(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】超音波振動子を具備するバルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20220517BHJP
A61B 8/12 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61B8/12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018070646
(22)【出願日】2018-04-02
【審査請求日】2021-02-19
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0051321(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、前記遠位端を通って開口する内腔を有するプローブと、
外壁を有する、前記内腔を通って前記体腔
内で展開することができる拡張可能なバルーンと、
前記拡張可能なバルーンの前記外壁に接続する第一側面と、前記第一側面に対向する第二側面とを有する、フレキシブル印刷回路基板と、
前記フレキシブル印刷回路基板の前記第一側面に取り付けられ、前記
拡張可能なバルーンの前記外壁と前記フレキシブル印刷回路基板との間に封入された超音波振動子とを具備する、医療器具。
【請求項2】
前記超音波振動子が圧電セラミック結晶を含む、請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記超音波振動子が、振幅モードで操作されるような構成である、請求項1に記載の医療器具。
【請求項4】
前記超音波振動子が、前記超音波振動子と前記体腔中の組織との間の距離を決定するために、1メガヘルツ~10メガヘルツのシグナルを生成するような構成である、請求項1に記載の医療器具。
【請求項5】
前記フレキシブル
印刷回路基板の前記第二側面に取り付けられ、位置センサとして構成された電極を具備する、請求項1に記載の医療器具。
【請求項6】
前記超音波振動子と前記体腔中の組織との間の距離と、前記電極からのシグナルと、に基づき、前記体腔のマップを生成するような構成のプロセッサを具備している、請求項5に記載の医療器具。
【請求項7】
前記体腔が、心臓の心室腔を含む、請求項6に記載の医療器具。
【請求項8】
前記超音波振動子が、前記フレキシブル
印刷回路基板の前記第二側面と接触する組織の厚みを決定するために、20メガヘルツより大きなシグナルを生成するような構成である、請求項1に記載の医療器具。
【請求項9】
前記フレキシブル印刷回路基板は、前記フレキシブル印刷回路基板の前記第二側面に配置された、アブレーション電極と一対のマイクロ電極とを有する、請求項1に記載の医療器具。
【請求項10】
前記拡張可能なバルーンの前記外壁と前記フレキシブル印刷回路基板との間に配置されかつ導電性ビアによって前記アブレーション電極に連結されるように、前記フレキシブル印刷回路基板の前記第一側面に取り付けられた熱電対を備える、請求項9に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、侵襲性医療用プローブに関し、具体的には、1つ以上の超音波振動子を具備するバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
バルーンカテーテルは、その遠位端に拡張可能なバルーンを具備しており、必要な場合に、これを拡張させ、収縮させることができる。手術中に、バルーンは、典型的には、カテーテルを患者の体腔(例えば、心臓)に挿入する間は収縮されており、必要な手技を行うために拡張させ、手技が終了したら再び収縮させる。
【0003】
Houserの米国特許第5,865,801号は、その開示内容は参考として本明細書に援用され、遠位端付近のカテーテル管に固定された膨張バルーンを具備するカテーテルを記載する。カテーテルは、バルーンの外側表面に圧電超音波振動子を具備していてもよく、医師は、超音波を利用し、カテーテルの位置決めを行い、カテーテル周囲の表面を見ることができる。
【0004】
Nixらの米国特許第8,819,928号は、その開示内容は参考として本明細書に援用され、超音波イメージングカテーテルを記載する。カテーテルは、カテーテルの遠位端に取り付けられた振動子アレイに電気的に連結するフレキシブル回路と、振動子アレイに近い遠位端にバルーンとを具備する。カテーテルは、バルーンに取り付けられたステントを具備しており、ステントは、ステントが、患者の血管系の標的領域に挿入された後に、患者の血流に溶出されるか、又は洗い流されるように設計された1つ以上の薬剤を保有している。
【0005】
Griffithらの国際公開第88/09150号は、その開示内容は参考として本明細書に援用され、超音波イメージングアレイ及びバルーンカテーテルアセンブリを記載する。カテーテルは、あらかじめ組み立てられたサブアセンブリに取り付けられた小型の超音波結晶のアレイを含み、これが小さな内腔カテーテルに取り付けられ、動脈壁の幾何形状及び疾患又は閉塞部位での特徴に関連する寸法と他の量的な情報を与える。バルーンもカテーテルに取り付けられ、血管形成術の手技にカテーテルを使用することができる。
【0006】
Powerらの米国特許第5,722,972号は、その開示内容は参考として本明細書に援用され、アテローム性動脈硬化を遮断するアブレーションに使用することができるエキシマレーザーカテーテルを記載する。カテーテルは、遠位端と近位端を有する管状の基本的な本体と、遠位端に配置された少なくとも2つのバルーン部材と、2つのバルーン部材の間に配置された超音波プローブとを具備する。超音波プローブは、一連の圧電結晶と、段階的な様式で圧電結晶を活性化することができる少なくとも1つのマルチプレクサとを含む。
【0007】
McNicholasらの国際公開第93/04727号は、その開示内容は参考として本明細書に援用され、体組織を治療するために使用することができるバルーンカテーテルを記載する。カテーテルは、バルーンと、前立腺組織を超音波によって観察するための手段とを具備している。
【0008】
Proudianらの米国特許第4,917,097号は、その開示内容は参考として本明細書に援用され、小さな体腔をイメージングするような構成のin vivoイメージングデバイスを記載する。
【0009】
参照により本特許出願に援用される文献は、これらの援用文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾して定義されている場合には、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の一部とみなすものとする。
【0010】
上記説明は、当該分野における関連技術の一般的概論として記載したものであって、この説明に含まれる何らの情報が本特許出願に対する先行技術を構成することを容認するものと解釈するべきではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、医療器具であって、体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、遠位端を通って開口する内腔を有するプローブと、外壁を有する、内腔を通って体腔に配置することができる拡張可能なバルーンと、拡張可能なバルーンの外壁に接続する第一側面と、第一側面に対向する第二側面とを有する、フレキシブル印刷回路基板と、フレキシブル印刷回路基板の第一側面に取り付けられ、バルーンの外壁とフレキシブル印刷回路基板との間に封入された超音波振動子とを具備する、医療器具が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態において、超音波振動子は、圧電セラミック結晶を含む。さらなる実施形態において、超音波振動子は、振幅モードで操作するような構成である。さらなる実施形態において、超音波振動子は、超音波振動子と体腔中の組織との間の距離を決定するために、1メガヘルツ~10メガヘルツのシグナルを生成するような構成である。追加の実施形態において、超音波振動子は、フレキシブル回路基板の第二側面と接触する組織の厚みを決定するために、20メガヘルツより大きなシグナルを生成するような構成である。
【0013】
いくつかの実施形態において、医療器具は、フレキシブル回路基板の第二側面に取り付けられ、位置センサとして構成れた電極を具備してもよい。医療器具が電極を具備するさらなる実施形態において、医療器具は、超音波振動子と体腔中の組織との間の距離と、電極からのシグナルとに基づき、体腔のマップを生成するような構成のプロセッサを具備していてもよい。さらなる実施形態において、体腔は、心臓の心室腔を含む。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、遠位端を通って開口する内腔を有するプローブを与えることと、内腔を通って体腔に配置することができる、外壁を有する拡張可能なバルーンを与えることと、フレキシブル印刷回路基板の第一側面を拡張可能なバルーンの外壁に接続することであって、フレキシブル回路基板が第一側面に対向する第二側面を有することと、フレキシブル印刷回路基板の第一側面に超音波振動子を取り付け、それによって、バルーンの外壁とフレキシブル印刷回路基板との間に超音波振動子を封入することとを含む、方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
ここで、本願開示の発明をあくまで一例として添付図面を参照しつつ説明する。
【
図1】本発明の一実施形態に係る、遠位端にバルーンカテーテルを具備する医療システムの模式的な図による説明である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る、バルーンに接続した複数のフレキシブル印刷回路基板を具備する遠位端の模式的な図による説明である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る、所与のフレキシブル回路基板に取り付けられた超音波振動子を示す模式的な断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、バルーンが拡張されたときのバルーンカテーテルの遠位端の模式図である。
【
図5A】本発明の一実施形態の超音波振動子によって生成する高周波シグナルの模式図である。
【
図5B】本発明の一実施形態の超音波振動子によって生成する高周波シグナルの模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る、心室腔の中に配置されたカテーテルの遠位端の模式図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る、心室腔の壁と接触したカテーテルの遠位端の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
概説
バルーンカテーテルは、心内膜アブレーション及び解剖マッピングのような侵襲性手技を行うような構成であってもよい。心内膜アブレーションを実施している間、バルーンカテーテルは、典型的には、ポイントバイポイントアブレーションを行う従来の1個のチップカテーテルよりも大きな組織の領域をアブレーションすることができる。さらに、バルーンカテーテルは、一度に大きな組織の領域をアブレーションすることができ、手技時間が短くなり、手技中の蛍光透視法の使用に関連する放射線曝露が減る。
【0017】
解剖マッピング手技中に、バルーンカテーテルから集められたマップ点を含むマップが作られる。それぞれのマップは、体腔内のそれぞれの座標を含み、心臓の心室腔のような体腔をマッピングする間、マップ点は、体腔のあらかじめ獲得された画像に登録され、それによって体腔を実際に画像化してもよい。
【0018】
本発明の複数の実施形態において、バルーンカテーテルは、1つ以上の超音波振動子を具備しており、これを使用して体腔をマッピングし、アブレーション手技中の体腔の壁の厚みを測定することができる。本明細書で以下に記載されるように、バルーンカテーテルは、体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、遠位端を通って開口する内腔を有する。バルーンカテーテルは、さらに、外壁を有する、内腔を通って体腔に配置することができる拡張可能なバルーンと;拡張可能なバルーンの外壁に接続する第一側面と、第一側面に対向する第二側面とを有する、フレキシブル印刷回路基板とを具備する。バルーンカテーテルは、さらに、フレキシブル印刷回路基板の第一側面に取り付けられ、バルーンの外壁とフレキシブル印刷回路基板との間に封入された超音波振動子とを具備する。
【0019】
体腔(例えば、心臓)に挿入されている間、超音波振動子は、高周波シグナルを送信し、受信し、超音波振動子と体腔の壁との間の現在の距離を決定するためにシグナルを分析することができる。医療専門家が、体腔の中で遠位端を操作し、遠位端と体腔の壁との間の距離を集めるため、この距離を使用し、体腔のマップを生成することができる。さらに、バルーンカテーテルの遠位端が体腔中の組織と接触するとき(例えば、アブレーション手技中)、高周波シグナルを分析し、組織の厚みを決定することができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、それぞれの所与の超音波振動子は、圧電セラミック結晶を含んでいてもよく、典型的には脆い。バルーンの外壁とフレキシブル印刷回路基板との間に超音波振動子を封入すると、バルーンカテーテルの遠位端が体腔の組織と接触しているときに超音波振動子が壊れないように保護し、防ぐのに役立つだろう。
【0021】
システムの説明
図1は、医療用プローブ22と制御コンソール24とを具備する医療システム20の模式的な図による説明であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る、医療用プローブの遠位端26の模式的な図による説明である。システム20は、例えば、Biosense Webster Inc.(ダイヤモンドバー、カリフォルニア、米国)によって製造されたCARTO(登録商標)システムに基づいていてもよい。本明細書で以下に記載される複数の実施形態において、プローブ22は、診断又は治療といった処置に使用される、例えば、電位をマッピングし、及び/又は患者30の心臓28においてアブレーション手技を行うためのバルーンカテーテルを具備している。また、プローブ22は、必要な変更を加えることで心臓又は他の体内の臓器において他の治療及び/又は診断目的で使用することもできる。
【0022】
医療手技中、医療専門家32は、医療用プローブの遠位端26に固定されたバルーン34(
図2)が体腔(例えば、心臓28の心室腔)に入るように、医療用プローブ22を、前もって患者の体腔に配置されている生体適合性の鞘(図示せず)に挿入する。バルーン34は、典型的には、生体適合性材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリウレタン、ナイロン又はシリコーンから作られる。
【0023】
制御コンソール24は、ケーブル36によって体表面電極に接続し、典型的には、患者30に貼り付けられた接着性皮膚パッチ38を含む。制御コンソール24は、接着性皮膚パッチ38とバルーン34に固定されるフレキシブル回路基板44に取り付けられた1つ以上の電極42(マイクロ電極42とも呼ばれる)との間で測定されたインピーダンスに基づき、心臓28の中の遠位端26の位置座標を決定するプロセッサ40を具備している。
図2に示される構成において、遠位端26は、バルーン34に固定された複数のフレキシブル回路基板44を具備しており、それぞれの回路基板は、一対のマイクロ電極42を具備している。
【0024】
プロセッサ40は、典型的には、プローブ22の要素(例えば、マイクロ電極42)からの信号を受信し、制御コンソール24の他の構成要素を制御するための適切なフロントエンドとインターフェース回路を備える汎用コンピュータを含む。プロセッサ40は、本明細書に記載される機能を実施するためにソフトウェア中にプログラムされていてもよい。このソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子的形態でコンソール24にダウンロードするか、又は光学的、磁気的又は電子的記憶媒体など、一時的でない有形の媒体上に提供されてもよい。又は、プロセッサ40の機能の一部又は全ては、専用又はプログラム可能なデジタルハードウェア要素によって行われてもよい。
【0025】
図1に示される医療システムは、遠位端26の位置を測定するためにインピーダンス系の検知を使用しているが、他の位置追跡技術を使用してもよい(例えば、磁気系のセンサを用いる技術)。インピーダンスに基づいた位置追跡技術については、例えばそれらの開示内容を参照によって本明細書に援用するところの米国特許第5,983,126号、同第6,456,864号、同第5,944,022号に記載されている。磁気位置追跡技術については、例えば、それらの開示内容を参照により本明細書に援用するところの米国特許第5,391,199号、第同5,443,489号、同第6,788,967号、同第6,690,963号、同第5,558,091号、同第6,172,499号、同第6,177,792号に記載されている。本明細書で上に記載する位置検知方法は、上述のCARTO(登録商標)システムで実施され、上に引用した特許に詳細に記載されている。
【0026】
コンソール24は、入力/出力(I/O)通信インターフェース46も具備しており、コンソール24が、プローブ22の電極42及び接着性皮膚パッチ38から信号を送信し、及び/又はこれらに信号を送信することができる。本明細書で以下に記載する複数の実施形態において、プロセッサ40は、マイクロ電極42及び接着性皮膚パッチ38から受信した信号を使用し、患者の体内のバルーン34の位置を示すマップ48を作成することができる。手技中に、プロセッサ40は、医療専門家32に対し、ディスプレイ50上にマップ48を提示し、このマップを表すデータをメモリ52に保存することができる。メモリ52は、ランダムアクセスメモリ又はハードディスクドライブなど、任意の好適な揮発性及び/又は不揮発性メモリを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、医療専門家32は、1つ以上の入力デバイス54を用い、マップ48を操作することができる。
【0027】
図2に示されるように、遠位端26は、バルーン34に取り付けられた複数のフレキシブル回路基板44を具備しており、それぞれのフレキシブル回路基板は、一対のマイクロ電極42と、心臓28の心組織をアブレーションするために使用することができる電極43(本明細書でアブレーション電極43とも呼ばれる)を具備している。フレキシブル回路基板44は、絶縁基板(典型的には、ポリイミドを用いて実装されるもの)を含み、電極42及び43は、典型的には、基板の上を覆う金を含む。
【0028】
制御コンソール24は、アブレーションモジュール56及びパルサー/受信回路58も具備している。制御コンソール24は、アブレーションパラメータ、例えば、アブレーション電極に適用されるアブレーション出力のレベル及び持続時間をモニタリングし、制御するような構成である。パルサー/受信回路58は、例えば、Imaginant(ピッツフォード、NY、米国)によって製造されたJSR Ultrasonics’DPR-300 Pulser/Receiverに基づいていてもよく、パルサー/受信回路58の機能が記載される。
【0029】
図3は、遠位端26の一部の模式的な側面図であり、本発明の一実施形態に係る遠位端の構成要素を示している。バルーン34は、外壁60を有し、フレキシブル回路基板44は、第一側面62と、第一側面に対向する第二側面64とを有する。それぞれの所与のマイクロ電極42は、導体72によって、制御コンソール24の中の回路(プロセッサ40を含む)に連結し、プロセッサ40は、所与のマイクロ電極の位置を決定することができ、それぞれのアブレーション電極43は、導体74によってアブレーションモジュール56に連結する。
【0030】
本発明の複数の実施形態において、超音波振動子68は、フレキシブル回路基板の第一側面62に取り付けられ、電極42及び43は、第二側面64に取り付けられ、次いで、矢印66によって示されるように、第一側面が外壁60に接続する。超音波振動子68は、接続70によってパルサー/受信回路58に連結し、圧電セラミック結晶、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸鉛(PT)又はメタニオブ酸鉛(PbNb2O6)を含んでいてもよい。
【0031】
操作中、医療システム20は、典型的には振幅モード(A-モードとしても知られる)で操作される。A-モードで操作している間、パルサー/受信回路58は、第一電気シグナルを超音波振動子に運び、圧電セラミック結晶を励起し、圧電セラミック結晶を励起した結果、超音波振動子68は、比較的狭いビームとして伝わる単一指向性の高周波シグナルを送信する。
【0032】
遠位端26が、心臓28のような体腔の中に配置されている間、高周波シグナルは、患者30の表面を跳ね返る(すなわち反射する)。超音波振動子68に戻ると、反射したシグナルは、圧電セラミック結晶を変形させ、圧電セラミック結晶は、パルサー/受信回路58に運ばれる第二電気シグナルを生成する。次いで、プロセッサ40は、超音波振動子68とそれぞれの表面との間の距離を決定するために、第一電気シグナルと第二電気シグナルとの間の時間を測定することができる。本明細書で以下に
図5を参照する記載において記載するように、遠位端が心臓28に挿入されたときに高周波シグナルを反射することができる表面は、第二側面64と体腔中の組織を含んでいてもよい。
【0033】
図3に示される構成において、電極42及び43は、フレキシブル回路基板44の第二側面64に取り付けられている。本発明の実施形態は、マイクロ電極42を位置センサとして用いることを記載しているが、医療手技中に他のタスクを行うためのマイクロ電極を構成することは、本発明の精神及び範囲に含まれると考えられる。例えば、マイクロ電極42の一部又は全てが、心臓28の電気活性を測定するような構成であってもよい。これに加え、又はこれに代えて、アブレーション電極43は、位置センサとしても構成されてもよい(すなわち、組織をアブレーションするために使用されるものに加えて、又はこれに代えて)。
【0034】
いくつかの実施形態において、フレキシブル回路基板44は、第一側面62に取り付けられた熱電対76を具備していてもよい。熱電対76は、導電性ビア78によってアブレーション電極43に連結していてもよく、熱電対は、銅導体80とコンスタンタン導体82との間の接点として作られてもよい。導体80及び82は、典型的には、アブレーションモジュール56に接続し、モジュールは、アブレーション手技中、アブレーション電極43の温度をモニタリングすることができる。導体70、72、74、80及び82は、フレキシブル回路基板44の基板に埋め込まれた導電性ラインとして作られてもよい。
【0035】
図4は、バルーン34が拡張されているときの本発明の一実施形態に係る遠位端26の模式的な側面図である。バルーン34は、医療用プローブ22の遠位端にある内腔90から延びるような構成の管状シャフト92に固定されており、バルーン34は、内腔を通って心臓28のような体腔に配置されるような構成である。
図4に示されるように、超音波振動子68及び熱電対76は、バルーンの外壁60とフレキシブル印刷回路基板44の第一側面62との間に封入される。
【0036】
図5A及び
図5Bは、まとめて
図5と呼ばれるが、本発明の一実施形態の超音波振動子68によって生成する高周波シグナルの模式図である。パルサー/受信回路58は、高周波電気パルスを振動子68に伝え、次いで、A-モードで操作されるとき、パルス状高周波の高周波シグナルが振動子68から送信される。以下に説明されるように、高周波超音波シグナルは、シグナルパスに沿って伝わり、シグナルは、元々のシグナルと比較して、同じ周波数を有するが、振幅が小さいパルス状超音波の多くの異なるシグナルに分割される。振幅が小さいシグナルは、それぞれの関連するシグナルパスに沿って伝わる。
【0037】
図5に示される例において、異なるシグナルとそれらの関連するシグナルパスは、一般的にシグナル101及びパス100と呼ばれる。シグナルとそれらの関連するシグナルパスは、本明細書では識別番号に文字を加えることによって区別され、その結果、異なるシグナル101A~101Dは、関連するシグナルパス100A~100Dを有する。
【0038】
従って、
図5Aに示されるように、回路58から電気パルスを受信すると、超音波振動子68は、初期の高周波超音波シグナル101Aを送信し、シグナルは、第二側面 64と接触する電極43によって作られる界面とぶつかるまで、フレキシブル回路基板44を通り、シグナルパス100Aに沿って伝わる。この界面(すなわち、第二側面64)で、初期のシグナルの一部は、第一高周波シグナル101Bとして反射し、パス100Bに沿って、超音波振動子に戻る。
【0039】
図5Bに示されるように、シグナル101Aの残りが、パス100Cに沿って送信される高周波シグナル101Cとして、側面64でインターフェースを通って送信される。シグナル101Cは、パス100Cに沿って心臓28の心内膜組織102の表面にぶつかるまで移動を続け、その時点で、高周波シグナル101Dとして反射し、パス100Dに沿って超音波振動子に戻る。
【0040】
明確さのために、シグナルのパスは、
図5では分割されているが、パスは、実際には実質的に同一線上であってもよく、例えば、この場合には、パスは、振動子68と側面64に対して垂直であると理解されるだろう。とはいえ、パスは、時間がたつと別個のものである。
【0041】
振動子68からシグナル101Aが送信された時間と、振動子でシグナル101Dを受信した時間の知識から、パルサー/受信回路58は、振動子によって生成する超音波シグナルの「飛行時間」を評価し、飛行時間の値をプロセッサ40に与えることができる。プロセッサ40は、飛行時間と、超音波パルスが伝わる媒体中の既知の音速の値と、基板44と電極43の厚みを使用し、振動子68と組織102との間の距離を評価する。本明細書に記載される場合、プロセッサは、異なる振動子68から組織102までの距離を使用し、遠位端26を含む体腔のマップを生成してもよい。
【0042】
図6及び
図7は、本発明の一実施形態に係る心臓28の心室腔における遠位端26の模式的な詳細図である。
図6において、バルーン34は、拡張され、内腔90を通って配置されるが、心内膜組織102とは接触しておらず、
図7において、バルーンは、1つ以上の電極43が心内膜組織と接触するように、心臓28の心内膜組織102に対して押されている。
【0043】
図6に示されるように、バルーン34が、心臓28の心室腔のような体腔に配置されているが、心内膜組織102と接触していない間は、プロセッサ40は、マイクロ電極42からの位置の測定を使用し、バルーン34及び超音波振動子68の位置を表す三次元ソフトウェアモデルを生成することができる。医療専門家32が、心室腔の中で遠位端26を操作するとき、超音波振動子68は、第一高周波シグナル(典型的には、1~10メガヘルツの周波数)を送信し、受信し、パルサー/受信回路58からの対応する電気シグナルに応答して生成することができ、プロセッサ40は、超音波振動子68と心内膜組織102との間の距離110を決定することができる。プロセッサ40は、超音波振動子68の位置(すなわち、三次元モデルによって決定される)と距離110を使用し、マップ48を構築することができる。
【0044】
図7において、アブレーション電極43は、心内膜組織102と接触している(例えば、アブレーション電極がアブレーション手技を行っている間)。この状況で、回路58は、第二高周波電気シグナル(典型的には、20メガヘルツより大きい周波数)を超音波振動子68に運び、第二高周波超音波シグナルを送信し、受信し、プロセッサ40は、超音波振動子と心外膜組織122との間の距離120を決定することができる。距離120は、心臓28の壁上の種々の位置での厚みを示す。
【0045】
操作中、距離120を決定するために使用される第二高周波シグナルは、距離110を決定するために使用される第一高周波シグナルよりも解像度が高く、範囲が短い。さらに、高周波シグナルは、典型的には、異なる媒体(すなわち、
図6では血液、
図7では組織)中を異なる速度で伝わるため、プロセッサ40は、距離110と120を決定するときに、異なる計算因子を使用するような構成であってもよい。
【0046】
上に述べた実施形態は例として挙げたものであり、本発明は上記に具体的に示し、説明したものに限定されない点が理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、本明細書の上に記載されている様々な特徴の組合せと部分組合せの両方、及び前述の説明を一読すると、当業者が想起すると思われる、先行技術に開示されていないそれらの変形及び改変を含む。
【0047】
〔実施の態様〕
(1) 体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、前記遠位端を通って開口する内腔を有するプローブと、
外壁を有する、前記内腔を通って前記体腔に配置することができる拡張可能なバルーンと、
前記拡張可能なバルーンの前記外壁に接続する第一側面と、前記第一側面に対向する第二側面とを有する、フレキシブル印刷回路基板と、
前記フレキシブル印刷回路基板の前記第一側面に取り付けられ、前記バルーンの前記外壁と前記フレキシブル印刷回路基板との間に封入された超音波振動子とを具備する、医療器具。
(2) 前記超音波振動子が圧電セラミック結晶を含む、実施態様1に記載の医療器具。
(3) 前記超音波振動子が、振幅モードで操作されるような構成である、実施態様1に記載の医療器具。
(4) 前記超音波振動子が、前記超音波振動子と前記体腔中の組織との間の距離を決定するために、1メガヘルツ~10メガヘルツのシグナルを生成するような構成である、実施態様1に記載の医療器具。
(5) 前記フレキシブル回路基板の前記第二側面に取り付けられ、位置センサとして構成された電極を具備する、実施態様1に記載の医療器具。
【0048】
(6) 前記超音波振動子と前記体腔中の組織との間の距離と、前記電極からのシグナルと、に基づき、前記体腔のマップを生成するような構成のプロセッサを具備している、実施態様5に記載の医療器具。
(7) 前記体腔が、心臓の心室腔を含む、実施態様6に記載の医療器具。
(8) 前記超音波振動子が、前記フレキシブル回路基板の前記第二側面と接触する組織の厚みを決定するために、20メガヘルツより大きなシグナルを生成するような構成である、実施態様1に記載の医療器具。
(9) 体腔に挿入するような構成の遠位端を有し、前記遠位端を通って開口する内腔を有するプローブを与えることと、
前記内腔を通って前記体腔に配置することができる、外壁を有する拡張可能なバルーンを与えることと、
フレキシブル印刷回路基板の第一側面を前記拡張可能なバルーンの前記外壁に接続することであって、前記フレキシブル回路基板が前記第一側面に対向する第二側面を有する、ことと、
前記フレキシブル印刷回路基板の前記第一側面に超音波振動子を取り付け、それによって、前記バルーンの前記外壁と前記フレキシブル印刷回路基板との間に前記超音波振動子を封入することとを含む、方法。
(10) 前記超音波振動子が圧電セラミック結晶を含む、実施態様9に記載の方法。
【0049】
(11) 前記超音波振動子を振幅モードで操作することを含む、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記超音波振動子によって、1メガヘルツ~10メガヘルツのシグナルを生成することと、このシグナルに基づき、プロセッサによって、前記超音波振動子と前記体腔中の組織との間の距離を決定することとを含む、実施態様9に記載の方法。
(13) 電極を前記フレキシブル回路基板の前記第二側面に取り付けることを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記プロセッサによって、前記超音波振動子と前記体腔中の組織との間の距離と、前記電極からのシグナルと、に基づき、前記体腔のマップを生成することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記体腔が、心臓の心室腔を含む、実施態様12に記載の方法。
【0050】
(16) 前記超音波振動子によって、20メガヘルツより大きなシグナルを生成することと、このシグナルに基づき、プロセッサによって、前記フレキシブル回路基板の前記第二側面と接触する組織の厚みを決定することとを含む、実施態様9に記載の方法。