛み込ませることで噛み込みをより強固にすることができ、軸封シールをより確実に除去できるようになる。
【0018】
本発明に係るシール除去方法は、上記目的を達成するために、回転軸(53)が貫通するハウジング(51)の軸穴部(52a)に嵌着された軸封シール(54)を前記軸穴部から除去するシール除去方法であって、前記回転軸を導入する空間(11)を形成する円筒体形状の閉塞された基端側に、滑り止め加工されたグリップ部(14)と前記基端から前記空間に達する中心軸方向の雌ねじ孔部(12)とが形成され、前記軸穴部に挿入される先端側には、前記軸穴部の内周壁面に向って突出するねじ山部分(17)と、該ねじ山部分と交差する縦方向の切欠き溝(18a、18b、18c、18d)に沿って形成された複数のねじ切り刃部分(19)とを有する略円筒状の噛み込み部(15)が形成された装置本体(10)を準備するとともに、前記雌ねじ孔部にねじ結合する突起部(22)を有する回転操作部材(20)と前記雌ねじ孔部にねじ結合可能なボルト状の取出し補助部材(30)とを準備しておき、前記回転軸を前記装置本体の前記空間内に導入した後、前記装置本体を前記回転操作部材により前記噛み込み部のねじ込み方向に回転操作することで、前記噛み込み部を前記軸封シールに抜け止め状態に噛み込ませ、該抜け止め状態下で、前記回転操作部材を前記装置本体の前記雌ねじ孔部から離脱させて、前記雌ねじ孔部に前記ボルト状の取出し補助部材(30)をねじ結合させ、該取出し補助部材を前記回転軸に突き当てながら前記ねじ込み方向に回転させることで、前記軸封シールを前記軸穴部から除去させることを特徴としている。
【0019】
この構成により、本発明に係るシール除去方法は、シール除去装置の装置本体と回転操作部材を準備した後、装置本体に回転操作部材を装着し、噛み込み部が軸封シールの内周部に噛み込んだ状態となるまで軸穴部に押し込み且つ回転させるよう回転操作部材を操作し、回転操作部材に替えて取出し補助部材を装着し、取出し補助部材をねじ込み方向にさらに回転させるよう操作する一連の工程を経て、噛み込み部が軸穴部から離脱した軸封シールを噛み込んでいる装置本体を軸穴部から取り出すことができる。このため、本発明においては、回転軸を除去することも、硬化している軸封シールを先端がとがった工具の先端でこじる等の作業も必要なく、軸封シールを極めて容易に取り出すことができ、しかも作業性にも優れる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、回転軸を取り外すことなく、回転軸が貫通するハウジングの軸穴部に嵌着された軸封シールを容易に除去できる作業性に優れたシール除去装置及びシール除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係るシール除去装置の構成を示す斜視図である。
図2図1におけるシール除去装置の装置本体の側面図であり、図2(a)は左側面図、図2(b)は右側面図を示している。
図3図2(a)における装置本体のA-A線による横断面図である。
図4】軸封シールを備える車両の概略構成を示す横断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るシール除去装置を用いたシール除去方法に基づく第1の補助部材を装着する工程を示す斜視図である。
図6図5の工程に続く工程を示す斜視図であり、図6(a)は装置本体を回転させながら押し込む工程、図6(b)は軸封シールを噛み込ませる工程を示している。
図7図6(a)の工程に続く工程を示す斜視図であり、図7(a)は第1の補助部材を取り外す工程、図7(b)は第2の補助部材を装着する工程を示している。
図8図7(b)の工程に続く工程を示す斜視図であり、図8(a)は第2の補助部材を回転駆動させる工程、図8(b)は第2の補助部材を取り外す工程を示している。
図9図7(a)のB-B線による横断面図である。
図10図7(b)及び図8(a)における横断面図であり、図10(a)は図7(b)のC-C線による横断面図、図10(b)は図8(a)のD-D線による横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
本発明の一実施形態に係るシール除去装置1は、後で詳述するように図1図3に示す構成を有している。このシール除去装置1は、例えば、図4に示すオイルシール構造を有する車両50の軸封シール54を除去するために用いられるものである。ここでまず、軸封シール54の除去対象である車両50について説明する。
【0024】
この車両50は、図4に示すように、ハウジング51と、ハウジング51と一体に設けられ、軸穴部52aを有する突出軸52と、突出軸52の軸穴部52aを貫通する回転軸53と、回転軸53が貫通された状態で軸穴部52aに嵌着され、軸穴部52aと回転軸53との間に満たされたオイルをシールする軸封シール54と、を備えている。
【0025】
軸封シール54は、回転軸53の外径より小さい内径を有する環状部材である内側パッキン54aと、内側パッキン54aよりも大きな内径を有する環状部材である外環54bとを周方向に重なるように組み合わせて構成されている。外環54bの内部所要位置には、例えば、一般冷間圧延鋼板(SPCC)等からなる金属製の内環54cが埋め込まれている。また、内環54cの外環54bからはみ出した部分が内側パッキン54aの一部領域に埋入した状態となっている。内側パッキン54aには、その外周を取り囲むように例えば金属環からなるスプリング54dが組み込まれている。スプリング54dは、内側パッキン54aの内周側を回転軸53側に押し付け、オイルシール状態を確保可能に軸穴部52aへ嵌着ならしめるものである。
【0026】
図4に示す構造を有し、且つ、回転軸53が貫通した状態で軸穴部52aに嵌着される軸封シール54は、内側にあっては、内側パッキン54aの内周側が回転軸53の外周側に密着する一方、外側にあっては、外環54bの外周側が軸穴部52aの内周側に密着する。これにより、軸封シール54は、図4における軸封シール54の左側面側で、軸穴部52aと回転軸53との間に満たされるオイルをシールしている。
【0027】
次に、本実施形態に係るシール除去装置1の構成について、図1図3を参照して説明する。
【0028】
本実施形態に係るシール除去装置1は、図1に示すように、装置本体10と、装置本体10に対して着脱(離脱)可能な第1の補助部材20及び第2の補助部材30と、を備えている。装置本体10は、例えば、S45C~S55C等の炭素鋼製の鋼管により構成される。第1の補助部材20及び第2の補助部材30は、例えば、S45C-D~S55C-D等の炭素鋼製のものである。
【0029】
装置本体10は、回転軸53の外形より若干大きい内径を有し(図9図10参照)、回転軸53をその軸方向に摺動可能に収容する空間11が形成された円筒体形状の部材によって構成される。
【0030】
装置本体10は、一端10aが閉塞されるとともに、他端10bが開口されて開口部13を形成している。装置本体10の開口部13と対向する上記一端10aの側面中央部には、当該側面を貫通して空間11に達する孔部12が形成されている。他方、装置本体10の開口部13は、軸封シール54の除去作業(図5図8参照)において、回転軸53をその先端部分から空間11内に導入する導入口(入り口)としての機能を果たす。
【0031】
装置本体10は、軸封シール54の除去作業(図5図8参照)に際して作業者が把持可能な円筒体形状をなすグリップ部14と、グリップ部14と一体に形成され軸穴部52aに挿入される略円筒状の噛み込み部15と、を備えている。
【0032】
グリップ部14は、装置本体10の一端10a側から中心軸C1(図3参照)方向に所定の長さで形成されている。グリップ部14は、例えば、その表面一体に網目状の浅い溝などを形成する滑り止め加工がなされていてもよい。
【0033】
噛み込み部15は、グリップ部14における装置本体10の一端10a側の端部から他端10bにかけて順に連なって配列された非テーパー部16a及びテーパー部16bを有している。
【0034】
非テーパー部16aは、均一な外径を有しており、テーパー部16bは、装置本体10の他端10b側に向かうにしたがって漸次縮径するテーパー形状を有している。
【0035】
非テーパー部16a及びテーパー部16bには、両者の外周に連なるねじ山部分17が設けられる。また、非テーパー部16aの外周及びテーパー部16bの外周には、装置本体10の中心軸C1方向にねじ山部分17を横断する切欠き溝18a、18b、18c、18dが形成されている。
【0036】
このように、装置本体10において、噛み込み部15は、軸穴部52aの内周壁面に向って突出するねじ山部分17と、ねじ山部分17と交差する縦方向の切欠き溝18a、18b、18c、18dに沿って形成された複数のねじ切り刃部分19と、を有する。複数のねじ切り刃部分19は、図1及び図2(a)に示すように、切欠き溝18a、18b、18c、18dにそれぞれ対応する各一対のねじ切り刃部分19aと19b、19cと19d、19eと19f、19gと19hと、を有している。そして、噛み込み部15のねじ山部分17は、上述したテーパー部16bを構成し、グリップ部14から離隔する先端側になるに従って漸次縮径する外面テーパー形状を有している。
【0037】
本実施形態では、図2(a)に明示されているように、切欠き溝18a、18b、18c、18dは、断面U字形状を有し、周方向に互いに90度ずつ離間した配置となっている。なお、切欠き溝18a、18b、18c、18dの溝形状は、断面U字形状に限らず、様々な溝形状としてもよい。また、4つの切欠き溝18a、18b、18c、18dを設ける構成は好ましい形態ではあるが、本実施形態は、これに限らず、少なくとも2つ以上の切欠き溝18が形成されていればよい。
【0038】
また、上述した噛み込み部15の構成のうち、ねじ山部分17の外面テーパー形状については、そのテーパー角度が適宜な値に設定されている。ここで例えば、図3において、噛み込み部15のテーパー部16bにおけるねじ山部分17における隣接するねじ山の頂点部分を装置本体10の中心軸C1方向に結ぶ線分(一点鎖線で示す線分)と、該中心軸C1とのなす角度を噛み込み部15のテーパー角度と規定するものとする。
【0039】
本実施形態において、噛み込み部15のテーパー部16bを構成する部分のテーパー角度が、20度から40度の範囲内であることが望ましい。好ましいテーパー角度は、例えば、30度である。本実施形態に係るシール除去装置1においては、噛み込み部15のテーパー角度が30度であることを前提としている。
【0040】
上述した構成を有する装置本体10は、他端10b側から見ると図2(a)に示す形状を有している。図2(a)に示すように、装置本体10において、噛み込み部15は、4つの切欠き溝18a、18b、18c、18dのそれぞれに対応する各一対のねじ切り刃部分19aと19b、19cと19d、19eと19f、19gと19hを有している。これらねじ切り刃部分19a、19b、19c、19d、19e、19f、19g、19hは、装置本体10の中心軸C1方向に延びて形成されており、後述する軸封シール54の除去作業に際し、装置本体10を軸穴部52a内に押し込む場合(例えば、図9参照)に、軸封シール54の内周面部にテーパー部16bを差し込み易くする作用を果たす。
【0041】
また、噛み込み部15は外周一体にねじ山部分17が形成されており、このようなねじ山部分17の構造によれば、装置本体10を軸穴部52a内に押し込んだ後に装置本体10を回転させることにより、特に、テーパー部16bにおけるねじ山部分17を軸封シール54の内周面部に対して噛み込ませ易くする作用をもたらす。なお、本実施形態では、軸封シール54は軸穴部52aへの嵌着用のスプリング54dを有しており、噛み込み部15のねじ山部分17はスプリング54dの内周部にねじ切り状態で噛み込み可能な構成となっている。
【0042】
また、装置本体10は、一端10a側から見ると図2(b)に示す形状を有している。装置本体10において、開口部13と対向する面、すなわち、装置本体10(グリップ部14)の一端10a側の端面に設けられた孔部12には、第1の補助部材20及び第2の補助部材30を装着するための雌ねじ山が形成されている。
【0043】
ここで、第1の補助部材20及び第2の補助部材30の構成について説明する。図1に示すように、第1の補助部材20は、円柱状の第1の補助部材本体部21と、第1の補助部材本体部21の一端側に設けられ、装置本体10の孔部12に形成された雌ねじ山に回転挿入可能な雄ねじ山が形成されたボルト形状の突起部22と、第1の補助部材本体部21の他端側に設けられ、放射外方に突出する棒状の操作部23と、を備えている。これにより、第1の補助部材20は、装置本体10の孔部12の雌ねじ山に対して第1の補助部材本体部21の突起部22の雄ねじ山をねじ込み方向にねじ込むことにより、例えば、図5に示す態様で装置本体10(グリップ部14の一端10a側の端面)に装着することができる。
【0044】
また、第2の補助部材30は、図1に示すように、装置本体10の孔部12に形成された雌ねじ山に回転挿入可能で雄ねじ山が形成されたボルト形状の第2の補助部材本体部31と、第2の補助部材本体部31の他端側に設けられ、第2の補助部材本体部31を雄ねじ山が回転挿入可能に回転用工具に嵌合する嵌合頭部32と、を備えている。本実施形態において、嵌合頭部32は例えば上面から見て六角形の形状を成す部材であり、第2の補助部材本体部31と一体化された構造を有している。これにより、第2の補助部材30は、装置本体10の孔部12に対して第2の補助部材本体部31の雄ねじ山をねじ込み方向にねじ込むことにより、上述した第1の補助部材20(図5参照)に替えて、例えば、図7(b)に示す態様で装置本体10に装着することができる。
【0045】
次に、本実施形態に係るシール除去装置1を用いたシール除去方法について、図5図10を参照して説明する。
【0046】
図4に示す車両50における軸封シール54を除去するシール除去工程においては、まず初めに、シール除去装置1を構成する装置本体10、第1の補助部材20及び第2の補助部材30(図1参照)を準備する。これら各部材は、例えば、シール除去工具セット等としてケースに収納されて提供される。
【0047】
装置本体10、第1の補助部材20及び第2の補助部材30を準備する工程の完了後、本実施形態に係るシール除去工程は、装置本体10に第1の補助部材20を装着する工程へと進む。
【0048】
この工程において、作業者は、図5に示すように、第1の補助部材20の第1の補助部材本体部21の突起部22の先端部を装置本体10の一端10a、すなわち、グリップ部14の噛み込み部15から離隔する基端側の孔部12にねじ込み可能なように位置合わせを行う。引き続き、作業者は、操作部23を図5の矢印方向に回転させて突起部22を孔部12にねじ込ませることでグリップ部14の基端側に第1の補助部材20を装着する。
【0049】
次に、本実施形態に係るシール除去工程は、第1の補助部材20が装着された装置本体10を、噛み込み部15が軸封シール54の内周部に噛み込んだ状態となるよう内方に収容された回転軸53に対して回転させながら押し込んで、軸穴部52aに挿入する工程(図6参照)へと進む。
【0050】
この工程において、作業者は、まず、図6(a)に示すように、第1の補助部材20を装着した装置本体10の開口部13に回転軸53の端面部53aが入るように位置合わせを行った後、第1の補助部材20の操作部23を操作し、装置本体10を周方向に回しながら前方に徐々に押し込んでいく。これにより、装置本体10は、空間11内に回転軸53が収容された状態で徐々に軸穴部52aの奥側に入り込んでいき、その過程で、噛み込み部15のねじ山部分17(テーパー部16b)が軸封シール54の内周面部に当接する。
【0051】
引き続き、作業者は、例えば、図6(b)に示すように、第1の補助部材20の操作部23を操作しながら、装置本体10を図示する方向に回転させ且つ前方に押し込む作業を続行する。この作業を続行することで、軸封シール54の内周面部、より具体的にはスプリング54dの内周部に対して噛み込み部15のねじ山部分17がねじ切り状態で噛み込む度合いが徐々に増していく。
【0052】
図6(b)に示す工程において、所望の位置まで装置本体10を押し込んだ後、本実施形態に係るシール除去工程は、第2の補助部材30を、第1の補助部材20に替えて、第2の補助部材30の先端部分が回転軸53の端面部53aに突き当たる状態までねじ込み方向に回転させてグリップ部14の基端側に装着する工程(図7参照)へと進む。
【0053】
この工程では、まず、図7(a)に示すように、装置本体10を図6(a)の位置に保ったうえで、第1の補助部材20の操作部23を、装着時とは反対側に回転させることにより第1の補助部材20を装置本体10の孔部12から取り外す。
【0054】
なお、図7(a)における第1の補助部材20の取り外し前にあっては、軸穴部52a内における装置本体10の噛み込み部15と軸封シール54の位置関係は、例えば、図9に示すような関係にある。図9は、軸封シール54の内環54cの一端部が噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまる噛み込み状態のときの図7(a)のB-B線による横断面図である。
【0055】
図9においては、図6に示す工程において、装置本体10を軸穴部52aに押し込む過程で、軸封シール54のパッキン54aの内周部に噛み込み部15のねじ山部分17がねじ切り状態で噛み込みながら、内環54cの一端部が当該噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまり、噛み込み状態となっている。
【0056】
図7(a)に示す第1の補助部材20の取り外し工程の後、本実施形態に係るシール除去工程は、第2の補助部材30を装着す工程へと進む。この工程において、作業者は、図7(b)に示すように、第2の補助部材30の第2の補助部材本体部31の先端部を装置本体10の孔部12にねじ込み可能なように位置合わせを行う。引き続き、作業者は、第2の補助部材本体部31の嵌合頭部32を、例えば、手回しし、それ以上回すことができなくなったときに当該操作を停止する。この作業により、第2の補助部材本体部31を孔部12にねじ込ませ、グリップ部14の基端側に第2の補助部材30を装着することができる。
【0057】
このとき、回転軸53を収容中の装置本体10では、第2の補助部材本体部31と回転軸53との位置関係は図10(a)に示すような関係にある。図10(a)は、軸封シール54の内環54cの一端部が噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまる噛み込み状態のときの図7(b)のC-C線による横断面図である。
【0058】
図10(a)においては、装置本体10に対して第2の補助部材30の付け替えが行われているものの、図9に示す状態と同様、装置本体10を軸穴部52aに押し込む過程で、軸封シール54のパッキン54aの内周部に噛み込み部15のねじ山部分17がねじ切り状態で噛み込みながら、内環54cの一端部が当該噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまり、噛み込み状態となっている。
【0059】
図10(a)に示す第2の補助部材本体部31と回転軸53の端面部53aとの位置関係によれば、この状態から、第2の補助部材本体部31をそれまでと同じ方向にさらに回転させることで、第2の補助部材本体部31を回転軸53の端面部53aに当接させた状態で前方へ押し進め、逆に装置本体10を押し込む方向とは逆方向に引き出すことができることが理解できる。
【0060】
装置本体10に対して第2の補助部材本体部31を図10(a)に示す位置関係となるように取り付けた後、本実施形態に係るシール除去工程は、噛み込み部15のねじ山部分17の谷部が内環54cの一端部に噛み込んだ状態で、軸封シール54が軸穴部52aから離脱するまで、第2の補助部材30をねじ込み方向にさらに回転させる工程へと進む。
【0061】
この工程において、作業者は、まず、図8(a)に示すように、第2の補助部材本体部31の嵌合頭部32を図示する方向にさらに回転駆動する作業を行う。この作業は、例えば回転工具を用いて行うことができる。その際、作業者は、図示していないスパナ等の回転工具に嵌合頭部32を嵌合させ、当該回転工具を操作して嵌合頭部32を第2の補助部材本体部31とともに回転駆動させる。この作業により、第2の補助部材本体部31の先端部分が回転軸53の端面部53aに当接した状態で第2の補助部材本体部31がさらに空間11の奥へとねじ込まれるように動く。この動きに追従して、装置本体10は、第2の補助部材本体部31が動く方向とは反対の方向に向かって移動し、回転軸53を収容したまま軸穴部52aから次第に外側に向けて引き出される。
【0062】
図8(a)に示す工程において、装置本体10が同図に示す位置まで引き出された状態のとき、軸穴部52a内における装置本体10及び軸封シール54の位置関係は、例えば、図10(b)に示すような関係にある。図10(b)は、軸封シール54の内環54cの一端部が噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまる噛み込み状態のまま軸封シール54が軸穴部52a外まで引き出されたときの図8(a)のD-D線による横断面図である。図10(b)においては、図8(a)に示す工程の最終段階にあって、装置本体10が軸穴部52a内から引き出される動きに追従して、噛み込み部15のねじ山部分17の谷部が内環54cの一端部に噛み込んた状態のまま軸封シール54も軸穴部52aの外方へと引き出される。
【0063】
ここで、装置本体10は、軸穴部52aに押し込む過程で、図10(a)に示すように、パッキン54aの内周部に噛み込み部15のねじ山部分17がねじ切り状態で噛み込みながら、内環54cの一端部が当該噛み込み部15のねじ山部分17の谷部にはまり、噛み込み状態となる。この状態で装置本体10を図10(b)に示す位置まで引き抜くと、内環54cに対して引き抜き方向の力が働き、軸封シール54を容易に取り出すことが可能になる。
【0064】
なお、本実施形態に係るシール除去装置1は、金属製の内環54cを有しないオイルシールの除去にも適用可能である。この種のオイルシールに対して、シール除去装置1は、装置本体10を軸穴部52aに押し込む過程で、噛み込み部15のねじ山部分17をオイルシールの内周部の適宜な位置に噛み込ませ、この状態で装置本体10を引き抜くことにより、オイルシールに対して引き抜き方向の力を作用させつつ当該オイルシールを取り出すことができる。
【0065】
図8(a)に示す工程が完了した後、本実施形態に係るシール除去工程は、装置本体10を取り出す工程へと進む。この工程において、作業者は、図8(a)に示す状態から、グリップ部14を握り、装置本体10を同図の矢印方向に引き抜く。
【0066】
この作業により、装置本体10は、図8(b)に示すように、噛み込み部15のねじ山部分17の谷部に軸封シール54の内環54cが噛み込まれたまま回転軸53から抜き出され、軸穴部52a外へ取り出される。このとき、噛み込み部15のねじ山部分17の谷部は、軸封シール54のスプリング54dの内周部にねじ切り状態で噛み込まれていてもよい。
【0067】
図5図10を参照して説明したように、本実施形態に係るシール除去装置1を用いたシール除去方法においては、シール除去装置1を準備する工程(図1参照)と、装置本体10の噛み込み部15から離隔する基端側に対して離脱可能な第1の補助部材20を基端側に装着する工程(図5参照)と、第1の補助部材20が装着された装置本体10を、噛み込み部15が軸封シール54の内周部に噛み込んだ状態となるよう装置本体10の内方(空間11)に収容された回転軸53に対して回転させながら押し込んで軸穴部52aに挿入する工程と、基端側に対して離脱可能な第2の補助部材30を、第1の補助部材20に替えて、第2の補助部材30の先端部分が回転軸53の端面部53aに突き当たる状態までねじ込み方向に回転させて基端側に装着する工程(図6参照)と、噛み込み部15が軸封シール54の内周部に噛み込んだ状態で、軸封シール54が軸穴部52aから離脱するまで、第2の補助部材30をねじ込み方向にさらに回転させる工程と、を含んでいる。
【0068】
図5図8に示す一連のシール除去工程を実現するために、本実施形態においては、装置本体10に軸封シール54に対して抜け止め状態に噛み込む噛み込み部15を設けることを前提とし、その噛み込み操作と噛み込み後の抜去操作とに好適な操作部をさらに設けている。すなわち、本実施形態に係るシール除去装置1は、噛み込み操作に好適な操作部として上述した第1の補助部材20に相当する回転操作部材を有し、噛み込み後の抜去操作に好適な操作部としては同じく第2の補助部材30に相当する取出し補助部材を有している。
【0069】
回転操作部材は、装置本体10の噛み込み部15から離隔する基端側、すなわち、装置本体10の一端10aに離脱可能に装着できる構成を有する。具体的に、回転操作部材は、装置本体10の基端側に設けた基端側ねじ結合部分(上述した装置本体10の孔部12に形成された雌ねじ山)にねじ結合させることが可能なねじ結合部分、すなわち、上述した第1の補助部材20の突起部22における雌ねじ山を有している。
【0070】
第2の補助部材30に相当する取出し補助部材は、装置本体10の基端側に離脱可能に装着できるうえに、装置本体10から第1の補助部材20に相当する回転操作部材が離脱したときに、装置本体10の内方(装置本体10内部の空間11)に挿入されて回転軸53の端面部53aに突き当たるとともに、回転操作部をねじ結合させる装置本体10の基端側ねじ結合部分にねじ結合可能なねじ結合部分、すなわち、上述した第2の補助部材30の第2の補助部材本体部31における雄ねじ山を有している。
【0071】
回転操作部材は、上述した一連の工程中(図5図8参照)、図5に示す工程でグリップ部14の基端側にねじ結合により離脱可能に装着され(図5参照)、図6(a)及び図6(b)に示す工程では、作業者によって、グリップ部14を回転させながら軸穴部52aの奥に向けて押し込む作業のための操作がなされる。
【0072】
回転操作部材は、例えば、円柱状の第1の補助部材本体部21と、その放射外方に突出する棒状の操作部23とを有する(図1図5図6参照)。かかる構造により、回転操作部材は、グリップ部14の押込み及び回転に際して作業者が力を込め易く、噛み込み部15を軸封シール54に対して抜け止め状態に噛み込み易くするよう働き、作業者による当該工程における好適な操作を可能とする。
【0073】
他方、取出し補助部材は、図7(b)に示す工程で回転操作部材から付け替えられた後、図8(b)に示す工程において、作業者によって、さらにねじ込み方向にねじ込む作業のための回転駆動操作がなされる。
【0074】
ここで取出し補助部材は、図10に示すように、軸封シール54に噛み込み部15が噛み込んでおり、かつ、先端部分が回転軸53の端面部53aに突き当たっている状態から、さらに上記ねじ込み方向に回転させるにつれてグリップ部14を当該ねじ込み方向と逆の方向に移動させるような補助作用をもたらす。これにより、取出し補助部材は、グリップ部14の取出しに際して作業者に大きな力を強いることがなく、作業者による当該工程における好適な操作をもたらす。
【0075】
このように、本実施形態に係るシール除去装置1は、軸封シール54に対して抜け止め状態に噛み込む噛み込み部15を有する装置本体10と、装置本体10に対して離脱可能であり、噛み込み操作と噛み込み後の抜去操作とに好適な回転操作部材及び取出し補助部材をさらに有している。
【0076】
上記構成を有するシール除去装置1において、特に、取出し補助部材は、装置本体10から回転操作部材が離脱したときに、装置本体10の内方に挿入されて回転軸53の端面部53aに突き当たるとともに、回転操作部をねじ結合させる装置本体10の基端側ねじ結合部分(孔部12)にねじ結合可能である。すなわち、このシール除去装置1は、軸封シール54に噛込み部15が噛み込んだとき、該軸封シール54を、取出し補助部材のねじ込み方向の回転操作に伴なって軸穴部52aから除去できる構成である。また、本実施形態のシール除去装置1は、軸封シール54が、軸穴部52aへの嵌着用の金属環としてのスプリング54dを有しており、噛み込み部15のねじ山部分17が、スプリング54dの内周部にねじ切り状態で噛み込み可能な構成である。
【0077】
なお、本実施形態の上述した例においては、除去対象の軸封シール54は、回転軸53が貫通するハウジング51の軸穴部52aに嵌着されたものであったが(図4参照)、本実施形態は、これに限らず、例えば、ハウジング51と該ハウジング51より直接外部へ突き出ている回転駆動軸との間に介挿されているオイルシールが対象であってもよい。
【0078】
また、本実施形態の上述した例では、所定の内径を有する一種類の装置本体10のみ例示しているが、本実施形態は、これに限らず、例えば、各車種ごとに異なる回転軸53の外径にそれぞれ対応する内径を有する複数種類の装置本体10を用意し、これらを回転軸53の径に合わせて選択的に用いるようにしてもよい。
【0079】
上述したように、本実施形態のシール除去装置1は、回転軸53が貫通するハウジング51の軸穴部52aに嵌着された軸封シール54を軸穴部52aから除去するものである。このシール除去装置1の装置本体10は、把持可能な円筒体形状をなすグリップ部14と、グリップ部14と一体に形成され軸穴部52aに挿入される略円筒状の噛み込み部15と、を備え、噛み込み部15は、軸穴部52aの内周壁面に向って突出するねじ山部分17と、該ねじ山部分17と交差する縦方向の切欠き溝18a、18b、18c、18dに沿って形成された複数のねじ切り刃部分19を有する。
【0080】
この構成により、本実施形態のシール除去装置1は、噛み込み部15が複数のねじ切り刃部分19により軸封シール54の内周壁面にねじ切り状態で噛み込んだ状態に挿入されると、その状態のまま当該装置本体10を取り出すことにより、回転軸53が貫通するハウジング51の軸穴部52aに嵌着された軸封シール54を容易に除去することができる。
【0081】
その際の軸封シール54の除去作業は、装置本体10の内方、すなわち、円筒体形状の装置本体10内の空間11に回転軸53を収容した状態で軸穴部52aに挿入且つ回転させ、その後、装置本体10を取り出す操作で対応でき、作業性に優れる。
【0082】
また、装置本体10の挿入、回転、取出し作業は、その内方に回転軸53を収容した状態で行うのが前提であり、そもそも、上記作業前に回転軸を除去する必要がない。
【0083】
また、本実施形態のシール除去装置1において、噛み込み部15のねじ山部分17は、装置本体10から離隔する先端側になるに従って漸次縮径する外面テーパー形状を有する構成となっている。
【0084】
この構成により、本実施形態のシール除去装置1は、噛み込み部15の先端部分を回転軸53の外周面と軸封シール54の内周壁面との間により簡単かつ小さい力で挿入することができ、軸封シール54の除去に関する作業性をより高めることができる。
【0085】
また、本実施形態のシール除去装置1は、装置本体10にねじ結合するとともに回転軸53の端面部53aに突き当たる第2の補助部材30が設けられており、軸封シール54に噛み込み部15が噛み込んだとき、該軸封シール54を、第2の補助部材30のねじ込み方向の回転操作に伴なって軸穴部52aから除去する構成を有している。
【0086】
この構成により、本実施形態のシール除去装置1は、装置本体10に対してねじ結合した第2の補助部材30を、回転軸53の端面部53aに突き当たった状態からさらにねじ込み方向に回転させることで、装置本体10をねじ込み方向とは逆の方向に移動(後退)させることができる。すなわち、本実施形態では、第2の補助部材30をねじ込み方向に回転させることにより装置本体10を取り出す力の補助作用が得られ、このような補助作用が期待できないものに比べて軸封シール54をより容易に取り出すことができる。
【0087】
また、本実施形態のシール除去装置1は、軸封シール54が、軸穴部52aへの嵌着用の金属環としてのスプリング54dを有しており、噛み込み部15のねじ山部分17が、スプリング54dの内周部にねじ切り状態で噛み込み可能である構成を有している。
【0088】
この構成により、本実施形態のシール除去装置1は、噛み込み部15のねじ山部分17をスプリング54dの内周部に噛み込ませることで噛み込みをより強固にすることができ、軸封シール54をより確実に除去できるようになる。以上により、本実施形態では、回転軸53を取り外すことなく、回転軸53が貫通するハウジング51の軸穴部52aに嵌着された軸封シール54を容易に除去できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明に係るシール除去装置は、回転軸を取り外すことなく、回転軸が貫通するハウジングの軸穴部に嵌着された軸封シールを容易に除去でき、作業性にも優れるという効果を奏し、過酷な使用環境に置かれることで回転軸と軸穴部間に異物が噛み込み固着する可能性がある種々の車両や農機具など、回転軸が貫通するハウジングの軸穴部に嵌着された軸封シールを除去するシール除去装置及びシール除去方法として有用である。
【符号の説明】
【0090】
1 シール除去装置
10 装置本体
10a 装置本体の一端(閉塞された基端
10b 装置本体の他端(開口された先端
11 空間(グリップ部の内方)
12 孔部(雌ねじ孔部)
13 開口部
14 グリップ部
15 噛み込み部
16a 非テーパー部
16b テーパー部
17 ねじ山部分
18、18a、18b、18c、18d 切欠き溝
19、19a、19b、19c、19d、19e、19f、19g、19h ねじ切り刃部分
20 第1の補助部材(回転操作部材)
30 第2の補助部材(取出し補助部材)
51 ハウジング
52a 軸穴部
53 回転軸
53a 端面部
54 軸封シール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10